「蛇谷ヶ峰から武奈ヶ岳・奥比良縦走」 2016年12月 3日(土)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「北小松」 ←この1枚で収まります。





 1週間前の武奈ヶ岳、釣瓶岳への山行の際、稜線の向こうに蛇谷ヶ峰を遠望しました。
車を利用することによって比良でも充分な行動時間を確保して、東側の稜線の多くは縦走出来ました。
次にこの奥比良の稜線も縦走可能かどうか、充分に机上登山を重ねて実現にこぎつけました。
長丁場ですが天候にも恵まれ、降雪前の貴重な機会を活かすことが出来ました。

 今回の山行より遂にGPSを導入しました!
自分の歩いた軌跡が勝手に記録されていくのは何だか感動ものでした。
ということで、これまでよりルートデータの資料性がより高くなるはずです。




 山行に先だって下山地点の国道367号、坊村バス停付近に自転車をデポ。
その後、くつき温泉てんくうの駐車場に移動。
下山後も長い道のりですが、車に戻れば即温泉!というメリットは魅力的です。








 行程概要  ※ 坊村バス停〜くつき温泉てんくう間は自転車・徒歩での移動です。

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。

 
 5:35 くつき温泉てんくう・駐車場を出発  

 日の出時刻は6:48(大津)ではあるが、長丁場なので出発する。
くつき温泉てんくうからは最短のコースで蛇谷ヶ峰を目指す。
歩き始めは林道なので暗くても全く問題はないが登山道に入ってからが要注意。
尾根から尾根へ乗り換える際に通過する沢で迷うケースが多いという情報を事前に確認していた。

 なお駐車場から登山道へ繋がる林道へのアプローチは指導標が完備されているのですぐに分かった。








 5:47 登山道入口(310m)   

 林道に入って数棟のコテージの前を通ってしばらくすると左手に指導標があった。
ここから本格的な登山道が始まるようだ。ここは標高310mなので蛇谷ヶ峰までの標高差は約600m。

 登山道はいきなりの急登だったが、すぐに緩やかな尾根に乗って落ち着く。
尾根に乗ったところで早くも暑くなってきて、冬山用のジャケットを減らした。
この日の早朝の寒さは相当なものだったが、やはり歩いているとすぐに暖まってくる。




 まだ暗い時間帯なので写真撮影は自然に少なくなる。
最初に取付いた尾根は本当に緩やかで、心情的にはそのまま尾根通しに山頂を目指したいところだ。
ところがこのコースは先述のとおりに途中で南隣の尾根に乗り換えるという珍しいパターンとなっている。

 尾根を外すところには指導標があるので、誤って尾根をそのまま進んでしまうことはまずないはず。

 尾根を南側へ外すと山腹道となって少し下り、本コース随一の問題箇所の釜ノ谷の渡渉となる。
やや薄明るくはなっていたが、やはり昼間に比べるとまだ周囲の様子は掴みづらい。
それでもヘッドライトの灯りを頼りに、左岸側に続きのマーキングを見出す。
この時は今日の縦走で最も緊張を要した場面だった。
すぐにマーキングを見出せなくても、歩いてきた右岸側からすぐ向かいの左岸に渡るようになっているので落ち着いてルーファイを行いたい。
左岸側はやや急な斜面となっていて、階段道のジグザグで高度を稼いでいくようになる。

 蛇谷ヶ峰は2009年に1回訪れたことがあるが、その時は南から縦走してきている。
ということで、麓から蛇谷ヶ峰に登るのは今回が初めて。
この後このコースは丸太階段の登りが延々と続き、実際の標高差以上に脚力を消耗するような感じだった。

 階段道の途中で山腹に付けられた木道を通過する区間があるが、ここが本コース最大の難所?かもしれない。
木道は斜めになっていて、それに霜がびっしりと降りているから非常に滑りやすい!
極力木道は踏まずに、山腹の土に足を置くようにして無事に通過することが出来た。

 延々と続く階段道で喘いでいる間に段々と明るくなってきてヘッドライトが不要になった。








 6:32 552m標高点上の分岐  

 階段道の急登から一旦解放され552m標高点に到着。
ここは分岐となっていて、朽木いきものふれあいの里跡(2014年3月閉鎖)から尾根通しに登ってくるコースが合流してくる。
地形図を見る限りではこちらから登ってくるほうが簡単だったかもしれない。

 552m標高点からは冬枯れのおかげもあって、周囲の景観が開けてくるが蛇谷ヶ峰の山頂はここからだと判然としない。

 ここで息を整えるために小休止をとったが、要所においては導入したGPSにウェイポイント(青旗マークで表示)を設定してみることにした。
この作業を行っておくことにより、気になったところの正確な場所が分かるということで、GPSの正確さと便利さに感動した。








まだまだ階段道は続いていく  

 552m標高点を過ぎてしばらくすると再び階段道が現れる。
表面の土が流されたのか段差がやたらと大きいのが目立って、正直なところうんざりしてしまう。
但し基本的には緩やかな尾根なので、急登といえるところはそれ程長くはない。
 また、552m標高点より上側は尾根通しとなるので、ルーファイが難しい箇所は無くなる。

 標高を上げるにつれて更に周辺の視界が開けてきて、荘厳な早朝の景観が楽しめるようになってくる。








 7:13 813m地点分岐  

 階段道の急登を越えて辿り着いたところが813mの分岐。
山頂からなだらかな稜線を広げる尾根の肩に乗り上げた。南側には山頂周辺の稜線が見えている。
山頂西側のアンテナ(写真右端)は遠くからもよく目立っていて、蛇谷ヶ峰の目印になっているものだ。

 この分岐にはカツラ谷から上がってくるコースが合流してくるが、まだ補修されていなければいきものふれあいの里跡からのコースは使えない模様だ。
但し柏(かせ)集落へ出られるので周回には使える。

 分岐から山頂まで残る標高差は100mもなく、これまでとは違って緩やかで快適な尾根歩きになった。








 7:24 870m地点分岐   

 813mの分岐から一登り。山頂から北東に伸びる大きな尾根に乗り、ここで初めて眩しく暖かい朝日を浴びて心地よかった。
この分岐では朽木スキー場から上がってくる“さわらび草原道”と合流する。

 分岐からはなだらかな蛇谷ヶ峰山頂がもう近い。








山頂が近づいてくると、次第に琵琶湖の展望が広がってくる!   

 この朝日にまばゆい琵琶湖の景観を見ると、早発した苦労が報われる思いがする。








 7:30 蛇谷ヶ峰山頂(901.5m)到着   

 周囲360度の大展望が得られる広い蛇谷ヶ峰山頂に到着!
自分がここに来たのは2009年以来2度目で懐かしかった。
前回は初夏の午後での登頂だったので、今回は全く違う雰囲気の蛇谷ヶ峰山頂だった。

 遥か南方には雲を被った武奈ヶ岳と釣瓶岳が重なって見えている。
釣瓶岳には昼前、武奈ヶ岳には昼過ぎに辿り着けるはず、という想定で今回の縦走計画を組んでいる。
あまりここでゆっくりは出来ないが、とにかく居心地の良い山頂なので可能な限り滞在したい。

 空模様は快晴でも北西側から低い雲が流れてきていたが、寒気の名残のものであって昇温とともに消えるだろうと天候は楽観視していた。








シルエットのリトル比良の山々越しに日が昇ってくる 滋賀県北部の山々も一望の元に。朽木へ向けて琵琶湖側から滝雲が流れていた。 

 大展望が広がる草原状の山頂は本当に居心地良く、もし今回と逆向きに縦走したらぜひ長居したいところだった。
自転車が使えるようにしたかったことと、奥比良縦走路を南向きに歩いたことがなかったことで、今回の縦走の向きを決めている。








蛇谷ヶ峰山頂(901.5m)   

 前回はここより西の尾根を辿って桑野橋へ降りている。
蛇谷ヶ峰は比良北端の名峰で、出来ればまた再訪したいと思えるところだった。




 7:50 蛇谷ヶ峰山頂出発

 20分の滞在時間で出発。
いよいよ長大な縦走を開始する。








雲に隠れる武奈ヶ岳に向かって南進   

 奥比良縦走路は小分けにしながらも一度は殆どの区間を歩いているが、7年超の歳月を空けたことでほぼ初めて歩くに等しい状態だった。
初めて携行しているGPSはあくまでログを取るための装備であって、基本的には従来通り地形図とコンパスを使って歩いている。

 最初は蛇谷ヶ峰山頂周辺のなだらかな地形を下っていくが、この後に90度東へ折れて激下りになる。








奥比良縦走路は東端の支尾根を辿る   8:23 702mピーク「滝谷ノ頭」の南東端を通過

 短いが相当な激下りを終えると再び緩やかな尾根に降り立つ。
蛇谷ヶ峰から南に派生する尾根のうち、最東端にある尾根を緩やかに下っていく。
752m標高点付近では朝日が射し込む緩やかな下りでただただ気持ち良い道のりだった。
また冬枯れで周囲の見通しが利くので、蛇谷ヶ峰南側の複雑な地形が手に取るように見えて面白い。

 この辺りで南進中のトレランの方が自分を抜いて走っていかれた。




 辿っていた尾根が徐々に西寄りに向きを変えると702mピーク「滝谷ノ頭」の脇を通過。
といっても実はもう一つ南側が滝谷ノ頭と認識していたために結果として立ち寄らなかったのだが・・。

 北側には蛇谷ヶ峰山頂がまだ大きな姿で見えている。








 8:30 700m+ピーク   

 702mピーク「滝谷ノ頭」の南隣にある700m+ピークに差し掛かる。
この時点で滝谷ノ頭を通り過ぎてしまったことに気付いた。

 ここでは片方が落ちた指導標があって一見分岐かと思ったが、縦走路が西側の暗い植林に降りていくだけであって分かれるルートは無い。
道なりに伸びる尾根はいわば間違い尾根だった。
初めて南向きで歩くことによって、一度歩いたことのある縦走路も油断ならないことを改めて実感した場面だった。
ここに限らずに奥比良縦走路はあまり踏まれていない区間が多く、特に落ち葉の多い今の時期は踏み跡不明瞭になっていることがあるのも意識しておきたい。
実際に以前に一度奥比良縦走路で誤って峠道を下ってしまうというルートミスをした経験もある。








 8:40 須川峠/ボボフダ峠(650m+)  

 700m+ピークから少し下ると再び尾根が明確となって、須川峠(ボボフダ峠)に降り立つ。
味わいのある峠をいくつも越えていけるということも、比良での山行の大きな楽しみの一つとなっている。

 山と高原地図では須川峠と表記されているが、ヤマケイ関西「比良山」ではボボフダ峠となっている。
自分の持っている資料を見る限りでは、2つの名が見受けられる峠はここだけ。
東側と西側の集落で違う名前を付けていたのだろうか。
東側へ降りる峠道は明瞭だが、西側へ降りるほうは難路となっているようだ。








 8:50 荒谷峠(680m+)  

 須川峠(ボボフダ峠)から殆ど平坦な尾根を辿ってすぐに荒谷峠に到着。
ここには峠道が明瞭には残っておらず、指導標も縦走路を示すもののみとなっている。
釣瓶岳まで4.8kmもあってまだまだ遠い。








 9:03 680m+   

 荒谷峠を過ぎても引き続いて比較的穏やかな道のりがしばらく続く。
680m+は等高線は閉じていないが、見た目でははっきりしたピークなので思わず休憩することに。
ピークの上に立つと北西へ向けて大きく緩やかな尾根が派生していた。








 9:15 横谷峠(640m+) ここから村井へ降りる峠道も難路表記ではあるが、途中から林道へ出られるのではないだろうか。

 緩やかに広大な尾根を下っていくと横谷峠に降り立つ。
周囲の地形がなだらかなのであまり峠らしくはないが、一応東西に峠道が存在している。
縦走尾根は横谷峠から再び南西に大きく向きを変えて、緩やかな登りとなっていく。

 ここで北進中の単独男性の方とすれ違う。








 9:20 664mピーク付近   

 664mピーク周辺も引き続いて緩やかな尾根が続いていく。
奥比良縦走路は中盤は比較的標高差が小さくて行程が捗るが、南向きの場合は釣瓶岳、武奈ヶ岳に掛けて大きな登りを残す格好となる。
この辺りから釣瓶岳が見えてくるがまだまだ距離がある。








地蔵峠へ向けて約70mの登り。リトル比良の山々が明瞭に眺められる。   

 地蔵峠へ向けては比較的まとまった登りとなるが、武奈ヶ岳まで断続的に続く登り区間はまだまだ序盤の序盤。
地蔵峠に近づく頃には東側の視界が広がり、少し前に縦走したリトル比良を横から俯瞰出来る。
リトル比良も駆け足で通り過ぎたような山旅だったので、もっと掘り下げて歩きたいものだが…。

 ここに至ってようやく蛇谷ヶ峰〜釣瓶岳間の半分を過ぎたことになる。
普段よりは出来るだけ無駄打ちしないように撮影回数を絞ったこともあって、行程の進み具合は順調のようだ。








 9:43 地蔵峠(720m+)  

 一登り終えてお地蔵さんが鎮座する地蔵峠に到着。
相変わらず昔からの峠を絵に描いたような光景を残していて嬉しくなるところだ。
西側の植林内には古い作業道が見えているが、峠の情緒を楽しむためにはあえて意識しないようにする。








釣瓶岳まであと3kmと近づいたが、この先は登りが続くことになる。   

 自分の持っている山と高原地図「比良山系」(2007年版)では載っていないが、ここからも畑へ降りられるよう。




 9:50 地蔵峠出発








 9:53 地蔵山山頂(789.5m)  

 地蔵峠から僅かの距離で地蔵山山頂に到着。
小広い草原の山頂で東側にはリトル比良の展望が相変わらず素晴らしい。
地蔵山山頂の地形は広くてなだらかなので、山名標と三角点が無ければ普通に通り過ぎてしまいそうだ。








地蔵山山頂(789.5m)  

 奥比良縦走路において、地蔵山も地味ながらも渋い名峰といえそう。








なだらかな尾根歩きもまもなく終わりそう   

 地蔵山を過ぎてもしばらくは起伏の少ない快適な尾根歩きが続くが、この方向転換をもって再び登りが始まりそう。
正面には釣瓶岳が標高差を意識出来る程度に段々近づいてきている。








10:10 笹峠(770m+)  釣瓶岳まで2.4km。この2.4kmがけっこう長いはず。

 方向転換後、僅かに登り返したところで笹峠に到着。
登りの途中で差し掛かったので、あまり峠らしくない峠と感じた。
実は全くこの峠の記憶が無かったので後ほど過去の自分の山行記録を振り返ってみると、地蔵山〜イクワタ峠北峰間のみが未踏区間だった。

 峠道について指導標では栃生までの峠道(難路のよう)のみを表示してあるが、地形図を見ると東へ下る破線道のみが記載されている。
山と高原地図には記載が無いが、このような踏み跡薄い峠道を探す山旅もしてみたいものだ。








釣瓶岳へ向けて第一弾の登りが始まる  蛇谷ヶ峰が遠くなってきた 

 笹峠を過ぎると再び大きく西寄りに向きを変えてややまとまった登りが始まる。
南側にはイクワタ峠北峰から伸びるゆったりした支尾根と、その奥に釣瓶岳がかなり高くに見えている。
この時点で釣瓶岳までの標高差は約300m。まずはその前にイクワタ峠北峰まで約100mの登りとなる。

 途中からはやや等高線も詰まってきて、けっこう息が上がる登りとなった。
その頃北側には久しぶりに蛇谷ヶ峰も見え始める。
いつの間にかだいぶ遠く離れた蛇谷ヶ峰を見て縦走の達成感を得られるとともに、蛇谷ヶ峰は山自体がゆったりとして大きいことを改めて実感出来る。

 この登りの途中で久しぶりに他の登山者の方とすれ違う。
やはり奥比良縦走路は武奈ヶ岳周辺に比べると登山者は圧倒的に少ない。








10:30 860m+ピーク  

 それほど距離は長くないものの、まずまずの急登を越えて860m+ピークに乗り上げる。
ピークから少し縦走路を外れると、蛇谷ヶ峰の遠望が見事だった。

 860m+ピークはイクワタ峠北峰から伸びるゆったりした尾根の肩にあたる。
ここからしばらくは急登から一時的に開放される。








南西近くにイクワタ峠北峰、その南隣には釣瓶岳  まもなくイクワタ峠北峰へ。これで奥比良縦走路の未踏区間が全て埋まる。

 東側の視界が開けた爽快な尾根歩きがしばらく続く。
冬枯れの木々越しには既にイクワタ峠北峰が近く、また当面の目標地点である釣瓶岳も生い茂っている木々が見分けられるほどになってきた。
イクワタ峠北峰へ向けて縦走路が西へ曲がる前には890m+ピーク(等高線が閉じている)があり、
マイナールートではあるようだが、ここへも東側から登ってこられるようだ。

 一旦窪地へ降りた後30m弱の短い登りを経て、ようやくイクワタ峠北峰が目の前に現れた。








10:52 イクワタ峠北峰(923m)到着  平らで展望抜群。快適にテント泊出来そうなイクワタ峠北峰 

 味気ない山名が充てられているが、北から東へかけての大展望が素晴らしいピークだった。
ここへは一度朽木栃生から登ってきたことがあるのだが、7年前の記憶は既に殆ど残っていなかった。

 蛇谷ヶ峰から近くの910m+まで続く山並みの光景を達成感と共に振り返られる。

 一方、南側は冬枯れの木々の向こうに釣瓶岳がようやく近い。
武奈ヶ岳から見る釣瓶岳はきれいな三角錐で美しいが、北側から見ても貫録がある。

 普通ならばここでゆったりしていたいピークだが、昼頃に釣瓶岳へ着きたいので数分の滞在で出発する。








釣瓶岳まであと1.2km。栃生までの道程は林道に邪魔されることなく美しい樹林帯を楽しめた。   




10:57 イクワタ峠北峰出発








11:00 イクワタ峠(900m+)   

 イクワタ峠北峰から僅かに下ってイクワタ峠に差し掛かる。
峠の両側はかなり急な斜面となっていて、峠道の痕跡は見られなかった。

 ここからいよいよ今回の縦走中ではけっこう大きな200mの登りが始まる。
特にイクワタ峠からの登り始めが最も等高線が詰まっている。
上方のほうが緩くなるので、ここからでは釣瓶岳は見えない。








途中からは幾分緩やかにはなるが、引き続いて尾根を直登していく   

 最初の50mを登ると傾斜は緩んで尾根は蛇行しながら高度を上げていく。
この辺りから草原の尾根となって、一気に見通しが良くなって爽快だった。

 ここでも単独男性とすれ違う。








釣瓶岳への登りの途中、奥比良縦走路の山々を振り返る  釣瓶岳も武奈ヶ岳に劣らない素晴らしい北稜を持っていた

 草稜の登りは標高差約100mにわたって続くが、ここからの大展望は今日の行程でも随一といえるほどスケールの大きいものだった。
かなり遠くなってきた蛇谷ヶ峰から先ほどまで居たイクワタ峠北峰までの重なる山稜が見事で、感動的なほど縦走の醍醐味を得られる。
7年前にも一度は見ている景観なのだが、その時は天気は曇りだったし、イクワタ峠北峰から稜線に乗っていたので充実感はまるで違う。
この縦走を計画した甲斐があったと大満足で、登りきってしまうのがもったいなく思える別天地の尾根だった。

 この尾根は北向きで、武奈ヶ岳北陵と同じく滑りやすい土質だった。
登りでもスリップしそうになったくらいで、下りで通過する場合はより緊張すると思われる。








11:23 1,060m+。すぐ近くに釣瓶岳山頂がちらっと見えている。  つい1週間前に蛇谷ヶ峰を眺めた山頂傍の展望地に差し掛かる 

 釣瓶岳山頂の少し手前で尾根は一旦傾斜が緩むという、いわゆるニセピークを形成している平らな部分を通過。
でも釣瓶岳はすぐ南側にあって、山頂までの残る標高差はあと30mほど。



 最後の登りを淡々とこなしていくと、この縦走の1週間前に眺めたばかりの展望に出会う。
ようやく釣瓶岳に到着だ!








11:32 釣瓶岳山頂(1,098m)到着 今日の縦走において、朽木栃生へエスケープ出来る南限地としていた釣瓶岳山頂。

 蛇谷ヶ峰から7.5kmの縦走を経てようやく釣瓶岳山頂に到着!
昼頃に辿り着くという見通しだったので読みよりも少し早く、この時点で今回の縦走の成功を確信した。
これで武奈ヶ岳山頂でゆっくりしていく余裕も持てたということになる。

 その前にこれまでの200mの登りで息が上がっていたので、展望には乏しくても釣瓶岳で一息入れていきたい。
この先、武奈ヶ岳を経て坊村へ至る区間は、これまでよりは歩き込んでいるので少し緊張感を弛めることも出来た。




11:43 釣瓶岳山頂出発








今回の縦走中で最後の大きなアップダウンに取り掛かる  11:55 1,040m+ピーク

 釣瓶岳からワサビ峠に掛けては、つい1週間前に歩いたばかりだったこともあって、
ルートミスに対する緊張感からは解放された縦走となる。

 但し比較的大きなアップダウンとなるので、まだまだ気合を入れなければいけない。








12:05 細川越(1,000m+)   

 細川越までは快調に下ることが出来るが、ここからの北稜の登りは今日の縦走において最後の大きな登り。
北稜の道中をよく味わうようにじっくりと登っていきたい。








先週下ったばかりの北陵を登っていく  蛇谷ヶ峰に加えて釣瓶岳も見送ってくれる 

 くつき温泉てんくうを出発してから既に6時間30分を過ぎている。
北稜を登って武奈ヶ岳へ迫っている時にはこれまでにない達成感と高揚感に包まれていた。

 蛇谷ヶ峰と釣瓶岳が並んで見送ってくれているのを目にして、先週も眺めた同じ光景でも縦走の醍醐味という点で全く違う。








そして大賑わいの武奈ヶ岳山頂へ   

 最後の北陵の登りを経て遂に武奈ヶ岳へ。
昼過ぎという最良の時間帯もあって、山頂は大勢の登山者で賑わっている。








12:45 武奈ヶ岳山頂(1,214m)到着! ※ 空くのを見計らって撮影したものです。 

 遂に辿り着いた武奈ヶ岳山頂は、早朝の曇りがウソのように最高の天候と大展望だった。
これまでとは全く違う行程を経て立っただけに、充実感は計り知れないものがあった。

 蛇谷ヶ峰から見えた武奈ヶ岳は小さく見えるのに、ここから見る蛇谷ヶ峰は意外に大きく見えるように感じる。

 三角点に忘れずにタッチしてから、山頂の一角で腰を下ろして大休止をとっていく。
読みよりも早い到着と、あとは坊村へ下るだけ(自転車を漕ぐのは除く)なので、
もう先を急ぐ必要はないという解放感に包まれていた。
暖かいカフェオレとおしるこ、そして用意していたパンは最高に美味しかった。








今日の行程に加えて、遠く白山まで遠望 リトル比良、伊吹山の向こうには御嶽、乗鞍まで遠望 

 周辺に居られた男性登山者の方に白山、乗鞍、御嶽まで見えていると教えていただいた。
肉眼でははっきりと見えていたが、望遠レンズを持ってきていなかったことは残念だった。(常時使用しているレンズは17-40mm)
それでも白山、御嶽は何とか広角写真でも認識出来るが、最も遠方の乗鞍はごく薄らと分かる程度だった。
とはいえ、それだけの遠望が叶ったことは本当に良い日に登ってきたと、教えていただいた方と今日の山日和にただただ感謝したい。
それにしても、自分が登っている山々はまだまだごく限られた数に過ぎないということを改めて思った光景だった。







遠方の山々に加えて、最近縦走した比良山系東側の稜線の山々も振り返る  先日のように琵琶湖から雲が湧いてこずにクリアに眺められた 

 これで比良山系の主要な稜線は全て踏破出来たことになった。




13:30 武奈ヶ岳山頂出発

 滞在時間45分。そろそろ下山を開始しようということで重い腰を上げる。
周知のとおりに坊村までは急坂の連続であり、最後の最後まで気が抜けない縦走だった。








午後の斜行に照らされた西南稜を下る  まだまだ賑わいの続く武奈ヶ岳山頂を名残惜しく振り返る 

 意外に西南稜の人影が少なく、琵琶湖側へ降りられる方が多いのだろうか。
晴天の午後にここを下るのは初めてだが、草枯れの時期でも西南稜は変わらず美しい。
それどころか自分にはタソック(枯れたような色のNZ固有種の草)が生えるNZの山の光景と重なって見える。








先を急ぐ必要はないので、西南稜をゆったり堪能しつつ下っていく  快適な稜線歩きであっという間に1,120m+ピークへ 








13:58 1,120m+ピーク  14:05 ワサビ峠(1,050m+) 

 今日の縦走中、最後のアップダウンに掛かる。
武奈ヶ岳までで登りは終わった感があるが、ワサビ峠から御殿山は短いながらも急登。
そろそろ脚の疲れも感じてきているので、最後の我慢のしどころだった。








14:13 御殿山山頂(1,097m)  

 最後の急登を終えて御殿山に辿り着く。最後に武奈ヶ岳と西南稜を眺めることで、ここまでの長大な稜線歩きの締めとする。
とはいえ、縦走の終盤は激下りが連続する御殿山コース。坊村に降り立つまで一歩一歩集中して下りたい。








同じような高さの山ばかりで殆ど同定出来ないが、南西方向の山々を眺めていく  夏とは全く違って明るい谷あいを下る 

 1,010m+の展望地を最後に一旦尾根を離れて谷あいへ。
この区間も記憶以上に急に感じた。地面は濡れているうえに降り積もった落ち葉で滑りやすい。
一歩一歩気を抜くことが出来ない場面が続く。








再び尾根へ回帰する御殿山コース  14:45 846m標高点ピーク 

 尾根上へ回帰した後、縦走中で最後のピークといえる846m標高点ピークへ立ち寄っていく。
GPSの練習の意味でも答え合わせをしてみると、始めに立っていた場所は読みよりも少し手前にずれていた。
果たして眼前を見てみると、ルートの左手にこんもりと盛り上がったミニピークが見える。
ということでルートを外れたミニピークが846mピークだった。
現場で答え合わせが出来るGPSの便利さに目を見張った。




 846mピークからは500mを越える激下りの連続。
ここで一息入れてから下り始める。








想像以上に下りに気を遣った御殿山コース  一歩一歩、脚の置場に気を遣う 

 ここの登りは急登の連続で気合が必要なコースだが、下りもなかなかハードだった。
濡れた状態で降り積もった落ち葉で足場が不安定な場所が多く、本当に気を抜くことが出来ない。
自分はテント泊装備の時以外はポールを使っていないが、ここではポールを使えばもう少し楽だったかもしれない。

 ここの下りは人によってペースが大きく違ってくるようで、かなり足が辛そうな方も見受けられた。
久しぶりに下界からの音が聞こえてくる頃には、自分も相当脚の筋力を使っていたのを実感した。








15:35 御殿山コース登山口(310m+)。遂に長大な縦走を終えて達成感抜群だった!! 明王谷を渡ってバス停へ

 846mピークから約50分でようやく御殿山コース登山口へ到着!
くつき温泉てんくうから所要10時間だった。
遂に長い縦走が終わって充実感に包まれたが、これから自転車で出発地点まで戻らなくてはならない。
既に山影に入っている坊村は薄暗くて冷え込み始めていた。

 明王院を出て橋を渡ったところでは、僅かに残った紅葉に出迎えられる。








15:50 坊村バス停到着

 バス停前のトイレに寄ったり、デポしていた自転車へのライト取り付け等でサイクリングの準備を整える。
それとこれまでの山行にはなかった、忘れてはならない重要な作業が加わった。
GPSのログデータを保存して、当日山行で歩いた軌跡を確定されたデータとしなければならない。
これを忘れると正確なログデータとならないので、写真画像のバックアップと同様の重要度として認識したい。








16:00 坊村バス停(300m+)出発   

 万端準備を終えて、くつき温泉てんくうへ向けて出発。
これなら完全に暗くなる前にサイクリングを終えられそうだった。
せっかくだからサイクリングのGPSログデータも録っておこうと、ここを起点にしてもう一つトラックデータを記録していくことにする。

 国道367号は朽木へ向かって基本的には緩やかな下りとなるが、途中数か所で短いながら登りがあって自転車を押すことに。
車では気にならない程度の標高差だが、自転車にとっては楽な道のりではなかった。

 桑野橋からは最短ルートとなる安曇川右岸の道へ入る。
ここも部分的に登りがある。








16:50 グリーンパーク想い出の森の入口(180m+)   

 坊村から約13km、所要50分でようやくグリーンパーク想い出の森への導入路の入り口に辿り着いた。
ここからくつき温泉てんくうまであと1.5km。標高差は約100m。
自転車は登り坂で使えないのでここで再びデポしていく。




 てんくうまではヘッドライトを付けて徒歩で戻っていく。
緩いながらも標高差100mの登りは疲れた脚には長く感じたが、車と温泉が待っているのを励みに登っていく。








遂に総延長33km!?の「周回」も最終盤。ゴールが見えてくる   

 260mの台地状の地形に乗り上げると、てんくうと車はもうすぐ。正面には早朝に登った蛇谷ヶ峰が出迎えてくれる。
初めて北側の麓から見ると、蛇谷ヶ峰は東西に長い稜線を広げた本当に雄大な姿だった。








17:15 くつき温泉てんくう到着!!  出発時と同じように暗い時間帯になって駐車場に到着。長い長い道のりだった。

 広場から最後の一登りを経て、ようやくようやくくつき温泉てんくうに到着!
一刻も早く温泉へと逸る気持ちを抑えてとりあえず車へ。

 車に戻るとさっそくサイクリング&徒歩のGPSのログデータの保存作業と写真画像のバックアップを行う。
その後で温泉に入る準備を整える。




 くつき温泉てんくうは今回初めての利用。先週の比良とぴあと同じくこちらもまた良い温泉♪♪
奥比良縦走とサイクリングの後に入る温泉は本当に最高の気分で、心身ともに生き返る思いだった。

 温泉ですっかりリフレッシュした後、19時過ぎに朽木を出発して帰途に就く。
今回は珍しいことに湖西道路の渋滞も無くて順調な帰り道となった。




 〜 終わりに 〜

 日の短い時期には不向きと思われる縦走の行程でしたが、何とかほぼ予定どおりの所要時間で終えることが出来ました。
事前のシミュレーションではやはり長めの行程が難しく思い、釣瓶岳まで辿り着いてからイクワタ峠北峰まで引き返して栃生へ下山する計画も考えました。
でも日の出前に朽木を早発することで、坊村まで明るいうちに辿り着けるという結論に至って実行となりました。

 今回の縦走の注意箇所としては、まず蛇谷ヶ峰へ登る際に釜ノ谷の渡渉箇所の見極めと、
落ち葉で所々不明瞭になっている縦走路のルーファイ、最後に同じく落ち葉で滑りやすく危険度を増した急坂の御殿山コースでしょう。

 また今回の行程は初めてGPSを携行した山行としても忘れられない日になるでしょう。

 久々に長めの山行記録でありましたが、最後までご覧いただきましてありがとうございました。








行程断面図です




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