「火打山・笹ヶ峰キャンプ場よりピストン」 2017年10月17日(火)

地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。



 深田久弥著「日本百名山」によると…

 
“火打の真価値はそれに近づくに従って発揮される。普通笹ヶ峰牧場から登るが、
その登り道が一様ではなく、林あり、平あり、池沼あり、変化に富んでいる(中略)

 笹ヶ峰から見晴らしのよい富士見平まで登ると、初めてこの山の大きさを知らされる。
何と広々とした山腹であろう。その上に火打の頂がスッキリと潔ぎよく立っている。
その山腹に豊かな平地を持った高谷池(こうやいけ)がある。池の附近の景色は全くすばらしい。
夏ならば高山植物の褥である。”




 火打山への行程はかなり長いもので、日帰り登山の今回はピストンが無難と判断しました。
それでも「日本百名山」で述べられているとおり、ピストンでも繰り返し眺めたい!と思わせられる風景の連続でした。










 ここしばらくウンザリするほど雨続きで、この山行当日も自宅出発時にはまだ雨は止んでいなかった。
しかし北信から雨雲は抜けていくと判断。予定どおりに出発した。

 長野市街から1時間少しで笹ヶ峰に到着。なお笹ヶ峰へ至るアクセス路は夜間は通行止めで注意。(週末など除外日あり。要確認)
5時に通行可能になるのに合わせて到着するように調整した。

 笹ヶ峰はキャンプ場になっていて、登山口最寄りの駐車場の他、トイレがある広大な駐車場も隣接して有る。
自分が到着した時には5、6台のみで、前夜から夜を明かされた方のテントも張られていた。








 行程概要  GPSデータをカシミールに取り込んでいます。



 登山道は明瞭で整備は完璧です。しかし長雨のせいか全線ドロドロの悪路。
木道も濡れていればスリップ注意です。
 5:40 笹ヶ峰より登山開始!(1,310m)   

 ヤマレコで繰り返して観ていた立派な登山口のゲート。
今回は直前に山行を決めたので、ここで備え付けの登山届を記入して出発する。

 なお火打の西隣の焼山は噴火警戒レベル1ではあるが、2年前から想定火口より半径1kmは立入禁止になっている。
同じ噴火警戒レベルの山で、しかも似た名前の焼岳が思い浮かぶが、あちらは南峰を除いて北峰には登頂可能とされている。
山によってケースバイケースに対応しているということだろうか。
但し焼山へ登頂出来るとしても火打からの往復で6時間も追加されるので日帰りはほぼ不可能。
高谷池ヒュッテで1泊する必要がある。








序盤はなだらかな森歩き   6:06 1/9 (1,400m) 

 まだ日が射してこないので薄暗いが、木々はきれいに紅葉している。
今日は日中は好天になる予報なので、紅葉狩りは下りの時に期待したい。

 この森歩きの途中で火打への長い道のりの目安になる指導標が現れる。
1/9kmということで、山頂まで9kmってけっこう長い。
山頂までの標高差は1,150mと、2,400mを越える高峰としては普通に感じるが、この距離の長さは楽ではないと思う。








 6:34 2/9 (1,560m)   

 森歩きのまま既に2km。
行けど行けど同じような場面が続くが、ウォーミングアップにはちょうど良いかも。

 行く手にこれから登っていきそうな尾根が見えてきたが、この辺りの紅葉が最も美しかった。








 6:39 黒沢橋(1,570m)   

 登山口から1時間で黒沢橋という立派な橋を渡る。
ずっと緩い登りだったから殆ど疲れていないが、ここまででいつの間にか標高差260m登ってきている。








 6:55 十二曲り始まる(1,650m)   

 黒沢を渡るとまもなく沢を離れて十二曲りが始まった。
自分の知っている六甲の七曲を思い浮かべて、それより長い急登かなと身構える。








 7:12 十二曲り終わり(1,770m)  やっと3分の1 

 明瞭な尾根に乗り上げて意外にあっけなく十二曲りは終わった。
ここでは実際に一つ一つの曲がり角でカウントする数え方なので身構えるほどではなかった。

 この辺りから少しだけ周囲の景観が広がってくる。
黒沢を挟んだ右手の山体は妙高山の外輪山の一角にあたる。

 十二曲りが終わってすぐに3/9。地形図によるとちょうど1,790m標高点の辺りだった。








十二曲りが終わってからが急坂   

 初めて尾根通しになったが、ここからが十二曲りよりもずっと急登になった。
改めて地形図をみると急登の標高差は約150mで、これを登り切っても当面の目標だった富士見平はもう少し先だ。

 一方、雲の切れ間からは青空も見えてきて、予報どおりに天候は回復しそうだ。








木道とドロドロの連続   7:57 4/9(2,010m) 

 急登が一段落すると、富士見平までは比較的緩やかになる。
しかし緩やかなところでは広い水溜まりがあったりして厄介だ。
スパッツが無いと歩行困難な悪路が続く。




 8:05 富士見平分岐(2,060m)

 標準コースタイムだと登山口から2時間40分のところ、3時間掛かって富士見平分岐に到着した。
ちょうど追い付いた先行の単独男性の方とお話ししていて、この時は分岐の写真を撮りそびれた。
ここの光景は下りで撮影することにして出発した。

 なお山と高原地図では“黒姫山の上に富士山が見える”と書かれているが、南側は雲に覆われて遠望は無理だった。








黒沢岳西山腹へ進んでいく   

 富士見平分岐を過ぎてまもなくすると殆ど傾斜が無くなる。
標高を上げたせいなのか周囲は霧が掛かってくるが、前方には黒沢岳の南端っぽい尾根が見える。
ここで地形図を観ると、もう既に高谷池ヒュッテと変わらない標高まで登ってきている。
しかしこの先は山腹道。最近自分の中では「山腹道=歩きにくい」と変換されるようになったので気合を入れていく。








 8:24 5/9 黒沢岳西山腹(2,090m)  雲が切れて火打山が姿を現す! 

 小刻みに繰り返すアップダウンと、ドロドロや笹の根などで滑りやすいところが続く。やはり歩きにくい山腹道だった。
山腹道の途中で5/9の指導標を通過。山頂まで半分は過ぎたことで元気付けられる。

 そして先程から周囲が明るくなってきていたが、遂に西側の視界が開けてきて初めて火打山を見た!
見間違うことのないきれいな三角錐の端正な姿だった。
但し火打山へは北側からぐるっと尾根を回り込んでいくのでまだまだ遠い。








山腹道から笹原へ   8:52 高谷池ヒュッテ(2,100m) 

 空模様は高曇りとなったが、火打山のほうだけは青空となってきて期待出来た。
歩きにくかった山腹道を抜けて木道となり、牧歌的な光景の笹原が広がってくる。

 ふと南西側を観ると雲海の上、遠くに雪化粧した北アルプスの稜線が見えた!
白く輝く北アルプスは美しかったが、もう冬が近いなと何故かちょっと寂しくなってくる。

 ぐるっと笹原を左手へ回り込んでいくと、「アルプス展望台」と書かれた小さな指導標があった。
既に北アルプスの稜線を見ながら歩いてきたので、この時は立ち寄らずに先へと進む。




 まもなく高谷池ヒュッテに到着する。
でもここも立ち寄るのは後にして先へと進む。








高谷池の北東を回り込んでいく   

 高谷池ヒュッテを通り過ぎると眼前には高谷池が広がった!
火打山と高谷池の織りなす高原風景に思わず感動しながら、歩きやすい木道を先へと進んでいく。








 8:55 黒沢池、妙高山への分岐を見送る   8:57 6/9 

 今回の行程を考えた時、下りの時にせめて妙高のそばまで行きたかったが、行動時間を計算すると日が暮れてしまいそうだった。
今回は欲を出さずに火打ピストンで楽しみたいと思う。

 分岐を過ぎてすぐに6/9の指導標を通過。








2,147m標高点付近  

 高谷池を過ぎて少しだけ緩やかに登ると、今度は庭園のような光景が広がってきた。
黒沢岳山腹を過ぎてからというもの、続けざまの絶景に感動しっぱなし。
この晩秋の光景も素晴らしいが、花の咲く時期の光景をぜひ観てみたいと思う。








 9:13 天狗の庭(2,120m)   

 少しだけ下ってみると再び周囲の地形が広がり天狗の庭に到着する。
点在する池塘群、そして奥には火打へ続くなだらかな稜線。
本当にここは山上の別天地のようなところだった!








感動しつつ天狗の庭から火打を眺める   








天狗の庭の北東を回り込んでいく   

 天狗の庭の光景を楽しみつつ、まずは火打へ続く稜線を目指していく。
天狗の庭から火打へは標準所要1時間15分。池塘群越しにみる稜線は比較的楽そうに見えるが…。








 9:25 7/9 (2,130m)   

 天狗の庭を過ぎると、いよいよ火打へ向けて登り一辺倒となる。
登りが始まると木道も途切れ、再びドロドロの登山道へ逆戻り。

 まもなく7/9の指導標を通過。山頂まであと2km。
この頃になると、ようやく火打を正面に見据えるようになる。








初めて日本海側も見えるようになる   

 稜線直上へ出てくると初めて北側の視界が開けるが、大部分は雲海に覆われていた。
その中で近くに見える支尾根の断崖が大迫力。山と高原地図では雷菱と表記されている辺りだろうか。








登るほどに広がる山上庭園の光景、そして妙高山も顔を出す。   

 火打へ続く稜線を登っていくと、これまで歩いてきた高層湿原を振り返ることが出来るようになる。
周囲は雲海に囲まれてまるで島のようだった。
その中で雲海に飲み込まれるような、意外にこじんまりとした妙高山山頂が見えてくる。
赤倉スキー場側から見上げた時は、手前の外輪山と合わさってより立派に見えていたのかもしれない。

 見た目にはさほど遠くはないようだが、山頂と外輪山の急坂を越えるのに時間が掛かる。
妙高、火打を周回するなら1泊2日の行程が現実的だろうと思う。








 9:48 雷鳥平(2,280m) 山頂が近づいてきてもドロドロは変わらず 

 一旦登りが落ち着くと雷鳥平に到着。
ここで山頂手前で最後となりそうな休憩をとっておく。
名前のとおりに雷鳥を観られれば良かったのだが、この日は全く姿を現してくれなかった。








 9:58 8/9 (2,300m)  板張りの階段が出てくると、やや急な登りになる 

 ようやく8/9の指導標。山頂まであと1km。
片道9kmの行程はやはり長い。

 稜線に乗っても小刻みに巻いたり、登り下りを繰り返す。
しかも随所でドロドロになっているので、稜線歩きになってもスパッツは必須だった。

 遂に山頂まで詰めの登りに掛かるが、この最後の標高差約100mがけっこう急坂だった。
でも先は短いのでバテないように可能な限りペースを上げて登っていった。








10:20 火打山山頂(2,461.7m)到着!  西隣の焼山。安全のためとはいえ登れないのはやはり残念。 

 笹ヶ峰から登り始めて4時間40分。
なかなか長い道のりだったが、これまでの苦労が報われる素晴らしい山頂だった。

 登ってくる時には団体さんを含めて多くの方とすれ違ったが山頂到着時には誰も居らず、自分が山頂滞在中に登ってこられたのは単独男性お一人のみだった。

 火打山頂からはほぼ全方位に雲海が湧き立っていたが、北アルプスの稜線や焼山、妙高など近隣の高峰は漏れなく見えていた。
西隣にはほぼ同じ標高の焼山が雲海から顔を出しているが、想定火口から半径1km以内は立入規制されていて登ることは出来ない。
火打山頂からは更に稜線を西へ進むルートはあるが、いずれこれを進んで焼山へ行ける日が来るといいのだが…。








火打山山頂から妙高山を眺める  火打山山頂(2,461.7m) 

 東側には殆ど雲海に飲み込まれそうになっている妙高山が見えている。
「日本百名山」でも頸城三山(妙高、火打、焼山)では、火打の悠揚さに比べると妙高、焼のキチンとした纏まりがかえって見劣りする、と触れられている。
大部分が雲海に隠れていることもあるだろうけど、赤倉温泉側から見上げた妙高とこれほど違う姿なのは驚いた。

 今日の山行を計画する際に妙高も候補に挙げたが、もしあちらへ行っていたら山頂へ着くまで殆ど何も見えなかっただろう。
妙高山はまた好天の日にぜひ燕温泉から登ってみたいと思っている。








妙高山山頂と外輪山の一部が辛うじて見えている。手前には歩いてきた高層湿原が広がる。  傾いているが測量に使えるのだろうか 




 下界から遠く離れた火打山頂は本当に静かで、流れる雲海を見下ろしながら格別のひと時を過ごした。
先日の蓼科山を最後に母は関西へ戻ったが、出来れば続けてここにも立たせてあげたかった。




11:01 火打山山頂出発

 立ち去り難い山頂だったが、下りも長いので重い腰を上げる。








本当に天空の島のような頸城山塊   

 絶景を楽しみながらゆっくりと下っていく。








天狗の庭へ  ゆっくりではあっても下りはやはり早い 

 ピストンではあっても退屈しない光景の連続だった。

 平日ではあってもかなりの登山者とすれ違う。皆さん一様にこの光景を満喫されているようだった。








12:00 天狗の庭(2,110m) 妙高山方向へ向かって戻っていく 

 西側から雲は上がってきていたが、火打山頂は隠れることなくよく見えていた。
登り下りとも山の光景が観られたのは運が良かったとつくづく思った。








高谷池が見えてきた   

 登りの時には素通りしたが、高谷池ヒュッテとテン場に立ち寄っていくことにする。








12:20 高谷池ヒュッテ(2,100m)到着 ここでぜひテントを張りたい! 

 高谷池ヒュッテでは火打山のバッジを購入しようとしたが品切れ中。当日の在庫は焼山のバッジのみという。

 ヒュッテ西側の池の端にはテン場が設けられている。お一人がテント設営中だった。
高谷池と火打を眼前に出来る素晴らしいロケーションで、自分もぜひいずれここでテントを張ってみたい!

 長い下りの前にここでひとまず小休止を入れておく。




12:32 高谷池ヒュッテ出発

 今回は日帰りでここで泊まれないのが残念だったが下山を再開する。








12:35 アルプス展望台(2,100m)  黒沢岳山腹が近づいてきて、高層湿原とはお別れとなる 

 高谷池ヒュッテのすぐそばにあるアルプス展望台。登りでは素通りしたので寄ってみた。
数人しか居られない狭い岩場ではあるが好展望だ。
但しこの時は北アルプスは雲に覆われていて、名前のとおりの展望は得られなかった。








名残惜しい火打の展望  影火打を従えて貫禄十分の火打山。山腹の木々は既に落葉して冬が近い。 

 ドロドロの山腹道の通過はやはり疲れるが、遠ざかりつつある火打を振り返りつつ下っていく。








13:18 富士見平分岐(2,060m)  天狗の庭と火打山の間から北側へ続くルートが描かれているが、山と高原地図では表記されていない。 

 黒沢池、妙高山方面との分岐に戻ってくる。
この先が急坂となるうえに笹ヶ峰へはまだ遠い。分岐ではしっかりと小休止をとっておく。




13:25 富士見平分岐出発

 午後から登られてくる泊まりの方々とも数人すれ違った。
但しこの日午後の気温はけっこう高く、登りでかなり汗を掻かれていたようだ。








十二曲りの少し上の急坂。朝は見えなかったが眼下には笹ヶ峰キャンプ場一帯が見える。  下るにつれて紅葉の鮮やかさが増してくる








十二曲り   

 朝よりは幾分か登山道は乾きつつあったが、やはりスリップには注意が必要だった。








十二曲りの少し下あたりがこの日の紅葉のピークだった。   

 今年はいつになく紅葉が早いと、何故か少し焦りを感じてしまう。

 久しぶりに沢の水音が聞こえてくるとまもなく黒沢橋だ。








14:38 黒沢橋(1,570m)  山頂は昼前に出発したが既に日は西に傾き・・ 

 ここまで下りてくるとやっと急坂からは解放されるが、まだ笹ヶ峰までしばらく掛かる。








15:08 笹ヶ峰歩道分岐(1,380m)   

 笹ヶ峰一帯を周遊するルートも整備されており、ここから麓側では観光客もちらほら見かける。








15:25 笹ヶ峰登山口(1,310m)到着! 夕闇迫る笹ヶ峰の登山口。本当に日暮れが早くなった。 

 登山開始から10時間弱掛かったピストンだった。
ゲートで用意されている下山届を提出して行程終了。

 戻ってくると駐車場には十数台の全国各地からの車が停まっていた。
自分の車に戻って登山装備を解いていると、数人の方が続けて下山されてくる。
早朝から登ってこの時間の下山となるので、火打山ピストンは本当に一日掛かりの行程と考えて差し支えないだろう。




 薄暗くなってきた林道を注意深く運転して帰途に就いた。
この笹ヶ峰へ続く林道は意外に交通量が多いので運転は慎重に。








 〜 終わりに 〜

 晩秋の好天の日、火打山を存分に満喫出来た1日となりました。
火打山は頸城山塊では奥山となるのでなかなか見る機会が無く、自分もこれまで妙高山に比べれば認知度は低かったのですがたいへん良い山でした。

 火打、妙高は隣り合っていますが、歩行距離が長くなるので両方を廻るには1泊2日が現実的でしょう。
高谷池、天狗の庭の風景がとにかく素晴らしいので、通り過ぎるには惜しいところでした。
ぜひいずれテント泊でも訪ねてみたいと思います。

 この山行記録を作成中、頸城山塊にはまとまった積雪があったようです。
既に火打・妙高は雪山となっています。最新の情報を確認されてからお出掛けください。
雪山までは自分はまだ守備範囲ではないので、そろそろ標高の低い山へシフトしていく時期になったようです。








行程断面図です




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