「薬師峰・板坂峠から塩売り戻しへ縦走」 2014年12月07日(土)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「前之庄」




 〜 はじめに 〜

 自分が本格的に山歩きを始めてまだ間もない2006年に三枝草地区を基点として、
地獄鎌尾根〜薬師峰〜板坂峠と周回しました。
読図を充分に理解しきれていなかった当時には、ややリスキーな行程だったと振り返って思います。

 薬師峰へは福崎町の野外活動センターから上がってくる登山道がメインルートの扱いです。
板坂峠へ南下する尾根はあまり人が入っておらず、下り方向で歩く場合は尾根の広がりに要注意です。

 今回は8年前とは逆に板坂峠から薬師峰へ向けて北上。そして十字峰からは未踏の西尾根へ入ります。
下山には西尾根の支尾根である“塩売り戻し”を経由するという、見どころ豊富な縦走の行程を組みました。

 8年前の記憶を辿りつつ、2014年の最後を飾るに相応しい山行となりそうです。

 山行の前に下山地点に近い中林バス停付近に自転車をデポしておきます。
自転車をデポした後で三枝草地区へ向かい、道路が広がっているところに駐車。
ここは8年前にも停めたところと記憶しています。




 6:20 三枝草地区外れの駐車地を出発

 日の出時刻は6:53。
まだ薄暗いけど板坂峠までは特に危険はないので出発する。








 行程概要 



 薬師峯周辺など一部を除いて道標無し。ルート不明瞭な個所もあります。
地形図、コンパスによる読図を行いながら歩くのに適しています。
部分的に高度感のある岩場も通過します。

 “塩売り戻し”は昔の塩売りが山からの落石に驚いて逃げ帰ったという民話?が残っています。
 6:31 三枝草東奥のお地蔵さん

 集落の外れにはお地蔵さんがあって、峠道の風情を盛り上げてくれる。
地形図ではここから破線道が始まっており、軽トラックくらいなら通れるくらいの砂利道が東へと伸びている。

 かつての峠道はやや荒れているところもあるが、概ね林道のような状態で歩きやすい。
8年前の記憶ではずっと薄暗い植林だったような気がするが、周囲は広く伐採されていて昼間ならば明るい峠越えになるだろう。
頭上には送電線が通過しているので、板坂峠までの行程の進み具合が分かる。








 6:48 板坂峠(210m+)到着

 久しぶりの板坂峠に到着。峠道は細い切通しになっていて、福崎町側に抜けたところにお地蔵さんが並んでいる。
林道工事などで無残に破壊された峠をあちこちで見てきたこともあって、往時の姿を保っている板坂峠はたいへん貴重な峠と思う。

 先日の明神峠と同じように、この板坂峠を使って周回の行程を組んでみても面白いかもしれない。




 6:56 板坂峠出発

 峠越えで暑くなったのでレイヤリング調節を済ませてから出発する。
薬師峰へ通じる尾根へは板坂峠から100m弱の標高差を登っていくことになる。

 板坂峠からの登り始めは踏み跡が拡散傾向。
マーキングは散見されるが、倒木などで以前よりもかなり荒れた印象を受ける。
但し登りであればただ高いところを目指していけば問題ない。








主尾根へ向けて登っていく途中で朝日を眺める

 登っていくにつれてルートは明瞭となり、若干展望の得られる岩場も現れる。
全然難しい岩場ではないが、一応ロープが設置されている。
但し裏明神以上に劣化が進んでいて、もはや使い物にはならないことは一目瞭然だった。

 この岩場で朝日に照らされて一気に明るくなってくる。
1年最後の山行ということもあって、特別な気分で朝日を迎えた。








 7:22 300m+地点にて主尾根に乗る

 あっけなく主尾根に乗っかった。
8年前にはもっとヤブっぽくて下りでも長く感じる記憶があったが、季節の違いにもよるのだろうか。
ここから西へ向かう359mピークも容易に辿り着けそうだが、今回は計画どおりに反時計回りの縦走を開始しよう。








薬師峰をはじめ、今日の行程の殆どを見渡せる

 主尾根を少し東へ進むといきなり展望が広がってくる。
写真では写っていないが、地獄鎌尾根、西尾根までばっちり見える。
季節こそ違うが、8年前に1度だけ眺めた景色でもやはり覚えているものだ。
南から見る薬師峰はどっしりした山容が印象的だ。

 まず最初の目標は397m三角点ピーク。
主尾根に乗ったところからの標高差はせいぜい100mほど。
397mピークに近いところは踏み跡は薄いものの、散在するマーキングも参考にしながら登っていく。








 7:47 397mピーク到着

 木々に囲まれた397mピークに到着。冬枯れのおかげで周囲の景観が透けて見える。
ここで一旦小休止をとる。
ピークより南東側の支尾根も辿れそうな雰囲気で、板坂地区から登ることも出来るのではないだろうか。




 7:56 397mピーク出発

 このピークを境に主尾根は北へ向けて方向転換。
やや急な下りで縦走を再開する。








展望広がる痩せ尾根へ!

 397mピークから僅かに下るだけで、いきなり大展望の岩尾根に出てきた。
この岩尾根歩きは今日の行程随一の見どころだったかもしれない。
一度は見ているはずの光景なのだが、やはり北向きに歩くと感覚が変わるようだ。

 少し前まで連続して歩いた明神山とはまた違う雰囲気で、七種の魅力を再認識した気がする。

 しばらく続く痩せ尾根では、大きなアップダウンも難所のようなところもない。
但し高度感のある箇所は多いので足運びは慎重に。








 8:20 410m+

 微細な支尾根が南東方向から合流してくる410m+付近を通過。
一応支尾根を観察するものの、人が立ち入った形跡は全く見られない。
地形図を見る限り等高線が詰まっているので、支尾根を辿るのは難しいと思われる。

 この辺りまで北上すると展望の岩尾根は終わり、普通の雑木尾根に戻ってしまう。








 8:30 436m標高点ピーク

 幾度かの小さなアップダウンを経て、436m標高点ピークを通過。
この後で主尾根はやや東寄りに屈曲し、そうびろ山へ続く490m+ピークへの登りが始まる。








420m+コル付近。左奥にやや近づいた薬師峰が見える。

 この後70m余りの標高差を登っていく。痩せていた主尾根が一気に広がっていく局面となる。
登りであれば高いところを目指していけばいいが、下りで南向きに歩く場合はルートを外さないよう注意が必要だ。
8年前に逆向きに歩いた時はちょっと不安になったことを覚えている。








 8:47 490m+ピーク到着

 やや東にずれたところから490m+ピークに到達。
気付けばマーキングの散在する正規のルートから少し東に逸れているところを登っていたようだ。
ここから東側へはそうびろ山(538m)へ向かうことも出来るが、それは別の機会としたい。

 397m三角点ピークからちょうど所要1時間だった。
北西側にそびえる薬師峰を見据えて5分程度小休止をとっておく。








いよいよ薬師峰へ向けてアップダウンを開始

 490m+ピークからはやや急な下りとなる。
尾根は再び痩せてくるうえに、マーキングは豊富なのでルートを外す心配はない。
行く手には薬師峰の全容が木々の向こうに透けて見えるが、
448mコルを最低点とするやや大きなアップダウンを越えなければならない。
今日の行程で最も体力を要するところだ。








 9:02 地籍図根三角点(460m+)

 急坂は長くは続かずほぼ平らになった尾根をしばらく進むと、木々が切り払われた一角に出てくる。
古城山から東山へ縦走した際にも見かけた地籍図根三角点が設置されている。
北西には薬師峰が富士山のようなきれいな三角錐の山容を魅せている。

 周囲はうっすらと白くなっているが、これは今冬初めて見る雪ではないだろうか。
短時間に僅かだけ雪が舞ったようだ。今日も十分冷え込んでいるが、冬の雪の降り具合は自分にとって毎年非常に気になる。

 それはともかく、この頃よりどんよりした曇り空となってくる。
すぐに天候が崩れることはないとみていたが、行程後半に未踏区間を残しているので晴れ間が戻ってくることが望ましいのだが。








 9:07 448mコル

 地籍図根三角点から僅かに下って448mコルを通過。
ここからは薬師峰に向けて160m余の登り返しとなる。

 部分的にはロープまで設置されているなかなかの急登ぶりだった。








 9:29 薬師峰南の分岐(560m+)

 急登をこなしてお馴染みの分岐に到着。
ここで福崎町側の野外活動センターから登ってくるルートと合流する。
この分岐をもって板坂峠経由のマイナールートは一応終わりとなる。
木に括り付けられた指導標に書いてある「マニア向き・道迷い注意」は的を得ていると思う。

 448mコルからの標高差は100mほどで、急坂といってもそれ程長くは続かない。
薬師峰山頂までの標高差はあと50mを残すのみだが、息を整える程度に小休止をとっていく。

 この分岐から薬師峰・十字峰までは何度も歩いているので詳述しない。








七種槍の雄姿

 薬師峰山頂手前にある展望地からの眺め。
七種槍を眺めるにはここが一番と思う。薬師峰山頂は周囲の木々が育って展望はイマイチとなっているためだ。








 9:41 薬師峰山頂(616m)到着

 三枝草を出発してから3時間20分で薬師峰山頂に到着。
いつものように薬師様に手を合わせてから、山頂での暫しの滞在を楽しんでいこう。

 歩いてきた主尾根を俯瞰したいのだが、見事なまでに松の木が被っている。








生垣のような雑木に囲まれた薬師峰山頂

 冬枯れで多少見通しが良くなっているのを期待したが、夏に来た時とあまり変わらなかった。




 9:48 薬師峰山頂出発

 今日は行程後半に未踏区間を残しているので、短めの滞在で出発した。








薬師峰山頂付近より明神山、地獄鎌尾根方面を眺める








10:05 十字峰南の分岐(540m+)

 ここの分岐はラウンドアバウトのようになっているので、最初はちょっと戸惑うかもしれない。




10:09 十字峰(550m+)到着

 分岐を過ぎてからすぐに十字峰に到着。
未踏区間に入る前に小休止をとっておく。








10:15 十字峰出発

 いよいよ初めての西尾根へと下っていく。
十字峰から最低コルとなる450m+コルまで約100mの下りが続く。
西尾根も最初は他のルートと同じく明瞭で不安に思うような個所は無かった。
行く手にはずっと明神山が見えていて、良い方向確認の目印となる。








10:28 450m+コル

 コルの少し手前で西尾根は緩くなり、左カーブ、右カーブとうねっていく。
コル周辺はやや深い森となり、周辺の見通しは利かない。








初めて見る地獄鎌尾根の西面

 450m+コルを過ぎて20〜30mほど登り返すと、展望が広がる岩場に差し掛かる。
東側を振り返ると鋭鋒に見える薬師峰、そして地獄鎌尾根を西から見ることが出来る。
地獄鎌尾根は西側の姿はごく普通の尾根にしか見えない。




10:39 480m+ピーク到着

 展望の岩場を過ぎるとすぐに480m+ピークに到着。
冬枯れの時期はある程度展望は得られるが、夏場なら視界は遮られるかもしれない。

 ここでちょっと脚が暑くなってきたので、防寒着代わりにしていたレインウェアのズボンを脱ぐ。
その後で今後の地形確認をしながら小休止をとる。




10:54 480m+ピーク出発

 480m+ピークからは南に方向転換。
ほぼ北に向けて支尾根も伸びているが、地形概念さえ頭に入っていれば問題にならないだろうと思う。








西尾根のほぼ全貌を見通せるようになる

 しばらく下っていくと再び岩尾根となり、主に南側の展望も広がってくる。
三枝草まで達する西尾根のスケールがよく分かる眺めだった。
今日は途中で“塩売り戻し”と呼ばれる支尾根に逸れるが、いずれは尾根の末端まで踏破してみたいものだ。








350m+ピークを視認

 480m+ピークからは約130mほどの下りが続くが、350m+ピークが目立つようになってきて下げた標高を実感出来た。
塩売り戻しの支尾根が派生する334.9mピークはまだ少し先で見えていない。








11:15 350m+ピーク

 僅かに登り返して350m+ピークを通過。南側にはようやく334.9mピークが見えた。
今日の行程終盤となる塩売り戻しは右下に見えている300m+ピークを通過するはず。
塩売り戻しを歩くために今日の行程を考えたといっても過言ではないので、
至近距離に目的地が近づいてきたことにワクワクして先へ進む。








ややシダがうるさいところもあるが、概ね快適な縦走路が続く西尾根








334.9mピークへ繋がる岩尾根を辿る

 シダの斜面を登り返すと再び岩尾根となる。
主に東側の展望が素晴らしい心地良いところだった。
ちょうどこの頃より雲が切れてきて、暖かい日差しのおかげで一気に暖かくなってきた。

 334.9mピークはもう目の前であと一登り。








11:35 334.9mピーク到着

 小広い空間のある334.9mピークに到着。
四等三角点がすぐ目に付く分かりやすいところに設置されている。
やまあそさんのレポではアンテナのあるピークということだったが、その残骸と思われるものがピークの隅に転がっていた。








意外に展望に恵まれた334.9mピーク

 木々が生い茂った外観からは想像出来ないほど、東側にはまずまずの展望が広がっている。
板坂峠から4分の3周くらい縦走してきた行程をある程度振り返ることが出来る。

 西尾根はまだまだ南へ続くが、今日はここで支尾根へ逸れることとする。




11:44 334.9mピーク出発

 西尾根を更に南下する踏み跡はすぐに目に付くが、支尾根の塩売り戻しへ向かうルートが分かり辛い。
地形図を改めて観察し、塩売り戻しへは三角点からほぼ真西へ向かうことを再確認。
明瞭なルートは見当たらないが、少しでも歩きやすそうなところを選んで山頂西側の急斜面を降りていく。








334.9mピークから急坂を下っていく

 最初は踏み跡が拡散傾向だったが、下るにつれてルートが明瞭になっていく。
途中でシダ藪も現れるが、はっきりした踏み分け道となっている。
西尾根を下り始めた時と同様に、この時も明神山が方向確認の良い目印となった。








11:56 300m+ピーク

 僅かに登り返して木々に覆われた300m+ピークに到着。
西尾根との標高差が小さいおかげで、ここからも薬師峰が木々の合間に見える。

 ここで支尾根は更に2方向に派生しているよう。
塩売り戻しへは南西へ下る尾根を辿る。
雑木で見通しは利かないので、ここでも念入りに方向確認を行う。

 しばらくは木々の間を下っていくが、まもなく下方が明るくなってきて塩売り戻し核心部に到達したことを察する。








12:02 塩売り戻しの岩稜へ突入

 目的地の岩稜に出た途端、想像以上のスケールに思わず感動してしまった。
高御位山を思い起こさせる広大な岩尾根、そして行く手には明神山。
ちょうど天候も良くなってきたことだし、しっかりと塩売り戻しを満喫しながら下っていきたい。








岩のコブをテーブル代わりにティータイムとする

 暖かい日差しに恵まれてぽかぽかと暖かく、岩尾根の居心地は最高だった。
ここでいつもより長い休憩をとっていくことにした。
暖かい紅茶とパンを用意して、展望を楽しみつつ一休みする。




12:35 ティータイムを終えて出発

 出発するのが惜しい気がするほどだったが、まだ岩尾根の先があるので重い腰を上げる。








まだまだ続く岩尾根

 高度感はそれほど強くないものの、それでも充分に痩せた岩尾根が続く。
眼下には夢前川沿いに広がる田園風景がとても良い雰囲気。








12:55 絶壁の塩売り戻しに立つ

 この支尾根での核心部と思われる絶壁となっているところへ下りてきた。
この周囲は本当に城壁のように切れ落ちていて高度感抜群!
眼下には夢前川と県道67号、そして北方には写真では分かりにくいが雪彦山まで見通すことが出来た!
時折、県道を通り掛かる車がミニカーのように見える。
自分も何度も通っている道だが、今までこの岩尾根の存在に全く気付いていなかった。

 ここはただ通り過ぎるのは惜しかったので、しばらく眺めを楽しんでいく。








まだまだ岩尾根が続く塩売り戻し

 次第に下界が近づいてくるが、まだまだ高度感ある岩尾根歩きが続く。
支尾根でありながらも、これだけ岩場が続くのは珍しいのではないだろうか。
先月の裏明神も素晴らしかったが、七種もなかなかの奥深さを持っていることを改めて認識した。




 この後ようやくといっても良いかもしれないが灌木帯に入った。
尾根を忠実に辿るのは難しく、一旦は東側山腹へと下っていく。
下ったところは山道の形跡があった。以前は山仕事に使われていたのかもしれない。








13:07 “塩売り戻し”尾根末端を確認  細い沢床を辿る 

 少しだけ山道を下ると、これまで辿ってきた塩売り戻しの支尾根末端を確認。
自分は歩きやすそうだった山腹を迂回したが、藪漕ぎが苦にならないなら尾根を忠実に辿るのも難しくないかもしれない。

 下っていく進行方向は再び藪になっているが、そのすぐ先に車道が走っていることに気付いた。
真っ直ぐ進むと藪漕ぎが必要なので、すぐ南側を流れる細い沢の沢床をつたっていく。








13:11 県道67号に出てくる

 細い沢から這い出ると県道67号の道端にひょっこり脱出。
ここが塩売り戻しの登山口となることは外見からは想像が付かない。
塩売り戻しからいきなり現実世界に戻ってきて、素晴らしかった山行が唐突に終わってしまった感があった。

 登山口に近いと推定して自転車を置いている中林口バス停は少し南へ歩いたところだ。








13:27 中林口バス停を自転車で出発

 バス停付近にデポしておいた自転車を回収。
車では走り慣れた県道だが、初めて自転車を漕いで三枝草へ向かう。








13:38 三枝草の駐車地に戻ってくる

 10分程度で車に戻ってきて、めでたく周回完了!
山装備を解いてから、今年一年の山行を慰労する意味で雪彦温泉へ向かった。
特に忙しい日々が続く12月だが、心身共にリフレッシュ出来た1日となった。




 〜 終わりに 〜

 七種山系もバリエーションに富んだ行程を組めることを改めて認識できた山行となりました。
薬師峰を含む七種三山はある程度知名度がある山ですが、山域西側は基本的に踏み跡程度といってよいルートが続きます。
地形図、コンパス片手に静かな山行を望む方にお薦めです。


 この山行をもって2014年は登り納めとなりました。
冬季は極端な雪不足にならない限りはスキーのために山行は休止となります。
2014年もレポをご覧いただきまして、ありがとうございました。

 2015年春以降に山行を再開しますので、改めてよろしくお願いいたします。








行程断面図です




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