「芦屋地獄谷遡行と打越山散策」 08年6月23日(月)

国土地理院地形図:「西宮」25000分の1を参照して下さい。

 梅雨が中休みしそうな予報を見て、2年ぶりに芦屋地獄谷を遡行してみようと思い立った。
空模様は俄か雨があるかもしれないようなどんよりした曇りだったが、暑がりの自分にとっては夏は曇りのほうがありがたい。
最近は梅雨のおかげで雨が多いので、水量豊富な芦屋地獄谷で思いっきり避暑が出来ると思い、張り切って出かけた。

※ 芦屋地獄谷はこれまで何度となく採り上げているので、レポは簡略化してフォトアルバム風にします。
 また芦屋地獄谷は小滝が殆どで距離が短く、六甲の谷の中では難易度は低いですが、滑落等のリスクとは無縁ではありません。
 このレポは安全を保障出来るものではないことを、念のために最初に付記しておきます。遡行は「自己責任」で行ってください。








9:20 JR芦屋駅出発

 本来はラッシュに巻き込まれないようにするためにも早朝出発が理想なのだが、今朝は今にも降り出しそうな空模様を見て、
一度はキャンセルしようと思い二度寝してしまった。結局降ることはなかったのだが・・。

 JR芦屋駅から北西へ進んで阪急芦屋川駅を通過して高座の滝へ向かう。この時間でもちらほらと同じ方向へ歩くハイカーを見かける。
その中には後ほど再会する方も。




9:57 高座の滝到着

 ロックガーデンの登山口となっている高座の滝へ到着。早朝散歩の地元の方や、自分のようにこれから山へ入るハイカーが行き交う。
芦屋地獄谷へ向かうのは自分だけのようだ。




期待通りに水量豊富で豪快な滝姿を見せる高座の滝




10:15 身支度を整えて高座の滝を出発

 高座の滝前のベンチで久しぶりに渓流シューズを履く。登山靴から履き替えるとやはり非常に軽く感じる。
この感覚はスキーブーツを脱いだ時の快感に似ている。

 芦屋地獄谷へはロックガーデン中央稜の尾根の末端を乗り越えてから沢へ下るが、ここでちょっと気になる案内を見かける。


 お知らせ

 地獄谷入口付近にある

 「ゲートロック」の一部の岩壁が崩れております。

 危険ですので、当分の間閉鎖します。

 芦屋市経済課



 これは大変!でもどんな風に危険なのか状況を見てから、遡行を続行するかどうか決めようと思い、芦屋地獄谷へ下っていく。








10:22 芦屋地獄谷へ突入

 警告されているのはおそらくこの右岸(自分から見て左側)の真新しいガレのことだろうか。
元々あったであろう岩は苔むしているのに対して、多くの岩は最近落ちてきたものと見受けられる。
確かに崩落によって谷の入り口を塞ぐ形になっている。でも安全とはいえないが落石に注意して通過することは可能と考えて、遡行を開始することにした。
 このような状態なので、もし何かあっても「自己責任」であるので、芦屋地獄谷への遡行は個々人が慎重に判断していただきたいと思う。

 上方の状況を警戒しながら、足早にガレを通過。幸いなことに崩落しているのはここだけで、少し進むと記憶にあるままの芦屋地獄谷が行く手に広がる。




 せっかくなので滝に番号を振って越えた滝を数えていくことにする。
自分が勝手に数えた数字であり、どこまでの段差を数えるのか、多段滝はどうするか等、滝の定義は人それぞれであると思うので、あくまでご参考程度に・・








F1

 まず現れる二段の小滝。芦屋地獄谷の大抵の滝にいえることだが、足場はしっかりしている。








F2

 幅広の岩盤のF2。滝身右岸に足場がある。左岸には巻き道も見受けられる。








F3

 赤い岩盤が印象的なF3。段々になっている岩盤を慎重に登る。








F4

 傾斜している段々を登るF4。写真では分かりにくいが足場はしっかりしている。








F5

 ゴルジュ状の奥に控えるF5。足場にはしっかり水が流れ落ちており、普通に登るとここではずぶ濡れになる。
撮影機材を守るために、雨対策で用意していたビニール袋にカメラを包んでから登っていく。








F6

 F5のすぐ上にはF6。上方には巨岩がひっかかっているように見える。
「インディージョーンズ」なら落ちてくるパターンの画面だが無事に通過。
余談だがこの日夜に封切られたばかりの「インディージョーンズ・クリスタルスカルの王国」を鑑賞。
同シリーズは19年前の「最後の聖戦」も劇場で観て以来のファンであり、今回も期待に違わぬ面白さだった。DVDリリースが楽しみだ。








F7

 個人的に芦屋地獄谷では最も美しいと思っているF7。滝身すぐ左を直登する。
以前は滝の直下に流木が溜まっていたが、きれいさっぱり無くなっていた。
大雨で押し流されたのか、もしくはどなたかが整理されたのだろうか。








11:17 F8 「小便滝」到着

 芦屋地獄谷前半を締めくくる「小便滝」に到着。今日は表現よりは水量が多い。
ここで小休止して後半の上流部に備える。








11:25 「小便滝」出発

 小便滝のすぐ上流で谷を遮っている唯一の堰堤を巻くために一旦Aケンへ向かう山道へ入る。
芦屋地獄谷は堰堤が一つしかないのも大きな魅力だ。








 登り始めてすぐにめぼしい踏み跡を見つけて踏み込んでいく。堰堤の高さを見計らっていくと分かりやすい。
堰堤に辿り着く前に、より上方からも踏み跡が合流してくる。堰堤に向かう踏み跡は複数あるように思える。








立入禁止

きけんですから、立入らないで下さい。


堰堤名 梅谷第二砂防ダム
高さ長さ H=16m L=38m
完成年月 昭和64年1月

国土交通省六甲砂防工事事務所


 20年ほど前だから比較的新しい。それ以前は遮るものなく純粋に遡行出来た。

 程なく芦屋地獄谷唯一の堰堤「梅谷第二砂防ダム」を通過。堰堤を乗り越えると芦屋地獄谷へ下っていく明瞭な踏み跡が続いている。
上流部は滝の数こそ少なくなるが、それぞれ個性的で光るものがあると思う。暑い時期にはうってつけのルートだ。








11:36 F9 堰堤上流側で最初の小滝

 滝を囲むような半円形の岩盤が特徴だ。右岸側には前回には気付かなかった巻き道らしき(未確認)ものもある。
写真で見るよりは足場もしっかりあって、簡単に直登出来る。




 F9を過ぎるとしばらくは小滝は無く、黙々と沢床を辿る。
徐々に谷の両側が迫ってきて、流れのほうは細くなっていく。








11:44 F10 芦屋地獄谷最大の滝 名付けるならやはり「地獄大滝」だろうか。

 黙々と沢床を歩いていくと、上流部のハイライトであるF10に到着。
5分程度滝を前にして小休止をとる。




 二段滝の手前は楽々直登出来るが、奥側は垂直の壁になっており、滝身左岸の巻き道を登る。
滝の上部は足場が狭くなっており、通過には慎重を要する。

 F10を過ぎると再び渓相は穏やかに、そしてより流れが細くなってくる。
F10以降は目立つ見どころはないが、源流部を辿る静かな遡行を楽しめる。








F11 かろうじてカウント出来そうな小滝

 滝身左岸を登る。下流では轟々と流れていた水も頼りなげになってきた。








F12 もう身長よりも低い小滝

 周囲の草木が迫ってきて、遡行の終点が近いことを感じさせる。








F13 滑状の多段滝を通過

 上空を遮るシダを掻き分けて進んでいく。本当に小ぶりな小滝だが、滑状はやはり滑りやすいので足運びは慎重に。








 滑状の多段滝を過ぎると、やや渓相は広がる。ここでは左岸に涸れた細い支谷があって、テープがあるのが見える。
ただ微妙な雲行きということで、未踏の脱出ルートを開拓するのは今回は断念した。

 木々が途切れて不意に開けた空を見ると、今にも降り出しそうな真っ黒な雲に覆われている。これは雨になるかもしれないと思ったら
小雨ではあるが本当に降ってきた。ただ木々が傘代わりになってくれて、結局殆ど雨に当たることはなかったのだが。

 この日の空模様のおかげで芦屋地獄谷の上流部は非常に薄暗く、人によっては薄気味悪いというような雰囲気になった。
この時の雰囲気を忠実に再現しようと、写真はアンダー気味に露出補正をして撮影している。








滑状の廊下を辿る

 上流部のせせらぎの音も被って、外界では雨が降っているのかどうか分からない。というかこういう状態なら降っていてもたいしたことはないのだろう。








F14 かろうじて流れが目視できる小滝

 上流部は次から次へと細い支谷が見受けられるが、本流がまだ目立つので間違って踏み込むことはないと思われる。








 ここでは巨岩に塞がれるが左岸寄りに巻くことが出来る。








12:23 左右同じくらいの幅に枝分かれする分岐

 今日は前回未確認だった右側を辿ってみようと思っていたが、前回同様左側にルートをとる。
この時木々の間から雨が落ちてくるのを確認した。雨足が強くなる可能性も考えて、こういう時は冒険は避けるべきと判断。

 実際に水が流れているのは左側だけなので、こちらが本流ということになるのだろうか。








12:25 前回沢から離れた小広い河原に出る

 まだちょろちょろと水流はかろうじて続いているが、河原の一角に明瞭な踏み跡とテープによって沢から離れるように促される。
ここには腰を掛けるには最適な岩があって、一息付くための好環境を提供してくれている。
前回同様ここで渓流シューズから登山靴に履き替える。靴下まで取り替えて濡れた足も拭いたりしないといけないのでけっこう一仕事だ。

 上空ではまだ雨が降っているようで、時折雫が落ちてくる。ここは雨宿りにも良いかもしれない。
足の装備交換が一段落すると、ちょうどお昼時ということでここで昼食を摂る。








12:57 沢を離れる

 昼食を終えてから出発。しばらく山腹道を辿る。途中で1箇所涸れた支谷を横切る。踏み跡は明瞭でテープもある。
2つ目の涸れた支谷が近づいてくると、沢に沿って山腹を登っていく。








13:03 細い尾根に乗る

 程なく尾根に乗って、そこから西へと進む。ヤブっぽいところもあるが、至って明瞭な尾根道である。








13:09 魚屋道に出る

 尾根に乗ってすぐに魚屋道へ脱出。すぐ南では保久良神社方面へ下るトラックが分岐している。
このまま前回同様保久良神社へ下ってしまうと全然歩き足りない。ということで、今日は風吹岩と打越山方面を経由してから下ることにしよう。
魚屋道をしばらく北上して風吹岩へ向かう。今日殆ど唯一の景観を楽しんでいこう。








13:17 風吹岩到着

 数人のハイカーの方々が休憩中の風吹岩に到着。その中には今朝高座の滝で出会った地元の年配の単独男性の方も居られた。
この後高座谷を下って、再び高座の滝へ向かわれるという。

 谷底から垣間見たとおり、重くて低い雲が広がっているが、幸いにも雨は上がったようだ。
そして意外なほど空気が澄んでいて、雲間からは生駒山系の山々もはっきりと見えた。
晴天では味わえない雰囲気で、しかも暑さもかなり和らげられるというか、汗で濡れた体に風が当たって涼しいので、
これからの時期は自分にとっては曇りが一番良い天気だと思う。








13:50 風吹岩出発

 充分景観と撮影を楽しんだので、今日最後の目的地である打越山へ向かう。
風吹岩からだと横池の横を通るルートが近道だが、あえてお気に入りの尾根道を選んだ。








13:59 魚屋道・打越山分岐

 ここで魚屋道を離れて打越山へ。ここから打越山へは高低差も少なく、静かで風情ある尾根歩きを楽しむことが出来る。
自分にとって非常にお気に入りのルートである。魚屋道では数人の方とすれ違ったが、今日は打越山の山域では誰一人会うことはなかった。

 普段は何の苦労もなく歩ける区間だが、最近降った雨で地面がぬかるんでいるところが多く、滑りやすくなっているのは要注意だ。








14:14 七兵衛山分岐

 しばらく黙々と静かなトラックを辿っていると、七兵衛山分岐に到着。今までは水平道へ下るトラックしか
案内板が無かったが、最近新しく七兵衛山へ向かうトラックの案内板も追加されている。

 この分岐も含めて打越山山域では、個人の方によって諸設備が設置されていることを知った。
今日こちらの山域へ向かったのは、それらを見てみたいと思ったから。
七兵衛山山頂を示す案内板も雰囲気がとても良く、本当にその労力には頭の下がる思いがします。








14:18 打越峠

 七兵衛山分岐の次は打越峠を通過。こちらにも風情ある案内板と丸太のベンチが設置され、立派な休憩スポットになっている。
今日は打越山山頂まで辿り着いた後、ここから街へ下る予定である。ということで、ここから打越山山頂までの区間が今日最後の登りとなる。
打越峠から北へ下ると、さほど遠くないところに未踏の黒五山があるが今回は残念ながらパス。








14:27 打越山山頂(480m)

 以前は何も無かった打越山山頂だったが、木のテーブルにベンチ。その周囲には多くの岩のベンチが!
思わず感嘆の声を上げてしまった。これだと大団体のグループも収容可能。六甲山系の数ある山の中でも、
打越山はトップクラスのホスピタリティを誇る山になった。こうなるまでの作業の労力はたいへんなものだったでしょう。感謝の一言です。
ここでありがたくベンチに腰を掛けて小休止をとる。

 休憩中に「山と高原地図」を見て、最終的に下山ルートを決定。やはり打越峠から八幡谷へ真っ直ぐ下るルートをとる。








14:42 打越山山頂出発

 山頂から打越峠まで、歩いてきたトラックをピストンして戻る。








14:47 打越峠通過

 水平道を横切って八幡谷へ下るルートを辿る。普段なら非常に歩きやすい筈だが、今日は随所でぬかるんでいて、
思うようにペースを上げることが出来ない。








14:55 水平道(森林管理道)を通過

 水平道を横断して引き続いて八幡谷へ下っていく。








 雨は芦屋地獄谷上流以来ずっと上がったままだが、空模様はずっと変わらず。そのおかげで森は非常に薄暗い。
天気予報では昼から回復傾向だったが、やはりアテにならなかった。

 振り返ると七兵衛山が意外に近くに見える。








 お地蔵さんが祀られている風情あるトラックを下っていく。








15:15 山の神通過

 打越峠から約30分で山の神まで降りてきた。しっとりとした雰囲気の祠もまた良い。








15:24 八幡滝到着

 いつもは涸れている八幡滝から水音が聞こえてくる。想定外だったが寄っていくことにする。
これまた谷底で薄暗い行場へ入っていくと・・・








八幡滝

 幾筋もの滝が掛かる八幡滝に到着。足場に注意しながら滝の直下へと近づく。渓流シューズを履いていないので、
立ち位置や三脚の置き場に制約がありベストなアングルで撮影出来ていない。帰宅後に写真を見ると、実際現地で受けた印象より滝が小さく写っているように見える。
もう少し三脚を縮めてローアングルで撮るべきだったか。やはり手を抜くと、それだけ写真に現れると感じる。

 ともあれ、初めて水のある行場の雰囲気を充分に満喫することが出来た。








15:45 八幡滝出発

 ここで汗びっしょりになった上着を代えて、街へ向けて出発する。
非常に山深い雰囲気だが、すぐそこには岡本の街が広がっている。








 非常に薄暗い、深い峡谷沿いを歩いていく。トラックのすぐ横は深い絶壁であり、ここを通過するのはけっこうスリルがある。
かつては轟々たる水流だったという話が残っているが、今では涸れているのが通常の光景となっている。








15:54 八幡谷登山口到着

 暗い谷を抜けて住宅街の一角に飛び出す。八幡谷を下ったのは今回で2回目だったが、やはり水のある時が良い。
登山口からは道なりに急坂を下って、摂津本山駅まで歩く。




16:11 JR摂津本山駅到着

 空模様を気にしながらの山行であったが、結局殆ど雨に当たることなく全行程を消化できた。
短めの行程にはやはり打越山は最適だ。芦屋地獄谷は水量が多くて、しかも暑い日がお薦め。身近でお手軽に避暑を楽しめる。

 ところで暫定税率が復活してしまってから、極力車を走らせるのは避けてきたが、今日7月1日からまたガソリン代が値上げされて180円台に突入したとか。
120円で給油出来た4月が遠い昔に感じられるのは自分だけだろうか。つい昨日、4月以来久しぶりに給油した。但し遠出する予定は無いので、たった10Lだけだが。
山行は車を使わなくても実施可能なため、これからも公共の交通機関を利用した山行に拘っていきたい。
新しく道路を造ってもらわなくても、もう既に走っている車は減っているようだし、ますます暫定税率及び道路特定財源の存在意義は揺らいでいると思う。









今回の行程の断面図です。




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