「薬師峰・地獄鎌尾根から西尾根末端へ」 2015年11月28日(土)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「前之庄」




 〜 はじめに 〜

 地獄鎌尾根は山歩きを始めて間もない10年ほど前に一度歩いています。
この時は薬師峰を越えて板坂峠まで縦走しました。

 そしてこの山行記録の1週間前に母と親戚のかのこさんとの3人で久しぶりに地獄鎌尾根を訪れました。
(この山行では車2台を利用して、鎌尾根踏破後は福崎町側の野外活動センターへ下山しています)
しかし予想以上に重度の高所恐怖症だった母の挙動に気を取られての山行となってしまいました。
自分の読みが甘かったこともありますが、とにかく普段の単独行で再踏破するといういわば口直しが必要でした。

 また未踏のままだった西尾根南半分を併せて踏破しようということで、なんと2週続けての鎌尾根歩きとなりました。
西尾根は2014年12月に塩売り戻しへ下っているので、335mピーク以南が未踏となっていました。
西尾根についてはゴリラ岩の少し南で尾根を外し、明王池へ下山するというパターンの山行記録が数多く見受けられます。
しかし地形図を見る限り、ずっと南の三枝草まで歩きたくなりそうな尾根が続いてます。
この西尾根末端まで踏破した記録を調べると、約10年前にやまあそさんが歩かれていました。
10年の時を隔てて、西尾根末端までやまあそさんの足跡を追ってみようと思います。




 三枝草地区を通り過ぎたところの路肩が広がったところに車を停める。




 6:38 三枝草地区外れの駐車地を出発

 先週と違って朝の冷え込みはかなりのものだった。
歩き始めからもう牧場からのかぐわしい臭いが漂ってくるが、何故か自分は臭いに対して耐性があるようだ。
かぐわしいといえば蒸気機関車が通り過ぎた後のあの匂いに通じるものがあると思うのは自分だけだろうか。








 行程概要 



 赤岩(地獄鎌尾根)、十字峰、薬師峰、ゴリラ岩南の明王池下山分岐点までは
ルートは比較的明瞭で要所には道標やマーキングあり。

 明王池下山分岐点以南は踏跡不明瞭。藪っぽいところも所々あって、
読図及びルートファインディング必須。行者山から宝積院への下りでは枝分かれする支尾根を選ぶ必要あり。





1週間前にも3人で歩いた道路を北上。すぐに牧場へと辿り着く。

 1週間前は微妙な空模様だったが、今日は雲一つない快晴で完璧だ。

 牧場周辺で分岐はあっても一路北へと進めば問題なし。牛たちが見つめてくる中を歩いていく。
この時は初めて牧場で働いている方と出会いご挨拶を交わした。








 7:00 明王池(150m+) 明王池の傍にある地獄鎌尾根取付。赤地に白字の道標は健在だ。

 明王池まで来ると牧場の臭いから解放される。水鏡状態の明王池には後ほど歩く西尾根上部が写り込んでいる。

 明王池南岸の堤を東へ行き当たったところが地獄鎌尾根への取付きとなる。
尾根上に乗るまでは標高差120mくらいの激登りだが、尾根が近づくにつれて若干緩くなってくる。
この区間は紛らわしい踏み跡が錯綜しているが、歩きやすそうなところを選んでとにかく上へ向かっていけば問題ない。








 7:25 尾根に乗る

 今日の行程で最もしんどい区間ではあったが、30分弱で尾根に乗ることが出来た。
灌木が生い茂って展望は望めないが、射し込んでくる朝日が心地良い。
急登で乱れた息を整えてから出発。300m+ピークまではごく緩やかで歩きやすい尾根が続く。








 7:31 300m+ピーク  10年前に眺めて以来、初めてこの後ようやくゴリラ岩へ辿り着くことになる。

 尾根に乗ってすぐに今日一つめとなる等高線の閉じたピークに到着。
この後縦走する西尾根、そしてゴリラ岩が真横に見える。
このゴリラっぽく見える横顔は本当にそのものですごい。自分にとってはドンキーコングを思い出す。
その向こうには端正な山容の明神山。こちらは先月歩いたばかりの鹿島槍の吊尾根を想起させてくれる。








300m+ピークを過ぎると一旦下りとなる 270m+コル付近では背丈を越えるシダを分けるところもあるがごく短い距離で済む 

 300m+ピーク北側からは木々の間に十字峰や薬師峰が見え隠れする。
一部にはシダが生い茂るところもあるが概ね歩きやすい尾根が続く。








尾根の南側から330m+ピークを抱える支尾根が合流してくる

 270m+コルを過ぎると、尾根は北東へ向きを変える。
今度は南側から330m+ピークを伴う支尾根が合流してくるのを認識する。

 正面の330m+(等高線は閉じていない)まで登ると、再び尾根はほぼ真北へ向きを変える。
ここまで来るとあと少しで核心部といってもよい展望の岩尾根に到達となる。








 8:00 地獄鎌尾根核心部の岩稜へ  滑らない岩質ではあるが足運びは慎重に

 灌木帯の尾根から一転して痩せた岩稜へ突入!
斜め前方には薬師峰も見えてきて、このシチュエーションは高いところが好きな自分にはたまらない。
今年は行かずじまいの穂高の稜線が無性に歩きたくなってくる。
とはいっても最も自分好みのところはあっという間に通過してしまうのが惜しい。








尾根の行く手にこの後に通り掛かる岩壁が見えてくる 展望の岩稜帯は何度かの中断を挟んでしばらく続く

 次第に近づいてくる薬師峰や十字峰を見やりながらの岩尾根歩きが続く。
正面の十字峰の手前には大きな岩壁が見えてくる。
遠目にはロッククライミングのゲレンデのようにも見えるが、実際は三点確保も無しで簡単に登れてしまうところだ。

 なおこの山行記録を作成中にやまあそさんの同コースの記録を改めて参照すると、この地獄鎌尾根は元来「赤岩」と呼ばれていたよう。
地獄鎌尾根もちょっと名前負けするように感じるし、オリジナルの名称があるなら赤岩のほうが妥当なのかもしれない。
どちらの名で呼ぶか迷ったので、当山行記録では併用することにしました。








 8:25 鉄平石の岩壁を登る  振り返るとこれまで歩いてきた岩稜が一望と言いたいところだが、外見は普通の尾根に見えてしまう

 灌木帯と岩稜帯を繰り返して殆ど標高を上げてこなかったが、ここに来て尾根の様子は大きく変わってくる。
地獄鎌尾根(赤岩)の見どころの一つの岩壁に到着だ。
岩の表面は洗濯板のようにザラザラ、ボコボコで全く滑るものではない。
実際は写真ほど難しくなくて普通に立ったまま登れてしまうが、転倒だけはしないように足運びは慎重に。
同じく同コースの山行記録を上げられている日野さんによるとこの岩は鉄平石という。








岩壁が過ぎても展望の岩尾根はまだ続く

 約10年近くもの間、この尾根から遠ざかっていたのでさすがに詳細は忘れていた。
前述の岩壁の記憶が強くてその後すぐに十字峰に辿り着いたように覚えていたが、実際には薬師峰が真横に見えてもまだ続く。
一つ一つの岩場は小さいものでも、尾根全体で見ればやはりなかなかの歩き応えがあるように思う。








ここも写真では難しそうに写るが実際はそうでもない まるでギリシア式の円形劇場の客席を連想させる岩場。多くの尾根を抱える明神山の展望が良い 

 立て続けに小さなアトラクションが現れる感じで、色々な岩場が連続する。
もっと人気が出てもおかしくはないように思えるが、やはりアクセスが悪いこととコースバリエーションが取りにくいことが欠点だろうか。

 岩場から西には美しい山容の明神山がよく見えている。
すぐ隣にあっても明神山は対照的に登山者に人気のある山だが、裏表合わせて多くのコースバリエーションが組めるのが強みだろう。








ほぼ東には薬師峰がかなり近くに見える いつしか地獄鎌尾根も終盤。今日の行程後半で踏破する西尾根がよく見えている。

 高度感を楽しめる登山者であれば退屈する間もなく歩けてしまうはず。
でも岩壁の東側は絶壁となっているので、注意は散漫にならないように意識する。

 地獄鎌尾根(赤岩)も終盤に差し掛かるとやや急坂が連続し、そして踏み跡が拡散傾向となるがとにかく上を目指せば問題ない。
一部ではささくれた古い残置ロープも見られるが、これは頼らないほうが無難だしロープ無しでも登れる。

 急坂を一登りすると、今まで歩いてきた地獄鎌尾根はもとより、隣の西尾根の末端まで見通せる。




 9:00 遂に展望溢れる地獄鎌尾根(赤岩)での歩きを終える

 急坂が落ち着き、普通の森に入ったことで地獄鎌尾根を踏破したことを知る。








 9:08 西尾根に入る前に薬師峰へピストンしておく

 今日の行程としてはこのまま西尾根に直行しても良いのだが、やはり自分の性分からか何度登ったところでも薬師峰山頂は踏んでおきたい。
十字峰と薬師峰の間はピストンになるが立ち寄っていくことにする。








 9:20 踏破したばかりの地獄鎌尾根(赤岩)を眺める

 尾根直上、または西尾根、どこから見ても地獄鎌尾根は普通の尾根に見えてしまう。
ここは本当に地獄っぽいところが見える唯一の展望スポットといってもよいところ。
穏やかな西尾根との対比でより険しさが際立って見える。








 9:29 薬師峰山頂(616m)到着   

 薬師峰は風情ある山頂で自分にとって好きなところではあるのだが、やはり年を経るにつれて展望が悪くなってきたのは否めない。
風はけっこう冷たいが、日当たりは良いのでなかなか居心地良かった。
10分程度三角点の横で小休止してから十字峰方面へ引き返していく。




 9:38 薬師峰山頂出発








 9:58 十字峰(550m+)

  薬師峰から20分で引き返して十字峰到着。
吹き抜ける風で寒いので5分程度の小休止で、約1年ぶりに西尾根へ向けて出発する。








薬師峰が鋭鋒に見えてくる。地獄鎌尾根は西から見ると平凡な姿になってしまうが・・。 480m+ピーク辺りから、西尾根へ向けて90度の方向転換を意識する

 10:27 480m+ピーク

 480m+ピーク自体の展望は今一つ。少しだけ通り過ぎたところから徐々に南へ向けて下りに掛かる。
北西にも顕著な支尾根が派生するが、ヤブっぽさからルートミスの可能性は低いように思う。








480m+ピークから下り始める西尾根前半はまずまずの展望。地獄鎌尾根に比べると穏やかではあるが岩場もしばらく続く。

 まだ残っていた紅葉も楽しみながらの下りとなる。
これから辿っていく西尾根先端には、手前にある鉄塔が目印の290m+ピーク(行者山)がよく見えている。
以前からあの行者山へ向けて縦走してみたいと思っていたが、今日このあとようやく実現することになる。








薬師峰、地獄鎌尾根を背に西尾根を南下していく








 
11:05 335mピーク  

 小刻みにアップダウンを経て335mピークに到着。
前回はこのピークの三角点から真西へ向かい、塩売り戻しから下山した。
ここから先の西尾根は自分にとって残された未踏区間。
ようやくここからが今日の本題といっても間違いない。

 一休みしてからいよいよ西尾根の南下を再開する!
ルート不明瞭な塩売り戻しとは違い、西尾根上には明瞭な踏み跡が続いている。




 しばらく殆ど標高差の無い区間が続いた後、張られたロープで行止まりを示唆する崖上に出る。
335mピークから南下を始めるとあっけなくゴリラ岩に到着した。








11:18 ゴリラ岩頭頂部

 今居るところはゴリラのおでこの上あたり。
この先には進めないことは実際に見て納得出来た。
 西尾根の展望もそこそこにして少し引き返して、見落とした迂回路を探しに掛かるとすぐに見つかった。
迂回路は東側に付いていて、七種らしくかなりの急坂になっている。








迂回路を辿るとゴリラの左頬辺りに出てくる








11:25 ゴリラ岩(290m+)到着

 これまで何度となく眺めてきたゴリラ岩にようやく到着!
実際にその場に立ってみるととてもゴリラの顔には見えないが、北以外は展望抜群だし居心地の良い岩場には間違いない。

 細かいところで違いはあるが、かなり左右対称な岩場でなかなかユニークなところだった。








岩場好きなのでゴリラ岩の上をうろうろ動き回る




 北西からの季節風が強く、東側へ少し下ったところで昼食を兼ねたやや長い休憩を取る。
南東側に近づいてきた牧場からの臭いが微かに感じられるが贅沢は言っていられない。

 このあと間もなくヤブっぽい尾根歩きとなることが想像出来るので、ここでレインウェアのズボンを予め履いておく。




12:02 ゴリラ岩出発

 約30分超の滞在をもってゴリラ岩を出発する。
明王池を発着点とする定番ルートの下りが始まるのは、ここより少し先へ進んだところだ。
まずはこの定番ルートを辿り過ぎないように気を付けなければいけない。








12:10 明王池下山ルートを横目に、西尾根末端へ向けて一般ルートから離れる

 ルートが尾根を外し始めるポイントに差し掛かる。
ゴリラ岩からの標高差は無いのでここまではあっという間に辿り着ける。

 ここで読図を行い、今後の西尾根の地形と方角を確認したうえで、ヤブに足を踏み入れていく。
でも幸いなことに定番ルートから離れるにつれてヤブは一旦は薄くなっていった。
 これより西尾根は緩く左カーブを描きながら下っていき、行き当たった先は270m+ピークとなる。








ヤブっぽいところと比較的歩きやすいところが交互に現れる感じの西尾根

 緩い左カーブを通過すると、行く手には270m+ピーク。
270m+ピークからは右寄りへ進路を変えていく。

 なお南側には赤白の鉄塔と行者山が今まで以上にはっきりと見えるようになってきた。
定番ルートが尾根を外したところをもって、西尾根は約半分を歩いた状態といえる。








12:17 270m+ピーク

 右斜め前へと進路を変える270m+ピークに差し掛かる。
ピーク上にはシダヤブの踏み分け道があって、ほぼ先読みどおりに自動的に方向転換することになる。

 今の時期にはスズメバチなどの危険はないものの殆ど誰も通らない尾根なので、気を抜けばクモの巣に絡まれることになる。








下草が生えていない240m+コル付近

 ピークとは一転して歩きやすい尾根になった。
尾根は今度は緩い左カーブになって250m+ピークへ向かう。
右前方には2つ並んでいるはずの240m+ピーク。その奥には行者山が徐々に近づいてきている。
十字峰付近から見る西尾根はかなり長い印象を受けるが、やはり全体的には下りで大きなアップダウンも無いので行程の進み具合が早い。








12:27 250m+ピーク

 比較的大きく閉じた等高線が印象的な250m+ピークに到着。
ピークには一面にヌタ場が点在し、ここはイノシシたちの大浴場のよう。
いつしか曇りがちになってきたことも手伝って、ここはちょっと雰囲気が良くない。

 ピーク周辺は密生して見通しの利かない状態。しっかり方向確認してから次の240m+ピークへ向かう。








比較的空が開けて明るい尾根に

 250m+ピークを過ぎると、木々は疎らになって見通しは良くなった。
コロコロと植生の変わる尾根で歩いていて退屈しない。

 尾根を緩やかに下りながら南下していくと、前方には2つ並んでいる240m+ピークと行者山が見えてくる。
長らく未踏のままで気になっていた西尾根ではあるが、とっておきの山旅も終わりが見えてきた。








12:41 240m+ピーク(北側)

 220m+コルからの登り返しの辺りから再びシダヤブが濃くなり、北側の240m+ピークに辿り着く。
踏み跡はあるようなないような感じだが、時折思い出したように現れるマーキングがあり、少ないながらもこの尾根を歩く人が居るようだ。

 前方にはもう一つの240m+ピークと行者山が重なって見える。
ここからはほぼ真南に進んでいく。








南側の240m+ピークへは高低差10m程度の微細なアップダウン

 薄い踏み跡、途切れがちなマーキングで読図の醍醐味が味わえる楽しい尾根歩きが続く。
マーキングの間隔は広め。また転換点でも見いだせない場面もあったのであくまで参考程度に捉える。








12:48 240m+ピーク(南側)

 南側の240m+ピークに到着。
北側の240m+ピークと閉じた等高線はほぼ同じ大きさだが、こちらのほうが予想よりも広い印象を受けるピークだ。
下草が無いところもあるので小休止も出来る。

 ここからは尾根はやや左寄りにうねっているので、それを念頭にルートファインディングするがよく目を凝らさないとなかなか見いだせない。
マーキングはやはり途切れがちで踏み跡はかなり薄いので、自力でルートを見出す喜びを感じられる。








ゆったりした地形の220m+コル

 腰高ほどの笹に覆われた220m+コルを通過。
緩く右カーブ、次いで左カーブする尾根をイメージしながら南下していく。
もうこのあと西尾根上に残るピークは行者山のみ。なかなか盛り上がっていたところだったのだが・・。








12:55 踏み跡微かな尾根歩きは唐突に終わる

 西側から幅広の巡視路?が尾根に乗り上げてきて、これまでの手付かず感が一変してしまった。
巡視路は歩きやすくしてくれるハイカーの味方ではあるけど、この場面では出てきてほしくなかった感は否めなかった。








13:02 赤白の送電線鉄塔

 長らく行者山の良い目印になってくれていた赤白の送電線鉄塔に到着。
当然のことながら巡視路はここで終点となる。

 付近の木々のために視界はクリアには開けないが、遠くなった薬師峰とゴリラ岩が見えて縦走の醍醐味は何とか味わえる。
なお上空の送電線が通過していく西側斜面はきれいに切り払われていて、明神山方向はよく見えている。

 この鉄塔を過ぎると行者山まであと僅か30m程度の登りで辿り着けるはず。
再び純朴な自然を満喫出来る手付かず感が戻ってきた尾根を辿って、縦走最後のピークを目指す。








明確に残る堀切跡

 やまあそさんが指摘されていたように、行者山には小規模の山城があったようだ。
山城好きな自分にとっては最後のピーク到達に加えて一粒で二度美味しい心境になる。

 ここは夢前川流域なので、この山城も赤松総領家関係に属するものかなと考えていたが、
後ほど下山地点で得られた情報ではもっと古い時代の城であったようだ。








短いが激登りとなった行者山への最後の登り

 地形図からは想像できなかったが、行者山への登りはかなりの急坂となっていた。
でもそのおかげで後方の視界がそれなりに広がり、写真では分かりにくいが通り過ぎたばかりの赤白の送電線鉄塔、ゴリラ岩、薬師峰、
そして地獄鎌尾根から眼下の牧場まで・・。これまでの縦走の行程を一気に振り返ることが出来た。








13:20 290m+ピーク(行者山)到着

 激登りはすぐに終わり、緩やかな地形に変わるとすぐに行者山山頂に到着。
地形図どおりにピークの最高点は南端に偏り、西尾根はここから南西に方向転換することになる。
前之庄辺りからだと目立って見えるピークであり、長らく気になっていたところに到達出来た満足感に包まれていた。

 山城の本丸跡があったであろう行者山山頂だが、あまり大規模に地形に手を加えられている印象は受けない。
むしろ手付かず感の強いピークらしいピークといえる。なおここにもアンテナの残骸が転がっていた。

 もう後は下山を残すのみ。ここで最後の小休止をとりながら、下りのために読図を行う。








13:30 行者山山頂出発  尾根を南北に横切る堀切跡

 やまあそさんが指摘されていたように行者山からの下山は縦走最後にして最大の注意箇所。
行者山から一旦は尾根筋を南西に辿って、少し下ったところから宝積院へ向かう支尾根を見出さないといけない。

 行者山山頂を過ぎても再び堀切跡が尾根を横切る。
最後の最後まで山城の風情を感じられる良い山だ。








13:35 尾根を外す

 前方で尾根が斜度を増して下り始めるのを見て、この辺りで南へ向けて方向転換すると読んでルートファインディング。
すると意外にもこの辺りではマーキングが豊富で、自動的に尾根を外すよう誘導される。








宝積院へ向けて下り始める

 最初は支尾根に乗ったという印象は受けず、ただ急な山腹を下るだけのようだ。
でも少し下方で地形が緩くなっているのを見て、正しいルートを辿っているのを確信出来る。

 この辺りは地形図で見る以上に地形がややこしい印象だ。
地形図には現れない微細な支尾根がいくつか派生している。
慎重にルートファインディングと方向転換を行いつつ下っていく必要がある。








行者山山麓は踏み跡が拡散傾向

 勢いに任せるのではなく、周囲を見回しながら慎重にルートファインディングを行う。
ここではマーキングもそれなりにあって大いに参考になった。
一度は緩くなった支尾根の先から、シダヤブの中に細い踏み跡が急斜面を下っている。
つい最近に泥浴びを終えたばかりのイノシシが歩いたのか、踏み跡にあるシダに泥が付いていてレインウェアのズボンが汚れていた。

 そして間もなく下方に赤い旗が見えた!遂に西尾根の縦走が終わった瞬間だった。








13:50 観音霊場最上部の不動明王

 シダヤブの中の激下りの先は不動明王が祀られている行場のすぐ西側だった。
無事に縦走を終えて、不信心な自分も不動明王に感謝したい心境だった。

 不動明王から下は巡礼路が整備されているので、実質的な縦走はここで終わりとなる。
緊張感からはかなり解放されて、残った行動食を摂って一息入れていく。

 不動明王からは木々の間に前之庄の街並みが近くに見える。
残された標高差もあと僅かだ。




14:00 不動明王出発








これまでとは一転して歩きやすい巡礼路を下っていく

 巡礼路の道中にはたくさんの祠が点在している。
もう自分はただ通り過ぎるだけだが、寺社巡りが好きな方ならより楽しめるところかもしれない。








14:09 遂に宝積院裏手に下山!  的場山宝積院 

 きれいに手入れの行き届いた宝積院裏手に降り立った。
現地には当然のことながら登山口を示すものは何もない。

 お寺ではどなたかが清掃作業でもされていたのか掃除道具と集めた落ち葉があったが、
この時は作業を中断されていたようで誰もいなかった。
境内を通り抜けて宝積院山門下に辿り着くと、これまであちこちで見た姫路市設置の史跡の案内標があった。※ 右に転記

 案内標によると、山上は非常時の砦として、平時にはこの宝積院一帯に三枝城の居館があったようだ。





 三枝城と宝積院の歴史を確認した後で、三枝草地区を歩いて駐車地へと引き返す。
道すがら農作業されていた地元の方と出会ったので、「薬師峰から宝積院まで縦走した帰りです」。「お疲れさまでした!」
と声を交わした。








三枝城跡と的場山宝積院(観音寺) 姫路市

 三枝城は城主三枝氏十代二百十余年の居城があった。
長寛二年(1160)政頼が築城し、永和三年(1377)頼成の時、落雷により焼失した。
後、小野市に河合城を築いて移った。城跡は宝積院のある所とその附近である。

 補記・・・ここでは表記されていないが、三枝氏は三木合戦において別所方に付いたよう。



 天台宗宝積院は天安二年(858)玄常上人の開基といわれ、もと明王寺谷にあって
松尾山明王寺と呼ばれていたが、寛文年間(1661〜1673)に現在の地三枝城跡に移り、
的場山宝積院と改称された。

14:21 三枝草地区北の駐車地に到着

 約8時間掛けて周回完了!
山装備を解いてから、充実感を胸に揚々と雪彦温泉へと向かう。




 〜 終わりに 〜

 約1年前に塩売り戻しに下山したことで途中まで歩いていた西尾根。
ゴリラ岩については約10年ほど前からその存在を知っていたにも関わらず、すぐに明王池へ降りてしまうというルート設定が物足りなく感じてなかなか足が向きませんでした。
数多くの山々で読図を重ねてきた上で、やまあそさんの縦走記録も参照して実行可能と判断。遂に西尾根末端まで縦走することが出来て大いに達成感を得ました。
七種の主要な尾根はほぼ踏破出来てきましたが、まだ未踏箇所を残しています。今後とも七種は折々訪ねたいものです。








行程断面図です




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