「表銀座縦走3日目・東鎌尾根を経て槍ヶ岳」 2013年 9月22日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「槍ヶ岳」


山と高原地図
 : 「槍ヶ岳・穂高岳・上高地 北アルプス」





 2:30 起床

 テントから外をのぞいてみると、月明かりのきれいな夜空。
無風でとても静かな夜だった。
天気は予報通りにまだ崩れていないということでほっとした。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)












 5:17 ヒュッテ西岳出発

 常念岳越しに東の空が明るくなってくる頃、出発準備を終えていよいよヒュッテ西岳を出発。
出来ればご来光も見たいけど、今日は天気が崩れないうちに東鎌尾根を踏破して槍へ到達しなければならない。

 東鎌尾根の本格的な登りが始まる水俣乗越までは、激下りの連続となるもどかしい区間だ。
ヒュッテ西岳は標高が2,680m+あるが、水俣乗越は2,470m+。
槍への大きな登りを前にして、200mも標高を下げなければならない。
しかもハシゴまである激下りで最初から気が抜けない行程だ。








モルゲンロートの槍

 水俣乗越に向けて西岳直下の山腹道を下っていると、段々と行く手の槍が赤くなってくる。
間近で見る槍のモルゲンロートは神々しいものだった!

 昨日よりはやや雲が多くて、天候も下り坂なのが気がかりだ。
効率良く撮影を済ませて先を急ごう。








水俣乗越に向けて険しい下りが始まる

 西岳南西側斜面に付けられた山腹道を下っていくが、次第に切り立った崖沿いを通るようになってくる。
写真の箇所では鎖まで設置されている。行く手の槍に目を奪われるが、足元の安全確認を怠れないところだ。
 でも朝日に照らされた槍は本当に美しくて、早く到達したいという思いでいっぱいになる。

 でも当面の目的地の水俣乗越はまだまだ遥か眼下にある。








長いハシゴの連続で激下り

 思わず息をのむような高度感溢れる光景。
長いハシゴなど普段の山行ではあまり見られないものなので目新しかった。
写真では分かりにくいが先行の登山者が眼下に小さく見えている。

 トレッキングポールは出来ればザックに収納したいが、片手にまとめて持って後ろ向きになって下っていく。

 ハシゴを下りきっても、大小の石が転がる足場の悪い下りが続く。
東鎌尾根の前にめちゃくちゃ下るなあというのが正直な感想だった。








 6:01 「ニセ乗越」(2,480m+)

 だいぶ下ってきてコル状のようなところに降り立つが、まだ水俣乗越は少し先。
ここが「ニセ乗越」かなと読図した。
コルの周辺は崩壊が進んで切り立った崖状の痩せ尾根。

 水俣乗越とはもうあまり標高差はないが、その前に前方のミニピークを登り返さなければならない。








 6:26 水俣乗越(2,470m+)到着

 ミニピークからの最後の激下りを経てようやく水俣乗越に到着。
自分が到着する直前、全員ヘルメット装着の5、6人のパーティーが前方の東鎌尾根に取付き始めたところだった。

 山と高原地図によるとヒュッテ西岳からここまでの標準所要時間は1時間。
撮影回数は少なめとはいえ、自分にしては慎重に下ったためかやや時間オーバー。

 いよいよここから待望の東鎌尾根に取付くが、その前に一旦ザックを下ろして行動食をとっていく。
その間にも数人の登山者がちらほらと水俣乗越を通過していく。
自分と同じく西岳方面から下ってこられた方が多いが、あえて東鎌尾根を通過するために槍沢から登られてきている方も見られる。




 6:38 水俣乗越出発

 水俣乗越の北側の急斜面に付けられた登山道へ取付く。
東鎌尾根はいきなりの急坂で始まった。








 6:48 再び槍が見えてくる

 最初の激登りを経て尾根上に出てくると、一旦落ち着いて歩きやすい尾根道となった。
そして周囲の景観が再び開けてきて、これから登っていく東鎌尾根とその行く手に槍が迫力ある姿で見えてくる!
尾根上にはいくつかのピークが連なっているが、とりあえず2,595m+ピークまでの登りが第一関門のようだ。








 6:54 「第1展望台」(2,540m+)

 急登のイメージが強い東鎌尾根だが、小刻みにアップダウンがあったり、
歩きやすい水平区間があったりする。
このミニピーク状の2,540m+は「第一展望台」ということで、展望抜群の居心地良い岩場。
小休止に最適なところだが、水俣乗越から歩き始めてあまり時間が経っていないので先を急ぐ。
「第一展望台」からは前方の2,595mピークまでの登りがかなり目立って見える。








 7:09 2,595mピーク

 「第一展望台」から一登りで2,595mピークに到着。
手前では丸太階段が組まれており、悠々とピークに到達出来る。
振り返ると昨日からテントを張っていた、ヒュッテ西岳のテン場のある平らな尾根の形状がよく分かる。
また西岳から西側のアップダウンの険しさも一目瞭然。
昨日まで歩いていた伸びやかな尾根とは全く様相が異なることが改めて実感出来る。








 7:13 「窓」へ急降下

 2,595mピークからは前方の2,690m+ピークと、それに向けて右手から回り込む切れ落ちた尾根が目に飛び込んでくる。
この回り込む尾根は「第2展望台」となっているようだ。
そして槍がまた一段と近くなってきて、本当にワクワクしてくる。

 息を整えてピークから先へと進むと、短い丸太階段があって再び下降が始まる。
前方の「第2展望台」の尾根に目を奪われたが、その前に「窓」といわれるコルを挟んだアップダウンを越えなければいけない。








「窓」を見下ろす

 短い丸太階段を降りると、今度は殆ど垂直に近い崖に掛けられた長い2本のハシゴ。
先ほどの西岳からの急降下時にもあったが、こちらのほうが高度感たっぷり。
また後ろ向きになって慎重に降りる。
 この辺りが東鎌尾根で最もスリリングなところではないだろうか。
このハシゴは雨で濡れていたら滑りやすそうだ。








 7:24 「第2展望台」(2,610m+)

 「窓」から登り返して「第2展望台」となっている尾根を通過。
槍をはじめとして、本当に展望抜群で居心地の良いところ。
ここでは水俣乗越で先行していたパーティーが休憩中だった。
自分ももう少しここでゆっくりしたかったが、今回は続けて先へと進むことにする。

 2,690m+ピークまでの登りもけっこう険しいが、やはり表銀座の一区間である尾根なので、
通過しやすいようにしっかりと整備されている。








 7:42 「第3展望台」(2,690m+)

 2,690m+ピークを越えると再び前方に素晴らしい景観が広がってくる。
ここが「第3展望台」とされているところで、更に大きくなった槍を見上げることが出来る。
緑一色ではなく、段々と色づいてきている東鎌尾根と槍の組み合わせが印象的だった。
付近は少し広がった地形になっており、万一の場合にはテントを張ってビバークも可能なように見える。

 水俣乗越から休んでいなかったので、ここでザックを下ろして小休止をとった。








槍と北鎌尾根の雄姿 「第3展望台」より

 一昨日から感動の連続だったけど、ここでももう言葉にならないくらい!
槍の肩には槍ヶ岳山荘もはっきりと見えるようになってきた!
また「第3展望台」からは槍だけではなく周囲の展望ももちろん楽しめる。




 小休止と槍などの大展望を楽しんで、息を整えてから「第3展望台」を出発。
だいぶ登ってきた感はあるが、槍の肩までの距離でいえばまだ道半ばだ。








 7:57 ヒュッテ大槍まであと40分

 「第3展望台」から一登りで、再び馬の背状のようなところを通過。
ここは特に名前が付いていないようだが、腰を下ろすに適した岩場が広がって休憩しやすいところ。
周囲の景観を楽しみながら、数分程度滞在して息を整える。
ここには“ヒュッテ大槍まであと40分”の道標が立っており、大いに元気付けられる。

 この辺りより下り中の方々とも多くすれ違うようになる。
皆さん早朝のうちに絶景の穂先に立たれ、とても感動されたよう。
自分もこの後、ガスっていない状態で穂先に立てればいいのだが。




 この後、尾根からやや北側に外れてガレ状の登りとなる。
ヒュッテ大槍が近づいてきているようだが、東鎌尾根はまだまだ気を抜けない。








東鎌尾根中盤の登り

 一部足場が悪いところもあるが、序盤の激しいアップダウンに比べるとやや落ち着いた感のある尾根になってくる。
ヒュッテ大槍から一段下の等高線が広がっている辺りに差し掛かったと思われる。








間近に迫ってきた穂高の主稜線

 槍から前穂に至るまでの穂高の主稜線がいつの間にかだいぶ近づいてきている。
自分としてはガスってしまった8月の奥穂の記憶が強いが、今回はきれいな姿を見せてくれた。
但し飛騨側から刷毛で履いたような薄い雲が徐々に広がってきているのが気にかかる。
何とか視界がクリアな間に槍に到達しなければならない。








 8:32 さあ、残り  で ヒュッテ大槍

 降りてくる方からもヒュッテ大槍はもうすぐそこと元気付けられた頃、再び道標が現れる。
ちょっと薄くて字が読めなくなっているが、あとの状況からすると“残り3分”といったところだっただろう。

 この道標が現れて間もなく、尾根は広がって2,884mピークに乗っかる。
道なりに尾根の南側へ進んだところにヒュッテ大槍が建っている。








 8:36 ヒュッテ大槍到着

 東鎌尾根直上からやや南側にあるヒュッテ大槍に到着!
水俣乗越からヒュッテ大槍までの標準所要時間は2時間10分。
今回の自分の場合は1時間58分。
今日の主題の東鎌尾根を通過するにあたって撮影回数を減らしたつもりはないのだが、思ったよりも早いペースで辿り着いたといえる。

 ここヒュッテ大槍は周辺の山小屋の中で最も槍の展望が素晴らしいということだが、なるほどと納得できる景観だった。
でもそれはともかく、槍を眼前にしてはここでのんびりしてはいられない。
軽く息を整えたらすぐに出発する。でも気合を入れて小屋横のトラックを通って
槍のほうへ向かうとすぐにまた更に感動するスポットがあった!








大迫力の槍の穂先 ヒュッテ大槍裏より

 山小屋の後ろへと回り込むと、そこは遮るものなく槍の雄姿を堪能出来る展望台だった!
見事過ぎる三角錐の穂先の全貌を眺め、あまりのカッコよさにただただ見とれるばかりだった。
感動のあまり東鎌尾根を登ってきた疲れも吹き飛ぶようだった。
 居合わせた方々も同じ思いで、お互いに記念写真を撮り合って槍の眺めを楽しんだ。




 8:45 ヒュッテ大槍出発

 ここから槍ヶ岳山荘までの標準所要時間は50分。
急坂といえるようなところはなく、殆ど穏やかな登りのようだ。








 9:01 殺生ヒュッテへの分岐を見送る

 ヒュッテ大槍からしばらく緩やかな山腹道を登っていくと、殺生ヒュッテの直上に差し掛かる。
分岐からは随分標高差があるように見えるが、実際は60mほどのようだ。
殺生ヒュッテの向こうには、槍沢から登ってくるトラックと多くの登山者をはっきり見ることが出来る。








更に近づく穂先

 既に形状の細かいところまで観察出来る距離まで来た。
近づいてきて更に迫力が増すようだ。
穂先の左手には先行の登山者が見える。








 9:18 穂先の基部を回り込んでいく

 これまで穂先へ向かっていたのが、槍の肩へ向けてトラバースに入った。
空模様はやや白い雲が目立ってきたが、どうやら自分の到着まで天気はもってくれそうだ。
トラバース区間の一部には階段もあったが、概ね緩やかな登りが続く。








穂先を右手に見上げながら遂に槍の肩へ

 槍の肩に建つ槍ヶ岳山荘と、その前のテラスに居る人々まではっきりと見えるようになってきた。
自分のように登り中の登山者も多いが、意外にも下り中の方々もかなり多かった。
この写真も少し立ち止まって、タイミングを見計らって撮影している。
比較的静かな山行が続いた表銀座だったが、槍も間近になって3連休の賑やかな雰囲気を味わうことになった。




 槍ヶ岳山荘のすぐ下で槍沢から登ってくるトラックと合流。
そして槍ヶ岳山荘のテラスへと続く最後の階段道を登っていく。








 9:40 槍ヶ岳山荘(3,090m+)到着!!

 遂に多くの登山者で賑わう槍ヶ岳山荘に到着した!
中房温泉から表銀座を歩き始めて3日目。しかも難しい天候判断を経て到着しただけに感慨深いものがあった。
ヒュッテ大槍から槍ヶ岳山荘までの標準所要時間は50分。
自分の場合は55分だが、これは撮影のために他の人の流れが途切れるのを待ったためだろう。


 すぐさま穂先へと向かいたいが、とりあえずテントの設営が最優先だ。
槍ヶ岳山荘の受付にて手続きを済ませて許可証を受け取る。テン場は山荘南側の尾根上に展開している。
各サイトには個別の記号が付けられていて山荘のスタッフの方が、パーティーの内容などを確認して最適なサイトへ割り振ってくれる。
自分の場合は単独行で軽いからと、風から守られる岩場に囲まれたところを指定してくれた。

   テント泊:700円 (一人につき)
 
 水1L:200円。トイレはテン場近くにあり、使用料は幕営料に込みとなっている。








槍ヶ岳山荘テン場にて設営完了したマイテント テン場の岩場からの景観。長大な槍沢が見事。

 若干スペースが狭かったが、張綱の角度を調整したりしてどうにか設営を済ませた。
それと地面が若干斜めになっているが、自分の場合は許容範囲内だった。




 テントからは穂先の全貌を眺めることが出来るのだが、槍の肩近くにまで伸びる渋滞の列を見てちょっと躊躇してしまう。
折も折、東鎌尾根を登っている最中は何とかもってくれた天候だったが、どうやら予報通りに曇天になってきたようだ。
とはいえ、テントを設営してしまえばヒマ人になる。明日は再び好天の予報は出ているが、これも絶対大丈夫といえるものではない。
時間もたっぷりあるということで、とりあえず渋滞をおしてでも穂先へ登っておくべきだろうと決めた。

 テントにてピークアタック用の20Lザックに必要な装備を入れ替えて出発する。
テン場から槍ヶ岳山荘前のテラスを横切って穂先へ向かう。




11:10 槍の穂先へ取付く

 自分が登り始めた時点では穂先の麓辺りまでは渋滞はなかった。
結論から先にいうと、この後時間を追うごとに渋滞は伸びて、最終的には麓のヘリポート近くまで渋滞が伸びることになる。
テントを張り終えたら、曇天だろうがいくら渋滞していようが迷わずに取付き始めるとベターだった。








渋滞が続く槍ヶ岳山頂へのルート(区間により登り専用、下り専用とに分かれる)

 標準所要時間では登り30分、下り30分となっているが、連休などの混雑時には間違いなくオーバーする。
槍の肩から山頂までの標高差は約100mだが、混雑時は普段ありえないペースで登ることになる。
言い換えれば立ち止まっている時間のほうが圧倒的に長い。
自分が驚いたのは手ぶらで登っている方がよく目についたことで、やはりのどの渇きや体の冷えを覚えられた方が多いようだった。
槍へのピークアタックは想像以上に長丁場となるので、飲料水や防寒着などはしっかりと用意するべきだろう。
ところで穂先のルートは急峻とはいえしっかりと整備されており、自分としては楽しいアスレチックのようなところだった。

 渋滞を生じさせているのは、やはり一人ずつしか通れないハシゴなどの箇所の通過だった。
とはいえ、鋭く尖った槍の山頂は当然狭いので、自然に人数が制限されて好都合のように思った。




12:40 槍ヶ岳山頂(3,180m)到着

 取付き始めてから、標高差100mの穂先を登るのになんと1時間30分もかかった。
その間にも段々と雲行きが怪しくなり、どうにか時折は切れる雲間から周囲の景観が見える程度。
それでも、自分にとって初登頂の槍に立った時には本当に感動した。








槍ヶ岳山頂(3,180m)

 槍からは天気が良ければ本当に360度の大展望!!
中房温泉からの長い山旅を経ての登頂なだけに心底感動出来た。
しかしこの初登頂時にはあいにく雲が掛かってきて、写真写りとしてはもう一つ。
但し好天が予想される明日朝にもう1回槍に登頂する予定であり、
山頂での写真は4日目のレポにて重点的に掲載させていただきたいと思います。

 山頂に至るまでのルートも大渋滞だったが、山頂でも自然に人の列が発生する。
槍の祠での記念写真待ちの列、そして下りを待つ列。
それらの列に加わらなければ、ある程度好きに山頂内を移動・滞在出来た。
その空間を利用して、心行くまで雲間から見える景観を楽しんだ。

 また、山頂の真ん中辺りにある三角点に興味を持つ人は意外に少なそうだった。




13:10 槍ヶ岳山頂出発

 下り待ちの列に加わって、ハシゴから始まる急降下を開始。
自分が下っていると、登りの渋滞が取付きの辺りまで伸びているのに気付いて驚いた。
昼前出発でも所要1時間30分だったが、この調子だと2時間はかかりそうな勢いだった。
やはりここでも早立ちが大事だと改めて思った。

 下りは基本的に立ち止まることなく、サクサクと調子良く降りることが出来た。
登りでは1時間30分掛かったが、下りはたったの20分。




13:30 槍ヶ岳山荘へ下りてくる

 穂先での天候はイマイチとなったけど、明日は日の出前に取付くつもりだったので良い下見にもなった。
とはいえ、渋滞を乗り越えての槍の登頂でやはり疲れていたので、テントに戻って骨休めすることにしよう。

 山荘の玄関前を通りかかると、テン場が満杯の看板が出ていた!槍の人気の高さがここでも納得できる。
もしここでテントを張れないとなると、最寄りは殺生ヒュッテのテン場となる。








大渋滞中の穂先を見ながら、テントでのんびりする

 自分もよくぞ並んだなあと変なことで達成感を味わう。
それはともかく、外で眺めていると曇りで日が射さないので寒くなってきた。
やはり数日前からの日曜の微妙な天気予報は大筋では当たっていたと解釈出来る。
でも肝心の東鎌尾根での行動時間は好天のうちに過ごせたのは幸運だったと思う。








夕刻近くなってきて、時には青空も見えてくる

 青空が見えてくるともう一度穂先へ取付きたくなったが、相変わらず長く伸びる渋滞の列がそれを思い留まらせてくれた。
好天を狙う再登頂は明日朝に賭けることにした。

 この頃、絶え間なくヘリコプターの音が聞こえてくるようになる。
稜線上の雲が切れるのを待って着地しようと試みていたようだった。

 後で聞いた話では、穂先で下り中に落石を避けようとしての滑落事故があったらしい。
頭から落ちたようで、意識はあるもののかなりの出血だった模様。
この日は結局ヘリは着地出来ず、翌朝になって再びやってきたヘリで搬送されたと聞いた。

 翌朝、再登頂の後で下っている時に、この事故のものと思われる血痕が付いている岩に気付いた。
山では油断大敵であるということと、事故は他人事ではないことを改めて実感させられた一件だった。








 夕食前に槍ヶ岳山荘に水などの買い出しに出掛けた。
テン場から山荘まではちょっとだけ登りがあるが、それでもここはまだ近いほうだと思う。
途中にはトイレもあるし、たいへん居心地が良いキャンプ指定地だった。








夕闇迫る槍ヶ岳山荘








宿泊受付待ちで大賑わいの受付

 この日はどれだけの方が泊まっていたのだろう。
ちなみに水は受付のすぐ横で購入出来る。








目移りする槍ヶ岳山荘売店

 もちろん定番の山バッジを購入。
ついでに槍のテレカを買って、玄関横の公衆電話で3日ぶりに自宅に連絡しておく。
今回の山行では少しでも軽量化したいと、携帯電話を持ってこなかった。
奥穂に登った時に気付いたが携帯を持っていても殆ど通じないし、もう一つの使い道であった目覚ましは腕時計でも代用可能だ。








テン場より西の飛騨側の景観

 稜線上は雲に巻かれた時間が長かったが、雲間からうっすらと笠ヶ岳の稜線が見えてきた!
明日は再び「晴れ時々曇り」と好天予報が出ているのを裏付けるように、近くの雲の向こうは青空が広がっている。








笠ヶ岳遠望

 ラピュタを包んでいたような雲がすっと流れ、笠ヶ岳の長大な稜線が見えてくる。
昼間も曇天の下で見えていた笠ヶ岳だったが、この雲が切れた時の姿がより壮観に感じてすごく惹かれた。
そして3,000m超の標高に居ることを改めて実感させられる雄大な景観だった。

 笠ヶ岳を眺めていると、明日はいよいよ下山して現実世界へ戻るということを思い起こさせられる。
残すところあと1日の行程のみとなり、何だかちょっと寂しい気にさせられてしまった。
明日はあの笠ヶ岳の懐へ飛び込むように、飛騨沢を経由して新穂高温泉への大下りが待っている。

 とはいえ下山を始める前に明日朝、槍への再登頂という楽しみな行程も控えている。
雄大で静かな自然を満喫出来そうな飛騨沢を下るのにも大いに期待に胸を膨らませて、
今回の行程で最後となるテントでの夜を過ごすことにしよう。








槍ヶ岳から新穂高温泉へ一気に下る4日目に続く

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