「志引峠から1,253mピーク」 2014年 6月15日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「千草」、「西河内」




 〜 はじめに 〜

 昨日の後山・笛石山周回に続きまして、今日は志引峠から後山へ突き上げる県境尾根に挑戦です。
日名倉山やベルピール公園から後山を眺めると、この県境尾根がたいへん目立ち登高意欲をそそられます。
最近はだいぶ踏み跡が付いてきたようですが、登山道として整備されておらず一般向きでないルートというのは変わりありません。
読図によって慎重に地形を観察しながらの尾根歩きとなりました。

 この日は昼頃までで山行を終えたいことと、適当な周回ルートを組めないこともあって、
珍しくピストンに近い形で歩いています。
また、前日に後山・笛石山を周回していることから、2日連続で後山山頂まで向かうかどうかについては
1,253mピークに到達するまでの所要時間をみて決めることにしました。









 5:56 志引峠出発

 3年前の日名倉山登山以来となる志引峠に駐車。峠脇に数台駐車出来るスペースがある。
写真では向かって左側が日名倉山、右側が後山。後方が岡山県となっている。
後山へ向かう県境尾根へ取付くために、一旦峠を越えて岡山県側へ入る。








いよいよ未踏の県境尾根へ

 志引峠の西側は植林帯となっており、適当なところから森に入って尾根を目指す。
車道から森に入るところには何となく踏み跡が付いている。








志引峠付近から1,253mピークを見据える 県境尾根はいきなりの急登で始まる 

 志引峠付近の県境尾根上に出ると、東側の景観が開けている。
ほぼ全てが森に覆われた県境尾根にあって、展望箇所があるというのは登り始めであっても有難い。
ただし擁壁は当然崖になっているので足元注意。写真では分かりにくいけど眼下には国道429号が走っている。

 県境尾根縦走前半、上乢という峠に至るまでに等高線の閉じたピークが目立つものだけで4つある。
標高差はいずれも大したことはないが、未整備で歩きにくい急斜面が連続するタフなアップダウンとなっている。
まずは740m+ピークまでの約50mの登りで始まる。地形図で見るよりもなかなかの急坂と感じた。








 6:17 740m+ピーク

 歩き始めの急登で喘ぎつつ、740m+ピークに到達。西側に比較的大きな尾根を派生させているピークだ。
次に目指す760m+ピークはほぼ真北、木々越しに何となく見えている。

 740m+ピークの北西側には作業道が見受けられた。どこから上がってきているのだろうか。








 6:29 760m+ピーク

 740m+ピークからの緩やかな吊り尾根を歩いて760m+ピークに差し掛かる。
ピーク自体が左へ向けて弧を描いており、ここで県境尾根は北西へ大きく向きを変える。
この760m+ピークまでで上乢までのほぼ中間にあたる。








730m+コルを挟んで険しいアップダウンが続く

 760m+ピークから短い急坂を下り、コルからは約70mの急な登り返しとなる。
ここもやはり地形図以上に急坂だった気がする。

 県境尾根は一個一個のアップダウンがかなり強烈だった。
だいぶ前に経験があるのだが、地面に落ちている木の枝に足を引っ掛けて転倒しないように注意する。








 7:00 800m+ピーク

 70mの激登りを乗り越えると、南北に伸びる800m+ピークに到達。
ここで進行方向は再び北を目指していく。

 次の770m+ピークに至るまでのアップダウンが上乢までで最もトリッキーだと感じた。
直接尾根をつなぐというよりも、西側に並走する別尾根にトラバースしたという感触のコース取りとなった。








 7:11 770m+ピーク

 760m+コル周辺は特に周辺の地形と進行方向に注意しながら歩いていく。
無事にコルを認識して、上乢へ向かうという意識を持って北西へ向かいつつ、斜めに770m+ピークに乗り上げる。

 770m+ピークは上乢のすぐ南にあって、ピーク北端から急斜面を見下ろすと上乢の広い鞍部が既に見えている。








 7:16 上乢 うえだわ(739m) 到着

 志引峠から1時間15分くらいで上乢に到着。
後山方面へは上乢からがようやく本格的な登りとなるが、ここまでの縦走がある意味今日の行程の核心部だったかもしれない。
当初は志引峠まで往復とも完全なピストンを考えていたが、下山時に再びここまでのアップダウンを歩くモチヴェーションがあるか微妙な感触だった。



 上乢は岡山県側には作業道が上がってきており、間伐も進んで比較的明るい雰囲気。
一方兵庫県側は手付かずで、地形図の破線道表示を裏付けるような峠道の名残が観られる。

 この後登っていくことになる北側の急斜面を見上げながら、切り株の一つに腰を下ろして小休止をとっておく。




 7:28 上乢出発

 上乢からはこれまでの行程では無かった明瞭な踏み跡があった。
直近の過去にどなたかが歩かれたかのようで、ルートファインディングの手間は大いに軽減される。








はっきりとした尾根に乗った

 上乢からの急斜面は地形図以上にきつく感じられるが標高差は約50m。
939m三角点ピークから南西へ伸びる支尾根の、そのまた支尾根に乗ることが出来た。
直前まで西側斜面には作業道も上がってきており、下山時には上乢付近の急斜面を避けることも可能。

 乗ったばかりの支尾根から北側には別の支尾根も見えており、地形図上を目で追うと今後合流する見込みだ。








日名倉山を背に急斜面を詰めていく

 最初に乗った支尾根はそのまま急斜面となって、北側の支尾根に合流する。
この辺りはかなりの急斜面で、しかも滑りやすい肌理の細かい地面。
時にずり落ちながらもじりじりと北側の尾根を目指していくしかない。

 写真は暗い森に露出が合って白トビしているところに、ほぼ同じ標高になった日名倉山(1,047m)を肉眼では見ることが出来た。
時折日名倉山を垣間見ることで、行程の進み具合の目安に出来る。








939m三角点ピークより南西側に伸びる尾根に乗った

 何とか急斜面をこなして新たな尾根に乗った。下山時には同ポイントで尾根を外すことになるので、周囲を見渡して確認しておく。

 目指す939m三角点ピークは近くなってきたが、この南西尾根も激登りの連続だった。
それでもトレースははっきりしており足場も豊富。ハードだったが順調に尾根を登ることが出来た。








 8:03 939m三角点ピーク

 何とか激登りに耐えてようやく939m三角点ピークに到着。
三角点は南北に細長いピークの真ん中辺りにあった。
県境尾根において地形図上では目立つピークだが残念ながら展望は皆無。
但し広い上に下草が無いので居心地は良い。とりあえず激登りで乱れた息を整えるためにも小休止をとる。








傷一つないきれいな三角点「入谷」








 8:20 939mピーク出発

 やや長めの小休止を終えて出発。
 939mピーク北端からは目指す1,253mピークと前衛峰1,094mピークが見えて、残る行程の距離と標高差を推し量ることが出来る。

 この後一旦910m+コルへ下ってから、いよいよ1,094mピークへ向けての登りが始まる。








またまた続く激登り

 詰まった等高線が描かれている通りの激登りだった。
石や木の根など使えるものは何でも足場に使って、じりじりと高度を上げていく。
幸いだったのがこの辺りでは自然林が多かったことだった。植林とはやはり全く雰囲気が違う。








1,010m+付近

 小石を重ねたケルンがある1,010m+付近を通過。
登りでは読図の必要はあまりないが、下りで歩く時は少し注意が必要となりそうなところだ。
ここで尾根はやや屈曲し、更に南東側に小さな支尾根まで派生している。








尾根を塞ぐ大岩

 登るにつれてやや傾斜が緩み、そろそろ1,094mピークに辿り着きそうかというところで大岩に行き当たる。
写真では上手く表現しきれていないと感じるけど、船の舳先を思わせるなかなか壮観な姿だ。

 この大岩は越せず、尾根の西側に迂回するトレースが付いているのでこれを辿っていく。








 9:00 1,094mピーク到着

 大岩をやり過ごしてまもなく1,094mピークに到着。
939mピークから見て、1,253mピークの前衛峰のようにそびえていたところだ。
ピークの西側は植林、東側は自然林に覆われて、ここも残念ながら展望皆無。

 ここで小休止を入れて、残り少なくなってきた登りに備えておく。




 9:10 1,094mピーク出発

 10mほどだけ鞍部へ下がってから、1,253mピークへ向けていよいよ最後の登りが始まる。
この付近の東側にはそこそこ広い平坦地があって、ヌタ場がそこかしこに見られる。








1,253mピークへ向けて

 これまでのような激登りほどではないが、程々の傾斜の登りが続く。
境目の県境尾根を挟んで岡山県側は植林、兵庫県側は自然林となっている。
 
 しばらく登っていると尾根上にアセビ藪が現れて邪魔されるが、藪の合間を縫うように登っていくことが出来る。
地形図上では1,094mピークの上方、尾根が東寄りに膨らんでカーブを描いている辺りだ。

 なお、これまでも時折笛石山から登ってくる尾根が東側に見えていたが、
この頃になるとますます近くなっていよいよ目指す1,253mピークが近いことを悟る。








 9:28 1,170m+

 カーブを描く尾根を登ってくると、等高線の間が伸びている隠れたピーク1,170m+に乗り上げる。
写真では分からないがこの辺りから北を見ると、1,253mピークの盛り上りが木々越しでも何となく見えている。あと少しだ!








笹の間を縫うように登っていく

 1,170m+を過ぎると、周囲は一気に笹原と化し1,253mピークまで続いていく。
ルートは明瞭に切り開きされているので、笹を漕ぐ必要もなく急斜面ではあるが普通に登っていける。
後山の山域も六甲と同じで笹が見えだすと山頂が近い。








 9:40 1,253mピーク到着

 少し手前で傾斜が緩み、南側から1,253mピークの輪郭を掴むことが出来る。
そして昨日歩いたばかりの後山・笛石山周回ルートに合流して、未踏だった県境尾根歩きは無事終了だ!
志引峠から約3時間40分。色んな意味で歩きごたえのある尾根だった。

 下山までの所要時間を考え、昨日踏んだばかりの後山までは行かずにここを終点とした。
これでちょうどお昼時に山行を終えることが出来るだろう。








下山を前に1,253mで休憩

 
 展望が後山のみというピークだが、自然林に覆われているためになかなか雰囲気は良い。
とりあえず行動食のパンを食べて、激下りの下山に備えておく。








10:05 1,253mピーク出発

 今まで登ってきたところを、ピストンで引き返していく。
激登りが多かったために登りでは多くの時間を費やしたが、下山においてはどのくらいの所要時間となるだろうか。








10:18 東側にヌタ場が広がる1,094mピーク 下山時に垣間見た日名倉山 

 やはりピストンということもあって安心感のある下りだった。
下りはやはり早いけど、勢いを止めるのに脚力を要する激下りだ。
岩場は少ないのでついついスピードを出しがちになってしまう。








939mピークからの下り

 上から見ると殆ど崖といえるほどの斜度の939mピーク南側斜面。
土は柔らかく足運びは慎重に。

 この下の尾根を外す箇所は、ちょっとだけ行き過ぎて山腹をトラバースしてルート修正した。








10:58 上乢

 1,253mピークから約50分で上乢まで下ってきた。
登りは2時間10分掛かっているので、半分以下の時間で下りは飛ばし過ぎかもしれない。
でもそれだけ急坂が連続しているということで納得した。

 車を置いている志引峠までどうやって戻るか検討するも、やはり行程序盤のタフなアップダウンの連続は避けたい気持ちが強かった。
ヤマレコなどで多くの利用例のある破線道を辿って、兵庫県側の国道429号へ下ることにした。
但し最後に暑い車道を登ることを甘受しなければならない。








かつては峠道として往来があったのだろうか

 破線道は明確に現存していた。
写真では分かりにくいかもしれないが、現地で立ってみると明らかに道が存在しているのが分かる。
時に現れるテープも参考にしながら上乢から緩やかに下っていく。

 まもなく小さな沢を横切って対岸へ。沢沿いを下っていくわけではないようだ。








大玉転がし出来そうな溝状の古道が続く

 地形図からある程度周辺の地形をイメージしているが、基本的にルートファインディングしながら下っていく。
テープはそれなりに点在していて、ある程度人が歩いているのが感じられる。








古道はいつしか尾根に乗った

 背後には今朝の登りでアップダウンを繰り返した県境尾根が透けて見える。
時折、国道429号を快走する車やバイクの走行音が聞こえてくる。
まもなく車道へ出られそうな感じだ。








11:22 志引峠の少し北で国道429号に降り立つ

 眼下に車道が見えてきて、適当なところからルートを外して下りに掛かる。
ルートはなおも下に続いているが、少しでも車道歩きを短くしたい。

 ツーリング中のライダーを驚かせないよう、誰も通りかからないのを見計らって山から出る。
現地の車道脇には道標などは全く無かった。

 地形図と現地の状況を見比べると、カーブに沢が下ってきていることは同じ。
ただ破線道は実際にはもう少し北寄りを通っていることに要注意。
沢沿いを辿ると不要な労力を使ってしまうことになるだろう。




 上乢〜志引峠間のアップダウンを避けた代償として、車道を登って志引峠まで戻らなくてはいけない。
緩やかとはいえ登りは登りで、しかも暑いし車やバイクも通りかかるので通行注意。
このような人里離れたところを歩行者が居ると想定している人は少ないだろう。








国道429号からの東方の景観

 車道歩きの際に撮影した景観。車を運転していたらゆっくり見られない景色なのでちょっと得した気分。
前日歩いたばかりの笛石山、少し前に歩いた植松山、更に右奥には鳥ヶ乢。背後にはうっすらと古城山〜東山と思われる稜線まで見える。
もう新緑の時期は終わって、すっかり夏の気配が濃厚になったと実感した。








11:43 志引峠到着

 暑さでバテバテになりながらも、車道に降り立ってから約20分でようやく志引峠に辿り着いた。
遥か遠くに高く見える1,253mピークを見上げて達成感が改めて込み上げてくる!
見た目ほど距離は大したことはないけど、とにかく急坂が多いのと整備されたルートではないことで歩きごたえは充分だった。








1,253mピーク遠景

 志引峠からだと後山山頂は殆ど見えず、1,253mピークがたいへん目立って見える。
左下へ伸びるのが県境尾根。右側へは笛石山へ通じる尾根。




 2日間、それぞれ歩きごたえのある行程で心地良い疲れだった。
この後エーガイヤ温泉に直行して汗を流し、すっきりリフレッシュしてから帰途へ着く。




 〜 終わりに 〜

 後山周辺では未だにバリエーションルート扱いとなる県境尾根です。
志引峠から上乢までの尾根はやや地形が複雑。上乢から東側へ下る破線道もルートファインディングが必要。
上乢から1,253mピークまではほぼ一本道の尾根道ですが、下りで尾根を外す箇所が一ヶ所あり。
 地形図、コンパスを駆使して読図しながら、尾根歩きをお楽しみ下さい。








行程断面図です




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