「蝶ヶ岳・蝶槍へ往復後、三股へ下山」 2014年 9月28日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「穂高岳」





 3:00 起床

 いつものパターンに比べて、ゆったりした起床時刻。スムーズに撤収・出発準備を進める。
テントの撤収は蝶槍へのピストン後にしようかとも思っていたが、待合せ時刻まで余裕があったので
結局いつも通りにザックに装備品を全てパッキングした。




 5:00過ぎ、瞑想の丘にて母と合流。寒い中、ご来光待ちに入る

 集合時刻に余裕を持たせ過ぎたようで、まだ安曇野の街明り、空には星が見えている。
それでも徐々に明るくなっていき、槍・穂高の山容もはっきり見て取れるようになる。
今日も昨日に引き続き素晴らしい天候となりそうだが、昨夜にTVで見知ったことで
周囲の人々の目も自然に御嶽山へ向かう。御嶽山は噴煙を高く上げて、それは高高度で東へ流れていた。
早く火山活動が収まるようにと思わずにいられなかった。








 行程概要 



 9月27日(土) 三股・林道ゲート 〜(蝶ヶ岳新道)〜 蝶ヶ岳ヒュッテ

 9月28日(日) 蝶ヶ岳ヒュッテ 〜 蝶槍 〜 蝶ヶ岳ヒュッテ 〜(蝶ヶ岳新道)〜 三股・林道ゲート

 5:41 日の出

 2週間前よりやや南寄りに日が昇ってくる。
自分の横では母も初めての北アルプスからのご来光をじっと眺めている。
なお昨日のように麓だけ雨を降らせた雲は浮かんでいない。








徐々に日が当たってくる槍・穂高連峰

 今回は空気が乾燥し過ぎていたのか、朝日で赤く染まることは全くなかった。
母がモルゲンロートを眺めるのはまたの機会に。




 5:30を過ぎた頃ヒュッテからは朝食を誘う放送が聞こえてくる。
しかし誰しもがこの朝の絶景を堪能するのに忙しく、朝食時間になっても食堂は空いているかもしれない。




 だいぶ朝日が高くなってきて、一しきり朝の光景を楽しんでから母は朝食を済ませるためにヒュッテに向かう。
母の朝食が終わるまで自分は瞑想の丘にて待機に入る。








瞑想の丘(2,660m+)

 これほど長く瞑想の丘にて過ごし、槍・穂高の絶景をゆったり楽しむ機会はそうそうないだろう。
もちろん常念岳への縦走には強く心を惹かれているが、また来れば良いだけと言い聞かせる。
初めての北アルプスの母には1泊2日での蝶ヶ岳・常念岳周回はハード過ぎると判断していた。








 6:43 蝶槍へ向けてミニ縦走開始

 ヒュッテでの朝食を終えた母と合流。蝶槍までではあるが、いよいよ稜線歩きをスタートする。
たとえ短い距離ではあっても、母には北アルプスでの“縦走”を少しでも体験してもらいたい。

 蝶槍は瞑想の丘から既によく見えている。かつては蝶ヶ岳の山頂として扱われていたというが、本当に現山頂の2,677m標高点よりも見るからに山頂っぽい。
その少しだけ手前に並んで見えているのが2,664m三角点ピーク。蝶槍のほうが幾分高そうに見えるが、そうすると現山頂との標高差はせいぜい10m程度の僅差といえる。
なお近いように見えても、蝶槍までの所要時間は山と高原地図によると55分となっている。




 周知のとおりに蝶ヶ岳付近は広い二重山稜となっており、縦走路は穂高に近い西側の稜線に付けられている。
これは視界の悪い時にはルートを見失わないように注意が必要かもしれない。








 7:10 横尾分岐(2,625m)

 いくつかのミニピークを緩やかに乗り越えて、横尾分岐に差し掛かる。
ここから横尾までの標高差は1,100mほどもあり、その間は基本的に急登となかなかハードなルートのようだ。

 蝶槍までの稜線は殆ど標高差がないとはいえ、緩やかではあるが小刻みにアップダウンを繰り返す。
母には昨日の疲れもあって、楽々とまではいえない道程のようだ。

 蝶槍まではお手軽にピストン出来るので、ヒュッテから軽装で向かわれる方が多い。
自分ももちろん軽装に切り替えることは可能だったのだが、来るべく縦走に向けてのトレーニングとしてフル装備で向かう。








 7:21 三角点「蝶ヶ岳」ピーク(2,664.5m)

 横尾分岐から一登りでだだっ広い台地状のピークに乗り上げる。
そして縦走路から逸れる形となって東端に設置されている三角点に向かう。

 三角点からは登山者で賑わうのがよく見える蝶槍がほど近くに、そしてその右奥には常念岳が迫力ある姿で迫ってくる。
自分と同じように母も常念岳に惹かれているので、今から向かうことは可能かどうか聞いてくるが迷わず無理と答える。
2泊3日であれば可能であろうけど、おそらく母には常念岳に辿り着くだけで精一杯。今日中に下山出来なくなると考えるべきだろう。

 母には来夏以降、改めて常念岳を目指せるよう、普段の山行を重ねていくよう伝える。
「蝶ヶ岳」三角点にタッチしてから、いよいよ蝶槍へと向かう。








登高欲をそそられる蝶槍

 本家の槍ほどではないが、蝶槍もなかなかのトンガリぶりだ。
10m程度の僅差で蝶ヶ岳山頂になれなかったのがちょっと惜しく感じるほど。

 母も少し先んじて順調に蝶槍へ向かっている。








 7:45 蝶槍山頂(2,660m+)  蝶槍山頂から常念岳を望む。散策気分で来られるのはここまで。常念岳への稜線歩きは機会を改めて近い将来に実現させる。

 ルートは山頂を巻いているということだったが、そのままピークへ乗り上げる形となった。
蝶槍は周囲360度の大展望。そして順光で大パノラマを魅せてくれる槍・穂高が変わらず西側に広がって、
蝶槍でも感動も新たに素晴らしい滞在時間となる。
母も少しだけ近くなった槍をはじめ、昨日覚えたての前穂に至るまでの穂高連峰の山々の名前をそらんじて楽しんでいた。

 蝶槍の山頂は蝶ヶ岳山頂と違って本当に狭い。
続々と登山者が到着、または通過されるので、手際良く間合いを見計らって記念写真を多く撮影した。








槍・穂高連峰大パノラマ

 いつもと違ってあえて山名表示はせず、蝶槍での感動を少しでもありのまま、レポをご覧いただいた皆様にお伝えしたいと願う。本当に心を奪われる大展望だった!







 
 8:20 蝶槍出発

 蝶槍は本当にいつまでも居たい山頂ではあるが、キリがないのでそろそろ重い腰を上げることにする。

 蝶ヶ岳へと引き返す道中もあちこちで写真を撮りながら、ゆったりとしたペースで戻っていく。
蝶槍から見ても蝶ヶ岳まではけっこう距離があるので、ただ歩くだけではなくある程度の所要時間をみておく必要があるだろう。

 なお遠方には東方に向けて噴煙をなびかせる御嶽山が見えている。








蝶ヶ岳へ向けて稜線上を引き返す








 9:33 蝶ヶ岳ヒュッテ到着

 標準よりもだいぶ所要時間を要して蝶ヶ岳ヒュッテに戻ってきた。
ここで小休止を入れて、三股までの下りに備えておく。
母にはアルプスにおいては下りもハードであることを前もって伝え、トレッキングポールをやや長めにしておくことをアドバイスしておく。








蝶ヶ岳ヒュッテを出発したものの、なお立ち去り難いところだった

 昨日とは逆に下り始めると槍・穂高もすぐに見えなくなるので、しっかりと目に焼き付けておくように言った。
母も山歩きを続けている限り、またいずれ再訪することもあるだろう。








10:15 蝶ヶ岳ヒュッテ・キャンプ指定地出発

 蝶ヶ岳、そして大展望を振り切るように三股へ向けて下山を開始する。
一晩お世話になったキャンプ指定地、そして蝶ヶ岳山頂を横目に見ながら大滝山分岐へ。
この時、自分たちと入れ替わりに登ってこられた方々も歓声を挙げていた。
この大展望は誰にとっても本当に感激させてくれるだろう。








10:26 大滝山分岐(2,600m+)

 下り始めるとやはり早い。あっという間に大滝山分岐へ差し掛かる。
ここで早くも森林限界を下回って、基本的に視界は開けなくなる。
但し常念岳に限ってこの後も長く姿を見せてくれる。蝶ヶ岳新道を下りながらも常念岳への思いは募る一方となる。

 母は少し暑くなってきたようで、大滝山分岐において一枚ジャケットを減らしていた。








常念岳を見やりながら蝶ヶ岳新道への長い下りに挑む

 自分にとっては過去何度か経験済みの北アルプスの下りではあるが、母にとってはこれも初めての体験。
下りはどう歩こうと登りより早い。時間もたっぷりあるので、足運びを丁寧に行うことにより疲労を出来るだけ防ぐようアドバイスする。




 昨日の急登は今日は激下りに。適度に小休止を入れつつ、ゆっくりめに下っていく。








まめうち平へ向けて延々と下り中








部分的にはハシゴもあり








12:04 蝶沢源頭部(2,180m+)

 常念岳の好展望地である蝶沢源頭部まで降りてくる。
本当にどっしりとした山容で見とれてしまうが、周囲を彩る紅葉も変わらず見事だった。








標高2,000m〜1,900mに広がる森を抜けると・・








13:12 まめうち平(1,916m)

 多くの登山者で賑わう、まめうち平に到着!
三股まではまだ道半ばではあるが、最も足場の悪い急な下りを無事にこなしたことで、ほっと一息つけるところだ。
ここでもしっかりと小休止、ならびに行動食を摂って後半の下りに備える。








標高1,900m〜1,700mへの急坂

 2,200m〜2,600mにかけての急坂よりは整備されているが、引き続いて丁寧に下っていく。
昨日とは違って引き続いて好天で、やはり天候が違うと周囲の雰囲気も全く別の場所のようだった。








13:41 “三股へ2.0kぜよ”(1,700m+)

 急坂が一段落すると、三股まで2kmの地点に差し掛かる。
昨日はガスガスだったので窺い知れなかったが、驚いたことにここからも常念岳がよく見える。
遥かに高くなった常念岳を見上げ、近い将来の登頂を期すと共に、おそらくこれが今日最後の展望所であろうと思うので淋しさを覚える。









 尾根を外れると森の中のゆったりした下りとなる。
昨日と違って地面は乾いており、たいへん歩きやすい。
母は思ったよりも調子良く歩いているが、もうだいぶ脚が疲れているはず。
適度に自分のペースを加減しつつ下っていく。








14:02 ゴジラの木

 そして再びのゴジラの木に到着。西日を浴びてやはりゴジラの雰囲気も明るかった。
ここでも小休止を入れて、この後の部分的な急坂に備える。








急な階段を慎重に下って、ようやく沢筋へと降り立つ

 蝶ヶ岳より始まる長い下りもようやく終わりが見えてきて、ほっとすると同時にやはり寂しさを感じてしまう。








14:20 力水

 最後の水場という力水まで降りてきた。力水は好天の今日もしっかりと水を流していた。
ここから三股まではもう1kmも残っていない。








沢の音を聞きながら緩やかに下っていく

 さすがに母もだいぶ脚の疲れを覚えてきているようだ。
もう三股までさほど遠くないし、急なアップダウンもないので、ゆっくりとマイペースで下ってほしいと伝える。








吊り橋を疲労と達成感と共に渡っていく

 吊り橋を渡ってしばらく沢沿い(本沢)を歩いていくと前常念分岐。
分岐からは橋を渡ってすぐに三股に到着する。








14:49 三股登山口(1,350m+)

 昨日は早朝薄暗いうちに、小雨の中を通り掛かった三股登山口に到着。
残された林道歩きを前にして、ここで最後の小休止をとる。
ここにもトイレが設置されているのはありがたい。




 緩い未舗装林道をゆっくりと下っていく。
母も自分と同じようにまた次の山行に思いを馳せていたよう。
しんどかったけどまた北アルプスへ登りたいと言う。自分としても来夏もぜひその機会を設けて、その気持ちに応えたい。








15:12 三股・林道ゲート(1,280m+)到着

 今回の山行の余韻、そして次への山行へ思いを巡らせながら、緩い下りの未舗装林道を歩いていくとまもなく三股・林道ゲート(三股駐車場)に帰還!
母も初めての大きな達成感、そして何ともいえない余韻を感じていたようだ。
そして自分も母の初北ア山行を無事に終えらせることが出来て、こればかりは単独行では得られない充実感に包まれていた。
昨日の登りは本当に辛かっただろうけど、本当に母はよく頑張ったと嬉しく思った。




 山行装備を解いて出発準備を終えてから三股駐車場を出発。帰路の途上にある“ほりでーゆ・四季の郷”へ向かう。
山行後の温泉もまた大きな楽しみの一つ。母も大いに満足だったよう。
 山行の汗を流してリフレッシュしてから帰途へ着く。








 〜 終わりに 〜

 初日の朝方を除いて、2日間とも絶好の好天に恵まれ、母の初北アルプス山行を無事に終えることが出来ました。
普段の山では得難い感動の大きさ。そしてかなり疲労していたはずにも関わらず、帰りの車中も元気で殆ど起きておりました。
母が本当に楽しんでくれたことで、また自分としても手ごたえを得ました。これはぜひ2回目、3回目と行きたいものです。

 それはそれとして、今回の山行を通じて、常念岳・蝶ヶ岳周回を是非とも実行させたく思いました。
この思いは早くも2週間後に実現することになります。それはまた別の機会にレポとして取りまとめてまいります。

 今回もお付き合いいただきまして、ありがとうございました。




 また、今回の蝶ヶ岳レポが完成するまでの間に、御嶽山では多くの方々の死亡が確認され、
そして今なお数名の方が山に取り残されているという現実に本当に胸が痛みます。
山行中に予期せぬ事態に直面され、自分に置き換えて考えてみるとたいへんな恐怖感だったのではと想像します。
今回の噴火で亡くなられた方々に、改めてご冥福をお祈り申し上げますと共に、
山に残されている方々が1日でも早く山から降りられることを願っております。








行程断面図です




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