「表銀座縦走最終日・槍ヶ岳から新穂高温泉へ下山」 2013年 9月23日(月)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「槍ヶ岳」


山と高原地図
 : 「槍ヶ岳・穂高岳・上高地 北アルプス」




 2:00頃 起床

 テントから顔を出してみると、昨夜同様きれいな月夜!
昨日午後に稜線を覆っていた雲は消え去っていた。これは楽しい行程最終日になりそうだ♪

 最終日は標準所要時間6時間20分の新穂高温泉への大下りを残している。
この行程に支障を来たさないよう、渋滞が発生する前に槍に再登頂し、
準備万端の状態でご来光を待たなければならない。
 ということで時間を逆算して2時に起床し、朝食を摂ってテントを撤収して出発準備を整える。




 4:20頃 身支度を整えてテン場を出発。槍ヶ岳山荘前にて75Lザックをデポ。

 自分がまだテントに居る頃から、穂先にはヘッドライトの灯りがいくつも見えた。
日の出の時間までまだ1時間以上あるが、やはり行動が早い人は早い。
穂先へは昨日と同様に20Lアタックザック装備で取付く。

 夜明け前の穂先のルートは僅かに流れが悪くなったところもあったが、早発のおかげで殆ど渋滞無しだった。
初めてであればちょっと心許ないところだっただろうけど、穂先は昨日1度既に登っている。
ヘッドライトの灯りが頼りの状態でも順調に登っていった。




 5:10頃 槍ヶ岳山頂に再登頂

 山頂では既に多くの方がご来光待ちや記念写真を撮ったりして過ごしていた。
記念写真スポットの祠からは最も離れるが、落ち着いてご来光を撮影出来そうな東鎌尾根寄りに待機する。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)





 

降り口のハシゴ付近より槍ヶ岳山荘を見下ろす

 穂先のルートにはヘッドライトの灯りの列。山荘前のテラスでは多くの登山者が集結中。
穂先での渋滞を回避するためには、何としてでも早発しなければならない。








次第に薄明るくなってくる槍ヶ岳山頂

 祠では既に記念写真の撮影会が始まっている。
元々気温が低いうえに、行動を停止すると一気に寒くなってくる。
ダウンジャケットをはじめとして、何枚も重ね着したがそれでも寒い。防寒対策は万全に!








 5:40 常念山脈越しにご来光が見え始める!

 昨日は好展望のヒュッテ西岳のテン場に居ながらも、早発を優先して見ていないご来光。
槍の頂から見るご来光は更に特別な意味を持つ気がする。下界は見渡す限り見事な雲海に包まれている。








表銀座縦走で歩いてきた山々を見渡す 昨日登ってきた東鎌尾根にも朝日が照らされる 

 昨日は雲間から何とか垣間見た感じだったが、今朝は期待通りに完璧にクリアな大展望だ!!
槍からの展望は本当に感動もの。本当に最高だった。
 一昨日から歩いてきた燕岳をはじめとして、表銀座の稜線と山々を達成感と共に眺める。
見渡している間にも次第に昇ってくる朝日。刻一刻と山々の色が変わっていくこの時間が何ともいえない。








モルゲンロートの東鎌、槍沢、そして穂高連峰 穂高の主稜線上の山々 

 本当にどの方角を向いても感動出来る。
自分はまだ穂高の主稜線は奥穂近辺のごく一部をガスった状態で歩いたに過ぎない状態。
近い将来、ぜひ穂高連峰の主稜線を歩いてみたいと強く思った。
 またヒュッテ大槍か殺生ヒュッテ辺りから、モルゲンロートの槍を間近で見てみたいとも感じる。








槍ヶ岳山頂にて

 これだけ好天の槍の頂に立つことが出来たのだから、昨日の曇りの分は取り返して余りあるほどの充実感だ!
それと絶景を堪能するだけではなく、列に並んで記念写真を撮り合いするのを忘れないようにしよう。








笠ヶ岳と影槍

 誰彼ともなしに西側に見える影槍に気付いて歓声が上がる。
あの尖った影は間違いようがないし目立つ。しかも笠ヶ岳の稜線を飛び越して、西側の雲海に映っている!
影槍にも目を奪われたが、これだけ見事な山容を魅せてくれる笠ヶ岳に強く心が惹かれるのは自然の成り行きだったかもしれない。
この表銀座縦走から3週間後に、早くも笠ヶ岳登頂も実現することになろうとはこの時は知る由もない。








裏銀座の山々

 自分としてはまだまだ勉強が必要な山域であり、近くで同定されている方の説明を聞いて把握出来た。
黒部五郎岳がその名前の通りに黒っぽく見えるのは偶然なのだろうか。

 樅沢岳の後ろに入っていてここからは見えないが、双六小屋まではこの3週間後に踏破することになる。
この山域も来夏以降もっと入っていきたいし、いずれは裏銀座縦走も実現させたい。








シルエットの表銀座 人々の行列に埋もれる「鎗ヶ岳」三角点 

 段々と日が高くなって、モルゲンロートから昼間の色合いになってきた。
こうなることは予め予想は出来たけど、ついつい山頂で長居してしまったようだ。
新穂高温泉への大下りという行程も控えているし、本当に立ち去り難い思いがいっぱいではあるけど、槍ヶ岳山頂を後にすることにしよう。

 穂先の下りは一緒に記念写真を撮り合った単独行の男性と同じタイミングで下りることになった。
岡山から来られたということで岡山の那岐山や後山などの話をしながらの下りとなる。
ちなみにこちらの方もテント泊だが撤収はこれからで、この後は槍沢を経由して上高地へ降りられるという。
自分は8月の奥穂ピストンの際に上高地〜横尾を往復歩いており、当分はこちらを通過するのは避けたいという思いを伝える。
上高地へ下山するほうが、その後の交通事情は新穂高よりも好都合ではあるのだが・・。








 6:24 槍ヶ岳山頂出発、穂先下降開始

 昨日同様、下山の列に加わって下降開始。
まるで昨日のVTRを見ているように、いつの間にか槍の肩近くにまで登りの渋滞が発生しているのを見て驚いた。
自分がもしこの渋滞に巻き込まれていたら、今日の行程に重大な支障が生じただろう。
しかし今日は下りるほうもいろんなペースの方に合わせなければならないので流れが遅かった。
でも一つ間違えば、昨日のように事故が発生する可能性があるところなので、
槍の肩に降り立つまでは無理な行動は慎むべきだろう。








槍の肩に降り立つヘリ

 後で聞いた話では、昨日の滑落事故による負傷者がこのタイミングで搬送されたよう。
穂先での事故の話は自分が下りる飛騨沢ルートでも話題になっていた。
穂先は整備されているとはいえ、気を抜いてはいけないという警鐘にはなると思う。




 7:00頃 槍ヶ岳山荘到着

 昨日よりはだいぶ時間が掛かって槍ヶ岳山荘に到着。
これからテントを撤収する単独行の方とお別れし、山荘前にてデポしていた75Lザックへ装備を切り替えて下山準備を整える。








 7:14 槍ヶ岳山荘出発

 快晴の空の下、そそり立つ槍の穂先は本当に美しい!
名残惜しいという思いももちろんあるが、素晴らしいご来光と景観を充分に堪能出来た。
間近の槍にお別れしていよいよ出発しよう。




 飛騨沢コースによる新穂高への下りは標高差約2,000m、標準所要時間は6時間25分。
下山地の新穂高温泉からのバス時刻表はもちろん調べてあるが、この時点では第1候補の13:46の便に間に合わせるのは難しいと判断した。
次の14:55の便に照準を定めて、飛騨沢コースを満喫しつつ下っていくことにする。

 主稜線上のトラックを道なりに南下してテン場を横切っていると、先ほどの単独行の方がテントを撤収中。
改めてご挨拶して再び南下。
 トラック沿いのこちらのテン場は風当たりは強そうだが、大喰岳方面の稜線の景観が抜群だった。








 7:23 飛騨乗越(3,010m+)

 主稜線上を一下りで飛騨乗越に到着。
行く手には堂々とした大喰岳がド迫力で、この後飛騨沢を下るのが惜しい気がした。
でも穂高への主稜線の続きを歩くのは、またの楽しみにおいておこう。

 飛騨乗越は日本一標高の高い峠ということで、ここも絶景に囲まれている。
でも稜線東の信濃側にはルートが無く、実質的にはT字路になっている。








飛騨乗越から最後に穂先を見上げる

 少し手前の斜面に隠れ気味ではあるが、今回の行程で穂先を見上げる最後の機会だった。
好天の朝に登らせてもらって槍に感謝の念を捧げた。
また飛騨乗越は槍沢の景観も素晴らしく、中でもいずれは殺生ヒュッテのテン場でもテントを張ってみたいと感じた。

 出発してまだ間もなく全く疲れていないので、そのまま飛騨沢へ向けて下降を開始することにする。








笠ヶ岳の展望が素晴らしい飛騨沢最上部

 飛騨乗越から飛騨沢へ入ると、ガレた斜面にジグザグに付けられたトラックを下っていくようになる。
前方には笠ヶ岳の展望が見事だが、浮石を踏まないよう注意したい。

 飛騨沢は広大で急傾斜のガレ場の大斜面が壮観だった。
まだ日が射し込まない薄暗い時間帯を下ったが、これが日が当たっている時間帯であれば、
飛騨沢の雰囲気はまた違うものになっていたかもしれない。

 槍ヶ岳山荘から次の目標地点の千丈分岐点までは1時間20分の下り。
本当に延々と大斜面の中をジグザグに下っていく。
登りだと2時間30分と大きく違う標準所要時間を裏付けるように、すれ違う登りの方々は辛そう。
一方、自分は下りは得意なほうだと思うけど、長丁場に備えていつもよりはペースを抑えめに歩いた。
それでも何度か道を譲っていただいたり、また上には上がいるという言葉通りに自分よりもずっと早い方も。
撮影するにしてもずっと同じような景観が続くし、ここは前後の方々に気を配りつつ下ることに集中することにした。








 8:09 千丈分岐点(2,540m+)

 標準所要時間よりずっと早く千丈分岐点に到着。
歩いている最中はあまり自覚はなかったが、やはり下りは体へ負担がかかるようだ。
分岐点での撮影も兼ねて、一旦ザックを下ろして小休止をとっていく。

 ここまでで稜線から早くも500mくらい標高を下げた。
周囲は大草原が広がって、また西鎌尾根などに囲まれていてまるで別天地のよう。
また、標高の目安になっている笠ヶ岳の稜線のほうが既に高くなっていることで、行程の進み具合を推し量ることも出来る。








西鎌尾根へ向かうことも出来る 槍平小屋のご厚意で設置されている救急箱 

 分岐点は小休止をとるには好適なポイントだった。
滞在している間にも続々と下られてくるので、場所を空けるためにも程々に切り上げて出発しよう。








8:25 間もなく森林限界を下回る 飛騨沢越しに主稜線を見送る


 次第に周囲の木々が高くなってきて、そろそろ森の中に突入しそうだ。
別天地の飛騨沢上部の雰囲気を満喫出来るのも最後と思い、一旦撮影のためにザックを下ろすことにした。

 下りてきた方向を振り返ると、日が当たり始めた大草原の向こうには槍から穂高へ続く主稜線が見える。
すると早くも雲が上がってきているので驚いた。
天候が崩れそうな雲ではないようだけど、今日は随分雲が上がってくるのが早い!




 この後は延々と森歩きとなって、槍平小屋を目指していく。
森林限界を下回ったことで、段々と普段の山行の雰囲気に近いものになってきた。








中崎尾根、そして笠ヶ岳の稜線を眺める

 森林限界を下回った頃、前方に中崎尾根を眺めながら歩く区間となる。
後方の笠ヶ岳へ向かう稜線にも惹かれるが、手前の中崎尾根も歩いてみたいなと思わせられる。

 撮影時にちょうど登りの方が通り掛かられとても驚かれる。
余計に登り下りが増えるけど、これは普段からやってる撮影法なんですよと説明する。
登りの方が気になる千丈分岐点、そして稜線までの所要時間などをお伝えして、しばし山談義を交わしてお別れする。




 飛騨沢コースは主稜線直下を除いて、全般的に急坂は少ない。
ということで下りでも思ったよりも体への負担は抑えられるかもしれない。
ちょうどこの辺りでは前方を歩いている方は居られず、自然にペースが速くなってしまった。








 8:58 最終水場

 小休止中だった方々と入れ替わるように最終水場に到着。
水はハイドレーションのパックに充分入っているが、思わず手を出してのどを潤す。
冷たくてとても美味しかった!

 「山と高原地図」にはこの水場の表示は無いが、もう一つ参考にしている「ヤマケイアルペンガイド7/槍・穂高連峰」には記載がある。
飛騨沢コースを歩く場合には、この水場の活用を考えても良いかもしれない。








 9:31 槍平小屋・キャンプ指定地(1,990m+)

 延々と続いた森が不意に途切れると、そこは槍平小屋のテン場だった!
すごい良い雰囲気。地面は平らだし、水も豊富のようだし、ここでテントを張る行程をいずれ組んでみたいと思う。

 テン場を横切るように中崎尾根にある奥丸山へのトラックが分岐している。
その分岐をやり過ごすと、トイレと水場があって、そして槍平小屋に到着する。








槍平小屋(1,980m+)

 小屋前のテラスで多くの登山者が憩う槍平小屋に到着。
くまさんが出迎えるところが山小屋の受付や売店の入り口となっている。
入口の両側には親切にもベンチまで置かれていて、有難く休憩していくことにした。

 延々と続く森歩きと、標高を下げて暑くなってきたので、冷たい炭酸飲料を小屋で調達。
ついでに槍平小屋の山バッジとお守りも購入した。

 ベンチ前に腰を下ろそうとすると、なんと槍でご一緒した岡山の単独行の方が到着される。
自分が飛騨沢を下るとお話したことで興味を持たれ、上高地へ下るはずだったのを計画変更されたという。
上高地へ下るのに比べて、だいぶワイルド感の強いルートだと同じ感想を持たれていた。
ちなみに車を回収しなければならない自分と違って、公共交通機関を利用されているということなので融通は利きそうだ。
下山後はとりあえず飛騨高山を目指すという。高山に出ればJR高山本線で岐阜、名古屋へ出られる。

 槍ヶ岳から槍平小屋までで標高差は1,100m。標準所要時間は2時間50分のところを2時間20分で踏破している。
撮影の頻度が森歩きで抑えられたこともあるが、やはり下りは行程の消化が早い。

 岡山の単独行の方のほうが先に出発され、自分も準備を整えてから後を追う格好となる。








 9:57 槍平小屋出発

 だいぶ下った感があるが、下げた標高差は1,100mなのでそれも当然だろう。
でも距離で見ると新穂高温泉までで1〜2割消化したに過ぎない。

 この後、実質的な山道の終点となる白出沢出合までは標準所要時間2時間。
そこからは長い長い右俣林道の下りが控えていてこれは1時間30分。
現状のペースからすると、第一候補の13:46のバスに間に合うかもしれない。
ということで、一旦は諦めていた第一候補のバスに再び照準を合わせることにした。




 槍平小屋からは再び深い森に入って、すぐに木道を通過。
あとはまた延々と森歩きとなる。同じくらいのタイミングで下り方向で歩いている方が多く、
立ち止まるたびに何度も同じ方と顔を合わせるような展開になる。








10:10 ガラガラの沢を渡る

 不意に森が途切れると、巨岩が転がる沢に出てくる。
一瞬、滝谷かと思ったけどそれは早過ぎだ。ただ右俣谷に合流する支谷の一つには違いないだろう。
一見するとどこを歩くのかという感じだが、マーキングはあるので順調に対岸に渡れる。
ただ大雨直後には渡渉が難しくなるかもしれない。




 森歩きの最中は撮影どころが難しく、またバスの時間も気に掛かったこともあって、
自然に今回は要所での撮影に絞る傾向になった。
またいつの日か登りでゆっくりとこの飛騨沢コースを歩いてみたいと強く思う。




 疲れの影響か、ほかに気を取られたのか、「藤木レリーフ」を気付かずに通過してしまう。
芦屋の高座の滝以外のところで、藤木さんにお目にかかるのがちょっとした楽しみだったのだが、
これも課題に残ることになった。








10:31 滝谷出合(1,760m+)

 槍平小屋以降、2つめの渡渉箇所に差し掛かる。
沢の上流側にはかなり巨大な滝(雄滝?)が見えている。おそらくここが滝谷だろうと見当が付いた。
ということは上方に見えている稜線は北穂辺りだが、既に稜線上は分厚い雲に覆われている。
穂先に居たほんの4時間ほど前までは快晴だったのに、本当に山の天気ほど変わりやすいものはないと改めて思う。

 それはともかくあの巨大な滝をもっと近くで観たいと思ったが、時間の都合もあるうえに、このガレ沢を歩くとしたら相当消耗しそうだ。

 壮観な滝谷と滝をチラ見した後は再び森歩き。
何だか途中に数か所ある渡渉箇所が見どころのようになってきた感じがする。








 森の中をかなり歩いた頃、前述の単独行の方がトラックの脇で休憩中のところに自分が追いついた。
いつ休もうかとダラダラ歩いていた感を持っていた頃合だったので、自分もザックを下ろして小休止をとることにした。

 雑談を交わしつつ現在位置を可能な限りの特定を試みる。
滝谷以降、小さな沢をいくつか横切ったことから、もう白出沢まで近いことが推測出来る。
白出沢まで辿り着ければ、新穂高温泉まで残り1時間30分の行程だ。
これらの情報をペース配分の参考にと単独行の方にお伝えする。
到着して間もない自分よりも先に単独男性の方が再び先に出発されるが、
新穂高温泉に辿り着くまでもう追いつくことはなくこのままお別れとなった。








11:40 白出沢出合(1,540m+)

 それまでずっと静かな山行だったのが、何やら工事中の重機と思われる音が聞こえてくる。
そしてトラック沿いの岩に埋め込まれた「白出沢」のプレートが目に入る。
行く手の森の向こうは明るいガレ場が広がっているのも見える。
白出沢に辿り着いたことで、今回の表銀座縦走において本格的な山道はここで終わりとなる。
白出沢に掛かる橋を渡る時は、ほっとした気持ちと山行の終わり間近という寂しさが混じった気持ちになった。

 作業中の重機の向こうには西穂高岳辺りの稜線が見える。
ちょっと雲をまとっていて、稜線上に居れば豪快な光景が見られただろうなと思う。

 白出沢は穂高岳山荘へ直登するコースがあるが、そのコースへの分岐は沢上ではなく、
少し新穂高温泉側へ林道を下ったところにあるようだ。

 渡渉したところが新穂高温泉から発する右俣林道の終点となっていて、ベンチやトイレまで設置されている。
多くの登山者が小休止中で、自分もザックを下ろして一休み。最後の所要1時間30分の林道歩きに備える。








白出沢出合・右俣林道終点 今回下ってきた飛騨沢コース、他に南岳新道、白出沢コースの略図。大雨後の増水にはいずれも要注意のコースだ。

 日向では随分暑く感じたことから、標高をだいぶ下げたことを実感する。
考えてみればここはもう自分にとってお馴染みの氷ノ山とほぼ同じくらいの標高だ。
新穂高温泉まで残る標高差は約400m。




11:46 白出沢出合・林道終点出発

 林道はトラックが行き交うことが出来るくらいの大通りの砂利道だ。
周囲は鬱蒼とした森に覆われて雰囲気は悪くない。人通りがそれほど多くないのも良い。
残す距離も4kmくらいで、上高地へ下りるよりはかなり林道歩きの負担は軽減される。
新穂高発で登りで歩いた場合は、ちょうど良いウォーミングアップになるのではないだろうか。
但し工事用車両が通過する可能性があるので要注意。(自分が歩いている時には通り掛からなかったが)




11:49 奥穂高岳登山口

 林道終点からまもなく白出沢コースへの分岐を通過。
8月に奥穂へ登った際に穂高岳山荘において、このコースの終点を見ている。
ガスで遠望は利かなかったが、それはそれは稜線上まで急峻な登りだった。
それを裏付けるように、白出沢コースはここから登り7時間。下りだと4時間30分。








右俣林道沿いで見かけた指導標

 雰囲気は良いとはいえ、やはり林道歩きは単調なもの。
それでもこのような指導標があるだけで何となく気が紛れる。




 行く手が明るくなってくると、西穂へ突き上げる大きな柳谷を通過。等高線をなぞるようにぐるっと大回りする。
数年前に土石流で被害が出たという沢で、林道もここだけは新しい舗装でしっかりと固められている。




 再び行く手が明るくなってくると、スキー場のようになだらかな斜面が広がる穂高牧場に差し掛かる。
でも放牧されている動物は見る限りではいないようだ。真夏以外は居ないのだろうか。








12:18 穂高平小屋(1,340m+)到着

 穂高牧場を過ぎて間もなく穂高平小屋に到着!
飛騨沢コースでは槍平小屋と並んで貴重な存在の山小屋だ。
遥かな稜線を背景に見上げる広い前庭はたいへん雰囲気が良い。
木陰にある石のベンチに腰を下ろして、下山までに最後となる小休止をとっていこう。

 穂高平小屋は基本的には素泊まりの山小屋だが食事もOK。
前庭ではテン泊も可能で、お風呂にも入れるというのが非常に魅力的だ。
時間があればここで前泊してから飛騨沢コースを登っていくのが理想の行程だと思う。




 山と高原地図を広げると、穂高平小屋は白出沢出合と新穂高温泉のほぼ中間辺りに位置する。
この区間の標準所要時間は1時間30分だから、ここから新穂高温泉まではもう1時間もかからないだろう。
ということで、13:46のバスにはまず間違いなく間に合いそうだ。








12:32 穂高平小屋出発

 山と高原地図に従い、ここから一旦林道を離れてショートカット道へ入っていく。
右俣林道の脇に指導標もあるので、見落としにくいと思う。








ショートカット道

 穂高平小屋を出発してしばらくの間は緩やかな下りの山腹道。
鬱蒼とした森歩きは長い林道歩きの合間の清涼剤のようで、思わず撮影せずにはいられなかった。

 今でこそ“ショートカット”となっているが、林道が通る前は新穂高から山道に入っていけたのではないだろうか。

 疲れからだろうか、地形図で見るよりもショートカット道は随分長く感じる。
まもなく右手下方には右俣林道が見えてくるが、ショートカット道はこの後激下りになっていく。
意外にもこの辺りが今日最も険しいところだったと思う。








12:52 ショートカット道を抜ける

 最後に思わぬ形で険しい激下りに遭遇してショートカット道から右俣林道へ降り立つ。
歩きやすい林道に降り立って正直ほっとした。

 この写真を撮り終えた頃、ほぼ同じタイミングで穂高平小屋を出発して林道を歩いてこられた他の登山者の方々が通り掛かる。
この瞬間思ったのは時間的にはあまりショートカットになっていないということだった。
激下りを避けて淡々と降りていきたい方には、ショートカット道へ入らずに林道を歩かれることをお薦めしたい。
でも自分は最後の最後まで山道の雰囲気を味わえたので良かったと思う。

 林道を通り掛かられた方の中のお一人から、この登山道はどの山から通じているのかと質問されたのでショートカットの趣旨を説明した。
結論からいえばどちらを歩いても大丈夫で、どちらを選ぶかは好みによるだろうと思う。




 ショートカット道を抜けると、右手に轟々と水が流れる右俣谷を見ながらの下りとなる。
間もなく林道のゲートを通過。いよいよ新穂高温泉が間近ということを悟る。
いつしか林道は舗装路となり、最後のヘアピンカーブを抜けると右側には駐車場が見えてくる。
この駐車場は新穂高ロープウェイ最寄りの観光客向けのものだ。

 駐車場入り口を見ながら、遂にロープウェイ駅の前を通る車道に出た。
ちょうどこの時に観光客を満載したロープウェイが車道の上空を通過する。久しぶりに文明世界?に戻ってきたと妙な感覚になる。








13:20 新穂高ロープウェイ・新穂高温泉駅到着

 遂に3泊4日の表銀座縦走が終わった!!
中房温泉から合戦尾根を登り始めてからの4日間は本当にあっという間だった。

 感動と達成感と、そしてちょっと寂しさを覚えつつ、ロープウェイ駅傍にあるバス停までやってくる。
新穂高温泉に来たのはこの時が初めてだ。上高地に比べると華やかさでは及ばないが、高山に囲まれた山深い雰囲気はたいへん好ましい。
登山者と観光客が半々といった感じだが、軽装の観光客を見ると山を下りてきたことを実感させられる。




 表銀座縦走の山行自体はここで終わりとなるが、この後は穂高駅近くに置いてある車へ戻るという長い旅が待っている。
表銀座の行程を終えたことで、放心状態で気が緩みがちになりそうだが旅はまだ終わっていない。
ということでバスの乗車券を購入するために新穂高ロープウェイ駅へ入る。
入口のすぐ傍に乗車券の券売機があって、バス会社の係の方に親切丁寧にフォローしていただいた。

 事前の下調べのおかげで、下山のタイミングは計ったようにバッチリだった。
下山後25分くらいで平湯温泉へ向かうバス(濃飛バス・高山行)が発車する。
なお、バス乗車での目的地は平湯温泉ではなくて松本だが、夏季以外は新穂高〜松本間は直行便は無いようだ。
途中の平湯温泉で松本行の便に乗り換える必要があるが、乗り換え時分は約15分で便宜は図られている。
平湯温泉でバスを乗り継いでも、新穂高〜松本間の運賃は直行便の場合と同じく2,800円。








13:46 濃飛バス・高山行にて平湯温泉へ

 ザックを横に置けない満席状態で出発したが、自分の好きな進行方向左側の窓際席は確保出来た。
でもこのままだと途中のバス停から乗車出来ないので増便も出動した模様。
乗客の過半数は登山者のように見受けられる。




14:28 平湯温泉着

 ほぼ定刻通りに、つい先月に奥穂山行の際に来たばかりの平湯温泉に到着。
出来れば温泉に入りたいけど、今回は安曇野に置いてある車に戻るために先を急がなければいけないのが残念だ。
降車してすぐに松本行バスが発車するバス停の列に並ぶ。




14:45 松本行バスに乗り換えて平湯温泉出発

 松本行も増便が出動した。自分は列の後ろのほうだったので、増便のバスに乗車。
増便は空いており、結果的に松本行は快適な乗車時間となった。

 岐阜県側の平湯温泉から安房トンネルを抜け再び長野県へ入る。沢渡、新島々を通り段々と車窓は山から街へ。
松本方面へ向かう道路はけっこう混んでいて、流れが悪くなったところもあった。




16:20 定刻より10分近く遅れて松本着 (バスはJR松本駅にほど近いところに停まる)

 多くの人々が行き交う松本駅。けっこう大きな駅だった。
登山者は大きなザックを背負った方々が殆どで、これは北アルプスの玄関口である松本ならではの光景だろう。




16:47 松本発 JR大糸線普通・信濃大町行に乗車

 列車は3両編成でローカルな雰囲気が旅ごころをくすぐる。松本〜穂高間の運賃は320円。
安曇野の車窓を楽しみながらの約30分の乗車時間だった。








17:15 JR大糸線・穂高駅到着

 新穂高温泉をバスで出発してから約3時間30分。
バス2本とJRを乗り継いでようやく穂高駅に到着した。
下山後も長い旅だったが、それだけ表銀座縦走が大掛かりな行程だったということを改めて実感する。

 駅のホームからは、やや雲に隠れ気味だが常念山脈や有明山方面を見通すことが出来て、
3日ぶりに旅の振り出しに戻ってきたことを視覚的にも確認出来る。




 信濃大町行の列車を見送ってから、駅東側にある改札を出て、穂高神社の南側にある穂高駐車場へ向かう。
初日の出発前に駅のトイレを利用した時に既に歩いているので、駅と駐車場間の距離感と道順は予め分かっている。
駅前のロータリーを起点に東側へ歩き、一つ目の交差点を南へ。
穂高神社の広い敷地を左手に見ながら歩き、突き当たりを左折。そしてすぐに南への小道を右折する。








17:27 穂高駐車場に戻ってきた

 懐かしいマイカーの待つ穂高駐車場に戻ってきた!
長旅を終えた充実感と淋しさに包まれて出発準備を整える。

 車に戻るのを優先して、下山後の最大の楽しみである温泉が後回しになっていたが、
今回はここからほど近いところにあるしゃくなげ荘にて入浴。
中房温泉へ向かう南安タクシーのバスも通り掛かるところだ。

 この後は約400kmの長距離運転が控えているのであまりゆっくりと入浴出来なかったが、
表銀座4日間(正確にはその前日の仕事分も含めて5日間)の汗を流して、ようやくリフレッシュ出来た!




 穂高温泉郷しゃくなげ荘 9:00〜21:00(受付は20:00まで) 大人400円




18:30頃 入浴を終えて安曇野を出発

 スキー、登山を通じて来るたびに毎回思うことだけど、信州を離れるのはたいへん寂しい。

 長野道、中央道、名神、阪神高速を運転して帰途へ。




24日(火)

 0:30頃 帰宅








 〜 終わりに 〜

 北アルプスにおいて、初めて本格的な縦走の行程をテント泊で踏破することが出来ました。
4日間殆ど晴れという稀に見るくらいの絶好の好天にも恵まれ、表銀座の各見どころを存分に堪能して大満足。
前月天候に恵まれず予定外にピストンになってしまった奥穂から続いた不完全燃焼状態も解消出来ました。

 万事に満足出来たかというと実はそうではなく、4日間という日程は持参した食料の“飽き”を初めて感じさせてくれました。
やや食材が重くなることは想像できますが、ドライフードばかりでなく、もう少し食事に変化を付けるということを次回以降の課題に挙げたいと思います。

 また今回はテン泊装備から割愛したのですが、枕はやはり自分にとっては必需品だと感じたことです。これは睡眠の質にも影響します。




 装備品のこと以外にも、今後の指針となるものも得ました。
やはり山は眺める機会があるとそこへ行きたくなるもので、
常念山脈や笠ヶ岳、そして裏銀座など今後のテーマもたくさん見出した山行となりました。
また、槍への登頂は2度まで果たしたので、今後は槍を色んな方角から眺めてみたいと思うようにもなりました。




 いずれにしても、山は登るたびに本当に色んなことを教えてくれます。
表銀座縦走を大事な良い経験として、今後の山行にも生かしていきたいです。

 表銀座4日間の長丁場のレポにお付き合いいただきまして、ありがとうございました。








3泊4日・表銀座縦走 行程全図 ※ 常念山脈縦走も平行して計画したため、同山脈における行程上の要所には地形ポイント登録を行っています。



行程断面図です








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