「白水尾根から瑞宝寺谷西尾根」 2017年 4月19日(水)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「宝塚」




 六甲で歩き残しているルートの中でも、とっておきと思える2つの尾根を一挙に繋ぐことにしました。
いずれもバリエーションルートと捉えてよさそうな尾根で読図が楽しそうです。
また、六甲で登り下りとも未踏区間という贅沢な山行というのも、もうなかなか無い機会でしょう。

 登りに使う白水尾根はいろんなところから入れるようですが、今回は尾根末端から踏破することにしました。
登山口にあたる白水峡墓園前バス停へは、宝塚から阪急バスで向かうことをまず考えましたが、
調べてみると神鉄有馬温泉駅から県道を歩くほうが、自分の場合は少しだけ早く辿り着けることに気付きました。

 一方、下りに使う瑞宝寺谷西尾根も地形図を見ると、いくつかの箇所で尾根を選ばなくてはならないようです。








 行程概要  ※ 神鉄有馬温泉駅から白水峡墓園前バス停までは車道歩きです。

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。


 神鉄有馬温泉駅(350m)   

 何回かの乗り換えを経てようやく有馬温泉に到着。
六甲の中でも、有馬以東の裏六甲はなかなかアクセスし辛く、ここへ来るのもちょっと気合が必要だ。




 7:05 神鉄有馬温泉駅出発

 身支度を整えて出発。
白水尾根の取付へは県道を歩かなければいけないが、途中まで有馬の温泉街を通ると少し県道歩きを短く出来る。
その道すがらには、自分は泊まったことはなくてもCMでよく知っている、有馬兵衛の向陽閣の前を通過した。
こんな駅の近くにあったのかと、新たな発見をした思いだった。
でもけっこう急な坂の途中にあって、夏ならば湯上りに散歩したら汗を掻きそうだ。








 7:33 白水峡墓園前バス停付近(410m)  白水尾根末端より取付く 

 有馬温泉駅から徒歩30分弱で白水尾根末端に辿り着く。
尾根の取付は白水峡墓園前バス停(宝塚方面行)の斜め向かい。ブロックの擁壁が切れたところ。

 登り始めだけは急登だが、すぐに白水尾根に乗れた。
地形図では岩崖記号が末端付近に描かれているが、この辺りはごく普通の尾根となっている。








白水尾根下部は緩やかで歩きやすい   

 一旦、尾根に乗ってしまえば明瞭そのものの登山道が続いていて、「山と高原地図」に登山道表示が無いのが不思議なくらい。
視界が開けるところは無いが、前方にはこれから辿っていく稜線が透けて見えている。








 7:55 白水峡の奇観が目に飛び込んでくる  白水峡。六甲にもまだこういうところがあったのかと改めて懐の深さを感じた 

 尾根の東側が深く切れ落ちたところに出てくると、荒涼とした白水峡の光景が広がってくる。
ここは岩崖記号で囲まれた地形図のとおりになっていて、人が入り込むのを拒んでいるかのような別世界に感じた。
この白水峡の光景を眺めながら小休止をとった。

 白水尾根のルートはこの後しばらく崖沿いを付かず離れずしながら辿っていくが、白水峡に降りれそうなところは見られなかった。
白水峡に入るには下流側から向かうしかないように思う。








登山道は白水峡の縁を通っていく   

 時折垣間見える白水峡の光景を楽しみつつ、徐々に高度を稼いでいく。
白水峡の西側を半周くらいした辺りを最後に崖から離れ、本格的に登りに掛かっていく。








 8:20 540m+の分岐   

 白水峡を離れて一登りした頃、等高線は閉じていない540m+ピークに達する。
ここでは東側から明瞭な踏み跡が合流してきており、消えかけた道標からすると船坂谷から上がってきているようだ。
ここを手始めにして、この後船坂谷からのルートと数回合流することになる。








 550m+、560m+と近くのピークが左右に見える   左右に曲がりながらミニピークを越えていく。地形的にメリハリがあって読図が楽しい尾根だった 

 540m+ピークを過ぎると不意に展望の良い尾根に早変わり。
西側には十八丁尾根が白水尾根に負けず劣らず大きくて長い姿を見せている。
行く手にはいくつかのミニピーク、その奥には白水山山頂近くが見え始めているようだ。

 550m+ピークに乗り上げると、急角度に尾根は西寄りに曲がる。
砂交じりで滑りやすい痩せ尾根を慎重に通過する。








 8:32 560m+ピーク   550m+コル 

 次の560m+ピークに達すると、再び尾根は急角度に南寄りに向きを変える。
北西側にも明瞭な尾根が伸びているが、登り中であれば間違うことはないだろう。
このピークは展望は無いものの、芽吹き始めた新緑が素晴らしかった。

 この後、比較的大きな登りが控えているが、しばらくは緩やかな尾根が続いていく。
地形的特徴が乏しかったため、登り返しの合図と捉えていたコルの通過が分かりにくかった。








約150mの登りに掛かる   

 白水山の前衛峰といえそうな710m+ピークへの登りが始まった。
最初は比較的緩やかであるが、途中から等高線が詰まってくる。
ルートは引き続いて明瞭で、ひたすら尾根通しに高度を稼いでいく。








 9:01 710m+ピークの分岐   

 標高の目安にもなる笹が現れ始めてテンションが上がってくると、目標にしていた710m+ピークに辿り着く。
ここでも再び船坂谷からのルートが合流してくる。
先述の540m+ピークの分岐と同様に、ここの道標も下り中の登山者に向けたものだった。








白水山山頂の位置を初めてはっきり認識した 笹が伸びているが踏み跡は明瞭 

 710m+ピークを過ぎると、南西にはようやく白水山が見えてくる。
尾根はこのあと左カーブを描きながら山頂に続いていく。

 山頂が近づくにつれて笹が深くなってくるが、踏み跡はずっと明瞭でヤブ漕ぎの必要はなかった。








 9:18 白水山山頂(771.7m)到着   

 平らな地形が広がっていて、残念ながら展望は無い白水山山頂に到着。
名のある山ではありながら、なかなか訪れる機会が無かっただけに残された宿題を片づけられた思いだった。
出迎えてくれた白水山の三角点は新品同様にきれいだった。








静寂に包まれた白水山山頂。良いところだった   




 9:34 白水山山頂出発

 山頂でも船坂谷から続いてきたような踏み跡があり、またどこへも歩いていけそうな迷いやすい状況。
しっかりと地形図とコンパスで方向確認してから歩き始める。








白水山を離れると再び尾根の地形が明確に  笹と触れ合いながら次のピークを目指す 

 白水山を過ぎてもまだ尾根上にはいくつかのミニピークが残っている。
白水山山頂のすぐ横にはもう一つ等高線が閉じていて、正確に表現すればこの山は双耳峰といえるのかも。

 白水山のほぼ南には平らな790m+ピークが木々越しに見えている。
展望こそ乏しいが、引き続いて尾根は緩やかで歩きやすい。








 9:45 790m+ピーク   

 東西に広い790m+ピークの東端に乗り上げた。
今度は船坂谷方向からの踏み跡は見かけない代わりに、ピーク上を横切るように西側から踏み跡が合流してきている。
ここも登り方向だとまず問題ないが、下りで歩くと要注意な分岐になり得るかもしれない。

 790m+ピークを過ぎると一旦短い下りを挟んで、再び登りがしばらく続く。
但し傾斜は緩やかで快適な尾根歩きであることは変わらない。








10:02 840m+ピークの分岐  

 白水尾根上の最後のミニピークとなる840m+ピークに到着。
ここもまた船坂谷方向から目立つ踏み跡が合流してくる分岐となっていた。
白水尾根は下りで歩くと、難易度がけっこう上がるかもしれない。
この分岐にはこれまでのような道標は無かった。








後鉢巻山が見えてきた  白水尾根最後の登り 

 840m+ピークを過ぎると、六甲山上はすぐそこ。
楽しかった白水尾根が終わってしまうのがちょっと寂しい。








10:17 旧ドライブウェイに達し、白水尾根は終わる   

 最後の短い登りを経て、白水尾根の脱出口となっているガードレールの切れ目から飛び出す。

 後鉢巻山の北山腹をぐるっと回っている旧道があることは知っていたが、阪神大震災の影響で通行不能になったことは知らなかった。
白水尾根出口から六甲最高峰方面へと向かうが、震災による崩壊個所を今でも見ることが出来る。
なお行く手には下りで歩くことになる瑞宝寺谷西尾根上部が近くに見えてくる。

 この山行の計画を立てている時はこのまま瑞宝寺谷西尾根を下りに掛かるつもりでいたが、
すぐ近くに最高峰のアンテナ塔が見えていたことから、せっかくなので立ち寄っていくことにした。








10:37 六甲最高峰(931.3m)到着  何度目か数えきれないが三角点「六甲山」にもタッチ

 土日に来れば大賑わいの最高峰も平日ならば静かなところだ。
それはともかく久しぶりに最高峰に寄ってみて、大展望が広がっていることにびっくりした!
三角点の周囲はきれいに刈り込まれて、これまで見えていなかった光景を心ゆくまで楽しむことが出来る。








六甲の主脈を初めて東西に見通すことが出来て感慨深かった 先ほど歩いてきたばかりの後鉢巻山北面の光景もバッチリ見える 

 少し立ち寄るつもりが20分近く滞在した。
草が伸びてくるのは早いだろうから、定期的に草刈りしなければこの大展望も期間限定になってしまう。




10:58 六甲最高峰出発

 思いがけず大展望を楽しんで満足してから、いよいよ初めて瑞宝寺谷西尾根へ踏み込む。








11:05 瑞宝寺谷西尾根に入る   

 一軒茶屋から少し東側へ引き返したところが尾根入口。
白水尾根同様にバリルートなので入口には道標は一切無いが、始めから明瞭な踏み跡が続いている。
どのような尾根なのか楽しみだ。








平坦な890m+ピークを通過  11:18 要注意とみていた尾根を外すところ

 890m+ピークは魚屋道に沿うように南東から北西に向けて非常に長く伸びたピークとなっている。
場所的に目立つところにありながら、今まで関心を払ってこなかったのが不思議な思いだった。

 東側には先ほど山腹の旧道を通過したばかりの後鉢巻山が間近に見えている。




 瑞宝寺谷西尾根の地形図を見ていると、下りで歩く場合は途中で尾根を選ぶ箇所が2つあることに気付く。
この尾根は初めての自分にとっては、ルートミス注意ということで気を遣う箇所だ。
一ヶ所目は890m+ピークを過ぎて僅かに下りに掛かった辺り。北向きに尾根を外すところだ。
現場に差し掛かると予想通り分岐になっていたが、北向きに下るほうにはマーキングもあるし、
道なりに進むほうはすぐにヤブっぽくなっていて、全く迷う要素は無かった。








予想外に歩きやすい尾根道となった  11:26 830m+の尾根分岐

 分岐から下り始めると、プラ階段や切り開きもある一般ルート並みの尾根道になった。
展望は東側の十八丁尾根方面が時折僅かに開ける程度だが、気持ち良く歩くことが出来る良い尾根だ。

 しかし50mほど下ったところで、もう一ヶ所尾根を選ぶところがあるはずなので、
うっかり尾根の派生を見落とさないよう集中して歩いた。

 しかし今度の要注意箇所も全く心配無用だった。
東側に派生した尾根を遮るように木の棒で塞がれ、何も意識しなくとも正解の西側の尾根を下れるように配慮がされていた。
ルートファインディングする側にとっては心強くて有難い配慮なのだけれど、ルートを見出す楽しみが削がれてしまいちょっと残念な気もする。








830m+以下では基本的に道なりとなる 痩せた尾根がずっと続いて楽しい

 もう尾根を選ぶ箇所は無くなったが、瑞宝寺谷西尾根で最も楽しいと思える痩せ尾根の区間となった。
展望が広がるところはあまりないが、木々が無ければかなり高度感を得られそうなところが続く。
もちろん西隣の魚屋道を淡々と歩くより何倍も楽しい尾根であることは間違いない。








地形図では表現しきれない変化に富んだ場面が続く 12:00 720m+ピーク(等高線は閉じていない) 

 750m、720mの等高線が伸びたところは歩きやすい極楽尾根を想像していたら、良い意味で予想が裏切られた。
標高差10mに満たないアップダウンが多くて、ちょっと岩登りを楽しめるところもあった。
やはり六甲の尾根はバリルートが楽しいと改めて思った。




 何度かアップダウンを経た頃に手製の山名標が設置されたミニピークを通過。
書かれていた標高を見て思っていたよりも高かったので、自分の読図にボタンの掛け違いがあったのか心配になった。
念のためにGPSで現在位置を答え合わせしてみたところ、自分の読みどおりに720mの尾根上に居ることが分かって安堵した。
基本的には読図しながら歩くが、GPSを携行することによって答え合わせが出来るようになったことは本当に便利だ。








射場山が見えてきた!  もうすぐ筆屋道 

 射場山が見えてきたことでも、行程の進み具合を推し量ることが出来る。
射場山は甲山をそのまま大きくしたような山で、周りから見てよく目立つ存在だ。

 射場山がだいぶ高く見えるようになってきた頃、次第に踏み跡が錯綜するようになってきた。
概ね道なりに降りてきたつもりだったが、どうやら左右にいくつかのパターンがあるような気がする。
それを裏付けるように瑞宝寺谷西尾根の下部はかなりゆったりとしており、尾根の形状は不明確となっている。








12:26 展望台(550m+)付近に降り立った   

 下り着いたところは筆屋道が通っているだけではなくて展望台まであった。
他の方のレポを観ていても尾根の取付きは複数あるようなので、ここはあくまでも一例ということになるだろう。
但し展望台が目印になるので、ここから登り始めるのが分かりやすいかもしれない。

 それはともかく、瑞宝寺谷西尾根は比較的短めながらも楽しい尾根だった!








展望台(550m+)から瑞宝寺谷を眺める。 行く手には瑞宝寺公園から有馬富士まで見える。

 ちょうど春らしい色彩豊かな自然の光景が瑞々しかった。
道標には瑞宝寺公園まで10分と書かれていたが、ここから観るとまだだいぶ距離があるように感じられる。
瑞宝寺公園の北側には、自分が比良や信州へ向かう時にいつも通っている阪神高速北神戸線も見える。
その向こうには自分は行ったことはないが有馬富士まで見えていた。




12:32 展望台出発








瑞宝寺公園までは遊歩道が続いているのかと思いきや  普通の山行と同様に渡渉箇所が現れる 

 自分の下調べ不足で、瑞宝寺公園まではもっとワイルドなルートを予想していた。
渡渉箇所は増水したら難しくなるだろうけど、それ以外は一般ルートと捉えて差し支えない状態だった。








再び左岸へ渡渉  12:56 太鼓滝前に出てくる 

 まだ4月とはいえ相当に気温が上がってきており、暑がりの自分にとっては川の水で顔を洗うと気持ち良かった。
ここで再び左岸へ渡り返すと、太鼓滝下流に出てくるまで歩きやすい登山道が続く。

 太鼓滝の少し下流にて河原へ降り立つが、水量は豊富で滝の傍まで行くことは難しそうだ。
太鼓滝は瑞宝寺公園から見えるところにあって、少し河原を歩くだけで公園内へ入ることが出来る。








13:00 瑞宝寺公園(450m)到着  青もみじの瑞宝寺公園 

 西側から渡渉して公園内へ入る。登山道入口にあたるところには癒しの森方面と案内が出ていて目印になる。
瑞宝寺公園に辿り着いたことで、登り下りともワイルドなバリルートだった充実した山行は終わった。

 瑞宝寺公園は紅葉の時期にしか来たことがなかったので、今の新緑の光景は全く雰囲気が異なり別の場所のよう。
平日ということもあってか、公園内は人けがなく静まり返っていた。
 せっかくなので駅へ向かう前に静かな公園で小休止をとっていくことにした。




13:11 瑞宝寺公園出発








有馬三山の山々を眺めながら有馬温泉駅へ向かう  駅前ではしだれ桜が見事だった! 

 標高の比較的高い有馬とはいえ、もう桜の時期は終わりころ。
それでもそこかしこに桜が咲き残っていて、山行の最後に花見まで出来てしまった。








13:32 神鉄有馬温泉駅(350m)到着   

 約6時間30分の行程を終えて、有馬温泉駅へ戻ってきた。
再び乗り換えを繰り返して家路に就く。








 〜 終わりに 〜

 登り下りとも初めてのバリルートだけにしっかりと下調べをしたうえで実行に移しました。
白水尾根へは宝塚などからバスを利用する手もあり、状況に応じて旅程をアレンジ出来ます。
白水尾根自体はゆったりしたところが多くて特に危険な箇所はなさそうですが、白水峡は脆い岩場のようですので崖上では足元注意。
また船坂谷などへの踏み跡が数か所で分岐するので、下りだとルートミスにも要注意。

 瑞宝寺谷西尾根も尾根を選ぶ箇所はありますが、こちらのほうがマーキング等が豊富でした。
裏六甲の東側は特に歩いていない箇所が多いのですが、今回の尾根はどちらとも素晴らしいマイナールートでした。
好天にも恵まれて大満足の1日となりました。








行程断面図です




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