「表銀座縦走1日目・中房温泉から燕岳」 2013年 9月20日(金)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「槍ヶ岳」


山と高原地図
 : 「槍ヶ岳・穂高岳・上高地 北アルプス」



 〜 はじめに 〜

 去る8月初旬、予報外れのため消化不良になってしまった奥穂山行の分を取り返す機会を伺っていました。
週末毎に続く雨のために半分諦めていましたが、どうにか9月2度目の3連休は出撃可能と判断。
すかさず年休を使って4連休を確保。とにかく前回の鬱憤と日常生活のストレスを解消したい!ということで、
スカッとしそうなプランの表銀座縦走を思い立ちました。

 概ね好天が予想された連休でしたが、日曜だけが気圧の谷の通過を見込んで万全の予報ではありませんでした。
ということで今回の日程は表銀座縦走を第1候補とし、代案として常念山脈縦走も併せてプランニングしました。
提出した登山届にも日程変更の可能性ありということを付記しておきました。
2日目に大天井岳を通過するまでに天候の推移を見極めることにして、とりあえず初日は急登で名高い合戦尾根に取付きます。








19日(木) 21:00頃 神戸出発

 どうにか順調に仕事を終え、直ちに信州へ向けて出発。




20日(金)  4:00前頃 穂高駐車場到着

 名神の八日市〜彦根間が土砂崩れによる通行止め。一般道を迂回させられる想定外の事態に遭遇したのですが、
概ね予想通りの所要時間で到着しました。スキー、登山を通じて信州に通い慣れてきた感があります。




 下山後の車の回収の利便性を考え、JR大糸線穂高駅付近の穂高駐車場(登山者用スペース有・無料)に車を停めます。
登山口の中房温泉までは南安タクシーが運行する定期バスを利用。所要時間は約1時間10分。運賃は1,700円です。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)



 南安タクシーが運行する定期バスは中房温泉・燕岳登山口まで乗り入れてくれます。
登山者用駐車場は登山口より下流方向に数か所ありますが、シーズン中や連休などは非常に混雑するようです。
中房温泉までの道幅も狭いです。バス、もしくはタクシーでアクセスするほうが無難と思われます。

 大人気の燕岳へのルートということで、合戦尾根は非常によく整備されています。
途中の合戦小屋は休憩のみで宿泊は不可。但し、燕山荘のテン場が満杯の場合は合戦小屋で幕営可能。

 燕山荘のテン場は40張可能。殆ど水平で地面は土。ペグもよく利きました。
風を避ける立地に位置しています。安曇野、もしくは燕岳への展望が良好。
 6:18 南安タクシーの定期バスにより穂高駐車場出発

 すぐ近くの穂高駅でも乗客を拾った後、いよいよ中房温泉へ向けて出発。
下界の安曇野からは常念山脈はもちろん、遠くは白馬方面の山々までよく見えている。
前回同様、今回も初日は絶好の好天のようだ。




 7:35 中房温泉・燕岳登山口到着

 バスは殆ど定刻通りに燕岳登山口前に到着。ウォーミングアップやトイレに立ち寄って準備を整える。
トイレはきれいで大きな立派な造り。またすぐそばに日帰り入浴可能な温泉もあるので、ここに下山するのもいいかもしれない。








 8:00 中房温泉・燕岳登山口出発(1,450m)

 準備中の多くの登山者で賑わう中を出発。登山口からも燕岳の人気ぶりが伺える。
ここには登山ポストもあるが、今回も登山届は事前にネットで提出済み。

 急登といわれる合戦尾根ではあるが、登山口からしばらくはそれほどでもない。
登山口から標高が既に1,450mなので、森の中では本当に涼しい。








下部は深い森の合戦尾根

 序盤は九十九折が続いてそれほどの急登は無かった。
逆にウォーミングアップにはちょうど良いくらいだった。
自分の場合は普段からペースを飛ばし過ぎる傾向にあると思っているので、
いつもの8割方のスピードに抑えるように歩いたのも良かったかもしれない。

 どこで撮影しようかなと思っているうちに傾斜は無くなり、尾根は一旦平らになった。
等高線が広がったところ辺りに到達したようだ。








 8:36 第1ベンチ(1,670m+)到着

 傾斜が緩むとまもなく第1ベンチに到着。到着時には偶然誰も居なかったが、詰めれば20人くらいは座れそうだ。
まだまだ先は長いし、登り始めて30分くらいとちょうど良いタイミングでもあるので、
ザックを下ろして休んでいくことにしよう。

 第1ベンチ北側20mには水場もあるよう(案内板有り)だが、まだ殆ど携行している水が減っていないので立ち寄っていない。
今回携行している飲料水はハイドレーションシステムの2Lと、ナルゲンボトルに500MLのポカリスエットを入れている。

 しばらく休憩している間に後続の方々が到着されて一気に賑やかになった。
体が冷えてしまわないうちに出発しよう。




 8:46 第1ベンチ出発








程好い傾斜が続く合戦尾根

 第2ベンチに向けて再び等高線が詰まってきたが、急登といえるようなところは無かった。
周囲は深い森ではあるが、やや木々が疎らで木漏れ日が心地良い。
地表は六甲では見慣れた笹で覆われていて、何だか親近感を感じてしまう。
多くの登山者が登り降りする合戦尾根は整備も行き届いていて、歩きやすさは六甲以上ではないかとも思う。

 前回の奥穂ピストンで予想以上に疲れを感じたことから、今回は軽量化を図ったし、
ザックのバランスも各部ベルトの調整も念入りに行った。おかげで今回のほうが足取りをかなり軽く感じる。









 9:11 合戦小屋荷揚げ用の索道をくぐる

 少し前から蝉の声?と思われる音が聞こえていたが索道の稼働音だった。
不意に周囲が明るく開けてきて、トラックは索道の下を通過する。
これが合戦小屋や燕山荘への荷揚げ用のリフトだった。設備はスキー場で見られるようなしっかりしたものだ。
これに名物のスイカなどを載せるのだなと実感した。

 見上げれば花崗岩らしい白く光る山肌が見え、目指す燕岳の雰囲気の片鱗が伝わってくる。








 9:13 第2ベンチ(1,820m+)到着

 索道をくぐる頃から上部で人の話し声も聞こえてきていたので、到着前に察したのだけどすぐに第2ベンチに到着。
自分も空いているところを見つけて休憩していこう。
30分毎にベンチがあって、合戦尾根は本当に至れり尽くせりだと感心した。
トラックによっては休むきっかけが無くて、ダラダラと歩いてしまうことも珍しくない。
でも合戦尾根は自然にペースを掴みやすいように図られている親切なトラックだった。




 9:23 第2ベンチ出発








やや傾斜が増してくる合戦尾根

 第2ベンチを過ぎると、これまでよりは幾分傾斜が増すように感じられる。
しかし手入れはよく行き届いていて、トラックはかなり安定している。

 時折東側の隙間からは信濃富士の異名を持つ有明山も目立って見える。
麓の安曇野からはよく目立つ山だが、高さが段々と肩を並べるようになってきたと感じられる。
この山は行程の進み具合を推し量るのに良い目安になりそうだ。








 9:48 常念山脈の展望が開ける

 九十九折の途中に南側が明るくなってくる。一瞬第3ベンチかと思ったが少し早かったようだ。
ベンチは無いけど、街から屏風のように広がって見えていた常念山脈を垣間見ることが出来る。
もしかしたら明日にはあちらへ向かうかもしれないと思いつつ、未踏の稜線を眺める。








「北アルプス三大急登」らしさを見せ始める合戦尾根

 これまで殆ど九十九折で傾斜を乗り越えてきたが、急坂部分には階段も現れるようになってくる。
合戦尾根らしくしっかりと整備されているが、段差は大きくなるので筋力が消耗されやすい局面だ。
今回の場合、今日だけではなく最長であと3日間は歩き続けなければいけない。
出来るだけ筋力の消耗を抑えようと、マイペースでじっくりと登っていく。








10:00 第3ベンチ(2,030m+)到着

 急登の途中にある第3ベンチに到着。
息が上がる前に現れるという感じの休憩スポットで、ここも大いに活用したい。
まだまだ先が長いと思っていた合戦尾根もここでほぼ中間地点だ。
早く燕岳に到着したいが、残る後半に備えて息を整えていく。
朝は涼しかったが、この頃より日が当たると暑いくらいになっていた。
行動食の柿の種や味塩が美味しく感じられた。




10:10 第3ベンチ出発








第3ベンチからは等高線が非常に詰まってくる合戦尾根

 第3ベンチを過ぎるとやや厳しい区間が続くようになる。
歩き始めてやや時間が経った頃ということもあって、この辺りが合戦尾根で最も我慢のしどころかなと感じる。

 山肌より深く抉れた砂交じりの溝状のトラックがしばらく続く。
塩尾寺到着直前の六甲縦走路に似ているが、ここも段差が大きなところはしっかりと整備されている。
ここもマイペースを意識してじっくりと乗り越えていくしかない。

 この辺りでは下り中の方々とも多くすれ違うようになる。
皆さん好天の燕岳を大いに堪能されたようで、その感動がこちらにも伝わってくるようだった。
自分も早く「北アルプスの女王」と冠される燕岳の美しさを楽しみたい。

 幸いにも急登は標高差50mほどで一段落。あとは程々の登りの区間が多かった。








10:48 富士見ベンチ(2,250m+)到着

 体感的に順調なペースで富士見ベンチに到着。
外界が見渡せるベンチを選んで小休止をとった。残念ながらこの時は富士山は見えず、視界が利いたのは八ヶ岳連峰辺りまで。
場合によっては出番を考えていた望遠レンズを取り出す必要はなかった。

 休憩中に地形図を見ると、この先で合戦尾根は北へ大きく向きを変える。
そして合戦小屋までの標高差はあと100mくらいであり、そこまでの傾斜も比較的緩そう。
これを確認するだけで俄然テンションが上がってくる。




11:03 富士見ベンチ出発








花崗岩が見受けられるようになる合戦尾根

 富士見ベンチを過ぎるとこれまでより空の広がりが感じられ、また風化した花崗岩帯も通るようになってくる。
そしていつしか周囲の木々も色づいてきているものもあることに気付く。
紅葉を楽しむにはまだ少し早いが、秋を先取りするという感覚は充分の山行になった。

 写真には写っていないが、自分の前後には抜きつ抜かれつで登っている方々に挟まれている。
合戦小屋までの残る標高差などをお伝えしたりして、半分一緒のパーティーのような感覚で登っていく。








11:26 合戦小屋まであと10分

 ネットの事前調査で見受けられた、合戦小屋までのカウントダウンを告げる道標が現れる。
等高線がだいぶ広がっているところを歩いているので、この時はあまり息は上がっていない。
本当に既に標高差900mくらいを登っているのかというくらい、今回は脚の調子が良かった。




11:33 合戦小屋まであと5分

 いよいよ合戦小屋まで秒読み状態?となる。
名物のスイカはどうしようかなぁとか考えたりしながら登っていく。








11:38 合戦小屋(2,380m+)到着

 最後の階段を登って遂に合戦小屋に到着。
休憩専用で宿泊は出来ないとのことだけど、すごくしっかりとした造りの立派な山小屋だった。
展望こそないが小屋前にはたくさんのベンチがあって、多くの人が寛ぐことが出来る。
自分も日陰を選んで小休止していくことにした。

 またベンチの向こうには荷揚げ用索道の終点もある。








合戦小屋名物はスイカ

 スイカを食べたかったけど、今回は早く燕岳に到着したいという気持ちのほうが強かった。
たぶん次回訪れる時にはスイカを頬張る気持ちの余裕が出来るような気がする。

 ちなみに今年のスイカはこの連休で最後になったようで、夏の終わりを感じさせられた。
暑がりの自分は元々は夏はあまり好きではなかったのだけど、いつの間にか今ではちょっと寂しく思うようになっている。




 ところで“合戦尾根”の名の由来がずっと気になっていたが、合戦小屋にその由来を記す解説板があった。 →








 合戦小屋地名の由来

 今を遡る桓武天皇の御代・・・
中房温泉、有明山に住む魏石鬼あり、自らを八面大王と呼称し妖術を使う大鬼雲を起し、
霧を降らし天を飛び、里に出ては財宝、婦女を掠奪し、山野に出ては社寺仏閣を破壊し、
狼藉三昧の明け暮れといわれた。

 坂上田村麻呂、魏石鬼を滅ぼさんとするも魔力強く、敗戦の連続と思うにまかせず、栗尾山の
観音堂に願をかけ、霊夢をさずかる。
「三十三節の山鳥の尾で作った矢を使えば・・・」
甲子の年、甲子の月、甲子の刻に生まれた男矢村の矢助この尾を献上、ついに中房川上流の
谷間で大合戦の末、魏石鬼を打ちはたす。合戦の沢、今の合戦沢をいう。
合戦小屋の下、深い谷間、その地に合戦の歴史あり、今を遡る桓武天皇の御代・・・

 鬼の五体はバラバラに埋められ蘇生を防ぐ、耳塚、首塚、立足等、地名として今に残る。

 山鳥の尾を献上した矢村の矢助、夫を魏石鬼に殺された母に育てられる。母は云う。
「命あるもの全て親子、夫婦の関係あり、殺さばなげくもの必ずあり。」
矢助、一切の殺生をせず成人し、ある時ワナにかかった山鳥を救い放つ。その年の暮れ
矢助嫁をめとる。三年後坂上田村麻呂との出会いとなる。嫁のさし出す山鳥の尾を献上、
矢助、永遠の生活を保障する恩賞を得る。翌日、嫁一通の手紙を書き置いて姿なし。
「我、三年前に助けられし山鳥、高恩にむくいるべく、かしづくも、もはやその要もなし。
三十三節の尾羽は、我の尾なり。」と・・・
今を遡る桓武天皇の御代・・・
合戦の歴史あり、合戦小屋の下、深い谷間。




 戦国時代の武田家に関する合戦を想像していたけど、
もっともっと昔の平安初期の伝説?が由来となっているようだ。
 
12:03 合戦小屋出発

 20分近くの滞在を切り上げて合戦小屋を出発。
ここより燕山荘までの標準所要時間は1時間10分。
そしてまもなく森林限界も越えることになる。さあ、奥穂で殆ど楽しめなかった稜線歩きでスカッと出来る時間までもうすぐだ。




 合戦小屋を過ぎると幾分傾斜が増すような気がしたが、相変わらず九十九折で歩きやすいトラックが続く。
そしてまもなく周囲の木々が低く、そして疎らになってきて周囲の展望が大きく開けてくるようになった!








安曇野の展望が広がってくる

 街からだと遥か高くに見上げてきた有明山をいつの間にか見下ろすようになり、車を置いている安曇野の平野は遥か眼下に。
いや〜、やっぱりいつもと比べて山の高さが違う!と当たり前のことに納得。まだ稜線に辿り着いていないのにもう感動してしまった。








遂に槍ヶ岳も姿を現す

 自分が初めて直に槍ヶ岳を見た瞬間となった。(先日の奥穂で雲に巻かれたおかげでもあるが)
あの山だけは初めてでも見間違えようのないユニークなピークだ!
多くの方と同様、親しみを込めてこれからは“槍”と呼ぶようにしたい。
これまでシェール槍とか七種槍など地元でいくつか槍の孫弟子のような山を登ってきたが、
本家本元の槍だけにすごい尖がり様にまたまた感動してしまった。

 明日には手前に見える表銀座縦走尾根(喜作新道)を歩き、明後日には槍に到達出来ればいいなと、
改めて第1の行程候補の表銀座縦走の実現を槍に願った。
槍に到達することになる3日目の天候を不安視していたので、この時には常念山脈縦走と両にらみで考えていた。
仮に天候の崩れは小さくても、初めての槍到達時にガスってしまうのは何としてでも避けたかった。
ともあれ、もう自分にとってテンション上がりまくりの場面が続いていたのは間違いない。








12:22 合戦沢ノ頭(2,488.1m)到着 行程中最初の三角点

 槍の遠景で大いにテンションが上がる中、ミニピークの合戦沢ノ頭に到着。
尾根上のミニピークではあるが合戦尾根の続きに阻まれる西方以外はぐるり見渡せる大展望。ベンチあり、三角点ありの居心地良い小広い広場になっている。
ぜひザックを下ろして小休止をとっていこう。








燕山荘まであと1.3km、燕岳までは2.3km 燕山荘から燕岳に至る美しい稜線

 合戦沢ノ頭からは周囲の山々まで一望出来たが、ゆっくりと撮影を楽しむのは燕岳山頂までお預けとした。




12:32 合戦沢ノ頭出発

 燕山荘までの標高差は約250m。標準所要時間は1時間弱といったところだろうか。
急登のイメージが強い合戦尾根だが、上部は比較的緩やかになっている。








合戦尾根の直上を通る場面が多い

 合戦沢ノ頭を過ぎると、基本的に常に展望が開けているといっても良い開放的な区間が続く。
目的地の燕山荘やテン場も既に手に取るようによく見えているが、自分にとってはどこも撮影したくなるような尾根で所要時間より余分にかかる気がする。
ともあれ、急登の合戦尾根で稼いだ標高を思う存分に実感出来る。








遂に燕山荘までカウントダウンに入った

 朝8時から歩き始めた合戦尾根もいよいよ終盤。
もう燕山荘やテン場の周囲に居る人々や、テン場のテントまではっきりと見える。
混雑を心配したがまだまだスペースには余裕がありそうだ。
早く稜線に出たい、そして燕岳山頂に立ちたい、と思う心境と、
合戦尾根の写真もどんどん撮影したいという気持ちが半々で落ち着かない心境だ。

 昼過ぎという人通りの多いタイミングもあって、最後は前後の方々と団子状態となり、燕山荘へと登り詰めていく。
合戦尾根のトラックは最後は山腹道となり、燕山荘東側からテン場があるコル状のところに突き上げて稜線へ到達。
トラック沿いのテント設営中の方と挨拶を交わしつつ、遂に待望の表銀座の稜線に辿り着いた!








13:25 燕山荘前に到着(2,700m+)

 稜線上に立った途端、北方には燕岳が大きくその美しい山容を見せてくれた!
諸々の資料を通じてもちろん知ってはいたものの、直に燕岳を見ると凛としていてもっと美しい。
あらゆる形の花崗岩のモニュメントがあるおかげで燕岳の美しさが増すような気がするし、
これがあるから多くの登山者の人気を集める山になっているのだと思う。

 一刻も早く燕岳へ向かいたいが、とりあえず今日の宿を確保するほうが先決。
背後の燕山荘にてテント泊の手続きを済ませておこう。








燕山荘への最後の登り

 山小屋というには瀟洒な造りの燕山荘だった。人気の山小屋であることが外観からも伝わってくるよう。
ところで背後の最寄りの燕岳へ早く行きたいが、明日からの表銀座縦走尾根と行く手にそそり立つ槍にも目を奪われる。

 山小屋受付にてテント設営の届けを済ませて許可証を受け取る。
幕営料は1人500円。
自分が受付を済ませた時点で、山小屋に近いテン場の3分の1くらいが設営済みでまだまだ余裕があった。








燕山荘のテン場は展望抜群!

 ちょっと風がよく通りそうだったが、土の地面でペグをよく利かせることが出来た。
大きめの石が少なめな分、しっかりとペグを打ち込んでおく。
燕岳ビューを楽しめるように出入口は北側に向けた。
テン場はある程度区画整理されたうえに、ほぼ水平に均されているので寝心地も良さそう。

 テント設営も滞りなく終えたので、ピークアタック用の20Lザックに装備を切り替えて、いよいよ燕岳山頂へ向けて出発しよう。








14:33 燕岳へ向けて出発

 軽装に切り替えたおかげで、脚に羽が生えたような感覚で燕岳へ向かう。
地面は花崗岩が風化して出来たと思われる、ザラザラした砂地のトラックが北へ続いていく。
燕山荘から燕岳間の標高差は50mほどしかないが、意外にアップダウンがありそうだ。








奇岩群のモニュメントがユニークな燕岳

 近づくほどに本当に目を奪われる美しさに感動してしまう!!

 トラックは植生保護にために杭を打って、ルートを規制しているところもある。








いよいよ眼前に近づいてくる燕岳山頂

 この時はもう本当に周囲の景観に見とれるばかり。
砂の稜線が「月の砂漠」っぽかった。

 もう山頂に立つ人々も肉眼でよく見えている。








メガネ岩

 燕岳側に回り込んで、初めてその存在に気付かされた奇岩。
最近まではこの岩に登れたようだが、今は崩落の恐れがあるとのことで立ち入りを制限している。

 岩場を通り抜ける雰囲気は、六甲のロックガーデンに似ている。
ルートは一本ではなく幾通りかに枝分かれしているところもあった。

 メガネ岩を通過すると山頂に向けての最後の登りとなる。
中には息を切らしてしまっている方も見受けられた。
燕山荘から見た燕岳は殆ど標高差は無いものの、一旦行動を止めた冷えた体で散策気分で出掛けるとちょっとしんどいかもしれない。




 山頂直下で北燕岳、餓鬼岳方面への分岐をやり過ごす。
時間に余裕があれば足を伸ばしたかったが、またの機会においておこう。








15:00 燕岳山頂(2,762.9m)到着

 最後の急登を経て遂に待望の燕岳山頂に到着!!

 三角点のある山頂はそれほど広くはなく、居合わせた先客の方々が下に降りられたタイミングで撮影を開始した。
もちろん撮影のタイミングをただ待つだけではなく、記念写真のシャッターを押して差し上げたりして好天の山頂に立った喜びを分かち合う。
こんなに好天の燕岳山頂に立てたのだから、撮影時にも自分も含めて皆さん自然に顔がほころんでしまう♪

 快晴の日差しに照らされた山頂は本当に白く輝いて、まるで雪が積もっているかのよう。三角点も白く美しく見える。
逆に言えば、ここに来る時は目を傷めないようサングラスが特に必需品だろうと思う。

 山頂には記念撮影用?の立派な山名板まで置かれていて、さすが大人気の山だと改めて感心してしまう。
自分ももちろんシャッター押しをお願いして、山名板を持ってちゃっかり記念写真を撮ってもらった。




 山頂には後から続々と登山者が到着してくる。
ある程度達成感を味わい、一しきり撮影を終えたので場所を変えて滞在することにした。
山頂の周囲にも憩うスペースは豊富にあって、もちろん展望はどこでも楽しめる。
常時ザックの中で310gの重りになっている望遠レンズの出番だ。








今回は訪問を見送った北燕岳 鹿島槍ヶ岳、及び白馬の山々

 この日は本当に空気が澄んでいて、北アルプスの広大な範囲の山々を見渡すことも出来た。
但し山名まで同定出来るものは限られるが・・。地形図だけではなく広域地図などもあると良かったかもしれない。
北燕岳の右奥には剱岳と思われる山も見えているが・・。
いずれにしても、どの山もいずれ登ってみたいと心惹かれる絶景だ!








表銀座の稜線を見据える

 南側に目を向けると逆行気味ではあるが、燕山荘から始まる表銀座の縦走尾根に自然と目が向けられる。
中ほどには大天井岳が大きな存在感を誇る。そして遥か彼方に見える槍。いやが上にも明日からの行程に対する期待が高まる!
槍から南側の穂高の主稜線上を目で追うと先日雲に巻かれた奥穂、そして行けなかった前穂まで。
あの時は何も見えなかったがあそこに立っていたのかと改めて達成感を得た。

 大天井岳から南東方面には常念山脈も見えているが、2日後には順当に槍に到達したいなあと改めて強く思った。
なおこの時には合戦尾根では見えなかった富士山までも見えていた。

 








15:34 燕岳山頂出発

 日没まで約2時間少々。燕山荘まで戻るのに約30分。
テントで燕岳を眺めながらまったり過ごす時間もほしかったので、そろそろ山頂滞在を切り上げて出発する。

 自分が燕山荘へ戻っていく時にも、山頂へ向かう方々と続々とすれ違う。
この日はどのくらいの方々が燕山荘とテン場に宿泊していたのだろうかと驚くほどだった。
この日は金曜だから一応平日のはずだが、燕岳の人気ぶりはすごいと改めて思う。








燕山荘や安曇野の景観を眺めつつ、ゆったりと散策気分で歩く








燕岳で最も有名な?モニュメントのイルカ岩

 往路では熱心に撮影中の方が居られたので帰路に撮影。
本当にイルカみたい!これだけは一目で間違いなく気付ける。








16:05 燕山荘に戻ってくる

 撮影しながらかなりゆったりしたペースで戻ってきた。
明日は当然朝イチで出発しなければいけないので、テントに戻る前の明るいうちに燕山荘の周囲を軽く見て回ることにした。
それと山小屋が夕食時間で忙しくなる前に水を買っておきたい。
自分の場合、テント滞在中に2L、明日の行動中の飲料水に2Lで合計4Lを購入。
今回の山行で利用したテン場を管理する山小屋ではいずれも1Lにつき200円でした。
テン泊において水にかかるお金は少なくないと感じるけど、水は山においては貴重品という認識を持つことが出来る。








燕岳とテン場 畦地梅太郎作「山男」像 

 テントは見えている範囲内はほぼ埋まっているが、ここから死角になっている燕岳側はまだ余裕があった。
燕岳側は山小屋からは遠くなるが、テン場のトイレには近くなるのが利点。

 畦地梅太郎についてはよく知らなかったが、山を題材に扱う版画家という。
涸沢ヒュッテの売店でタオルの模様になっていたような。








テン場横のミニピーク(2,704m)より

 天空の山小屋と呼ぶに相応しい光景だった!
思いっきりテント泊が好きになったけど、燕山荘は泊まってみたいと思わせてくれる雰囲気を持っている。

 だいぶ日が傾いてきたので、そろそろテントに戻って夕食準備を始めよう。








燕岳を眺めながら夕食をとる

 狙い通りに最高の光景を見ながら夕食をとることが出来た。
夕方になって相当冷え込んできたので、テントの中のほうが風避けという意味でも居心地が良かった。
もちろんテントの中が暖かいとまではいえないので、防寒着はしっかりと着込んでいる。
防寒着については、前回の奥穂山行ではスエットを用意したが、やはりテント泊には必携品ということで軽量のダウンジャケットを導入した。
シュラフに入る時にもダウンジャケットを着込んで寝てちょうど良かった。








夕映えで赤く燃える燕岳

 日没間際になって、テン場すぐそばの2,704mピークより撮影。
夕景だとまた一段と美しさが際立つように感じられる。北アルプスの女王と呼ぶに相応しい!
今回は本当に燕岳に魅入られたというか、また何度となく登ってきたいと思わせる山だった。








シルエットも貫録十分の槍








燕山荘受付前にある売店

 寝る前に忘れずに山バッジなどの土産物を買っておこう。
でも迷うくらいに豊富な商品数で、決めるまでにちょっと時間がかかってしまった。




 20日夜時点で発表されている天気予報は

 21日:晴れ、22日:曇りか霧、23日:晴れ時々曇り

 表銀座縦走では槍に到達する3日目が特に重要なのにちょっと怪しい天気予報。
行先についてはこの日までには決断できず、結論は21日に先送りすることになった。








安曇野の夜景を見届ける

 神戸の華々しい夜景よりはずっと大人しいけど、このくらいのほうが控えめで良い感じもする。
この時の時刻は18時30分過ぎで、既にテン場では就寝モードに入りつつある。

 夜景を眺めていると、風がけっこう吹き付けてきて体感温度は既に冬といっても良いくらい!
とてもではないが吹きっさらしのところに長く居続けられるものではなかった。早々にテントに退避する。
シュラフにくるまって、山と高原地図で明日の行程を再確認してから眠りに就く。
前回の分を取り返すほどの好天に恵まれて、最高に楽しい合戦尾根と燕岳の初日の行程だった♪








表銀座縦走尾根(前半)を歩く2日目に続く

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