「笠ヶ岳周回1日目・新穂高温泉から双六小屋」 2013年10月12日(土) 晴れのち曇り、雨、雪 |
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国土地理院地形図 : 25000分の1 「笠ヶ岳」、「三俣蓮華岳」 山と高原地図 : 「槍ヶ岳・穂高岳・上高地 北アルプス」 〜 はじめに 〜 体育の日の3連休は、地元での山行を含めて検討していましたが、 初日以外は完璧な予想天気図であるのをみて、今年最後となるであろう遠征を実行しました。 数々温めていた計画の中から、初日をしのいであとの2日を楽しむというパターンに合いそうな 笠ヶ岳周回プランを選びました。 問題のこの初日の天候ですが、下り坂のうえに稜線上では暴風と降雪も予想されていました。 初日は新穂高温泉から双六小屋を目指すという比較的危険度の低そうな行程です。 但し、行程終盤の弓折乗越から双六小屋までの稜線は標高2,500mを越えるため、 状況によっては稜線手前の鏡平山荘(テン泊不可)で行程を打ち切ることも念頭に置きました。 11日(金)20:30頃、仕事を終えて神戸を出発 阪神、名神、東海北陸道を経て新穂高温泉へ。 平湯温泉から新穂高温泉までは初めて運転する区間だが、 先月の表銀座縦走後にバスに乗って見ているので大筋には把握している。 12日(土) 2:30頃 深山荘・登山者用駐車場到着 入口には深夜まで係りの方が対応していただいていて有難いことです。 到着時にはかなり埋まっている状態だったが無事に駐車。出発まで短い時間でも仮眠をとる。 4時前には起きて、車中で朝食を摂って出発準備を整える。 4:30頃 同駐車場出発 長丁場に備えて入念にウォーミングアップを済ませて出発する。 この時はきれいな満天の星空で、もしかしたら予報よりは悪くないのではと淡い期待を持ってしまう。 駐車場の最北端、ロープウェイ駅側に遊歩道の入り口がある。 まだ暗い中をヘッドライトの灯りを頼りに歩いていく。 前後には数人の方が歩かれていて、やはり皆さん朝が早い方が多い。 遊歩道の小道はそのまま車道へ合流し、先月の表銀座後を思い出してロープウェイ駅へ歩いていく。 途中でトイレを済ませて、登山センターで登山届を提出。 先月下山したばかりのロープウェイ駅横のバス停を通り抜けて奥へ。 現在、周辺の工事のために、従来の左俣方面へ渡る橋が通行止めになっていて、 その代わりにロープウェイ駅バス停を通り抜ける仮の迂回路が設定されている。 |
行程概要図![]() |
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4:51 新穂高ロープウェイバス停奥、左俣谷入口 まだ暗い中、バス停奥の入り口に辿り着く。 先月、明るい時に周辺の状態を見ていたのが大いに心強かったと思う。 轟々と水の流れる蒲田川を渡り、森の中の遊歩道を抜けて左俣林道へ合流。要所には指導標があってスムーズに歩ける。 周辺にはヘッドライトを灯す登山者がちらほらと居られ、その流れに乗るように暗い左俣林道を登っていく。 |
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5:01 左俣林道ゲート しばらく林道を登っていると、行く手を遮るように見える林道ゲートに到着。 車は通れないが人は横を通り抜けられるようになっている。 ここからわさび平小屋まで70分。 それまでの間には夜も明けるだろう。行程序盤が林道だと暗い中でも早発しやすく好都合に思う。 最初は真っ暗だったが、徐々に薄明るくなってきて周囲の山深い光景が段々と見えてくる。 新穂高温泉からの歩き始めは左岸、中崎橋(自己責任で渡る)からは右岸沿いの林道を黙々と歩く。 |
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5:53 笠新道登山口(1,360m+)到着 林道からいきなりの急坂で始まる笠新道の登山口に差し掛かる。 自分が到着した時は数人の方が小休止中、或いは登り始めたところだった。 この急登の先、標高差1,400m上に稜線があるのかと思いながら森を見上げる。 笠ヶ岳へはこの笠新道を登るプランがポピュラーではあるが、 今回の場合は双六小屋から稜線を忠実に通しで縦走したいという願望があった。 またこの日の天気予報からすると、稜線に出るとガスって視界無しというパターンが想像出来た。 ということで、今回は笠新道を登るプランは却下。一路双六小屋を目指すことになった。 但し、この急登はいずれ体験してみたいと思う。 このルートを使うと笠ヶ岳は1泊2日で登れるので、通常の週末でも登山可能だ。 6:04 笠新道登山口出発 ちょうど出発する頃、林道を下られてくる方とすれ違う。 少し先にあるわさび平小屋で前泊すれば、笠新道への登りもちょっとだけ楽になるかもしれない。 |
笠新道 御利用の皆様へ 本日は笠新道ご利用ありがとうございます。ここは約標高1,350mです。 登山度は前半ブナやナラの原生林帯です。その原生林を抜けると、 お花畑のある杓子平です。そこからは笠ヶ岳の全貌を眺めることが出来ます。 ここから稜線への登りとなり、数か所のガレ場を登りきると、稜線上に出ます。(分岐) ガレ場では落石や滑落に十分注意して登って下さい。 ここからは笠ヶ岳山荘までもう一息です!それでは安全で快適な登山をお楽しみ下さい。 山荘までの所要時間 現在地 (4時間20分) 杓子平 (1時間30分) 稜線・分岐 (1時間10分) 笠ヶ岳山荘 笠ヶ岳山荘 (40分) 分岐点 (40分) 杓子平 (3時間20分) 現在地 飛騨森林管理署 |
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6:15 わさび平小屋(1,402m)到着 広くなった右岸の河原を通り過ぎ、再び森へと入るとわさび平小屋に到着。! ここでも多くの方が休憩、または出発準備をされている。 駐車場からここまでの標準所要時間は1時間30分くらいだから、撮影時間を含めるとほぼ定刻通りかもしれない。 小屋に隣接した南側の森の中にはテン場もあって、ここもすごく雰囲気良さそう。 そしてお風呂にも入れる山小屋であるというのもたいへん魅力的だ。 水が豊富であるということは本当に有難いことだ。 この先、次の山小屋は鏡平山荘ということもあるし、ザックを下ろしてしばらくの間休んでいくことにしよう。 ちなみに空模様のほうは、笠ヶ岳の稜線からちょっとずつ雲が出てきている。 昨夜から星空が見え、ずっと晴れてはいたが、やはり今日の天候はちょっと怪しいと感じ始めてきた。 |
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6:34 わさび平小屋出発 小屋の周辺は美しいブナの森が広がっていてすごく落ち着く。ここでテントを張ってまったりするのも悪くない。 いずれ、わさび平小屋でテン泊したいなと思う。 自分が休憩中にも多くの登山者が続々と新穂高温泉から到着される。 ベンチを空けるためにも、体が冷えない程度で切り上げて出発することにしよう。 しばらくはこの美しいブナの森の中を歩いていく。 まもなく森を抜けると、先ほどよりも左俣谷が大きく広がった光景が目に飛び込んでくる。 |
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6:51 小池新道登山口(1,470m+) 林道をぐるっと回り込むと、ようやく小池新道の登山口に到着する。ここで左俣林道歩きは終わりとなる。 眼前には秩父沢周辺の伸びやかな景観が広がって、一気にテンションも上がってくる。 但し、明日歩く予定の稜線は大きな雲が張り付いており、今後の天候の変化には気を配らなければならないだろう。 新穂高温泉からここまでの標準所要時間は1時間40分。先日槍から下った際に歩いた右俣林道と比べると林道歩きの負担は同程度と感じる。 撮影も含めて5分程度小休止してから、いよいよ小池新道の登りに掛かる。 |
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鏡平まで3:30、双六小屋まで更に2:20。合計すると5時間50分。 5時間50分の所要時間を見て気合を入れ直す。また、新穂高の温泉マークが気が利いて面白い。 |
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よく整備されている小池新道 登山口からは緩やかな斜面をただひたすら登っていく。 石が敷き詰められていて、たいへん歩きやすいトラックだった。 最初は河原や灌木帯の中を登っていくが、次第に周囲の景観を眺められるようになってくる。 西側の笠の稜線から雲が流れてくるが、まだ青空も残る東側には穂高の稜線も見えてくる。 3週間ぶりに見た穂高の稜線は感慨深いが、空模様はもう“曇り”と表現してもよいくらいになってきた。 |
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紅葉真っ盛りの秩父沢周辺 しばらく調子良く登っていると、見事に色づいた木々が目につくようになる。 先月の表銀座縦走ではまだ色づき始めというところが多かったが、今ではもう季節はすっかり秋だなあと実感出来る。 秩父沢の流域は等高線が広がっており、基本的に山腹道の小池新道は比較的体力の消耗を抑えられるように感じる。 |
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7:50 秩父沢渡渉地点(1,720m+)到着 多くの登山者が休憩中の秩父沢に到着。 小池新道を登り始めて1時間くらいで、ちょうど良い休憩スポットだ。 自分も適当な場所にザックを下ろして、一休みしていくことにしよう。この先、鏡平までまだ2時間30分かかる。 稜線上の空模様は更に怪しくなり、もう天候が下り坂なのは残念ながら確定的だった。 但し秩父沢にはまだ時折日差しが降り注ぎ、周囲の紅葉をきれいに照らしていた。 |
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錦秋の秩父沢 晴れのほうが良いが曇天だと色が飛ばないので、これはこれで紅葉もきれいに見える。 8:05 秩父沢渡渉地点出発 15分の滞在で切り上げて出発。上へと続く登山者の流れに合流して登っていく。 |
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8:21 チボ岩(1,800m+)到着 不意に木々が途切れると、大きな岩が折り重なったところに出てくる。ここはチボ岩だ。 せっかくの展望スポットなので、5分程度小休止をとっていくことにした。 眼前にはその名の通りの下丸山がほぼ同じ高さに見える。 小池新道登山口からまだ300mほど登ったに過ぎないが、稼いだ標高を確認するのは励みになる。 |
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8:35 秩父小沢か チボ岩からさほど遠くないところには再びガレ場が広がっている。 地形図では少し下で水線が途切れているが、秩父小沢の源頭部辺りを歩いているのだろうか。 眼下にはわさび平付近の広がった左俣谷が見え、歩いてきた距離も確認出来る。 |
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8:55 イタドリヶ原(1,900m+) 季節外れのために枯草ばかりが目立つイタドリヶ原に差し掛かる。 この辺りの休憩スポットには花の名前がそのまま付いているところが多いようだ。 この小池新道はまたいずれ歩く機会があるだろうから、今度は夏に通過して光景の違いを確かめてみたいと思う。 地形図上では“小池新道”と書かれた辺りに居ると思われる。 等高線はこれまでよりやや間隔が狭まるが、急登というようなところもなく、まだまだ歩きやすい区間が続く。 鏡平までは1時間45分。 |
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大きく谷間が広がる小池新道周辺。この谷は殆ど地形を変えずに大ノマ乗越にまで突き上げている。 イタドリヶ原辺りから一貫してこのゆったりとした谷を登っていく。 夏場は花々が咲き乱れる別天地のような光景が広がっているのだろうなと思い浮かべる。 稜線に張り付いている雲が近づいてきていることから稼いできた標高を実感出来ると共に、いずれガスの中に入ってしまう可能性が高いことを悟る。 振り返ると、左俣谷を照らす後光が見事だ。 昨夜から続いていた束の間の晴天だったが、この後天候は決定的に悪くなっていくことになる。 |
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9:43 シシウドヶ原(2,090m+)到着 大斜面に続く長い登りを経て、多くの登山者が休憩中のシシウドヶ原に差し掛かる。 ベンチも設けられていて、左俣谷方面の眺めもよくて休憩には最適だ。 でも先ほどから撮影ついでに小休止を立て続けにとっていたので、ここはすぐに出発することにする。 これまで斜面を一貫して登ってきたが、ここから東側へ向けて山腹道となる。 このシシウドヶ原での方向転換については、地形図の破線道の表記は現状に即しているように思う。 しばらく山腹道が続いた後、今度は比較的狭い谷を登っていく。 この谷を突き上げたところが鏡平のようだ。 |
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10:07 熊のおどり場(2,180m+) 木道が掛けられている、まるで日本庭園のような空間に差し掛かる。 紅葉のおかげで京都のお寺の庭のような雰囲気になっているが、ここも夏に通り掛かればだいぶ雰囲気が違うように思う。 それにしても、“熊のおどり場”という名前はとても微笑ましい。実際にはクマは会いたくないものだが・・。 |
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鏡平まで500m 熊のおどり場を抜けると、鏡平まで500mとなるようだ。 鏡平までそう遠くないが、山中での500mはけっこう長いような気もする。 この後の標高差50m程度の登りが、これまでと比べると比較的等高線の間隔が狭まっている。 カウントダウンにつられて、ペースを上げるべきではないかもしれない。 この鏡平直下の標高差50mを歩いている時に、遂にぽつぽつと雨が降ってきてしまった! 幸いにもまだまだ小降りで、急いでレインウェアを着込むほどではないと判断。 鏡平到達を最優先にして、雨対策はその後に行うことにする。 鏡平が近づくと道の傾斜は緩んでくるが、同時にガスも漂い始める。 好天だと槍を映す絶景スポットであまりにも有名な鏡池にまもなく到着だ。 |
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10:30 鏡池(2,280m+)到着 分かってはいたけど、ガスに覆われて全く槍が見えない鏡池に到着。 槍は見えないが、池端の紅葉は美しく水面に反射している。 しかし、このガスが漂う鏡池もけっこう神秘的だった。 池の横の木道をもう少し進むと鏡平山荘に到着する。 鏡平山荘前のテラスでは多くの登山者が休憩、そして雨装備の準備中。 雨はまださほど強く降ってはいないが、風もけっこう出てきてこれはレインウェアを着なくては低体温症の恐れがあると判断。 レインウェアとザックカバーを取り出して雨装備を整えた後、初日限定のとっておきのおにぎりを食べて今後の行程に備える。 |
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10:58 鏡平山荘出発 レインウェアをしっかり着込んで鏡平山荘を出発する。レインウェアを着てとても暖かく生き返った感じ。 雨はまだ小雨と表現してもよいくらいだ。 ここから双六小屋まであと2時間余り。 本来ならば展望抜群の区間に入るが、今日はそれは諦めてとりあえず一刻でも早く双六小屋へ到達したい。 |
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弓折乗越へ突き上げる 鏡平山荘から弓折乗越までの標高差は270m。 前半は笹と低い灌木に覆われた尾根を登っていく。トラックは引き続いてしっかりと整備されているので調子良く歩ける。 ガスに入っていくということで展望は度外視していたが、先ほどよりも何だか見通しが良くなってきたような気がした。 |
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11:29 2,420m+あたりから弓折岳東山腹へ 鏡平〜弓折乗越間の標高差の半分程度登ってきたところで、弓折岳から南東へ派生する尾根の平坦地に乗り上げる。 この後は弓折岳東斜面の山腹道となって弓折乗越を目指すようだ。 視界は先ほどよりも更に良くなってきて、笠の稜線の一端を担う弓折岳の山容を見上げることが出来るようになる。 そして嬉しいことに雨も一旦小康状態となる。でも天候がどう転ぶか分からないうえ、風も冷たくて寒いのでレインウェアは着込んだままにする。 山腹道に入ってしばらく登っていると東側の雲が急激に切れてきて、唐突に感動の絶景が広がってくる! |
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11:42 雲が切れて槍が初めて現れる! 雲間から槍が見えた時には本当に感動した! 表銀座縦走の時のように快晴の下で見る槍ももちろん素晴らしかったが、周囲を雲に囲まれた槍はより荘厳さを増すようだ。 そして西側から初めて見る槍は多くの尾根を従え、東側から見るのとはまた違う風格だった。 つい3週間前に歩いたところを眺めて、表銀座の感動が改めて思い返される。 それにしても槍からの下山で通過した飛騨沢がかなりの急斜面に見えるのには驚いた! やはりこの前に比べると、飛騨沢の草原もだいぶ色あせて見える。 |
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重なって見える北鎌、西鎌尾根 | 鏡平展望 |
点々と池が並ぶ鏡平と槍を見ていると、あそこを通過するのがもう少し遅かったら・・という気になってしまう。 それでもこれで小池新道を再び歩く目的が一つ増えたと考えるようにしよう。 それはともかく鏡平から登ってくる登山道では、多くの登山者が皆立ち止まって槍を見ていた様子が印象的だった。 槍を見上げることが出来たのは本当に束の間の時間で、すぐにまた分厚い雲に覆われることとなる。 それでも思わぬ大展望に大満足で、長い登りで疲れ気味だったところで大いに元気付けられた。 弓折乗越が近づいてくる頃になると雨が再び降り始め、道端では慌ててレインウェアを着込む方々も。 今度は先ほどよりはややしっかりとした降りになってきた。 |
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12:00 弓折乗越(2,550m+)到着 ようやく辿り着いた弓折乗越。今日の天候はイマイチだけど、憧れていた笠の稜線に一応辿り着いて嬉しい。 新穂高の登山者用駐車場を出発してから7時間30分。歩きやすい登山道だったけど、やはり長い長い登りだった。 この弓折乗越も含まれるが、「双六小屋から笠ヶ岳へ続く稜線を歩き通したい」というのが今回の山行の主な目的。 明日はこの稜線での縦走で感動できるよう、予想天気図通りに秋の移動性高気圧に覆われればいいのだが。 弓折乗越から双六小屋までの標準所要時間は、どちらの向きで歩いても1時間10分。 大きなアップダウンは無いものの、この怪しい天候下でもあるし、歩いて楽しい区間ではないだろう。 ただこの区間だけはピストンになってしまうので、今日視界無しで歩いたほうが明日に感動をとっておく効果はあると前向きに考えるようにする。 ここで地形図を見ながら小休止をとって、双六小屋までの稜線歩きに備えておく。 弓折乗越から双六小屋までの稜線歩きの区間は、小雨ながらもかなりの強風が吹き付けていた。 今日は早く安全に双六小屋へ辿り着くのを最優先としたために、撮影は必要最小限としました。 とにかく寒かった・・。 この稜線は比較的穏やかな尾根といえそうだけど、小刻みにアップダウンを繰り返す。 疲れた体には決して楽な道のりとはいえなかった。 しかも早く到着したいという思いで少しペースを上げたことで一気に疲れが出てきてしまった。 途中で座り込んで息を整える必要まであった。 やはり出来るだけマイペースで歩くのが大事だと今更ながら実感した。 北上中に一瞬雲が切れたタイミングがあって、双六小屋はだいぶ手前からその姿を見ることは出来た。 でも見えているからといってすぐに辿り着くとは限らないのが北アルプスのスケール。 これまでの北アでの山行を通じて感じたことだけど今回もこのパターンが当てはまった。 疲れの影響もあっただろうけど、今回も双六小屋は思ったよりも遠く感じた。 それでも脚を動かしている限りいつかは着く。 樅沢岳西山腹を歩くようになると、長かった初日の行程が終わりに近づくのを感じることが出来る。 |
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ガスの向こうに双六池とキャンプ指定地が見えてくる ぼんやりとテント群や双六小屋の建物が見えてきた! 弓折乗越からの稜線歩きは小雨混じりの強風に晒され、しかもかなりの疲労感を覚える道のりだった。 この天候の影響もあるだろうけど、テン場はまだまだスペースたっぷりのようだ。 とりあえず双六小屋でテン泊の受付を済ませることにしよう。 |
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13:17 双六小屋(2,540m+)到着 | 強風吹きすさぶ双六小屋 |
新穂高温泉から約9時間。長い道のりだった・・。 標準所要時間だと7時間10分なので、撮影と休憩を含めてももう少し早く着きたいなという気がする。 ベンチで休憩中の方々と寒いですね〜と挨拶を交わす。 双六のコルは評判通りに風が強いところで、台風接近時並みの強風が吹き付けてくる。 上の写真は三脚を建物のすぐ際に立てている。 仮に右上の写真の場所に立てたとしたら間違いなく風で倒されてカメラを壊すことになっていただろう。 |
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双六小屋受付 | ついでに天気予報をチェック。明日、明後日は大丈夫そう♪ |
山小屋に入ると、室内のこの暖かさに生き返る思いがした。 正直なところ、テン泊は止めて山小屋に泊まりたくなったが、すんでのところで思い留まった。 おそらくこの日は3連休ということで、相当な賑わいだったに違いない。 テント泊:1人@500円。水は無料。受付前にて汲む。トイレは山小屋に隣接していて、テン場からは少し歩く。 |
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笠まで6時間20分。明日は3日間の行程で最も楽しい日となるはず! | 意を決してテント設営へ |
テン場は山小屋の南側。先ほど歩いてきた弓折乗越からのトラック沿いに広がっている。 設営済みのテントの中には傾いているもの、一隅のペグが外れてしまっているものも見受けられる。 今日こそは強風に備えて、最大限にしっかりと設営しなければならない。 コルは基本的に風の通り道。少しでもコルから高度を下げて設営するほうがベターだと思い、 山小屋からは遠くなるが双六池の畔に位置する辺りに設営箇所を決める。 それでもコルから僅か10m程度しか高度が下がらないので、実際に風圧の軽減に役立ったかは分からない。 悲愴感?漂う中、テントの設営を開始する。 この時は雨は止んでいたので、風に飛ばされないことだけを優先して考えることが出来た。 しかし、本体の上でポールを立体化させて、本体を吊り上げようとした時に雨が再び降ってきた! 急遽立体化は後回しにして、X字に組み立てていたポールを本体の上に置いてすぐにフライを被せる。 そして本体とフライの間に潜り込んでポールを立体化させて本体を吊り下げる。 という訳で何とか本体を殆ど濡らさずにテントを設営することが出来た。 地面は土でペグがよく効く。大きな石が周囲にたくさんあったのでそれらも併用して、いつも以上にしっかりと張綱でテンションを掛ける。 設営中には幸いにも雨は降ったり止んだりで、降っても小雨程度で助かった。 でも風は常に強かったので、体の芯まで冷えそうだった。 それでも設営完了し、装備品をテントに放り込むと心底ほっとした。 |
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無事に設営完了したテントだが、前室が風に煽られてペグが抜けかけていた。奥に見えるのは双六池。 | 北側にはコル上に建つ双六小屋。小屋までは若干標高差と距離がある。テン場は段々畑状で垣根を越えられないところも。 |
好天の夏であれば、きっと牧歌的な光景が広がっていることが想像される双六小屋のキャンプ指定地。 強風との格闘の末にようやくテントを設営完了し、今日のミッションは一通り終了。 夕食以外の時間はテント内でまったりと過ごした。テントに入って風が当たらなくなると本当にほっとした。 雨のほうも止み間はあるものの午後遅くは断続的に降っていたので、雨を避けられる空間があるというのが どれほど心強いかと改めてテントの有難みが身に染みる。 このような天候なので、オプションとして考えていた双六岳や樅沢岳へのピストンはもちろん取り止め。 双六小屋まで来たのは、純粋に明日の行程のための下準備となってしまった感があるが、 無事にテント設営までやり遂げたので良しとしよう。 夕方近くになって、山小屋へ水の調達や山バッジなどの買い出しに出掛けると、 まだまだ続々と多くの方が到着される。自分が北上していた時よりも雨が強かったので、想像以上に消耗する道のりであったと思う。 一方TVでは、甲子園でのCSでマエケンが投げている姿をTVで見て元気付けられる。 北アは荒れ模様だが、甲子園は申し分ない野球日和のようだ。 夕食後、寝る前にトイレに行こうとテントから出ようとすると何と前室の周囲は一面真っ白!! テントを打ち付けていた雨はいつの間にか雪に変わっていたのだった。 テントにも少しだけ雪が積もっていたので、内側から叩いて雪を払い落とす。 とにかくサンダルでは雪の中を歩けないので、登山靴を履いてトイレに出掛けた。 まだ雪化粧した程度ではあったが、いきなり北アの厳しい自然環境を目の当たりにした1日目となった。 22時頃に一旦目が覚めた頃には雪も風も止んでいたよう。 明日は笠ヶ岳への縦走という、今回の山行で最も楽しみにしている行程が控えている。 狙い通りに好天の下で歩けることを願って眠りについた。 |