「雲ノ平/読売新道縦走2日目・双六小屋から雲ノ平」 2015年 9月20日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「三俣蓮華岳」、「薬師岳」



山と高原地図 
 : 「劔・立山 北アルプス」




 1:00 起床

 仕事疲れ+寝不足+初日の小池新道の登りの効果で気持ち良く熟睡出来た。
今日は初めて憧れの雲ノ平へ足を踏み入れることになる。
すんなりと起きて出発準備を進める。








 行程概要 



 黒部源流渡渉点は大雨などで増水すると渡れなくなります。
 祖父岳南西山腹では夏の遅い時期まで雪田が残るそう。また視界不良の際も要注意と感じました。

 3:12 双六小屋(2,540m+)出発

 三俣に着く頃に夜明けを迎えるよう双六を出発。
まずは裏銀座縦走で下った急坂を逆に登り返していく。
登山道は明瞭そのものなので、ヘッドライトの灯りで歩いても難しくはない。








 3:35 巻道分岐(2,660m+)

 歩き始めなので非常にスローペースで急坂を登り終える。
この分岐からは裏銀座縦走で歩かなかった巻道へと入っていく。

 巻道は途中までは比較的穏やかな地形の中を歩けるのだが、途中からは意外にアップダウンが激しくなる。
また涸れ沢を辿るような岩場もあったりで、なかなかに気の抜けないルートだった。
昨日の疲れもあるので、巻道を歩いてもペースが上がらない。
中盤まで進んだ辺りで後続の登山者数名に抜かれる。








三俣蓮華岳が近づいてくる

 薄明るくなってくる頃にようやく三俣蓮華岳が近づいてきた。
この頃、好天予報が外れたかと思うほど稜線ではガスが湧いていて不安になる。
実のところ、中道を経て三俣蓮華岳へ立ち寄ることを考えていたが、それはまたの機会においておくことにして巻道を選んだ。
この日は風通りの良いところでは夜中から強風が吹き、この巻道でもレイヤリングの調節が度々必要な状況だった。
夜中の稜線歩きは回避したのだが、結果的には良かったのではないだろうか。








 5:25 三俣峠(2,750m+) 三俣蓮華岳へは急坂ではあるが所要時間はあまり掛からない。

 再び緩やかな登りになった巻道を辿っていくと、ようやく三俣峠に到着!
裏銀座縦走では真っ暗な中をここから三俣蓮華岳へ登っていった。
このような光景が広がっていたのかと答え合わせをした気分だった。

 なかなかに険しいと感じる巻道だったが、ここから三俣までは下りのみとなる。

 なおガスは三俣蓮華岳の辺りだけに掛かり続けていたので、周囲の景観はよく見えていた。
但し遥か東方の表銀座の稜線上にはやや大きな雲が掛かっていて、今日のご来光は控え気味だった。

 三俣峠からしばらく緩やかに下っていくと、段々と急坂になっていく。








再び「黒部の山賊」の世界、三俣へ!

 裏銀座縦走時に登った登山道を逆に三俣に向けて下っていく。
前回はヘッドライト頼りで歩いたとはいえ、やはり一度歩いた登山道なので何だか見覚えが。

 下っていくと正面に遮るものなしに鷲羽が再び美しい姿で出迎えてくれた!
眼下には今夏に素晴らしいテン泊を過ごした三俣蓮華岳キャンプ場と三俣山荘。
懐かしい故郷へ戻ってきたような気分で下っていく。








 6:00 三俣蓮華岳キャンプ場(2,550m+)到着

 テン場の一角にある岩に腰掛けて、時間的に朝食となる行動食を摂る。
ついでに水場にも寄って美味しい水も出来るだけ飲んでいく。三俣の水はやはり本当に美味しい♪

 この時間はテントの数は程々ではあるが、今日も遅い時間帯になれば大入り満員になることが予想される。

 今日はここでテン泊しないのが残念ではあるが、双六から2時間少々の行程で打ち切っては短過ぎるので仕方がない。
但しテン泊にこだわって読売新道へ突入するのであれば、前夜泊地はこの三俣が最良なのは間違いないと後に経験することとなる。








 6:15 三俣蓮華岳キャンプ場出発
 
 三俣が名残惜しくはあるが、初めての雲ノ平へ向けて出発する。
テン場で最も三俣山荘寄りにある分岐から入って、黒部源流へ向けての下りとなる。
ここから再び未踏ルートへ踏み込んでいくことになる。








間近を通過する鷲羽岳を見やりながら下っていく  祖父岳との谷間が黒部源流 

 テン場を出発するとすぐに水量豊富な沢に沿っての下りとなる。
双六からの巻道で予想よりやや時間が掛かったが、狙いどおりに朝の清々しい光景の中を黒部源流へ向けて歩き始めることが出来た。

 同じ方向へ歩く登山者はちらほらと見られるが、鷲羽岳へ登っていく方のほうが圧倒的に多かった。
朝の鷲羽山頂はさぞ最高だっただろうと思う。

 最初は沢の右岸を下るが、まもなく左岸へ渡ってそのまま源流の緩やかな谷間の地形へ下っていく。
等高線が広がっている辺りは湿地帯のようになっていて木道が設けられているが、これがまた非常に滑りやすかった。








 6:45 黒部川水源地標

 行く手にヘリポートか小さいテン場のように見える広場があるなと思ったら、黒部川の水源地標が設置されているところだった。
まさにこの谷間から黒部川の水の旅が始まるのであり、また今回の山行の終点が黒部ダムであるという点において、
山行の途中で水源地を通過するというのは感慨深いものがある。








黒部川源流付近の分岐(2,390m+)  どちらへ向かっても雲ノ平へ辿り着けるが・・。 

 黒部川水源地標を過ぎて小さな沢を渡ると、今日の行程の中でも重要な分岐に差し掛かる。
岩苔乗越と祖父岳山頂を踏んで雲ノ平へ向かうパターンと、祖父岳の西側山腹をぐるっと迂回するパターンを選ぶことが出来る。
自分が選んだのは3日目序盤の行程と被らないようにするため後者のパターンだった。
結果的にはメリット、デメリット双方あったが・・。




 まだ日の当たらない黒部源流は休憩にも快適だった。
源流部の小さな沢で貴重な黒部源流の水を汲んだり、冷た過ぎる水だったが手で掬って飲んだ。
水がこれほど美味しく感じる体験にそうそう出会えるものではない。
黒部源流の水は後ほどスポーツ飲料の素を溶かして、3日目の長丁場を支えてくれることとなる。








 7:08 黒部川源流部を渡渉。祖父岳へ向かう いよいよ雲ノ平への入り口となる。

 前述の分岐から少し下ると、黒部川源流部で本流と思われる沢を渡渉する。
渡渉場所にはロープが張られているが、大雨で増水した時には渡れなくなるという。
この時は登山靴の下部を濡らす程度で難なく祖父岳側へ渡ることが出来た。

 それにしても目で見ても本当にきれいな水で心まで洗われるようだ。








比較的短めの2日目の行程において最大の登り 瞬く間に黒部源流が遠くなっていく

 祖父岳西側山腹を迂回する場合、黒部源流部から始まる標高差180m余の急坂を乗り切らなければならない。
地形図でも詰まった等高線にジグザグの破線道が描かれていて、我慢のしどころであることが一目瞭然。

 またルートは沢状に山腹を降りていくガレ場に設けられていて、若干ルート不明瞭と思われるところがある。
幅広に岩場が続くので、言い換えればどこにでも歩いていけるような状態が続く。
うっかり道迷いしないよう、気を抜かずにルートファインディングを行う。

 この激登りの合間に朝日が強く射してくるが、これがまた暑かった。








 7:52 2,580m+付近。2日目で最も大きな登りを終える  三俣山荘は最高のロケーションに建っていることが分かる。 

 下り中の方々にも励まされながら、順調に祖父岳南山麓の激登りを終えた。
急坂を登りきる頃には、いつの間にか再び三俣山荘とほぼ同じ高さまで登り返していた。

 ほぼ真北から眺める三俣は一層山深い雰囲気を漂わせる光景だった。
後方の槍はいつもどおりに目立っている。
自分にとっては、三俣から槍までを歩き切った裏銀座縦走3日目の行程を思い出させる感慨深い絶景だ。








比較的緩い登りが続く祖父岳中腹

 黒部源流からの山麓の急坂とは対照的に緩やかな登りが続くようになった。
三俣蓮華から黒部五郎へ続く稜線と並走するように歩き、広い山腹へと乗り上げていく。








 
 8:13 祖父岳西山腹を巻きにかかる

 広い台地状の地形に乗り上げると、異世界のような空間が広がる。
地面の様子から祖父岳が火山であったことを思い出させてくれた。
この後訪れる雲ノ平は祖父岳の噴出物が堆積することによって形成されたという。
祖父岳山頂は右手上方によく見えているが、この角度で見ると青々としたハイマツに覆われて火山だった痕跡は見受けられない。








かつての火山活動の名残が見られる祖父岳西山腹  8:33 日本庭園付近(2,660m+) 

 地形図どおりに緩やかな地形が続き、散策気分で行程を進めることが出来る。
ルート沿いは黒っぽい土や岩に覆われ、NZで山行を始めて間もない頃に歩いたトンガリロ国立公園を思い出していた。
今のところ本当に活動中の火山に登ったのは、あの時が最初で最後になっているが・・。

 日本庭園はいつの間にか通過してしまったようで、ルート上で出会った他の登山者の方から確認してこの辺りだったかなとレポ作成中に推測した。
いつしか雲ノ平の北側にそびえる薬師岳が大きく見えるようになってくるところだ。
なお雲ノ平には○○庭園と名付けられたところが合計8ヶ所あって、名付け親は三俣山荘のご主人であり、「黒部の山賊」の著者でもある伊藤正一さん。
同書でも雲ノ平は度々採り上げられているところであって、再びこの世界に入り込んでいく喜びも感じられる。








遂に待望の雲ノ平が見えてくる!  黒部五郎から北ノ俣へ続く稜線も見渡せる 

 快適に歩ける木道が続くようになり、広い祖父岳山腹の向こうには遂に雲ノ平が見えてくる!
そしてその中心部には雲ノ平山荘もまだ小さいながらもすぐに見つけた。
テン場はまだ見えてこないが、直前までやってきた雲ノ平に否応なしに気分が高まる。








そしてゆく手には遂に読売新道の稜線が立ちはだかる!

 そろそろ祖父岳山頂から下ってくる登山道との分岐に差し掛かるのではという頃になると、今度は水晶岳、赤牛岳が揃って見えてくるようになる。
ここから見ても改めて長大な稜線であることが伝わってくる。あの稜線を明日歩くのかということで、期待は更に高まる一方だ。
しかし読売新道で最も辛い区間は赤牛から奥黒部ヒュッテへの長い長い下りであろうと思う。
ここから見えている稜線だけでも長いが、下りの所要時間も計算に入れておかなければならない。








 9:02 祖父岳分岐(2,680m+)

 多くの写真を撮りながらのゆったりとしたペースで、ようやく岩苔乗越からのルートと合流する祖父岳分岐に差し掛かった。
分岐から祖父岳へは黒々とした岩だらけの山腹が続き、見た目にも火山らしい姿だ。

 3日目の行程序盤で暗いうちにここから祖父岳へ登っていくことになるが、見た目以上に険しい登りを経験することになる。

 山と高原地図によると、ここから雲ノ平キャンプ場まで登りでも下りでも30分とあるが、広大な雲ノ平の光景からするともう少し長く掛かるように思えてくる。
分岐からはしばらく水晶岳方面に直進してから、東側から迂回するように伸びる尾根に沿って雲ノ平へと下っていく。








本日の幕営地、雲ノ平キャンプ場は既によく見えているが、この後大きく東側から回り込んでいく

 祖父岳北側山腹の急斜面を慎重に降りていく。
地形図には祖父岳分岐付近から雲ノ平キャンプ場へと直進する破線道が描かれているが、植生保護のためということで立ち入り禁止。
実態は東側を回り込む登山道しかない。目の前に目的地はよく見えているが、到着までまだしばらく時間が掛かりそうだ。
それはともかく、見渡す限りの大平原が続く雲ノ平の光景を前にしてただただ感動するばかりだった。








雲ノ平へと続く登山道は意外に変化に富んでいる

 地形図からすると緩やかな尾根の上を快適に歩けるようなイメージが沸くが実際はかなり違った。
最初だけは尾根直上のハイマツ帯を辿るが、途中からは岩苔小谷側の険しい山腹を伝っていくようになる。
急な階段、狭い足場の岩場があって、3日目の出発直後は気を付けなければいけないところと認識した。

 それでも東側に開けた区間がしばらく続くので、目の前にそびえる水晶岳の雄大な姿を思う存分眺めることが出来る。
それにしても水晶〜赤牛だけでもかなりの距離があることが視覚的にもよく分かる光景だ。








東山腹から再び尾根直上に乗り上げるといよいよ雲ノ平が間近に

 尾根直上では再び深いハイマツ帯を横切る木道を辿っていく。
眼前にはもう殆ど標高差の無いところに雲ノ平が広がっている。
しばらく緩やかに下っていくと、ようやく広大な雲ノ平へ東端から入っていくことになる。








 9:44 スイス庭園分岐(2,590m+)

 周囲はいつしかハイマツから広大な湿原へと光景を変えていく。
殆ど傾斜の無くなった木道をしばらく辿っていくと、スイス庭園への分岐に差し掛かる。
雲ノ平にある庭園の中で、名前からして最も楽しみなところではあるが、まずはテント設営を優先したい。








 9:50 雲ノ平キャンプ場分岐(2,590m+)

 木道を緩やかに下っていくと、キャンプ場への分岐に差し掛かる。
分岐付近でテントを設営中の方も居られるが、遠目にはまだ水場やトイレに近い主要なところも余裕がありそうだった。
分岐を道なりに直進すれば雲ノ平山荘へ向かうが、とりあえず憧れのテン場へ続く祖父岳方向へ下る支線へと入っていく。




10:00 雲ノ平キャンプ場(2,570m+)到着!

 遂に辿り着いた憧れのテン場。手早く見渡して設営場所の選定に掛かる。
いつもは不便でも静かな環境を優先するが、今回に限っては明日の超早発のために出来るだけ出口に近い場所を選んだ。
遠目ではまだまだ多くのテントが設営可能に見えたが、実際は大岩がゴロゴロしており水平でテントを張りやすいスペースは限られている。
自分は岩の間の水平のスペースは確保出来たが、部分的には石を敷いて整地する必要があった。








雲ノ平キャンプ場にて。順調にテント設営を完了。

 近くには祖父岳、黒部の谷を挟んで黒部五郎岳が眼前に見える。
今日は強風の心配はないと判断して、テントの入り口をお好みで黒部五郎に向ける。

 テント設営後、一旦荷物の整理のためにテントへ入るが、好天のためにたいへん暑かった。
後から振り返れば、北アルプス山中において、この2日目が最も好天の日だったのだが・・。




11:08 雲ノ平キャンプ場出発

 今日の拠点も無事に確保出来たし、心置きなく雲ノ平の散策に出掛けよう!








キャンプ場から雲ノ平山荘へは約30分の道のり まさに天上の別天地の光景が広がる

 キャンプ場分岐まで僅かに登り返した後、雲ノ平山荘へは概ねごく緩やかな下り。
どこの登山口から登ってきても基本的に2日は必要な雲ノ平だが、好天の連休2日目ということで木道は大勢の登山者が行き交っている。

 雲ノ平山荘はキャンプ場分岐から既にその建物が見えているが、やはり雲ノ平が初めての自分にとって撮影が忙しくてなかなか辿り着きそうにない。








木道の行く手に雲ノ平山荘のユニークな建物が大きく見えてくる。左奥は黒部五郎岳 雲ノ平山荘手前の草原 

 人通りが途切れるのを見計らって撮影しているので、静かな光景のように写っているが実際は賑やか。
人とすれ違う時は木道が広がっているところや、横の岩に乗ったりしてやり過ごす。

 雲ノ平山荘手前で高天原方面へ向かう登山道が分岐する。
雲ノ平以上に秘境色が濃いという高天原。テントを張るところはないが、いずれ山小屋泊で尋ねてみたい。








11:41 雲ノ平山荘(2,550m+)到着!  好天続きの奇跡のシルバーウィーク効果。恐るべし。 

 テン場からゆっくりと30分以上掛けて、遂に雲ノ平山荘に到着。
小屋前では大勢の登山者が寛いでいる最中だ。

 自分も小屋前で記念写真を撮ったりしたうえで、山小屋に入ってテント受付を済ませよう。
申込用紙(兼タグ)は三俣蓮華岳キャンプ場の時と書式が同じ。ここも伊藤さんが運営を始められた山小屋だ。








2010年に新築されたばかり、2代目雲ノ平山荘。屋内もまだまだきれい!  雲ノ平山荘南側テラスはギリシャ庭園の観覧席 

 テン泊、山小屋泊問わず多くの登山者で受付は賑わっていた。
テント受付と同時に雲ノ平のバッジと手ぬぐいを購入。滅多に来られないところだからついついお土産も買い込んでしまう。

 テン泊受付を済ませた後、南側のテラスにて昼食にあたる小休止をとっていくことにした。
雲ノ平山荘の南側一帯はギリシャ庭園が広がっている。
ギリシャ庭園と名付けられた理由はよく分からないが、祖父岳、三俣蓮華岳を借景にした美しい風景であることには間違いない。

 テン泊受付を済ませて用事の済んだ今、この後の行動をどうしようかと山と高原地図を観て考える。
雲ノ平西端のアラスカ庭園はまたの日においておくとして、雲ノ平山荘からだと程近いところにある祖母岳まで足を伸ばすことに決めた。




12:03 雲ノ平山荘出発

 雲ノ平山荘は続々と各方面から到着してくる登山者で大賑わい。
山小屋周辺で耳に入ってきたツアー登山の無線会話では、靴底が剥がれてしまった方が居られるとか・・。
どんなに短い行程で下山するとしても2日がかりの雲ノ平では絶対避けたいトラブルだ。
自分の現在の登山靴は3年目だが、状態の確認は大事だと再認識した。








 
祖母岳分岐(2,510m+)    

 雲ノ平山荘からはごく緩い下りの木道を西へ少し辿るだけで祖母岳分岐に辿り着く。
目指す祖母岳は南側に見えている小高い丘だ。
東側山腹から回り込んで、続いて木道を登っていく。どんな光景が待っているだろう。







 
祖母岳山頂付近は広大な湿原が広がる

 辿ってきた木道は北側から広大な祖母岳山頂の一角に乗っかり、引き続いて緩やかに最高所を目指していく。
僅かに標高を上げただけだが、周囲は雲ノ平の壮大な光景が広がってきた!








12:23 祖母岳山頂(2,560m+)到着!  アルプス庭園ともなっている祖母岳山頂

 分岐から辿ってきた木道は祖母岳山頂に行き当たって終点となる。
山頂に居られた三名の先客の方々と挨拶を交わし、祖母岳山頂での時間を楽しんでいきたい。

 山頂西側はあまり景観が開けないが、南西に位置する黒部五郎の雄姿には改めて見入ってしまう。
ご一緒された方々は、黒部五郎のカールルートと稜線ルートについてお話しされていたが、
既に歩かれた方はぜひ!とカールルートを薦められていた。
黒部五郎も近い将来に登るリストに当然入っているので、大いに勉強させていただいた。
ところで黒部五郎の左側には笠が見える筈だが、どんどん湧いてくる雲が邪魔している。








 
祖母岳山頂からは雲ノ平一帯が好展望!  祖母岳からも遥か遠くに槍が見える 

 先客の方々が降りられたので、途中からは祖母岳山頂を独り占め状態となった。
一人で静かに心ゆくまで雲ノ平の景観を目に焼き付けておいた。
明日未明から縦走することになる祖父岳から読売新道への稜線をはじめとして、見渡す限り全方位を山々に囲まれている。
街が全く見えないところに居るというのは日本に居る限りは滅多にないことであり、この雲ノ平に居る時間がとても貴重なものと思えてくる。

 広大な雲ノ平の撮影には広角レンズが基本的に好適だけど、せっかく持ってきた望遠レンズも使っておきたい。








 
黒部五郎岳。祖母岳からはカールが隠れ気味。 雲間から何とか見えた笠ヶ岳。雲ノ平から見ると富士山みたいに美しい。 








見事に雲ノ平の光景に溶け込んでいる雲ノ平山荘。背後の水晶岳が存在感抜群!  裏銀座縦走時に初めて見た赤牛岳。北ア最深部の山の一つだが、明日遂に到達することになる。 




 出来るなら本当にいつまでも眺めていたい絶景に囲まれているが、テントに戻って明日に備えなければいけない。
ちょうど団体さんが登ってこられたのを契機にして、来た道を引き返すことにしよう。




12:45 祖母岳山頂出発

 キャンプ場へ戻る道中も足止めさせてくれる光景に満ち溢れている。
帰りを急ぐ必要はないので、好きなだけ撮影しながら雲ノ平の散策を引き続いて楽しんでいきたい。








 
黒部五郎と同じく未踏の薬師を眺める








 祖母岳分岐から雲ノ平キャンプ場へ向けては、緩いながらも登りが続いて地味にしんどい。
途中の雲ノ平山荘にて小休止を挟んでいった。

 テントへ戻る前に、後回しにしていたスイス庭園へ立ち寄るのを忘れてはいけない。
スイス庭園は雲ノ平キャンプ場分岐を少しだけ通り過ぎたところ、雲ノ平東端の水晶岳に近いところにある。








祖母岳の東山麓へ下って、雲ノ平のメインルートへ再び合流する





















 
13:50 スイス庭園到着

 今日眺めてきた各庭園の中で、自分が最も楽しみにしていたのがスイス庭園。
祖父岳から下ってきて最初に辿り着いた分岐から短い支線に入っていく。




















 
点在する池塘の中を進んでいく。眼前には薬師、そして水晶〜赤牛の読売新道の稜線が横たわる スイス庭園から見上げる水晶岳はまさしく圧巻! 

 湿原の中で池塘が点在し、そして周辺を高山で囲まれる光景を懐かしく感じた。
思い出したのはNZのルートバーン・トラックで訪れたキー・サミットだった。
雲ノ平は本当に日本離れしていると思うし、北アルプスの懐の深さも改めて感じられるところだ。









 「黒部の山賊」で触れられている愛犬ジャムの件で出てくるスイス庭園。
ジャムは伊藤さんが写真を撮影する際、構図の中で良いポジションでスタンバイしてくれたという。
伊藤さんが水晶岳をバックにジャムの写真を撮られたのはこの辺りではないかなと推測した。








 
間近に見える読売新道の稜線に目が釘付けとなる  二つの稜線に囲まれ、なかなか見る機会のない高天原、岩苔小谷を初めて見下ろす 

 祖母岳と同様、スイス庭園の木道も終点が展望地になっている。
ここからテン場は程近いところにあるので、心ゆくまでゆったりしていくことにしたい。

 それにしても水晶、赤牛の稜線は本当に見れば見るほど長い!
明日は本当に気合を入れて掛からなければならない行程だと改めて感じさせてくれる光景だ。

 一方、岩苔小谷の遥か下方、写真では分かりにくいが、高天原山荘もはっきりと見えた。
テント泊は出来ないところだが、いずれは訪れて高天原の温泉にも浸かりたい。








14:15 スイス庭園出発

 充分にスイス庭園を満喫してから、ようやくテントへと戻ることにする。
まるで夢を見ていたかのような雲ノ平の散策が瞬く間に終わった。
























 
14:23 雲ノ平キャンプ場に戻ってくる
夕方、シルエットになった黒部五郎を眺めつつ、明日への英気を養っておく。

 3時間超の雲ノ平の散策を終えて、そこそこ疲れた状態でキャンプ場に戻った。
明らかに午前に比べて増えたテント群が圧巻だった。

 水の補給や早めの夕食、そしておやつのポップコーンを平らげるなど、手早くやるべきことをやって就寝に向けて準備。
なお、雲ノ平キャンプ場の水場の水量はたいへん豊富。水を被って頭を洗ったが冷たくて最高にリフレッシュ出来た。




 全て用事を終えた状態で夕刻を迎え、リラックスして黒部五郎の右に沈んでいく夕陽を眺める。
この時、好日山荘で初めて買っておいたドリップタイプのコーヒーを試してみた。
キャンプ場の水場で汲んだ水で煎れたコーヒーはいろんな意味で濃い味だった。
美味しいコーヒーを飲みつつ、黒部五郎を眺めたのは、本当に贅沢な時間だった。




 同時に、山と高原地図も眺めて明日の行程を再度チェックしておく。
これ以上はないというほどの長丁場の行程を考えると、出来れば水晶岳辺りで日の出を迎えたい。
標準所要時間ではここから水晶岳までは3時間10分となっているが、今日実際に見た光景からするともっと掛かるだろう。
ということで自分のペースも考えて、水晶岳まで4時間と想定。日の出時刻が5:30なので、ここを出発するのは1:30。
よって起床時刻はまだ日が変わらない23:30とした。
これだけ早く出発しても、明日の目的地である奥黒部ヒュッテに辿り着くのは順調にいって15時頃の見込み。
ここまで早く起きて行動を開始するのは滅多にないだろう、というかこれが最初で最後になるかもしれない。

 日没直後、まだまだ明るいうえに、どんどん新たに登山者が到着してくる中で、自分はそそくさとシュラフに入る。
読売新道縦走という勝負の3日目を前にして、心身共にエネルギーを充填出来た雲ノ平での1日となった。









 「雲ノ平/読売新道縦走3日目・雲ノ平から奥黒部ヒュッテ」へと続きます。

行程断面図です




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