「武奈ヶ岳 晩秋の装い」 朽木栃生〜武奈ヶ岳〜葛川坊村 08年11月11日(火)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「北小松」
参考文献
 : 山と渓谷社 【比良山】 P.41 「釣瓶岳・地蔵山」
 : 昭文社 山と高原地図 【比良山系・武奈ヶ岳】


 火曜日の休みは比良へ行こうかどうか迷っていたが、「曇り昼過ぎから晴れ」という予報を見て出撃することにした。
しかし結局一日中殆ど曇りで、やはり希望的観測で決めてはいけないなということを再確認する日となった。
但し、そのおかげでかえって冬の訪れを感じさせられる趣の山歩きになった。ということにしておこう。
実は同じ週の金曜も休みで結局その日のほうが天気は良かったのだが、16日の試験直前の追い込みに使いたいという思惑が働いたこともあった。




7:45 出町柳駅前出発 京都バス10系統朽木学校前行きに乗車

 バス停で待っているハイカーは4、5人。紅葉シーズンだけど曇りがちだからか思ったよりも少ない。さてやってきたバスに乗ろうかと思ったら、以前よりも大きなバスだった!
以前のバスが小さ過ぎるという要望があったのだろうか。ともあれそのおかげでほぼ立ち客無しのままバスはどんどん市街から離れていく。








8:49 朽木栃生バス停で下車

 ほぼ定刻通りに今日の目的地である朽木栃生に到着。殆どの乗客は坊村までで降りており、ここで下車したのは自分だけだった。
降りてすぐ見事な黄葉に包まれたバス停に感嘆する。まるで映画のワンシーンに出てきそうなバス停だった。
ところでこの「栃生」は「とちゅう」と読むと知ったのはつい最近。同系統のバス路線には別に「途中」というバス停もあり、発音だけ聞くと混乱してしまいそう。








9:09 朽木栃生バス停南の登山口出発

 バス停で身支度、そして撮影を済ませた後、少し京都寄りに戻ったところにある登山口からいよいよ釣瓶岳へ向けて出発。
自分にとって武奈ヶ岳から北は全く未踏の世界であり、釣瓶岳まで標高差800m余、歩行距離5kmの道のりも楽しみでさえある。
「摩耶山さん歩」のてるみさんのご一行の皆さんが昨年登られた際には白いワンちゃんが着いてきてくれたトラックということでちょっと期待していたが、
今日は残念ながらお休みのよう。
 登山口からはしばらく舗装路を緩やかに登っていく。どこから山道になるのかな。








 周囲には民家が散見される細い舗装路をしばらく登っていくと三叉路に出る。道標に従って登っていく。
写真に写っている登りの後すぐに山道に入る。ここから標高は急上昇する区間に入るけど、ジグザグを繰り返す歩きやすいトラックが続く。
今日序盤の区間は栃生から琵琶湖側へ抜けるコメカイ道という古道でもあるようでなるほどと納得させられる。









9:41 初めて尾根に乗る

 しばらく山腹道を登っていくと幅広のゆったりとした尾根に乗った。おそらく現在位置は449m標高点付近かなと目星を付ける。
ここからも延々と登りが続くが、やはり歩きやすくて疲れにくい。そして時折紅葉や大木を見ることも出来てけっこう楽しい登りだった。








10:05 コメカイ道出合

 「山と高原地図」では破線で描かれている地蔵峠へ直登するルートがここから分岐する。
「危険箇所あり難路」ということが理由だろうか、枝で塞がれていて心理的に入りにくいようにされている。
興味はあるけど今回はこれをやり過ごして釣瓶岳をひたすら目指す。








 出合を過ぎて間もない頃、立派な大木と遭遇。歴史の重みと自然の崇高さを感じさせられる。
周囲の紅葉も色とりどりで、長い登りでもこの時期は特に退屈しない。








10:34 ホトラ山付近

 トラックはホトラ山(690m+)山頂を南に迂回して再び尾根に乗った。
実はホトラ山山頂にも寄ってみたけど、広い山頂は森に覆われて展望は無かった。
「昼から晴れる」という予報に沿うように時折薄日も射してきて、紅葉も一段と鮮やかになってくる。

 ここからしばらくは緩やかな尾根が続くようでちょっと一息付けるようだ。








10:50 笹峠道出合

 しばらく尾根から着かず離れず登った後、笹峠道出合に差し掛かった。
笹峠への直登ルートも「危険箇所多く難路」ということだそうだ。
よく見ると案内板にも手書きでそのことが書き加えられている。

 出合からは紅葉も一段ときれいで、目にはとても優しい光景が続くが、尾根はやや急になってくる。








 鈴の音以外は落葉を踏む音だけが聞こえる静かな尾根歩きが続く。
1年前に坊村から武奈ヶ岳を初めて目指した時は賑やかな御殿山コースを登ったけど、
こちらは一転して本当に静寂の山歩きが楽しめる。








 おそらく少し盛りは過ぎたと思われるけど、尾根上には次から次へと紅葉の木々が現れて、自分にとってどんどん撮影したくなる素晴らしい区間だった。
今日の行程は全長9km余で充分余裕のある行程だと思っていたけど、撮影ペースを少し抑えないといけないと時間が気になりだした。








11:10 初めて釣瓶岳が大きく見えてくる

 これまでも木々の向こうにちらちらと見えていたけど、ここで初めて北から釣瓶岳の勇姿を大きく見ることが出来た。
まだけっこう標高差があるなー。釣瓶岳の右奥にちらっと見えているピークは武奈ヶ岳だろうか。

 登り詰めたところはミニピーク状になっていて、トラックは南に折れながら緩やかに登っていく。
ここからは東の縦走路が走る北比良の主尾根の光景が見事だ。
付近は枯れた細い枝状の植物が地面を覆っていて、バキバキといわせながら撮影に好適なポジションを探す。








北比良の紅葉

 手前の一面に広がる光景も見事だが、奥の琵琶湖と小島(竹生島?)が印象的だった。
 撮影の少し前までしばらく日差しがあったが、タッチの差で翳ってしまった。
曇りの日は露出が難しいと改めて思う。晴れの日はあまり何も考えずに撮れるのだけれど。


 もう昼前だけどまだ釣瓶岳にも着いていないので、あまりゆっくりもしていられない。
撮影は程ほどにして先へ行程を進ませよう。
この北比良のルートはまたコースをアレンジして、よりよい天気の下にリトライしたいなあと思う。








11:32 923mピーク(イクワタ峠北峰)

 緩やかになった尾根を登っていくと、ようやくイクワタ峠北峰と呼ばれる923mピークに到着。
眼前にはリトル比良の山々、先月風邪気味で登った釈迦岳などが大きく見えていて展望抜群だ!








11:39 923mピーク出発

 じっとしていると寒いくらいなので、すぐに釣瓶岳へ向けて出発。けっこう高く見えるけど残り170mほどだ。
昼過ぎには山頂に立てそうということで先へ急ぐ。

 意外にも縦走路に入ってからのほうが道幅が狭くなって、一部にはヤブっぽいところもあった。
しかも最近雨が降ったのか水を含んでいるところも。これまでの歩きやすい古道から、純然とした山道になってきた。
急坂では滑りやすくなっていて、登りでも足の置き場に少々神経を遣う。








釣瓶岳へ向けて

 釣瓶岳が近づいてくると二方向に分かれる北比良の景観が大きく広がってきた。
天気がイマイチなのが残念だけど、比良の懐の深さを充分に堪能出来る光景で見とれてしまう。

 山頂が近づいてくると再び森に入る。既に葉を落とした木が多く、もう初冬の雰囲気だ。
山頂直下はけっこうな急坂が続いた。








12:14 釣瓶岳山頂(1098m)

 朽木栃生のバス停を出発してから約3時間でようやく釣瓶岳山頂に到着。
地形図どおりに細長い形をしている。山頂はまばらな木々に囲まれて残念ながら展望はいまひとつ。
武奈ヶ岳から見た釣瓶岳は端正で美しい姿だが、展望を期待して登る山頂ではなかったようだ。
先に行程を進めるために数分の滞在で早々に出発する。








12:26 1040m+ピーク付近より釣瓶岳を振り返る

 釣瓶岳からはしばらく急降下して緩やかな尾根に出る。
1040m+ピーク付近からは葉を落とした木々の向こうに釣瓶岳を間近に見ることが出来た。
やはり遠めに見るときれいな山だと思う。








北から見る武奈ヶ岳

 遂に前方に大きく武奈ヶ岳が見えてきた。この後北稜を登ることになるがなかなかの標高差だ。
既に北斜面は紅葉も終わって、後は雪が積もるのを待つだけの状態になっている。

 しばらくほぼ平坦な尾根を歩くと細川越と呼ばれる分岐に辿り着く。








12:39 細川越到着 (1000m+)

 緩やかに尾根を下ってくると案内板も立っている細川越に到着。
かつては西の葛川細川へ下るルートがあったのだろうか。
コルにもなっていて、風も和らぎ暖かいのでここで小休止をとった。




12:49 細川越出発

 ここからはいよいよ今日のハイライトと考えていた北稜への登りが始まる。
武奈ヶ岳山頂までの標高差は210m余り。見込み所要時間は約50分。
昼は少し過ぎたけどどうやら山頂での滞在時間と坊村へ下る所要時間は確保出来そうだ。








静かな北稜

 そこそこ険しい場面を想像していたが、このような緩やかなところも多かった。
既に葉を落とした木々のおかげで明るい森の中を武奈ヶ岳に向かって登っていく。
大展望の広がる西南稜とは趣が大きく異なるけど、北稜にも違った魅力を感じた。








13:24 草原に出てきた

 比較的森歩きの多かった北稜だが山頂に近づくにつれて草原が広がってきた。
長かった朽木栃生からの登りもまもなく終わる。釣瓶岳手前から少し飛ばし気味に歩いてきたおかげでほぼ想定通りの時刻で山頂に到達できそうだ。








三角錐の美しい山容、釣瓶岳

 振り返るとあえぎつつ登った釣瓶岳を見下ろすようになってきた。釣瓶岳はやはり武奈ヶ岳周辺から見るととりわけ美しい姿に見える山だと思った。
釣瓶岳の西の稜線の向こうには出発地の朽木栃生付近の集落が山間に小さく見えていて、達成感も湧いてくる光景だ。

 既に山頂に近いことが傾斜が緩くなってきたことからも感じる。あと少しで1年ぶり2度目の武奈ヶ岳山頂に到達だ。








 目の前には見覚えのある山頂が見えてきた。楽しかった北稜の登りもまもなく終わる。
今度は違う季節に逆に下りで歩いても良さそうだ。
 さあ山頂でゆっくりしていこう。








13:32 武奈ヶ岳山頂(1214.4m)

 想定より少し早く細川越から約40分で武奈ヶ岳山頂に到達。初めて比良へ足を踏みいれ、そしてここに初めて立ってから
1年の間に比良のいくつかの山々の山頂を訪れたが、やはりここは比良最高峰だけあって別格の威容を感じさせられる。
歩いてきた北比良を振り返ると、釣瓶岳の上には目線と同じ高さに雲が流れていて、まさに天上の世界に居る思い。

 北稜を登っている最中は山頂でいくつかの人影が見えたが、自分が登った時は誰も居なかった。
休憩中にお一人だけ男性ハイカーが来られたが、車利用で八淵の滝方面からピストンされるとのこと。
寒空のせいか、かなり人気の少ない武奈ヶ岳山頂だった。








登ってきた釣瓶岳をバックに鎮座する三角点「武奈岳」

 そういえば今日の行程では三角点はこの一つだけだった。

 一通り撮影を済ませた後、南北に広い比良の山々を眺めながら昼食を摂る。
武奈ヶ岳周辺など比較的標高の高いところは既に紅葉は終わって、冬の装いを見せていた。
その中でも蓬莱山はもうまもなくスキーシーズンとなる。
山歩きもしたいけどそろそろタイヤ交換をはじめとしてスキーヤーとして気持ちを切り替えなければ。








14:10 武奈ヶ岳山頂出発

 約40分山頂で過ごした後、坊村までの所要時間を考えてそろそろ出発することにする。
まだ2時過ぎだけど日差しがない分相当暗く感じる。「昼から晴れる」という予報は完全に外れたようだ。

 武奈ヶ岳山頂以南は、全て以前に登りで歩いたことがあるので、少々簡略して記すことにしたい。








西南稜へ向けて下り始める

 昨年感動のうちに登った西南稜を今回初めて下る。
もちろん普通に歩いたらあっという間に通過してしまうけど、当然撮影時間も考慮に入れて下山時間を考えている。
 一旦は脱いだ上着だが、非常に肌寒くて再び着ることになった。
実際、比良山系にこの山行から10日と掛からずに初雪が降ることになる。








西南稜の大展望の下り

 下りで歩くとこの大展望を見ながらとなるので、より感動も大きくなるようだ。
いつもは賑わっている筈の西南稜もこの時は誰も居らずひたすら静かだった。
天気はイマイチだがその分空気はかなり澄んでいて、山並みがどこまでも見渡せるようだった。
 ただ見とれすぎて滑ってこけそうになったので気をつけたい。








武奈ヶ岳を振り返って

 1年ぶりに見る西南稜より見上げる武奈ヶ岳だった。今度は緑が美しい時期に来てみたくなった。
来年の春以降、色々な予定で多忙が予想されるけど覚えておこう。








武奈ヶ岳周辺に僅かに残る晩秋の気配

 一面モノトーンの世界になるのはもうまもなくだ。








14:50 1120m+ピークを通過

 楽しい西南稜の下りもいよいよ大詰め。この1120m+ピークを過ぎるとワサビ峠に向けての急坂が始まる。
けっこうきつい登りだった印象のある区間だが、下りだと快適。但し正面の御殿山を見ながら歩く余裕はないけど。

 ワサビ峠付近も既に殆どの木々が葉を落としていた。車輪のような錆び付いた物体がまだあった。

 ワサビ峠から御殿山への登りは短いけどけっこうハード。








15:04 御殿山山頂(1097m)

 向かいの1120m+ピークから約15分。武奈ヶ岳山頂からだと約55分で御殿山に到着。
想定通り西南稜はけっこう撮影したので、普通に歩くともっと早く下れる筈。

 武奈ヶ岳を北に大きく見ることの出来る素晴らしいな山頂、とだけ言いたいのだが、山頂の周辺にはよく見ると
打ち捨てられたゴミがたくさんあってがっかりさせられる。山が好きなのか嫌いなのかはっきりしてほしいものである。
とても自分一人で回収しきれる量ではないので、今も御殿山にはたくさんのゴミが残ったままとなっている。
捨てるのは簡単でも回収するのにはたいへんな労力を要することくらい少し考えたら分かると思うのだが。

 御殿山で一息入れた後、いよいよ坊村に向けての御殿山コースの長い下りが始まる。
ここから先は既にたくさん撮影をしたところでもあるし、天気もイマイチなので黙々と下りに徹することにした。
坊村までの想定所要時間は80分。到着予定時刻は16:30。








 撮影しないつもりだったけど、谷間に見事な紅葉の世界が広がっているのを見て方針変更。
山頂周辺はもう初冬の装いだが、中腹は秋真っ盛りだったことを忘れていた。
もう素晴らしいの一言に尽きる光景だった。








急坂の続く御殿山コース

 登りでもたいへんだったけど、下りでもこんなに長かったかなというくらい延々と下りが続くという印象。
しかも下っていて再認識したのが、このコースは非常な急斜面に敷かれているトラックだということ。
見下ろしているとまさに崖を歩いているという感じだった。本当に上手く道を拓いたなぁと先人の苦労が偲ばれる。








16:17 御殿山コース登山口到着

 どこまでも続くと思われた下りを経て坊村に降り立った。武奈ヶ岳まで延々と登った御殿山コースだったが、やはり下りは早かった。

 下山地の明王院は昨年もだったけど、今もまだ工事中だった。
工事中の境内を抜けて坊村の集落へ出ようとすると・・








 明王院脇には見事に色づいた木々が。バスの出発時刻(17:21)までのんびりしようと思っていたが、
ここでしばらく紅葉狩りをしていくことにした。








 見頃の一歩手前というところかも。




 しばらく紅葉を楽しんでいたが、けっこう暗くなってきたところで切り上げてバス停へ向かう。
バスが来るまであと30分くらいになっていた。








17:22 坊村より10系統出町柳駅行バスに乗車。

 定刻より僅かに遅れて小さなバスがやってきた。でも自分を含めて4、5人程度の乗客だったので、ちょうど良い大きさだった。
撮影した時はまだ上記の写真のように薄明るかったが、バスが来るころには既にとっぷりと日が暮れていた。
この時期は早めの下山を心掛けたい。そして出町柳へ戻るにはこの便(17:21坊村発)しかないので、くれぐれも乗り遅れないようにしたい。

 初めて安曇川沿い発着の行程を組んだけど、改めて比良の険しさと広大さを感じた一日となった。
バスの本数が非常に少ないので、湖西線利用の時よりも行程のペース配分が非常に重要だと感じる。
初めて歩くのなら、どこに見どころがあるか、どこを重要視して歩くかまでもっと考えたほうがいいなと思った。




18:22 京阪出町柳駅前到着

 湖西線利用だと新快速のみで帰れるけど、京都バス利用だとこれから京阪、阪急京都線・神戸線と山行帰りにしては少々疲れる旅程になる。
京都線は河原町から乗車するので必ず座れるのが救い。ただこれで三宮まで直通で行ってくれればなあといつも思う。
当然帰宅も遅くなるので、翌日も休みというシチュエーションが理想的かもしれない。ちなみに自分の場合、翌日は休みではなかったのだけれど。

 年内の比良訪問は今回で終わります。次回は09年春以降を予定しています。








今日の行程の断面図です




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