「笠ヶ岳周回3日目・笠ヶ岳からクリヤ谷を経て下山」 2013年10月14日(月)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「笠ヶ岳」

山と高原地図
 : 「槍ヶ岳・穂高岳・上高地 北アルプス」




 2:00 起床

 無風で静か。寒さも控えめで本当に熟睡出来た笠でのテン泊だった!
笠への再登頂、そしてクリヤ谷コースでの下山を控え、淡々と出発準備を整える。




 5:00頃 笠ヶ岳山荘キャンプ指定地出発

 今度ここへ来る時はもう少しゆっくりと過ごしたいと思う良いテン場だった。
テント内側からのランタンの灯りがまだきれいに見える真っ暗なテン場を出発。
ヘッドライトを頼りにして、昨日往復した笠ヶ岳山荘と山頂へのトラックを登っていく。
一晩ぐっすりと眠ってだいぶ復活してはいたが、前2日間の疲れはしっかりと感じ取れる。
荷は前日登頂時の軽装とは違い、食料分は減ったものの75Lのフル装備なので、焦らずじっくりと登っていく。

 笠ヶ岳山荘では忘れずにトイレに立ち寄っていく。




 夜明け前の笠への登りは槍の時とは違って全く人けは無かった。




 5:30頃 笠ヶ岳山頂(2,897.5m)到着

 やや薄明るくなってきている中、昨日に続いて2回目の笠登頂!
テン場から山頂まで標高差約150mだが、これが今日の行程で最も大きな登りとなる。

 日の出までまだ間がある山頂は自分が一番乗りだった。
まもなく後続の登山者も続々と到着し、次第に賑やかになっていく。

 日の出の時刻が近くなると、穂高の主稜線上が明るくなってくる。
とりあえずご来光を見るために、周囲の方と雑談しながらスタンバイする。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)


 6:07 北穂よりご来光

 北穂の山頂より少し南側から日が昇ってくる!
じっと見ていると太陽が動いて見えるのが分かる。縦走中に眺めた昨日とは違ってやはり落ち着いてご来光を拝むのは良いものだ。
この角度から見ると“穂高三山”と形容してもいいような山並みだった。

 ただ視界は昨日のように完璧にクリアではなく、何だか春霞のようにぼんやりした感じ。昨日よりも朝焼けの度合いが強い。
秋の移動性高気圧の後ろ側に入って、大気中の水蒸気量が増えてきたかもしれない。
それでも今のところ晴天であることには間違いないので、文句の付けようがないくらい感動した!








笠ヶ岳山頂よりご来光を拝す  登山者にとって至福の時間が流れる笠ヶ岳山頂 

 シルエットの槍・穂高の稜線越しに昇ってくるご来光は最高だった!
クリヤ谷コースへの下山の途上ということで、結果的に再登頂成ったが何度来ても笠の山頂は素晴らしい。

 日の出前に到着していたので、笠ヶ岳山頂での滞在時間は再び1時間に達した。
この3連休を利用して来られていた周囲の方々と山談義をしながら心行くまで良い時間を過ごした。

 横浜から来られていた単独男性の方とお話ししたら、関東へ帰るにも帰路の渋滞が大変そう。
こちらも今日の夕刻に中部縦貫道、東海北陸道で長大な渋滞を経験する羽目になる。








 6:33 笠ヶ岳山頂出発

 笠ヶ岳山頂を出発するのは本当に名残惜しいけど下山開始。
いよいよクリヤ谷コースの長い長い下りの始まりだ!

 山頂からはペンキ印に従って岩稜を降りていく。
最初はかなりの激下りだった。始めは尾根の東側、すぐに西側、そしてまたすぐに東側へと回り込みながら下っていく。
下山を開始すると見る間に高度を下げていき、2,810m+ピーク辺りまでやってくると一旦は平坦になる。








大展望が広がるクリヤ谷コース最上部

 激下りが一段落した辺りで早くも暑くなってきたので、レイヤリングを調節しておく。
この尾根区間では撮影枚数がのっけから増えているので、後続の方々がどんどん追い抜かれていった。
クリヤ谷コースのコース構成上、おそらく展望のある前半は行軍速度が遅いだろう。

 扁平な岩が積み重ねられているトラックを心地良く歩いていくが、けっこう浮石も多いので気は抜けない。








尾根を乗り換える目印となりそうな2,780m+ピークが近づいてくる

 尾根の直上を挟んで東側、そして西側へと回り込みながら、緩やかに下っていくと2,780m+ピークが接近してくる。
笠ヶ岳山頂から発する主脈である南西尾根とは2,780m+ピーク付近でお別れとなる。
クリヤ谷コースは南東側へ派生する大きな支尾根に乗り換えて下っていく。
行く手左側にはこれから下る長大な支尾根の景観が次第に掴めてくる。

 肉眼では既に先行されている方々が支尾根上で米粒大に見えている。








 7:08 南西尾根から東側へ外れる

 いつ南西尾根から離れるかなと思っていたら、2,780m+ピークの手前で山腹道となった。
斜めに支尾根(便宜上南東尾根と呼ぶことにしよう)へ向かってトラバースしていく。
緩やかなのかなと思いきや、けっこう段差が大きくて足場が悪いところが多い。
このコースは登りではもちろんハードだろうけど、下りでも快適にというわけにはいかないようだ。

 それはともかく、行く手の南東尾根にはノコギリ状に複数の2,500+mピークの連峰が連なって見える。
ひょっとしてあれを乗り越えていくのか・・と先を思いやられた。








見る間に離れていく笠ヶ岳山頂

 やはり時折振り返っては笠ヶ岳山頂を見上げてしまう。
双六側からの縦走中とは違い、なかなか見事な鋭鋒ぶりを魅せてくれている。
笠も見る角度によっては大きく姿を変える山だったのだ。昨日までとは全然違う雰囲気であり、改めて惚れ直す気がする。








 7:24 雷鳥岩へ向けてトラバースを始める

 2,780m+ピーク手前から続いたトラバースは一旦南西尾根に乗って終わるが、
すぐに逆の尾根南側へ向けてのトラバースが始まった。

 こちらの山腹道もなかなかに険しく、トレッキングポールを片手にまとめて持つ場面に多く遭遇する。
う〜ん、このクリヤ谷コースの醍醐味を一度登りで味わってみたいと、何故か強く思い始める。

 行く手右側には4つの2,500m+ピークが近づいてくるが、日陰になっている西側斜面に山腹道が付けられているのが見えた。
険しいアップダウンは回避出来そうでほっとするが、あの山腹道も楽々通過出来るところではないことをすぐに体験することになる。








次第に離れていく南西尾根を見やりつつ下る

 トラバース道は部分的にジグザグになって、南側の急斜面をこなしていく。
傾斜は緩やかにはなっていても、ハイマツがかなり張り出してきてトレッキングポールはまともに使えないところもあった。

 眼前には西方に離れていく南西尾根の景観が雄大だ。








崖上より遥か眼下に穴毛谷を見る

 この辺りは穴毛谷の支谷の支谷である左俣の源頭部にあたる。
南東尾根はこの左俣によって大きく浸食され、この崩壊地は本当にスリル満点の景観だ。
先ほどから続いていた山腹道は、この崩壊地を避けるために迂回していた模様。

 遥か眼下では穴毛谷で轟々と水が流れているだろうけど、水音はここまで聞こえず本当に静寂な世界だった。

 地形図上ではこの辺りまで破線道が2本に別れているように表記されているが、
実際には一本道だったように思う。








なおも続く山腹道より2,500m+ピークの連峰を見る

 最初は遥か眼下に見下ろしていた2,500m+ピーク群と肩を並べるまでに下ってきた。
写真では日陰で分かりにくいが、西斜面を横切るクリヤ谷コースもはっきりと視認できる。
西斜面山腹道の中間辺りには2,420m+コルが大きく落ち込み、ひょっとしたら東側の景観を覗けるかもしれない。








 7:48 南東尾根からのトラバース途中で小休止に入る

 山腹道はまもなく日陰に入っていきそうだが、その前に少し道幅が広がるところがあった。
暖かい朝日を浴びながら小休止をとっていくことにする。
下ってきた南東尾根、途中で外れた南西尾根を眺めながら行動食を摂って気分転換する。
小休止中にも後続の方数人が通過していかれるが、昨日の大賑わいの縦走路に比べるとクリヤ谷コースは登山者がやはり少ないと感じる。








なかなか険しい2,500m+ピーク群西側山腹道

 これまでの暖かかったところから一転、肌寒い西側山腹道に差し掛かった。
最初こそそれほど険しさは感じなかったが、小刻みに地味にしんどいアップダウンを繰り返していく。
かなりの急坂や大きな段差を交え、大きな岩の連なりや滑りやすい木の根も多くてかなり消耗する。
ここは登り下り、どちらで歩いてもそれほど所要時間は変わらないだろうと思う。








 8:21 2,420m+コル

 日陰の山腹道から飛び出して、居心地の良い2,420m+コルに登り詰める。
すると希望通りに今まで隠されていた東側の景観が開けた。
新穂高ロープウェイがちょうど真正面に見えていて、索道で稼げる標高差がよく分かる。
いずれはロープウェイを利用して西穂へも登らないといけないだろう。

 小休止は雷鳥岩でとることにして、2,420m+コルは早々に出発する。
2,420m+コルまでやってくると雷鳥岩まではさほどの距離ではない。
でも山腹道は相変わらず険しいうえに登りのほうが目立つようになる。
下りの時に現れる部分的な登り返しは何故か余計にしんどく感じてしまう。








 8:42 雷鳥岩(2,460m+)到着

 約1時間近い時間を掛けて2,500m+ピーク群の西側山腹道を抜け、ようやく雷鳥岩に到着!
ここが笠ヶ岳山頂から見えていた範囲内で最も遠いところにあたる。
振り返ると鋭鋒の笠ヶ岳がどっしりと構える貫録十分な姿で魅せてくれる。

 雷鳥岩周辺は南東尾根から派生する雷鳥尾根の直上にあたり、クリヤ谷コースはここで90度東寄りに向きを変える。
周囲は腰を下ろすに好適な岩場が広がっていて、数人の登山者が小休止中。
下り中の方々ばかりではなく、日帰り装備の登りの方々も居られた。
お話を聞いていると、ますますクリヤ谷コースを登りで歩きたくなってきた。
お話しした方の中には今夏のお盆に27kg(5泊分)の荷で9時間かけてクリヤ谷コースを登られた方も居られ、今回は軽装で再び歩かれているそう。
自分ももっと近くに住んでいたら、度々登りに来たいのだが・・。

 山と高原地図に表記されている標準所要時間では、笠から雷鳥岩までの下り:2時間10分。登り:3時間。
また雷鳥岩から中尾高原口付近にある登山口まででは、下り:4時間40分。登り:6時間30分。

 撮影も昨日同様かなり頻繁。そして小休止も普通にとっているが、自分はずばり標準所要時間で歩いていて驚いた。
このペースでいくと、14時前には下山出来ると見込むことが出来るが、クリヤ谷コースはまだまだ先が長い。

 なお今回の山行で笠ヶ岳を見上げたのは、雷鳥岩からのこの景観が最後となった。
昨日朝からたっぷり見せ続けてくれて、本当に笠ヶ岳に感謝したい気持ちだった。








雷鳥岩?

 ところでクリヤ谷コースが横切る雷鳥尾根には巨岩が点在し、どれが雷鳥岩なのだろうかと見回してみる。
尾根の下方にはそれらしい岩が見えるが、この角度ではとても雷鳥には見えなかった。








雷鳥岩?

 雷鳥尾根の上方にはまるで城砦を思わせる岩塔がそびえている。
背後にあるのは4つある2,500m+ピーク群の最も南側にあるピークで、ここからだと深い森に覆われているように見える。

 クリヤ谷コースの続きはこの岩塔脇を通過して、2,500m+ピークの南東側斜面を進んでいく。




 9:03 雷鳥岩出発

 到着時に小休止中だった方々は既にそれぞれの方向へと解散し、自分も長い下りを再開することにする。








クリヤノ頭(2,440m)が見えてくる

 雷鳥岩を過ぎて次の目標はクリヤノ頭となるが、これは山腹道の向こうにすぐに見えてくる。
地形図でも実際の景観でもそれほど離れているようには見えないのだが、依然として足場の悪い山腹道が続いてペースは上がらない。








 9:12 クリヤノ頭(2,440m+)西山腹のトラバースを開始

 まもなく2,500m+ピークからクリヤノ頭へ続く吊り尾根上の下りとなる。
ここはまたもや穴毛谷の支谷である二ノ沢の源頭部にあたり、二ノ沢側は絶壁になっていて高度感は抜群だ。

 眼前に近づいてくるクリヤノ頭は断崖絶壁が目立っていて、こちらからはとても登れそうにないように見える。

 二ノ沢源頭部を過ぎると、今度はクリヤノ頭西側山腹をトラバースしていく。
今度の山腹道は木立に囲まれていて展望はイマイチだった。








 9:24 クリヤノ頭南側で最終的に尾根を外れる

 山腹道はほどなく終わり、眼前には再び大展望が広がってくる。
いつしかクリヤノ頭の南側に回り、東側の山腹に引き続いて下っていく。

 これまでの道なりに進むとすれば、錫杖岳北尾根を更に南下してということになるだろう。
一応、気にして観察してはいたが、目立って見える登山道は無いようだ。

 クリヤノ頭付近からは南東側に焼岳が迫力ある姿を大きく見せてくれる。
西穂と併せて焼岳にも近い将来にぜひ登りたいものだ。

 笠ヶ岳山頂を出発してから既に3時間余経過しているが、下山地に近い中尾高原がまだまだ遥か眼下に見える。
改めてクリヤ谷コースで下る約1,900mの大きな標高差を実感することが出来る。








クリヤ谷源頭部を下る

 クリヤ谷源頭部は急斜面の草原で、意外にも開放感溢れる光景が広がっていた。
正面には西穂周辺の大展望が素晴らしい。

 下り始めは急峻な岩場が続き、ここは濡れた状態だと滑りやすそうだ。
しばらくは大展望を眺めつつ、草原(実態は笹薮だが)の中に続く踏み分け道を下っていく。








大草原広がるクリヤ谷最上部

 草原自体本当に急斜面で、尾根を外れても引き続いて下り応え抜群の登山道が続く。
いつしか草原のまっただ中にまで下ってきて、クリヤノ頭から南東に真っ直ぐ派生する支尾根を見渡せるようになってくる。

 標高を下げて森林限界を下回ったことで、まだ里山とまではいえないが昨日までとはまた違った雰囲気になってきた。

 この辺りで重装備で登り中の2人組男性とすれ違う。
好天の下で厳しい登りが続いて相当に暑そうだった。特に夏に登れば、ここは相当暑さで消耗するに違いない。
ここからクリヤノ頭までの所要時間を尋ねられたので、登りだと3〜40分くらいではないかとお答えした。








10:03 最終水場

 途中、どこで休もうかなと思いつつ、延々と続く草原をジグザグに下っていると、細いがしっかりと水が流れている水場に差し掛かる。
水は昨日に笠ヶ岳山荘で汲んだ分が充分にあるので補給の必要は無いが、草原歩きで火照った顔を洗って小休止をとった。
ここより前には水流は見かけなかったので、ここがクリヤ谷コースで最も高いところにある最終水場のようだ。

 周囲は草原とまばらな木々が広がって、本当に良い雰囲気だった。
でもこの水場周辺では前後で全く登山者の気配が無い状態が続いたので、小休止中もクマ鈴を無理に鳴らすようにした。








次第に森が深くなってゆくクリヤ谷コース

 最終水場を過ぎても引き続いて好展望の下りが続く。
正面に見える西穂周辺も素晴らしいが、手前の山肌を覆う色とりどりの紅葉が見事だった。
下りはもっと単調なのではないかと想像していたが、クリヤ谷コースは良い意味で予想を裏切ってくれたと思う。








10:33 蜂ノ巣岩

 森の向こうに巨大な岩塔が見えてきた。
これが山と高原地図に記載のある蜂ノ巣岩のようだ。
下ってきて初めて見えた時にはピンと来なかったが、真下までやってくるとその名の由来が分かった気がする。
岩塔上部が本当にハチの巣のように見事に丸みを帯びている。それにしてもこんな大きなハチの巣があったら怖いな。








クリヤ谷コース下部で何度か見かけた古い道標

 笠ヶ岳山頂出発後のコース上部では槍が見えたことから「槍見」なのかと思ったが、
クリヤ谷コース登山口付近の地名だったことを地形図を見ていて気付いた。
このコースの歴史を感じさせてくれる年季物の道標だった。








10:53 第二の水場到着

 覗き込んでいる先には小川が流れている。ここも水場の一つとして役立ちそうだ。
最終水場からしばらく下ったので、ここでも小休止を入れていくことにした。

 ほんのりと色づいた周辺の木々越し正面には、クリヤノ頭から発する支尾根の一つである広サコ尾根の末端部が見えている。
末端部にいくつかあるピークの標高は1,700m前後だから、クリヤノ頭からは800m程度標高を下げたことになる。
ここでも改めて草原の中を急降下してきた行程の達成感に浸ることが出来る。




11:06 第二の水場出発

 いつしか展望とは無縁の森歩きとなってきたが、等高線が広がってきたようで、
これまで延々と続いた激下りからは解放される。

 登山口まで残る標高差は約700mで、標準所要時間は下り:2時間30分。登り:3時間30分。
今から摩耶山を下ると考えれば丁度良い行程かもしれない、というくらい下界が近づいてきたということになる。








錫杖岳を見上げる

 森歩きで基本的には展望に乏しい中、目を引いたのはやはりこの錫杖岳の景観だった。
手前の森の紅葉との掛け合わせの景観が印象的だった。錫杖岳はこの後コース上から色んな角度で見上げることが出来た。
見るたびに雰囲気が少しずつ違う姿で楽しませてくれる。雪彦山を大きくしたような迫力ある山容だった。

 クリヤノ頭から仮に稜線上を歩き続けたとすれば錫杖岳(2,168m)まで辿り着ける。
遥か頭上にそびえる錫杖岳を見て、クリヤ谷コースで下ってきた標高差をここでも実感出来る。

 なおこの頃から驚くことに、見える範囲内の稜線上には早くも雲が掛かり始めていた!
一応天気予報では今日も“晴れ時々曇り”となっていたが、これでは標高の高いところではガスに巻かれていたかもしれない。
最も天候の影響を大きく受けると思われた、稜線上での縦走の行程を昨日のうちに済ませておけて本当に幸運だったと思う。








11:38 クリヤ谷最上流側の渡渉地点

 深い森の中を緩やかに下っていくと、一ヶ所めの渡渉地点を通過した。
なかなか広い幅の沢床だったが、水は全く流れていなくて易々と渡渉した。

 ようやく沢の渡渉が始まったことで、クリヤ谷に沿う本来の名の通りの区間に入ってきたことを悟る。

 この辺りも引き続いて紅葉がきれいだったけど、ちょっと曇りがちになってきたのが残念だった。








枯れた小沢を通過

 最初の渡渉からほどなくして次の小沢を通過。これはクリヤ谷の支谷にあたると思われる。
クリヤ谷コースはこの後は支谷、まもなく本谷沿いの左岸に沿って緩やかな区間が続く。
ようやく比較的快適に歩ける区間となった。








12:01 クリヤ谷渡渉地点(左岸から右岸へ)

 しばらく左岸沿いを下っていたが一旦右岸へと渡る。水量はまだ少なく殆ど涸れ沢同様の状態だ。
渡渉地点は豊富にマーキングがあるので容易にコースを辿れる。

 右岸側を歩くのはしばらくの間ですぐに左岸へと渡り返すが、
その手前の岩室では幕営中のテントを見かける。
この前後で掛け声が聞こえていたクライマーの方々がベースキャンプにされているようだ。








錫杖岳の雄姿

 クリヤ谷左岸へ再び渡り返した後は比較的歩きやすい緩やかなトラックとなる。
この辺りは錫杖岳が特に迫力ある姿で見上げることが出来て圧倒された!
かなり麓に近いところまで下ってきたにも関わらず、クリヤ谷コースは意外に見どころが豊富で飽きなかった。




12:21 錫杖岳を見上げつつ小休止に入る

 トラック沿いに錫杖岳を見上げつつ、腰を掛けるのに好適な岩があったので小休止をとった。
笠ヶ岳山頂を出発してから既に6時間に達しようとしていた頃で、脚には相当に疲れを感じてきていた。
これは先を急がず無理せずに、脚をしっかりと解しておく必要があると判断した。




 この後も引き続いて緩やかな下りであればという期待はすぐに打ち砕かれる。
北側から下ってくる支谷を乗り越えるまでかなりの激下りが続き、少し休ませた脚でもすぐに疲れを覚えてくる。

 それでも高巻いていたトラックが徐々にクリヤ谷に沿うように下っていくと、
まもなく今日の行程で最後となる渡渉地点に辿り着く。








12:44 クリヤ谷最下流側の渡渉地点到着

 轟々と水音が響き渡る、最後の渡渉箇所に到着。歩きやすそうなところを選んで河原を進んでいく。
大雨後の増水時には渡渉不可能となる恐れがあるところだが、今日は笠ヶ岳山荘の方が言われた通りに全く危険は無かった。

 それどころかただ通過してしまうにはもったいないくらい居心地が良いところだった。
水の流れていない中洲にザックを下ろして小休止をとっていくことにする。
クリヤ谷の沢床は日陰で涼しいうえに、顔を洗って大いにリフレッシュ出来た。

 休憩中に地形図と山と高原地図を観察すると、どうやらここが行程中で最後にザックを下ろす小休止スポットとなりそうだ。
笠ヶ岳山頂から始まった、長大な下りのクリヤ谷コースもいよいよ終わりが見えてきたことを感じる。

 休憩中にも2組ほど後続の方々が到着される。この日のクリヤ谷コースは好天のおかげで、比較的多くの方が下られたように思う。




12:51 クリヤ谷最下流側の渡渉地点出発

 居合わせた後続の方々に御挨拶して、右岸へと渡って下山を再開する。
しばらくは右岸沿いのほぼ平坦なトラックが続くが、小さな支尾根を横切る辺りからクリヤ谷を離れる。
地形図では「新穂高温泉」と縦に表記された辺りの急斜面の森に差し掛かったようだ。








13:10 大岩壁沿いを通過

 登山口まで残る標高差は100m余りとなった頃、トラック沿いには大きな岩壁が現れる。
場所が変われば“屏風岩”とか名付けられていそうだが、ここには道標の類は何も無し。

 クリヤ谷コースは基本的にジグザグを繰り返して標高を下げていくが、
それでも最後の最後まで激下りの場面が目立っていたように思う。

 既にかなり脚が疲れてきていたので、いつもよりはかなりペースを落として下っていた。
そういう頃に最後の渡渉箇所で休まれていた後続の方々に追いつかれたので道を譲った。
自分は下りは得意と思っていたが、途中でペースを上げ過ぎたか、小休止が不足していたかもしれない。




 急斜面の深い森が終盤まで続くが、それでも木々の間から道路や建物が見えてくるようになってくる!
おお〜久しぶりの文明世界まであと少しと大いに元気付けられる。








13:31 クリヤ谷コース登山口(980m+)到着

 本当に最後の最後まで気の抜けない激下りが続き、ふと目線を上げれば道路が見えた!という感じだった。
見どころ満載だった長大なクリヤ谷コースは温泉街の狭い道路にぶつかって唐突に終わる。

 終わってみれば朝焼けの笠ヶ岳山頂を出発してからほぼ7時間の下り。
山と高原地図の標準所要時間は6時間50分だからほぼ平均的な行程消化ペースといえる。
でも結果的にもう少し基本のペースを遅くして、撮影枚数を増やしても良いくらいだったような気がする。

 それはともかく、厳しく長大な下りのクリヤ谷コースを踏破したことと、
一昨日に新穂高温泉から始まった周回の行程を計画通りに歩けたことの達成感で満たされたことは間違いない!
感動と疲れのせいか、ちょっとぎこちない筆跡になった下山届を登山口にあるポストに投函した。




 本格的な山道はここで終わりとなるが、周回ルートはまだ終わってはいない。
ここから深山荘の駐車場まで車道を歩いて戻らなければならないのだった。
標高差は70m弱の登りとなる。車に戻るまではまだ気が抜けない。

 登山口から比較的近いところには中尾高原口バス停があるが、
バスの便数はそれほど多くはなく、予想通りに下山後に都合の良い便はなかった。
バスを利用出来れば数分で深山荘まで戻れるが、新穂高温泉周辺の景観をのんびりと眺めながら歩くのも悪くないかもしれない。






 





蒲田川上の橋より、新穂高ロープウェイの掛かる稜線を眺める

 登山口からはしばらく新穂高温泉とは逆向きに南へ歩いて歩行者用の橋を通って蒲田川を左岸へと渡る。
橋の上からは新穂高ロープウェイが少し離れたところの稜線上に見える。
ふと橋の下を見下ろすと、「新穂高の湯」という露天風呂がある。雰囲気はいいけど半分プールのような感覚で入ったほうがいいかもしれない。

 橋を渡ったところからは県道475号(槍ヶ岳公園線)をひたすら北へ。
「ひがくの湯」を過ぎた辺りからは、山間に深く切れ込んだクリヤ谷を眺められる。
深い森に覆われて登山道の様子は外からは窺い知れないが、周辺の豊かな自然環境を再認識させられる。




 交通量はけっこう多いので車には要注意だが、歩道がある区間もあるので一息入れられる。
駐車場に辿り着くまでは、早くも次に笠ヶ岳を訪れる時や、来夏の行程を考えたりして歩いた。

 クリヤ谷コースは下山で所要7時間だから、これを重装備で登るとなると・・やはり9時間はみておかなければいけないだろう。
でもいずれは登りでクリヤ谷コースを経て笠へ辿り着きたい。でも未踏の笠新道も最初に登りを経験したい気もするし悩みどころだ。

 笠への縦走中、思う存分眺めた穂高の稜線も歩きたいし、双六小屋から北へと目指したい気もする。
また昨夏に歩いた白馬地域も捨てがたいし、暖めている行程はますます増えそうだ。




 鍋平高原への道路が分岐すると、半地下の隧道の中を歩いていく。
隧道内は歩道が無いので最後にしんどい区間だ。しばらく歩くと深山荘前のバス停に辿り着く。
ようやく車道歩きが終わった・・。








2泊3日・笠ヶ岳周回行程全図 ※ 中尾高原口〜深山荘の車道歩きを含みます。

14:08 深山荘・駐車場入口

 クリヤ谷コース登山口から約30分で、待望の深山荘の駐車場入口に到着。
一昨日深夜に到着した時は真っ暗で周囲の様子が分からなかったが、こんなに山深いところだったのか。
読図をすると正面には抜戸岳周辺が見えた筈だが、昨日感動のうちに歩いた稜線には既に大きな雲が覆っている!
麓はこのような好天だが、稜線上はガスで何も見えない状況になっていそうだ。
改めて山の天気の変わりやすさを感じるとともに、肝心なところでは好天に恵まれた幸運を有難く思う。




 下山後も長旅が必要だった表銀座縦走の時とは違って、今回は下山後には比較的早くに車に戻れる行程で楽だった♪
山装備を解いてから、さっそく8月の奥穂下山後にも立ち寄った平湯温泉の平湯の森へ向かう。
平湯温泉は新穂高温泉から30分も掛からない帰路の途中に位置するため好都合だ。




17:00頃 平湯温泉出発

 3日間の行程の疲れを癒してから帰途へ。
しかし3連休の行楽帰りの車が集中し、東海北陸道の白鳥辺りまで断続的に渋滞していた。
これはしんどかった・・。




15日(火)
 0:00頃 帰宅








〜 終わりに 〜

 双六小屋までの道中、次第に天候が悪化していく初日。
申し分ない快晴の下、感動の連続だった笠ヶ岳へ縦走した2日目。
そして引き続く好天の下で下り甲斐のある長大なクリヤ谷コースを堪能した3日目。
前月の表銀座縦走に負けないくらい、本当に中身の濃い3日間となりました!
4日間の表銀座縦走時と、今回の3日間の周回での歩行距離が殆ど同じであることが、数値的にも達成感を裏付けてくれています。

 8月、9月に歩いた槍・穂高の稜線を眺めたことで、今回の笠登頂は今年の北ア遠征の一つの集大成といえそうな思いがします。
来夏、再び北アその他の高山を改めて目指すこととして、今年の遠征山行はこれにて終了となります。

 3日間の笠ヶ岳周回レポにお付き合いいただきまして、ありがとうございました!








行程断面図です ※弓折乗越〜双六小屋間はピストン。笠ヶ岳山荘キャンプ指定地〜笠ヶ岳山頂間は更に一往復しています。




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