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「鹿島槍ヶ岳/鹿島槍登頂、そして扇沢へ戻る」 2015年10月18日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「十字峡」、「黒部湖」




 2:00 起床




 3:30 冷池山荘・キャンプ指定地(2,470m+)出発

 張りっぱなしにするテントに余分な装備を置いといて軽装で鹿島槍を目指す。
さすがに稜線上の冷え込みは相当なもので、地面にはびっしりと霜が降りていた。
ヘッドライトで地面を照らすと霜がキラキラと光ってきれい。でもスリップしないよう慎重に足を運ぶ。

 道中は二重山稜になるところもあり、けっこう広い稜線が続くが前日に下見をしていたこともあって、
順調にナイトハイクしていく。

 テン場を出発して間もない頃に1人だけ後続の方に道を譲ったが、その後は鹿島槍まで終始誰とも出会わず静かな稜線歩きとなる。

 稜線自体は比較的緩やかな地形だが、布引山が近づいてくると一転して激登りとなる。
それでも軽装の機動力にものを言わせて、自分にしては良いペースで登っていけた。








 行程概要 

 4:22 布引山(2,683m)

 ルートを少し長野県側へ外すようにして布引山に到着。
周囲の状況からしてここはピークらしいピークのように思えた。

 ここは下りの明るい時にじっくりと楽しむとして、息を整えただけですぐに出発。



 布引山を過ぎると僅かに下りとなるが、すぐに緩やかな登りが始まる。
そして鹿島槍・南峰に近づくにつれて再び激登りとなる。
その頃には周囲が何となく薄明るくなり、山の輪郭が掴めてくるようになる。
ふと頭上を見上げると、いつしか鹿島槍南峰の人の動きが分かるようになるまで接近していた。








 5:15 鹿島槍ヶ岳・南峰山頂(2,889m)到着!  

 思ったよりも随分早く、あっさりと鹿島槍南峰に辿り着いた!
この時、先着の方々は10人少しくらいだっただろう。
歩いてきた冷池山荘方面の稜線を見ると、ヘッドライトの灯りが数個チラチラと動いているのがよく見えている。

 周囲の方々と時折会話を交わしつつ、広い南峰の上を歩き回って撮影の下見に掛かる。
元々じっとしていられない性質ではあるが、動き回っておかないと山頂での寒さは半端ではなかった!








やや明るくなってきたものの、まだまだ星々が煌く空が広がっていた まだ大町の夜景が見える中で黎明が始まる 

 まだ夜が明けていなうちから、山頂から広がる感動的な絶景をシルエットで充分に窺い知ることが出来る。
そうこうしているうちに段々と東側から明るくなってきて・・








鹿島槍ヶ岳・南峰山頂(2,889m)

 次第に明るくなってくる山頂と歩いてきた稜線。爺ヶ岳の三峰が一段低いところに!








鹿島槍での待望のご来光! 憧れの吊尾根を照らす! 

 噴煙を上げる様子が見える浅間山の北側から朝日が昇ってくる。

 次第に赤く焼けてくる、鹿島槍・吊尾根のモルゲンロートに感動する!
遠方からだと南峰、北峰はすぐ隣に見えるが、実際に南峰に立ってみると、双耳峰の間はそれなりに距離がある。
しかも吊尾根もなかなか険しそうな急坂の岩稜となっている。
北峰は南峰よりも僅かに50m弱だけ標高が低いが、あちらも山頂はけっこう広いように見える。

 それにしても刻々と色鮮やかになってくるモルゲンロートを見るのは、いつものことながら何とも言えない時間だった。








鹿島槍・南峰北辺より。五竜、白馬方面を遠望。 そして劔! 

 北側の展望もまた絶景!

 八峰キレットの岩稜、そしてここから見ると若干低いが威風堂々とした五竜。後ろの唐松は見えていないようだ。
八方と五竜のスキー場から最寄りの二峰は自分にとって未踏のまま。
唐松・五竜が後回しになっている理由は、1泊2日だとやや忙しいが、2泊3日掛けるのもやや時間を持て余し気味に感じるということもある。
とはいえ近い将来に確実に登るところになるだろう。

 今回は凍った残雪による滑落の恐れを考え、北峰登頂はまたの機会とした。
まあ雪が無くても往復1時間程度必要なので、これから扇沢へ下山する行程に加えるのは時間的にやや余裕が無いかもしれない。

 更に遠方には白馬、栂池までの稜線が見通せるが、ここからだと白馬鑓と白馬岳が殆ど重なって見えていた。
小蓮華山は変わらず優美な稜線を魅せてくれている。

 
 そして西側には劔が意外なほど近くに見える!ここから劔を眺めて、誘われない登山者はいないだろうと思わせる姿だった。







2015年シルバーウィークの長期縦走のハイライトだった水晶・赤牛を遠望  

 鹿島槍から意外なほど手に取るようによく見えて驚いた!
祖父岳からの長大な稜線歩き、そして長い下りの読売新道に苦闘した1日を昨日のことのように思い出される。
遠方からだと優美な稜線に見えるが、振り返ってみてもよく歩いたなと自分でもつくづく感じる。

 水晶・赤牛の手前には未踏の針ノ木周辺の稜線も控える。
見える範囲に次々に新たな目標が指し示される北アルプスの規模を改めて体感する。








裏銀座遠望 槍・穂高遠望 

 もう随分前のことのように感じてしまうが、夏に縦走した裏銀座を一望する!
稜線の高いところではうっすらと雪で白くなっているのが見える。

 裏銀座縦走の果てに今夏も踏むことの出来た、本家の槍はどこまでも尖っている。
今年は穂高の稜線は歩いていないが、また機会を見つけて前穂〜槍間を狙ってみたい。








富士山、南アルプスまで遠望 二等三角点を忘れずにタッチしておく 

 悪天のためにまだ全く展望を得られていないままの北岳もいずれリトライしたい。
富士山はもう少し人が少なければ登りたいが、いつの日に行けることやら。








鹿島槍ヶ岳・南峰(2,889m)  

 思い思いに山頂での時間を過ごす登山者の方々。
自分にとっても長い道のりを経て歩いてきた甲斐が充分に報われ、本当に至福の時間だった。
今回は鹿島槍の双耳峰のうち片方しか踏めなかったが、南峰だけでもう充分に大満足の登頂となった。
 次はここからぜひ北峰にも立ち寄って、五竜まで縦走してみたいものだ。








 6:40 鹿島槍ヶ岳・南峰山頂出発  

 出来るなら本当にいつまでも居たい南峰ではあるが、扇沢への長い長い道のりが待っているので下山を開始しよう。
ピストンとはいっても、途中には昨日ガスっていた爺ヶ岳への登り返しも控えており、いろんな意味で長い行程になることは間違いない。

 暗い中を登ってきた急坂を慎重に降りていく。
自分が下り中の時にも、これから鹿島槍を目指す登山者と続々とすれ違う。
2015年の小屋閉め直前の冷池山荘で最終泊された方々は、例外なく鹿島槍・南峰で最高の時間を過ごせたはず。








次第に近づいてくる布引山 稜線上で顕著なピークとなっている布引山 

 鹿島槍・南峰から離れるにつれて斜度は緩くなって、快適な稜線歩きを楽しめるようになる。
好天の下での稜線歩きは山頂で過ごすのと同じくらいに最高の一時だった。
日陰ではまだ霜が残っているが、日が当たっているところは既に融けている。

 快調に歩いていると布引山に近づく。
僅かに登り返して、明るい時では初めてとなる布引山へ立ち寄っていく。








 7:14 布引山山頂(2,683m)到着  鹿島槍の双耳峰を間近に振り返る

 稜線上の小ピークである布引山山頂に到着。ここは鹿島槍を眺める絶好の展望台といえるだろう。
長い下りの途中なのであまり長居は出来ないが、今一度振り返って鹿島槍の雄姿をじっくりと目に焼き付けておきたい。

 なお現地の指導標では“布引岳”となっているが、山と高原地図の表記の“布引山”で統一しました。
この時全然関係ないけど、新神戸の布引の滝を思い出していた。




 7:18 布引山山頂出発

 段々と離れていくけど、鹿島槍は振り返るとまだまだ眺められるので出発する。








布引山南面の激下り。稜線上にはテン場が見えてくる。

 布引山までは比較的穏やかな稜線が続いたが、今度は一転して激下りとなる。
自分は寒い夜中に登っていったが、この時には既に気温が上がってきて、
すれ違う登り中の方々は少し暑そうにされていた。

 この日は種池・冷池の小屋閉め当日とは思えないほどの陽気だった。
普通は10月の稜線はもっと寒いはずなので、後ほど振り返るとエルニーニョの影響も多分にあったのだろうと推測する。
山ヤとしてならば結果的に恩恵を受けたかもしれないが、エルニーニョはスキーヤーとしては災厄そのものの気象現象。

 布引山からの激下りが落ち着くと、再び比較的歩きやすい稜線に。
途中からは昨日偵察でも歩いた区間にまで戻ってきて、早くもテン場が近いことを察する。








 7:56 冷池山荘・キャンプ指定地(2,470m+)到着

 鹿島槍・南峰からの標準所要時間では1時間30分(冷池山荘まで)のところを、1時間15分でテン場まで戻ってきた。
出来ればもう1泊でも過ごしていきたいし、テントを撤収するのが惜しいと思えるほどのテン場だった。
でももう冷池山荘は小屋閉めで終えてしまうし、明日は気が重い月曜なので下山の行程を進めるしかない。
西側の劔・立山の素晴らしい展望を見て、立ち去るのが余計に惜しく感じてしまう。

 まだ夜露でびしょ濡れのままのテントを撤収して、改めて出発準備を整える。
考えてみればアルプスで明るい時間帯にテントを撤収するのは珍しい体験だった。
でもこれでアルプスでのテント泊は今年は張り納めとなるわけで、やはり少し寂しいものがあった。








 8:42 冷池山荘・キャンプ指定地出発  小屋閉めの日の冷池山荘。そして爺ヶ岳への稜線を見据える。

 約45分でパッキングまで終えて、再び重装備を背負って出発する。
テン場から南側の爺ヶ岳を支点に大きく曲がる稜線上を目で追うと、ちょうど同じくらいの標高で種池山荘が小さく見える。
直線距離では近いのだろうけど、これから爺ヶ岳へ登り返す行程となるので実際はけっこう長いはずだ。
とはいえ昨日とは打って変わって文句なしの好天での稜線歩きなので、ピストンでも全く雰囲気が違う行程を楽しめるだろう。

 前日から何度かお話ししたご近所の方と挨拶してからテン場を出発。
まずは冷池山荘までの激下りと崖沿いの道を慎重に降りていく。








 8:50 冷池山荘(2,410m+)  爺ヶ岳南峰まで1時間30分、種池山荘まで2時間30分、そして扇沢まで5時間。下りの柏原新道は長そうだ…。 

 冷池山荘は17日の宿泊者を送り出すのを区切りとして営業終了し、小屋閉め作業の真っ最中。
来年の小屋開きまで長い長い冬に入るということで、今年も夏山期間お疲れさまでした。
冬の間どれだけここに雪が積もるのだろう、いや暖冬予報なので例年どおりに積もればいいけど。

 これから扇沢まで長い道のりが本格的に始まるが、特に種池山荘に辿り着くまでの稜線歩きが昨日の分まで本当に楽しみだ。

 冷池山荘を出発すると短いが森歩きとなる。
2,387mコルへ僅かに下った後は、いよいよ爺ヶ岳に向けて約300mの標高差を登り返していく。








 9:06 冷乗越分岐(2,440m+)

 約15分で冷乗越分岐まで登ってくる。
向かいには大きな崩壊地の上に見える冷池山荘の光景が。昨日はガスっていたので初めて見る自分には印象的だ。
奥には離れつつある鹿島槍が変わらず優美な姿で見える。

 この冷乗越分岐に突き上げてくる赤岩尾根もそのうち歩いてみたいものだ。
かなりの急坂の尾根ではあるが、爺ヶ岳を通らずに最短距離で冷池山荘、鹿島槍を目指すことが出来る。








昨日は見えなかった光景が繰り広げられる下山の行程!  爺ヶ岳への登り返し。急坂といえるほどのところはないがけっこう長い。 

 冷乗越分岐を出発して、本格的に爺ヶ岳への登りとなる。
背後を振り返ると次第に布引山が目立たなくなり、双耳峰の鹿島槍がより目立つようになってくる。

 昨日はこの辺りであまり見ていなかった地形図を改めて見直す。
爺ヶ岳への登り返しは等高線の詰まり具合は大したことはないが、やはり標高差300mを稼がなければいけないということでけっこう体力を消耗する。
1泊2日で鹿島槍を目指す場合は、この登り返しはけっこう侮れないところと思う。

 爺ヶ岳周辺は特に顕著な左右非対称山稜となっており、白馬岳周辺同様に長野県側が絶壁となっている。
登山道は時折この絶壁の縁を通るので、なかなかの高度感を味わえる。

 主には富山県側を歩くので、行く手には爺ヶ岳の三峰が近づいてくるのがよく見える。
そこでまず最初に接近する北峰に辿り着ける踏み跡が無いかどうか改めて観察しながら歩いていく。
すると北峰の北側で稜線直上を目指しそうな踏み跡を見つけたので辿ってみる。








 9:54 爺ヶ岳北峰(2,631m)付近

 おそらく北峰本体と一つ北の2,620m+ピーク(等高線が閉じている)の間、コル状のようなところで稜線に乗り上げたと思われる。
自分の読図が正しければ、目の前のハイマツに覆われたミニピークが北峰ということになるだろうけど、
この先はルート不明瞭で簡単に辿り着けそうに見えなかった。
 ハイマツの中は見たところ足元が不安定で捻挫が怖かった。
また長野県側を巻けばハイマツは回避出来そうだったが、写真に写っていないところは絶壁の縁。
今夏に笠からの下りで負傷したばかりの自分は慎重にならざるを得なかった。

 ということで、あと一歩まで接近したと思われる北峰を踏むのは断念して、正規の登山道まで引き返して下山を継続する。








気を取り直して次は前日通過した中央峰を目指す! 爺ヶ岳三峰の中で最高地点の中央峰。なかなかの鋭鋒ぶりで初登頂の自分を誘ってくる。 

 北峰は難しかったが、中央峰は登頂必須の爺ヶ岳最高峰。
北峰を巻いた辺りから中央峰が目立って見えてくるようになる。肉眼では既に山頂に集う登山者が見えていた。
登山道は途中のミニピークを巻きながら、変わらず富山県側の山腹を緩やかに登っていく。
眼下を見下ろすと黒部の深い谷に吸い込まれそう。








10:17 爺ヶ岳中央峰直下の分岐

 ようやく中央峰を目指す支線の分岐までやってくる。
頭上には山頂滞在中の登山者が既に間近に見えていて、残る登り返しもあと僅か。
但し分岐から中央峰までは短いものの本当に激登りで、やはり背負う荷によって脚に掛かる負荷がこれほど違うのかと実感することになる。








10:25 爺ヶ岳・中央峰山頂(2,669.9m)到着! 三等三角点「祖父岳」

 大きく息が上がったところで遂に待望の爺ヶ岳・中央峰に到達。
振り返るとかなり遠くなった鹿島槍の眺めが本当に素晴らしい!

 爺ヶ岳最高峰の中央峰ではあるが、山頂はそれ程広くはない。
中央部には三角点「祖父岳」と指導標が出迎えてくれる。

 いつも可能な限り他の人の邪魔にならないように撮影しているので写真からは分からないが、
実はこの時も爺ヶ岳・中央峰はそこそこの登山者で賑わっていた。
皆さん交代で山頂の指導標と共に記念写真を撮影し合う。








爺ヶ岳・中央峰(2,669m)   

 鹿島槍をはじめとして、後立山連峰南部から南の展望が素晴らしい。

 自分も絶景に囲まれつつ、適当なところで腰を下ろして小休止をとっていくことにしよう。








爺ヶ岳・中央峰から東面の景観。  大町方面の景観。長大な白沢天狗尾根がここから南東へ派生しているのがよく分かる。 

 多くの長大な尾根を派生させる爺ヶ岳・中央峰からの眺めもまた変化があって面白い。
遥か下方には自分はまだ滑ったことのない鹿島槍スキー場まで見えている。
鹿島槍からスキー場までこれほど距離があるのは、スキーだけをしていた頃には想像もつかなかったこと。
 
 また南東方向には多くの山々に抱かれた大町市街が一望出来る。
五竜や八方尾根など白馬エリアのスキー場にも近く、自分にとってまさに理想の立地条件の街であることを改めて実感出来る。




10:44 爺ヶ岳・中央峰山頂出発

 気付けば20分近くの滞在となった。
まだ南峰が残っているので、そろそろ重い腰を上げることにする。








爺ヶ岳・南峰へ向けて最後のアップダウンに掛かる

 既に南峰に立つ登山者がよく見えている。標高もほぼ同じでその差は10m未満の僅かなものだ。
また南峰の後ろには種池山荘が控えている。昨日の分まで取り返す稜線歩きも終わりが近づいてきたようだ。

 爺ヶ岳中央峰からメインルートへ戻る支線は南峰寄りにもあるので、同じ支線を戻る必要はない。








いよいよ爺ヶ岳・南峰へ向けて最後の登り返し 爺ヶ岳・南峰まであと一登り 

 メインルートに戻って間もなく2,610m+コルを通過。
ここから爺ヶ岳・南峰へ向けて最後の登り返しに掛かる。また同時に今回の行程で最後のまとまった登りでもある。
標高差50mの登り返しは短いながらもけっこうな急坂で、焦らずに最後の登りを味わうように高度を稼いでいく。








11:15 爺ヶ岳・南峰山頂(2,660m+)到着 爺ヶ岳・南峰山頂。鹿島槍、爺ヶ岳中央峰、北峰と揃い踏みの絶景! 

 最後の登り返しを経て遂に辿り着いた爺ヶ岳・南峰山頂!
昨日ガスの中登ってきたところのリトライではあるが、感覚的には初めて登頂したのと変わらない。
やはり天候によって、同じ場所でもここまで変わるものなのかと改めて実感する。

 爺ヶ岳・南峰からは早朝まで居た鹿島槍がかなり遠くになったが存在感抜群!
そして中央峰と北峰がそっくりな姿で並んでいる様子が印象的だった。
中央峰から見たのと同様に、南峰からも中央峰に立つ登山者がよく見えている。

 南峰はこれまでの行程を振り返る、絶好の展望台となった。


 時間帯もいつしか昼前となり、爺ヶ岳・南峰は多くの登山者で賑わっていた。
中にはテン場から何度か顔を合わせる方も居られ、自分の装備について尋ねられたりもした。
テント泊装備に撮影機材まで加わるとなると、自分では全くそう思わなかったがアルプスでもボッカトレしているようなものかもしれない。
元々左膝が良くないこともあってスキーの時と同様にサポーターは必ず装着しているが、これが大きく安全登山に貢献してくれているのかも。

 居合わせた方々とお話ししながら、記念写真も撮り合い、そして小休止をとる。
この爺ヶ岳・南峰が今年最後のアルプスでの山頂となることが頭をよぎり、出来るだけ長い時間を過ごしていきたかった。








爺ヶ岳・南峰から残る行程を見据える。扇沢はまだまだ遥か眼下に。  立山・黒部アルペンルート扇沢駅。下山地点はこのすぐ近く。 

 山頂での時間を楽しみつつも、この後もまだまだ長い行程が残っていることを再認識させられる景観だ。
爺ヶ岳・南峰から種池山荘を経由して柏原新道を扇沢まで。ほぼずっと緩い下りとなるが、とにかく距離が長い。
未明に冷池のテン場から鹿島槍へ往復し、爺ヶ岳まで登り返してきた後に来るこの長い下りは、先月の黒部湖畔のような難所は無くても楽とはいえない。

 昼になっても今日は全く雲が掛からず、終始好展望は続いていた。
下山まで長いので、展望を楽しみつつ焦らずにマイペースで歩いていきたい。




11:42 爺ヶ岳・南峰山頂出発

 約25分の滞在でようやく南峰山頂を出発。
一緒に滞在されていた方々の多くはすでに種池山荘へ向けて出発されていた。








種池山荘へ向けて最後の稜線歩きを満喫する  ハイマツの緑が鮮やかな爺ヶ岳の三峰が見送ってくれる 

 昨日は連続する強風と掛かり始めたガスの中を登っていったところを、心地良い陽気の中で下っていく。
但しこの付近で昨日姿を見せてくれたライチョウは、今日は天敵を警戒しているのか姿を見ることは出来なかった。

 やはり下りは早くて、あっという間に爺ヶ岳の三峰を振り返るようになる。
冬枯れの光景が目立っていた鹿島槍に対して、緑が濃い爺ヶ岳はまた違った魅力がある。








12:13 種池山荘(2,450m+)到着 種池山荘のすぐ横にある種池。本当に小さな池だがきれいな水で魚が泳いでいる。

 爺ヶ岳南峰から約30分で順調に種池山荘に到着!
冷池山荘と同じく今日で小屋閉めとなった種池山荘。
殆どの窓が板で覆われているのを見て、改めて夏山シーズンが終わったことを実感させられる。

 鹿島槍・南峰から始まった稜線歩きもいよいよここで終わりとなる。
この後の柏原新道の長い下りに備えて、景観を楽しみつつ小休止を十分にとっていきたい。








針ノ木岳遠望。近い将来に縦走してみたい稜線が横たわる。  種池山荘裏側から見納めとなる鹿島槍、爺ヶ岳の全貌を振り返る。 

 種池山荘前のテラスで小休止をとるが、昨日はあったベンチが撤去されていた。
小屋閉め作業の一環だから仕方がないが、ベンチが無くなってスッキリしたテラスは寂しさも覚える。
でも昨日とは打って変わって、今日は無風でかなり暖かい。
前の石垣に腰を下ろして、のんびりしていくと心地よさそうだ。

 一方で種池山荘の裏手に回ると、これが見納めとなる鹿島槍から爺ヶ岳にわたる景観が広がる。
これまでの行程を振り返ることが出来る絶景スポットだった。








種池山荘から振り返る鹿島槍ヶ岳 ほぼ同じ標高で向かい側の稜線に見える冷池山荘とテン場。写真を原寸で見るとテン場では一張のみ作業中だった。 

 望遠レンズに交換して、名残を惜しみつつこれまで歩いてきた行程を撮影。
鹿島槍は次はぜひ緑濃い夏の時期に再訪したいと思う。








12:34 種池山荘出発  

 約20分の滞在でしっかりと休んでから種池山荘を出発。
いよいよ柏原新道の長い下りが始まる。

 柏原新道は歩きやすい印象が強いが、種池山荘東斜面の草原越しに遥か眼下に見える扇沢まで下り切らなければならない。
この間の標高差は1,100m余りで、整備されている登山道だからといっても楽に下れるものではない。
ここでは緩い下りが大半とはいえ、気を抜いてはいけないと言い聞かせて歩いていく。

 柏原新道は前日も好展望のうちに歩いているので、撮影枚数は抑えめにして所要時間を短縮することを狙った。
しかし行程終盤に撮影で忙しい状況が待っていることは、この時はまだ知る由もない。








13:54 「駅見峠」 柏原新道の下りも終盤へ

 種池山荘を出発してから1時間20分後。

 適度なタイミングで小休止をとりつつも、久しぶりに自分撮りしたのがこの「駅見峠」。
爺ヶ岳・南峰からは遥か眼下に見えていた扇沢駅だが、かなり標高差を詰めてきたことが一目瞭然で元気付けられる。

 そして標高を下げるにつれて、次第に周囲の木々の紅葉が鮮やかになってくるのに目を見張った!
昨日の登りでは真っ暗な中を登ってきた区間にあたったことで、紅葉の見ごろを迎えたところを観ていなかったことに気付いた。

 この後、下っていくにつれて、更なる感動を覚えるほどの紅葉の樹林帯に突入することになる。
柏原新道では登りの時とは逆に最下部での撮影枚数が増えることになった。








14:30 八ツ見ベンチ付近

 行く手には大町市街は見えるが、遠方は霞んでいる。
空気が澄んでいれば八ヶ岳まで見通せるのだろうか。








「モミジ坂」で紅葉がピークを迎える!  錦秋の光景が広がっていた柏原新道下部 

 昨日未明、ヘッドライトの灯りでは分からなかったが、モミジ坂周辺では正しくその名のとおりに紅葉が最盛期を迎えていた。
小屋閉めギリギリで滑りこみで駆け付けたことで、偶然にもこのモミジ坂の紅葉に出会えたことになる!

 紅葉はまさにぴったりと見ごろを迎えており、午後の斜光に照らされて素晴らしいとしか言いようがなかった。
これを見過ごす手はなく、下山中の登山者が通り掛かられる合間を見計らって気合を入れて撮影していった。








「モミジ坂」で存分に紅葉狩りを楽しめた行程最終盤となった  鹿島槍山行の達成感も加わって、最高の思いで紅葉を満喫する!

 種池山荘からは小休止を挟みつつ黙々と下ってきたが、「モミジ坂」で一転してゆったりとしたペースになった。
途中からは車の走行音も聞こえてきたこともあり、心持ちまで余裕を持って紅葉を愛でることが出来た。








そしていつしかゆっくりと山腹を下り切り、扇沢沿いに降り立つと登山口が目の前に。  遂に登山口に辿り着く!

 行程終盤の「モミジ坂」で想定外に時間が掛かったが、最後の最後まで見ごろの紅葉に見送られての下山となった!
普通は下山はちょっと寂しさも感じるところだが、このような優雅な雰囲気で行程の最後を迎える山行も珍しい。








15:15 爺ヶ岳・柏原新道登山口(1,330m+)到着!  

 未明の冷池のテン場出発、そして鹿島槍・南峰に始まる長い長い行程を経て遂に爺ヶ岳・柏原新道登山口に降り立つ。
季節柄仕方がないとはいえ冬枯れの光景に覆われた光景が続いたが、最後に季節が秋に逆戻りしたような妙な感覚に包まれての下山となった。
紅葉の進み具合は年によって違うだろうけど、稜線上から始まる紅葉が麓に辿り着くという時期にぴったりシンクロしたという貴重な経験だったと思う。

 登りでは真っ暗な中を歩いた扇沢近郊の登山口を見回して、紅葉を楽しむと共に周囲の様子を観察する。
つい先月のシルバーウィークの山行で黒部湖に辿り着いた後に乗車したバスの車窓から、この登山口も通り過ぎる一瞬に気を付けて下見していた。
もちろんあの時はまだ木々は青々としていた。早くもここから登ることが出来たことは幸運だし、また同時に季節が進むのも早いと感じる。

 一しきり登山口で達成感を得た後、登山口前を走る大町アルペンラインを歩き始める。
残る行程は緑色のトラス鉄橋を渡って、扇沢側へ少し登ったところにある第2駐車場へ戻るだけとなる。








大町アルペンライン沿いの紅葉も変わらず見事!ただ脇見運転には注意。  駐車中の車もまばらな第2駐車場にようやく戻ってくる!

 登山口から第2駐車場までは緩やかではあるが、最後の最後に登りとなる。
でも標高差は僅か30mほど。紅葉を楽しみつつ、鹿島槍山行の余韻に浸りながらゆっくりと歩いた。




15:24 扇沢・大町市営第2駐車場(1,360m+)に遂に戻ってきた!

 2日間にしては長かった行程。けっこうな疲労感はあったが、達成感や充実感がそれに勝っていた。
初日は微妙な天候だったが、それが為に2日目に楽しみをお預けしたことになって終わってみれば結果オーライ!
ピストンでも本当に見どころ満載の鹿島槍から扇沢へ戻る2日目の行程となった。

 最高の余韻に包まれて、閑散とした第2駐車場にて山装備を解いて帰宅準備。
心配性の母に忘れず真っ先に下山メールも送っておく。扇沢の深い谷あいの地ではあるが、携帯の電波は通じていた。




 紅葉に彩られた大町アルペンラインを車を走らせ一路大町温泉郷へ。
今回は初めての薬師の湯で2日間の疲れを癒す。浴室からは爺ヶ岳周辺の稜線が遥か頭上によく見えていた。

 薬師の湯でほっこりしてからようやく帰途へ就くが、少し前から中央道伊那付近で行われている工事のために長野道から大渋滞…。
この渋滞を避けるために伊那を通り過ぎるまでは下道を走った。長野県はとにかく広いと改めて思う。
やっと帰宅出来たのは翌日深夜1時頃だった。








 〜 終わりに 〜

 今年最後のアルプス山行として鹿島槍を選びましたが、本当にいろんな意味で締めに相応しいものとなりました。
鹿島槍・南峰からは今夏歩いてきた山々や未踏の山々を見渡すことが出来ましたし、道中の稜線歩きや柏原新道もまた素晴らしいものでした。
次はぜひ花々が咲き誇っている時期に再訪してみたいと強く思います。

 今回の鹿島槍山行をもって、2015年のアルプス山行は区切りとします。
都合6回のアルプス登山を重ねて、これまでにない達成感は大いに得ましたが、同時に苦しいこと、痛いことや暑さ、寒さまで経験しました。
山はやはり事前の周到な準備と慎重さが非常に重要と強く思います。

 これまで鹿島槍は比較的歩きやすくて難しいところがない印象でした。
それは必ずしも間違いとは思いませんが、道中の距離も標高差も大きいので相当な体力を使います。
時間に制約が無い限り、一般的には1泊2日で鹿島槍を目指すパターンが多いでしょう。
それには初日で冷池山荘に到着するのが必須。出来ればそのまま鹿島槍登頂まで済ませてしまうと2日目に余裕が持てます。
でも今回の自分のように早朝に登頂するのが天気傾向からすると理想と思えます。
午後のガスに巻かれるリスクを避けられるのは大きいけど、その代り2日目下山の行程が長くなります。とても悩ましいところです。
しかし長い行程を経て目指すに見合う大きな魅力が鹿島槍にはあります。




 いつも以上にUPまで時間が掛かり過ぎるアルプスでの自分の山行レポですが、
最後まで気長にお付き合いいただきましてありがとうございました!
辛抱強く読んでいただいて本当に感謝申し上げます。
この山行レポが鹿島槍へのいざないになると共に、少しでも安全登山のお役に立てれば嬉しく思います。




行程断面図です




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