「表銀座縦走2日目・燕岳から西岳」 2013年 9月21日(土)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「槍ヶ岳」


山と高原地図
 : 「槍ヶ岳・穂高岳・上高地 北アルプス」





 2:30頃 起床

 7時間弱の睡眠時間で自然に目が覚める。
風が強くテントに当たってけっこう風音もすごかったけど、テントは風圧を見事にいなしていた。
結果として何ともなかったけど、テントにとって風は大敵ということは体感した。

 夜明けが近づく頃になるといつの間にか風は止んで、テントの撤収はスムーズに進んだ。
ご来光を見届けたらすぐに表銀座縦走を始められるよう、燕山荘前のテラスに移動して待機する。
昨夏の白馬三山縦走の時のように出発時にもたつくことは無くなり、効率良く動けるようになったと思う。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)

明るい月光に照らされた燕山荘前でのテン泊だった








この日の長野県の日の出は5:34  5:37 日の出

 ご来光を待つ間は相当寒い!!
体を温めておく意味でもウォーミングアップをこの時間に済ませておいた。

 浅間山と思われる山越しからご来光を拝むことが出来た。
先月8月の奥穂ピストン山行では見ていないこともあって、やっぱり山でのご来光はいいなあと改めて思う。








富士山遠望 モルゲンロートの燕岳

 富士山が裾野までしっかり見えている姿は自分は初めて遠望出来たと思う。
燕岳は朝も変わらずに美しかった。出来るならゆっくりと眺めていたい山だ。








目を転ずると、同じくモルゲンロートの槍ヶ岳

 言葉では説明しつくせないほど感動してシャッターを押した。
明日3日目にはあそこに辿り着けるだろうか。








 5:58 燕山荘出発

 しっかりとモルゲンロートの山々を堪能出来たし、いよいよ待望の表銀座縦走を開始!!
燕山荘より1時間の行程で辿り着く「大下りの頭」(2,660m+)までは、比較的アップダウンは穏やかな尾根が続く。
展望抜群の快適な稜線漫歩に向けて、いやが上にも期待が高まる。








表銀座縦走コース・喜作新道 喜作新道から南の常念岳方面展望

 途中の大天井岳を乗り越えて、槍ヶ岳へ向かっていくシチュエーションで歩く表銀座を歩いていくと
初めての自分は身が震えるような興奮を覚える。尾根の直上に付かず離れずに歩いていくような感じ。
昨日の合戦尾根の登りも楽しかったけど、今日の行程はある意味表銀座縦走のハイライトといえるかもしれない。

 ところで表銀座縦走に気をとられて、燕山荘で天気予報確認をするのをうっかり忘れていた。
昨日の情報のまま表銀座縦走を継続するのは不安なことだし、これは遠回りにはなるけど大天荘に立ち寄ってまで情報確認しなければならないだろう。








蛙岩(げえろいわ)に接近

 ハイマツ帯の向こうに巨岩が近づいてくるが、これが蛙岩であることは岩の袂まで来て分かった。
それにしても燕山荘からまださほど歩いていないのに、徐々に槍が大きくなってくることでまたテンションが上がってくる。








 6:43 蛙岩

 岩の間を通り抜け、突き当たった巨岩は東側を巻いていく。
ちなみに冬山ルートは岩を乗り越えていくようだ。
ここにある指導標のおかげで今蛙岩に着いたことが分かったが、どこをどう見たら蛙に見えるのかは分からなかった。
六甲の魚屋道沿いにある蛙岩のほうがずっと蛙っぽいかもしれない。








大下りの頭から大天井岳までを展望

 蛙岩を過ぎると大下り周辺の尾根の様子を掴めるようになる。
大下りの頭まではまだしばらく快適な稜線歩きが続くようだ。
それにしても行く手にある大天井岳がイメージよりもずっと大きな山であることが伝わってくる。








引き続いて快適な縦走が続く

 尾根の直上より東側山腹を進んでいる。
赤く色づいた木々がちらほらと見えてくる。見頃まではまだ少し早いようだ。








 7:11 大下りの頭(2,660m+)

 標準所要時間よりは少し遅いペースで大下りの頭に到着。
一旦ザックを下ろして10分程度小休止をとっていこう。
遮るものがなく迫力ある姿で見える槍にも惹かれるが、それにも増して大天井岳が縦走路上に立ちはだかるといったような姿で大きく見える。








大下りを開始

 大下りとはいっても、標高差は100mくらいのアップダウン。
大下りの頭からザラザラした滑りやすいトラックを急降下していく。

 自分が大下りの頭に居た頃から、後から数人の方が来られて先へと進まれていった。
燕山荘はかなり早くに出発したのだけど、やはり自分の場合は撮影にけっこう時間が掛かっているようだ。
本当にどこでも撮影したくなる尾根なので、どこで撮影しようかと選択眼を持つのが大事だと思う。
その意味でも地形図で要所のポイントを設定して歩くのが役に立っているかもしれない。








2,560m+コル

 大下りを下りきったら、トラックは東側山腹に降りていく。
正確にはコルよりも少し余分に下るといった形になる。

 コルの直下を通過しようとしたら、対向の単独の方とすれ違う。
あちらの方も大天荘辺りを早発されたのだろう。

 コル周辺では見事に色づいた木々が青空によく映えていた。
本当に秋山っぽくなってきたと実感する。








大下りを登り返す

 大下りを下るのは比較的スムーズだったが、登り返す局面はけっこう複雑で長く感じるものだった。
トラックは再び尾根の西側に出て、険しそうに見える岩場に取付いていく。
行く手に大きな岩場が立ちはだかるが、あの辺りが為右衛門吊岩だろうか。

 それにしても朝日が当たる東側と、日陰の西側の温度差がすごく大きい。

 岩場に取付いたら、再びトラックは尾根の東側へ。
この辺りは短いながらもけっこう急坂のアップダウンで地味に疲れるところだ。








喜作新道序盤のちょっとした難所と感じたアップダウン

 再び尾根を目指すために階段道も交えた急坂を登っていく。
この辺りは団体さんをやり過ごしたり、逆に自分よりもペースの速い方に道を譲ったりと賑やかなシーンが続いた。
団体さんは大天井岳周辺での山小屋泊まりであったようだが、自分の背負っているザックを見て驚嘆の声を上げられる。
山歩きを始めてから昨年の白馬三山縦走まで、まさか自分がテント泊装備を背負うことになるとは想像すらしていなかったし、
何がきっかけで嗜好が変わるかは本当に分からないものだ。
そもそも山歩きを始めたきっかけも、ワーホリでニュージーランドに行ったことだったし、
正直なところ自分としても驚くべき変化と思う。

 親からは雪山だけは手を出さないでくれと言われているが、それだけはもう一つの大事な趣味であるスキーがあるから始めようにも難しいだろう。








植生保護のため?規制されたトラックを往く

 いつ為右衛門吊岩を過ぎたのか分からなかったが、周囲の景観から大下りで下った分は取り返したことは分かった。
この辺りは花期にはどのような花が咲くのだろうか。またいつの日かここを通る時には夏に通過したいものだ。

 行く手には大天井岳が近づいてきたが、まだそれまでにいくつかミニピークがあるようだ。
尾根は比較的アップダウンが少なく、また尾根を外す場面も多いので自分にとっては読図が難しいところだった。








次第に大きくなる大天井岳

 読図でイメージしていたよりも大天井岳はずっと大きく、そしてその登り返しは小さいものではないことが伺える。
大天井岳に取付くまでに適地を見出して、軽く小休止をとっておいた。








 9:00 切通岩

 小刻みなアップダウンを経て、切通岩までやってくる。
小さなコルになっている両側は鎖場と梯子と階段が結んでおり、ちょっとしたアスレチックのようなところ。
コルにはこのトラックを敷設した喜作さんのレリーフが岩壁に埋め込まれている。
コルよりちょっと高いところに埋め込まれているので、先に気付いて見上げなければ目に入らない。

 登山ガイドはあくまで副業であって本業は猟師だった喜作さんが登山者の増加を見て、
この喜作新道と名付けられることになる登山道を開設。
それまで槍ヶ岳へは常念乗越経由で一旦槍沢へ下りていたルートが一般的だったが、
この展望抜群の喜作新道に人気が集中したという。
ちょっと偏屈だったようだけど、この素晴らしい縦走路を開設してくれた喜作さんに感謝して切通岩を通過しよう。

 切通岩より急な階段を登ると、大天井岳麓をトラバースする山腹道となる。








大天井岳の麓より燕岳までを振り返る

 大天井岳北山腹を登り始めると、燕岳そして燕山荘から歩いてきた尾根を見通すことが出来る。
決して楽といえるほどではなかったが、いつの間にかこれだけの距離を歩いていたのかと達成感を得ることが出来る。

 燕岳に背を向けて再び登り始めると、まもなく今日最初となる重要な分岐に差し掛かる。








 9:11 大天井岳北側分岐

 本来であれば槍ヶ岳へ向かうには道なりに進み、大天井岳西山腹をトラバースする。
でも今回は天候確認のために大天荘へ向かうので、ここは常念岳方面へ向けて左折しなければならない。

 大天井岳山頂直下にある大天荘への山腹道は登り40分、下り20分という所要時間が示すようにけっこう険しい。
ここで5分程度息を整えてから出発することにする。
 但し順路を進んだとしても小刻みにアップダウンを繰り返すので、これまでと同様に決して楽な道のりではないようだ。

 自分が小休止中にも数人の方々が通り掛かり、自分と同じように常念岳方面へ向けて歩き始めていく。
自分のように意図的に遠回りする人はそういないだろうから、常念岳へ縦走される行程の方が多いのだろう。








意外にきつい登りの大天井岳北東山腹

 燕岳辺りから見ていて存在感のある山だと思っていた以上に、大天井岳は本当に大きな山塊を形成している。
山と高原地図で見るよりも、山頂の周囲を囲む登山道で形成するラウンドアバウトは非常に大規模なものだった。

 東向きの斜面に日差しが燦々と降り注いでかなり暑いし、岩がゴロゴロしているトラックはけっこう消耗する。
ここはもちろん今日の行程においては最も大きな登りとなる。月並みだけどマイペースでじっくりと高度を稼いでいくしかない。








大天井岳東山腹をトラバース

 いつしか切通岩を遥か眼下に見るようになり、燕岳までも広く見渡せるようになる。
段々と傾斜も緩んでくると、長く感じた山腹道も終わって遂に大天荘に到着だ!








 9:53 大天荘(2,870m+)到着

 ようやく辿り着いた大天荘。思わず荷を下ろして天を仰いでしまった。
でも切通岩の標高が2,700mくらいだから、ここまでの標高差は200mにも満たない。
数値以上にしんどく感じたのは、予想以上の暑さが一番大きな原因だったかも。

 それはともかく、ここまで遠回りしてまで大天荘まで登ってきた用事を済ませよう。
大天荘受付に掲示されている天気予報によると、明日は「晴れのち曇り、途中から安曇野側からガスが上がってくる」という。
受付で居合わせた山小屋の方ともちょっとお話させていただいたが、分かってはいたが結局最終的な判断は自分で行わなければいけない。

 お話を聞いていただいたお礼ついでに大天井岳の山バッジとコーラを購入。
テラスにてコーラでエネルギー補給をしながら、槍に向けて表銀座縦走を継続するか、
或いは常念山脈縦走へ向かうか考えることにした。

 晴れの天候は長くて明日午前までは続く見込み。つまり昼までの半日はガスってしまう可能性は低い。
明日の行程は視界がクリアなまま東鎌尾根を登って、昼前には槍ヶ岳山荘へ到達出来る。
そして明後日の行程最終日は再び天候は回復し、「晴れ時々曇り」となっている。
仮に明日は穂先に登った時にガスったとしても、明後日の朝はクリアな状態で槍の山頂からご来光を見ることが出来るかもしれない。

 これは槍に向かっても何とかなりそうだと判断。ということで、ようやく表銀座縦走継続を最終的に決定した!
空になったペットボトルを小屋の方に返すついでに、槍へ向かうことに決めたことをお伝えしておく。








10:19 大天荘出発

 常念山脈へと続くトラックを見送り、右折して槍へ向かう。
この判断がどう影響するか、先月のように予報が外れた経験をした直後でもあるので全く心配ではなかったといえばウソになる。
でも常念から槍がクリアに見えて、槍へ行けばよかったと後悔だけはしたくなかった。

 なお常念岳方面へ向かう場合は、大天井岳が行程中で最高地点になるので山頂へ立ち寄るつもりだった。
ということで、槍が最高地点となる今回は大天井岳山頂はあえて踏まない。
根拠は何もないけど、初登頂する槍に対して敬意を示すことで好天になるよう願う、
自分なりのゲン担ぎだったかもしれない。

 この分岐周辺が大天荘のテン場のようだ。展望抜群だし地面は水平だし、アンカー代わりの岩も多い。
いずれここでテントを張る機会が必ずあるだろう。

 こういう経過で重要な判断をしてようやく出発したのだが、
すぐに大天井岳の西側に広がってくる絶景に思わず足が止まることになる。








表銀座縦走尾根越しに、槍・穂高の大パノラマ!! 穂高連峰遠景。先月奥穂でガスってなければ穂高の近景も最高だっただろう。

 天候判断のために大天荘に立ち寄ったことで、この後歩くことになる表銀座縦走尾根を横から俯瞰出来た。
そしてその尾根の向こうに槍・穂高の主稜線が手に取るように眺められる。

 近くなって更に迫力を増した槍はもちろん、先月に訪れた涸沢や奥穂まで完璧に見通せる大展望だ!
昨日から感動の連続だけど、ここでもただただ絶景の前に佇むばかり。
紆余曲折があったけど、大天荘を経由する迂回路を辿った甲斐は充分にあったのではないだろうか。

 本当にいつまでも眺めていたくなる絶景ではあるが、まだ今日の行程は半ば。
北穂の手前に今日の最終目的地であるヒュッテ西岳も小さく見えている。
行程後半の尾根は登りのほうが目立っている。
しばらくこの景観の中に飛び込んで下っていけるので早々に出発しよう。








大天井岳南山腹を西進

 先ほどまで登っていた東斜面のトラバース道よりはややワイルド。
砂交じりで滑りやすいので、勢いをつけないように下りていく。
次の目的地の大天井ヒュッテまでは下りで30分。登りだと40分。
大天井岳のトラバース道はどこを歩いてもけっこう長いと思う。

 この南側のトラバース道を利用する人は多くないようで、表銀座縦走コースに合流するまでにすれ違ったのは単独男性一人だけ。
静かで展望抜群の大天井岳南斜面を下っていく時間は本当に最高だった。

 トラバース道を下っていくと、縦走尾根上に「牛首展望台」となっている2,766mピークが目立ってくる。
大天井ヒュッテはあのピークの直下にあるので、トラバース道の行程の進み具合も分かりやすい。








ハシゴまであるトラバース道

 大天井岳南斜面は一部で崩壊地のような足場の悪いところも通過する。
いずれもそれほど長くはないが、数か所でハシゴを登り降りする必要があった。
中には建付けの悪くなっているものもあったので、ハシゴの利用はくれぐれも慎重に行う必要がある。

 ちょっとワイルドなところも通過するが、眼前には牛首展望台の2,766mピークが大きく見えてくる。
まもなく本来の表銀座縦走コース・喜作新道と合流するはずだ。








10:55 大天井岳西分岐 早朝出発した燕山荘は遥か彼方に・・。憧れの槍にもだいぶ近づいてきた

 大天荘を経由する約1時間40分の迂回をもって、本来の表銀座縦走コースに戻る。
普通に道なりに大天井岳西側をトラバースするのに比べると、約1時間余分に所要時間が掛かっていることになる。
それでも大天荘付近から眺めた絶景は本当に感動したし、終わるのが寂しいと感じてしまう南斜面のトラバース道だった。

 分岐では男性3人パーティーが休憩中で、この後大天荘へ向けて逆に登られるという。
道が悪いところもあるし意外にけっこう大きな登りなので、焦らずにじっくりと歩くべしとアドバイスした。




 3人パーティーさんを見送って自分も眼下に見える大天井ヒュッテへと下っていく。
眼前には牛首展望台とそれに続く急坂に目が行くが、大天井ヒュッテからの標高差は120m弱。往復30分という。
大天井ヒュッテに宿泊すれば散策で登るのもいいだろうけど、
この後表銀座を歩きながら槍を思う存分眺められるだろうから今回はパスしよう。








11:02 大天井ヒュッテ<牛首のコル>(2,640m+)到着

 分岐からジグザグの急坂を経て、牛首のコルに立つ大天井ヒュッテに降り立つ。
さほど広くないコルであるからか、大天井ヒュッテにはテン場は無い。
大天井岳周辺でテントを張るには、先ほどの大天荘が唯一の選択肢になる。

 大天井ヒュッテ前のテラスでは数人の登山者が休憩中。
自分もベンチに腰を下ろして行動食をとったりして、今日の行程後半に備えることにしよう。








11:15 大天井ヒュッテ出発

 ヒュッテ西岳までの距離は、燕山荘〜切通岩間とさほど変わらない。
但し全般的に登り傾向ということで、行程後半も楽な道のりとはいえない。
槍の展望を楽しみながら、気合を入れて踏破したい。









しばらくは稜線東側の山腹道が続く

 ヒュッテ西岳を出発すると、小刻みにアップダウンを繰り返す山腹道がけっこう長い間続く。
一旦は森林限界も下回るようで、久しぶりに樹間のトラックとなる。
木漏れ日の優しい道といきたいところだが、山腹道は風が通らなくてけっこう暑い。
次第に離れていく常念山脈を各所から見通すことは出来るが、自分にとってけっこう長く感じる区間だった。
でもこの山腹道は前述の2,766mピーク(牛首展望台)の急坂を避けるために通されたのであろうから有難いものだ。
稜線に復帰するのを心待ちにして、色づき始めた木々を見ながら南進していく。








11:38 貧乏沢のコル(2,549m)

 長く続く山腹道を歩いていると、トラックの途中で立ち止まっている2人パーティーと、この指導標が同時に目についた。
すぐ横にはややヤブっぽい踏み跡がすぐ上にある稜線を越えていっており、
貧乏沢へのバリエーションルートは尾根の直上から分岐しているのではなかったことが分かった。

 ところでここでは貧乏沢へ入っていく準備中だった方々に配慮して、指導標だけを撮影している。
仮にこの指導標とお二人の存在が無ければコル通過に気づかずに通過していたかもしれない。

 貧乏沢のコルを通過すれば、ルート上の要所の一つとしているビックリ平まではもうすぐのはずだ。








11:46 ビックリ平(2,580m+)到着

 貧乏沢のコルから緩い登りを経て、久しぶりに稜線上に復帰。
ここがビックリ平といわれているところで、展望抜群の広場になっている。先着の単独男性の方が休憩中だった。

 槍の展望にビックリ出来るところという意味合いで自分なりに解釈していたのだが、見えているのは穂先だけで逆にびっくりした。
とはいえ、腰を掛けやすい丸太なども置かれているし、続く登りに備えて小休止をとっていくことにしよう。








ビックリ平から大天井岳方面を振り返る

 けっこう長く縦走してきた感があったが、大天井岳がまだまだ大きく見えている。
その手前に被るように表銀座縦走尾根上に位置する牛首展望台の2,766mピーク。
こちらも地形図で見るよりもずっと大きな山のように見える。
道理で貧乏沢のコルまで長く山腹道が続いたわけだ。

 貧乏沢を目で追うと、先述の2人パーティーの方々が沢を下っていく最中。
西側の天上沢まで下って北鎌へ向かわれるようだった。自分もいつの日か北鎌を歩く機会があるだろうか。




 一しきり景観を楽しんだ後、先着の単独行の方としばらく山談義をして過ごした。
現行よりもう少し大きなザックを検討されているようで、自分の75Lザックをお薦めした。
もし少し余裕があり過ぎたとしても、ベルトを調節してザックの容量をある程度小さくは出来る。
マックパックはデザインが無骨だし比較的重量があるけど、とにかく丈夫なので長期間使える。

 それと自分の三脚がすごく軽量なことに驚かれていた。
もちろん山道具の中ではある程度の大きな重量物ではあるけど、これがあるだけで写真撮影の幅が大いに広がると
見逃せない利点を併せてお伝えする。




12:04 ビックリ平出発

 これから大天井岳方面へ向かう単独男性の方とお別れして縦走を再開。
稜線上をしばらく緩い登りが続いて、やや西側の天上沢側を歩くようになる。
するとビックリ平では穂先しか見えなかった槍だったが、ここにきてかなり迫力を増した姿で目に飛び込んでくる!!








槍ヶ岳の大展望!! 槍の穂先と北鎌尾根の威容

 相当近づいてきた槍は大迫力の威容だった。
明日登ることになる東鎌尾根も行く手に見えてくるが、それにも増して北鎌尾根に自然に目が向いてしまう!
初歩的な登攀ルートということで、気軽に手を出せる尾根ではないとのことだが、
この展望を見るといずれは・・という気にさせられてしまう。

 この表銀座縦走コースは槍を眺めて、そして近づいていくために開設されたということを改めて実感させられる。








表銀座縦走コースをひたすら南進

 ビックリ平以降は登りが目立つが、それほど険しいところは無く、各所から槍の眺めを楽しむことが出来る。
そして次第に右前方には明日登ることになる東鎌尾根も徐々に近づいてくる。
今日の最終目的地のヒュッテ西岳は東鎌尾根の延長線上にあるから、同時に今日の行程もいよいよ佳境に入ってきたということにもなる。

 しかし行く手には整った三角錐の尾根の続きと、それへと向かう登りが見える。
行程後半も決して楽にはこなせないルートであることが分かる。








赤岩岳へ向けて断続的に登りが続く

 行動を開始して既に約6時間。そろそろ疲れを覚えてくる時間帯だが、絶え間なく見える槍の展望にも励まされる。
この辺りは尾根の直上よりも天上沢側を歩く場面が多い。








一転して東側のニノ俣谷側にも出る

 だいぶ前から見えていた三角錐の尖がりがだいぶ近づいてきている。
ここまでは比較的順調に進んできたが、あの登りはちょっと気合を入れなければならない。

 ここから見れば尾根上のピークにしか認識出来ないが、赤岩岳から北へと続く肩の先端が山頂のように見えているようだ。

 ところで表銀座を歩かれている方は、行程前半の燕山荘〜大天井岳間よりは遥かに少ない。
あれほど同じ向きに大勢の方が歩かれていたのだが、多くは常念のほうへ向かわれたのだろうか。








尚も続く登りの途中にて。更に東鎌尾根が近づいてきているのが分かる

 燕岳や燕山荘からは遥か遠くに見えていた槍だったが、もう天上沢を挟んだ向こうに!

 この頃、地面が赤茶けていることに気付く。
もしかして赤岩岳に近づいてきたのだろうかと思ったが、まだまだ先だったことは後で気付くことになる。




 まもなく先ほどから見えていた三角錐の高みに通り掛かるが、
トラックからすぐに稜線上に登ることが出来たので立ち寄ってみることにした。
そこからもまさに大展望の絶景が広がっていた。








12:55 2,740m+付近 肩に乗ったのでしばらくはなだらかな稜線が続くようだ

 大天井岳山頂直下にある大天荘から歩いてきた行程を振り返ることが出来る絶好の展望地だった!
大天井ヒュッテや貧乏沢のコル、ビックリ平がかなり下方に。牛首展望台も僅かにこちらより低く見える。

 表銀座縦走後半は急坂は少ないものの、長い期間断続的に登りが続く区間であることに納得できる景観だ。
それにしても大天井岳はだいぶ離れてはいても、本当に大きな山であることが分かる。
いずれ常念山脈を改めて縦走する際には登頂したいと思う。








13:05 赤岩岳山頂付近の指導標(2,740m+)到着 指導標の向こうには常念山脈

 赤岩岳山頂を示す指導標のある小広い広場に差し掛かる。
指導標のそばでは単独男性の方が小休止中だった。
一瞬ここが赤岩岳山頂かと思ったが、よく見ると山頂まで50m、更にそれに線が引かれていて200mと訂正されている。

 後で分かったのだが、赤岩岳は地形図にも山名と三角点記載もあるが、正規ルートからは外れた
いわゆるバリエーションルートで訪れるピークのようだ。表銀座縦走コースはピークの東側を巻いている。




 赤岩岳山頂ではないが、それほともかくここからは常念山脈の景観が見事だ。
赤岩岳が間近ということはヒュッテ西岳ももうさほど遠くはないことも分かる。
しばらく登りが続いた後なので、一旦ここでザックを下ろして小休止をとっていくことにした。

 この頃、ほぼ同じタイミングで数人の方が西岳へ向けて縦走中であり、
小休止するたびにお互いに抜きつ抜かれつする状態となっていた。




13:23 赤岩岳山頂付近の指導標出発








赤岩岳山頂直下をトラバース

 指導標の訂正された数値通りとすると、あの斜面の上辺りが赤岩岳山頂のようだ。
こちらのほうがずっと小さくはなるが、白馬三山の杓子岳を思い出す。
山腹道を歩いている時にサブルートは無いかと一応気を付けて観察したが、どうやら目立つルートは無いようだ。
山頂探索はまたの機会にすることにして、今はとりあえずヒュッテ西岳を目指そう。








常念岳方面の大展望

 赤岩岳直下を含めて、しばらくはニノ俣谷側を小刻みにアップダウンしながら歩いていく。
左手には常念山脈の山々が見事な景観を魅せてくれる。
今回は槍を目指すこととなったが、いずれは常念山脈もぜひ縦走してみたいものだ。








13:54 2,740m+

 再び稜線へと登り返すと、そこはまた平坦な尾根が続いている。
西側に目を向けると、槍へと続く険しそうな東鎌尾根が迫力ある景観を見せてくれる。
槍へと到達することになる大事な行程となる3日目に通過する尾根であり、明日あそこを登る時に天候が崩れないように祈りたい。

 ここより少し前方にはケルンが積まれている広場があって、既にもう数度お会いしている単独男性と女性の方が小休止中。
前回休んであまり時間も経っていないし、ここは軽く挨拶して先へと進むことにした。

 ケルンを過ぎると再び小さなアップダウンを繰り返す。
このような等高線に反映されるかどうか微妙なアップダウンが多いと、読図が本当に難しく感じる。
でもこのアップダウンが幸いにも今日最後のものとなった。この後再びニノ俣谷側へ降り立つと、遂に待望のヒュッテ西岳が目に飛び込んできたのだ!








14:09 ヒュッテ西岳が見えてくる!

 長かった表銀座縦走2日目の行程もあと僅か。
ヒュッテ西岳の向こうの支尾根上にあると思われるテン場に居られる方々や
設営済みのテント数張りがはっきりと見える距離だ。

 この時は充実感と疲労感が入り混じった何ともいえない思いだった。
燕山荘からの長かった、(自己都合で余計に長くした区間もあるが)、充実感たっぷりの行程の余韻に浸りつつ、
ヒュッテ西岳へ向けて緩い下りの山腹道を歩いていく。








14:18 ヒュッテ西岳(2,680m+)到着 長くても本当に楽しい道のりだった。表銀座は最高です!

 西岳へ登るトラックとの分岐を見送って、更に東鎌尾根へと続くトラックを捨てて、遂にヒュッテ西岳に到着!!
やはり脚はけっこう疲れていたので、最後まで慎重に足を運んでヒュッテ西岳の入り口までゆっくりと降りていく。

 下りたところがすぐにヒュッテの受付となっていて、さっそくテン場利用の手続きを行う。

 テント泊:500円 (一人につき)
 
 水1L:200円。トイレ1回:100円




 水や土産などは後ほど散策ついでに購入するとして、まずは今日の落ち着き先を設営しよう。
山小屋は支尾根の付け根に位置しており、その奥の支尾根上にテン場のスペースが散在しているようだ。
基本的にテン場の地面は土、目安として30張程度設営可能な模様。
多少景観は悪いが風からは守られるところ、風が心配だけど景観抜群なところがある。
風から守られ、しかも水平なところは限られそうだ。どこに張ろうかな〜とゆっくり見て回っていく。




 きっちりと区画整理された燕山荘のテン場と比べると、ワイルドなヒュッテ西岳のテン場。
山小屋に近いところに風から守られて水平なところもあったが既に設営済みのテントで埋まっていて、自然に支尾根の奥のほうへと視野を広げた。
ちょっとだけ斜めになってるけどこれくらいなら許容範囲内で、快適に過ごせそうなところを見出す。
風に備えてペグもしっかり打ち込んで、大きな石を集めてきてしっかり張綱もテンションを掛けて固定する。








微妙に斜めにはなっているが、ハイマツを防風林代わりに、且つ展望良好な場所に設営








テン場の最奥に位置しているため静かな環境。山小屋そばのトイレが遠いのと、そこまで多少アップダウンがあるのが欠点か








   
テントの前室方向には常念山脈の大パノラマ。ベンチにぴったりの岩まであって至れり尽くせり。 南側には大キレットの向こうに穂高連峰。奥穂はいつかはリトライしないといけないところだ。 

 テントから出れば本当に展望抜群のテン場だ。槍・穂高、近くの西岳、そして東側には常念山脈。

 元々はテント設営後は西岳に登るつもりであったが、脚にかなりの疲労を感じていたこともあって止めておいた。
明日3日目は東鎌尾根の大きな登りが控えており、出来るだけテン場でゆっくり過ごして英気を養っておきたかった。
また、今日の表銀座の行程で十二分に展望を楽しんできており、今の時間から西岳に登っても槍は逆行気味でシルエット。
穂高や常念山脈はテン場からでも十分に眺望を得られたこともある。またいつの日か余裕のある時に西岳に登りたい。




 テントを設営してちょっと一息入れてから、テン場も含めて山小屋周辺の散策に出掛けた。
この時に山バッジなどの土産物や、水などの必需品の購入を忘れずに済ませておく。








ヒュッテ西岳 いよいよ明日はここから槍へ向かうことに! 

 ヒュッテ西岳は表銀座縦走において、非常に重要な存在の山小屋。
前夜宿泊した燕山荘とは対照的に静かな雰囲気に包まれた、本来の素朴な山小屋らしい山小屋だ。
購入はしなかったが、トマトが販売されていたのが印象的。

 山小屋の受付の向かいにトイレがある。
トイレ入り口に料金箱があって、利用の都度100円を支払う仕組みだ。

 山小屋受付に掲示されている天気予報を確認するが、大天荘で見たのと情報が変わっていない。
明日は基本的には天候は下り坂であるとみて、ご来光を拝むよりも早めに出発することを優先しよう。
日の出前の薄明るい頃の出発を見込んで、今のうちに槍ヶ岳へ向けてのトラックを再確認しておく。
 ヒュッテ西岳入り口前にある、槍ヶ岳を示す指導標の向こうには昨日から見続けてきた槍が待っている。




 散策や買い出しを済ませ、また休憩中にのどを潤すためのオレンジジュースも購入してテントに戻る。
水やポカリスェット(2日目からは粉末で作成)ばかり飲んでいては飽きる。
酒とは無縁の自分は大抵オレンジジュースを買うが、山歩きで疲れている時には甘い飲み物が本当に美味しく感じる。
山小屋料金のペットボトル飲料は高いがこれだけは必需品に入れても良いと思う。








槍・穂高の主稜線上に日が傾いてきた 常念山脈を眺めながらオレンジジュースを味わう。この時間はたまらなく良い!

 用事を済ませてから、夕食までの時間は周囲の山々と、山と高原地図や地形図を眺めながらゆったりと過ごした。
人によってはテント滞在中の時間を何よりも楽しみにしている方も居られるようだけど、自分もその類に入るほうかもしれない。
この時間を確保するためにも出来るだけ早発にこだわるのは大事と思う。
明日は日の出前に出発出来るよう、2時に起床することとして腕時計のアラームをセットしておく。
腕に付けたままだと腕時計のアラーム音に気付かないという事態も以前に経験しているので、寝ている間は腕時計は枕元に置いておく。








   
常念山脈に映る影槍 判断によっては本日の幕営地になっていた常念小屋。テン場は多くのテントで埋まっているのが見える。 

 テントから眺めていると、今回は槍を優先したが常念山脈も歩きたくなってきた。
近いうちに歩きたいアルプスリストに入れておきたい。
 常念山脈からはぜひ午前中の順光の時間に槍・穂高を眺めてみたいものだ。








   
17:40頃 穂高の主稜線に日が沈んでいく

 ここから見る常念岳はきれいに整った三角錐の美しい山で、かなり登行意欲を感じさせてくれる。




 日が陰っていく常念岳を見ながら夕食をとる。
穂高の主稜線の標高が高いので、本来の日没よりも相当早くに日が沈む感じだった。
食事については今回は軽量化という観点から、全て好日山荘やスーパーで仕入れたドライフード。
足りないと感じた場合は予備のスープや行動食を足して補った。

 夕食を済ませると縦走疲れもあって、まもなく眠くなってくる。
明日はいよいよ東鎌尾根を登って槍に到達する。
今日の表銀座の大展望と縦走の余韻に浸りつつ、19時前には早々にシュラフに入って眠りに就いた。








表銀座縦走(後半)東鎌尾根を経て、遂に槍に到達する3日目に続く

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