「明神山・T字尾根からVキレット周回」 2014年11月23日(日) |
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国土地理院地形図 : 25000分の1 「寺前」 〜 はじめに 〜 この山行記録を作成している時点で裏明神の大半のルートは踏破出来ていますが、 中でも尾切れ(Vキレット)周辺は読図、ルートファインディング、そして高度感ある岩稜帯通過と あらゆる面において難易度が高いと認識しています。 山行記録にはまとめていませんが、この行程に先だって明神山に向かって登りで通過することを試みています。 しかし尾切れ東峰を過ぎてからルートファインディング出来ずに撤退を決めた経緯があります。 日野家さんからのアドバイスを踏まえたうえ、下り方向で尾切れを通過する行程を組んで遂に実行しました。 日野家さんを見習って、今回は大キレット通過以来となるヘルメットを装備したうえ、緊急用のザイルまでザックに入れて挑んでいます。 Vキレット登山口前は車道が広がっており、駐車するには適地となっています。 下山後の利便も考えて、ここに車を置いておきます。 6:52 Vキレットルート登山口(220m+)出発 明神湖東岸に沿う道路を北上し、T字尾根登山口へ向かう。 |
行程概要 ![]() T字尾根、尾切れ(Vキレット)とも高度感ある岩稜帯通過となります。 裏明神の他のルート以上に滑落、道迷いなど多くのリスクがあるバリエーションルートと感じます。 安全対策を万全に自己責任の原則を踏まえて入山ください。 |
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6:59 T字尾根ルート登山口(210m+) 前回、北方稜線周回の下山地となったT字尾根登山口より登山開始。 T字尾根までは激登りの連続となるが、登山口のところは特に急傾斜となっている。 |
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急坂の尾根に乗る 登山口からすぐに尾根に乗り、あとはただひたすら登っていく。 激登りの連続を裏付けるかのように、すぐに暑くなって一枚上着を減らす。 時折、湖岸を通り抜ける車の走行音を聞きながらの登りとなる。 |
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あっという間に明神湖を見下ろすように 激登りなので短い時間で標高を稼げる。 木々の間からは明神湖が見え始め、尾根の傾斜を実感出来る光景が広がってくる。 南隣の尾根上には下山で通過する尾切れもよく見える。 前回の下り時と同じく、T字尾根の核心部の少し下で小休止をとる。 |
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7:50 岩稜帯へ突入する 最初の激登りを終える頃、いよいよT字尾根を象徴する岩稜帯へ入っていく。 写真では急傾斜が協調されるが、実際に登りで通過するのはそれ程難しくはないと感じる。 手掛かり、足掛かりは豊富にあるので、殆どロープに頼る必要もなかった。 |
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裏明神最西端の光景が広がるT字尾根岩稜帯 設置されているロープは劣化がかなり進んでいるので、テンションを掛けるのは危険。 明神湖の対岸にはきれいな三角錐の山(508.4m)が見えるが、今後の新たな課題となるだろうか。 |
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T字尾根核心部へ 440mの等高線が長く伸びるT字尾根の肩に乗った。 ここからが待望のT字尾根の核心部というべき、痩せた岩稜歩きとなる! ちょうど朝日が昇ってきて、「ダイヤモンド西の小明神」というような光景を目にして否応なしにテンションが上がる。 基本的に滑りにくい岩質の岩稜上を辿るが、一歩誤ると即滑落という重大な結果を招くので気は抜けない。 |
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幻想的な光景が広がるT字尾根 前回は曇天と寒風のため足早に通過したが、今回はじっくりとT字尾根を満喫していきたい。 正面には頂が輝く西の小明神。朝日に照らされる岩稜帯は美しかった。 |
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北方稜線をはじめ、周囲の景観を広く楽しみながら岩稜をゆっくり通過 |
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次第に朝日が広く当たり始めるT字尾根 北方稜線にかけても紅葉が未だ最盛期のように見える。 |
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T字尾根の由来となった岩稜の派生 一段低いところに天狗の鼻のように突き出た支稜があるが、普通に歩いて降りられる傾斜ではない。 T字尾根の核心部はここで終わりとなるので、岩稜上で小休止をとって少しでも長く滞在した。 好天にも恵まれ、本当に良い時間を過ごすことが出来た。 |
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8:50 T字尾根出発 T字尾根は1時間近い時間をとって満喫出来た。 しかし今回の行程は未踏区間のある尾切れルートを残しているので、まだまだ気を抜くことは出来ない。 というわけで先を急ぐことにしよう。まずは意外に近く見える西の小明神へ向かう。 |
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8:58 オブジェの分岐(480m+) 登山口から辿ってきたT字尾根は、ここで尾切れルートのある南隣の尾根と合流する。 今回の行程の目的だけを考えると、ここから尾切れへ向かって下り始めても良いのだが、それでは行程的に物足りないだろう。 |
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西の小明神へ向かって激登り | 眼下のT字尾根上を通過する人々が見える (後で判るのだが、山ちゃんさん達のパーティーで後ほど出会うことになる) |
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9:13 西の小明神(556m) 一旦はここを折り返し地点にしようかとも考えていたが、やはりそれでも行程的に物足りない。 結局明神山までピストンすることにした。この区間はもう何度も歩いているので、ペースを上げて先を急ぐ。 |
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9:47 明神山山頂(667.78m)到着 西の小明神から約30分で明神山山頂に到着。 まだ誰も登ってきておらず、清々しい秋晴れで心地良い山頂だった。 しかし尾切れ通過という大きな課題が残っているので、とって返すように3分程度の滞在で山頂を出発。 西の小明神へ戻っていく途中の樹林帯にて、先述の【かみかわ登山日和】の山ちゃんさん達のパーティーと出会った! 山ちゃんさん方も毎年この時期に裏明神を満喫されていて、同山域で2度目の出会いとなった。 短い時間ではありましたが貴重な出会いとなりました♪ 山中での一期一会。皆さん方の山行の思い出の一端に加われたことは光栄に思います。 |
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静かな単独行に戻って、改めて西の小明神へと引き返していく |
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10:25 お座敷岩で小休止 ここでは何となく小休止したくなってしまう。 10:32 西の小明神(556m) 再びの激登りを経て西の小明神まで戻った。 ここからは同じ尾根上を西方へ下っていく。下り続けると以前にも行き当たった絶壁に辿り着くことになるが・・。 山ちゃんさんや日野家さんからのアドバイスにより、絶壁の少し東で尾根を外すルートがあることを再確認。 果たして絶壁の少し手前で“分岐”を難なく発見。以前は全く気付かなかったが。 |
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10:50 西の小明神西方で絶壁に突き当たる 尾切れへの正しいルートを確認したが、分岐の位置関係をはっきりさせておきたかったので一応絶壁にも立ち寄ってみる。 本当に先述の分岐から僅かの距離だった。 絶壁の向こうには以前に眺めたのと同様の尾切れの光景が広がる。 同じ尾根上から見下ろしているので、キレットとなっているところはここからは見えない。 絶壁から尾切れまで距離的には大したことはないが、この間が最後まで残った未踏区間だ。 今度こそ道誤りやルートを見失わないよう、集中してルートファインディングしていきたい。 |
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10:54 絶壁の少し東側の分岐より南側斜面へ下る 絶壁から僅かに東側へ引き返し、いよいよ未踏区間へと突入する。 山腹には明瞭なルートが下っていて、マーキングも目立つように続いている。 |
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少し下ってから絶壁の岩場の基部を迂回していく 絶壁を避けて尾根上へ回帰していくルートの意図が分かって踏破を確信した。 |
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絶壁基部をトラバースするようにして尾根へ戻った 周囲はガレ場のようになっており、見上げると絶壁を無事に回避したことが分かる。 ここからは拍子抜けするほど普通の樹林帯の尾根に戻り、歩きやすい下りとなった。 |
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偵察行にて撤退地点となった尾切れ東峰が近づいてくる | 尾切れ東峰(398m)の北斜面を巻く |
西の小明神から続く尾根を下って、380mコルへ降り立つ。 地形図上では398の数字が重なって、地形が分かり辛くなっているところだ。 尾切れ東峰の東端は、またまた切り立った岩壁になっており、ここでも尾根を外す必要がある。 これが登り方向で歩いた際にルートを見い出せなかった大きな要因だったのだが、下り方向では比較的容易にルートを辿ることが出来た。 岩壁に突き当たると、一旦北側山腹へと迂回する。 柔らかい土のためにやや歩きづらいところではあるが難しくはない。 迂回地点からは北隣にあるT字尾根がよく見える。 |
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11:17 尾切れ東峰の少し東側に北斜面から乗り上げ、南側斜面に続く踏破済のルートを確認 最後は激登りを経て、岩壁を迂回し尾切れ東峰に乗り上げた。 偵察行を通じてここまでは来ているので、これをもって最後まで未踏だった区間を無事に踏破出来たことになる! これまでの北側斜面の迂回路とは逆の南斜面に尾切れ西峰へ向かうルートがある。 西峰へ向かう前にとりあえず未踏区間踏破の達成感を味わいつつ、東峰での時間を過ごしていきたい。 ルートが尾根上を交差する地点より僅かに東へ進むと、前述の登降不可能な岩壁の上に出る。 |
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尾切れ東峰東端の岩壁から西の小明神方面を見上げる 初めてあの絶壁に行き当たった時から2年。僅かな距離ではあるが踏破まで長かった。 山ちゃんさん、日野家さんからのアドバイスのおかげではあるけど、踏破の達成感に包まれて絶壁を見上げる。 続いてルートが尾根上を交差する“峠”を越えて、尾切れ東峰(398m)を踏んでおこう。 峠からは僅かに登るだけで難しいところはない。 |
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11:23 尾切れ東峰(398m) 大展望が広がる尾切れ東峰に到着。周囲は絶壁なので高度感は抜群! すぐ西側にはVキレットを挟んで、尾切れ西峰が人を寄せ付けなさそうな威容を魅せてくれる。 地形図には西峰に標高点が書かれていないが、390mの閉じた等高線が描かれているのでほぼ同じ標高だろう。 |
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同じく尾切れ東峰からT字尾根を眺める すぐ北隣には今朝登りで通過したT字尾根が並走している。 ここから見ても急坂の尾根であることが一目瞭然。残念ながらT字尾根の岩稜帯は木々に遮られる格好となって見えない。 尾切れ東峰まで辿り着いたことで未踏区間は終了となった。 しかし尾切れ西峰を過ぎるまで気の抜けない区間は続く。 そろそろ休憩地点に想定している尾切れ西峰へ向かうことにしよう。 |
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11:28 先ほど乗り上げた峠から、逆の南側山腹へ 未踏だった迂回路から道なりに続く格好でルートは南側斜面に続いている。 ルートは明瞭で注意して辿れば見失う可能性は低いだろう。 偵察行ではこの南斜面のどこかから東へ向かうルートが分岐していると想定したことが、ルートを見失って撤退する要因となった。 この付近から斜面の南東側へ下るような踏み跡があるが、少し降りたところですぐに不明瞭となるので安易に立ち入らないようにしたい。(経験済) 尾切れ東峰の南斜面をVキレットへ向かってトラバースする。 高度感ある岩場も通過するが特に難しいところはない。 |
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シダを分けるようにVキレットへ突き上げる トラバースして下げた標高を激登りで取り返す。 この山域では有志の方々によってルートが手入れされていて、そのおかげをもって自分は踏破出来ていることに感謝しつつ辿りたい。 |
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Vキレット(370m+コル) 激登りを経て東西の尾切れに挟まれたVキレット(370m+コル)に乗り上げる。 小さなコルではあるが、風が通り抜けて心地良い。 Vキレットは木々に覆われているため展望はないが、北側にはT字尾根が垣間見える。 Vキレットの西側には既に尾切れ西峰の岩壁が立ち塞がっている。 まずは岩壁南側の基部をトラバースしつつ、一段高い岩棚に乗り上げる。 |
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尾切れ西峰へ岩壁を登っていく 例にもれず尾切れ西峰にあるロープも劣化しているものが多い。 写真下側に写っているロープは先述のトラバースのためのもので、尾切れ西峰へ突き上げるためのロープも写真では分かりにくいが上方に垂れ下っている。 この岩壁は意外にも手掛かり足掛かりが豊富で、殆どロープに頼らずにフリーで登ることが出来た。 しかし仮にこの岩壁を下りで使う場合(尾切れルートを登りで通過する時)は難易度が上がると思われる。 |
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殆どフリークライミング状態で尾切れ西峰へ突き上げる 上から見るとかなり高度感があり、初めてこの岩壁の上に立った場合はここを下るのは躊躇する方が多いのではと思われる。 自分も偵察行の際は下降を断念し、尾切れ西峰の南側斜面の道なき道をトラバースして東へ進むほうを選んだ。 |
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11:49 尾切れ西峰(390m+)到着 長いロープに沿って最後の岩場をフリーで登り終えたところが尾切れ西峰。 地形図どおりに西峰東端が最高地点となっている。 西峰からは東峰、絶壁、西の小明神、そして明神山・・。今日踏破してきたルートを見通して達成感に浸ることが出来る。 それにしても見事なまでに左右対称の地形を成す東西の尾切れだが、この地形にはどんな生い立ちがあったのだろうかと考えると興味は尽きない。 東峰と同じく絶壁上の大展望に囲まれて居心地は最高! 残す行程も少なくなり、下山までの目途が立ったところでお昼に相当するやや長い休憩をとる。 なおこの山行時には右のスパッツの靴底に通すゴムが劣化の為だろうか切れてしまっていた。 気付いてから買物に行く暇がなく、ゴムが切れたままスパッツだけを装着して使用している。考えてみればスパッツの靴底に当てるゴムは完全な消耗品だ。 後日に好日山荘でゴムだけで売っていたので仕入れておいたが、時々は登山道具の状態を確認する必要がありそうだ。 12:05 尾切れ西峰出発 この先にはもう登り返しは無いが、気の抜けない下降が続く。 下山までもう1時間も掛からないだろうけど、最後まで集中して下りたい。 |
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好展望の尾根状の地形が続く尾切れ西峰 東端の最高地点からは展望を楽しみつつ緩く下っていく。両側は絶壁なので足元には注意したい。 |
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尾切れ西峰の西の肩から激下りが始まる ここからは最後の難関となる、数段に渡る長いロープ場が続く区間に入る。 眼下には紅葉に彩られた明神湖の眺めが見事だが、下降中は安全最優先で集中したい。 有志の方々によって新しく取り替えられたものもあるが、劣化しているのも混在しているので要注意。 最初の岩場は殆どロープに頼らず、三点指示で充分に対応出来た。 |
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最長のロープ場となる、ルンゼ状の南斜面の岩壁を下る このルンゼ状の地形に掛けられた激下りが特に慎重を要する。 数本のロープを束ねることによってある程度の強度が保たれているが、可能な限りは岩や木を使って下っていく。 足元に気を付けて後ろ向きになって下降していくようにする。 自分が踏破してから後になるが、有志の方々によってここも新しくロープを付け替えられたよう。 とはいえ、気を引き締めて通過しなければならないことには変わりないところだ。 長い急下降を終えると、最後の難所は一段落となる。 尾切れ西峰下部をトラバースして西側へ進んでいく。 偵察行では尾切れ西峰のロープ場を避けるため、このトラバース区間を伸ばすように東側へ強行突破した。 繰り返しになるが尾切れ西峰そのものをトラバースするルートは無い。 |
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12:30 尾切れ西峰西端の基部 ルンゼ状のところから短いトラバースを経て、尾切れ西峰西端に辿り着く。 登りでここまで来た場合、一見するとここから登っていくように思える。 しかしここから尾切れ西峰へ直接登っていくことは登攀道具無しでは不可能と思える。途中までは登れてしまうが、絶壁に阻まれてしまう。(経験済) 必ず南側に続くトラバースするルートを見出していただきたい。 |
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尾切れ西峰から尾根上を下っていく 西峰を離れるとようやくごく普通の尾根に戻って、ようやくほっと一息つける。 T字尾根に比べると幾分傾斜が緩やかだ。ルートは尾根上を外すことなく下っていく。 |
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写真では登っているように見えるが、後ろ向きに下っている。ご覧のように一部だけ急坂のところもある。 かなり下ったところで初めて尾根を外すことになるが、そのすぐ先には道路が見えた! T字尾根ルートと同様に、Vキレットルートも登山口から尾根に乗り上げるまではすぐだったのだ。 偵察行ではやや東側の山腹から尾根に取付いている。 |
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12:46 Vキレットルート登山口(220m+)到着 尾根を外してすぐにVキレットルート登山口に降り立った! 緊張感ある岩場の通過が続くという、距離は短いものの非常に中身の濃い行程だった。 抜群の達成感に包まれて山行を終える。 この後は雪彦温泉で2日間の汗を流してから帰途へ就いた。 なおこのVキレット登山口からは谷筋にもマーキングが続いている。 しかしこの谷筋を辿っていくと、奥でルートは不明瞭となる。 また谷筋から尾切れへ向かって登っていくように見えるマーキングも散見されるが、いずれも登山ルートとして確証を持つまでには至らず。 今では正規とされているルート以外にも、複数の放棄されたと同様のものがあったのだろうか。 もしくは登山目的のマーキングでない可能性も考えられるが・・。 いずれにしてもこの山域は狩猟区域にもなっているので、 登山者には無縁と思われるところへの容易な立ち入りはリスクがあると思われる。 〜 終わりに 〜 静かな山行が楽しめる裏明神の中でも、やや難易度が高くてスペクタクルな場面が続くルートです。 読図能力は必須ですし、安全に岩場を通過出来ることも必要条件となります。 安全対策を万全にとった上で、行程を組むことが肝要です。 |
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行程断面図です![]() |