06年11月13日(月) 「七種山V」 七種槍〜七種山 (逆縦走)
Mt. Nagusa-yari to Mt. Nagusa 13th. Nov / 06

国土地理院地形図:「寺前」25000分の1を参照して下さい。

 七種山から七種槍へ至るこの山域で定番の縦走は、ちょうど1年ほど前に時計回りの順路で歩いている。順路と位置づけられているのは・・

1. 退屈な林道歩きを先に済ますことが出来る。と同時に順路で最大の難所となる七種山への登りの前の準備運動にもなる。
2. 七種山から七種槍へ通じる2段構えの急坂の尾根道、そして野外活動センターから東の尾根へ通じる急坂の2箇所の難所を下りで通過することが出来る。
3. 七種槍以南の展望抜群の岩尾根歩きという最大のハイライトを最後の楽しみに持ってくることが出来る。

以上のような都合があり、七種山から七種槍へ歩かれている場合が多いようで、播州野歩記さん【七種槍から七種山】のページ内でこの向きを推奨されている。
しかし、体力的な問題は別にしてこの縦走路の真の魅力を味わうのには、七種槍から七種山へ向かって歩くほうが良いという確信を持った今日の山歩きとなった。

5:05 自宅出発
6:10 野外活動センター到着。今日の山歩きはややハードなものになるということで、スキーの時と同様程度に入念にストレッチして体をほぐしておく。

6:20 野外活動センター出発

 センターの南側、駐車場から道路を挟んですぐのところが登山口になる。
七種槍から廻る場合、すぐに山歩きが始められるのが利点の一つ目。


田口池(七種池)

 今秋一番の冷え込みのため、幻想的な光景になっていた。
微風があったので鏡にはならなかったが、歩き始めの雰囲気は上々である。
池の北岸から東へ廻り込むようにトラックが東の尾根へ続いていく。
しばしの間だが湖畔沿いを平坦で快適なトラックを歩くことが出来る。


6:30 尾根への登りにかかる

 いつまでも湖畔沿いのトラックが続けばよいが、今日最初の難関となる尾根への急坂が
いきなり始まる。尾根に辿り着くまで途切れることのない急坂である。
最初は特にゆっくりしたペースで登り始める。


 昨日の日曜日に多く歩かれたようで、真新しい足跡が多く見受けられる。
今日はこの前の地獄鎌尾根から板坂峠で難儀したクモの巣には煩わされずに
すみそうだ。しかし、この急坂は滑りやすい箇所が多く注意が必要である。

 本格的な登りが始まってまだ数分しか経っていないが、もう暑くなってきた。
上着を1枚減らして水分補給して再び登り始める。尾根まで延々と急坂が続く。
おかげで体もすぐに完璧にほぐすことが出来る。


6:58 尾根に乗った

 約30分で尾根に到達。今日最初の難関をクリア出来た。ちょうどご来光が出迎えて
くれて気持ちが晴れ晴れする。すぐ南に見えるのは地形図にある353mピーク。
現在地の標高は約350mと思われる。野外活動センターの標高は150mなので、
いきなり200mを登ったことになる。


 いきなりの急坂を登ってきたので、ここでしばらく小休止して息を整える。
前方にはこれから向かう山々が勢ぞろいしている。

 ここは順路で歩くと最後の展望地になるためか、弁当を食べた形跡が見られる。
七種の山々からゴミを一掃するつもりで用意してきたビニール袋で恒例のゴミ回収を行う。
ここを皮切りに七種山山頂に至るまで、目に付いた回収可能なゴミは全て撤去していく。


 昨年順路で歩いた時は曇りだったが、今日は朝焼けでより一層美しさが際立っている。
順路で歩くと振り返らないとこの景観を見ることが出来ない。今日は七種槍、そして七種山
へ向かって歩き続けるのである。まさしく山歩きの醍醐味といえるのではないだろうか。
同じ展望の岩尾根でも前方に七種槍を見据えて歩くと雰囲気が全然違う。
この時逆向きのほうが楽しめるのではないかと確信を持った。


 東には数日前に登った笠形山がよく見えている。
ここから見ると笠の丸と山頂はあんなに近く見えるものなのか〜。

7:09 10分程度の小休止を終えて歩き出す。

 いよいよ今日のハイライト、展望の岩尾根歩きのスタートだ。
前方にはまだ遠い七種槍。気持ちがいやが上にも高まる。
しばらくは低い雑木の茂る尾根道を緩やかに下り、鉄塔のある鞍部を通過したら
今度は緩やかに登り返す。


 一部は膝くらいまでシダが当たりながら歩くところもあるが、藪漕ぎにはならない。
思ったとおり今日はクモの巣が全く無い。これは棒切れを構えることもなく快適に
歩けそうだ。


7:25 野外活動センターを見下ろす岩場に通り掛る

 まだ朝もやが残る田口池、そして野外活動センターがまだ程近く見える。
駐車場に停めてある自分の車もよく見える。
 なおこの岩場は絶壁の上にあるので高度感抜群。スリル満点だ。


展望の岩尾根が前方に現れる

 しばらくは低い雑木の生える尾根だったが、段々と岩が目立つようになってくる。
七種槍へ至るまで小刻みにアップダウンを繰り返すが、全体的に見ればやはり登り。
この岩尾根を堪能するには七種槍へ向かって歩くほうが断然良いと思う。


鎖場を通過

 鎖の手すりが設置されている、狭い足場の岩場を通過する。
相変わらずトラックのすぐ横は絶壁だ。鎖の手すりは無いよりマシというほどの
もので、頼らないほうがいいと思う。錆び錆びになっているし、設備更新の時期は
とっくに過ぎているように見える。

 なお、この撮影場所から野外活動センターへ下る分岐があった。
ここからも野外活動センターへのアクセスが可能なのか。
ここより七種槍山頂へ至るまでエスケープルートは無い。


岩尾根をどんどん登っていく

 時々雑木の尾根にはなるが、かなり断続的に岩尾根歩きを楽しむことが出来る。
しかも好展望を楽しみながら。西側だけではなく、東側も絶壁のところが多い。
高いところ好きな自分には楽しい楽しい時間だが、高所恐怖症の方には辛い尾根
と思われることは必定だ。

 この頃より遥か後方から自分以外の鈴の音が聞こえてくるようになる。
自分はハイライトの区間は撮影のために歩行ペースが極端に落ちる。
いずれ追いつかれることになるだろう。

7:47 393.4mピーク

 何度か登り下り、そしてシダと岩尾根歩きを繰り返して、四等三角点のある
393.4mピークに到着。三角点からは雑木に囲まれて展望は無い。
ここからは七種槍が見えなくなるが、その代わりに天下台が木々の枝越しに見える。


次第に近づいてくる七種山、そして小槍

 ピーク以外は痩せ尾根の区間が長く、とても展望に恵まれている。
前方にこれから向かう山々が徐々に近づいてくるのは、なんとも心楽しいものだった。


七種薬師(薬師峯)を眺める

 地獄鎌尾根や薬師峯から南へ伸びる尾根からの景観ほど広がりは無いが、
指呼の距離に七種薬師の全貌を眺めることが出来る。写真では分かりにくいが、
七種薬師山頂の南側が伐採されたおかげで奥の空が透けて見える。

 これらの写真を撮っている間に、後方から単独男性が追いついてこられた。
これから自分と同じく七種槍、七種山、そしてなんと七種薬師まで縦走するとのこと。
七種山と七種薬師の間は1年前に倒木でたいへんな目に遭っている。それ以降
未確認なのだが、そのままの状態になっている可能性が高いだろう。
それを知っていながらも全山縦走を目指す、その男性ハイカーに感心する。


 七種薬師までということでまだまだ長いので、その方は先を急がれていた。
先に行っていただいて、遅いペースで前進を再開する。

 393.4mピークを過ぎると、前方には天下台のあるミニピークが立ちはだかる。
天下台ってこんなに高かったっけ・・、と思った。1年前に順路で1度歩いただけ
だから、記憶がおぼろげだ。まだここの標高差はさほどではなく、急坂もすぐ終わる。


天下台への急坂の途中にて

 三脚を立てても首から上しか写らないということで、けっこうな斜度があるということを
感じていただけると思う。短いが本当に急坂だ。

 前方正面には福崎の町が。そして南方はびっしりと雲海が続いている。
そういえば早朝に運転した時、山陽自動車道をくぐった辺りから加西の手前まで
ずっと霧が出ていたことが思い当たった。スキーに行く時にも時々出くわす現象だ。


8:10 天下台到着

 地形図上では何の表記も無いが、通称「天下台」へ到着。その名に相応しい
展望台になっている。田口池、野外活動センターが徐々に遠ざかっていく。
南のほうはやはり雲海に覆われている。素晴らしい景観だ。
 松の木の周囲は平らな小さい広場になっていて、休憩するには最適なところだ。



 天下台からはこれまでに辿った尾根が一望の元。
地形図を見るとここは七種槍手前までの展望の岩尾根のちょうど中間に当たる。
ここより以北は七種槍に至るまで400mを下回ることはない。


最もスリル満点なところを通過

 天下台を過ぎた辺りで次の岩場に出てくるのだが、そこは人一人がようやく通れる
くらいの狭い足場をへつることになる。足下はまさしく絶壁で身を乗り出さなくても、
充分すぎるくらいの高度感を味わうことが出来る。ここを通過する際は細心の注意が
必要だ。


 狭い崖っぷちの通過は短い距離で終わる。その後は再び岩尾根に乗り緩やかに
登っていく。幾分雑木に阻まれるところもあるが、概ね展望には恵まれた区間が続く。


8:38 小槍到着

 そこそこの緩やかな登りを経て、通称「小槍」に到着。ピークらしいピークだが、
雑木に囲まれて展望は無い。三角点も無いが、その代わりに町境を示す標柱が
立っている。小槍まで到達すれば、展望の岩尾根もクライマックスが近い。


 小槍のピークから少し歩くだけで雑木が無くなり、再び展望が広がってくる。
目前には七種槍が大きくそびえている。七種槍は東西北から見ると本当に鋭鋒に
見えるが、南から見ると幾分穏やかな様相だ。ところどころ紅葉によって彩りが
豊かになっていて、いつもよりも目を楽しませてくれる。


 小槍からは一旦少し下って登り返す。痩せ尾根にロープが設置されている。
両側は切れ落ちて本当に痩せ尾根だ。ロープに頼らなくても通れるような気が
するが、頼ったほうが楽に通れる。


小槍、七種槍をつなぐ岩尾根

 これまでもかなり長い距離の岩尾根を楽しんできたが、クライマックスまで
ご覧のような痩せ尾根が続く。岩尾根の区間の中で最も標高が高くなる区間
でもある。


 痩せ尾根でもご覧のように比較的歩きやすい。
一歩一歩進むごとにどんどん標高を稼ぎ、そして七種槍が近づいてくる。
順路では七種槍に背を向けて、どんどん下っていくことを思い起こすと、
ハイライトの区間を登りに充てるほうが良いのかもしれない。


 痩せ尾根にへばりつくように生えている木々がきれいに色づいている。



 高度感たっぷりの痩せ尾根の上からは、もう間近に迫る七種槍本体の岩壁、
そして谷の向こうには七種山のほぼ全景が見渡せる。
展望の岩尾根のフィナーレを飾るに相応しい景観だと思う。


 明神山と小明神が七種山と七種薬師(薬師峯)をつなぐ尾根の向こうに覗いている。
遠目には分からないが、あの尾根は倒木でたいへんな状態になっていることを
身をもって知っている。


 この岩場が七種槍以南の岩尾根の終点となる。
2時間近く楽しんだ岩尾根も遂に終わり。ここからは森歩きとなる。
七種槍山頂はもうすぐそこ。



9:13 七種槍山頂付近、岩尾根北端にて

 振り返ると周囲270度の景観が広がる。ここを最後にして、次は七種山山頂まで
大展望はお預けとなる。ここで小休止をして思う存分景観を楽しんでおく。

 ここからは森の中に入る。しばらく北へ進むと七種槍愛好会設置の案内板がある。

↑ 野外センターへ

☆岩尾根を通り、3.5km 約100分

自然を大切に・・・ 七種槍愛好会

 ここまで登り方向で3時間弱だから、いかに岩尾根で撮影しまくってゆっくりの
ペースだったかが分かる。

 この辺りから山頂へ向けて踏み跡が無数に現れる。
本来のトラックがどれかも分からずに、適当に登っていくと遂に七種槍山頂。


9:19 七種槍山頂 (こうじゃが峰)

 地元ではこうじゃが峰と呼ぶようで、福崎山の会設置の案内板ではそちらの名が
記載されている。しかし七種槍のほうが響きが良いので、ここではやはり七種槍
と記すことにする。

 七種槍山頂は周囲数メートルの小広場になっている。雑木に囲まれて展望は
あまり良くないが、東の笠形山へ向けてのみ展望が得られる。(座れば見えなくなる)

とりあえず行程の前半を終えたということで、ザックを下ろし休憩に入る。
いくつかゴミを拾ったが、ここは意外に少なくて嬉しい。

9:36 七種槍山頂出発

 四等三角点にタッチしていよいよ七種山へ向けて出発する。
山頂西側は前述のように踏み跡が無数にある。七種山へ続く尾根を目指して
北西にひたすら下ると次第に踏み跡が集約されてきて、スムーズに尾根道に
入ることが出来た。山頂からは結構下る。順路に歩くと七種槍へ至る登りは
隠れた難所だと思う。


七種槍、七種山間の尾根道

 七種槍以北はそれまでと打って変わってこのようなありふれた尾根道になる。
展望は全く期待できないが、ここからは思いっきり森林浴が出来る、撮影に
手間を取られずにウォーキングに集中できる、という風に気持ちを切り替えるのが
七種槍・七種山縦走を楽しむコツだと思う。


 430mピークの前後は幾分アップダウンがあるが、それ以外はほぼ平坦で
歩きやすい尾根が続く。最初は雑木林だが途中からは植林になる。
 トラックはいたって明瞭で一本道。マーキングも程よく有り、迷うことはまず無い。


10:10〜10:15 最低コル分岐

 七種槍、七種山をつなぐ尾根が最も標高を下げる辺りで分岐がある。
七種槍山頂から約200m下り、そしてこれから七種山山頂まで約300mを再び
登らなくてはならない。七種槍山頂からここまで約30分で踏破。撮影箇所が
少ないので急にペースが上がった。ここで小休止をとって、今日最大の難関に
挑むことにする。


小滝林道への下山路

 分岐からはロープが張られている急坂が西へ伸びている。
非常に急坂で、仮に登りに使ったらさぞかし大変だろう。
小滝林道まで5分と書かれている。天候急変時などにはエスケープルート
として役立つだろう。またここから下山すれば七種山への登りを回避する
ことも可能。少ない労力と時間で七種槍以南の岩尾根を楽しむことも出来る。


10:25 いよいよ急坂の始まり

 最低コル分岐からしばらく緩やかに登ると、前方に急な山肌が近づいてくる。
いよいよ七種山へ向けての長い急坂の始まり。今日最大の難関である。
六甲ならば間違いなく途切れの無い丸太階段が延々と設置されることであろう。
僅かなとっかかりを足がかりにして、どんどんと急坂を登っていく。


 ご覧のような見上げるばかりの急坂が延々と続く。
ただ一つ救いなのが、急坂が始まってすぐに植林から雑木林に切り替わること。
比較的明るい雰囲気で急坂に挑むことが出来る。


10:37 552mピーク

 第一の難関の前半が終わった。七種山への急坂は2段構えになっており、
その1段目はこの552mピークで一旦終わる。しかし、「あれ、もう着いたのか!?」
と思ったのが正直な感想。というのも1年前に順路で歩いた時の記憶では、
長い長い急坂を降りたという印象が強かったのだ。長い急坂ということで気合を
入れていたので、少々肩透かしという感じがする。

 ただ本当に急坂なので決して楽な区間ではないことを付記しておきたい。


 552mピークで90度西へ方向転換。しばらくは平坦で一息つけるが、
すぐに七種山への急坂が再び始まる。七種山が近づくにつれて、風が急に
強く吹いてくる。急坂で体が熱いが風は冷たい。

 急坂は苦しいが随所で見ごろを迎えた紅葉が目を楽しませてくれる。


10:57 七種山、七種薬師分岐到着

 ここで急坂は終わり。552mピークから数えて20分ということで、やはり思った以上に
所要時間は短かった。これで逆縦走で最難関と思っていた二段構えの急坂が終わった。
最低コルから約45分急坂を登ってきたので、とりあえずここで小休止をとる。

 1年ぶりの七種山だが、倒木の状況は全然変わっていないようだ。
皮肉なことにここの分岐は倒木が良い目印になっている。

 小休止を終えて七種山山頂へ向けて歩き出す。倒木を回り込んで左へ曲がる。
直進すると七種薬師へ向かうが、「迷いやすい」という案内板が設置されている。
1年前に経験済みだからよく知っているが、倒木の嵐でトラックがズタズタに寸断
され、不明瞭極まりない状態になっているから、よほど山に慣れた方以外は
避けたほうが絶対に無難である。快適に七種薬師へ縦走出来る日はいつ来るのだろう。


七種山への最後の登り

 前述の分岐から七種山山頂へは、緩やかだが倒木で荒れたトラックが続く。
分岐に辿り着いたからといって気を抜いてはいけない。距離にして400mほど
だが、逆縦走では最後の難所と思う。ただ、七種薬師への縦走路と決定的に
違うのは、大勢の方が歩いているおかげで、通行には支障のない状態には
なっていることだ。

 しかし、倒れ掛かっている樹が発する、軋み音がなんとも不気味だ。


11:15〜11:25 七種山山頂

 ついに七種山山頂へ到着。前述の七種薬師へ縦走中の方、そして
つなぎ岩でもう一人男性ハイカーが休憩中だった。とりあえず談笑、情報交換の後、
七種山山頂での休憩は後回しにして、まだ未踏だった見どころへ立ち寄ることにする。

 「笠岩」というユニークな形の岩が七種山山頂すぐ南にある、ということで、
山頂からこれまた荒れた雰囲気のトラックを5分程度下る。すぐに目指す
笠岩に辿り着いた。しかし・・・


11:32 笠岩

 そこには見るも無残な光景が広がっていた。笠岩が多くの倒木によってすっかり
隠されていたのである。試しに手前の木を持ってみたが、一人の力ではびくとも
しなかった。細い枝を処理したら少しはその姿を拝めるようにはなるだろうが、
あまりバキバキとやっていて近くにハチの巣でもあったらやばいし、何も道具が
無いので、手もケガをする恐れもあるかもということで倒木の撤去は断念した。


倒木の隙間に僅かに見える笠岩の一部

 ネットで見たことのある、キノコのような岩の一部を見ることが出来る・・。

 名勝「笠岩」も台風被害から1年以上手付かずとは想像すらしていなかった。
訪れる人が滅多に居ないのだろうか。笠岩の全貌を拝めるようになるのは
いつの日のことだろうか。


 せっかく山頂から立ち寄ったのに、笠岩の一部しか見ることが出来ず、
残念な思いで山頂へ登り返す。こういう時は疲れは倍増する気分である。


11:40 七種山山頂

 笠岩から戻ってみたら誰も居なかった。普通はここで昼食とするだろうが、
今日は別のところを考えているので、軽く小休止程度に留めることにする。

 とりあえずはゴミの集まりやすい山頂ということで、多くのゴミを回収する。


つなぎ岩の上で小休止

 七種山山頂よりはつなぎ岩で休憩するほうがよほど気持ちが良い。
山頂付近は台風被害から1年以上経っても雑然とした雰囲気はあまり変わらない
からだ。残念ながら多少薄雲が広がっているが、それでも大展望には変わりなく、
歩いてきたところを眺めて達成感に浸ることが出来る。

 つなぎ岩の上でも数点のゴミを回収。弘法大師がここで修行をしたという伝説の
場所なのに嘆かわしい限りだ。


つなぎ岩からの七種槍と尾根の景観

 歩いてきたところの全貌が眺められる。これは順路で歩いた時には味わえない
感覚だった。七種槍を挟んで南北に細長い尾根を眺めて、一人で達成感に浸る。


つなぎ岩から雪彦山を眺める

 今年はまだ歩いていない雪彦山。冬になる前に行けるといいのだが・・。
11:54 つなぎ岩出発

 数分間、つなぎ岩で過ごしていよいよ出発する。つなぎ岩と七種山本体の間には
ご覧のような亀裂があって、何ともいえないスリルを味わうことが出来る。
写真では広く感じるが、実際には40cmくらいだろうか。しかし落ちたらたいへんだ。

 覗きこんでみると、亀裂の底にもゴミがある。しかし残念ながら回収不可能だ。


山頂すぐ西にある分岐

 ここで左へ曲がり、いよいよ下山へかかる。今日は無数のアップダウンの連続
だったが、ここからは下り一辺倒になる。

 七種の滝から七種山山頂へ通じる主要なトラックだが、1年前と比べて倒木が
増えたような気がする。全て歩きやすいように削ったり、脇に避けたりと処理は
されているが、どんどん立ち涸れているのだろうか。


12:02 展望岩到着

 七種山山頂すぐ南にある展望抜群の岩場に辿り着く。ここでは山頂からは
見えない南面の景観が広がっている。今日はここで景観を楽しみながら
昼食を摂ることにする。


12:02 展望岩(七種山山頂南)からの景観

 多少風があるが、日差しが当たって暖かい。絶好の休憩スポットとなっている。
朝から歩いてきた尾根と七種槍を眺めながらの昼食は最高だ。昼食といっても
朝来る途中にコンビニで買ってきたオニギリ2個だけなのだが。山では不思議と
少食になる。

 朝より幾分かは霞んでいるように見えるが、でもこれだけ見通せれば上出来だ。

出発前に展望岩周辺のゴミをチェックして数点を回収。最近、山歩きしながらゴミの
回収をしていて、ゴミの分布状況が分かってきた。やはり展望地など憩いやすい所が
最も汚れやすいということが。


12:22 展望岩出発

 ここから七種の滝に至るまでは急坂の連続。下りは楽だが、とにかく急坂なので
膝への負担が気に掛かる。スキーと同様に腰と膝を落として、斜面に対して垂直に
立つようにするのを意識すると幾分楽になった。ような気がする。


12:42 七種神社前より七種の滝を見上げる

 写真だけを見たらただの岩壁にしか見えない・・。実際には滴り落ちる水音が
響いてくるだけの水量はあるのだが、とにかく滝と呼ぶには水量が少なすぎる。

 最近殆ど雨が降っていないので、七種の滝に期待などしていなかったが、
周囲の紅葉がなかなか見事だったので、これで水があればさぞかし絶好の
被写体になったであろうに残念である。

 七種神社前の境内は大きいゴミ箱があるにも関わらず、相変わらずゴミが
散在している。とりあえず片付けておいたが、この神域にゴミ箱は不要であり、
自分の出したゴミくらい持ち帰るのが常識だと思う。ここまではハイカーだけで
なく、一般の観光客も簡単に登って来ることができる。自然に入らせてもらう
からには、本当に美意識を高く持ってもらいたいものである

 水量が少ないので、七種の滝の直下には寄らずに下っていく。
トラックの脇には滝が点在していて、さながらミニ四十八滝の様相だ。
八龍滝、虹ヶ滝・・。しかしそのいずれもが水量が少なく見栄えが良くない。
そういえばこの秋は全然台風が来なかったのが気になる。
12:53 太鼓橋

 この橋を渡れば野外活動センターまで続く長い舗装路が始まる。
しかし逆縦走ならずっと緩い下りなのでまあ良しとしよう。



13:00 弁慶ののこぎり岩

 車でも通行できる舗装の林道を下っていると、次から次へと見どころが現れる。
「弁慶ののこぎり岩」と名付けられた岩を観察していて気がついたが、右下の亀裂が
のこぎりを挽いた跡のように見えることから名付けられたのであろうか。

 弁慶と来れば義経が思い浮かぶが、せっかく平家を倒して功名を立てるも、
頼朝の考えを理解できずに身を滅ぼすことになる。義経でさえ「使い捨て」に
されたのだから、まして小○チルドレンなど使い捨てどころか1回使い切りタイプ
にもならないだろう。


13:07 山門前まで降りてくると道は殆ど平坦になる。
午後の日差しが木立の間から降り注いで良い雰囲気だ。
1年前に順路で歩いた時はまだ薄暗い時にここを歩いたのである。


 太鼓橋の周辺ではまだ青葉だったが、意外なことに山門を過ぎた辺りから
紅葉は鮮やかさを増していった。普段は退屈な林道歩きもこの時期だけは
なかなか目を楽しませてくれる。
13:30 小滝林道との分岐周辺から七種山を見上げる

 この角度から見る七種山もなかなか端正な山容だ。


同じところから七種槍を見上げる

 麓から見るのと、岩尾根から見るのとではやはり迫力が全然違う。
それ程高い尾根でもないのだが、高山の雰囲気は充分だったことを
改めて実感する。


13:45 野外活動センター到着。駐車場からは鎖場辺りの岩尾根が見える

 出発してから7時間25分でスタート地点に戻ってきた。意外なことに順路で歩いた
昨年よりの所要時間よりも13分短い!?昨年のほうが休憩時間を長く取ったのか。
しかし自分撮りの撮影枚数は昨年よりも明らかに多いし、休憩時間を短くしたつもりは
ないのだが。笠岩にも寄ったし・・。
 昨年よりも体力が付いたということにしておこう。


14:00 野外活動センター出発

15:20 自宅着
 車に戻って帰り支度を済ませた後、野外活動センターへ入ってみる。きれいなトイレもあるし、七種山系の登山地図もあるので非常に有用な施設である。
登山地図でも七種槍から七種山へ向かって歩くことを薦めていた。今回初めてその向きで歩いたのだが、前方に七種槍、七種山を展望の岩尾根の上を歩きながら眺める感覚は
何物にも変え難い魅力があると思う。七種槍以北は展望なしの尾根道になるが、そこは森歩きだと割り切って考える。
 それから野外活動センターを出発してからのいきなりの急坂、そして七種山へ続く2段構えの急坂と難所が点在するが、これを念頭に入れてペース配分をすれば難なく乗り切れると思われる。
 全ての区間を歩いた後で最も難所だったと思えたのは、野外活動センターを出発してから尾根に乗るまでの急坂。これが歩き出しで体が充分に温まっていないこともあってか、
最も苦しい区間だった。七種山への急坂は中盤付近で当たるが、思ったほどではなかった。

 全行程を通じて人気のトラックということもあり、迷いそうな箇所は全く無い。マーキング類も豊富である。但し岩尾根、そして七種山山頂のつなぎ岩など足元に注意が必要な
ところがある。

 両方向から歩いた感想は、七種槍から七種山へ向かって歩くべき。これに尽きると思う。
七種山系では「地獄鎌尾根〜薬師峯〜板坂峠」の縦走と双璧だと感じた。


 ↓ 今日の行程の断面図です。

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