05年10月12日(水) 晴れ時々曇り 薬師峯(七種薬師)〜七種山 古来より文献に登場する長い歴史を持ち、秀麗な鋭鋒が連なる七種三山には山歩きを始めてから強く興味を持っていたが、このたび初めて訪れてみた。 当初の計画では野外活動センターに車を停めた後薬師峯に登り、時計回りに七種山、そして七種槍を経由して野外活動センターに戻るというものであったが、 2004年秋の台風の影響で未だに非常に多くの倒木に悩まされ、七種山に辿り着いたところで下山するという計画に変更せざるをえなかった。 薬師峯から七種山はとても山歩きを楽しめる状態ではなかったことをこの場で強くお伝えしたい。 7:00 野外活動センター前の駐車場に車を停める。他には1台も車は停まっていない。ジャージ姿のおっちゃんがウォーキングの前の準備体操をしていた。近所の方だろうか。 福崎からちょっと北へ車を走らせただけなのに、山深い印象を感じさせられるところだ。七種三山を一周するという意気込みだったためにいつもより入念に準備運動を行う。 |
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7:10 準備を整えて野外活動センターを出発。緩い登りの舗装路を北へ 向かって歩き出す。道路は車1台が通れるくらいでそれほど広くはない。 |
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7:18 左側に未舗装の林道が分岐しているところに出てきた。薬師峯愛好会に よる七種薬師への道標が掲示されている。未舗装路を奥へ進んでいくと、 すぐに登山口に到達。ここにも道標がしっかりと掲示されているのですぐに 分かる。右手の植林の中に付けられた、そこそこ急な登り道を辿っていく。 |
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植林はすぐに終わり、そこからは雑木林となる。 踏み跡は細いがしっかりとした道が続いている。尾根に到達すると、 一旦いくぶん緩やかになるがすぐに急登になる。 |
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そうびろ山 展望は殆ど開けないが、一瞬南側が広く開けた。 薬師峯から南に辿って到達出来る、そうびろ山のようだ。 トラックは山頂に向かってひたすら一直線に登っていく。 |
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道端に岩がごろごろするようになってくると、そうびろ山への分岐に 到達した。見下ろすばかりの急坂が南へ続いている。この方面にも いずれ歩いてみよう。ここは右の薬師峯山頂へ向かう。 道標によると「お薬師様が祀られ、眺望も素晴らしい」と書かれている。 楽しみである。 |
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8:25 〜 8:50 薬師峯(七種薬師)山頂 分岐からしばらく登ると薬師峯山頂に到達。 山頂は2段の削平地?で成っており、下の段には南向きに薬師如来が 祀られている。山名由来の分かりやすい山である。昔から山頂まで参詣 のために登られていたのだろうか。 下山まで見守って下さるように手を合わせておいた。 |
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薬師如来の南側は展望が開けていた。残念ながら霞んで遠望が 利かないが、福崎の街辺りまではよく見える。 ネットで調べてみると、南側の展望が開けたのはごく最近のようだ。 |
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薬師如来の北側は一段高くなっており、616.2mの三角点が 設置されている。東側の展望が広がっているが、ここにあるはずの 兵庫登山会の「七種薬師」山名板が無くなっている。支えていた鉄筋 だけが残っていた。04年の台風で飛ばされたのだろうか。ぜひ新調 してもらいたいものだ。 |
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薬師峯(七種薬師)からは七種山と七種槍がよく見える。特に七種槍は非常に美しい姿で一気に魅了されてしまった。 直線距離ではかなり近く見えるのだが、この後たいへんな目に遭うことになるとはこの時は知る由も無い。 薬師峯を後にして山頂から一路北へ向かう。雑木に囲まれた尾根道が続くが、テープが豊富に巻かれていて、 快調に進んでいく。 |
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薬師峯からしばらく進むと南西方向の視界が広く開けていた。 東西に伸びる夢前町の街並みが近くに見えている。 |
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明神山と地獄鎌尾根 西には明神山が美しく見えている。 手前に見えている岩尾根は「地獄鎌尾根」といわれている。 ここはいずれぜひとも歩いてみたい。 |
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明神山 薬師峯、明神山はどちらから見ても美しい山容だと思う。 段ヶ峰までが自然破壊の対象になってしまうニュースが流れる 昨今だが、この自然はいつまでも守られるよう祈るのみ。 |
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展望地を過ぎて延々と雑木の尾根道が続くが、程なく辿り着くはずの十字峰分岐にいつまでも着かない。 ぬた場のような所で一時的にトラックを見失ってしまう。どうやら急角度で曲がっていたようで、道なりに進んでいたようだ。 急峻な山肌の獣道を辿ってしまうが、おそらく尾根の一番上にトラックがあると考えて急斜面を登っていく。すぐにトラックに戻ることが出来た。 しかし十字峰分岐にはとうとう辿り着けないまま。この一時的にトラックを見失った時に過ぎてしまっていたのだろうか。 地形図を確認し、七種山への尾根を歩いていることを確認。北へ歩いていくが、倒木がだんだん目立つようになってくる。 倒木が無ければテープも豊富で何ら難しいトラックではなかったであろうが・・。倒木が連なっていて、トラックが不明瞭になっているところも出てきた。 地形図を何度となく確認、また右手には七種山が近づいていることもあり、大きくトラックから外れることはなかったが、とにかく疲れることこの上ない。 |
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「何じゃこれは〜!!」 薬師峯(七種薬師)から七種山への縦走路の一場面である。 北へ進むにつれて倒木がひどくなってくる。もうトラックがどこに あるのか分からない。目を凝らし、慎重に周囲を観察して、踏み跡 を探す。人が乗り越えて樹皮が削られた跡、根っこを迂回する踏み跡 などを辿っていく。少ないながらもこのトラックを先に通ったハイカーは 居るようで、何とか通路を確保することが出来た。 しかしこの絶え間ない倒木との格闘で予想外に体力を消耗してしまう。 それにしてもこのような状態にまでさせた04年の台風とはどのような 威力だったのだろうか。自分はその時NZに居たためにピンと来ない。 |
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倒木の上にアップダウンもあり、非常にハードな状態になっている 薬師峯〜七種山縦走路。右手には七種山がかなり大きく見えてきた。 そんな折、道端に薬師峯愛好会のプレートが落ちているのを発見。 コース名が書かれているのを除いては、お世辞にも洗練されたプレート とは言い難いが、道なき道を辿っていたこの時はトラック上を進んでいる ことを確認できて元気付けられた。 |
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プレートが落ちていたところからは七種山がかなり近くに見えていた。 麓には七種滝と思われる崖が見えている。水が確認出来ないのを考えると 流れ落ちる水は殆ど無いのだろう。枯れ滝という情報は得ていたので、 ショックには思わないが残念だ。NZ旅行中には嫌というほど雨が降ったのに。 |
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七種山が接近するにつれ、倒木は激しさを増すばかり。更に尾根はなだらかに広がり始め、トラックを辿ることもますます難しくなってきた。 地形図とコンパスを携帯していなければ、自分は神戸新聞くらいには載ることが出来たかもしれない。 10:31 相変わらず展望の全く無い薄暗い雑木林を辿っていくと、赤いプレートに白字で「薬師」と書かれている。間違いなくトラックを辿っていて再びほっとする。 しかし薬師峯を出発してからもう1時間40分余り。いつになったら七種山につけるのだろうか。もうこの時でも心身ともかなり疲れてきており、七種槍まで 一気に完歩することなど不可能だと思い知った。 |
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11:09 部分的に岩を乗り越える痩せ尾根に出てきた。しかしその時、足元に突然ヘビ(種別不明)が現れる。とっさに後ろへ下がる。ヘビはトラック横に消えていった。 気を取り直し進もうとしたら、お次は行く手に今秋大発生で世間を賑わせているオオスズメバチが3匹現れる。また後ろへ下がりどこかへ行くのを待つが、3匹は その周囲を飛び回り一向に立ち去ろうとしない。近くに巣があるのだろうか。スズメバチ用殺虫スプレーのふたを開けて臨戦態勢を取るが、幸いにもどこかへ 飛んでいった。この日最も緊張した一時だった。 11:14 待望の分岐に辿り着いた。振り返ってみると薬師峯愛好会のプレートがある。「↑ 薬師峯まで4km、2時間」、 「← 登山口へ2km 60分 七種滝上部右折〜隠れ滝〜滝見台〜山門」と書かれている。ここから七種山への正面玄関ともいえる山門まで60分で下れる ようだ。このまま下ったほうがはっきり言って楽であろう。しかしせっかくここまで来たのだから、せめて七種山の山頂までは到達しておこうと思い直して この分岐は引き続いて直進することにした。しかしこのプレートは七種山から辿ってきたことを前提に書かれているようだ。七種山山頂までどのくらい掛かるのか 表示してくれるとありがたかったのだが。 すぐにまた登りになる。時折倒木も相変わらず現れ、かなり足が重くなってきてペースが上がらない。 |
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11:33 息も絶え絶えになりながら、ようやく七種山、七種槍への分岐に到達・・。 公称2時間のトラックが2時間40分かかってしまった。天気はいつの間にか どんより曇っていて暑さからは開放されて助かった。 |
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ぱかっと割れた兵庫登山会のプレートがある。 これほど重要な分岐で、しかも七種山は名の知られた播州の名山だ。 これでは見た目が悪い。本当に新調をお願いしたいものである。 |
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七種槍愛好会のプレートもある。七種山山頂まで ペンで250m、10分と書き換えられている。 それにしてもデザインが全く一緒だが、薬師峯愛好会と七種槍愛好会は違う 組織なのだろうか。また提携しているのだろうか。道標はしっかり完備されている のだが、倒木をもう少し何とか処理してもらいたいものである。全て撤去するのが 理想だが、要は人一人通れるだけのスペースさえ空けてもらえば良い話なのだ。 台風から1年近く経過しているのに、薬師峯への縦走路は全く手付かずといって 良い状況というのは正直予想外だった。 |
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分岐からは再び倒木のジャングルとなるが、薬師峯への縦走路と違い、利用度が高いためかしっかりと踏み跡も付いて辿りやすくなっている。 しかしトラックは山頂に向かって緩やかな登りが続く。疲れた足には非常に辛い。時折展望も広がってくるが山頂が近いようなので休まずに登る。 |
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11:45 七種神社・七種の滝への下山ルートとの分岐に到達。 もう少しのようだ。 |
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七種山山頂 (11:46〜12:30) 薬師峯から3時間余りかかってようやく到達した。 昼時ということもあり、どなたか先着されているのではと思ったが誰もいない。 頂上は展望が悪い、筈だったが北側の展望が開けている。 周囲は倒木が数本横たわり、雑然とした雰囲気は拭えないが、 さすがに七種山山頂は台風後にある程度整備された感じが伺える。 倒木の一本に腰掛けて大休止に入ることにする。といきたかったが、 時折オオスズメバチが接近してきて心から落ち着くことが出来ない。 |
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薬師峯では失われていた兵庫登山会の山名プレートだが、 七種山では健在だった。しかしなぜゴルフボールのような穴ぼこが 全面に空いているのだろうか。 |
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つなぎ岩 息を整えた後で山頂北側直下にあるつなぎ岩へ降りてみた。 溝を乗り越えてつなぎ岩の上に立つ。山頂以上に広く周囲を見渡せ、 北西には雪彦山、北には七種槍へ向かう周回尾根、そして東には 今日歩くつもりだった七種槍が見える。 つなぎ岩からの景観は後日に歩いた「七種山〜七種槍」の回の方が 天気が良かったので、そちらのページで掲載することにしたい。 弘法大師がこの岩の上で修行したという伝説もあるということで、 昔から人々がこの岩を特別視していたことが伺える。 |
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つなぎ岩側![]() |
つなぎ岩の亀裂を真上から覗いてみた。深さは10m近くあるようで、 しかも底へ行くほどに溝は狭くなっている。間に挟まってしまうと抜け出す ことが出来ないといわれているのがよく分かる。つなぎ岩に挟まって死んで しまっては洒落にならない。くれぐれも岩に渡る時は足元に注意してもらいたい。 底をよく見るとペットボトルが捨てられていた。回収するのは難しいだろうし、 自然にも還らないので未来永劫そこにあるのだろうか。全くつまらないことを する人がいるものだ。 |
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山頂で45分近く過ごした後、山頂すぐ西の分岐から七種の滝を経て、車を停めている野外活動センターへ戻ることにする。 分岐を左折してすぐに倒木が5本ほど固まって現れ、また倒木との格闘が始まるのかと思ったが、薬師峯への縦走路と違って倒木に悩まされることはなかった。 やはり七種山への直登路は利用度が高く、整備されるのが早かったのだろうか。もしくは風の影響を受けにくい地形だったのだろうか。 12:36 「展望台」に到着。南側の展望が良い岩場である。隅には兵庫登山会のプレートがある。「このすばらしい眺望はあなたへのプレゼントです(山頂まで110m)」 と書かれている。左に七種槍、谷を挟んで正面に薬師峯(七種薬師)、そして倒木と格闘した尾根が北へ延びている。確かになかなかの景観だ。 ※ ここからの景観も別項「七種山〜七種槍」のページでご紹介したい。 |
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12:53 七種の滝上部の分岐に到達。周囲にも色々見どころがあるようだが、もう疲れて早く下山したい思いが強くてどこにも立ち寄らずに下山を続ける。 滝の横にあたる部分では非常に急になっておりロープがかかっている。疲れた足には非常にこたえる。 |
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13:00 七種神社の境内に降りてきた。右手を見上げると七種の滝の 岩壁が木立の間から見える。少しだけ水が滴っていた。 脇には兵庫登山会のプレートがある。なかなか力の篭った文章で あり、少々長いが全文を掲載したい。 「七種を愛するあなたへー! 大雨の後など水流多き時、落差72mの岩壁を落下する豪快な白の瀑布、 迫力ある水の躍動! それが播磨の名瀑、七種滝の滝姿なのだ! その景観に、自分の心が満たされてゆくー、自然とは、実にすばらしいー。 しかし雨なく流れなき岩壁を見上げるあなたの心境を察すれば、残念の 一言あるのみ・・・・ 尚、遠方より七種に自然を求め、マナーを守って行動されるあなたの人生が、 笑顔の日々であることを祈ります。 兵庫登山会」 まあ水が無ければ、それはそれで仕方の無いこと。でも一度瀑布の七種の滝 を見てみたい気持ちは強くなった。これからは激しい大雨直後の行き先は いつでも七種山を最優先にしておこう。 |
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七種神社 七種の滝のすぐ横という絶好の場所にある神社。奥にある祠がご神体 だろうか。手前のあずまや風の建物は落書きでいっぱいだ。七種に訪れる 人の中に、ごく一部であろうが不心得物がいるようだ。国が傾いているから 人心もすさむのだろう。 |
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七種神社の境内からはこれから下っていく谷を見下ろすことが出来た。 右上には薬師峯が大きく見える。福崎の町から程近いのに本当に山深い 雰囲気がいっぱいだ。六甲のように堰堤だらけになっていない谷は本当に 貴重だと思う。 |
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七種神社下からは七種の滝の直下へ出ることが出来るが、水が無いのと疲れているので今日はやめておく。 13:08 虹ヶ滝、太鼓橋を通過。水が少ないのと岩が黒々しており、見た目にあまりよくない。 太鼓橋を過ぎると砂利の駐車場に出る。車は1台も停まっていない。ここからは車が1台通れるくらいの舗装路になる。 疲れた足には響くが、緩やかな下りなのでよしとする。 13:12 弁慶のこぎり岩に着く。写真を撮ったが薄暗いせいかピントが合っていなかった。今日は本当に疲れているようだ。 舗装林道を下っていると、車が2、3台登っていった。昼を過ぎたし七種山山頂まで往復するのだろうか。 もしくは水の無い七種の滝を観に行くのだろうか。内1台はこの後歩いている時に再び街中へ下っていった。 これがNZなら手を突き出して親指を上げ、野外活動センターまでヒッチハイクを試みるのだが、ここは日本なのでやめておく。 |
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午後の穏やかな陽光が薄暗かった道に差込み何だか落ち着く。 正面には山門が見えてきた。 |
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13:19 山門に到着。今はより町近くに移設された金剛城寺という 古寺の遺構であるらしい。 これも貴重な文化財なのであろうが落書きがいっぱいだ。 まったくもって遺憾である。 |
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13:30 二本杉到着。 二本の杉の間には小さい祠が祀られていた。 今日の厳しかった山行も無事に終えたことに対してお礼を言う。 |
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七種山遠望 かなり下ってきて、振り返ると七種山がよく見える。 この角度で見るとかなり鋭鋒に見える。しかし頂上ではどんより 曇っていた天気が回復してきたようだ。ちょっと悔しい。 |
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13:35 小滝林道との分岐に到着。長い長い林道歩きもここまで来ると あと少しだ。更に天気は回復し、日が当たると暑いくらいになる。 |
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ススキの野原の向こうに七種槍の山頂がちらっと見えた。 七種山から七種槍はまたの楽しみに置いておこう。 |
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13:38 今朝方左折した薬師峯(七種薬師)への分岐に戻ってきた。今朝のことなのにここから登っていったことが何だかとても懐かしく思える。 13:45 出発してから6時間35分で野外活動センターへ戻ってきた。本当にやれやれ。倒木のおかげでペース配分も何も無かった山行になってしまった。 しかし難路を制することが出来て、達成感だけは非常に大きい。でももう一度このルートを歩いてみたいとは思わない。 福崎町は七種山は町の財産なのだから、倒木で荒れたトラックの整備をぜひともお願いしたいところである。 野外活動センターはトイレも利用できるし、七種山周辺のトラック情報を掲示してある。ぜひ立ち寄って活用してほしい施設である。 別の日に明神山で他のハイカーから得た情報によると、七種槍方面は倒木が無いそうだ。近日中にぜひとも歩いてみたい。 長い距離の森を歩くので、もう少しスズメバチが少なくなってから挑戦しよう。 |