06年 6月5日(月) 神鉄大池駅〜石楠花谷〜神鉄大池駅
Shakunagedani Valley 5th. June / 06

 今日は暑くなりそうということで出来るだけ日当たりの悪そうな谷歩きを計画。まず以前から興味を持っていた石楠花谷を遡行。
そして昨年歩いたことのある地獄谷西尾根を通って下山する計画を立てた。石楠花谷は谷へ入ってすぐにハイライトに突入。
スペクタクルなロケーションが次から次へと現れ、興奮の連続の遡行となった。しかし、上流へ遡るにつれて堰堤も次から次へと
現れ、暑さも手伝ってか徐々にモチベーションが下がってくる。そして中流の最後の堰堤を越えたところで、もう今日は充分という
気になり引き上げることにした。石楠花谷完歩は次回へ譲ることにして、この谷のハイライトとなる部分を全て無事に通過する
ことが出来たのは収穫だったということにしておこう。

6:45 神鉄大池駅出発
 新開地から30分近くかかってようやく大池駅到着。
毎日通勤でJRを利用しているためか、神鉄があまりにも遅く感じてしまう。
しかし急カーブ連続の登山列車なので致し方ない。

 五助山、菊水山と2回連続して登山口までに道を間違えているので、
今回は入念に下調べをして万全を期す。大池駅周辺の地図を用意して、それを
片手に歩く。大池駅から見て住宅街を右へ迂回しながら南へ進むといったかんじ。
更に要所要所には「地獄谷行き→」と記された道標が誘導してくれてありがたい。
ちなみに今日の行き先は石楠花谷だが、地獄谷と入り口が近いので支障はない。

7:03
 住宅街が途切れると片側一車線&歩道付きの広い道に出る。しばらく緩やかな
登りが続いた後、上記の分岐で右へ曲がる。石楠花谷を示す道標が見当たらない
が、「デュポーム六甲テニス倶楽部」の看板が目印になる。
石楠花谷の入り口にあるから。


 分岐には何も道標が無かったが、奥の電柱の足元に無造作に置かれていた。
おなじみ兵庫登山会のものである。地獄谷と石楠花谷は分岐が近いから、
間違えやすいのであろうか。ちなみに地獄谷はまだ歩いたことがないが、
近いうちに訪れる予定である。
7:07 デュポーム六甲テニス倶楽部

 分岐から下ると、高校野球で有名な神港学園のグラウンド横を通って、
テニス倶楽部に辿り着く。朝早いから門が閉じられているが、入り口左に
トラックが付けられている。ゴミが散在しており、正直雰囲気は良くない。


7:16 地獄谷、石楠花谷の合流地点を渡渉

 テニス倶楽部をやり過ごすと、いよいよ石楠花谷へ突入である。
足場が悪いことを想定して、今回は前もって購入していたスパッツを装着してみた。
飛び石で流れを渡るが、川の石は基本的に滑りやすい。トランピングブーツが
濡れるのを気にしていてはかえって危ない。今日は濡れるつもりでジャブジャブ歩く。


7:30 いきなりハイライトへ突入!

 渡渉地点から歩きやすいトラック(しかもすぐに車が通れるくらいの林道になる)
が付けられているが、石楠花谷は沢伝いに歩かなければ意味がない。一旦
トラックを進んで、滝の音が聞こえてきたら藪を強行突破して川に降りる。
するといきなり岩稜に挟まれた深い渓谷を目にすることになる。


最初の小滝

 最近は雨が少ないが、それでも水量はかなり多いように見える。
芦屋地獄谷より全般的に川に深さがあり、コース取りも難しそうだ。
この滝は最初に降り立った右側からでは進めないので、少し戻って左岸へ渡って
滝の横を登っていく。


7:43 2つめの小滝

 ほどなく2つめの滝に到着。滝壺の周囲は断崖に囲まれており、既に秘境ムード
は満点である、といいたいところだが、高速道路の雑音がまだ耳に届く。
石楠花谷を楽しむには高速道路のことは考えず、ここは山深いところだと自分に
言い聞かせることが大事だと思った。


 小滝の向こうにはなおも続く深い谷が垣間見える。
滝壺は深いが飛び石が設けられており、滝の左側から登ることが出来る。




上記の滝のすぐ横を登る

 轟々と流れ落ちる水のすぐ横を登っていく。濡れた岩肌は滑りやすいので、
足場選びは慎重に。ここに限らず谷の中では足場の悪いところが多いので、
自分撮りを出来るところは限られている。


7:58 3つ目の小滝

 石楠花谷のハイライトと言っても良いところだと思った。深く澄んだ滝壺。
両側に威厳たっぷりの岩稜。しばしこの秘境ムードに浸る。

さて、ここはハイライトであると同時に最初の難所とも言える。足場は狭いが右側の
岩肌にしがみつくようにして(最近覚えたが、「へつる」というらしい)、滝の右側の
岩稜に登る。


3つめの小滝の滝壺

 夏ならば水浴びしてもよさそうな感じ。しかし子供の頃、山崎町の親戚の家から
出かけた鹿ヶ壺のプールで、山の水の冷たさは経験済み。
石楠花谷では足を滑らせたら滝壺へ落ちるところが至るところにある。
泳ぎは得意とはいえ、機材を守るためにも慎重に歩きたい。


 岩稜にはロープが設置されており、上記の小滝のすぐ上に降り立つことが出来る。
ここまで純粋に沢を辿ってこられたが、ここから先は難しそうである。
ということで再びロープを伝って登り、急な右側の岩場を更に登っていく。
これまで殆ど日に当たらなかったが、急に暑いところに出てきた。すぐに汗が
吹き出てくる。
 岩稜を越えると林道へ上げられてしまうのではと思ったが、すぐに沢へ戻れる
ことがわかった。沢へ向かって急斜面にロープが付けられている。しっかりしている
ことを確認して急下降していく。高いところ好きな自分にはとても楽しいところだった。


8:20 3つめの小滝と岩稜を越えた

 反対側から見ても深い谷ということがよく分かる。難所ともいえるが、
スリルと興奮を思う存分味わうことが出来た。出来れば岩稜をよじ登るところを
撮りたかったが、10秒で撮影位置までスタンバイすることは不可能。
次回は友人と訪れたいところだ。


 谷は蛇行しながらどんどん登っていく。
3つ目の小滝を越えたあたりから、両側に迫ってきていた岩壁が後退し、
徐々に渓相が明るくなってくる。高速道路の騒音も段々聞こえなくなってきた。
とてもいい感じである。


 これまでの荒々しい渓相から、穏やかなものになってきた。
スリップに注意しながら川床を伝って登っていく。
このまま沢歩きが続けばよかったのだが・・
8:40 1つめの堰堤に阻まれる

 石楠花谷では度々堰堤越えをしなければいけないのは分かってはいたものの、
やはり嫌な気分であることには変わりない。沢の西側に敷設されている林道へ
登る踏み跡を辿って堰堤越えにかかる。


石楠花谷林道

 意に反して沢から離れさせられたが、林道は歩きやすくて再び沢へ降りる気概を
失わせる魅力を持っていた。結局、沢へ戻る踏み跡を見つけることが出来ず、
ブッシュの中を強行突破する羽目になった。滝の音が聞こえてくれば降りる作戦だ。
 しかし滝を少し行き過ぎ、危険ながら滝へ向かって降りることになってしまった。
9:05 2連の滝

 中間付近に立派な甌穴を持つ、なかなか見ごたえのある滝だ。
2連合計20mという。石楠花谷の代表的な滝と言っても過言ではないだろう。
轟々とした水音と、迫力ある瀑布に大満足。ブッシュを強行突破した甲斐があった。


滝の下から甌穴を見る

 岩の上に立って、更に手を上げて撮影した写真である。
これほど立派な甌穴になるまでにどれほどの年月を要したのであろうか。
堰堤によって潰されなくて良かった。
滝の側面から甌穴を見下ろす

 この2連の滝は右側から滝を越えるが、足場となる岩は斜めになっており、
しかも非常に滑りやすい!足を滑らせたら甌穴にハマる。
へつるようにロープが張られていて、それを頼りに登っていく。偶然にも
登り下り両方で経験したが、ここはなかなかの難所と感じた。
無理だと思ったら、林道まで戻ったほうが無難だと思う。


2連の滝を越した辺りの流れ

 不思議なことに水の流れを見ていると、とてもリラックス出来るような気がする。

今日は水の流れを撮りたいと考え、シャッタースピードを少し遅くしてみた。
コンパクトカメラなので細かな設定は出来ないが、まずまずの仕上がりでは
ないだろうか。もちろん渓谷は暗めなので、三脚の使用は絶対条件である。

 2連の滝の後は大きな滝に出会うことはなく、黙々と石楠花谷を遡行していく。
周囲の緑がいっそう深くなってきた。沢伝いでは難しいところもあるので、右手の
岸辺を歩く場面もあった。今日はストックを持っていなかったので、木々の間の
蜘蛛の巣は手で払っていく。


 スリップに注意しながらどんどん遡行。
沢の中では自分撮りにも細心の注意が必要で無理は禁物。

 岩がごろごろしていて、この辺りは川床を伝うのは難しい。
左岸が歩きやすかったので、沢伝いに登っていった。
まずまず順調に遡行出来ていたのだが・・


9:38 2つめの堰堤に阻まれる・・

 林道が西側にあるのだから、それへ逃れる右岸に踏み跡があるはずだったが、
何故か左岸に赤テープがあり、それを追ってしまった。堰堤を越えそうなところで、
続きの赤テープを見つけることが出来なくなってしまった。しばし考えたが、堰堤
の上を歩いて西岸に出るという強攻策に出た。難なく歩けたが、もちろん堰堤上
には柵も何もないし、一応立入禁止にもなっているので何が起きても自己責任と
いうことだけは忘れてはいけない。

 再び西岸の林道に出て、再びブッシュを強行突破。
しかし沢に何も見どころはないばかりか、すぐに3つ目の堰堤が・・


9:59 3つめの堰堤に阻まれる・・

 また〜! という感じで、段々イヤになってきた。山と高原地図「六甲・摩耶」
では、石楠花谷の堰堤は中流部の巨大堰堤までで、3つということになって
いるから数が合わないのではないだろうか。というか、供給過多ではないのか。

 モチベーションを下げつつ、西の林道へ逃れる踏み跡を登る。


 いいかげんブッシュの強行突破には疲れてきたので、おとなしく林道を歩く
ことにした。上流へ登るにつれて幅も狭くなり、時にこのように渡渉するところ
もある。

 新緑の中をせせらぎの音を聞きながら歩くという、気持ちの良い区間が続く、
と思ったら・・


10:24 4つめの堰堤に阻まれる・・

 でかい・・。昔、攻城戦を攻め手から見たら、こういう心境になったので
あろうか。2段構成のまさしく巨大堰堤である。どうしようかと思ったが、
左岸に階段道が付けられている。


10:29 4つめの堰堤を越えた

 この巨大堰堤があれば、下流の3つの堰堤は要らなかったのではないだろうか。
しかし石楠花谷では最も新しく、これは1994年に建設されたものだ。
 最初は必要だったかもしれないが、後のものは供給過多になってはいない
だろうか。何しろ工事費用は我々が提供しているのだから、その使い道に気を
配るのは当然と考えている。


大岩に黒岩谷、石楠花山と書かれている

 この巨大堰堤で谷は2つに分岐する。この大岩は西側の谷へ誘導するように
書かれている。かつては石楠花谷を経由して石楠花山へ登っていたという
話だが、この岩の道標はその頃に書かれたのだろうか。



 この巨大堰堤のところから、林道伝いに引き返すことに決めた。
下流のハイライトと中流部の堰堤越えで、暑さも手伝ってか想像以上に
体力を使ったようだ。ペース配分を誤ったかもしれない。
まだ時間は早いが、地獄谷西尾根まで登ろうという気がなくなってしまった。
モチベーションが下がりだすと早い。


10:50 あっという間に石楠花谷の下流まで下ってきた。
沢伝いの行きは3時間近く掛かったが、林道伝いの帰りはたった20分だった。
林道を下ると本当にすぐだった。


11:25 大池駅着

 最初の渡渉地点で汗だくの服から着替えた後、大池駅までゆっくり歩いて戻る。
結果的に半日プランとなった。



 石楠花谷のハイライトは全て見ることが出来たが、計画を途中で中断したのでやはり後味は良くない。近いうちにこの山域でリトライをしたいと思う。

 石楠花谷は基本的に経験者向きといえる。このレポートでも触れたが、順調に沢を遡行できたかというとそういうわけでもない。
勝手知った同行者の方が居ると心強いだろうと思う。渓流シューズがあれば、もっと快適に楽しめるだろうと感じる。


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