「摩耶山麓一巡 / 杣谷〜トゥエンティークロス」 07年9月13日(木)

国土地理院地形図:25000分の1「神戸首部」を参照してください。

 初秋というには暑い日が続くがもう9月も中旬。せっかく再始動したし、11月には六甲縦走参加予定なので続けて行かなくては。
今日の主な目的は【摩耶山さん歩】のてるみさんより情報をいただいた、杣谷で咲いている“ヤマジノホトトギス”、“ダイモンジソウ”を見ること。
杣谷峠を越えて、そのまま徳川道を西進。トゥエンティークロスを経て新神戸に至るという、前回よりも大回りで距離の長いプランとした。
行程全てが谷道という、ありそうでなかなか無い内容である。

6:05 JR六甲道駅出発

 前回と同じく今回も始点はJR六甲道駅。JR六甲道駅から阪急六甲駅までの所要時間は僅か10分で急な登りも無い。
六甲登山口交差点から護国神社へ。前回はそこから長峰坂を登ったが、今回は杣谷川の西から登った。
ちなみにこの道はローソンのある交差点から登る道で、車では進入禁止となっている。
長峰坂より比較的斜度が緩いので、山道に入るまでの脚の負担を抑えることが出来る。実際、今日のほうがかなり楽に感じた。





6:43 杣谷登山口

 距離的にはやや遠くなったようで、長峰坂を通るよりも少しだけ駅からの所要時間が延びたようだ。
相変わらず杣谷川の水量は少なく、堰堤下の穴から申し訳程度に流れるだけ。4本のパイプからは水が出ているが、この水も枯れることがあるのだろうか。

 堰堤左側から登山道が杣谷に添って伸びている。すぐに山寺尾根出合の川原へ出る。今日はそのまま直進。
そして細い流れを渡渉、と言いたいところだが完全に涸れていた。








6:51 広い川原より杣谷(徳川道)へ

 涸れた小川を渡るとバーベキューでよく使われている広い川原へ出る。
正面に長峰山を見上げていよいよ徳川道を登っていく。これまで杣谷は3度ほど下りに使ったことがあるが、登りは今回が初めてだ。
出来れば水量の豊富な時に歩きたかったのだが、今日のメインテーマは花見?なので花期を外すわけにはいかない。

 広い川原の奥にある「徳川道」を示す公設案内板を見て細い山道へ入る。
少し登っていくと「徳川道」の歴史を解説した案内板がある。



徳川道

 「徳川道」は、幕府の命により兵庫開港の年慶応4年(1868年)に完工した。当時の名称を(西国往還付替道)といい、
海沿いの主要幹線である「西国街道」を大きく迂回する道筋であった。(石屋川〜杣谷〜摩耶山裏〜小部〜藍那〜白川〜高塚山〜大蔵谷)

 居留地での外国人との衝突を避けるために設置されたにも関わらず、同年、備前藩が外国人と衝突。市街地が外国兵により占拠された。
世にいう“神戸事件”である。その後、この道は廃止されたが、大正時代よりハイキングコースとして利用され、「徳川道」と呼称されるようになった。

 徳川は徳川なりに考えたのだろうが、やはり時代の流れには逆らえなかったということだろうか。
自分の考えでは、今の日本も幕末同様に充分転換点を迎えており、自公独裁による旧態依然とした政治体制では社会情勢の変化に対応出来ないだろうと考えている。

 ところで、最後まで美しくなかった安倍首相が辞めた後、マスコミは一斉に自民党総裁選挙へ関心が流れてあきれてしまう。
街頭インタビューも麻生か福田かの2色で分かれているように編集しているように見えるが、仮に自分がインタビューされたとしたら、
「時間も国会運営費ももったいない。どっちでもいいから早く決めて国会を正常化してほしい。どのみち一般の国民には選挙権が無いのだから。
それに何より安倍のような首相を担ぎ上げた自民党の責任をもっと考えるべきだ。」と答えるところだ。
誰がなるのかということよりも、これから何をするのか、何を目指すのかということのほうがずっと大事なことだ。マスコミももっと視点を考えてもらいたい。

 「じゃりン子チエ」で何回もテツに騙されながらも期待してしまうオジィのことを思い出す。これまで首相が変わることだけで期待して、何度騙されてきたか考えたほうがよい。
「何かしてくれそう、他の内閣より良さそう、人柄が良さそう」というのはもう通用しない。昨今の乱脈な事務所費管理を見て分かるように、政治家の性善説などとうに崩れているというのに。
「政権交代」で政党同士が切磋琢磨していくしかないと思う。








 それはともかく今日は結果的に徳川道を縦走する形にもなる。(摩耶山中のみだが) 自分一人だけだが、この古道で実現されなかった参勤交代をしているつもりで歩いてみよう。

 しばらくは谷よりもかなり高い左岸を歩く。そうだった、この杣谷では実際に沢床を歩く区間はほんの僅かで、大部分は山道なのだった。








7:06 堰堤に阻まれて右岸へ渡渉

 なかなか風情のある山道を歩いてきたが、目前を堰堤が阻んで現実へ引き戻される。
堰堤直下で飛び石を伝って右岸へ渡渉。そこからは杣谷での徳川道随一の(堰堤越えの)急坂が待っている。
といっても西山谷の堰堤越えと違って、杣谷はしっかりと整備されているので非常に歩きやすい。








あっという間に堰堤は遥か下

 急坂であっという間に高度を稼ぐ。先程見上げた堰堤を見下ろすことが出来る。(正確には2段構えの上段側の堰堤が見えているのだが)








堰堤越えの急坂

 岩と砂交じりの急坂で一部滑りやすいところもあって、鎖が設置されている区間もある。(山と渓谷社「六甲山」ではこの鎖に頼らぬようにとある)
この辺りは一本道ではなく、枝分かれしているところもあって、自分の好みによって使い分けることが出来る。

 こんな急坂を参勤交代させたら、西国の大名家を怒らせることになったのではないだろうかと想像したが、
考えたらこの急坂は堰堤越えのために設けられたもので、本来の徳川道はもっと下方の川に近いところを通っていたのではないだろうか。
実際、この後せっかく登ったのに下りに掛かる。








7:19 杣谷随一の景観

 急坂を登り終える頃、杣谷を見渡すことが出来る。街のすぐ側に豊かな自然が広がっていることを改めて実感させられる。
今日は全て谷道を通ることになるので、今日唯一の景観ともなる。大展望が好物の自分には珍しいパターンかもしれない。

 杣谷の景観を楽しんだ後、トラックは下りに掛かって沢に急接近する。
各所から沢床へ降りることも出来るが、水量の少ない今は先を急ぐことにする。








また堰堤に阻まれる

 再び2段構えに堰堤がそびえている。そして堰堤直下で再び渡渉となるのだが、堰堤右岸寄りに階段が設けられているのが目に入り、
西山谷がフィードバックして危うく誘い込まれそうになった。杣谷では堰堤付随の階段を登ることはない。

 飛び石を伝って左岸へ渡ると、よく整備されたトラックが緩やかに登っていく。








杣谷名物?パイプ階段

 渡渉してしばらく登っていくと、飾りっ気も何もないパイプ階段を通過する。やはりトラックで敷設するのは木か石の階段がいいのだが・・。
このパイプ階段からしばらく登ったところで再び高度を下げていく。この徳川道も堰堤のおかげで小刻みにアップダウンが連続する。








杣谷川渡渉

 今度は堰堤が絡まない純朴な渡渉箇所を右岸へ通過。一応水は流れているがやはり少ない。かろうじて水流を表現出来たような感じだ。








7:55 杣谷名物?2台のバイク

 いつもこれを見るたびに思うが、何故ここにあるんだろう。まだ2台ともそれほど古いものではないようだが・・。
バイクはもう動くことがないと思うと少し感傷的になる。というか不法投棄は良くない。
自分の感覚ではバイクでも吸殻一本でも違うのは大きさだけで、不法投棄という点では全く同じだ。








 2台のバイクを通過すると、杣谷で唯一トラック沿いに簡単に眺められる連続した滝を鑑賞できるスポットに到着。
下段は2連の小滝。裏六甲の似位滝のミニチュア版のような感じだ。








8:00 上段はやや大きめの小滝

 そこそこ広い滝壺まで抱えた比較的大きな小滝であるが、やはり水量の少ない今は・・。
ともあれ、ここでザックを下ろして休憩をとることにする。前回、忘れていたオカリナを目一杯楽しむことにする。
でも水音のおかげでここではそれほど音が響かなかった。




8:20 小滝前を出発

 ちょろちょろの水量の小滝を楽しんだ後、右岸寄りの急坂(に見える)を登っていく。
すぐに小滝の上に出るが、そこでは花が咲いていたので少し撮影していくことにした。








 当初の目的の花ではないようだが、せっかくなので撮っておくことにした。
手持ちのレンズの中では最も最短撮影距離(25cm)の短い一つ、24o F2.8 で撮影したが、
やはり広角レンズでは小さくしか写らないのでトリミングした。手を抜かずに35o F2(最短撮影距離は同25cm)に交換するべきだっただろうか。

 今日の山歩きでは常時ボディ(30D)に装着するのは24o F2.8 レンズにした。自分が最もよく使いそうな画角だし軽いから。








 ひとしきり花を撮り終えた後、再び渡渉して左岸へ。でも小滝の上で谷は蛇行しており、感覚的にはトラックは直進している。
この渡渉地点辺りから石組みの階段が現れだす。杣谷峠が近づいてきたことを感じさせられる。








8:35 右岸へ渡渉

 両岸で石組階段が途切れる渡渉地点で右岸へ。ほんの僅かに水が流れているが、写真では完璧に涸れた沢にしか写っていない。
この渡渉地点のすぐ下流で沢は2方向に分岐しているが、地形図に書かれている木ノ袋谷だろうか。








8:47 滑りやすい渡渉箇所

 前述した、両岸が階段道に挟まれた渡渉箇所からしばらく登ると、杣谷の渡渉箇所の中で最も滑りやすいと思われるところに出てくる。
何故か下流よりも水が流れており、登山靴で渡渉するために滑りやすく油断は禁物だ。








 もう1箇所細くなった流れを渡渉するが、これが杣谷最後の渡渉箇所で、これより上は杣谷峠まで延々と階段道が続く。
標高差は150mくらいだろうか。この辺りから日が高くなり暑くなってきた。しかし再始動初回に比べると、体が軽くなった気がする。
杣谷峠までさほどの疲れもなく到達出来そうだ。
 ところで階段道はこれまでなら退屈な区間になるのだが、この区間で今日の主な目的である“ヤマジノホトトギス”を路傍に発見!
最初に触れた【摩耶山さん歩】のてるみさんの写真を見ていたおかげで、花に疎い自分でも一目で見つかった。








ヤマジノホトトギス

 何とも不思議な風合いの花だと感じる。実際には想像以上に小さな花で、ぼーっとしていたら見過ごしていただろう。








 ついでに近くで見かけたきれいな青の小さな花



 後で分かることだがもう一つの“ダイモンジソウ”はこの日の時点ではまだ咲いていなかったようだ。








9:18 杣谷峠

 長い階段道を登り終えて杣谷峠に到着というところで、急に工事作業の音が響き始めてびっくりしてしまった。
杣谷峠のトイレ改修工事が行われていて、側には仮設トイレが設置されていた。
仕方がないとはいえ、周囲は騒音と粉塵でとても休憩できる状態ではない。早々に穂高湖方面へ向けて退散する。
おそらく11月の全山縦走大会までには工期が終わるとは思うが、うっかり確認するのを忘れてしまった。








9:29 徳川道穂高湖入り口

 現在では杣谷峠にて一旦車道で分断されてしまう徳川道だが、かつては森林植物園方面へ抜けていたため、ここ穂高湖付近から再び山道として始まっている。
徳川道の続きを歩く前に穂高湖へ寄って一息付きたかったが、どうせ水量が少ないだろうと考えてまたの機会にする。









 徳川道は穂高湖入り口からはコンクリートの階段から始まるが、すぐに古道の雰囲気漂う山道になる。
そしてほどなくこの四差路を通過。穂高湖周辺は地図に無い脇道が縦横に走っているようで、自分もまだ全てを把握出来ていない。
シェール道へ抜ける右側は分かるが、左の摩耶山方面へ登るとどこへ出るのだろうか。今度試してみよう。

 徳川道は杣谷峠以西は殆ど下り一方の快適な散歩道になる。急なところも無く緩やかな下りだ。
この辺りの右手の斜面は新穂高(以前に踏破済み)の山腹。のはずだが、うっかり登山口を見落としてしまった。確認出来たとしてもこの時期には入りたくない山だが・・。
西側の登山口は忘れずに目視出来た。








水の無い渡渉

 そこそこ下ったところでコンクリートの足場による渡渉箇所があるが、流れているはずの水が全く無い・・。
水が無い代わりに、幕末の頃の遺構を見ることが出来た。以前も通っている筈だが全く記憶に無い。
渡渉箇所北側に解説板がある。








徳川道石積み

 対岸の雑木の間に見える石積みは、徳川道名残りの石垣であり石垣の上を徳川道が通っていた。
ここの石垣は25間(45m)にわたってつくられ高さは平均4尺(約1.2m)であった。
 今残っているのはその一部である。積み方は「ごぼう積」といって加工しない自然石で奥行を深く積み上げ、
内側でしっかり組み合わせる積み方である。

  環境庁・兵庫県

 殆ど崩れてしまっているのが残念だが、確かに石垣であったようだ。
ということは、この付近での本来の徳川道はすぐ南側を通っていたということになる。
前後を目で追うと、小川の左岸に沿うように石垣のあった築堤の上を街道が走っていたのであろう。
今ではその古道跡は草木で覆われており快適に歩けそうにない。
 ここから少し下ったところで、現在使われている徳川道に合流していたようだ。








9:58 シェール道出合

 石積みの遺構からしばらく下ると、右手からシェール道が合流してくる。シェール道は新穂高の北山麓を遠回りする
なかなか雰囲気の良いトラックだが、けっこう日当たりが良い印象があって今日は歩かなかった。
シェールは明治時代に六甲を歩いていた外国人の一人。六甲の良いところの一つとして、名前だけでも外国の雰囲気があるトラックがいくつかあることだと思う。








10:02 桜谷出合

 シェール道に続いて生田川、そして桜谷道と出合う。摩耶山は谷と尾根にいくつものトラックが走っている山だということを実感させられる。
桜谷もなかなか良い雰囲気のトラックだが、ここも今は例外なく水が少ないのであろう。

 これからの行程は徳川道、トゥエンティークロスと続くが、この谷は布引谷とも呼ばれ、谷を形成した川はこの生田川。
街中では両岸と川床を完璧にコンクリートで固められたただの溝になってしまうが、上流の山中ではまだこのように純朴な自然がたっぷり。
今日の行程後半は生田川に沿って街へ降りていくことになる。

 ここ桜谷出合で、今日初めて生田川を渡るが、今の水量では飛び石が不必要に大きく見えてしまう・・








生田川右岸を並走する徳川道

 この辺りも古道の雰囲気を比較的よく残しているのではないだろうか。時代劇のロケにも使えそうだ。
険しい杣谷峠を越えてきた旅人は、ほっとさせられる区間だろうと思う。
 この付近からは高低差の少ない緩やかな下りが長く続く。

 間もなく黄蓮谷出合。石楠花山は行ったことがあるが、黄蓮谷はまだ未踏のトラックだ。今の時期はやや草深いような印象があった。

 続いて山田道出合。山田道も同じく未踏のトラックだ。こちらは舗装路の区間が長いということで、歩くのはいつになることやら。
山田道出合を過ぎると木の板で造られた橋を渡って、生田川左岸へ渡渉。間もなく森林植物園東口到着だ。








10:30 森林植物園東口

 ちょっと分かりにくいが一応四差路となっている森林植物園東口に到着。杣谷登山口から歩いてきた徳川道とはここでお別れ。
一人で参勤交代するのはここまでだ。徳川道は更に西へ進むが、自分はここよりトゥエンティークロスへ向かう。

 以前、休日の昼時に通過した時には、この辺りの流れの側で大勢の方が昼食中だったが今日は誰も居ない。

 木陰に守られてはいるが、もうかなり気温が上がってきているのが分かる。市街地では暑いだろうなぁ。

 この辺りよりちらほらとハイカーとすれ違うようになる。水が少なくてもやはりトゥエンティークロスは人気のあるトラックだと思う。








 この森歩きの風情のある区間はトゥエンティークロスの中で特に好きなところだ。時に無性に森歩きがしたくなるが、
基本的に山以外は宅地化されているので難しいところだ。
といってもこの景観は堰堤のおかげで谷が埋まって出来たと思われる平坦地で、
かつてのトゥエンティークロスはもっと低いところを流れていて既に土の中、と考えると少々複雑なものがあるが・・。

 このような平坦地はあっという間に終わり、堰堤越えのためのアップダウンがこの後始まる。








トゥエンティークロスをクロッシング その1

 水が少ない〜。飛び石が浮いている。








トゥエンティークロスをクロッシング その2

 川原が広がったような気がする。暑いうちにまだ沢歩きをしたいのだが・・。



 天狗道出合を過ぎると、途端に日当たりが良くなって非常に暑い。
木片を敷き詰めた全山縦走路だが、草が伸び放題で道幅が狭くなっていた。








11:25 市ヶ原

 桜茶屋前のベンチで一息つく。地元の方と思われる散歩中の方が数名休憩されていた。








11:43 布引貯水池

 自分がこれまで見てきた中で最も水量の少ない状態だ。




 ダムから下って渓流沿いを歩くが、全く水が流れていない。
これでは布引の滝に寄ってもしょうがないので、最短ルートで新神戸駅へ下山することにした。








 ハーブ園へ登るゴンドラや滝山城跡のある城山を見ながら下山する。
空は高くなったが気温も高いままだ。早く涼しくならないかな。




12:20 JR三ノ宮駅到着

 ちょうどやってきた新快速に乗り込んで帰途に着く。








今日の行程の断面図です。




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