「谷川連峰主脈縦走・谷川岳肩ノ小屋から平標山を経て平標山の家」 2017年10月27日(金) |
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地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。 行程概要 GPSデータをカシミールに取り込んだものです。 今日は谷川岳から平標山(たいらっぴょうやま)まで、憧れの主脈を一気に縦走します! 4時頃起床して朝食を済ませ、縦走の前にトマの耳で朝日を観ておくことにしました。 |
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6:05 ヤマノススメのとおりにトマの耳で朝日を観る | 赤城のシルエットも美しい |
やや雲が多かったが幸いにも朝日は観られた♪モデルの自分はともかくとして、光景の美しさはアニメのシーンのままだった。 アニメではこのあとオキの耳へと向かったが、自分はそこまで再現する時間の余裕はないのが残念だ。 この日にトマの耳でご来光を眺めていたのは自分と昨晩から同宿の方の二人だけだった。 なおこの日の空模様は基本的に晴れではあるが、上層の雲が広がる時間があるという。 出来るだけ上層の雲が広がる時間が短ければいいのだが…。 6:10 谷川岳・トマの耳出発 朝日を眺めたことでヤマノススメの“聖地巡礼”は一段落した。 同宿の方とご挨拶して、直ちにトマの耳を後にする。 |
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さよなら谷川岳、また来る日まで! | 6:20 谷川岳肩ノ小屋。昨日からお世話になりました! |
昨日から良い時間を過ごしたトマの耳から肩ノ小屋へ。 出発を惜しむようにゆっくりと下っていく。 自分の頭の中ではヤマノススメ・セカンドシーズンのエンディング ♪ Cocoiro Rainbow が流れていた。(^^; 登山道は濡れているところが凍結していたが、小屋の方によるとここ数日の中では比較的暖かい朝だという。 |
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6:22 谷川岳肩ノ小屋(1,910m)を今度こそ出発! | |
昨日から本当に待ち遠しかった…。 遂に主脈縦走が始まったが、行く手には長い長い行程が待ちうけている。 でもとりあえず肩ノ小屋からはまず緩やかで快適な下りから始まる。 なおこの時点で既に、昨夜の同室のお二人の方が日の出前に出発され先行されている。 お二人とも今日のうちに平標を越えて、平標登山口へ下山されるという。 平標から下山するまでの標高差は1,000mほどあるから、一気に下山するのはかなりしんどいはずだ。 |
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快適な笹原の踏み分け道が続く | 朝日に照らされる主脈 |
天神尾根までは聖地巡礼もあって半分は観光気分だったが、主脈に入った途端に登山道の雰囲気ががらりと変わる。 谷川連峰の美しい光景に圧倒されまくりだが、怪我しないよう気を引き締めて縦走したい。 当面の目標は初めて谷川岳へ来た時から気になっていたオジカ沢ノ頭。 山と高原地図によると所要1時間。150m前後のアップダウンとなるが、後々の行程と比べたらウォーミングアップ程度でしかなかった。 |
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6:46 中ゴー尾根分岐(1,770m) | 中ゴー尾根 |
先が長いのは分かっていても、周囲の光景に写欲が刺激されなかなか進めなかった。 肩ノ小屋からの下りが一段落する頃、中ゴー尾根分岐に差し掛かる。 分岐からは歩きやすそうな尾根道が下っているが、麓のほうが急こう配とヤブのようで上級者向きという。 |
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オジカ沢ノ頭へ向けて快適な稜線漫歩が続く | |
中ゴー尾根を過ぎると殆ど標高差の無い快適な区間が続く。 ここは主脈の中では束の間の平坦な区間だった。 |
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次第に近づいてくるオジカ沢ノ頭 | |
平坦な区間が終わってオジカ沢ノ頭が近づいてくるが、意外に尖がって見えてきて格好良い。 オジカ沢ノ頭への登り返しは130mくらいだが、なかなかの急坂のようだ。 |
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主脈の至るところに点在するマツダランプの指導標 | この二峰の圧倒的な距離をこのあと体感することになる |
この年代物のマツダランプの指導標が気になって帰宅後に調べてみた。 すると現在はこの社名は残っていないことと、マツダは古代ペルシアのゾロアスター教の神“アフラマズダ”が語源ということらしい。 ゾロアスター教は火を崇拝していることから、照明器具を取り扱う会社の名前に採用されたのだろうと思われる。 地面に置いてある谷川岳・平標の指導標には霜が降りている。 この日は気温が高めとはいえ、朝のうちの日陰では凍結に注意して進んだ。 |
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オジカ沢ノ頭への急坂を喘ぎつつ登る | 今日の行程では唯一のクサリ場 |
昨日の疲れが意外に残っていたのか、この頃より登りでは脚がやや重くなってきた。 テント泊装備に比べたら軽いが、ペース配分を少しゆっくりめに意識した。 この急坂の途中、単独行の男性に追いつかれて道を譲った。 急坂の途中ではクサリ場もあったが、南向き斜面だったので凍結もしておらず難所ではなかった。 |
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ここで万太郎まで5分の2しか歩いていない | 7:38 オジカ沢ノ頭(1,890m)到着! |
急登が落ち着くとオジカ沢ノ頭は近いが、その辺りで置かれていた指導標を見て万太郎までの遠さを改めて実感する。 地面の指導標を見てから、まもなく前方の展望が広がってオジカ沢ノ頭に到着! 行く手には遮るものなく万太郎が見えるが、ここからでもかなり遠い。 大展望のオジカ沢ノ頭で腰を下ろして休憩をとっていく。 7:48 オジカ沢ノ頭出発 |
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7:51 オジカ沢ノ頭避難小屋(1,850m) | |
オジカ沢ノ頭から下り始めてすぐのところに今日一箇所目の避難小屋に到着。 円筒形で中は板張り。簡素な造りではあるが、天候急変の際には大いに役立つ。 主脈上には数箇所の避難小屋があり、多少の規模の差はあるがいずれも収容人数は多くはない。 文字通り避難小屋泊も不可能ではないが、ここで寝るにはちょっと気合が必要な気がする。 主脈縦走を検討した当初は避難小屋泊を想定していたが、ヤマノススメの聖地巡礼という目的が加わったため肩ノ小屋泊になった。 |
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万太郎山へ真っ直ぐ伸びる主脈 | |
オジカ沢ノ頭避難小屋を過ぎると、笹原の中の激下りとなる。 行く手には万太郎へ向けて延々と伸びてゆく主脈の全貌が眺められる。 このアップダウンに比べると、谷川岳からオジカ沢ノ頭までは全く大したことはないものだった。 言い換えると谷川岳からは主脈の最も楽なところしか見えていなかったことになる。 まだだいぶ遠くに見えている万太郎まででようやく今日の行程のほぼ折り返し地点。 この頃より残りの所要時間を気に掛けながらの縦走になってきた。 なお谷川岳から目立って見えていたオジカ沢ノ頭から俎ー(まないたぐら)へ続く美しい稜線は主脈ではなく間違い尾根。 但し笹原の中に微かに踏み跡があったので、俎ーを目指す登山者も居られるようだ。 |
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激下りのあとは地味な登りがしばらく続く | 爽快なスカイラインが続く |
急坂を慎重に下りきると、久しぶりに緩やかな主脈になる。 当面の目標である小障子ノ頭までの標高差は大したことはない。 雄大な主脈の光景に囲まれての稜線漫歩を楽しめる。 |
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8:27 小障子ノ頭(1,730m) | |
オジカ沢ノ頭から万太郎にかけて点在するミニピークの一つである小障子ノ頭に到着。 緩やかな起伏の一角にある居心地の良いところだった。 |
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次第に貫禄を増してくる万太郎山 | |
小障子の頭を過ぎると次第に万太郎山が近づいてくるが、同時にそこに至るまでの主脈のアップダウンも正確に捉えられるようになってくる。 ここまでは比較的緩やかだったが、万太郎に近づくにつれて大変さが増してくる。 1,690mピークの左奥には次の避難小屋も見えてくる。 |
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8:42 大障子避難小屋(1,680m) | |
大障子避難小屋は主脈の中では最も規模の大きな避難小屋。 しかも付近には水場(主脈の南側。往復20分)もあるようなので、最も便利で人気が高い避難小屋だろうか。 避難小屋の後ろのミニピークに遮られ、ここからは万太郎方面は見えなくなる。 主脈縦走は無数の小刻みなアップダウンとの闘いといってもよいと思う。 ここは数分程度の立ち休憩で出発する。 |
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万太郎を隠す大障子ノ頭 | 万太郎に取り付く前から大変… |
大障子避難小屋からすぐのミニピークへ上がると、眼前には大障子ノ頭が立ちはだかる。 見るだけでこれはしんどいなと思わせられるが、地形図を観ると標高差は100mくらいだ。 大障子まで辿り着ければ遂に万太郎が目の前に見えるはずなので、それを励みに淡々と登っていく。 大障子ノ頭への登りはかなりの急坂で、ある程度覚悟が必要だ。 振り返るといつの間にか離れてきたオジカ沢ノ頭と谷川岳が並んで見える。 なおこの頃より自分のだいぶ後方をお二人が歩いておられるのが時々見えるようになる。 主脈縦走中はずっと離れ過ぎず、かといって詰められることもなく終始した。 昨夜、肩ノ小屋に泊まられて、自分と同じく平標山の家を目指されているご夫婦であるとずっと後になって分かることになる。 |
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9:13 大障子ノ頭(1,800m)到着 | |
どうにか標高差100mの急坂を登りきると、行く手には近くなった万太郎の堂々とした姿を眺められる。 しかしその間のアップダウンは下り80m、登り200m超。 それはともかく大障子ノ頭は小障子ノ頭と同様に居心地抜群のミニピークだ。 万太郎へのアップダウンに備えて5分ほど小休止を入れておく。 |
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1,720mコルへ向けて激下り! | |
大障子ノ頭を過ぎると万太郎を前にして激下りとなる。 途中では足場の悪い岩場も通過する。 山と高原地図では危険マークこそ付いていないが、意外に要注意の場所と感じた。 三脚を立てるのは不安だったので、岩場での撮影は断念した。 |
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9:30 1,720mコル | |
際どい岩場を下りきると、伸びやかな地形の1,720mコルに降り立ってほっと一息つける。 しかし、万太郎までの標高差230mは見上げるほどに強調される。 地形図をよく見ると万太郎直下の100m以外はやや等高線の感覚が広い。 途中までは程好い傾斜で通り過ぎることが出来るはずだ。 |
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このマツダランプの指導標を過ぎれば、万太郎まで一直線に登っていく | 北面の土樽・越後湯沢方面の展望。新潟県側の尾根もいずれ歩いてみたい。 |
1,720mコルを境に蛇行した主脈は、この辺りから再び真っ直ぐ西に延びていく。 登るにつれて段々と急になっていくというしんどい展開だが、最初はかなり遠くに見えていた万太郎へ登りつつあると考えると励みになる。 万太郎への登りの頃から上層の雲は完全に消え、けっこう気温が上がってきてかなり汗を掻くことになった。 |
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万太郎山から谷川岳方面を振り返る | |
ここの急登は辛かっただけに一気に標高を稼げる。 まだ今日の縦走は半分も来ていないのに、もう充分に達成感を得られる絶景だ! 先程まで居た大障子ノ頭は既に低く、オジカ沢ノ頭と谷川岳が重なるように並んで見えている。 谷川岳は主脈から眺めると、周囲の稜線に埋没してしまうようだ。 やはり谷川岳は天神尾根、西黒尾根から見上げた姿のほうが素晴らしい。 |
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10:13 万太郎山北の肩(1,940m) | |
縦走路は万太郎山山頂の少し北にある肩に乗り上げる。 ここの指導標は急登の途中からよく見えていて、なかなか近づいてこないのだが良い目印になる。 この肩からは土樽へ下る吾策新道が分岐している。 ここでは万太郎山頂から降りてこられ、これから吾策新道へ下る単独行の男性登山者と出会う。 主脈縦走に興味がおありだったようで、谷川岳からここまでの所要時間を尋ねられた。 数箇所で避難小屋はあるものの、平標から谷川岳間を一気に歩きたいと思われる方は多いよう。 しかしこの二峰を隔てる距離は本当に長く、主脈縦走の敷居を上げているようだ。 この北の肩から万太郎山山頂はすぐのところにある。 しかしこの時自分の関心をひいたのは、初めて全貌が見えた仙ノ倉とを隔てる圧倒的な距離感だった。 |
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10:19 万太郎山山頂(1,954m)到着! | まだ道半ばでもかなりの達成感で三角点「万太郎」にタッチしておく。 |
肩からは緩やかな登りとなってすぐに待望の万太郎山山頂に辿り着いた! あまり広くはない山頂には誰も居らず自分一人きり。 ここまでの急登は辛かったが、大展望の広がる素晴らしい山頂だった! しかし、ここまで来て初めて縦走後半の主脈の全貌を眺めることが出来て、これは仙ノ倉まで更に大変だと改めて覚悟しなければならなかった。 谷川岳から4時間ほど掛かって万太郎まではやってきたが、まだまだ先のほうが長いのが嫌でも分かる。 まあその前にここまでの登りでだいぶ疲れていたので、万太郎山頂でやや長い休憩をとる。 |
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圧倒的な存在感を放つ仙ノ倉とエビス大黒ノ頭 | |
これまでは比較的一直線に西進してきた主脈だが、万太郎からは大きく南側を迂回する格好となる。 しかも1,568m最低コルまで一旦標高を大きく下げる。 その後の登り返しが強烈だ。特にエビス大黒ノ頭への長い激登りは観るだけで疲れてきそうだ。 主脈後半はエビス大黒ノ頭と仙ノ倉の二峰に登ると捉えなければならないだろう。 万太郎まででも充分長いし楽ではなかったが、主脈縦走の核心部はこれからだった。 10:33 万太郎山山頂出発 15分近く脚を休ませてから、主脈縦走後半を開始する。 |
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縦走後半は笹原の中の緩やかな下りで始まる | 思いがけず痩せたところも通過する |
強烈な登り返しが後にくるが、それはまだ少し先の話。 1,568m最低コルまで標高差400mほどの比較的長い下りが当分続く。 下りで脚が疲れないように出来るだけ丁寧に歩いていく。見通しのよく利く爽快な下りだった。 山頂から下り始めてすぐのところでテント泊装備の単独男性の方とすれ違う。 テント泊装備でこの主脈を歩くのは本当に大変と思うけど、達成感は何物にも代えがたいものだろう。 東俣ノ頭の手前では一部痩せ尾根となっている。 今日のような天候であれば問題ないが、荒天になれば通過するのは危険になりそうだ。 |
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10:51 東俣ノ頭北面をトラバース | |
縦走路は東俣ノ頭手前で山腹道になり、大きく西寄りに向きを変える。 まだ万太郎からそれほど歩いていないのだが、エビス大黒ノ頭と仙ノ倉が少しずつ確実に近づいてくる。 |
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東俣ノ頭を過ぎると再び爽快な稜線歩きとなる | |
進行方向の正面に回り込んできたエビス大黒ノ頭、仙ノ倉を見やりつつ、笹原の中を延々と続く縦走路を下っていく。 下り着く1,568m最低コルまでの標高差は約250m。 その先の登り返しがしんどいことは分かっていても、この笹原の光景の伸びやかさと爽快感は何ともいえない! |
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笹原の中に久しぶりの避難小屋が見えてきた | |
この緩やかな下りは爽快だったのだが、意外に滑りやすいところもあって油断大敵だった。 昨日からの好天で地面は乾きつつあったが、今年の雨の多さは度を越している。 |
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11:06 越路避難小屋(1,710m) | |
笹原の稜線の一角という、とても素晴らしいロケーションの避難小屋だ。 しかも中が比較的きれいで、ここでなら避難小屋泊しても良いなと思えた。 避難小屋前は平らな芝生状で、いかにもテントも張れそうな感じだが主脈上はテント設営禁止だ。 なお扉を開けてみると、空気がこもっていたのかかなり暑かった。 今日のような好天だと夕方になるまで避難小屋の中で過ごせないかもしれない。 |
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1,568m最低コルが近づいてきた | |
越路避難小屋付近は居心地良かったが、最低コルに着いてから休憩しようと考えてどんどん先へ進む。 やはり下りの局面では行程が捗るようで、万太郎からだと遥か遠くに見えていたエビス大黒ノ頭、仙ノ倉が次第に大きくなってくる。 |
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11:23 1,568m最低コル | |
万太郎から約50分下りに下って1,568m最低コルに降り立った。 でも最低コルにあると思っていた毛渡乗越が微妙に登ったところにある。 とりあえず少しだけ登って、見えている指導標のところで休憩をとることにする。 |
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11:24 毛渡乗越 | |
小休止をとった毛渡乗越からは南へ下るルートが分岐している。 下り始めは明瞭な踏み跡があるが、基本的に難路で安易に立ち入るルートではないようだ。 地面に置いてある指導標によると、平標山、仙ノ倉山方面2時間30分とある。 しかし山と高原地図で改めて確認すると、2時間30分は仙ノ倉までの所要時間とみて間違いないだろう。 毛渡乗越にて5分ほど小休止をとってから、いよいよ今日の核心の登り返しを始める。 |
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11:30 1,580mピーク | |
毛渡乗越から少しだけ登って1,580mピークに達すると、いきなり目の前に容赦ない急登が現れる。 しかも眼前の急坂などまだまだ序盤で、仙ノ倉はもとよりエビス大黒ノ頭でさえ、見上げるほどの高さにそびえている。 ここに来るまでにもう大概疲れていたが、もう諦めて淡々と登っていくしかない。 この激登りの最中に立て続けにお二人の単独男性の方とすれ違う。 そのうちのお一人の方にこれからが最もしんどいところだから頑張って、と励まされて有難かった。 |
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11:51 1,670mピーク | |
最初の激登りを耐えると1,670mピークに乗り上げる。 1,670mピークは細長く等高線が閉じており、束の間の快適な稜線となる。 しかし行く手の光景を観ると一目稜線で、遂にエビス大黒ノ頭の全貌が現れる。 ここから見上げると仙ノ倉よりもエビス大黒が主峰のような圧倒的な存在感だ。 この先まだまだ急登が待っているが、その前にまた50mほど下ってしまうというおまけまで付いてくる。 |
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11:57 1,620mコル | |
エビス大黒の急登の前にまた下ってしまったが、コル南面の人を寄せ付けない急峻さに目が吸い寄せられる。 1,620mコルからだとエビス大黒は見上げるばかりの高さにある。 名前だけは有難いミニピークだが、この時ばかりはちっとも有り難くなかった。 これから始まる300m近い激登りが今日の行程の中で核心といえる辛さだったかもしれない。 |
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エビス大黒まで延々と続く急登 | 地形図の確認がお留守になるほど疲れていた |
後から振り返っても、あれだけ疲れていたのによく登ったなあとしみじみ思う。 もっと重いテント泊装備で聖〜荒川三山や仙塩尾根を縦走した時のことを思い出して、 あの時のペース配分に基づいた歩き方に出来るだけ近づけるよう意識した。 この急登の最中はヤマノススメ・セカンドシーズンのオープニング ♪ 夏色プレゼント が頭の中で流れていた。 急登の連続とはいってもやはり緩急の変化はあって、偽ピークに見えてしまうところがいくつかあった。 自分がバテバテになっている時、下方から追い付いてきた単独男性に道を譲った。 トレラン装備のように見えた軽装の方で、驚くような早いペースで登られていく。 |
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エビス大黒付近から万太郎方面を振り返る | |
見た目どおりにエビス大黒への長い急登はしんどかった…。 でも頑張って一気に高度を上げた結果、振り返って観る万太郎方面の光景は本当に素晴らしいものだった。 万太郎の右奥に回った谷川岳がかなり遠くなり、これぞ本当に縦走の醍醐味だった! |
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12:51 エビス大黒ノ頭(1,888m)到着 | |
最低コルから登り返しに1時間20分かけてようやくエビス大黒ノ頭に辿り着いた! 長い間、目の前に立ちはだかっていたエビス大黒はやっと片付けた。 しかし、次は今度こそ主峰の仙ノ倉が待っている。ここからでもなかなか遠い。 かなり尖がって見えていたこともあって、エビス大黒ノ頭は狭い。 360度の大展望はもしかしたら主峰仙ノ倉をも凌ぐかもしれない。 絶景に囲まれて待望の小休止をとった。 ここで改めて山と高原地図を広げて今後の行程を確認する。 事前準備では所要9時間とみていた主脈縦走だが、この調子なら10時間は掛かりそう。 でも何とか16時頃には平標山の家に辿り着けるだろう。 13:00 エビス大黒ノ頭出発 エビス大黒と仙ノ倉の間のアップダウンもきついが、エビス大黒までに比べるとやや楽かもしれない。 |
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エビス大黒からの下りは急坂と岩場に注意 | |
エビス大黒と仙ノ倉間の最低コルは1,784mで、ここから100mの下りだが特にエビス大黒の直下が急坂だ。 三点支持が必要なほどの岩場の下りもあって慎重に通過する。 急坂が一段落すると1,784mコルまでは比較的緩やかな下り。 1,784mコルの近くには主脈上で最後の避難小屋、エビス大黒避難小屋が見えている。 仙ノ倉への登りの手前にあるので、次はあそこで小休止をとろう。 ところでエビス大黒を過ぎて、初めて今日の行程の終点である平標山の家が見えた! 平標山自体は仙ノ倉の後ろになって見えないが、山小屋は南へ派生する尾根上にある。 山小屋まではまだかなり距離があり、辿り着くまではここからでもゆうに3時間は掛かるだろう。 |
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エビス大黒、仙ノ倉間の吊り尾根。エビス大黒避難小屋は1,784mコルを少し過ぎたところにある。 | |
エビス大黒からの激下りを終えるとひとまず一息付ける。 しかし遂に正面には仙ノ倉への急登が近付いてきた! |
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13:27 エビス大黒避難小屋(1,800m) | |
1,784mコルから仙ノ倉へ登りかけたところにエビス大黒避難小屋がある。 収容人員は3人程度と、他の避難小屋と比べても小ぶりなものだ。 エビス大黒の名が冠せられているが、距離的にはもう仙ノ倉のほうが近いところにある。 眼前の仙ノ倉への急登を前にして既に疲労は相当溜まっている。 避難小屋前でとりあえず小休止を入れておかなければ。 休憩しながら仙ノ倉への等高線の数を今一度数えたら標高差は200m。 でもそのうち最初の50mは比較的等高線の間隔は広いようだ。 13:35 エビス大黒避難小屋出発 ここが最後の登りではないが、残る行程では最も大きな登りとなる。頑張りどころだ。 |
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仙ノ倉への急登 | |
何個の山を越えてきたか分からないようになってきたくらい疲れていた。 しかし万太郎からあれだけ遠くに見えていた仙ノ倉へ登り詰めようとしていることを考えるとやはり元気が出てくる。 仙ノ倉へは急登が続くが、ジグザグで比較的歩きやすい。 ここよりもエビス大黒への登りのほうがもっとしんどかったように思う。 |
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仙ノ倉手前から歩いてきた主脈を振り返る… | |
エビス大黒避難小屋が米粒のように見えてくるほど標高を稼いだ。 仙ノ倉へあと一登りのところから振り返った主脈は最高の眺めだった! 万太郎ですらかなり遠くに、谷川岳に至ってはあそこから歩いてきたのか!と驚くほど遥か彼方に見える。 万太郎から始まる大きなアップダウンの連続は谷川岳から見る主脈とは全く様相が異なり、 本当にダイナミックな景観で圧倒される。 エビス大黒に至っては途中のミニピークの範疇には収まらない存在感で、 あそこを越えるのが本当にしんどかったのは当然だったと納得出来る。 |
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14:13 急登が遂に終わる | |
遂に200mの急登が終わり、目指す仙ノ倉山頂が眼前に現れる! 万太郎の手前で初めて仙ノ倉を眺めてから既に4時間経過。本当に遠かった。 |
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14:20 仙ノ倉山山頂(2,026m)到着! | 仙ノ倉山山頂(2,026m)。今回の縦走においてここが最高地点となる。 |
かなり広い広場になっている仙ノ倉山山頂に遂に立った! 午後遅い時間帯になってきていたせいか山頂には誰も居ない。 既に日が傾いてきて西側の山々はシルエットっぽくなってきたが、 今日最後のピークとなる平標山の姿もはっきりと捉えた。 仙ノ倉から眺めると名前ほど平らではなく、整った三角錐の端正な山に見える。 一方の東側を振り返ると、谷川岳と万太郎が重なるように見えている。 道理で谷川岳から眺めると、万太郎と仙ノ倉が判別し辛かったわけだ。 山頂からの展望の見え具合はというと、やはり周囲の低い灌木で幾分遮られる。 先程の急登の最後辺りが最も好展望だったと思う。 |
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三角点「千倉山」 | 仙ノ倉山山頂の方位盤 |
大きなアップダウンを越えた達成感に浸りつつ三角点にタッチしておく。 自分もつい最近知ったのだが、仙ノ倉山は「200名山」に選定されている。 谷川岳の影に隠れがちのようだが、標高と山の貫禄においては仙ノ倉も負けていない。 仙ノ倉山頂では10分ほど小休止を入れて脚を休ませた。 14:31 仙ノ倉山山頂出発 仙ノ倉からはこれまでのような激しいアップダウンこそないが、それでも疲れている脚には楽ではなかった。 すぐ西側の2,021mピークまで30〜40mくらいのアップダウンがあった。 なお仙ノ倉までとは打って変わって、たいへんきちんと整備された登山道となった。 自然環境に配慮しているのか木道や階段道が続くが、大きな段差やスリップには注意が必要だ。 |
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14:43 2,021mピーク | |
2,021mピークに登り返すと、先程まで居た仙ノ倉山頂を手に取るように眺められる。 仙ノ倉から西側の主脈は比較的穏やかな地形となり、そのためか雪の上を歩くことが多くなってきた。 |
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2,021mピークを過ぎると広大な草原が現れる | 最近降ったばかりの新雪を踏んでいく |
2,021mピークを過ぎて少し下っていくと、平標山へ続いていく広大な草原風景が広がる! 細くて起伏に富んだこれまでの稜線から一転して、仙ノ倉から西側の主脈は決定的に雰囲気が変わる。 登山道に沿ってずっとロープによる規制線が続いていくが、夏ならばここは見渡す限りの花畑になるようだ。 平らな登山道には積もったばかりの雪がたくさん残っていてけっこう歩きにくい。 ここはツボ脚で構わず進んでいくが、日が陰ってやや気温も下がってきたこともあってすぐに足先が冷えてきた。 |
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平標山への登りが近づいてきた | 今日最後のピーク、平標山まであと少し! |
午後遅くになって微妙に台風の影響が出てきたのか、主脈にはやや強い風が吹きつけ始めた。 花畑の時期とは真逆に寒々しい光景となってしまったが、目指す平標山が近づいてきて元気付けられる。 遂に今日最後の登りが近付いてくるが、平標山へは標高差90mほど。 岩畳や階段で整備された登山道をゆっくりと登っていく。 標高差はこれまでに比べたら大したことはないが、整備され過ぎて段差を小さくし辛くて楽ではなかった。 平標山手前からは仙ノ倉まで続く草原風景が素晴らしい。 平標登山口(新潟県側)から平標、仙ノ倉とセットで登るのが人気なことも頷ける。 |
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15:21 平標山山頂(1,983m)到着! | 今日最後の三角点「松出」にようやくタッチ |
なんとか階段道を登り切って平標山山頂に辿り着いた! 谷川岳を出発してから9時間掛かって、ようやく今日最後のピークだ。 山頂の西側には近くなった苗場山の平らな山頂が見えている。 東西に長くて広い山頂からはこれまで歩いてきた縦走路以外に三方向に登山道が伸びている。 谷川連峰主脈は群馬、新潟の県境尾根でもあるが、県境はこの平標山からは90度南へ折れて続いていく。 どこまでを主脈と呼ぶのかは曖昧だが、この後下っていく県境尾根は直進する松出山へ伸びる尾根よりは断じて長い。 日が陰る時間が長くなったうえに、山頂にはやや強い風が吹き続けている。 周囲の灌木で風を避けて小休止を入れるが、やはりけっこう寒くなってきた。 |
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15:31 平標山山頂出発 | 延々と階段道の下りだが、自分の歩幅には微妙に大きな段差でけっこう疲れる |
小休止の間にもどんどん体が冷えてきた。日が当たればもう少し暖かいのだが…。 この頃より8年近く使っているカメラ(EOS5D mark2)の調子が悪くなってきて、時々シャッターが下りなくなってくる。 最近、冷たい風にさらされるとエラー表示が出ることが多くなってきた。 バッテリーを入れ直すと撮影できるのだが、いつ壊れるかと考えると不安で、コンデジを予備カメラとして携行している。 経年劣化のせいなのか、過酷な環境のせいなのか。 暖かい日中は調子良いので、まだ継続して使えてはいるのだが。 主脈縦走に話を戻すと、平標山からは既に平標山の家が小さく見えている。 長かった主脈縦走も残る行程は下り40分だ。 平標山の家から南側には更に伸びゆく稜線を眺められる。 3日目の予定は三国山まで縦走を続けて三国峠へ下山としているが、 天候によっては大源太山、三角山までで主稜線を離れ、毛無山経由で浅貝へ下山することも念頭に置いている。 平標を過ぎても整備された登山道は続くが、一部では泥濘が相当酷いところもあった。 登山靴も雪と泥で相当くたびれてきた。 泥濘を過ぎれば再び階段道となるが、大きな段差でけっこう脚力を消耗する。 疲れた脚の手助けにトレッキングポールが大活躍だった。 |
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傾いた西日が仙ノ倉とエビス大黒を照らす | よく歩いたな… |
平標からだいぶ下って仙ノ倉の南山腹がよく見えるようになってきた。 ついでに急登で苦しめられたエビス大黒まで東側に顔を出している。 柔らかい西日に照らされた山々を眺めつつ、平標山の家へ下っていく。 |
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平標山の家が近づいてきた! | 長い縦走の果てに辿り着いた平標山の家。こちらは10張り程度ではあるがテント泊も可能。 |
やっと山小屋が大きく見えてくると共に、明日踏んでいくはずの大源太山、三角山も背後に高くなってきた。 明日の天候は怪しげではあるが、最低あの二峰だけでも登っておきたい。 16:10 平標山の家(1,650m)到着!! 夕日に照らされた平標山の家にようやく辿り着いた!! 谷川岳から本当に長い長い縦走だった。でもこの達成感、充実感のために頑張れる! |
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仙ノ倉から平標にかけての緩やかな稜線がよく見える | 水量豊富な仙平清水。気付けば水の残量が乏しくなっていたこともあって、本当にオアシスのように感じた! |
この時既に平標山の家でも相当強い風が吹いてきていた。 小屋の方が作業されている発電のため?の風車も勢い良く回っている。 作業中の方にお声かけしたうえで、素泊まりの受付のために小屋へ入る。 |
谷川岳出発当初、水は合計2L背負っていたが、小屋到着時の残量は僅かだった。 この日は途中までだいぶ気温が上がったことと、後半の激しいアップダウンで想定以上に減ったようだ。 こちらでは水晶豊富でずっと水は出しっぱなしなので無料。主脈を越えてきた身には本当に有り難い水場だった。 |
平標山の家。平標側が母屋、南側が自分が宿泊することになる避難小屋棟。小屋入り口はその間にある。 | 今夜素泊まりするのは自分だけということで貸切となった避難小屋棟。一人で泊まると相当広い。 |
母屋側に入ると小屋の女将さんにご対応いただきました。 避難小屋での素泊まりなので、宿泊料金は2,000円と格安で有難かった。 自分が受付を済ませた時点では宿泊客は誰も居られなかったようだが、この後続々と数人の方が到着されることになる。 宿帳には翌日の予定を書き込むようになっていた。 天候がもつのを前提に三国峠までと書き込んでおいたが、行程を短縮する可能性があることも伝えておく。 受付を済ませるのと同時に買い物も。 平標と仙ノ倉のバッジがあったが、ちょっと迷ってこの時は仙ノ倉のみ購入した。 でも結局両方とも欲しくなって後ほど平標のバッジも購入した。 平標山の家は比較的築年数が新しいようで、避難小屋もけっこうきれいだった。 谷川岳肩ノ小屋では満室だったのだが、こちらではなんと自分だけの貸し切りだった! それはともかく小屋に到着してからも忙しかった。 手早く身の回りを整えてから、暗くなる前に小屋の周辺の散策を行っておく。 |
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平標山の家から仙ノ倉と平標を見上げる | |
辛うじて日が沈む直前に夕焼けの二峰を眺めることが出来た。 ここから見る主脈は穏やかな部分だけだが、長かった縦走の余韻を心ゆくまで楽しんだ。 なお三国峠へ向かう県境尾根登山道の続きはこのテラスの南側から伸びている。 でも谷川岳から平標山までの森林限界を越えている肝心な区間は今日のうちに踏破出来た。 出来れば明日も予定どおりに三国峠まで達してから下山したいが、この頃に入手した明日の予報は曇りのち雨…。 曇りでもせめて高曇りであれば稜線歩きを続けたいが、どのルートで下山するかは明日朝決めることにする。 自分より少し遅れてご夫婦が到着されたが、昨日肩ノ小屋に居られた方々だった。 この時、主脈上で自分のかなり後方で終始歩かれていた方々と分かった。 共に長大な主脈縦走を乗り越えてきたことで、小屋の前で暫し山談義を交わした。 そして肩ノ小屋で受け取っていたが食べずに残ってしまったからと、なんと自炊の自分にお弁当を下さった。 このあと用意していたスパゲティを作るつもりだったが、お言葉に甘えて有り難く頂戴いたしました。 肩ノ小屋のお弁当は巨大なおにぎりが2個入っていて、それだけでほぼ満腹になった! この場をお借りして改めてお礼申し上げます。 このあとさらに数人の方が到着され、通路を挟んで向かい側の母屋のほうはけっこう賑やかになっていた。 一方避難小屋棟の自分はテント泊と同様にウールやダウンなどの防寒着に着替え、マットとシュラフで寝床の準備。 その後でランタンとヘッドランプの灯りで夕食をとる。 先程いただいたおにぎりに加えてコーンスープなど温かいものを食べてようやく一心地ついた。 避難小屋は貸切状態だったので、山ラジオを遠慮なく使うことが出来た。 ラジオの天気予報では、先日終わったばかりのつまらない総選挙のニュースや、接近中の台風の様子を伝えていた。 なお避難小屋の南側の一角はトイレになっており便利だった。 逆に母屋の小屋泊まりの方々のほうがトイレから遠い。 明日はどの行程を選ぶにしても昼までには下山出来るので、4時30分起床、6時出発とした。 宵のうちから既に外ではかなり風が強くなってきており、避難小屋の窓枠がガタガタ揺れるくらいになっていた。 テント泊に比べると、頑丈な建物の中で眠れる安心感はとてつもなく大きいものだった。 夕方まで順調な縦走を後押ししてくれた好天だったが、天候は明らかに下り坂に向いつつあるようだった。 耳栓をしていても風の音が聞こえるくらいだったからか、縦走で疲れているはずなのにやや寝つきが悪かった。 ようやく21時過ぎに寝付けたように思う。長くて大変だったが、本当に最高に充実した主脈縦走の一日だった。 |
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「谷川連峰主脈縦走・平標山の家から三角山を経て浅貝へ下山」へ続きます。 |
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行程断面図です |