「大山から豪円山」 2017年 5月29日(月)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「伯耆大山


 前々からいずれはと思っていた大山に行ってきました。
縦走出来ずにピストンに近い行程になってしまう、夏山登山道は全線が階段というのが先送りしてた理由です。
しかし行ってみれば、やはり大山は素晴らしい山と実感することになりました。




 2時に起床して自宅を出発。
山崎ICから中国道と米子道を走って5時30分頃には登山口付近に到着。
夏山登山道の登山口に最寄りの下山野営場駐車場に車を停めます。

 運転しながら気付いてましたが、この日は予想よりもPM2.5の影響が大きくて霞んでました。
登っているうちにマシになれば良いのですが。

 自分が到着した時には既にけっこう車が停まっていました。遠くは中部地方からの車も見かけます。
さすが中国地方唯一の百名山ということをいきなり実感しました。駐車場にはトイレもあって便利です。






 行程概要  行程後半、寂静山周辺は森の中の分岐が多いので、特にしっかり道標を確認しました。

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。


 5:40 下山野営場駐車場(770m+)出発   

 初めての大山ということでもちろん自分としてもワクワク。手早く登山準備を整えて出発する。
駐車場には「一木一石運動」のために用意されている石があるので、それならばと一つザックに入れていくことにした。








夏山登山道登山口(780m+)  大山頂上まであと2.6km 

 駐車場から道路の向かい側にはすぐに登山口。
最初の一歩目からいきなり階段が始まっている。

 登り始めからけっこう風が強かった。標高の低い森の中でも涼しく登れるが、山頂周辺ではどうなるだろう。

 6時前といっても既にだいぶ明るかった。
運転してきた距離からいっても、これなら下道を走ってきて前夜泊したほうが良かった。
次に来る時はそうしようと考えていた。

 平日のこの時間帯でも自分の前後には数人の登山者が歩いていたので、
写真を撮るためにタイミングを見計らった。




 夏山登山道最下部では南光河原駐車場から登ってくる道も合流してくる。
今回の行程の場合、下山ルートが元谷経由であれば南光河原のほうが良かったと気付いた。








 5:55 一合目(870m+)   

 あまり登っていないうちに早くも一合目。
夏山登山道のある尾根は麓は緩やかだが、次第に傾斜を増していく分かりやすい地形だ。
この辺りは階段の段差も大したことはないが…。








 6:10 二合目(970m+)   

 二合目に差し掛かる頃には、早くも段差の大きな階段道に飽きてきた。
六甲縦走序盤の栂尾山へのコンクリート階段のように、ただただ淡々と登っていく感じ。
登山者数からして必要な整備なのだろうけど、登山の楽しさからいえばやはり味気ない感じが否めない。

 それでも新緑が美しいブナの森の中を登っていくので、登山道の周囲の光景は素晴らしい。








 6:23 三合目(1,070m+)   

 登り始めてから約200m上げてきた。
何合目表示に加えて所々では標高も表示されているので、山頂までのカウントダウンに追われるよう。
写真を撮っても同じような場面が続いてしまうので、自分もいつもよりもだいぶ撮影回数を減らしてハイペースで登ってきていたように思う。

 丸太階段に加えて石を敷いているところもあって、整備が行き届いていることがひしひしと伝わってくる登山道だった。

 この辺りで下りの登山者と初めて出会い、この後も数人の方とすれ違った。
夏山登山道ならご来光に間に合うように、夜中から登ることも出来そうだ。








 6:35 四合目(1,140m+)   

 地形図で「夏山登山道」と併記されている辺りにいつしか入っていて、この辺りは等高線の間隔が狭くなっている。
階段の大きい段差を越えるごとに脚と膝に掛かる負担を感じる。
自分はトレーニングの一環として75Lザックの時しか基本的にトレッキングポールを使っていないが、
この登山道に限っていえばポールを使えば大幅に楽になるのは間違いないだろう。

 しばらく休んでいなかったこともあって、四合目で5分くらい小休止を入れた。








 6:51 五合目(1,240m+)   

 ちょうど道半ばの五合目に到着。ここでは山の神も祀られている。
広めに段々が設けられていて、けっこう大勢が休んでいけそうだ。








 6:54 行者谷分かれ(1,250m+)   

 五合目からすぐに行者谷分かれに差し掛かる。
自分はいつも極力ピストンは避けるようにしているが、これまで登ってきた階段道を通らないためにも行者コースの存在は大きいなと改めて思う。

 ここまで来ると森林限界が近いようで、木々がだいぶ小ぶりになってきた。








 7:05 六合目避難小屋(1,340m+)   

 一気に視界が開けてくる頃に六合目避難小屋に到着。
ここまでにもチラチラと外界が見えていたが、やはり今日は霞が酷い。
初めて見る大山北壁が楽しみだったが、ソフト効果を掛けたように見えていて残念だ。
それと夏山登山道から観るとどうしても北壁が逆行気味なので、ユートピアコースからも見ておきたいと思うようになった。




 7:15 出発








下りで立ち寄るつもりの豪円山辺りが見えているが・・  近づいてくる北壁の威容に圧倒される 

 周囲の大展望を得られるごとに、霞みのおかげで感動も差し引きされていく。
大山にはもう1回来ないといけないと登りながら早くも決めていた。
この日は春霞のように全く遠望が利かなかった。PM2.5の影響はおそるべし。








 7:27 七合目(1,440m+)   

 カウントダウンも残すところあと3割。
霞みは残念だが初めての山なのでワクワク感は相当ある。
等高線を見るとこの辺から標高差100mの間辺りが最も急な感じだ。








霞んでいなければ感動する絶景だろうけど・・ 段差の大きい階段道は変わらず続く 

 そろそろ氷ノ山を越える標高になるが、数値は同じでもやはり独立峰なので下界との標高差は大きく感じる。
人が多いのがイヤでまだ行ったことのない富士山でも同じことがいえるのだろう。

 周囲はハイマツではないが、完全に森林限界を越えていて低木しか生えていない。








 7:48 八合目(1,580m+)   

 苦しい急登がしばらく続いて八合目に到着。残す標高差からしてもう傾斜が緩んでくるはずだ。








お待ちかねの木道が始まる  夏山登山道の尾根が大きく曲がってくる 

 大山名物?の木道に差し掛かると、北壁の一端の崖が間近に見えて大迫力だ。
この辺りまで登ってくると、風がかなり強く吹いていて尚且つ汗冷えもあって寒かった。
休憩の時には上着を羽織りたくなるかもしれない。








 7:59 石室コース分岐(1,610m+)   

 山頂付近で周回コースをとれる石室コースとの分岐に差し掛かる。
既に山頂は踏んだのか石室コースを歩かれている登山者も見かける。

 まずはとりあえず初めての山頂を目指すことにする。
山頂西側に広がる大草原を楽しみながら登っていくが、出来れば地面を歩きたいなとも思う。









上部の石室コース分岐を過ぎれば、山頂まであと200m  








山頂避難小屋を横目に見ながら山頂へ   

 麓から持ってきた石はここへ置いていった。






 8:15 弥山山頂(1,700m+) ※あえて実測の標高値を載せておきます  弥山山頂より。遠い剣ヶ峰を見通す。三角点ピークはすぐそば 

 多くの方のレポで観てきた弥山山頂に到着!
平日の朝早くなので登山者は疎らで、誰もいなくなってから撮影することが出来た。

 山頂の石碑からは自然に東に目が行く。
崩壊が続く稜線の向こうに見える剣ヶ峰を踏まない限り、自分の場合どうしても消化不良に感じてしまう。

 三角点ピークがすぐそばに見えていて、踏み跡もはっきりしているのであそこまでは安全に辿れそう。
ということで柵を越えて三角点ピークには立つことが出来た。
GPSデータは三角点まで続いているが、立入禁止になっているので自主規制として写真は掲載しないことにします。




 初めての弥山山頂で、霞んだ光景を見ながらしばらくのんびり過ごした。

 環境保護のための木道完備なのは理解出来るが、木道で日陰になっている山頂付近の地面はどうなってるのか気になった。
周囲に柵を設けてる点も公園化した竹田城跡と雰囲気が通じるところがあるが、色んな意味で仕方がないのだろうか。
















 8:58 弥山山頂出発   

 風景は霞んではいてもやはり山頂の居心地は良かった。

 あとの行程もあるので、重い腰を上げて引き返していくことにする。
下りは石室コースを周回して降りていく。








ダイセンキャラボクの大平原を楽しみながら下っていく  間近の大ノ沢が壮観。遥か眼下には桝水高原スキー場がちらっと見える 

 弥山山頂を踏んだ後に石室コースで高原の景観を楽しんでいく。
ここのダイセンキャラボクは特別天然記念物ということで、しっかりと見ておきながら歩いていく。

 木道が大草原の縁を通るようになると、大ノ沢を見下ろす高度感も楽しめるようになる。
しかし遠望は相変わらずダメだった。








 9:11 石室(1,590m+) 大草原を下から見上げる 

 草原の最下部には天井が崩れかけた石室がある。
大正9年に夏山登山道が整備された際に避難用として建てられたという。
歴史ある建造物なのでこの天井は直したほうがいいのではないだろうかと思う。

 石室の周辺には小さな池塘(干上がっていた)があるが、これは地蔵ヶ池、梵字ヶ池といい、
古くから大山寺による「弥山禅定」という神事が行われていたという。

 大山の歴史を垣間見られる見どころを巡る辺りが大草原の最下部で、見上げると大斜面が広がる。
荒々しい北壁と南壁、切れ落ちた稜線が印象的な大山にあって例外的な光景になっている。








石室コースを登り返して周回完了   

 標高差は30mほどではあるが、最後に登り返すと夏山登山道への分岐に辿り着く。




 9:19 石室コース分岐




 夏山登山道をひたすら下っていくが、平日でも数えきれないほど多くの登山者が続々と登ってこられていた。
下りは下りで段差の大きい階段は膝への負担が大きいので、慎重にゆっくりと下っていく。




10:00 行者谷分かれ(1,250m+)

 ここでピストンから解放されて行者コースへと下っていく。
この時、夏山登山道は小学生の団体さんが登ってこられていた。
学校での集団登山での自分の行先は須磨アルプスだった。








北壁が大きく見え始める  行者コースも階段道が連続する 

 夏山登山道は小学生で賑やかだが、行者コースに入った途端に人けが少なくなった。
少し下ったところからは北壁が見えてくるが、見上げるほどに素晴らしい山岳風景だ。

 行者コースに入っても階段道は延々と続くうえに、さらに輪を掛けて段差の大きな激下りだった。
途中ですれ違った女性登山者のグループもしんどそう。








ブナ回廊にもなっている行者コース  途中で少しだけなだらかになる 

 夏山登山道でも目立っていたが、行者コースもブナが素晴らしい。
傾斜が緩いところでは、部分的に尾根上に設けられた木道を下っていく。

 元谷からと思われる水音が聞こえてくると、ようやく急坂から解放される。








10:26 元谷(1,000m+)  河原を斜めに横切るルートが付いている 

 北壁の大展望が楽しみだった元谷に下りてくる。
幾重にも巨大な堰堤が築かれているが、崩壊が進む北壁の自然の威容を改めて感じられるところだった。

 元谷の下流側では豪円山が見えているがまだまだ遠い。

 元谷を斜めに横切って元谷右岸へ進んだところで小休止をとった。




10:36 元谷出発








再び森の中へ入っていく  

 元谷から堰堤沿いに踏み跡を辿っていくと、行者コースは再び森の中へと入っていく。
車でも登ってこられる作業道もあるが、治山工事用の道路なので入らないようにと案内されている。

 ここから元谷右岸沿いを降りていく登山道は階段は少なめで歩きやすかった。








10:53 二俣(910m+)   

 ユートピアコースへの分岐を確認。
東側には行者コースよりは細い、山道らしい山道が伸びている。

 ここまで来ると行者登山口が近い。








10:57 行者登山口・大神山神社奥宮(890m+)  

 行者登山口は大神山神社奥宮の境内裏手にあった。
ここまでは普段着の観光客(参詣客)も来ていて、いきなり下界へ下りたことを実感する。
境内にはきれいなトイレもあって便利。5分程度小休止をとった。




 境内を抜けると大山寺へ下る参道を歩いていくが、でこぼこの石畳はけっこう歩きにくい。








11:12 寂静山、豪円山へ向けて参道を離れる   

 寂静山への道標を見て右折。
僧兵コースとは何のことか分からなかったが、大山寺周辺を巡るウォーキングコースに付けられた名前らしい。

 参道を離れると、ほとんど人影は無くなる。








道標や案内板を観ながら寂静山へ向かう   








お里の松

むかし一乗院の若い僧与七は、赤碕の漁夫の娘お里をみそめ恋仲となった、
しかし与七はやがて始まった船上合戦に出陣し、そこで戦死をした。
このことを知ったお里は悲しみのあまりこの地で自らの命を絶った。

一乗院の僧兵達はこれを哀れんで、お里をこの地に葬り地蔵を建立し、
一本の松を植えて懇ろに弔ったと言われ、この名がある。
11:19 お里の松(840m+)   

 寂静山へ向かっていると、悲しい昔話が伝わるお里の松にやってくる。
森の向こうには北壁の展望が見事だ。中でも東側に突き出た三鈷峰に惹かれる。








11:23 寂静山山頂(872m)到着   

 お里の松からはすぐに寂静山山頂に到着。
大山寺のすぐ近くにあるからか、信仰の地を思わせる山頂だった。

 山頂のすぐ北側には展望地があって、大山の北面全てを眺められる。
一方、海側も見えているのだが、今日ばかりはやはり霞んでいてよく見えない。

 寂静山に辿り着くまでにちょっと登り返したので、ここで小休止をとっていく。
この時は自分以外に全く人けが無く、名前どおりに静かな山だった。




11:35 寂静山山頂出発

 最後の目的地である豪円山へ向かうが、まだまだ分岐があって一度は間違った方へ進みかけた。
基本は中の原へ進むようにすれば問題はないと思う。



 舗装された林道を出ると、中の原ゲレンデと豪円山ゲレンデの間の道端だった。
道路の向かい側には豪円山が大きく見えている。








11:48 豪円山ゲレンデ   

 豪円山ゲレンデの緩斜面を右手に見ながら、豪円山を目指す。
大山にスキーでは来たことはないが、なかなか大きな規模で面白そうだった。

 アンテナ施設を過ぎたところに「豪円地蔵」の道標があって、草深いがはっきりした踏み跡が伸びている。








スキー場と大山を振り返りながら豪円山へ登っていく  山頂近くに咲いている花はタニウツギ?だろうか

 豪円山へ登り始めるとすぐに周辺の光景が広がってくる。
西側は木々に遮られるが、スキー場の方向がよく見える。
緩やかな山頂を持つ宝珠山北斜面で扇状に展開するゲレンデは飛ばしたら気持ちよさそうだ。

 山頂が近づいてくると急坂からは解放されるが、日当たりが良いのでとにかく暑かった。
朝方強く吹いていた風もいつしか止んでいた。








12:05 豪円山山頂(891m)到着   

 豪円地蔵の鎮座する豪円山山頂に到着。
今日の霞と周辺の木々のせいもあるだろうけど、米子方面の展望は期待していたほどではないような。
だいぶ暑いけどせっかく来たので、ちょっと小休止していくことにする。




12:15 豪円山山頂出発

 登ってきた踏み跡を忠実に引き返す。
また、舗装路を進むと中腹には「のろし台跡」の展望台があるようだが、この日は霞んでいたのでまたの機会にした。








豪円山

この山はもと呼瀧山と呼ばれていたが、大山寺中興の祖である豪円僧正の墓所となって後、
豪円山と呼ばれるようになった。

ここに一つの伝説がある。
豪円僧正は大山寺領の事で米子城主と争い、没するにあたり
「吾を葬るには米子城を俯瞰すべき地に於いてせよ、吾必らず異日米子城の没落を見せよう」と
遺言したのでこれを呼瀧山に葬った。
後三年、城主中村一忠は頓死し、その家はついに血統を絶ったという。
12:32 送迎用リフト乗り場(760m+)   

 車道を下って送迎用リフト乗り場までやってきた。
ここのスキー場では駐車場からゲレンデ間をリフトでアクセスするようだ。

 このリフト下には遊歩道があったことを降りてきてから気付いた。




 大山寺の門前町を歩いて、出発地の下山駐車場へと戻っていく。








12:47 下山野営場駐車場(770m+)到着

 山行装備を解いて、そのまま豪円湯院に直行して登山の汗を流した。

 その後で観光案内所に立ち寄って、忘れずに大山の山バッジを購入。
登頂時にバッジを買おうと頂上避難小屋に入ってみたが、売店は営業していなかった。








桝水高原スキー場から大山を見上げる   

 帰途に就く途中、桝水高原で車を停めて撮影。
改めて大山を見上げると、何だか午前よりも空気が澄んできたような。
それはともかく、西側から見ると伯耆富士の名に相応しい端正な姿だった。




 帰路は高速道は使わず、下道を約4時間運転して帰った。




 〜 終わりに 〜

 さすがに百名山とされている山だけに、その山姿と大きさは素晴らしいものがありました。
百名山選定の折に著者深田氏が中国地方でもう一つ加えるとしたら氷ノ山だろうかと後書きしているくだりがあるのは知っていたのですが、
今やっと自分の目で両方の山を観ることが出来ました。山々はそれぞれの良さがあって比べること自体無理があるのか意味があるのかどうかですが、
やはり大山を見ると自分の場合掻き立てられる登高欲が違いました。
頂上稜線の縦走が出来なくなった原因の地震さえなければと思わずにはいられません。

 それと階段だらけの夏山登山道だけでは物足りないこと、PM2.5のせいで景観が霞んだことも手伝って再訪することを決めた山行でもありました。
ということで翌週には改めて、今度はユートピアコースで登ることになります。








行程断面図です




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