「六甲全山縦走T」 

07年5月29日(火)

神戸市生活文化観光局生活文化課発行「六甲全山縦走マップ」、昭文社・山と高原地図「六甲・摩耶」を参照して下さい。

 ここ数日予想外に涼しいのと連休という条件が重なったために、思いがけず六甲全山縦走に初挑戦することにした。
以前に3度に分けて縦走経験を済ませているし、その他の山行でも度々部分的に縦走路は歩いているので下見だけは充分だ。
しかしこれだけまとまった距離を歩くのはNZのケプラー・トラック以来となるので、絶対に全線縦走出来るとは言い切れなかった。
足に不調を感じたら途中でリタイアすることも考慮に入れつつの縦走である。

 なお天気のほうは曇りがちだが今日は雨の心配はなさそうだ。視界は霞んでいるので展望に気を取られることなく?縦走に専念できるだろう。

 六甲縦走については非常に多くのサイトや書籍で採り上げられているが、今回参考にしたのは以下の通りである。

 播州野歩記さん、「六甲全縦 ナイトメア」 

 そして何度も縦走されている慕撫さんの Tramping on Mt. Rokko 内に複数レポあり。所要時間記録10時間22分がいかにすごい記録かというのを後々実感することになる。

 なお、自身で全山縦走の前に3度に分けて下見をした際のレポは以下の通り・・・

 06年12月19日 「遥かなる宝塚」(六甲縦走・序盤) 須磨浦公園〜再度山大龍寺
 06年12月27日 「遥かなる宝塚」(六甲縦走・中盤) 市ヶ原〜六甲最高峰
 07年 1月 4日 「遥かなる宝塚」(六甲縦走・終盤) 六甲山ゴルフ場〜宝塚終点


 参考書籍は、概要ではあるが 
山と渓谷社「六甲山」 P.154【 六甲全山縦走について 】 を参照した。



※ 今日は長丁場ということもあって極力軽装を心掛ける。そのために撮影機材は久しぶりにコンデジ。三脚も携行したくはなかったがやはり持っていく。
今回に限って基本的に自分撮りはしない。もちろん登り下りを伴う撮影は避ける。ということでいつもより味気ない雰囲気になってしまったがご容赦いただきたい。


5:55 山陽須磨浦公園駅前出発 (12m) ← 六甲縦走において標高差は最も重要な要素なので、要所の標高はもれなく記す。

 手持ちの定期はJR利用のために塩屋から一駅だけ山陽電車を利用。明石から神戸に向かう際は実質的にJRしか選択肢が無いのが実情だ。山陽を利用すると高い上に遅い。
いや、正確には途中で神戸高速の運賃が上乗せされるためだ。利用客からすると二重取りに他ならないが・・。だからこの2都市間を利用する大半の層はJRに流れている。
話を須磨浦公園に戻すと、車内は貸切で須磨浦公園で降りたのは自分一人だった。もちろん秋の縦走大会時には通勤ラッシュ並みになるであろうが・・。
駅前でいつも以上に念入りにストレッチをする。スキー学校の準備運動並みに気合を入れて体をほぐしておく。

 歩き初めから鉢伏山上まで延々と舗装階段が続く。第一の難関だ。いつも以上にゆっくりと登るようにする。自分の基本的な戦略は摩耶山に辿り着くまでは
極力いつもより押さえ目のペースにして体力を温存するというものである。


6:19 鉢伏山(右) (248m)

 地元の方がちらほらと散歩しているのを見かける鉢伏山に到着。ここを通らなくてもトラバースする道もあるようだったが、ついいつものルートを歩いてしまった。
早朝で静まり返った山上遊園地内を通過して一路旗振山へ向かう。
なお、公園内に設置されている標識は「鉢伏山 260m」となっているが、ここでは昭文社・山と高原地図「六甲・摩耶」で表記されている248mを採用する。


6:26 旗振山 (252.6m)

 毎日登山の地元の方で賑わっている旗振山を通過。旗振茶屋は営業時間外のようでシャッターが下りていた。

 今日のもう一つの基本的な戦略は、山頂で休まずに登りの前の鞍部などで休むということ。下っている間にある程度息を整えて、休憩時間を短縮するのが狙いである。
といってももちろん自分のオリジナルではなく、以前に山で出会った方に教えていただいたことなのだが。

 旗振山からおらが茶屋まではほっとする区間だ。鉄拐山は北斜面をトラバースする。


6:51 おらが茶屋 (200m+)

 ここからがあまり好きではない第一の街歩き区間となる。(右) 急な下り階段でけっこう段差も大きく感じられる。まだまだまだまだ先は長いのでとにかく膝を痛めないように気を遣う。

 下り切ったら高倉台を通過。(約150m+) 大勢の地元の方が散歩されていた。ここは道なりに進むだけだ。早朝の大丸ピーコック前は閑散としていた。
道路を陸橋で渡って栂尾山西斜面にぶつかったら北へ進む。黄色いきれいな花がいっぱい咲いていた。いつもなら花を絡めて撮影するパターンになるがとにかく素通りする。


7:07 栂尾山西斜面の階段 (約160m+)

 第二の難関のお出ましだ。前回休まずに登ってバテた経験から、この階段に挑む前に今日初めて小休止をとる。

 ちなみに今日携行している食糧は、カロリーメイト、ウィダインゼリー2つ、チョコレート、おにぎり2つ。飲料水は愛用の1.4Lのポリ容器の水筒にお茶を入れている。
もちろん飲料水はこれでは足りないので後ほど買い足していく。

 普段は撮影機会が多いことから両手をフリーにしたいのでストックは使っていない。でも今日は長距離なので1本だが用意している。
歩いているうちに両手で2本使用するほうが良いということが分かってくるが、1本でも無いよりは断然楽だった。

 とにかく体力を温存するのが至上命題。右手で手すりを手繰り寄せ、左手でストックを突いて登った。腕力でかなりカバーして脚に掛かる負担を最低限に抑えた。
これはかなり有効で、これ以降も手すりがあるところでは有効な手段だった。



7:13 階段を登り詰めて栂尾山へ(右) (274m)

 ゆっくりと階段を登って、高倉台を見下ろして一息つく。麓から見上げると長い階段だが時間にすると6分だった。
栂尾山には丸太で組まれた展望台があるが、もちろん今回は素通りする。
栂尾山から東山へは標高差があまりないわりには細かいアップダウンが多い。早く須磨アルプスを下りたいという思考が働くが、ここは焦らずにゆっくりと通過する。
それにしてもやはり山道を歩くのは良いものだと改めて思う。


7:32 横尾山 (312.1m)

 背の高い(ように見える)三角点がある横尾山に辿り着く。ここから始まる須磨アルプスの核心部の岩尾根歩きは普段は楽しい区間だが、縦走大会では渋滞の名所となっているという。
今日のように誰もいない光景からはなかなか想像するのが難しい。

 普段よりも手足を存分に使って、腰を落として慎重にゆっくりと降りていく。馬の背付近の渋滞を想定して今日初めて自分撮りを行った。(右)

 前回、何度も往復してなかなか通過できなかった馬の背を今日はあっけなく通過。 (200m+)

 東山までは短いがなかなかの急登。時折振り返って須磨アルプスの奇観を眺めつつゆっくりと登っていく。


7:56 東山 (253m)

 東山山頂は須磨アルプスと高取山を双方に眺められる展望スポットだが今日は素通りする。山頂南側のベンチでは軽装の男性が休憩中だった。

 道なりにいったん東へ向かって、そして西へ緩やかに下っていく。横尾の住宅街のほうからは犬を連れた地元の方が登ってくる。人懐っこい犬で可愛かった。
横尾の住宅街からはすぐに須磨アルプスへ登ることが出来るのでうらやましい限りだ。

 ほどなく横尾の住宅街に降り立つ。妙法寺小学校前までは街歩きながらも緩やかに下る楽な区間。息を整えるには最適な区間だ。
高倉台よりは多少複雑になるが、要所には道標があるので心強い。
 道路と鉄道を潜る通路は雰囲気があまり良くないので、縦走路の中でも個人的に好きではないところだ。


8:22 妙法寺小学校前交差点を横断 (50m+)

 非常に交通量の多い道路で信号が青にならないと渡れない。しかも待っていたらけっこう長い信号だ。小休止をさせてもらっていると考えよう。
交差点から緩やかな車道を登るが、交通量が多いのに歩道が無いのでここは要注意の区間だ。


 高取山への登りは意外と辛いという声をよく聞くが自分も全く同感である。
妙法寺の住宅街との標高差は約250mだが、けっこう急坂が続くように感じるし、砂交じりで滑りやすい箇所もある。
もしくは須磨から歩き始めてそろそろ疲れだす頃に差し掛かる登りだからかもしれない。


9:02 荒熊神社の下を通過(右) (約310m)

 ようやくトラックが緩やかになったと思ったら、上方から賑やかな話し声が聞こえてくる。
いつもなら荒熊神社に立ち寄るところだが、今日は境内に入らずそのまま高取山山頂に位置する高取神社へ向かう。
ここから丸山住宅街へ下りきるまでは登りがないので少し一息つける。今日も高取山はけっこう多くの方が歩かれていた。


9:05 高取神社の下を通過

 ここもいつもなら立ち寄るところだが、今日は初めて素通りする。高取山も山の規模の割りにはいくつもの脇道があるようだ。
いずれは高取山の全てのトラックを歩いてみたい。
 鳥居からしばらく下って茶屋街の中にある分岐を丸山方面へ下る。おそらく地元の方が手入れされているようだが、
きれいな花がトラック沿いにいっぱい咲いていた。いつもなら撮影していくのだが今日はとにかく歩き続ける。

 丸山の住宅街 (約100m) はいろんな意味で住宅街歩きの最難関だ。つい半年前にも歩いているが、もう道筋の記憶はおぼろげだ。
それでもどうにか間違わずに辿ることができた。
 神鉄をくぐる手前からは急坂が待っている。感覚的には菊水山へ登る前にも一つ山を登るようなもの。
精神的には山での登りよりも辛いが、この急坂の区間で前回同様おじいさんが応援してくれて(もしかしたら同じ方かもしれない)本当に嬉しかった。


9:53 丸山住宅街の急坂を登り終える。(右)

 振り返ると住宅街の向こうに先ほど降りてきた高取山が見える。JRの車窓から見るとけっこう立派な山容なのだが、北から見るとさほど高い山に見えない。
ここから西神戸道路の高架下を潜って、高架沿いを北へ進むと神鉄鵯越駅はもうすぐ。駅まではもう登りは無いのでほっと一息つける。


10:00 神鉄鵯越駅

 上記の道路沿いに歩いていたらすぐに神鉄が立体交差するので、線路を越えずに手前の坂を下っていく。(前回の下見の際は線路を通り越して遠回りしてしまった)
よって左の写真の鵯越駅を見下ろすところまで歩かなくてもよかったのだが今日も少し間違いかけた。とにかく街路は土地感が無いと迷路のように感じる。
鵯越駅の更に奥のほうに菊水山が小さく見えているがまだまだ遠い・・。

 鵯越駅に東側から降りてきて、駅の脇の縦走路へ入る。ここで久しぶりに一旦舗装路から開放される。
駅からしばらくは短いが見事な大木が生い茂る平坦な森歩き。ここは自分にとってなかなかお気に入りの区間となっている。
このまま菊水山へ取り付ければいいのだが、以前に間違ったイヤガ谷東尾根への分岐からは基本的にきつい登りを含む舗装路の区間となる。
特に水道施設付近の急坂は縦走で疲れてきている足にはなかなか辛いところだ。軽装の地元が軽やかに降りてくるその脇でとろとろとゆっくり登っていく。

 旧菊水山駅横の通路は手すりを有効に使って登っていく。ここで後ろから同年輩くらいの男性ハイカーに追い抜かれる。
疲れもあるし、とにかく摩耶山まではセーブして歩くという作戦なので、普段からすればとにかく遅いペースだっただろう。

 そろそろ一旦小休止を取ってほしいと体が感じているが、菊水山登山口のベンチを目標にしていたので、神鉄の線路を越える階段道も我慢してゆっくり登っていく。
手すりがあるところが多いので助かるが、今の季節柄とにかく毛虫が多い。手すりの上にいる毛虫を掴まないように注意が必要だった。
トラロープのようなまっ黄っきぃの毛虫が最も多かったが黒っぽいのもいた。基本的に虫は嫌いではないが毛虫は苦手だ。

 トラといえば今年は阪神の調子が悪いので、阪神ファンの親父が元気が無い。それほど熱心でないカープファンの自分から見れば、一々一喜一憂せずにもっと気楽に見ればいいのにと思うのだが。
勝って当たり前になってくると、負けが込むと辛くなる。ましてここ数年で何度か優勝も出来たのだから、もう少し気持ちに余裕を持ってもいいではないかと言っても親父には通じなかった。


10:44 菊水山登山口 (約240mか)

 ようやくの思いで辿り着いた菊水山登山口。高取山から随分遠かったという印象が強い。ベンチに腰を掛けて10分程度休憩する。これまでは立ったままの小休止に留めていたが、
ここでの休息が初めてのまとまった休息となる。

 10分休んだ効果はテキメンだった。菊水山の階段に挑む元気が出てきた。一歩一歩ゆっくりしたペースで登っていく。手すりがあるところはもちろん有効に利用して登る。
それでも縦走前半最大の難所といわれている菊水山の急で長い長い階段は侮れない。とにかく疲れたら立ち止まって息を整えつつ焦らずに登る。
鵯越駅を始点にして歩く時とは疲れの次元がまるで違う。それでも徐々にではあるが確実に高度が上がっていき、後方を振り返ると徐々に素晴らしい景観が広がってくる。


 これまで歩いてきた縦走序盤の山々が一望出来て、早くも達成感が湧いてくるがこれでもまだまだ全山縦走のほんの一部にすぎない。
それでも山々が連なるここの景観はなかなか好きで、渋滞を想定して小休止をとりつつ眺めた。
遥か下方では神鉄がいつものゆっくりしたペースでカーブを通過していく。まるで箱庭のような情景だ。


11:14 菊水山(右) (458.8m)

 苦しかった菊水山の登りがようやく終わった。この時はかなり強い日差しが降り注いで、開放的な山頂はかなり暑い。
いつもならここでゆっくりするのだが、水分補給をしただけですぐに鍋蓋山へ向けて歩き出す。天王吊橋までは殆ど下り一辺倒だ。
見通しの利かない樹林の中のトラックになるが、日差しも避けられるし風も通るしで快適だった。


鍋蓋山 (486.2m)

 天王吊橋への下りの途中にある展望スポットから次に挑む鍋蓋山を眺める。菊水山との標高差は殆どないのだが・・。ここのアップダウンは全山縦走の際は充分難関の区間になる。
城ヶ越からの下りは滑りやすいこともあって、いつも以上に気をつけてゆっくりと下っていく。この区間は片手を空けておきたいので、シングルストックのほうがいいかもしれないと感じる。

 下りきると気味の悪い池の端を通過。ここを夜に通過するのはかなり勇気が要ると思う。自分は目に見えるものしか信じないのだが、見てはいけないものを見てしまいそうな気にさせるところだ。

11:42 天王吊橋(右) (250m+)

 気味の悪い池を脱出して吊橋へ飛び出す。ここから鍋蓋山までは再び登り一辺倒になるので、ここで足下で通行する車を見ながら小休止を取る。
ちょうどこの時自分の真下では北向き車線が大型車のおかげで流れが悪くなっていた。自分が後ろに付いてたらイライラする場面だな、などと考えつつカロリーメイトなどの軽食をほおばる。
ちなみにカロリーメイトはチョコレート味が好きである。

 小休止をとって少しリフレッシュしたところで、次の難関である鍋蓋山へ挑む。鍋蓋山も急坂には間違いないが、菊水山よりは緩いし、何より日当たりが悪いので暑さは和らぐ。
気分的にはいくらか楽な区間だ。西に菊水山を眺めることの出来る岩場まで、時折立ち止まりつつも休憩なしで登っていく。

 途中からは鍋蓋山山頂から西へ派生する緩やかな尾根に乗るので楽になる区間だ。気持ちの良い尾根道をペースを押さえて歩いていく。


12:10 鍋蓋山 (486.2m)

 ちょうどお昼時だが誰もいなかった。前回の下見の際は15時頃に着いたが、順調なペースなのだろうか。
いつもならここで休憩するのだが今日の戦略上、市ヶ原までノンストップで歩く。けっこう長い間殆ど下りが続く快適な区間だ。
特に見どころもないので黙々と歩くことになるが、こういうところは思索に耽る良い区間だ。

 この縦走初挑戦の前日、2つの大ニュースが飛び込んできた。

 15年前のデビュー当初から歌を聴き続け、アルバムを買い揃えてきたZARDの坂井泉水さんが40歳という若さで亡くなられたこと。
 どんな場面でもいつも聴いていたので、自分にとって心の原風景の中で常にZARDの曲が流れているといっても過言ではない。
 今日の縦走中でも頭の中でZARDの歌をメドレーで流してみた。

 正直なところ、まだ亡くなったという実感が湧かないのだが、「冥福を・・」というよりも自分はただ「ありがとう」と言いたい。


 人にはそれぞれ寿命というものがあるのは分かるが、時にこのような理不尽、不条理に思うことがよくある。
自分が神という存在を信じる気になれないのは、この世には納得できない物事があまりに多すぎるからだ。尼崎の列車事故や福岡の飲酒運転者の追突で3人の子供たちが犠牲になった
事件などはその代表的な例だ。遠く中東を見ても神々がパレスティーナやイラクの地の戦争を止められないのは明白で、結局全てのことは今生きている我々次第だということを強く思う。



 もう一つは松岡農相の自殺だが、結局政治家としての責任を果たさないままの場外退場。日本では「死者に鞭打つ」空気は希薄なように思うが、自分に言わせればはっきり
言って卑怯千万な行為だ。いずれにしてもこれで真相がうやむやにされてしまうことは想像に難くないが、国民は限りなく黒に近い疑惑が残されたことを忘れてはならないと思う。
そして今回の事件の原因の一端を現首相が担ったことも。「黒」を「白」と言い含める普段の勤行を見ていると、まず「再教育」を受けなければいけないのは彼等ではないか。
そして責任を認めれば損、シラを切るほうが得という風潮が広まるのではないかという危惧も抱く。彼らを見ていると国民の代表としてのプライドなど欠片も感じられない。

 自分達が何のために税金で飯を食っているのかということを山歩きでもして反省してもらいたいものだ。



 木々の枝越しに再度山の平らな山が見えてくると大龍寺が近い。


12:35 再度山大龍寺(右) (350m+)

 いつの間にかすっかり曇り空となって暑さは大分和らげられた。前回の下見の際はここからヴィーナス・ブリッジへ向けて二本松道を下ったので、
ここからが本当の意味で縦走初体験となる。この後待ち構えている摩耶山への登りは大丈夫だろうか、初挑戦を前にやはり少々不安だ。

 再度山ドライブウェイを横切って、再度東谷の舗装路の緩い坂を下っていく。
いつもなら勢いがついてしまう区間だが、今日は我慢してペースを押さえる。それでも単独男性1名、女性3人組を2組追い抜く。
押さえているつもりでもまだ自分のペースは早いのだろうか。


12:47 市ヶ原、櫻茶屋 (240m+)

 鍋蓋山に始まる長い下りの区間は市ヶ原の川原を渡ることによって終わる。
 全山縦走最大の難関である摩耶山への登りはまだ少し先になるが、ここからずっと登りが続くので、櫻茶屋前のベンチで10分休憩することにした。
おにぎり2個のうち1個を食べる。普段から山行中は小食だが、縦走中は更に小食になるようだ。しかし、エネルギー補給は大事だと思うので、
カロリーメイトやウィダインゼリーで無い食欲を補う。

 10分休憩して北へ向けて歩き出す。


13:05 天狗道・稲妻坂出合(右) (300m+)

 10分休憩して一旦は元気になったが、この出合までの登りで早くも疲れてきた。出合から最初の10段だけ登ったところでもう一度小休止を取る。
ここからが今日の全山縦走中最大のハイライトであり、そして最大の難所でもある摩耶山への登りだ。遂に始まってしまった。
 425m三角点ピークから西へ伸びる410m+ピークに到達するまでは延々階段道の登りが続く。もちろん最初から疲れているのでペースは遅々としたものになる。
三宮を起点にして歩く時とは比べ物にならないほどとにかく足が重い。全山縦走時の摩耶山がいかに難所であるかを早くも感じる。

 ようやくの思いで410m+ピークに到達。木々の間から学校林道出合のある555mピークが遠くに、そしてかなり高く見える・・。しかもあそこまで到達しても摩耶山までまだ中間地点だ。
先の長さを考えると気が重いが、ここから425m三角点ピークまでは標高差の少ない吊り尾根歩きとなるのでとにかく一息つける。

 425m三角点ピーク付近は正確にはピークの北斜面を巻いて、稲妻坂へ通じるコル(390m+)へ下っていく。いつもなら三角点を探したりするところだが、もちろん今日はそんな余裕は無い。
ハーブ園への分岐を過ぎると下りに掛かるが、この後のことを考えるとあまり下りたくない思いだ。

 すぐにコルへ下って稲妻坂の急坂が立ちはだかる。ここで摩耶山へ登り始めて最初の小休止を取る。休憩地点のコルの南側からはうっすらとした踏み跡とテープが上がってきている。
これは芋谷からの脱出口ではないだろうか。いずれは歩いてみたいなと思いつつ休憩する。上のほうから賑やかな話し声が聞こえてくる。女性3人組の皆さんが楽しげに話しながら
降りてこられたが、自分は今からそこを登っていかなければならない。

 稲妻坂は以前は荒れたトラックだったようだが、今では丸太階段で完璧に整備されている。それでも縦走時には難所であることには変わりない。
この辺りが今日の縦走を通じて最も体力的にも、精神的にも辛さがピークだったと思う。次回からはもう少し稲妻坂に挑む前に長めに休んだほうがいいかも。
早く学校林道出合に辿り着きたいが、とにかくゆっくりゆっくり(としか足が動かないのだが)と登っていく。登りの途中で2組ほどハイカーとすれ違う。
半日プランならそろそろ下山する時間だなぁと考えつつ、着実に稲妻坂を登っていく。


13:41 学校林道出合 (555mピーク)

 ようやく、ようやくの思いで、標高差およそ165mの稲妻坂を登りきる・・。ここからはしばらく登りが無いので、そのまま立ち止まらずに歩き続ける。
摩耶山への登りの中では束の間のほっと一息つける区間だ。稲妻坂で乱れきった息を整えつつ歩くが、不思議なことに体が軽くなったような気がした。
元陸上部の友人が言っていた「ランナーズハイ」というものだろうか。後々に振り返ってみたら、やはり稲妻坂が疲れのピークだったと感じる。天狗道も同じく急坂に違いないのだが、
心なしか多少楽だった。ということは、稲妻坂さえ乗り越えてしまえば、全山縦走完歩の確立がぐんと上がるのではないだろうかと思った。

 縦走は辛いが先が計算出来るだけ楽だと思う。それよりも先の見えない「年金問題」は非常に深刻な問題だ。
若年層にとってはもらえないばかりでなく、無理やり徴収しておきながら管理すらしっかり出来ていなかった、ということで国家ぐるみの「振り込め詐欺」にでもあったような気分だ。
いっそのこと、これまでに払わされた分を返してもらって、社会保険庁を廃止して年金を全廃してもらうほうがすっきりすると思うのは自分だけだろうか。あ、でもこれまでに払った額すら
満足に管理されていなかったのか。ドンくさいくせにおせっかいという始末の悪い国に生まれてしまったものだ。いっそのこと、将来困窮したら(年金で造った)グリーンピア三木にでも居候するか。


 天狗道の途中の展望抜群の岩場で10分休憩する。何故か元気になったおかげで、ここまで立ち止まらずに登ることができた。(右)
振り返ると霞んで遠望は利かないが、先ほど通過した555mピークの端正な姿を間近に眺めることが出来る。縦走大会の時には邪魔になるだろうが、今日は岩場の真ん中を広く使って
思いっきり足を伸ばして休憩出来た。

 岩場からも多少のアップダウンはあるが、稲妻坂までの疲労感は無く、ゆっくりではあるが休憩無しで摩耶山上に到達することが出来た。


14:19 摩耶山 (約700m)

 市ヶ原から約1時間20分で摩耶山へ到達。遂に最大の難所を乗り越えることが出来て、この時点でも達成感はすごいものがあった。一人でNHKの電波塔を見上げて感動する。

 舗装路を掬星台までとぼとぼ歩いて、テーブル付きのベンチで15分休憩する。日陰ではないが曇りのおかげで涼しかった。(右)
ここで残る1個のおにぎりなどでエネルギー補給。そして靴下を交換する。いつもなら沢歩きを除いては1日同じ靴下を履いているが、全山縦走時には途中で靴下を交換すべきと聞いたことがあった。
効果はテキメン。靴下を交換しただけでリフレッシュ出来た気がする。靴擦れの防止も兼ねているのではないだろうか。

 ベンチ後ろの自販機でお茶を補充する。普段は問題ないだろうが縦走時には売り切れになるのではないだろうか。

 ところで足の調子によっては途中下山の可能性も考えていたが、最も最短距離の場合はこの摩耶山からのロープウェイ、ケーブルカーを利用しての下山を想定していた。
でも問題なかったので、次のリタイア想定ポイントを記念碑台に変更する。


14:37 摩耶山掬星台出発

 最大の難所をクリアして、休憩したことでかなり元気になって掬星台を出発。摩耶山で全行程のおよそまだ半分ということなので、宝塚に何時に着けるのだろうかと少々不安ではあるが、
もちろんヘッドライトは用意しているし、明日も休み(連休)ということで気を取り直して歩いていく。全山縦走は最低でも翌日が休みでないと挑戦する気になれない。



 摩耶山まで抑え目のペースを維持してきたが、ここからは飛ばせるところは飛ばしていくという方針に変更する。
それでもオテル・ド・摩耶や天上寺付近では短い登りがあるので、そういうところはもちろんペースを落とす。
アゴニー坂は段差の大きい下りだが、ストックのおかげで膝への負担はかなり軽減されたように感じる。そういえば未だにここを登ったことがないなと気付いた。

 車道に降り立つとすぐに向こう側へと渡って、広い歩道を東へ向かっていく。少年自然の家まではほっとする平坦な区間だ。
天気は相変わらず曇りで暑さは全く無い。これからの時期は暑さや雨が大敵になるだろうから、今日が夏を前に縦走に挑戦するラストチャンスだったと思う。
もう一つの条件である連休だが、自分は月に1、2度しかないのだ。秋にもGWを作ろうという動きがあるようだが、カレンダー通りに働いていない人のことは眼中にないのだろう。



15:04 サウスロードスタート地点 (610m+)

 縦走中、好きではない区間の一つ、サウスロードの始まりだ。摩耶山までのアップダウンに隠れがちだが、実はここが最後のまとまった登りの区間だ。
三国岩までの標高差は200mほどある。自分はつい最近まで摩耶山から東は平らだというイメージがあったが、もう一つ山へ登るくらいの意識でサウスロードの登りに掛からないと
痛い目に遭う(経験済み)。整備されつくされた舗装階段で少々退屈な区間でもある。しかし、これはこれで歩きやすいことは間違いない。


15:19 車道を横断して三国岩へ(右) (730〜790m+)

 延々と登りが続く辛い区間だ。しかし今日はここでは休まずにどんどん縦走路を東へ進む。三国池付近のトラックの縁石が真新しい白い石で飾られていた。
薄暗い森歩きの中で特に目立っていた。ここからしばらく別荘地歩きが続くが、さえない曇りのなか、人気の無いところが多いので、雰囲気はあまり良くない。

 三国岩を過ぎる頃でようやく登りの区間は終わり、待望の下り坂が始まる。これでしばらくは急な登りが無いなと嬉しくなった。



15:31 丁字ヶ辻 (760m+)

 別荘地から下ってきたところは表六甲道路の上がってくる丁字ヶ辻。随分行き先表示の多い案内板だ。運転しながら確認出来るのだろうか。
宝塚まで19kmもある。まだまだ遠いなと、遠い目で眺める。この案内板を前にして掬星台以後初めて小休止を取る。時折ライダーが颯爽と通過する中、車道脇を記念碑台へ向けて歩く。


15:39 前ヶ辻(右) (760m+)

 シュライン・ロードとアイス・ロードが接続する前ヶ辻を通過。北へ向かうシュライン・ロードは紅葉の時期に歩いたことがあるが、南へ向かうアイス・ロードは未踏のままだった。いずれ歩かなければ。

 この辺りは緩いながらも記念碑台までは登りが続く。前ヶ辻を過ぎると広い歩道が整備されているので一安心だ。せめて縦走路の区間だけでも歩道を付けてほしいものだが・・。


15:46 記念碑台 (780m+)

 ここの交差点を過ぎたところで広い車道と分かれて南側の脇道へ入る。ここから六甲ケーブルで下山出来るが、疲れはあっても足に違和感は無いので縦走続行を決断。
最後のリタイア想定ポイントを一軒茶屋(魚屋道で有馬へ下る)に変更する。

 六甲山小学校や六甲山ゴルフ場を通ってみよし観音へ向かう。この区間はごく緩やかな登り、もしくは平坦な道が続く快適な区間だ。


16:04 みよし観音(右) (720m+)

 みよし観音は六甲山上のスポットの中でも好きなところだ。ここから六甲ガーデンテラスまでは短いながらも階段道が続くので
ここで小休止を想定していたが、立ち止まらずにガーデンテラスまでは歩けそうだったので今日は素通りすることにした。


16:10 六甲ガーデンテラス (770m+)

 みよし観音に続いてお気に入りスポットの六甲ガーデンテラスに到着。時間は夕刻だがけっこう多くの人で賑わっていた。
木のベンチに腰掛けて5分ほど小休止を取る。

 極楽茶屋跡までの短いアップダウンをクリアすると、全山縦走路が細切れになっている区間に突入するが、もちろん今日は縦走路を忠実に辿る元気はないので
初めて車道を歩くことにした。歩道が無いのだが交通量が少ないのが救いか。この区間の縦走路のアップダウンは避けられるが、忠実にピークを巻きながら等高線を
辿るように車道は敷設されているので、歩く距離は車道歩きのほうが長く感じられる。

 それでも車とバイクに遠慮して端っこを黙々と歩き続けると、車道の向こうに六甲最高峰のアンテナが見えてきた!(右)
車道歩きは長く感じられたが、やはり体力的にはこちらを辿るほうが楽だった。


16:53 一軒茶屋 (880m+)

 既に夕刻。自分のようなハイカーの姿は他には無く、車で来ているうらやましいカップル1組が景色を楽しんでいるだけで周囲には誰も居ない。
そういえば自分はまだ車で六甲山へ上がったことはないなぁ。というか最近ガソリン代が高くなったこともあって、極力運転しないようにしている。

 こちらはカップルのように景色を楽しむ余裕は無く、自販機後ろの生垣の縁石に腰掛けて5分ほど小休止を取る。ここでお茶の他にハチミツ入りレモンのジュースを飲む。
疲れたときに飲むジュースは最高だ!もちろんお茶を続けて飲んでお口直しをすることも忘れない。

 途中でリタイア出来る最終ポイントと考えていたが、やはり足に問題は無かったので、ここで初めて宝塚まで問題なく歩けると確信を持った。
ジュースで満足した後、早々に一軒茶屋を出発。ここはカップルだけの世界にしてあげよう。
なおここから先、宝塚の街へ降り立つまでの道中で誰一人出会うことはなかった。


17:07 東六甲縦走路スタート(右) (830m+)

 一軒茶屋からも車道を辿って脚力をセーブ。そしていよいよ大好きな東六甲縦走路のスタート地点に辿り着いた。
純朴な山道はサウスロード以来、随分久しぶりに感じる。六甲ガーデンテラスからほとんど延々と車道を歩いてきたが、ここでようやく舗装路から解放される。

 東六甲縦走路は宝塚へ向けて歩くと、時折アップダウンがあるが全般的には下り道。しかし、この時折現れるアップダウンが侮れない。
疲れた足で転倒などしないように、下りでは特に慎重さを心掛けなければ。そして快適に東六甲縦走路を歩くには手袋が絶対必要だ。
一部区間は手足を総動員して歩くところがあるからだ。スタート地点で手袋を出して装着する。


風情ある東六甲縦走路

 全般的にはこのような穏やかな雰囲気の中歩けるのが東六甲縦走路の大きな魅力だと思う。縦走大会では当然日が暮れているだろうけど。
今日は東六甲縦走路の途中で暗くなることを想定してヘッドライトを持っているが、実際に使うかどうか微妙なところだなと思いつつ歩いていく。
イメージでは後ろから夕日にバックライトのように照らされて、と想定していたが実際には尾根の左手から時折弱い夕日が注ぐ。

 船坂峠に辿り着くまでのアップダウンはかなり激しい。幸いにも登りは短い。しかし下りのほうはロープや鎖を掴むようなかなり険しいところもある。
この区間はダブルストックよりも片手は空けておくべきだと思う。


17:39 船坂峠(右) (660m+)

 急に目の前が明るくなったと思ったら船坂峠に到着。以前は倒れていた道標が修復されていた。水分補給をして小休止する。
この船坂峠に辿り着く前に、前方に大きなピーク(720m+ピーク)が見えてきてげんなりするが、幸いなことに縦走路は南山腹をトラバースする。


720m+ピーク南斜面の水平区間を行く

 もう18時前だがまだまだ明るい。この分だと終点までヘッドライトが要らないのではと思い始めた。
多少の緩やかなアップダウンを経て、東六甲縦走路の中間地点である大平山へ辿り着く。


17:57 大平山(右) (660m+)

 日差しが無いせいもあって少し薄暗くなってきたがまだまだ明るい。
ここからしばらくは緩い下りの車道を歩く。幸いな事に一般車は通行できないので、ここではのんびりと歩くことが出来る。


18:02 大平山南の展望地

 車道の一角の窓が開いているところで小休止を取る。ここでウィダインゼリー2袋を完食した。
下界は霞んでいるが、仁川の競馬場辺りまでははっきりと見える。


 少し下ると車道からは解放されて再び山道へ。大谷乗越までは平坦か下りかのどちらかだ。
しかし大谷乗越直前の急坂(右)は疲れた足には要注意だ。まして大会本番ではここを真っ暗な中ライトで照らして下っていくのだからけっこうスリルがあるのではないだろうか。


18:17 大谷乗越通過

 少し薄暗くなってきているので、車もライトを付け始める時間だが横断の際は気をつけて渡る。

 ここからはほぼ高低差は無く、岩原山などの南斜面を行く。山影に入る形になってけっこう暗くなるが、それでもまだライトを付ける必要はなかった。
それでもこのように薄暗い森の中を歩くのは初めてで、何やら底が知れないというか不気味な雰囲気がする。


 岩原山山頂東の分岐を境に北斜面の山腹道となって途端に明るくなる。もうヘッドライトを付ける必要もないまま塩尾寺に着いてしまいそうだ。

 フルマラソンでいえば35km過ぎといったところで、もちろん疲れは感じているが限界まではまだ余裕がある。
前半の摩耶山までセーブしたのが大きかったのだろうか。後半の高低差の少ない道程に助けられたのかは判然としないが・・。


 譲葉山北斜面を通過。まだ明るい。それでも昼間防虫スプレーをものともせずに集ってきたコバエだったが、この時間になると見かけなくなった。
虫に煩わされることなく、東六甲縦走路の快適な歩行が続く。


 そして岩倉山西の展望地に差し掛かった。ここまで殆ど寄り道をしてこなかったが、何故かここは寄っておこうという気になった。


18:43 トワイライトの東六甲の山々

 送電線で遮られるのは残念だが、構図的に外すのは不可能なので止むを得ない。しかしそれを入れてもここの景観は東六甲縦走路を語る上で外せないと思う。
個人的に少しづつ街の灯りが灯り始めるこの時間はとても好きである。夕方近くになって少し日が当たったことも幸いして、普段以上に印象深いトワイライトの光景となった。

 この光景を眺めながらお茶を飲んで小休止を取る。


 少し進むと「展望良」と書かれた分岐がある。岩倉山南の反射板ピークに通じているが、木々に遮られて景観はイマイチなのを知っている。

 そこから少し東に道標は無い岩倉山山頂への分岐があるが、今日はもちろん通過する。

 ようやく緩い下りが続く区間に入ってくる。左手を見ると、木々の枝越しに見事な真っ赤な夕焼けが・・。展望ポイントが無いのが残念だ。

 しばらく下ると左手に鳥居が見えた。砂山権現だ!東六甲縦走路も先が見えてきた。でも塩尾寺に辿り着くまで滑りやすく深く掘れた悪路が続く。
今回はヘッドライトを使う必要はないくらいに明るいが、この区間はライトを頼りに歩いてみたかった。本番までに機会を設けようと思う。

 そして段差とスリップに注意しながら下っていくと遂に塩尾寺到着だ。


18:55 塩尾寺

 遂に東六甲縦走路も終わった。17:07にスタートしてから1時間48分。思った以上に途中からペースを上げることができた。

 しかし、ここで気を抜いてはいけないのは経験済みである。山道は終わったが、街まで休むことなく続く舗装路の急坂の下りが待っている。

 塩尾寺からしばらくは緩い下りなのだが、途中からけっこうな急坂になる。ここでペースを落とそうとすると余分に脚力を使うので、自然にペースが上がってしまうのだが、
縦走の疲れは最高潮に溜まっている中で走ると危険だ。ここではジグザグに降りることにした。ストックの助けもあってかなり脚への負担を軽減できたと思う。
この区間ではダブルストックを使うことが望ましいだろう。スキーのストックワークの練習にもなりそうだし、今度もう1本買ってこよう。



19:03 宝塚市街を見下ろす

 実はここのシーンを撮るためだけに三脚を携行していたといっても過言ではない。但し、予想よりは明るくてトワイライトにはなっても夜景にはならなかったが。

 やはり須磨から歩いてきて、宝塚の街を見下ろすのは最高の気分だ。山陽電車から下車して歩き出したのに、何やらワープでもしてきたような不思議な気分になる。


 ここで初めて、家で待っている心配性の母に借りている携帯で連絡を入れる。日没時に山中に居ると言うと心配するので、「山から出て宝塚駅へ向かっている」と短く伝える。
山道を歩いているわけではないので、あながちウソではないと思う。

 三脚を撤収して、使い慣れていない母の携帯をザックに片付けて再びジグザグに下り始める。車が通った際の安全面を考えて、ヘッドライトをいつでも出せるようにポケットへ入れておく。


 甲子園大学まで降りてきた。長い下りもあと一息だ。かなり暗くなってきて前方に大劇場周辺の夜景がきれいに見え出すが、この時間に道端で三脚をセットするのは危なそうなので止めた。


 川沿いの住宅街を下っていると何やら背中から「♪世界の車窓から」のメロディーが流れてくる。しばらく経って携帯が鳴っていることに思い当たった!自分は普段携帯を持っていないし、
かかってくることも想定していない。着メロが何の曲かということも知らなかったのだ。案の定自宅の母からだった。「駅まであと少し」と短く言って切った。家を出る前に詳しく説明すると
口うるさいし、むやみやたらと心配するだけで、出発までにこちらも疲れてしまうのだ。
実際には一片の簡単な登山メモ(須磨浦公園〜宝塚: 六甲全山縦走路とだけ書いた)を残して出てきた。説明するのは家に帰ってからでも遅くはない。
列車の中で携帯が鳴るというような失態はイヤなので、ここで携帯の電源は切っておく。(阪急には電源OFF車両もある。すばらしい)


 やがて小さい橋で川を渡って、宝塚温泉前のコンビニに出る。そしてコンビニ横のビルの谷間の公園が待望のゴールだ。
心配した最後の難関である公園への階段もまだ余力があった。そして遂に初挑戦の全山縦走を無事に完遂した!初めてなだけにこの感動と達成感は言葉で言い表せないものがあった。


19:25 宝塚ゴール到着!

 涼しい風が吹き抜ける宝塚ゴールに到着。須磨浦公園駅からの総所要時間は13時間30分。山と渓谷社「六甲山」では12〜15時間で歩く、とあるから平均的な所要時間だろうか。
それにしても42kmもの道のりを歩けるものなんだなぁと自分で自分に感心する。先ほど道すがら購入したオレンジジュースで縦走完歩を一人で乾杯する。(自分は酒は全く呑めない)

 長い道のりだったが実際に縦走出来たことで、自信を持って縦走大会に参加申込をすることが出来るようになった。

 縦走の余韻を味わいつつ、宝塚の夜景を楽しみつつ、ゆっくりと駅へ向かう。


宝来橋の欄干でカメラを安定させて慎重に撮影(三脚をセットする手間は惜しんでしまった)

 今日使用のコンデジはISO200までしか上げられないので、原寸サイズで見るとややブレているがウェブ用に縮小すると目立たなくなる。



19:37 阪急宝塚駅

 ふいに現実に戻ってきたら、帰宅ラッシュの時間だ。それでも今津線は宝塚折り返しだから簡単に座ることが出来る。
西宮北口から先はいつもなら特急に乗るところだが、今日だけはどうしても座って帰りたかったので、全て普通で帰ることにする。
列車に乗っていると、さほど感じていなかった疲れがどっと出た。やはり六甲縦走は普段の山歩きにはない過酷さがある。
 この先1週間ほどはゆっくりと、山歩き、撮影会参加をせずに足を休ませたいと思う。



今日の行程の断面図です




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