「小川新道から武奈ヶ岳」 《未踏区間あり》 10年 6月 4日(金)


国土地理院地形図
 : 25000分の1 「比良山」、「北小松」

参考文献
 : 山と渓谷社 【比良山】
 : 昭文社 山と高原地図 【比良山系・武奈ヶ岳】




 約1年ぶりの比良です!
今回は殆ど未踏の武奈ヶ岳から南へ伸びる尾根を踏破します。
小川新道を通って武奈ヶ岳へ至り、帰路は大好きな西南稜を
のんびり散策するというプランです。
武奈ヶ岳周辺は今まで秋にしか歩いたことがないので、
自分にとって新緑も大きな楽しみとなっています。




 7:45 出町柳駅前出発

 京都バス10系統朽木学校行きに乗車。坊村までは約1時間で950円。
今日は何故か空席がちらほらとあり、初めて窓際に座ることが出来た。




 行程概要 (山中のルートは不正確です)

 8:48 坊村バス停到着

 ほぼ定刻通りに坊村へ到着。久しぶりの坊村の風景に心が躍る。
そそくさと身支度を整えすぐに出発。今日登りで経由する小川新道へは、まず明王谷に沿う林道を辿らなければいけない。
なお自分以外の乗客の方は全て御殿山コースへ。

 明王谷の林道は少し進んだところで車止めがされていて、一般車両は通行できない。
また途中からは砂利道に変わる。この林道は白滝山へ登った時にも歩いたが、全く様子が変わっているところは無かった。




 9:38 牛コバ到着

 坊村から約50分で牛コバ到着。白滝山へは林道終点を目指すが、今日は牛コバから東へ向かう山道に入る。
ここからが未踏区間の始まりだ。出発の前に一息入れておく。








 9:48 牛コバ出発

 10分ほど小休止をしてから牛コバを出発。出発を前に地形図とコンパスで再確認。
これから小川新道へ入るまで、概ね奥ノ深谷に沿って東へ進む。
牛コバから約300mほど登りが続く。
その後は山腹道っぽくなって、奥ノ深谷を渡渉する。
以上のことを頭に入れてから歩き始める。








 地形図で見るよりさほど急ではなかった。延々とジグザグが続いて、けっこう歩きやすい。
でも斜面自体は地形図通りに急斜面のおかげで、見る間に高度が上がっていくのが心楽しい。
いずれ渡渉するであろう奥ノ深谷は遥か下方にあって見えないが、轟々と水音だけが聞こえてくる。








10:24 山腹道になってきた

 牛コバから約40分。徐々に上方が明るくなってきたと思ったら、トラックは北斜面をトラバースし始めた。
延々と続いてきたジグザグから開放されてほっとする。付近にはかなりの大木が目に付いてきて、
比良の森の奥深さを感じさせられる。








やや危険な山腹道

 山と高原地図に「危」マークが出ている理由が分かった。
部分的に幅が狭く、そして崖状の斜面を通過するからだった。ここはかなり高度感があった。
写真のところにはロープも着いているがちょっと頼りなかった。
高いところは好きだけど、細心の注意を持って通過しよう。

 この後もしばらく山腹道が続く。滑りやすい支沢も通過した。
そして予定通りに奥ノ深谷が近づいてくる。








10:49 奥ノ深谷渡渉地点

 牛コバから辿ってきたトラックは奥ノ深谷の左岸で途切れていた。対岸の右岸に続きのトラックがあることを確認。
でもかなり上流まで来たと思うけど、イメージより水量はかなりのもの。六甲の沢とはスケールが違う!
おまけに飛び石も有って無いようなもの。トゥエンティー・クロスの飛び石のありがたみが今更ながら沸いてきた。
どこを渡るか慎重に見定める必要がある。無事に渡れたが、幅はけっこう広くてジャンプ気味に渡った。
渡渉シーンは自分撮りをする余裕など無かった。自分が濡れるのはいいけど、機材は守らなくてはいけない。
ここは増水した時に渡渉するのは至難の業だと思う。下流側に朽ちた橋の残骸があったが、増水によって流されたのだろうか。

 ともかく無事に渡渉を済ませて、沢の水で顔を洗ったりして一息ついた。
渡渉はちょっと大変だったけど、周囲の新緑ともあいまって美しい沢だなと思った。

 奥ノ深谷は中流部に「十九ノ滝」がある素晴らしい沢だという。
遡行してみたいけど、これまでのように単独では心もとない。何らかのツアーに参加する必要があるだろう。




11:00 渡渉地点出発

 奥ノ深谷の清流でリフレッシュしてから出発。
概ね沢と平行するが、徐々に離れるように右岸の山腹へと緩やかに登っていく。
情報では「大橋」に辿り着くまでに、小川新道への出合があるはずだ。








大木が散在する奥ノ深谷周辺

 この辺りは歩くたびに大木が見えてくるような状態だった。
本当に威厳があって大木はいいものだ。樹齢はどのくらいなのだろう。








11:17 小川新道出合

 前述の渡渉地点からけっこう歩いて、なかなか出合に着かずちょっと心配になってきた頃に到着。
直進しても未踏のところばかりだけど、今日はここで左折して小川新道へ挑もう。

 小川新道へ入ってからもしばらく緩やかな山腹が続くが、落ち葉でトラックが分かりにくくなっている。
目を凝らして踏み跡を見出し、また時折現れるテープも参考にしつつ進んでいく。

 山と高原地図にはこの辺りのアドバイスとして、
「右に回りこみ、急なガケ状の沢を登る」とある。
今、右に回りこんでいる模様だ。








11:23 ガレ状の沢に挑む

 それまで歩きやすかったトラックはこのガレ状の沢をもって終わっていた。
沢の向こう側を念入りに確認するが、ここが終点のようだった。
「急なガケ状の沢を登る」というのは、ここで間違いないようだ。

 ガレになっている沢は足元が悪いところが多い。
小川新道の中で涸れ沢を登るのはごく一部ということは分かっている。
 テープも時々見受けられるが、やや離れている印象だ。
もしかしたらどこかで沢からルートが外れるかもしれないと考え、
周囲の様子を観察しつつ登っていった。

 確かにこの沢は難所といえば難所だった。
でも難易度は五助谷上流と同じくらいと思う。ガレが積み重なっている様子がよく似ていると思った。

 早くこのガレ状の沢を出たいという心理もあって、途中に脱出口があることが自然に頭に浮かんだ。
結果を先に言うと、沢を源頭部まで登りきるというものだった。まあそのほうがルートを誤るリスクも少ないだろうけど。
最後にロープが張られている、溝状の斜面を登りきると待ちに待った沢脱出だ。




11:40 ガレ状の沢を登りきり、小川さんのケルンに到着

 沢の終点は同時に尾根になっていた。
そこにあるケルンには、これから向かうシャクシコバノ頭が刻まれている。
ケルンの反対側を見ると、小川さんを追悼されている文章も。

 理想を言えば尾根の末端(大橋付近)からルートが始まるほうが分かりやすいけど、
このケルンより下方の尾根は崩壊でもしているのだろうか。








11:45 小川さんのケルン出発

 ガレ状の沢と格闘した疲れをちょっと癒した後で出発。
ここまででも大概登ってきたけど、ここからシャクシコバノ頭に至るまでが、今日最もまとまった登りだろうと思う。
等高線を数えてみると2、300mは登りが続くようだ。山と高原地図も併せて参照すると、
シャクシコバノ頭までいくつか見どころもあるようだ。

 ここまででもうお昼の時間帯になっていて、ちょっと焦りかけた。
でも今日の行程は登りのほうが圧倒的に長いからと思い直した。








11:51 月見岩

 ケルンからは普通の尾根道になって、それまでのガレとは大違い。とても歩きやすい。
まもなく小川新道の見どころの一つ、月見岩に到着。

 この岩はネーミング通りで分かりやすかった。岩はずっと半月の状態だ。








快適な小川新道

 あのガレ状の沢を除くと小川新道はとても歩きやすい。
しかも尾根歩きも緩急織り交ぜてあるし、周囲は自然林ばかりだからとても楽しい。
これは遠回りして、しかも難所を通過した甲斐はあったなあと嬉しくなる。

 断続的に登りが続くものの、さほど息は上がらない。
ハードさからいえば、植林の中で急登が続く御殿山コースのほうが辛いかもしれない。
但し距離はこちらのほうが断然長いけど・・。








12:18 オニギリ岩?

 先ほどの分かりやすい月見岩と違って、ちょっと名前から想像し難かった。
道中、他に目に付く岩が無かったので、これがオニギリ岩だろうか。








シャクシコバノ頭へ至る長い肩

 オニギリ岩を過ぎてまもなく尾根は殆ど平らになってきた。
もうシャクシコバノ頭までの標高差はあまり無いまま、しばらく快適な尾根歩きになりそうだ。
地形図から理想的な状況を見て嬉しくなってしまう。

 終始展望が開けるところは無かったが、時々、木々越しに周囲の山々が見える。
堂満岳がとても近くに見えた。あちらにもまた行きたいと思う。








12:31 シャクシコバノ頭山頂(1,121m)到着

 小川新道出合から1時間10分くらいでシャクシコバノ頭に到着。予想よりはけっこう早かった。
お昼時だけど山頂にはどなたも居られなかった。昼食用のパンを一つだけ食べた。

 シャクシコバノ頭山頂は南北に細長く、南西方向にも下りていけそうな尾根が始まっている。
山頂周囲の木々は雪の重みのせいだろうか、斜めになっているものが多い。
シャクシコバノ頭は1,121mというけっこう高い山だが、残念ながら周囲の展望は開けていなかった。




12:43 シャクシコバノ頭山頂出発

 展望は無いながらも、静かな山頂でなかなか居心地が良かった。
でもまだ行程を残しているので、10分程度の滞在時間で打ち切って出発しよう。








 シャクシコバノ頭山頂から少し歩くと、北にはこれから向かうコヤマノ岳が見えてきた。
フライパンをひっくり返したようななだらかな山容だ。
武奈ヶ岳や西南稜からとあまり見え方は変わらないかな。
でも日に照らされた新緑がとても眩しいのがすごく印象的だった。
白滝山に登った時は5月だったが、まだ葉が出揃っていなかったのだ。
今が1年で最も緑が鮮やかな時期なのだろうと思う。

 コヤマノ岳までは40m下って、120m登り返す。
今まで殆ど登り一辺倒だったから、ちょっと一息つける区間になりそうだ。








12:55 中峠(1,060m+)

 シャクシコバノ頭から少し下って中峠に到着。
コヤマノ岳から派生してきた尾根上にあるということか、峠までなだらかになっている。

 道標を見ると、中峠の名の通り、ここは比良の交通の要衝になっている。
比良は本当に色んなルートがあって、プランを練るだけでも楽しい山域だ。

 これからコヤマノ岳までは緩やかながらも120mほどの登り返しになる。
でもここまでの行程を考えると、もう大したことはない。








 コヤマノ岳の新緑を楽しみつつ、未踏の山頂を目指す。
山頂までは意外にもミニピークがあったりする。なだらかな山ながらも実際に歩けばけっこう変化があるものだ。








 山頂までもう少しかなと歩いていると、その手前で山名板がある。
一瞬、ここが山頂?と思ったが、少し北のほうがどう見ても高い。
ここでトラックが90度方向転換しているのだが、もし道標が無ければ下り方向では直進してしまいかねないかも。
そういった配慮を感じた道標だった。








13:20 コヤマノ岳山頂(1,181m)到着

 前述の道標から少し登ったところが周囲で最も高かった。
平らな山だから山頂を見出す必要があるが、この辺りが山頂なのだろうと思う。
意外にも東方に景観が開けていて、釈迦岳方面がよく見える。
思ったよりも空気が澄んでいて、琵琶湖もけっこう遠くまで見えている。

 比良スキー場が廃止されてからもうだいぶ経っているけど、
まだゲレンデがはっきり見えている。遠目には冬が来たらまた営業出来そうだ。
完全に自然に戻っていくのにはまだまだ長い時間が必要なのだろう。




13:27 コヤマノ岳山頂出発

 ここまで来れば、もう武奈ヶ岳まで30分程度で到着出来る。
久々の武奈ヶ岳を目前にして、コヤマノ岳山頂滞在は手短に済ませて出発する。








13:32 比良スキー場跡への出合

 コヤマノ岳山頂を過ぎ、緩やかに下っていくと、比良スキー場跡との出合に到着。
ここから約30分でスキー場跡に着くようだ。一度歩いたことがあるが、けっこう広くて迷子になりそうだった。
またじっくりと歩いてみたい気がする。








13:38 イブルキのコバへの出合

 しばらく歩くとまた出合。今度は初めて比良へ来た時に通過したことがある出合だ。
ここをもって今日の未踏区間は終わりとなる。小川新道は一部ちょっと大変だったけど、とても素晴らしい道程だった。
また季節を変えて歩いてみたい。

 出合からは既に山頂に居る人が見えるくらい、武奈ヶ岳山頂を間近に見上げることが出来る。
下りで通過した時の記憶に残っているけど、最後の5、60mくらいのまとまった登りに挑むことにしよう。








13:53 武奈ヶ岳山頂手前にて

 出合からペースを上げて登ってくると、お馴染みの景観が広がってくる。
今日歩いたシャクシコバノ頭からコヤマノ岳への稜線を見ると、やはり達成感が沸いてくる。
ここから眺めると、シャクシコバノ頭までけっこう距離があるように見える
それから下山時に歩く西南稜。前回来た時には曇っていたのが残念だったが、今日こそは大丈夫だろう。
ススキの秋も素晴らしかったが、この緑の景観もまた何ともいえない清々しさだ。








13:57 武奈ヶ岳山頂(1,214m)到着

 坊村を出発してから約5時間で武奈ヶ岳山頂に到着。長かった登りの後だけに達成感はひとしおだ。
下山の所要時間を考えると、1時間は滞在出来そう。









 ご夫婦の先客の方が居られたが、お二人はまもなく北稜へ下っていかれて、途中からは自分一人になった。
結局、今日途中で出会った方は、このご夫婦のみだった。
 これほど人けのない比良山系は初めてだ。

 ここに居ると時間の経つのは早い。1時間もあっという間だった。




14:51 武奈ヶ岳山頂出発

 夕刻1本しかないバス出発時刻まで約2時間30分を残して武奈ヶ岳を出発。
普通のペースだと余裕で辿り着けるけど、今回は時間をかけて西南稜を楽しむつもりだった。








初めて見る、緑鮮やかな西南稜

 武奈ヶ岳山頂を後にして、なだらかな西南稜をゆっくりと下っていく。
一面緑のじゅうたんといった感じで、まさに別天地という気がする。
坊村までこのままの感じで続いてくれればいいのだけど、それではなかなか下り着けないからそれは困る。








比良の代表的景観の一つ、西南稜を歩く

 西南稜は「く」の字に曲がりつつ、殆ど標高差もないまま南へと続く。
それにしてもコヤマノ岳のある尾根と谷を一つ挟むだけで、これほど風景が異なってくるのは面白い。








1,120m+ピーク手前より、西南稜と武奈ヶ岳を振り返る








西南稜より、今日登りで歩いた稜線を眺める
中峠越しに堂満岳が少しだけ見えている。








15:34 西南稜を楽しみ、本格的に下山にかかる

 西南稜を約40分かけて下った。残り時間を確かめつつ、下山にかかることにする。
西南稜の爽快な風景はここまでで、再び深い樹林の中へ入っていく。








15:46 ワサビ峠

 ワサビ峠からは、昼過ぎに通過した中峠へ向かうことも出来る。
未踏のルートなのだが、このルートをどうやってプランに組み込もうかとちょっと思案してみた。








15:52 御殿山山頂(1,097m)

 ワサビ峠から約40mほど登り返して御殿山に到着。
下山を前に、最後に緑鮮やかな武奈ヶ岳を見ておこう。

 山と高原地図によると、ここから坊村まで下りで1時間20分とあるが、
自分のペースだともう少し早くなる見込みだ。








御殿山コースを急降下

 おそらく比良山系の中で最もよく踏まれているコースと思う。
但し、下りの場合は、急坂で滑りやすいところもあるので油断大敵だ。
特にこの日は降雨後で、地面が柔らかくなっているところもあってちょっと気を遣った。
下りで歩くと、下方の道路などがちらちらと見え、この斜面が急斜面であることが本当に実感出来る。








16:54 坊村バス停到着

 御殿山から約1時間で坊村バス停に到着。バスが来るまで30分弱だ。まさにベストなタイミングだった。
次のプランを練ったりしているうちにやってきたバスに乗り込んで坊村を後にする。
今回は好天に恵まれて、やや難路の小川新道、そして美しい新緑を思う存分楽しむことが出来た。




 梅雨を前に比良を歩けて良かったです。「摩耶山さん歩」のてるみさんのお薦め通り、
武奈ヶ岳周辺の新緑の美しさは想像以上でした。緑の世界に目も癒されました。








行程断面図です




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