「谷川岳・西黒尾根より天神・田尻尾根周回」 2017年 9月19日(火)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「水上」


 深田久弥著「日本百名山」によると…

 
“これほど有名になった山もあるまい。しかもそれが「魔の山」という刻印によってである。
いま手許に正確な調査はないが、今日までに谷川岳で遭難死亡した人は二百数十人に及ぶという。
そしてなおそのあとを絶たない・・・”


 ということで、以前から名前だけは知っていた谷川岳へ登ってみることにしました。
もっとも、多くの遭難者を出したのは谷川岳東面の険阻な岩壁群においてであって、
通常ルートを辿る普通の登山者にとっては、他の山と同様の注意レベルで大丈夫と考えます。








 行程概要  GPSデータをカシミールに取り込んでいます。

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。



登り:西黒尾根   下り:天神尾根・田尻尾根




   
 夜半過ぎに土合駅前の広場に到着。出発まで仮眠をとっておく   

 4:38 JR上越線・土合駅(660m)出発

 まだ暗い中を西黒尾根登山口へ向けて歩き始める。
この山行を思い立った当初は谷川岳ロープウェイの駐車場に車を停めることをまず考えたが、
下調べをしてみると駐車料金が必要ということが分かったので土合駅前から出発することにした。
ということで、土合駅から登山口までの標高差140mがまず追加される。








 5:12 西黒尾根登山口(800m)   

 谷川岳ロープウェイ土合口駅、そして登山指導センターを通り過ぎてまもなく西黒尾根登山口に着いた。
日本三大急登の一つということを強調するかのように、登山口からいきなりの急坂が始まっている。
裏銀座・烏帽子岳のブナ立尾根、そして甲斐駒の黒戸尾根は既に歩いているので、
ここ西黒尾根は自分にとって最後に残された日本三大急登の尾根となる。

 5分ほど息を整えてから出発。
急登ではあるが、よく踏まれていてすごく歩きやすい。
いきなりの急登つながりで地元の雪彦山を思い出すが、こちらにはヒルはいないようだ。

 登り始めて間もなく、すごくハイペースな年配の男性登山者に追い抜かれる。








 5:44 送電線鉄塔(920m)   

 登山口から約100m登ってきたところで送電線鉄塔の袂に出る。
南側に少し視界が開けるが、山頂までの標高差を考えるとまだまだ序盤の序盤。
それと上空には意外に雲が多いのがちょっと気になった。








直角に曲がるブナ   

 送電線鉄塔を過ぎると、いよいよ西黒尾根の本格的な登りとなる。
それでも美しいブナの森が続くので退屈な道のりではない。








 6:24 1,140mピーク  山頂まではまだまだ… 

 約200m標高を稼ぐと、小さく等高線が閉じた1,140mピークに乗り上げる。
土合駅からここまで既に約500m登ってきているが、指導標に書かれた谷川岳山頂までの所要時間はあと3時間。

 1,140mピークを過ぎると、少しだけ西黒尾根の上部を垣間見ることが出来る。








樹林帯の登りはまだまだ続く…   7:20 1,410mにて一気に展望が広がる 

 今日は普段使いの35Lザックなのに、やはり西黒尾根の登りは楽ではない。
途中で後続の登山者数人の方に道を譲りつつ、マイペースで標高を上げていく。

 そろそろ樹林帯に飽きてくる頃、1,410m付近にて一気に視界が開けてきて気分が変わる。








南側には天神平スキー場が見える   

 天神平スキー場と周囲の山々がちょうど同じくらいの高さで見える。
ようやくロープウェイで稼げる標高まで上がってきたようだ。

 下りは田尻尾根を辿ることによって、ロープウェイに頼らずに自力で歩きとおしたい。








楽しいクサリ場!  二つの耳を持つ谷川岳 

 展望を得られるようになると、傾斜のキツイ岩場に差し掛かる。
クサリが掛かっているが、山に向かって右側から登り始めたほうが安定した。
三点指示を利かせて楽しく通過。

 この頃より行く手には谷川岳の雄姿を見上げることが出来るようになる。
初めての自分にとって、想像以上に立派な谷川岳の姿を見て大いに感動した!
と同時に山頂までの標高差はまだまだ大きいことも実感する。
首都圏からだと近くて良い山と、多くの登山者を惹きつけてやまないことを納得した。








二つの耳を見やりつつ展望溢れる西黒尾根を進む  西黒尾根は小刻みにアップダウンを繰り返す 

 この辺りから終始、谷川岳を眺めつつ楽しく西黒尾根を登ることが出来るようになる。
どちらの耳がトマかオキか、覚えきらないままの谷川岳での山行だったが、
既に次回訪れた時の行程を考えつつ歩くようになっていた。

 それはともかく、この頃より山頂周辺には西から雲が湧くようになってきて、
何となく嫌な予感が漂い始めた。








 7:51 1,516mピーク「ラクダのコブ」  

 おそらく「ラクダのコブ」の指導標を確認したはずなのだが、なぜか記憶があいまいになってしまった。
但しカシミールで撮影位置を特定すると、おそらくこの2枚の写真の間で「ラクダのコブ」を通過したとみてよいと思う。

 出発地の土合は既に遥か眼下に消え、行く手にはまだまだ長い急登が控える谷川岳が近づいてくる。








 7:58 1,490mコル・巌剛新道分岐   

 西黒尾根上で唯一の分岐点に差し掛かる。
北側のマチガ沢に沿って登ってくる厳剛新道と合流するが、崩落個所があるなど注意を促している。

 なお深田久弥氏が初めて谷川岳を訪れた時は、谷川温泉から天神尾根を登り、
下りは西黒沢(現在はルート無しのよう)を下ったとの記述がある。








いよいよ山頂へ向けての急登が始まる  徐々に山頂が近づいてきているが… 

 厳剛新道分岐を過ぎると、いよいよ標高差300m余りの大きな登りが始まる。
上方にはここまでの間に道を譲った方々が既に登りに掛かっている。
平日ではあっても、西黒尾根を歩かれる方は一定数は居られるようだ。

 この辺りから急登疲れが出てきたのか、けっこう脚が重くなってきた。
上空を流れる雲が気になるが、ペースを上げる余裕はないので運を天に任せるしかない。








長い急登の西黒尾根もようやく終盤が近い…   8:48 氷河跡?(1,750m) 

 どうやら雲が優勢になってきたのは間違いないようだが、自分にとって最後の三大急登である西黒尾根もいつしか終盤戦。
苦しい急登ではあっても、爽快な笹原の尾根の登りだった。

 そしていつしか、滑りやすい岩稜帯へと入っていく。
なんだか紙やすりででも磨かれたような滑らかな岩質で、登りであってもスリップ注意だった。
山と高原地図にも書かれている“氷河の跡”とはこの辺りを指すのだろうか。








 9:11 1,900m   

 1,900mと山頂までほど近くなってきて、ようやくの思いで傾斜が緩むところに乗り上げる。
遂に西黒尾根を登り切ったようだ。素晴らしい尾根なのは間違いないが長かった…。
この辺りが山頂の南側で目立って見えていた肩だろう。
少し西側へ進んだところには谷川岳肩ノ小屋と、その向こうには群馬県と新潟県の県境を成す主脈が見えていた。

 肩ノ小屋には後ほど立ち寄るので、今は出来るだけ早く山頂を目指すことにする。
もうこの頃になると、流れてくる雲との競争になっていた。
でも途中の撮影だけは欠かさなかったが。








あれが一つめの山頂、トマの耳…   

 自分の山頂到着を目前にして、既に周囲には雲が覆い始めていた。
もう1時間早く出発するべきだったと悔やんだが仕方がない。








 9:25 谷川岳山頂・トマの耳(1,963m)到着するもガスガス   

 初めての谷川岳山頂なのに、やはり残念な状態だった。

 土合駅から5時間近く。西黒尾根の急登を経て、ようやくトマの耳に辿り着いたがガスって展望無しだった。
仕方ないので少し息を整えてから、とりあえずもう一つの山頂であるオキの耳を目指す。




 9:30 トマの耳出発

 雲は幸いにも切れ間が多く、時折展望をチラ見することが出来た。
トマの耳とオキの耳を繋ぐ吊り尾根は、晴天の下では気持ち良く歩けるだろう。








 9:47 谷川岳山頂・オキの耳(1,977m)到着   

 少し登り返してもう一つの、というか最高所の山頂であるオキの耳に到着。トマの耳との標高差は14mと僅差ではあるが。
幸いにもオキの耳では雲が途切れがちで、いくらか周囲の景観を楽しむことが出来た。
主によく見えていたのは北に連なる一ノ倉岳、茂倉岳方面で、こちらも見るからに気持ち良く歩けそうな稜線だ。
谷川岳周辺の稜線は自分好みの雰囲気で、これはもうぜひ何度となく訪れたくなるに違いないだろう。




 天候待ちも兼ねてオキの耳で大休止をとるが、結局雲が晴れるまではいかず。
そのうち続々と後続の登山者が到着し始めたのを契機に出発することにした。
なおオキの耳のほうが比較的ゆったりとした山頂となっていて、トマの耳よりも大勢の登山者が憩うことが出来そうだ。




10:20 オキの耳出発

 トマの耳へ引き返す吊り尾根上でも次々と登山者とすれ違う。
平日でも谷川岳は休日の六甲並みの人出のように感じる。




 トマの耳に戻ってくるもやはりガスガスの状態は変わらず。
後から登ってこられた方々もしきりに残念がっていた。
時刻はまだ10時台。展望を期待出来る時間帯だけに全く同感だった。

 少し息を整えてからトマの耳を出発。
指導標をしっかり確認したうえで西黒尾根からのルートを外れ、天神尾根・肩ノ小屋方面へ向かう








10:52 谷川岳肩ノ小屋(1,910m)到着  近い将来、万太郎山方面へ縦走しよう! 

 雲が無ければ展望抜群のロケーションにある肩ノ小屋。ぜひ泊まってみたい雰囲気満点だった。
ここでも小屋前では多くの登山者が休憩中。

 とりあえず下山前に肩ノ小屋に入ってバッジを買っておく。
肩ノ小屋ではバッジ以外もお土産の品ぞろえが豊富で、“ヤマノススメ”グッズまで。
自分は全然観ていなかったアニメだが、この肩ノ小屋が作中で舞台になったとか。
谷川岳と肩ノ小屋がどんな具合でアニメに描かれているか観てみたくなった。




 肩ノ小屋前からは主脈を貫く縦走路が始まっている。
流れる雲の合間に延々と延びる主脈を見ると、誰もがこの稜線を歩きたくなるに違いないが、それはまた今度…。




11:00 谷川岳肩ノ小屋出発

 にわかに主脈を歩きたくなったけど、今回は計画どおりに天神尾根・田尻尾根で土合へ下山する。








かなり整備された天神尾根を下る   

 下山ルートとしていた天神尾根へ下っていく。
天神尾根はロープウェイ駅から谷川岳を目指すメインルートということで、下り始めは階段道まで整備されていた。
天神尾根上部は森林限界を越えているので遠くまで見通しが利く。
下方からは数え切れないほど大勢の登山者が登ってくるのが見えて驚いた。
今更ながら谷川岳の人気ぶりを改めて納得出来た。








11:29 1,700mピーク   

 大勢の登山者とすれ違いつつ、意外に急峻な岩場も点在する尾根道を下った。
一旦下りが一段落する1,700mピークから振り返ると、谷川岳は西黒尾根からとは全く違う姿で居座っている。
南斜面は一面の笹原に覆われていて、自分としてはやはり似た雰囲気の山として氷ノ山のことが頭をよぎる。
山頂方面は相変わらず曇り空で、今日は結局朝早いうちしか青空が見えなかった。




 人どおりの多い天神尾根なので、下りでも予想外に時間が掛かったように感じる。
だいぶ下ってきたように思えたが、スキー場方面を見るとまだだいぶ標高差がある。




11:33 天狗の留まり場

 ちょっとした岩頭となっている天狗の留まり場を通過。
岩の上では数人の登山者が休憩中だったのでそのまま通過する。








12:00 熊穴沢避難小屋(1,460m)到着  土合までの標高差はまだだいぶある。北西には馬蹄形縦走で通っていく山々が誘ってくれる。 

 まだまだ登山者とすれ違いながら下ってくると、赤くて目立つ熊穴沢避難小屋に辿り着く。
ここでは谷川温泉方面へ下る、いわお新道が分岐する。
自分が下っていく田尻尾根方面へは、ロープウェイを目指せばOK。
何しろ初めてで土地勘のない山行なので、山と高原地図・谷川岳が大活躍だった。

 肩ノ小屋から下り始めて1時間経ち、そろそろ休憩時だったが避難小屋内は満室のよう。
分岐そばに辛うじて座れそうな場所を見つけて小休止をとっていく。




12:10 熊穴沢避難小屋出発

 避難小屋からも引き続き天神尾根上を下るのだが、尾根直上からは離れて緩やかな山腹道となる。
森林限界は下回るが、時折谷川岳や東方の山々、これから下っていく土合方面が垣間見える。

 山腹道に入った頃からは昼を過ぎたこともあってか、さすがに登りの登山者とすれ違わなくなった。




12:30 天神山(リフト終点)分岐

 山腹道の途中で天神山から下ってくるルートとの分岐を通過。
天神山はロープウェイとリフトを乗り継げば立てる山なので、観光客も多く登ってくるようだ。








12:38 田尻尾根分岐(1,350m)  笠ヶ岳、朝日岳、白毛門を見やりつつ下っていく 

 ロープウェイ駅の手前でようやく田尻尾根との分岐に差し掛かる。
西黒尾根と天神尾根を廻って正直なところ疲れは感じており、直進してロープウェイに乗りたい気もあった。
でもゆっくりめにペース配分をすることで予定どおりに田尻尾根を下っていく。

 登山道は田尻尾根に限らず、最近の雨続きのせいでぬかるんでいるところが多い。
下りは特にスリップしてズボンを汚さないように慎重に足を運んでいく。








田尻尾根から谷川岳、西黒尾根を眺める   

 日帰りにしては大きな標高差の山行ということもあって、小刻みに休憩を入れながら下っていく。
田尻尾根上部では随所で展望が開け、これまで歩いてきた西黒尾根、谷川岳の光景を満喫出来る。
山頂付近は相変わらず雲に覆われているが、西黒尾根はその急峻さを目の当たりにして改めて達成感を得られる。




 疲れた脚には田尻尾根の下りは長く感じる。
田尻尾根で出会った登山者は道を譲った男性1人のみで、これまでとは打って変わって静かな山行となった。
田尻尾根の下りはやはりぬかるんでいるところが多かったが、ゆっくり歩いたおかげか1回もスリップすることはなかった。








13:36 田尻尾根取付(910m)  疲れた脚に堪える急な砂利の林道歩き。ロープウェイは上空をすいすいと。 

 山腹道の分岐から約1時間で田尻尾根を下りきった!
但し尾根の取付から土合駅まではいくらか離れている。まだまだ気を抜くわけにはいかない。

 田尻尾根を下りきってもやや急な下りの林道歩きが続く。
時折頭上をロープウェイが通過するが、やはりあれに乗って楽をしたかったのは否めない。
でも乗り物に頼らずに谷川岳の定番周回コースを歩ききりたいという思いがより強かった。








14:00 土合口駅そばに下りてきた!(730m)   

 田尻尾根取付から30分近く下ってきて、ようやくロープウェイ駅近くに辿り着いた!
田尻尾根と林道を下った脚の疲れはかなりのものだが、心地良い達成感だったのは言うまでもない。
それでも谷川岳の厳しさは身をもって経験出来た。1,000mを楽に超える標高差は侮れない。

 ロープウェイ駅に駐車していればすぐに行程を終えることが出来るが、このあとJR土合駅まで下りなければいけない。
車道歩きを始める前にここで5分程度の小休止を入れておく。




 土合駅までは下り一方ではあるが舗装路の下りは脚に堪える。
また交通量もそれなりに多いので通行注意。








14:21 JR上越線・土合駅(660m)到着  

 9時間超の周回を終えて、ようやく土合駅に到着!!
山頂までの標高差1,300mの周回は想像以上に疲れたけど、山行を終えた後の余韻と達成感はやはり心地良いものだった。

 山行装備を解いたあとで土合駅舎内に立ち寄ってみる。
自分の古い鉄道知識では上越線は幹線扱いと思っていたが、駅の時刻表を見ると本数が少ないことに驚いた!
今後、谷川岳周辺を巡る山行ではJRを活用することもあるだろうけど、列車の時刻表は必ず確認しておかないと駅舎で1泊する羽目になりかねない。

 ちなみに有名なモグラ駅となっているのは下りのみで、上りは地上にホームがあることを今回初めて知った。




 土合駅見学を終えてから、約3〜4時間運転して帰途に就いた。








 〜 終わりに 〜

 初めての谷川岳でしたが、山頂付近では雲に遮られて少々残念な展望となりました。
今回は定番と思われる周回コースでの谷川岳ピークハントの行程でしたが、今後はアレンジしつつ何度となく訪れる山となりそうです。
 そして、アルプス以外の山々は勉強中の自分にとっては、今更ながら「日本百名山」は行先を選ぶための良書と思いました。








行程断面図です




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