「天下台山から西部御津山脈縦走」 11年12月 4日(日)


国土地理院地形図
 : 25000分の1 「相生」

 〜 はじめに 〜

 天下台山は兵庫100山の一つでもあり、以前から興味を持っていました。
幾つものコースがあるのですが、その中でも近年に南の御津山脈縦走路とルートが
繋がっていることを知って、これはぜひ併せて歩いてみたい!ということで
早速踏破することにしました。

 今回のルートを歩くにあたって、【とんび岩通信】さんがたいへん参考になりました。
この山域を歩かれる場合には特に見逃せないと思います。

 天下台山の数あるルートの中から今回は北尾根を選択。天下台山からは一路南へ。
雄鷹台山でこれまた未踏の御津山脈縦走路と合流。縦走路最西端の柏公園を
目指します。歩行距離は約8kmと短めではありますが、単に数字では計れない
タフな行程となりました。

 下山口にあたる柏公園に予め自転車を置いた上で、登山口である岩屋谷公園の
駐車場に車を停めておきます。両登山口間は約10km離れています。

 駐車場は十数台は停められるくらいの広い駐車場ですが、そこに至るまでの
集落の中の道は分かりづらいです。予め予習していても地元の方に道を尋ねる
必要がありました。駐車場は川よりも西側にあることを念頭に置くと良いと思います。








 7:12 岩屋谷公園駐車場出発

 駐車場からは既に北尾根が西側に見えているが、登山口は北尾根の末端の
墓地にある。駐車場から始まる小道を北へ進んでいく。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)



 天下台山の山頂周辺を除いて、今回歩いたのは概ね細い踏み跡程度の
トラックです。天下台山には公設のメジャーなコースもありますが、
今回は選択していません。

 到着地の柏公園に自転車をデポ、その後に岩屋谷公園に向かい駐車しました。
どちらに自転車を置いても登り坂はあるので、その時の気分で選んでも良いかな
と思いました。

天下台山以南は特に不明瞭なところも見受けられますので、
この行程は地形図及びコンパスによる読図は必須と思われます。


 7:14 岩屋谷公園付近の墓地にある北尾根登山口

 駐車場からはすぐに登山口にあたる墓地に到着。小さな道標も設置されており
意外と分かりやすかった。

 墓地から始まる北尾根は明確な切り開きのあるルートだった。
「ふるさと兵庫100山(神戸新聞総合出版センター刊)」で紹介されている
岩屋谷公園から谷沿いに登るメジャーなルートとは違い、北尾根はややマイナーと
捉えていた自分の予想は序盤に限っては外れた感があった。

 最初の目標である、送電線が通過する160m+ピークまでは傾斜も緩やかで、
今日の行程の中で最も穏やかな?区間となった。




 7:27 107mピーク

 地形図で標高点が描かれている割には、ごく僅かに起伏が見られる程度。
何気に歩いていると普通に通過してしまうようなところだった。
行く手には送電線鉄塔が見えてくる。




 7:39 送電線鉄塔通過

 この辺りまで登ってくると、周辺の景観もだいぶ開けてくる。
 古池水源地、烏帽子古墳まで200mの道標があったが今回は割愛した。
墓地からの歩き始めは明瞭なトラックだと思ったが、この辺りからブッシュが目立ち始める。








 7:45 160m+ピーク

 送電線の下をくぐって間もなく160m+ピークに差し掛かる。
南寄りが若干標高が高いようだが、基本的に地形図どおりにテーブル状のピークだ。
行く手にはこの後に登る253mピークがどっしりと構えているのが見える。
このピークはトラック以外は基本的に人の立ち入りを阻むブッシュに
覆われているが、ここには北尾根随一の必見スポットがあった。








とんび岩

 ピークの南東端が岩場になっており、その一角には「とんび岩」がある。
この写真の角度では分かりにくいが、後ほど南から見てみると名の由来が納得出来る岩だった。

 岩場からは東尾根と、間の谷あいには岩谷池、写真では写っていないが、車を停めている岩屋谷公園も見える。
このとんび岩でゆっくり過ごしたいと思ったものだが、後の行程も楽しんでみたいという思いが勝った。
岩場で写真撮影などをして、しばしの滞在時間を過ごしていくことにする。
眺めが良くて高度感もある岩場は居心地が良く、朝日に照らされてとても暖かい。




 8:02 160m+ピーク付近、とんび岩出発

 とんび岩を過ぎると今日初めてのアップダウンにかかる。
-20mのあとは253mピークに向けてしばらく緩急織り交ぜた登りが続くこととなる。




 8:04 140m+コル

 樹林に覆われた140m+コルを通過。「古墳近道→」と西を示す道標が木に括りつけられている。
先程の烏帽子古墳と同じものだろうか。西にははっきりした踏み跡は無い。

 今回の行程でもレポに載せるには多過ぎるほどの枚数を撮影している。
冗長にならないようにするためにもある程度は割愛しているがこのコルもその一つ。
結果的には無駄打ちショットといえるが、全行程を終えなければ要点が見えてこないと感じるので、
ある程度仕方がないかなと思う。と共に写真を選定することの難しさも毎回感じている。
写真を撮るのは好きでも、選定することはけっこう大仕事と思える。








とんび岩

 140m+コルから253mピークへ少し登り始めたところからはとんび岩がよく見える。
展望抜群の山ということで用意していた望遠レンズの出番が早くもやってきた。
一目見てくちばしと分かる稀有の造形だ。しかもちょっと口を開けているところに舌らしき岩まである。









253mピークへ向けて

 140m+コルからしばらくはやや急だったが、次第に傾斜は緩くなる。
周辺の木々は低いものが多く、景観を見渡すことが出来るところが多い。
先程まで居た160m+ピークと、とんび岩もどんどん低く遠くなっていく。
東側によく見える東尾根も歩きたくなってくる。
北方には龍野周辺のおなじみの山々が勢ぞろいだ。前回歩いた伊勢山はここからだとはっきりしない。
北には大きな雲が見えているが、今のところ天下台山周辺は大丈夫のようだ。








 8:23 三段岩

 253mピークまであと少しというところで、トラックはこの岩場を通過する。
写真では分かりにくいが、その名のとおりに3つの団子状の岩が連なっている。
難所でもなんでもなく、軽々通過できる。








 8:29 烏帽子岩

 253ピーク直前で烏帽子岩を示す案内板のある分岐に差し掛かり、迷わず立ち寄ってみた。
分岐からは既に見えているほど近いので寄り道して損は無い。
烏帽子岩からは相生市街が手に取るよう。その後方の山々は自分が知っているところは無いようだ。

 この角度からだと烏帽子岩というよりおにぎりの形に見えるが、右手から見ると烏帽子に見えなくもない。




 しばし烏帽子岩からの景観を楽しんだ後、分岐に戻って今度こそピークを目指す。
というか既に分岐自体が殆ど平らな地形上にあり、もうピークの上に居ると捉えても良いかもしれない。




 8:35 253mピーク

 前述の160m+ピークと同様にこちらも平らなピーク。
山頂に広場などは無く、普通にヤブを分けるトラックが貫いているのみだ。
地形図からするともう少しピークらしいピークではないかと思っていたのだが。

 数分程度小休止してから出発。この後は尾根を乗り換えるような少々複雑に見える地形を通過するようだ。








253mピークから南方の景観

 253mピークの南端辺りにまでやってくると、今後の天下台山までの区間がよく見えてくる。
天下台山と殆ど重なって見える280m+ピークまでは東側の尾根筋を登るようだ。

 この辺りのトラックはバシバシとブッシュが体に当たるが、地面が隠れるまでは生い茂っていない。
でもこれも季節によって様相が変わってくるかもしれないが、このトラックに夏に確認しに来る気は起こらない。




 8:49 ささゆり苑出合

 253mピークから下った辺りで出合に差し掛かる。
「ささゆり苑」と書かれた案内板があるので、見落とすことはないと思われる。
ささゆり苑とはここから西に下ったところにある施設のようで、
介護施設っぽい名前だと思って調べてみたら葬儀場だった。




 8:57 東部墓園出合

 しばらく歩くと再び出合。今度は東部墓園へ下ることが出来る。
事前に地形図を見ると複雑な地形だと思ったが、出合には必ず道標があるのでコース取りを誤る心配は少ないようだ。

 東部墓園出合を過ぎると再び登りが始まる。




 9:03 送電線鉄塔通過

 今日2回目の送電線鉄塔通過。鉄塔の袂からは広く北から東の景観が見渡せる。








 9:07 280m+ピーク

 前述の253mピークからは、天下台山とくっついて見えていた280m+ピークに到着。
ここで今日の行程で初めて海が見えてきた。深く内陸に切り込んだ相生湾の景観が印象的だ。
南には大きなアンテナ施設のある天下台山がようやくその全貌を見せてくれた。
地形図ではもう程近いように見えるが、まだそこそこ距離があるようだ。








280m+ピークからの下り

 280m+ピーク周辺は広い岩場が点在していて、開放感たっぷりの中を歩くことが出来る。
ヤブっぽいところ、そして展望の岩場と、北尾根だけでも盛りだくさんの行程に大満足だった。
280m+ピークからの下りは30m程度で終わり、後は天下台山山頂へ向けての最後の登りとなる。
大いに盛り上がるところだが、この後思わぬ光景を見ることになる。








 9:20 遊歩道に出た!?

 これまで見どころ満載の充実した行程を提供してくれた北尾根だが、ここでぷつりと切られてしまったような感じだった。
これまでの味わい深い細い踏み跡から一転。味気ない遊歩道に出てしまった。
山頂手前だけはちょっと物足りなさを感じてしまった。








 9:27 立見岩

 アンテナ施設のある山頂広場に到達したところで「立見岩」の案内板が目に留まる。
立って見ないと景観が見えないこともないようだが、ごく普通の岩場だった。

 立見岩に立ち寄った後で、いよいよ天下台山山頂へと向かうことにしよう。
遠く253mピーク辺りからも見えていた天下台山山頂の施設は、関電の“マイクロウェーブ用重要通信施設”というものだった。
電子レンジのことを英語でマイクロウェーブと言っていたが、自分には軍艦に乗っているレーダーを連想させるものだった。

 通信施設脇を南へ進むと、三角点、そして東へ下るトラックとの出合、
そして初めての天下台山山頂となる。そこは本当に素晴らしい山頂だった!








 9:33 天下台山山頂(321m)到着

 思わず感嘆の声を上げるほどの素晴らしい景観が目に飛び込んできた!
南北に細長いピークの南端が実質的な山頂となっており、ここからは本当に全方位を広く見渡すことが出来る。
標高こそ低いものの、兵庫100山の中でも五指に入るほどと言っても良いピークではないだろうか。
とはいうものの、この教壇のような設置物はちょっと余計な気もするが。

 天下台山の南、瀬戸内海の手前に連なる山々を、後ほど御津山脈縦走路で踏破することになる。








天下台山山頂から南東の景観

 南東方向にはこれから御津山脈縦走路に合流するまでに辿ることになるピークが連なって見える。
天下台山〜御津山脈縦走路を繋いでいる、云わばバイパスの区間は文字通り「イバラの道」となるのだが、
天下台山山頂からの景観を満喫していたこの時はまだ知る由もなかった。

 後から山頂に登ってこられた地元の方によると、この日の空気の透明度は完璧ではないが、
月のうちで上位に入るほどだということだった。自分にはこれでも充分にクリアに見えて感動ものだった。
望遠レンズに交換して、双眼鏡代わりに遠いものを見てみよう。
この日の視界は軽く50kmを越えていたと思う。








鳴門遠望 龍野市街(南から寝釈迦の上半身)

 瀬戸内海のずっと向こうには、自分はまだ行ったことがない鳴門海峡まで見えていた。
もちろん東方には同じように明石海峡大橋、六甲山系も同様だ。

 相生から龍野は近いので、大きな建物までがはっきりと見える。
寝釈迦を南側から見るのは初めてだ。








全方位に視界が開ける天下台山山頂

 登ってこられる方々皆が心ゆくまでこの景観を楽しまれている。
視界の広さは単に標高だけで決まるものではないことが実感出来る。








姫路市街と高御位山遠望 山頂広場すぐ北にある三角点

 高御位山の特徴ある山姿はすぐに分かった。同じようにかなりユニークな桶居山も見えているはずだが・・。
後で分かったことだが、高御位山系には同日に、【摩耶山さん歩】のてるみさんが団体参加で歩かれていたよう。
あちらは全行程展望抜群なので、更に楽しい山行になったことでしょう。




 自分が天下台山山頂に滞在していたのは約50分。この間に多くの方々が登ってこられて、
天下台山が人気のある山であることが実感出来る。
本当にいつまでも居たくなるところだが、この後の行程も楽しみなのでそろそろ出発しよう。








10:18 天下台山山頂出発

 山頂は南北にかなり広い範囲なので、しっかり周辺の状況を確認してから下り始める。
これからしばらく東向きに辿るトラックは岩屋谷公園から登ってきているメジャーコースなので、
丸太階段有り、ベンチ有りの非常に整備された状態だった。
歩きよいのはいいのだが、やはり整備が行き届くと少し味気ないものを感じてしまう。








10:25 遊歩道を離れる

 天下台山山頂から東へ緩やかに下る広い尾根をしばらく辿ると、
少しワイルド感のあるトラックが南に分岐する。
少しと書いたのはごく最近に、ブッシュを刈り込んだ形跡があったから。
一瞬、全線でこのような感じかなと甘く見てしまったが、もちろんそんなことはなかった。




10:28 東尾根出合

 東尾根もいずれ歩いてみたいルートだが、今日はスルーしてそのまま南へ向かう。
南には御津山脈に辿り着くまでに乗り越えなければいけないピークが高く見えてくる。
東尾根出合を過ぎると徐々に高度を下げて馬場坂に到着となる。








10:35 馬場坂(210m+コル)

 降り立った馬場坂は昔日の趣を色濃く残している峠だった。
自分はこういうところが本当に好きで、車道が通されなくて良かったと思う。
そういえば、今日の行程は途中で一回も車道に出ることがないという利点もあった。
馬場坂は西は相生市街(登山口に水子地蔵がある模様)、東は揖保川町馬場を結んでいる。

 馬場坂の南側には御津山脈へのトラックが続いているが、
とりあえず峠の散策をしていきたい。








馬場坂切通し

馬場坂地蔵

 馬場坂には切通し、そして地蔵と、峠道にあるもの全てが揃っている感がある。
切通しで有名な鎌倉で数箇所を訪れたことがあるが、馬場坂切通しは木が生い茂っていること以外は殆ど往時と姿を変えていないようだ。
ただし鎌倉よりもこちらのほうが新しい時代の遺構のようだ。

 馬場坂地蔵は真鍮か銅製のように見えるが石造のお地蔵さん。
付近には石積みの階段もあって、以前は何か建物が建っていたのだろうか。
横には下記のような聖句も置いてあった。

聖句

 過去は逐うてはならぬ 未来を待ってはならぬ ただ現在の一念だけを強く生きねばならぬ

 言っている意味は何となくだが分かるような気がする。




10:42 馬場坂出発

 ここ馬場坂までは天下台山の山域に含まれるのか、ある程度整備された感があったが、
ここからがワイルド感たっぷりの区間へと突入する。








一路、御津山脈縦走路へ

 天下台山と御津山脈は近年までそれぞれ独立した山域として個別に歩かれていたのだが、
有志の方々がこのバイパスとなるルートを拓かれ、まとめて歩けるようになったという。
このルートを実際に歩いてみて思ったが、道を拓くという労力はすごいものがあったと思うし本当に感謝したい。
行程の発着点が大きく離れがちになるからか、夏は敬遠されるからだろうか、非常にブッシュが濃くなっている。
ここを歩かれている方はさほど多くないようで、天下台山の賑わいとは対照的に一挙に人の気配はなくなる。

 馬場坂から、御津山脈縦走路上にある雄鷹台山に至るまでは、この鉄条網に沿って南進することとなる。
この行程を計画するまでは詳しくは知らなかったが、この鉄条網は株式会社ダイセル播磨工場の敷地を示すもので、
これから辿る尾根上に敷設されている。着かず離れずに始終この鉄条網と並走するので良い目印にもなるが、
鉄条網で服を引っ掛けないように気をつけなければならないし、棘があるので手すりには使いづらい。

 馬場坂から雄鷹台山まではかなりアップダウンの激しいタフな道程となるが、
大変なのは標高差だけではないということをこの後経験することになる。
まずは+60m登って270m+ピークを目指す。
振り返るとまだ天下台山が程近いところに見えていて、山頂で動いている人影まではっきり見えている。








10:50 270m+ピーク

 程ほどの傾斜の登りを経て、一つめの目標である270m+ピークに到着。
地形図どおりにそこそこ広い山頂だ。トラックの両側はびっしりとヤブに覆われて展望は無いが、
南には次の目標の野瀬奥山が誘ってくれる。

 鉄条網を貼っているダイセル播磨工場は、ロケットに関する危険物を取り扱っている事業所のようで、
このような広大な敷地と柵を必要としているようだ。山歩きの風情としては微妙なところだが、
雄鷹台山まで良い指針となってくれる存在であるのは間違いないと思う。

 ヤブを払いのけるために三脚を銃剣のように構えて振り回したりしていたこともあって、
ずっと鉄条網に沿って歩いていると、何だか国境警備隊にでもなったような気分だった。

 270m+ピークを過ぎると、-20m、そして+70mの登りが待っている。








10:59 送電線巡視路?と交差

 250m+コルを過ぎた頃、今辿っているトラックよりもよほど明瞭なトラックと交差する。
これは上空の送電線を保守するための関電巡視路と思われる。
ヤブから一旦開放されるスポットでもあり、3分程度小休止をとった。

 先程まで殆ど快晴だった天候が俄かに曇りがちになってきた。
冬にありがちな天候だが、にわか雨が降らなければよいのだが。

 小休止をとってから、再びヤブに飛び込んでいく。








野瀬奥山への登り

 野瀬奥山(328mピーク)に近づくにつれて、ヤブの勢いは増してくる。
三脚で払わないと地面が見えないことも多かった。このルートでは三脚が撮影時以外も非常に役に立った。
普通のヤブならば払いのければよいだけのことだが、やっかいなことに時々イバラも混じっていて要注意だ。
この後にはイバラの洗礼も受けることになるが、それはもう少し先。

 振り返ると段々遠くなっていく天下台山が見送ってくれて、まだ山上に居られる方々も見えている。
あの山頂は小春日和の好天の日などには本当にずっと居たいと思う山頂だ。








11:13 野瀬奥山山頂(328m)

 傾斜が緩んで平らなところに出てくると、広大な山頂を持つ野瀬奥山に到着。
山頂は樹林に覆われて展望は全く無い。山頂ではとりあえずヤブからは開放されるので、ほっと一息つけるところだ。
山頂からは微妙に進行方向を東寄りに変えるが、ここではトラックは明瞭なので誤ることはないと思う。

 野瀬奥山という山名は、西山麓の野瀬地区が由来と思われる。
この山域を再訪する時の拠点の一つとして覚えておきたい。

 野瀬奥山は、天下台山と雄鷹台山のちょうど中間辺りに位置する。
地形図で予習するとこの後が今日の行程で最も難所といえることが伝わってくる。
気合を入れてかからなければならないことは間違いない。








野瀬奥山から御津山脈の景観

 野瀬奥山の山頂から少し南へ進むと、樹林を抜けて周辺の視界が一気に開けてくる。
南方に連なるピーク群が行程後半で歩くこととなる御津山脈(西部)だ。
御津山脈越しには瀬戸内海も見えて、本当になかなかの絶景だ。

 でもこの時は景観を楽しむというよりも、果てしなく続く感のあるヤブとの戦いに気をとられていた。
地形図で見るよりも傾斜がきつく感じる下りで、足元も見えにくいので下降には注意を要する。

 次の目標は雄鷹台山と被って見える290m+ピークだ。
野瀬奥山の南に隣接していてさほど遠くはないが、ヤブのおかげで長く感じられる。
-40m、+10mのアップダウンでまだ軽い。

 このアップダウンの際にトラブル発生。地形図に目を通しながらゆっくり歩いていた僅かな隙に、
イバラにズボンの右膝周辺を引っ掛けて大きく破れてしまった。オーマイガー!!

 5年近く使っていて既に継ぎ接ぎだらけのズボンだが、今回の破き方が最も派手だった。
1年に1回、まるで決算のように破ってきて、その度に継ぎをしてきたがそろそろ限界かな・・。
山歩きのおかげか、この5年で明らかにウェストが細くなったので、
来春の山歩きシーズンからはズボンを買い換えようと思う。

 スキーにも使っている、履くのに力を要するスポーツ用のタイツを履いていたから、
右膝の皮膚をケガすることはなかったが、穴が開いたズボンのおかげで膝がすーすーと風が通る。
どうしようかなと思いつつ、とりあえずヤブから右膝を守りつつ290m+ピークを目指す。








11:33 290m+ピーク

 右膝が涼しく感じられる中、290m+ピークに到着。写真にも右膝が破れている様子が写っている。
これが六甲であれば帰路の電車で目立ちまくりだが、今日は車なのでとりあえずその心配は無い。
トラックから少し逸れるところが「奥山南展望台」となっていて、迷わず立ち寄ってみる。
周辺は木々が生い茂っていて全開とまではいかないが、南にはこれから向かう雄鷹台山がよく見えている。

 これまではとりあえず右膝をかばいながら歩いてきたが、このままでは更に破ける可能性が高い。
ということで、レインウェアのズボンの出番となった。結果的には始めからこれを履いていれば良かった。
スパッツでは防御力が不足だったことを身をもって証明した。








雄鷹台山へ向けて

 290m+ピークを過ぎると、南方には雄鷹台山が大きな山容で出迎えてくれる。
東側には御津山脈縦走路のピークの一つ、嫦峨山も奥に見えてくる。

 しかしこれからのアップダウンが今日の行程で最もハードであり、ちょっと気合を入れなければならない。
緩急織り交ざった-100mの下り、そして雄鷹台山までは+120mの詰まった等高線が待っている。

 暑がりの自分にはレインウェアのズボンは少し蒸れるが、これでヤブを安心して突破出来るようになった。
雨天ではなくてもやはり備えがあるということは大事だと改めて思う。








11:56 奥山乗越(180m+コル)

 降り立ったところは奥山乗越という180m+コル。
かつては野瀬と馬場を結んでいた峠道があったかもしれないが、今では馬場側はダイセルの社有地なので東進は出来ない。
この奥山乗越周辺は尾根が広がり、トラックはやや不明瞭となるが、
時折現れるマーキングと、コンパスの力も借りて慎重に通過した。

 この後、雄鷹台山まではやや険しい登りなので、奥山乗越で小休止を入れておく。
人里離れたコルのように思えるが、けっこう車などの音が聞こえてくるのが意外だった。
この後の縦走の状況から推測すると、おそらく七曲を疾走する車やバイクから発しているものと思われる。








雄鷹台山へ向けて

 馬場坂から始まったバイパスの区間もいよいよ終盤を迎える。
奥山乗越からしばらくは意外にも緩い傾斜で登りが始まるが、もちろん段々きつくなってくる。









 一応ルートはあるが、気がつけば逸れたところを歩いていたというような感じのところだった。
左手には常に鉄条網が付かず離れずで見えているので、大きくルートを外す心配は無い。

 振り返ると先程まで居た野瀬奥山と290m+ピークが重なって見送ってくれる。

 しばらくは急坂の奮闘が続くが、徐々に傾斜が緩くなって殆ど平坦になる。
進路は徐々に西寄りにもなって、目指す雄鷹台山山頂が近いことを感じつつ歩いていくと・・








12:22 雄鷹台山山頂(310m)到着

 ヤブに覆われた雄鷹台山山頂に到着。周囲は木々に囲まれて残念ながら展望は無い。
ここで御津山脈縦走路に合流する。ここから室津へ下山したり、嫦峨山を経由して東へ縦走するパターンも可能だ。

 この雄鷹台山が御津山脈の最高峰だが、今日の自分の行程では天下台山のほうが僅かに高い。
天下台山山頂とは全く違う雰囲気だが、これはこれで風情があると思う。
ヤブを突破して辿り着けたピークなので達成感も大きい。

 雄鷹台山には三角点があるのだが、見つけるのにちょっと一苦労だった。
三角点は山頂広場北のダイセルの標柱の脇のブッシュの中に隠れている。



 三角点探索と写真撮影を一通り済ませてから、軽く昼食のパンを食べる。
食べながら地形図を眺めるが、この後の御津山脈縦走路の西部は大きな登りは無いが、
地味にアップダウンを繰り返すようだ。どのような縦走路なのか楽しみだ。




12:40 雄鷹台山山頂出発

 雄鷹台山山頂からは西に進路をとる。一応踏み跡と道標はあるが進行方向を確認してから出発する。








西部御津山脈縦走路

 縦走路とはいっても、六甲縦走路などのメジャーなトラックとは違って野性味に溢れたトラックだった。
この時期は落ち葉が敷き詰められていて、踏み跡といえるようなものは無い状況だ。
時折はマーキングもあるが、地形図とコンパスを併用しないと道中不安になると思う。

 木々の向こうには近いところに280m+ピークが透けて見えている。
標高差は-40m、+10m。




12:48 280m+ピーク到着

 280m+ピークに到着。尾根は南へ大きく向きを変えるというイメージどおりに、
トラックも左に大きく曲がる。ピーク自体は木々に覆われて展望は無いが、
少し下ったところからは海も見えてくるようになる。
日差しが出てきて暖かいこともあって、ここで再び10分程度小休止をとる。








室津の景観

 280m+ピークから南へ少し下ったところでは、周囲の景観が広く開けてくる。
海に突き出た室津の景観が印象的だ。自分にとって室津はお気に入りの情緒溢れる港町で、機会がある毎に何度か訪れている。
手前に見えているのは大浦で、ここにも登山口があるようだ。
御津山脈縦走路は瀬戸内海側では貴重な自然豊富な海岸美も楽しめる稀有の縦走路でもあった。
空気の澄んだ冬の日に歩かれることをお薦めしたい。

ところで天候のほうは、野瀬奥山周辺では曇りがちになっていたが、晴れたり曇ったりになってきた。
初めての御津山脈縦走路はどうやら冬の日差しが期待出来そうだ。






御津山脈縦走路のピーク群

 280m+ピークから236mピークにかけては、緩やかに下りながら南から西寄りにカーブする。
一応トラックは踏み跡を追えるくらいには整備されているが、今後歩く尾根の形状をイメージしておくと心丈夫に縦走を楽しめる。
しばしばヤブっぽいところも通過するので、丈夫なレインウェアのズボンが非常に役に立った。








13:18 236mピーク

 尾根の僅かな盛り上がりという感じの236mを通過。
ピークから少しだけ西に進んだところからは、
西部御津山脈の中でも目立つ存在の270m+ピークが大きく見えてくる。








13:34 220m+コル

 殆ど標高に変化のない尾根がしばらく続いたところで、四差路になっている出合に差し掛かる。
御津山脈縦走路と交差しているのは野瀬と大浦とを結んでいるルートで、縦走路と同じくヤブっぽいトラックが南北に下っていっている。
現地には表記は無いがこのルートは「女郎街道」といわれていたようだ。
かつて相生のドックに入った船の船員達が、室津にあった遊郭に向かう際に歩いた道だという。
今日の長閑な室津しか見ていない自分には想像するのが難しいが、かつては本当に賑わっていた時代があったことを伺わせる。
また、その頃には七曲の道路は大浦が終点であったようで、この女郎街道が最短ルートだったことになる。
当時の男性は苦労していたようだが、今なら気軽に神戸駅で降りて・・(咳)
 この一応は全年齢のHPの趣旨からは逸れてしまいそうなので、とりあえず縦走を継続しよう。








270m+ピーク手前から雄鷹台山方面を振り返る

 270m+ピークまでは50mほどの登りとなるが、周辺の景観も眺めることが出来てなかなか楽しい区間だった。
段々遠くなる雄鷹台山と、ちょうど日が翳った嫦峨山が見送ってくれる。

 まもなく到着する270m+ピークは南北に細長く、その横から乗り上げる形になる。
御津山脈縦走路はピークの南側に続いていくこととなる。








13:45 270m+ピーク

 樹林に覆われた270m+ピークに到着。
トラックはピーク上では明確な切り開きとなっていて、地形図どおりに南へ緩やかに進路を変えていく。
270m+ピークは西部御津山脈のほぼ中間付近にあたり、この後はほぼ一貫して下りが続くとみてよい区間となる。
次に目指すのはバナナの形のような細長い273mピークだ。








御津山脈最西端へ

 270m+ピークを過ぎると、岩屋谷公園から続く長かった縦走にも遂に終わりが見えてくる。
正面には273mピーク。右奥には五六見山が見えるが、今日の行程ではスルーすることになる。
左奥には万葉岬で、夕景の撮影に行ったことがあるところだ。
この頃には早くも西に傾いてきた日差しの下、残り所要時間を計りながらの縦走となった。
基本的に自分が縦走したくなるのは日が短い時期になってしまうのだが、
理想的には冬を除いては4月、5月頃が暑さを避けつつ長く縦走するには好適と思う。








14:01 273mピーク

 緩やかな尾根の中で僅かに高くなっている273mピークに到着。
ピークというよりは痩せ尾根の一端といった感じのところだが、一応展望所として整備されているようで、
南側の景観がそこそこ広く見渡せるようになっている。ここで下山前最後となる5分程度の小休止をとる。
あまり時間的に余裕が無いが、せっかくなので周囲の景観を楽しんでいきたい。








273mピークから瀬戸内海の景観

 海の眺めを楽しめる西部御津山脈の魅力を存分に味わえるピークだった。
海際を歩けるトラックというのは近隣にはあまり無いので、御津山脈縦走路はとても貴重な存在と思う。








 しばらく展望を楽しんでから、273mピークを出発。
この後、五六見山南山腹まで20mくらいの登り返しがあるようだ。

 273mピークを出発して直後、「山彦台」と名付けられているところを通過。
北側が少し景観が開けていて、北方に遠くなった天下台山が見える。
あの天下台山の北尾根から歩いてきたことを思えば、とても達成感が湧いてくる光景だった。








五六見山を右手に見ながら西進

 時計を気にしながらの行程となったため、今回は時間的に立ち寄ることは難しそうだ。
ここから見ると五六見山は甲山と似たような山容となっている。








14:16 230m+コル

 273mピークと五六見山の間にある230m+コルを通過。
コルには「瞑想の撓」と書かれた案内板がぶら下がっているが、瞑想するには今日はちょっと寒い。
これまでのコルにはほぼ必ず峠道があったが、ここでは深いヤブに囲まれているのみだった。








五六見山南山腹にて

 瞑想の撓を過ぎると、五六見山の南山腹に差し掛かる。
撓からの登りは20m程度だが、その途中からは今日の行程の広い範囲を見渡すことが出来た。
午前中に全方位の景観を楽しめた天下台山まで見えて、タフな縦走の達成感と余韻に浸る終盤となった。








14:23 五六見山南山腹の出合

 そろそろ五六見山のピークの南側に差し掛かったと思われる頃、ブッシュに埋もれた出合に到着。
現地表記は仏が台山となっているが、通称といわれる五六見山で記述することにする。
ここから五六見山までは約40mの緩い登りで近いのだが、残りの行程の所要時間を正確に読めないため、
今日のところはやはり無事に下山することを優先することにした。

 出合を過ぎて以降、2箇所で尾根を選択して降りていくことになるようだ。
下山を焦ってルートを外さないように、方向確認は怠らないようにする。
相変わらず踏み跡は薄いもののマーキングもあるので、仮に読図無しだったとしても、
観察力を研ぎ澄ませば辿れると思われるようなトラックだった。








14:33 柏第二展望台

 五六見山南の出合を過ぎてまもなく、「柏第二展望台」と名付けられた展望スポットに到着する。
展望台からは室津周辺の変化に富んだ海岸線が手に取るよう。
今まで車では何度となく通ったところだが、このように見下ろすのは初めてであり、
身近なところではあってもとても新鮮な気持ちだった。

 この後、尾根は2方向に別れるが、トラックは西側へ伸びる尾根に乗った。








14:44 186mピーク

 西に延びる尾根の行き着いた先は186mピーク。
ここで縦走尾根は南へ90度方向転換する。トラックも全く見通しの効かないピーク上で緩やかに南へカーブを描いている。








万葉岬が正面に

 186mピークを過ぎると南には万葉岬と、それに被るように150m+ピークが見えている。
天下台山と違って地形図には何の表記もないが、150m+ピークには大きなアンテナが見えている。
ここから150m+ピークまでは-40mの下り、+10mの登りとなる。
この10mの登りが今日の行程で最後の登りだ。








14:50 150m+ピーク

 ピークの西側が広くアンテナ施設になっている150m+ピークに到着。
このピークが今日の行程で最後のピークだ。
金網の中には天下台山山頂で見かけたのと同じマイクロウェーブ用重要通信施設が相生湾に向けて立っている。
金網越しだが相生湾の景観も眺めることが出来る。

 ここまでは比較的緩やかな行程が続いたが、このピークを最後にして
いよいよトラックは下山にかかる。ピークの南斜面は比較的等高線が詰まっていて、
逆向きに歩くと序盤からきつい登りとなる。いずれこの縦走路は改めて東進してみたいと思う。








150m+ピーク南斜面の展望スポット

 150m+ピークから少し下ったところでは思いがけずまた展望が開けていた。
正面には万葉岬のある半島と、それに向かう車道が山肌にあって、
走っている車もはっきりと眺められる。

 半島のことを万葉岬と通称しているが、車で岬まで行けるわけではない。
遊歩道のある眺めの良い公園と、自分は泊まったことはないが同名のリゾートホテルがある。

 最後の展望を楽しんだ後は、見通しの効かない山肌を駆け下っていく。
調子良く下っていくと、不意に前方に単独男性の方が居られてびっくりした。
クマ鈴(イノシシ避けにもと思って付けている)を鳴らしつつ軽快に駆け下ってくる自分に先に気付かれて、
道を譲るために待っていて下さったようで恐縮です。

 天下台山以南で他の方と出会ったのはこの時が最初で最後だった。




 トラックは万葉岬を目掛けて降下していき、県道の擁壁上に行き当たった後、少し東へ道路と並走する。








15:03 柏公園登山口到着

 岩屋谷公園から所要約8時間。既に日が翳って肌寒い柏公園の登山口に降り立った。
想像以上に見どころ満載、そしてタフな縦走を終えて、本当に達成感は抜群だった。

 柏公園は県道(旧浜国道)のカーブに沿うようにある小さな公園で数台は駐車可能だ。
ここを起点として御津山脈を縦走するプランも考えられる。
公園には案内板もあるが、御津町、及び室津の一般的な観光案内に関するもので、御津山脈縦走路についての情報は無い。

 柏公園で山装備を解き、デポしてあった自転車の準備をする。








15:17 柏公園登山口出発

 準備を整えて柏公園を出発。岩屋谷公園までは長い道のりだ。
休日の県道はドライブやツーリングで交通量はけっこう多いので要注意。

 自転車を漕いでいると、相生湾も広く感じられる道程だった。








16:08 岩屋谷公園駐車場到着

 ちょっと道を間違えながらも、天下台山と北尾根を目印にして岩屋谷公園に到着。
柏公園からの所要時間は約50分だった。
ヘッドライトの用意はしていたが、目論見どおり明るいうちに出発地に戻ることが出来た。

 天下台山山頂とその周辺では多くのハイカーと出会ったが、広い駐車場には自分の車しか停まっていなかった。
今日の行程は情報は収集したものの、未踏のトラックだったこともあって下山を急いだ感があったが、
結果としては日没までの余裕を持って行程を終了させることが出来た。

 自転車を漕いだ県道は神姫バスも走っており、時刻表に合わせることが出来れば
より山行に重点を置くことも可能かもしれない。








 〜 終わりに 〜

 天下台山、そして御津山脈縦走路と、少々欲張り過ぎた感はありましたが、
とても充実した中身の濃い一日となりました。

 両山域ともいろんなコースバリエーションが可能なので、これからも夏以外に時折歩いてみたいと思います。








行程断面図です



柏公園〜岩屋谷公園間は10.5kmのサイクリングで戻りました。

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