「西山谷U・完全遡行」

07年6月19日(火)

国土地理院地形図:25000分の1「神戸首部」、「有馬」(源流部のみ)、
国土地理院地形図:10000分の1「摩耶山」(源流部は欠けている)

昭文社・山と高原地図「六甲・摩耶」、添付小冊子P.35〜37【西山谷】 ※
山と渓谷社 「六甲山」 P.100【六甲西山谷を遡行する】 を参照して下さい。 ※


 ※ 本文中の滝番号、名称、そして落差の数値を参考にしています。

 かなり暑くなってきて、そろそろ沢が恋しくなる季節に。どこの谷で今年初めてとなる渓流シューズを履こうかと検討したが、いきなり六甲屈指の名渓といわれる
西山谷に再度挑むことにした。
 西山谷は以前に一度遡行(06年8月21日)しているが、中流部での堰堤越えの際に錯綜する踏み跡に惑わされ、違う場所から本谷に戻ることは出来たものの、
源流部のそうめん滝に辿り着くまで完全に現在位置を見失うという失敗を経験した。途中までは完璧に滝No.を数えて、全ての滝を確認出来ていたのに、
中流部が中抜けになってしまったというわけだ。今回はそれを踏まえてのリトライである。

 肝心なことは、谷底で周囲の見通しが悪く、支谷が多数分岐する中にあって、現在位置、そして方角を常に把握すること。
地形図(濡れないようにマップケースに入れる)、コンパスをフルに活用して、今度こそ全ての滝を確認して完全遡行を果たし、ガイド出来るようになるのが目標である。


西山谷の遡行にはあらゆる局面で、道迷い、転倒、滑落等の危険が伴います。
このレポは安全に遡行出来ることを保障するものではありません。
谷に入ると道標は一切ありません。ルートファインディングが必要です。



07年10月29日(月)追記!

読者の方からご指摘を戴きました。F13付近の記述が現地の状況と相違が見受けられるようです。
もう一度再訪してみないことには、写真と情報の整合性を付けられる解説が出来そうにありません。
F13からF14にかけて以外は、特に遡行に支障は無いようです。取り急ぎご報告申し上げますと共に、
情報提供を戴きました最近遡行されました方には改めてこの場にてもお礼申し上げます。m(__)m





8:12 JR住吉駅前バス停出発

 神戸市バス38系統、渦森台行きバスに乗り込む。やはり朝は山へ向かう便は空いているようで、今回も楽に座ることが出来た。
寒天山道、天狗岩南尾根、そして西山谷へ向かう際、市バス38系統はたいへん便利な路線だ。

8:29 渦森台4丁目バス停到着 (左)

 終点渦森台の一つ手前の渦森台4丁目で下車。終点まで乗ってしまうと西山谷へは少しだけ遠くなってしまう。
今回もやはり自分が最も最後まで乗っていた客だった。




 渦森台の閑静な住宅街を最も東寄りに道なりに進むと、千丈谷第1堰堤横からお馴染みの広い川原に出る。 (右)
周囲の緑が濃くなって、すっかり夏の気配だ。時折、地元の方が散策されているが、今日は誰もいなかった。

 木陰になっている岩に腰掛けて、渓流シューズとスパッツを履くなどして、西山谷へ突入する準備を整える。

 沢歩きは登山靴をザック(自分のはマックパック35L、テカポ)に入れなければならないので、普段より荷物を減らす必要がある。
そのため、今日は交換レンズ無しで常用の標準ズームレンズである、Canon EF-S17-85mm F4-5.6 IS USM だけで通すことにする。
最近の山歩きでは広角ズーム EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM を多用しているが、今回の主な被写体は数多くの滝群。
標準クラスの画角が最適だが、狭い谷中で立ち位置が限られることもあるので、やはり単焦点よりもズームレンズが有利だ。
まだデジイチ購入から半年も経っていないのだが、既にもっと明るい標準ズームレンズが欲しくなっている。まさに「隴を得て蜀を望む」。人の欲とはキリがないものだ。


8:50 渓流モードに切り替えて、千丈谷第1堰堤前を出発

 西山谷に突入すると途端に周囲の見通しが利かなくなる。前回に懲りて谷に入る前から地形図で周囲の地形を念入りに確認する。
広い川原の正面に見えている平らなピークは油コブシから東に突き出た尾根である。西山谷はこの尾根を迂回するように、下流部では大きく東に蛇行している。
実際に谷床に降り立つまでには2つの堰堤(千丈谷第2堰堤、第3堰堤)横を通過するが、その間はこの尾根に向かって真っ直ぐ谷が伸びている。
第3堰堤を過ぎたところで谷へ降りていくが、ちょうどそこが尾根に突き当たる場所である、と頭の中で整理した。

 川原沿いに少し奥へ進んだところで左岸へ渡渉。短い間だけ、多少ヤブっぽい天狗岩南尾根へ向かうトラックを登っていく。








8:58 西山谷分岐 (左)

 渡渉地点から登り始めてすぐに西山谷分岐に到着。写真では分かりにくいが、正面奥には千丈谷第2堰堤のガードレールが見えるので目印になる。
分岐から歩き始めてすぐに真新しい足跡が続いていることに気付く。ここ数日の間に西山谷を遡行された方が居られたようで、源流部まで時折現れて元気付けられる。
堰堤すぐ脇まで登ると、しばらく山腹道を辿る。しっかりと整備されたものではなく、時折現れるビニールテープを手掛かりに、歩きやすそうなところを
自分で判断して進む。時折、幅が狭いところや滑りやすいところもあって、通過にはいきなり慎重を要する。

 殆ど山腹道を辿ったまま2つ目の堰堤(千丈谷第3堰堤)を過ぎてすぐに踏み跡は谷底へ分岐、急降下を始める。(まだしばらく谷に下りずに進むことも可能)
前回は山腹道を辿り過ぎてF1を通過してしまった経験がある。

 谷底に降り立っていよいよ遡行を開始。川床を辿るので足元はすぐに濡れる。安全面を考えても、西山谷を満喫するにも渓流シューズは必携アイテムだと思う。



9:12 西山谷最下流の小滝群が始まる (右)

 谷床に降りてすぐに谷は岩壁に突き当たり、東へ大きく向きを変える。ここからが数多くの滝を満喫出来る西山谷遡行の始まりだ。
プロローグからいきなり間髪入れずに小滝が連続するエリアに突入する。この区間はいずれも小滝のすぐ横を快適に直登する。

 ここから滝の番号付けをしていくのだが、カウントするのかどうか判断が難しい小滝があって、
その影響か参考書籍によって滝番号には違いがある。ここでは上記の2つの書籍※を元に番号付けしているが、
人によって基準は様々なのが当然なので、番号付けの一例だと捉えていただければ妥当だと思う。



 今回心がけたことは、巻き道を辿ったり堰堤を越す間に見逃す滝が無いように、極力谷から離れずに遡行すること。
滝番号は一例に過ぎないが、このページ上で見れない掲載漏れの滝が無いようには努力している。








F1 (左)

 水の飛び散る様が美しいF1。前回の遡行ではこの滝の上から谷に降り立ったので、きちんと正面からF1を眺めたのは今回が初めて。
滝のすぐ横を登れそうだったが、全身びしょ濡れになりそうだったので、少し下流の左岸から巻いた。


F2 (右)

 段々状の優美なF2。すぐ横の岩を快適に登る。正面奥には少し離れてF3が見えている。
ここまでが最下流の小滝群である。これから後の滝の通過を考えると、小手調べといったところだろうか。
ところで今日ももちろん撮影しながらのゆっくりした遡行であるので、通過時刻は掲載しているがあまり参考にはならない。
普通に歩くと最下流の小滝群はあっという間に通過してしまうだろう。

 なお千丈谷第2、第3堰堤を通過してきた山腹道はここが終点となる。








9:35 F3・10m (左)  〔B−2〕:日赤パトロール救助プレートNo. ※2

 小滝群を過ぎると比較的大きなF3が現れる。装備を整えれば直登出来そうだが、易しい段々状の岩場の巻き道が手前右岸にある。
このF3に限らず難しいと思われる滝には必ず周辺に回避する巻き道がある。小滝程度ならば滝身すぐ横を直登するが、単独行の自分にとって無理は禁物だ。
巻き道がある滝は全て巻いたことを最初に付記しておきたい。



※2: 西山谷には要所に「日赤パトロール救助プレート」が設置されており、緊急事態の際は救助の手助けになるという。
全てのプレートを確認出来たわけではないが、有用な情報だと思うので設置箇所では記載していくことにする。




 F3滝口付近で西斜面へ登っていく踏み跡を発見。ビニールテープによるマーキングもある。
おそらく油コブシへ突き上げる尾根に乗るトラックだと思われる。




 F3を巻いてしばらくすると小滝のF4。快適に滝身すぐ横を登れる。 (右)
下流は堰堤に邪魔されず、そして滝が短い距離で連続する楽しい区間だ。枝分かれする支谷も無いので迷う可能性も低い。








 F4からしばらくすると、一面見事なコケに覆われた崖が左岸に現れる。まさに「モス・ガーデン」で、自然が生み出した造形だ。
この遡行の前日に雨が降っていたこともあるだろうが、絶え間なく水が滴り落ちていた。緊張感ある遡行の中でほっとする空間でお気に入りスポットとなっている。

 「モス・ガーデン」を過ぎると辺り一面ガレ場となっている区間を通過。いささか荒れた雰囲気だが、ガレ場を通過して谷が左にカーブすると、
下流部のハイライトF5・ふるさとの滝が見えてくる。








9:55 F5・ふるさとの滝 (15m)  〔B−3〕

 ある意味で自分を含む男性にとって西山谷最大のハイライトといえる「F5・ふるさとの滝」に到着。
この意味深な名前が命名されたのが終戦間もない昭和20年代ということも興味深い。名称のことはともかく、美しい滝姿においても西山谷で一、二を競うと思う。
個人的にも数多い西山谷の滝の中でもお気に入りとなっている。それにしても滝に突き立った木は昨年と変わらずそのままだ。いつからここにあるのだろうか。

 ふるさとの滝手前の川原で小休止をとる。というのも、ふるさとの滝を満喫した直後には、西山谷最大の難関が待ち構えているからだ。




 ふるさとの滝はもちろん素人の自分が登れる滝ではない。少し下流から右岸の岩棚に登っていく。 (右)
滝の落ち口すぐ横を通過するのだが、傾斜した岩棚の上にある砂と落葉のおかげで非常に滑りやすくなっており、通過には最大限の注意力が要求される。
自分は高いところが苦手ではないが、やはりスリル満点の場面だ。








10:09 千丈谷第5堰堤越えに挑む (左)

 ふるさとの滝を過ぎると、初めて行く手が堰堤に阻まれる。過去に不幸にもここで死亡事故が発生していることで悪名高い、千丈谷第5堰堤だ。
風化と崩壊が進んだ右岸の崖に登っていくのだが、高所では垂直になっている場面もあって、鎖とロープなどに頼って登っていく。高度感抜群でまたスリル満点だ。
西山谷遡行の中で最難関といわれているところで、本来なら鎖に取り付いている場面を自分撮りしたいのだが、自分にも機材にも危険すぎるので断念した。
やはり何度通過してもなかなか険しいところだと思う。
 なお、1万分の1地形図「摩耶山」では、この箇所にがけ(土)の表記がされている。




10:16 千丈谷第5堰堤上に立つ (右)

 ようやくの思いで堰堤の上まで到達。手すりにもたれて一息つく。堰堤の対岸に見える稜線は天狗岩南尾根で、写真に写っていない少し上から急傾斜が始まっている。
堰堤のおかげで少しだけ周囲を見渡すことができ、またはっきりと現在地が特定出来る。堰堤はただの障害物と思えば気が重いが、現在地特定の判断材料になるという
利点のほうを重視するほうが精神衛生上良いと思う。

 堰堤を越えるとすぐにまた崖を下って上流側へ垂直降下する。登りも険しいが下りも引けをとらない。千丈谷第5堰堤越えが最難関と言われていることが納得出来る。
但し、多くの堰堤で見られることだが、下流側に比べて上流側のほうが低くなっている(上流からの堆積物が溜まるからだろう)ことは幸いだ。険しいがすぐに沢床へ戻れる。

 なお千丈谷第5堰堤のすぐ上流からは東へ支谷が分岐する。ここでは堰堤越えのルートからは支谷は対岸に位置するので誘い込まれにくいが、
流れが細くなる上流に近づくほど紛らわしい支谷が目に付くようになる。誘い込まれないように細心の注意が必要であることを頭に入れておくほうがいいと思う。(経験あり)








F6

 緊張を強いられる千丈谷第5堰堤を過ぎ、ほっと一息付きながら歩いていくと小さい小さいF6。滝に数えるのかどうか微妙なところだと思うが、
他に見当たる滝は無いので間違いはないと思う。
 そしてF6のすぐ奥には西山谷最大のハイライトがもう見えている。








10:32 F7・西山大滝 (20m) 〔B−4〕

 西山谷最大の西山大滝に到着。周囲は岩壁に囲まれ、大きく2段に分かれて水しぶきを飛ばしながら落ちる様はやはり何度見ても壮観だ。
ふるさとの滝がその名の通り女性的な滝なら、こちらは男性的な滝というべきだろうか。西山谷最大の見どころの滝の元でしばらく時間をとって過ごすことにする。

 昭和13年の阪神大水害で出現したという滝で、どういう物理的現象で形成されたのかが非常に気になる。


 06年11月にはこの西山大滝右岸の岩壁で滑落死亡事故が発生している。岩壁の下には供物が置かれていた。西山谷好きな自分にとっても他人事ではなく、
ここで絶命された方を想って合掌する。兵庫登山会設置の西山大滝の滝名板の横には、東灘警察署による「ここから登らないように」と書かれた古い看板が置かれている。

 山と渓谷社「六甲山」、そして昭文社・山と高原地図「六甲摩耶」添付小冊子では、この死亡事故が発生した岩壁を登っていくように書かれているが、
余程自信がない限り、道具による確保が無い限りは避けるべきだと思う。少し下流の右岸から安全に登れる巻き道があるからだ。単独行の自分は迷わず巻き道を使う。








西山大滝直下より。 (左) 飛沫を浴びながら間近で見上げると大迫力だ。


西山大滝。天然の造形美 part 1 (右)








西山大滝。天然の造形美 part 2,3 (左、右)

 どうすればより滝の美しさを表現できるかというのは、自分にとって重要な問題だ。スローシャッターで流す、高速シャッターで飛沫を止める、いろいろ試してみた。
一般的にはスローシャッターで流す写真がよく見られるように思える。滝姿も分かりやすいし無難な手法だと思う。でも飛沫を表現するのも悪くないと感じた。
西山大滝のような豪快な滝ではなかなか効果的ではないだろうか。

 最近の降水量は少ない。西山谷の水量もそれほどではないのではと思ったが、西山大滝の迫力は健在だった。




10:50 西山大滝出発

 西山大滝で20分近く過ごした後、重い腰を上げて出発する。少しだけ下流に戻って巻き道を登る。急斜面ではあるが、踏み跡によって自然にステップの付いた
登りやすい巻き道だ。西山大滝横の岩壁のすぐ上を通過して間もなく谷に急降下すると西山大滝の上流側に出る。

 F7・西山大滝辺りからF12くらいまでが西山谷の中流域になる。そして前回の遡行で現在地を見失うという失敗をしたところでもある。
中流域では2箇所で堰堤を越えるが、くれぐれも巻き道を辿り過ぎないこと。これが自分の作戦である。
書籍では山腹道を行くように書かれているが、これでは谷を離れる区間が生じるため、いくつか滝を見落とすことにもなってしまうからだ。








F8 (4m) (左)

 西山大滝を越した後は、一転して対照的な小滝のF8が現れる。この辺りから徐々に渓谷が狭まる箇所が目立つようになってくる。
中流部は比較的小滝が多くて、しかもやや距離をおいて点在する。西山谷の中でもやや地味な区間といえるだろうか。




11:04 千丈谷第4堰堤 (右)

 地味だけならまだ良いが、中流部では2箇所で堰堤越えを強いられる。この堰堤は右岸のステップを活用して登るが、やや段差が大きくてすぐ脇の斜面も併用する。
人が登るように考えて造られているのかいないのか、いかにも中途半端ではっきりしてほしいところだ。ちなみに前回はこのステップは使わずにもっと手前の巻き道を登ったようだ。
登り終えた後の感想だが、千丈谷第4堰堤は堰堤に近づく前に巻き道を見つけるほうが楽かもしれない。

 登りはたいへんだが、一旦堰堤の上に出れば谷に下りるのはあっという間だ。ここも例外ではない。

 ちなみに千丈谷第4堰堤を越えるとすぐに右岸から支谷が分岐する。直角に流入し、また水の気配が無いので誘い込まれにくいとは思うが、
支谷の分岐は沢歩きにおいて現在地特定の有力な手掛かりになるので、地図読みでは要注目ポイントだ。
 そしてここから次の第6堰堤に至るまで、谷は緩く東に蛇行する。この流域右岸には油コブシ北隣にある676mピークから派生する尾根が落ち込んでいる。








 支谷の分岐を左岸に見送るとすぐに小滝F9。 (左)
直線的に岩に切れ込みを入れたような個性的な小滝だ。滝身すぐ横左岸を簡単に登れる。


11:22 F10・二条の滝 (4m) (右)

 小さいながらも中流部では西山大滝以外で唯一固有名を与えられている滝だ。名前の由来は滝姿を見れば一目瞭然。
ごく微妙な段差だが手前にも二筋に分かれた流れがある。








F11 (5m) (左) 〔B−5〕

 F10・二条の滝から程近いところにはF11(5m)。中流部では滝身すぐ横を直登出来る小滝が連続している。
その意味では面白いといえるだろう。F11のすぐ側にはアジサイが自生しているが、まだ青々としていて見ごろには程遠かった。


 地味ながらも連続する小滝を直登出来るそこそこ楽しめる区間だが、F11を過ぎるとすぐに目の前には千丈谷第6堰堤が立ちはだかる。
ここも堰堤右岸から巻き道で越していくが、何故かいつもよりかなり高巻きを強いられる。(右)


11:35 千丈谷第6堰堤上に到達 (右)

 そしてガイドブックではこの堰堤越えを最後にしばらくは山道を通って第7堰堤まで沢へ降りないように書かれている。
そのことが頭にあった前回、この堰堤を越えた後で誤った踏み跡を辿ってしまい、油コブシ方面へ登ってしまうという経験をしてしまった。
今回は前回の経験を踏まえ、また一つの滝も見落とすことがないように、すぐに谷に戻ることにする。
注意深く堰堤の上流側を観察していくと、やはりすぐ沢へ降りる踏み跡を見出すことが出来た。

 この第6堰堤を過ぎた後にも右岸へ支谷が合流してくる。本谷に負けず比較的に立派な支谷で誘い込まれないように注意が必要だ。








11:40 F12 (6m) (左)

 支谷を見送ってしばらく進んだところで、F12(6m)に到着。この滝を見るのは今回が初めてだ!前回は山道を迷走して通り過ぎてしまった区間を
歩いているということに気付いて嬉しくなった。
「丸岩の段状」とガイドブックには書かれているが、丸岩など全然見当たらないではないか。手前に落ちている岩のことを指しているわけでもないだろうし・・。
直登も不可能ではないように見えるが、やはり危険だしそれにずぶ濡れになってしまうし機材も心配だ。右岸沿いに山腹道が通っているだろうから、
それに向けて踏み跡があるのではと右岸を探してみたら、やはり少し下流で期待通りに踏み跡を見出す。登っていくと明瞭な山腹道に合流することが出来た。




 F12からF13の間は滝が無く、しかも2箇所堰堤があるので、ガイドブック通りに山腹道を辿ることにする。 (右)
常に右手に谷を見ながら楽々2つの堰堤を越す。この2つの堰堤はさほど高くはない。山腹道を辿っている限りは高低差は殆ど無い。

 2つ目の小ぶりな堰堤を過ぎた先で右岸から支谷が分岐する。ここでは本谷と支谷での水量の差はあまり無い。支谷もけっこうな水音を立てて流れている。
支谷の存在をあらかじめ予期しておかないと、右岸沿いに歩いてきているので支谷だけが目立って見えてくるため、非常に誘い込まれやすい。
合流箇所付近は堰堤によって堆積物が溜まり、そこそこ広い川原を形成しており、しかも深いブッシュに覆われている。ために本谷のほうが目立たないようになっている。

 ここで注目するのは支谷のほうはレンガ造りで中央部が割れた第7堰堤が塞いでいること。中央部が割れた堰堤が見えるほうが支谷だということを覚えておくと万全だ。
ガイドブックでは巻き道を辿ったまま、この第7堰堤直下をトラバースし、F14・そうめん滝付近まで山道を辿り続けるように書かれている。
しかしそれではF13を見逃してしまうことになるので、第7堰堤より少し下流の支谷から強引に沢へ降りて、合流地点まで下って本谷へ戻っていく。
合流地点の川原のブッシュは深いが、自分と同じことを考える方がおられるようで、本谷に戻る踏み跡がしっかりと付いていて心強かった。








12:06 合流地点のブッシュを突破して本谷へ戻る

 写真で見ると深いブッシュに本谷が隠されている形になるのがよく分かる。ちなみに前回遡行した時には第7堰堤を見た記憶が無いので
この付近は通っていないのかと思ったが、次のF13は通過していたことが自分の過去のレポによって判明。ただ単に気付かなかっただけかもしれない。




 この比較的大きな支谷が分岐する辺りから、本谷の流れが細くなって上流部といえる区間に突入する。西山谷遡行もいよいよ終盤が近づいてきた。





 分岐といえば、やはり自分にとっては歴史を想起させる。今の時代は後から見ればけっこう重要な時期になるのではと思うのだがどうだろうか。

 自分の考えでは、先の衆院選挙で小泉の下手なパフォーマンスに釣られて、自民を大勝させてしまった時点で日本の進路は大きく狂ったと考えている。
しかし今度の参院選挙は少しでも良い方向へ是正させる可能性がある機会だと思う。安倍は1週間投票日を遅らせるという姑息な手段に出たが、我々国民からすれば
全く無意味なことだ。やたら大急ぎで実績を積み重ねているつもりのようだが、審議不十分の不完全な法であるのは想像に難くないし、延長した国会運営や投票日変更の
ために発生するコストは誰が負担するのか。
 更に夏休みに実施することによって、投票率が下がることを期待しているのだろう。投票率が下がると組織票に左右されてしまうから自公には有利となってしまう。

 「国民は目くらまし、そして余暇に気をとられる」と踏んでいるのだ。なめられたものだ。

 政治に興味が無いというハイカーの方も多いであろうが、決して無縁な話ではないのだ。
農水省を取り巻く癒着の材料に「林道」が使われたことも最近のニュースだ。大事な自然が癒着の舞台に使われて破壊されてきたことを想起すればよいと思う。
政治は遠い話だという向きもあるようだが、実は意外と身近な問題なのだ。

自分は常に今の国のあり方には不満を持っているが、レポに記述するだけではなく必ず投票することによって意思表示をする。
国政選挙では棄権したことがないのは、自分の数少ない自慢出来ることだ。否、民主主義国家の国民なのだから投票して当たり前というか義務なのだった。

投票日が22日だろうが29日だろうが、自分が休みかどうかはまだ未定だが、期日前投票制度を利用することによって絶対に投票できる。
このレポを読まれている皆さんも、山へ出掛ける前についでに投票所へ立ち寄られて、しっかりと意思表示をしようではありませんか。我々が審判のカギを握っているのだから。





 ブッシュを通過すると、本谷はすぐに薄暗く幅が急激に狭くなる区間に突入。廊下状になっているF13が現れる。








F13 〔B−7〕  (右)

 小さな段状の滝が連続しているF13だ。滝は小ぶりながらもなかなか味わい深いが、すぐ奥に堰堤が控えているので気が重くなる。
F13は小滝だが滝身すぐ横を通るのは難しいようだ。よく見ると左岸に巻き道があったので、万全を期してそれを辿る。








12:29 F13上の堰堤越えにかかる  (左)

 一旦左岸の巻き道を辿って、堰堤直下に出てくる。左岸を巻くのは難しそうだったが、対岸の右岸はステップが付いて簡単に登れるようになっていた。ラッキー!
味気ないといえばそうかもしれないが、安全を確保するほうが大事だと思うので、全ての堰堤にこのステップを付けてくれれば良いのに。

 このステップ付きの遡行者に優しい堰堤を過ぎると、再び支谷が分岐する。しかも今度は左岸に立て続けに2つだ。
本谷も含めてそれぞれに堰堤が見えるが、本谷の堰堤が最も大きいことを念頭に置いておこう。右岸の2本の支谷の堰堤はやや小ぶりで、
一つはレンガ造りで中央が割れていた。紛らわしいので本谷と思われる方を向いて方角を確かめたら北を指していたので、確信をもって大きな堰堤に挑むことが出来た。




12:39 F14  (右)

 本谷もけっこう暗い。堰堤直下に近づくまで目立たなかったが、小滝のF14が現れた。滝身すぐ横を簡単に登る。

 しかし、ここでも堰堤越えのほうが難しかった。右岸には段々があったが、一段が人の身長ほどあってここでは使い物にならない。
左岸を観察したら、ガレに取り付くように巻き道があるのを発見。しばらく難渋しながらガレを登ると、木立の中に明瞭な踏み跡を見出してほっとする。
しかも堰堤越えの部分には丸太階段まである。もしかしたらF14の少し下流からもっと安全に辿れる山道が続いているのかもしれない。
とにかくこのF14上の堰堤が遡行中最後の堰堤越えになる。数えてみたら西山谷遡行を通じて越える堰堤は5つだ。(元々山腹道を通るために登る必要がないものは入れていない)

 丸太階段で楽々堰堤を越えて上流側に降り立つと再び左岸に支谷が、そして上空には休止されたロープウェイに使われていた索道も目に飛び込んでくる。
この合流地点は見覚えがあるし間違いようがない。というのも本谷には次のF15・そうめん滝が堰堤から既に見えているからだ。
ブッシュに覆われてはいるが、比較的明瞭な踏み跡がそうめん滝に向かって伸びている。

 いよいよ西山谷遡行のフィナーレを飾る、上流部の個性豊かな滝群が連なる流域に突入する。








12:49 F15・そうめん滝 (6m)

 分かりやすいネーミングのそうめん滝に到着。正直ここまで無事に辿り着くとほっとする。滝壺(は無い)に位置するところには相変わらず流れ着いた木々の枝が積もっている。
左端から比較的容易に直登出来るようだが、今回も結局巻き道を使った。上流部の滝群はそれぞれ至近距離に位置しており、しかも間で堰堤に邪魔されることもない。
終点が近いこともあって、じっくりと遡行気分を味わえると思う。

 そうめん滝を見上げながら約10分滞在して、上流部の遡行に備える。








 そうめんが食べたくなってきた。




13:01 そうめん滝出発

 そうめん滝から少しだけ下流方向へ戻って巻き道へ入る。滝を回避する巻き道は上流へ向かうほど難易度を増す、とガイドブックに書かれているが、
そうめん滝の巻き道はさほど難しくない。すぐにそうめん滝の落ち口に出られる。そしてすぐ上にはF16が控えている。








13:12 F16 (8m)

 そうめん滝のすぐ上にあるF16。西山谷の滝の中でそこそこ立派な滝だと思うが固有名称は付いていない。
滝の雰囲気は裏六甲の似位滝に似ている気がする。滝の直下にはガレが溜まっていて、豪雨の後の水量の凄まじさが伺える。

 自分にはもちろん直登は難しいのでここも巻いて次の滝へ向かう。やはり次から次へと滝が現れる上流部は最高に楽しい。
西山谷は最後にしっかりと遡行気分を盛り上げてくれる谷だ。

 F16もなかなか見応えはあるが、すぐ上に控えるF17こそが上流部の滝の代表格だろう。








13:18 F17・愛情ノ滝 (7m)  〔B−8〕

 
「あなた一筋に・・・」ということで名付けられた愛情ノ滝。その名からして、ヴィーナス・ブリッジやハーバーランドと並んで、神戸を代表するデートスポットに
名を連ねる資格があると思うが、ここまで車でアクセス出来ないのがカップルにとって最大のネックか。ドライブウェイから距離的には近いが、下りでここまで
来るのは難路で危険を伴うのでお薦めしない。というか山好きな彼女でない限り、こんな道中で服が汚れそうなところに連れてきたら嫌われるかもしれないなあ。

 それはともかく、西山谷の中で最も優美で女性的な滝といえるのではないだろうか。




 愛情ノ滝を堪能した後は、少し気合を入れなければならない。というのも愛情ノ滝の巻き道が全ての滝の巻き道の中で最難関だと思うからだ。
愛情ノ滝左岸にはガレ状の細い谷があって、そこをひとまず登っていく。砂利が積もっていて足場は悪い。
ガレの登りで高度を稼いだ後、北側の垂直の崖をロープや木の根を頼りに登る。自分の身長以上の高さがあって、ここでは相応の腕力も必要だ。
ようやく崖の上に到達したら、そこは細い尾根状になっている。尾根の上方を目指して踏み跡が続いているが、そのまま登ってしまうと西山谷最後の滝F18を見逃してしまう。
谷のほうへ急降下する踏み跡もあるのでそれを辿る。表面の土が洗い流され、見た目にも滑りやすそうなことが伺える難路だ。
それでもすぐに谷床へ降り立ち、少しだけ遡行して東へ90度谷が曲がるとF18が見えてくる。








13:28 F18 (5m)  〔B−9〕

 薄暗くて細いゴルジュの先にあるF18。5mとあるが、実際には2段に分かれているのでそれほど高さを感じない。
最も源流部に近く、西山谷遡行のフィナーレを飾る滝である。直登も不可能ではないようだがこのまま遡行を続行しても、
これより上流には見どころがないだけでなく、また堰堤に阻まれることになる。F18を鑑賞した後は、前述の尾根道に戻って谷を脱出するほうが無難だろう。

 これでF番号が割り振られている滝に全て無事に出会えたことになる。達成感はあるが、これで終わりと思うと少々淋しい気もする。




 F18を堪能した後、少し下流方向へ戻って、降りてきた踏み跡を登って尾根に取り付く。尾根はなかなか急な傾斜だが、しっかり踏まれており快適に歩ける。
しばらくジグザグに登って高度を稼いでいくと傾斜は緩んで、踏み跡の両側には笹が目立つようになる。でも踏み跡が見えなくなるほどのヤブではない。
そのまま等高線を辿るように、西山谷の源流部を東から西へ大回りしてから、北へ踏み跡が向いたなと思ったらそこはサンライズ・ドライブウェイの道端。終点だ。








13:42 サンライズ・ドライブウェイに到達 (左)

 堰堤5箇所、滝群18箇所。長かった西山谷遡行はサンライズ・ドライブウェイに飛び出して終点になる。西山谷遡行は2度目だが、
今度こそ完璧に現在位置を把握し続けたまま遡行を完了出来たことで達成感は抜群だ。これで西山谷をガイド出来るメドもたった。

 今日の天気は曇りでにわか雨も予想されたが、どうにかもってくれた。それでも夕方遅くなると降りだしそうな気配なので、
あまり遅くならないうちに下山することにした。それではどこを通って下山しようか・・。
 前回の西山谷遡行は西の油コブシを経由して、六甲ケーブル下駅まで降りた。油コブシは好きな山だが、毎回毎回同じ下山ルートでは芸がない。
今回は逆に東にある天狗岩南尾根を経由して、出発地点の渦森台まで戻ることにした。

 西山谷出口から少しだけ東へ歩いたところで、保養所があるために路肩が広くなっている。
そこで渓流シューズ、びしょ濡れの靴下を脱いで、代えの靴下と登山靴をザックから取り出して履き替える。
濡れた靴から履き替えるこの時間がまた気持ちよくて、とてもリフレッシュ出来た気分だ。
 そして少し遅い昼食をとった。今回もおにぎり2個だけ。




14:10 山歩きモードに切り替えて、西山谷出口付近を出発

 天狗岩南尾根まではしばらく緩やかな登りの車道歩き。歩道は無いが交通量は比較的少ないのが幸いだ。




14:17 旧六甲オリエンタルホテル (右)

 天狗岩南尾根へ通じる脇道の入り口には、最近まで六甲オリエンタルホテルが営業していた。正確にいつまでの営業かは知らなかったが、
なんと訪れる僅か4日前に営業を終えたばかりだった。一度は山小屋代わりに泊まってみたいと思っていたが、それも永遠に叶わなくなってしまった。
(近くに六甲山ホテルはあるが・・)

 建物はまだそのままあるが、これからの用途については決まっていないという。

 六甲オリエンタルホテルに別れを告げた後、約半年ぶりの天狗岩南尾根へ向かう。








14:23 天狗岩

 曇天の割りには意外とまあまあ遠望が楽しめた。そして遠望だけではなく、足下の深い西山谷を見下ろして再び達成感を味わう。
けっこう雲が厚く、いつ降りだしてもおかしくない雲行きだったので、数分の滞在で下山を開始することにした。
 天狗岩は半年前にゴミ一つ無い完璧な状態にしたのだが、その後放置されたゴミがそこそこ増えており、再び片付けてから立ち去りたかったのだが残念だ。
次の機会にまとめてきれいにするとしよう。








天狗岩南尾根を下る (左)

 天狗岩南尾根は登りに使うと辛いが、下山だと下り一辺倒なのでこれほど心軽やかな時間はない。
平行している西山谷遡行には約5時間を要したが、天狗岩南尾根はたった30分ほどで駆け下ってしまった。

 天狗岩南尾根終点近くで、西山谷(下流)方面への脇道へ入る。やはりそこそこヤブっぽいトラックだ。
しばらく下ると朝方通過した西山谷分岐に到達。谷、そして尾根を一回りして出発地点に戻ってきてまた達成感を感じる。




15:01 西山谷下流を渡渉 (右)

 再び西山谷を渡渉。天狗岩南尾根を下ると最後の最後まで西山谷を絡めることが出来る。なかなか心地良い余韻が楽しめた。




15:11 渦森台4丁目バス停到着

 ちょうど街へ降りるバスが来る直前に到着した。




15:15 定刻より少し遅れて来たバス(15:12発)に乗り込んでJR住吉駅へ向かう

 次の渦森台3丁目バス停で子供達が乗り込んできて殆ど満席になった。子供達の歓声に包まれて住吉駅へ向かう。




 今度こそ完璧に順調に西山谷を遡行出来て大満足の1日だった。いきなりお気に入りの西山谷を歩いてしまったし、次はどこの谷を遡行しようかな。




今日の行程の断面図です



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