「笛石山〜駒の尾山縦走」 2012年10月21日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「西河内」




 〜 はじめに 〜

 笛石山は後山から南東に派生する尾根の末端にある山で、
長い尾根歩きとユニークな猫石の存在で以前から気になっていました。
前日の土曜が出勤で唯一のチャンスとなった日曜が好天に恵まれ、
遂にとっておきの行程を実行しました。
今回は未踏の長い尾根のため、通常の35Lザック(テカポ)を使用しています。

 以前、おごしき山から奈義山まで縦走した時と同様に、
今回も下山地である駒の尾山登山口(大海里峠口)に自転車をデポしておきます。
この日はこの辺りで自転車の大会が開かれるようでしたが、
自分が下山する時には終わっているようなので問題ないでしょう。




 6:40 松の木公園出発

 行者水を販売している松の木公園を出発。
ここで既に標高370m。早朝でまだ日の射さないところなので、かなり冷え込んでいた。
出発時には1枚多めに重ね着をする季節になってきたようだ。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)

 6:46 笛石山登山口

 おごしき山へ登った時にも歩いた林道をしばらく進むとすぐに笛石山登山口となる橋に到着。
橋の下はきれいな滝壺で夏は気持ちよさそうだが、かつて鹿ヶ壺にあったプールのおかげで山の水は冷た過ぎることを身をもって知っている。

 橋を渡ると山腹を登っていくが、すぐにトラバースしにかかる。








 6:57 沢に出会う

 山腹道はすぐに沢に沿うトラックに変わる。
降雨直後以外は水量は少なそうで、この時もちょろちょろと流れる程度。
2、3度と渡渉を繰り返しつつ高度を上げていく。
要所には指導標があってルートを辿るのは難しくない。
夏場に悩まされる虫もヒルも居らず、快適に山行を楽しめる季節がやってきたようだ。








 沢が明確に分岐している  谷から離れそうな雰囲気

 しばらく沢沿いに登っていくと、谷が明確に枝分かれした。
そこで地形図を見ると、この2つの沢は笛石山山頂付近に達するものではないかと推測。
現在の標高は520mくらいだろうか。
 トラックは左俣の右岸を辿っていく。どこから谷を離れるのだろうか。




 7:20 谷を離れて山腹道へ

 笛石山を指す指導標を見送ってしばらく登ると再び山腹道へ。
沢の水音も無くなり完全な静寂に包まれ、クマ避けの鈴の音だけが響き渡る。
六甲には無いこの緊張感がなぜか好き。
どこから尾根に乗り上げるのか楽しみにして、まだ日の射さない薄暗い森を緩やかに登っていく。








 7:29 尾根に乗った

 今日初めて尾根に乗った。笛石山山頂の北東で二方向に派生する尾根の一つのようだ。
608m標高点表記のある尾根の西隣り尾根に居ると推測する。

 この辺りから明るい朝日が差し込んできて、雰囲気が一気に良くなる。
行く手を見上げるとしばらくは比較的緩やかそうだ。息を整えてから尾根を登りにかかる。









 緩急織り交ぜた尾根を登り、そして時に山腹を辿りながらも着実に高度を稼いでいく。
木々の向こうには東隣の尾根が近づいてくるのが見える。
もう少しで笛石山へ通じる主尾根に乗り上げるだろうかという感じだ。








 7:53 主稜線(縦走尾根)に乗った

 ここでトラックは90度方向転換。ようやく主尾根に乗ったようだ。
下りで歩く場合ではここはあえて尾根を外すポイントとなるので要注意と思う。

 ようやく乗った主稜線は倒木やら伐採跡で何やら荒れた雰囲気。
数年前の台風被害の名残だろうか。今では整備されて倒木を越えることは無かった。








展望に恵まれた主稜線

 かつては木々に覆われた尾根であったようだが、今では展望を楽しみながら歩けるようになっている。
ただしここは夏にはちょっときつそうだ。

 行く手には笛石山方面の稜線、そして右手には三室山の美しい姿が見える。
そういえば、あちらの尾根もいずれ縦走しなければいけないな。

 そのうち南側の展望も広がってきて、麓の田園風景も見えてくる。
相当広い範囲の尾根が伐採されたようだ。








 8:23 猫石分岐

 展望を楽しみながら登っていると、猫石への分岐に差し掛かる。
今日の必見スポットの一つでもあるので迷わずに寄っていく。
分岐のすぐ南の木には立派な手製の猫石の案内板が掛かっていて、猫石との初対面を盛り上げてくれる。








 8:28 猫石到着

 しばらく細い山腹道を南へ辿っていくと、斜面の下方にある猫石が目に飛び込んでくる!
思っていたよりもかなり急な斜面に立っていてしかもデカい。
おごしき山の大馬鹿門の時の教訓で、体が冷えてしまわない程度に猫石での滞在時間を楽しみたいと思う。








南側を眺めて座る猫石

 どうやったら猫に見えるのかなと思っていたが、私的にはこの角度が背を伸ばして座っている後姿に見えなくもないかなぁ。
ちなみに背中側の割れ目状のところから簡単に猫石の上に立つことも出来る。
猫石の上に乗った時にオカリナを持ってきていないことを思い出した!せっかくの好スポットなのに惜しいことをした。

 まあ仕方がないとして、一応下側からも猫石を見ておこう。








猫石

 下から見るとただの巨岩になってしまった・・。
でも猫石から見る日名倉山はなかなか格好良く見える。
ウシアブに追いかけられた記憶だけが鮮明な山だが、今のような良い季節に再訪しなければいけないな。

 猫石と戯れるようにウロウロした後、ちょっとだけ小休止してから出発する。
この猫石でゆっくり過ごせるように、いずれ下り方向で笛石山を再訪することとしよう。

 可愛い猫石であるが、一方では悲しい言い伝えが残ってもいる。
播磨征伐中の秀吉と戦い、敗走中の長水城主宇野政頼主従が千種の河呂まで逃れてきた。
その時に千種川が大雨による増水で渡れないでいると、対岸の大岩から美作の援軍が笛を吹いて到着したことを知らせた。
しかし政頼はこれを敵が押し寄せてきたと勘違いし、主従諸共自刃したという。

 この笛を吹いた大岩が猫石であったのだろうか。歴史ロマンをも感じさせてくれる猫石である。

 ということはここからオカリナを吹いたら、麓まで十分に聞こえるだろうか。









 8:44 猫石出発

 猫石のすぐ上は分岐となっており、北側から辿ってきた山腹道を戻らなくても、笛石山山頂へと直行することが出来る。
踏み跡はあるような無いようなという感じだが、とにかく上を目指すだけだから間違いようはない。








 8:50 笛石山山頂(895m)到着

 すぐに目の前が明るくなって開放感溢れる笛石山山頂に到着!
宍粟五十名山の山名板と三等三角点「笛石」が出迎えてくれる。
今日の行程で最もまとまった登りはここで終わりとなる。
とにかく前から立ちたかった山頂なので、体が冷えない程度に出来る限り滞在していこう。








笛石山山頂からの展望

 笛石山は主に北側が切り払われて抜群の展望だ。
三室山を中心として長い稜線を見渡すことが出来る。
なおちょうど進行方向の尾根と重なっているので、ここから後山は見ることが出来ない。
笛石山は麓から見ると独立峰のように見えるが、あくまで後山から伸びる尾根の末端。
本当にいつまでも居たくなる山頂だったが、この後は長い尾根歩きが控えている。
小休止とともに軽くストレッチをして縦走に備えておく。




 9:04 笛石山山頂出発

 笛石山には立ったが、今日の行程はまだまだ先が長い。
ここからが今日の行程のハイライトである長い尾根歩きの始まりだ。
笛石山山頂から北西に伸びる尾根上には歩きやすいトラックが伸びていた。








後山へ向けて尾根歩きの開始

 展望皆無の尾根も珍しくないが、笛石山付近の尾根は比較的周囲の景観を楽しみつつ歩くことが出来る。
主稜線上の木々は時折色づいているものも目についてきた。紅葉狩りの面でも楽しい尾根歩きとなりそうな予感。

 笛石山山頂で見ていた地形図によると、最初の目標は920m+ピーク。いつものように等高線が閉じたところをピークとして認識する。
そして920m+ピークの次には960m+ピーク。このピークの手前では809m標高点が描かれている比較的大きな尾根が北側に派生しており、
接近に際して分かりやすい目印となる。この尾根はこの写真でも既に右端に見えている。








 9:17 920m+ピーク

 緩やかな登りがしばらく続き920m+ピークを通過。木々に囲まれているが、なかなかにピークらしいピークだ。
まばらな木々のおかげで、目印にしている北側の尾根と共に960m+ピークが既に正面に見えている。
尾根の合流箇所までには40m余りのそこそこの登りがあるようだ。








 9:27 960m+ピーク

 目印にしていた尾根の合流を見送り、少し左寄りに屈曲してから960m+ピークに到着。
木々が生い茂っていて、これまでとは違って展望は全く無い。

 次の目標は弓なりに屈曲する980m+ピーク。その次の1,008mピーク手前までは比較的穏やかな稜線歩きとなりそうだ。








 9:31 段差のある岩場に行き当たる

 穏やかな稜線歩きを予想してから直後、進行方向の尾根が途切れているのを見てびっくりする。
近づいて見てみると通過可能な岩場であることが分かってほっとするが、どうやらここが「登山ガイド・宍粟50名山」に書かれている危険個所のようだ。
後ろ向きになって足場を確認しながら慎重に下りていく。








唯一?ちょっと危険な岩場

 岩場の段差は10mにも満たないもので、道理で等高線10m刻みの地形図には書かれていないはずだ。
自分の感覚としては、雪彦山を楽しめる向きであれば、縦走中のアトラクションとして難なく通過出来ると思う。

 岩場を慎重に降りると後はこれまで同様、静かな尾根歩きの再開となる。








 9:38 980m+ピーク

 樹林が一層濃くなったところで、クランク状に980m+ピークを通過する。
このピークからは南に支尾根が分岐しているのが見える。
前もって地形図で予想しておいて現地でその予想と見比べるのが、いつからか自分にとって楽しい作業となったが、
おかげで展望が無くてもかなり心丈夫に歩くことが出来るようになったのが大きな収穫だと思う。








1,008mピークに向けての急登

 唯一の岩場以外はしばらく穏やかなアップダウンだったが、1,008mピークが近づいてくると一変する。
ジグザグなど皆無でかなり上まで見通せるくらい、まっしぐらにピークを目指していく登りだ。
この付近は密林状態といえるほど木々が生い茂り、1,008mピークに別方向から突き上げる尾根は視認出来ないが、
この等高線の混んだ急登のおかげで、ピークに接近していることを身をもって知ることが出来る。
この時は青空に映える黄葉に励まされた。








 9:51 1,008mピーク

 急登をこなしたところが1,008mピーク。ここが笛石山と県境尾根に突き上げたところの1,253mピークとのほぼ中間にあたる。
笛石山を出発してからまだ1時間も経っていないので、これはなかなか良いペースではないだろうか。
なお標高点表記もあるピークではあるが、周囲は木々が生い茂り展望皆無。
狭いピーク上もトラック以外はブッシュに覆われてはいるが、突き上げてくる尾根はどうにか確認出来る。

 小休止ついでに地形図を見ておくが、この後は標高差、方向、緩急いずれも変化に乏しい区間がしばらく続くようだ。
こういう区間が最も読図が難しいが、出来る限り現在位置は把握していたいので挑戦してみる。
とりあえず少し先にある990m+ピークを次の目標に定めるが、前後のアップダウンは10mほどしかない。








10:00 後山を展望

 細長い1000mの等高線を抜けた頃、前方が大きく開いてきた!
今日の行程で初めて後山を見た瞬間だった。さすがこの周辺の主峰、そして岡山県最高峰とあって堂々としている。
しかも遠目だが紅葉もなかなかの色づき具合で見とれてしまう。

 一方、景色に見とれるだけではなく、読図にとっても好材料となった。
後山から南へ派生する県境尾根にあって、現在辿っている尾根が突き上げる1,253mピークがちょうど正面にある。
手前のミニピークに若干被り気味ではあるが。

 前述の990m+ピークの次の目標となる1,094m標高点ピーク付近には、南側からよく目立つ尾根が突き上げてきており、
これは分かりやすい目印となる気がする。でもここからだとまだだいぶ距離がありそうだ。




 この展望地からしばらく後、2箇所ほどミニピークを通過したが990m+ピークであるとの確証が持てず、予感通りに現在位置があいまいになってしまった。
まだまだ読図を重ねていかなければならないなと実感する。








10:18 「ハサミ岩」を抜ける

 現在位置が曖昧になってきたが、そんな時にこの「ハサミ岩」が現れる。
トラックはこのハサミ岩の間を通過するが、挟まれて動けなくこともなく縦走中の楽しいアクセントになってくれる。
おまけにハサミ岩周辺の紅葉もなかなか見事だった。









 1,094mピークにはまだ少し距離があると思っていたが、予想外にそこそこ急な登りが現れる。
正確には現在位置は掴めていないが、どちらにしても今後は一貫して長い登りが続くと考えて支障はないだろう。
そんなことを考えつつ、振り返ってみると・・








10:40 縦走尾根を振り返る

 背後にはこれまで辿ってきた尾根の一端が垣間見えた。
ここは縦走尾根を振り返ることが出来る貴重な展望スポットだった。
大きく2つのミニピークが見えているが、たぶん笛石山はちょうど隠されていて見えなさそう。
まだ縦走の途中ではあるが、これでも十分達成感を得ることのできる光景だった。




 展望地を過ぎ、時折近づいてくる後山も見えるが、結局1,094mピークも認識出来ず。
そして南側から登ってきて目印になるはずだった支尾根も見通しの効かない区間が続いたために分からずじまいだった。








燃えるように赤い紅葉も

 長い縦走中には時にこのような真紅の紅葉にはっとさせられることも。
そういえば、赤といえば今年もカープは結局ほぼ定位置に落ち着いたが、
毎年秋は長い野球シーズンが終わってほっとする季節となっている。








10:55 三叉路

 林道経由で登ってくる一般ルートと合流した。
「登山ガイド・宍粟50名山」によって、この分岐は1,094mピークが過ぎたところにあることは分かっている。
ということは、1,094mピークは前述の展望地か、紅葉がきれいだったところのどちらかだろうか。

 ともかく、笛石山から始まる尾根歩きもいよいよ終盤であることは間違いない。
分岐からはまとまった登りが続きそうなので、ここで小休止を入れておく。
ここで分岐するルートは笛石山を周回ルートで歩く、笛石山抜きで後山へ登る、
もしくは今日のような縦走中にエスケープルートとしても使えるかもしれない。








県境尾根へ接近していく

 前述の分岐からの登りは、緩急織り交ぜながらもなかなかタフだった。
木々の向こうには県境尾根が徐々に近づいてくるのが見え、またトラックの周辺にはいつしかササが目立ち始める。
紅葉、黄葉を楽しみながら、いよいよ県境尾根へと突き上げていく。








11:12 1,253mピーク到着

 笛石山から約2時間で県境尾根に到達。1,253mピークは予想以上に広い感じのピークだった。
笛石山からの尾根が到達したところには、同様に志引峠から突き上げてくる県境尾根も合流してくる。
以前は笹薮が生い茂っていたと聞いていたが、今ではなんとなく人の手が入っているように見える。
とはいえ、誤って立ち入らないように木を置いて配慮はされている。
近い将来、志引峠から後山を目指したいと考えているが、笛石山経由以上にタフな行程が想像される。








1,253mピークから後山を眺める

 志引峠のある南側からピーク上を北側に進むと、正面に後山が大きく見えてくる。
残す標高差も100m余り。距離も近くて頂上まで見通せたら、そこに集う人々の動きまで見えそうだ。
この1,253mピークは静かだが、後山山頂は賑やかだろう。
さっさとここを通過するのはもったいない気がして、行動食のパンを食べるなど長めの小休止をとっていく。




11:22 1,253mピーク出発

 後山山頂までは一旦20mほど下ってから、100mほどそこそこの登りをこなしていく。
県境尾根上からは時折展望が開けて、紅葉のきれいな後山東側山腹、そして行程後半で辿る船木山方面も見える。








11:32 行者コース分岐

 後山へ向けての最後の登りの途中で行者コースと合流する。
行者コースは後山山頂付近へ直接突き上げるハードなコースという。
このコースも未踏でいつか歩いてみたい。おそらく登りで使うほうが無難だろうと思われる。

 ところで指導標にある島谷ってどこなのだろう。








後山山頂へ突き上げる

 県境尾根上のトラックは南向きのためにかなり日当たりが良い。
この時もちょっと暑くなってきたくらいだった。夏にはここは歩きたくないなと思った。
それはともかく、まもなく後山ということで、紅葉に励まされながらまずまずの急登をこなしていく。
そして今日初めて人の話し声が聞こえてきたら遂に後山山頂に到着だ。








11:45 後山山頂(1,345m)

 静かな道中の続いた松の木公園から始まる行程から一転、秋山を楽しむハイカーで大賑わいの後山山頂に到着。
それほど広くはない山頂のそこかしこでは昼食タイム中だった。自分もとりあえず適当なところに座って、行動食のおにぎりを食べる。

 今回の山行で感じたことは、後山へは岡山県側から登る行程のほうが主流だということ。
確かに距離も短めだし、展望溢れる稜線歩きも付いてくる。
この時も山頂滞在中の先客の方に、どこから登ってこられたのかとご質問をいただき、笛石山を紹介することとなった。
とはいえ、松の木公園からの行程は短くはなく、自分の場合で登頂まで5時間かかったことを忘れず付け加えておいた。








後山山頂から歩いてきた尾根を俯瞰する

 後山山頂は展望は完全には開けないが、東西方向にそこそこの景観は得られる。
笛石山は遥か低く、そしてミニピーク群の向こうに隠れている。
最初の松の木公園からの登りも含めると、かなりの達成感を得られる。
前回登ってきた、おごしき山の尾根もなかなか良かったが、達成感においては笛石山の尾根のほうが断然上だ。

 出発前に今後の行程を確認しておく。
距離でいうとまだ半分しか歩いていないが、今日のメインテーマはあくまで笛石山から後山まで。残りは踏破済の行程でおまけのようなもの。
駒の尾山までの稜線漫歩、そして帰りの自転車によるダウンヒルを楽しむために歩くといってもいい。
しかも岡山県側からのアクセスが良い区間ということで歩いている方も多いだろう。これまでのような緊張感からは解放されるはずだ。
とはいえ、最後の大海里峠からの下りだけは未踏ルートなので、最後までは気を抜けないが。




12:07 後山山頂出発

 そういう訳で、これまでとは違って、ゆったりとした気分で後山を出発したのだがその直後トラブル発生。
なんと歩き始めてしばらくしてからクマ鈴を落としたことに気付いたのだ。
気付いたところから後山方向に戻りつつ地面をくまなく探していくが結局見つからなかった。
落ち葉とクマ鈴がほぼ同系色であったことも不運だった。春夏ならば見つけられた気がする。
落としたことにすぐに気付かなかったことが悔やまれる。
ザックに残っていたクマ鈴をぶら下げていた皮製バンドを見てみると見事に切れていた。購入してから5年は使っているものだったからこれは経年劣化だろう。
笛石山の静かな尾根を無事に踏破出来たのを見届けたのを最後に縁が切れたと感じる。
5年間使ったクマ鈴を失って淋しいが、今日の山行後にまた好日山荘に行かなければ。
前回の氷ノ山ではトレッキングポールの石突きカバーを無くしているし、これで2週続けての紛失トラブル。続く時は続くものだ。








駒の尾山へ向けて稜線歩きを再開

 落ちてしまったクマ鈴探索を諦め、気持ちを切り替えて縦走を再開。
クマ鈴探索に使った時間は15分くらいだっただろうか。予定通りに行程を消化するにあたって支障はないと判断した。
とはいえ、駒の尾山から大海里峠、そして下山地までは静かな行程が予想される。
クマ鈴の代わりに三脚を拍子木代わりに打ち鳴らして歩くこととしよう。

 後山〜駒の尾山〜大海里峠については、前回の縦走時に詳述しているので今回は写真のみとしたい。
この稜線は比較的展望に恵まれているので、読図も容易に行える。
















13:35 駒の尾山山頂(1,280m)到着

 クマ鈴探索の時間を差し引くと、約1時間10分くらいで駒の尾山に到着。
今日は軽装だし残る行程も少ないので、いつもより少しペースを上げた。そのせいか時折現れる登り返しはけっこう息が上がってしまった。

 到着時には予想外に誰も居らず、山頂滞在時間中にも3人の方が来られただけで
後山に比べると対照的に静かな駒の尾山山頂だった。








駒の尾山山頂(1,280m)から後山方面を振り返る

 鍋ヶ谷山と船木山に隠れるように、後山がちょっとだけ頭を出している。
今日の縦走の序盤に登った笛石山は全く見えないが、それがかえって達成感を高めてくれる。
前回夏に来た時には曇りだった光景なので、澄んだ秋空の元で縦走尾根がとても爽やかに見える。
実際にはそこそこアップダウンがあるので、楽とまではいえないが。








駒の尾山山頂でお楽しみのコーヒータイム

 バーナー、クッカー等は日帰り装備でもある程度の重りになるし、ザックの中の隙間を塞いでくれる必携装備となった。
道具の扱いは慣れるまでもなく、2、3回程度使ってみたら不安感は払しょくされた。
山頂で沸かして飲むホットコーヒーがたいへん美味しく感じられる。




 ここも長居したくなる山頂だが、下山までの所要時間はあと1時間くらいと判断。
名残惜しいが装備を畳んで出発準備に入る。




14:13 駒の尾山山頂出発

 駒の尾山を過ぎても大海里峠までは踏破済の区間が続く。
とはいえ、クマ鈴が無いことは念頭におかなければいけなかった。
一つ予備に鈴を持っていても良いかもしれないし、鈴はザックから落ちるものと考えて、
細引きで括るなどの対策をとることも良いかもしれない。








14:30 大海里峠(1,120m+)

 踏破済の縦走路を駆け下るようにして大海里峠へ降り立つ。
もっと日が長い時期であればダルガ峰方面へ引き続き縦走したいが、
今日はここで長らく楽しんだ主稜線を外れる。

 ここから下山地までは未踏区間であり、ちょっと気を引き締めなおす。
あとは下り一辺倒ではあるが距離もそこそこあるし、標高差も300m余り残している。
ルートファインディングに気を配っていこう。








自転車をデポしている登山口へ向けてひたすら下る

 大海里峠からしばらくはジグザグが続いたが、いつしか沢沿いに出る。
ここまでは概ね地形図通りといえるが、この後山腹道になる区間が長くなった。
どうやら地形図の破線道は現状と少し違うのではないかと思う。








長く感じた山腹道の区間

 あまりに平行移動が長く感じたものだから、このまま行くとちくさスキー場まで行ってしまうのではないかと錯覚した。
でも実際には下りもあるから下山中なのは間違いないだろうけど。
拍子木代わりになった三脚のおかげでだいぶ喧しく歩けたけど、三脚がこのような使い方をされるとはメーカーも想定外に違いない。
もし六甲で同じことをしたら、さぞはた迷惑だろう。








大海里峠を指す指導標に元気付けられる

 想定よりも長く感じた山腹道に対する疑念も、この指導標のおかげで払しょくされた。
終始明瞭なトラックではあるが、あまり多くの人は歩いていないように見受けられたこともある。
おそらく駒の尾山を目指すルートの中ではかなりマイナーなほうになるのではないだろうか。








15:06 駒の尾山登山口(鍋ヶ谷渓谷側)到着

 少し前からちらちらと車道が見えてきて、そして疾走する車やバイクも目に入った。
ようやく文明世界に戻ってきた安堵感と共に今日の徒歩での行程はここで終了。
同時に登山口にデポしておいた自転車にも出迎えられる。

 この登山口はちくさスキー場から少し南へ下ったところにある。
前回よりはダウンヒルの距離が少し短くなるが、下り一辺倒の爽快感を再び味わうには十分な距離と標高差がある。








15:19 駒の尾山登山口(鍋ヶ谷渓谷側)出発

 出発準備を整えて駒の尾山登山口を出発。一路、松の木公園を目指す。
特に鍋ヶ谷渓谷を下りきるまでは急な下りとカーブが連続する。
前回は夏だったので本当に爽快だったが、今回はちょっと寒いくらいだった。
今の時期にダウンヒルを楽しむにはアウターウェアが大事ということを身をもって知った。








秋の斜光に照らされたコスモス

 車よりはゆったりと景色が流れる自転車ならではの楽しみも。




15:41 松の木公園到着

 駒の尾山登山口から約20分でダウンヒル終了。
自転車大会も既に終了していたようで、いつもの静かな松の木公園だった。

 クマ鈴を無くしたのは残念だが、好天の元で笛石山を縦走出来て大満足の1日となった。
自転車を折り畳むなどの帰り支度、疲れを早く取るためのストレッチを済ませてから松の木公園を後にする。








「千種富士」笛石山を見送る

 麓からは大馬鹿門の作者の方の作品と共に、笛石山の雄姿を楽しむことが出来る。
肉眼では頂上直下の猫石もよく見えた。今朝、あそこに立った自分の姿も麓から見えていただろう。
それにしても、ここから見ると本当に独立峰としか見えない。これも自然の起こした偶然であるがすごいことだ。








 〜 終わりに 〜

 素晴らしい好天に恵まれて楽しく笛石山を踏破出来ました。
この山のルートは基本的にエスケープルートが少なく、標高差や歩行距離も比較的長くなります。
ぜひ好天の日を狙って歩かれることをお勧めします。登山者はやはり岡山県側のほうが多いようです。








行程断面図です




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