「仙塩尾根縦走(3) 両俣小屋から三峰岳を経て熊ノ平小屋」 2017年 9月 4日(月)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「仙丈ヶ岳」、「間ノ岳」、「塩見岳」






9月4日行程分の地形図(GPSデータ)
(別ウィンドゥが開きます)





 1:30 起床

 仙丈越えの疲れのおかげか、ぐっすりと熟睡出来た!




 3:30 出発

 昨日夕刻にお一人到着されていたので、テントは自分を含めて計3張りになっていた。
残るテントは灯りが付いていないのでまだ寝ておられるよう。静かに両俣小屋から出発する。

 昨日野呂川越から下ってきた急坂に差し掛かるまでは沢沿いの森歩き。
ヘッドライトで注意深く観察してルートを外さないように気を付ける。

 急登はコースタイム1時間のところを1時間30分掛けるつもりでゆっくりと足を運んでいく。
狙いどおりに野呂川越に近づく頃には薄明るくなってくる。








 行程概要  GPSデータをカシミールに取り込んでいます。


  
 4:58 野呂川越(2,290m)に乗り上げる 

 読みどおりに1時間30分掛けて、野呂川越まで登り返してきた!
ここまでで既に300m近く登ってきたが、これから三峰岳まであと標高差700mを稼がなくてはならない。
とりあえずここでザックを下ろして息を整えていく。

 ところで今日の空模様は日差し控えめの高曇りのよう。
これでは写真写りは昨日に比べれば冴えないが、今夏のひどい天候を振り返れば雨が降らないだけマシと思うべきかもしれない。




 5:10 野呂川越出発

 いよいよ待望の仙塩尾根縦走を再開する!
三峰岳まで標準で3時間だが、自分はもっと掛かるはず。
行程は昨日よりだいぶ短いので、焦らずにマイペースを貫いて歩きたい。

 野呂川越からしばらくの間はまだ緩やかな登りとなる。








 5:20 三角点「横川岳」(2,315m)  今日の行程で唯一の三角点「横川岳」 

 野呂川越からほど近いところで三角点「横川岳」に差し掛かる。
昨日の伊那荒倉岳と同様に、三角点の周辺は何気ない尾根の一角であってあまりピークらしくない。

 野呂川越の北側にある横川岳(2,478m)の山名がこの三角点の名前になっているのもよく分からないが、
山名というのは時代の変遷で変わることもあるようなのであまり大したことではないかもしれない。








 5:41 2,367m標高点ピーク  珍しく細い尾根上を登っていくところもある 

 今度は地形的に分かりやすい2,367m標高点ピークを通過。
仙塩尾根はここを起点に東寄りにクランク上に折れ曲がる。
斜め左前方にはこれから登っていく尾根の続きが見える。
これまでは緩い登りでウォーミングアップさせてくれたが、この後から本格的に標高を上げに掛かっていく。








2,488m標高点ピークを過ぎると、再び緩やかな登りになる  再び急登になると2,570mピークが近い 

 時折、木々の間から仙丈や北岳が垣間見えることもあるが、延々と深い樹林帯が続いていく。
シダがちょっと深いところもあるが、踏み跡は明瞭で迷いそうなところは見受けられない。
この辺りで今日初めて北へ向かう単独の男性登山者と出会う。

 やがてしばらく急登が続くことになるが何とか我慢して乗り越えると、再び分かりやすいピークに乗り上げる。








 7:05 2,570mピーク到着   

 西側に小さな支尾根を持つ2,570mピークに到着。
ルート自体は明瞭なので、間違い尾根に入ってしまうことはないだろう。

 早くも野呂川越を出発して1時間30分余り。今日の行程での登り返しも半分は終わったところだ。
一旦ザックを下ろして休憩をとっていく。

 ここで昨夜両俣小屋で小屋泊まりされていた単独男性が自分よりかなり早いペースで通過される。
今日の行程でも両方向含めて合計で10人近くの登山者と出会った。




 7:17 2,570mピーク出発

 次の顕著な目標地点は2,699m標高点ピークとなるが、
それまでの間ほぼ全区間でルートは伊那側山腹を通過していく。
山腹道は小刻みにアップダウンが連続するので、意外に疲れやすいところが多いように思う。








 8:00 2,699m標高点ピーク到着   

 しばらく続いたしんどい山腹道でどうにか標高を稼いでいくと、ようやく2,699m標高点ピークに辿り着いた。
ピークは小広くなっていて、間ノ岳から三峰岳へ伸びる稜線を木々越しに見上げることが出来る。

 まだまだと思っていた三峰岳への登り返しも残る標高差は300m。
ここまでで既に3時間掛かっていて、やはり登りでの自分のペースは相当遅い。

 山腹道の登りでもう大いに息が乱れていたので、ここでも小休止を入れていく。




 8:11 2,699m標高点ピーク出発

 ピークから僅かに下ってコルを過ぎたら、遂に三峰岳まで続く急登が始まる。
但しこれまでと違って徐々に木々が低くなり、森林限界が近いことを感じられるようになる。








 8:55 2,750m付近にて。遠くなった仙丈ヶ岳を振り返る  急登にはハイマツが現れ始める

 本格的に三峰岳への登りが始まると、久しぶりに大きく展望が開けてくる。
これまで歩いてきたご褒美そのもの、縦走の達成感に酔いしれることの出来る光景が広がる!
いくつものミニピークを持つ、緑濃い仙塩尾根がまるで長城のよう。

 急登はまもなくハイマツ帯に入っていくが、やはりポールが使いにくいので木々やハイマツそのものを掴んで上がる。








 次第に尾根直上の岩稜帯へ  こういう開けた岩稜帯の稜線が好き 

 急坂を一登りすると前方が開けてきて、三峰岳の位置をはっきり認識出来るようになった。
まだまだ登りは続くが、距離的にはもうそれほど遠くはない。

 少し前方では急登で道をお譲りした小屋泊の男性登山者が振り返って眺めを楽しんでいる。

 更に高度を稼ぐと尾根直上に乗り上げて、久しぶりに気持ち良い稜線歩きとなる。








 9:45 三峰岳への急登。延々と歩いてきた仙塩尾根を振り返る   

 気持ちの良い岩稜帯でどんどん高度を稼ぐと、先程まで以上の仙塩尾根の壮大な光景に圧倒される!
両俣小屋から暗い時間帯の登り返しでようやく辿り着いた野呂川越も遥か下方に。
仙丈の優美さと甲斐駒の凛々しさはどれだけ離れても変わらない。








 明日踏破することになる仙塩尾根南半分も見えてくる   

 一方で三峰岳越しには明日歩くことになる仙塩尾根の南半分も見えてくる。
今日テントを張ることになる熊ノ平小屋も見えているがまだ遠い。

 そして仙丈からだと遥か彼方に見えていた塩見だが、いつの間にか鉄兜に例えられる勇壮な姿が判別出来るまでになっている。
明日、仙塩尾根縦走を経て初めて塩見へ到達するのが楽しみだ。








10:05 三峰岳直下の分岐(2,970m)に乗り上げる  ここから間ノ岳まで登りで1時間とのことだが… 

 両俣小屋を出発して6時間30分、野呂川越からだと5時間も掛かってようやく三峰岳のすぐそばまで登ってきた!

 三峰岳に直登すると思っていたので意外な展開だったが、一旦は間ノ岳寄りに下がったところに乗り上げる。
いずれにしても三峰岳まで残る標高差はあと僅かだ。

 この分岐に居られた二人の単独男性登山者とお話ししながら休憩をとった。
一人は先に道を譲った自分と同じ行程の方と、もうお一人はこれから両俣小屋へ下りられるところだった。

 お二人とも北アルプスに比べると地味ながら、静かに歩ける南アルプスが好きということでしばし山談義で盛り上がった。
自分もここ数回はたて続けに南アルプスに来ているが、地味に見えても歩き始めればハマるかもしれない。
それにしても南アルプスの中でも仙塩尾根は本当に静か過ぎて、誰しもが人恋しくなるような気がする。




10:23 三峰岳直下の分岐出発

 自分にしてはだいぶ話し込んですっかり元気になったところで出発する。
小屋泊装備の単独の方は一足先に三峰岳へ登りに掛かっている。








10:30 三峰岳山頂(2,999m)到着!  仙塩尾根越しに塩見を見通す 

 短いが急な岩場を越えると待望の三峰岳山頂に到着した!
動き回れるくらいけっこうゆったりとした山頂で周囲は360度の大展望。

 初めて横から見る間ノ岳から農鳥にかけての吊り尾根が素晴らしい。赤い屋根の農鳥小屋もはっきり見える。
巨大な間ノ岳はもとより、西農鳥と農鳥もなかなか風格のある姿で見える。

 白峰三山縦走で堪能した農鳥方面も絶景だが、今回の目的地である塩見の遠望にも目を奪われる。
仙丈へ登り返す場合に比べたら仙塩尾根の南半分の標高差は小さいが、それでも塩見への残る道のりの長さを考えれば楽をさせてはくれないだろう。

 ところでこの三峰岳は“みぶだけ”と読むのだそうで、今回の縦走においては塩見、仙丈に次いで三番目に標高が高い要衝のピーク。
しかも標高があの劔と同じというおまけ付き。にも関わらず近くの間ノ岳の陰に隠れるようで目立たないマイナーなピークになっている。








11:00 三峰岳山頂出発  静かな岩稜帯歩きが続く 

 今日の終点である熊ノ平小屋まで下りで1時間30分ということで、ゆったりとした心持ちでの三峰岳山頂滞在だった。

 三峰岳から先は痩せた岩稜の爽快な下りで始まる。
一気に100mほど高度を下げると緩やかになるが、痩せた岩稜帯はしばらく続く。








“クマ”に向けてマーキングを辿っていく  難しい岩場ではないが足運びは慎重に 

 基本的には稜線直上を辿っていくが、部分的には農鳥側の山腹を通過する。
マーキングを拾いながら、大きめの岩が折り重なる山肌を慎重に下っていく。
劔の別山尾根のように難しいところはないが、段差の大きなところが点在するのでザックを振られないように注意する。








次第に稜線が広がり始める  11:38 日が当たり始めた2,890mピークにて。 

 少し険しいところを過ぎると、ゆったりした地形となって気持ち良い稜線歩きとなる。
この頃になると高曇りの空模様の中に青空も見え始めてきた。
やはり日が当たると光景が冴えわたってくる。
2,890mピークから振り返ると間ノ岳と三峰岳が並んで見えてくる。

 間ノ岳は農鳥側から見る姿と全く雰囲気が異なるが、こちらのほうがより締まって見えるかもしれない。
そして耳が二つ出ているように見えるのがユーモラスで、自分はまだ行ったことのない谷川岳のよう。








仙塩尾根で最も爽快に歩けるところかも  前方のゆったりとした平原が三国平か 

 更に稜線が広がって緩やかな傾斜で下っていく。
まだ遠いが塩見へ飛び込んでいくかのような爽快な稜線歩きとなった!
通り過ぎるのが惜しいと思えるようなところで、特にゆっくりと歩いて通過した。
大変な行程で実行するにも思い切りが必要だった仙塩尾根縦走だが、歩いてきて良かったと思える至福のひと時となった。

 やがて三国平と思われる台地が前方に見えてくる。
遮るものが無いのでよく見えたが、三国平辺りを単独登山者が登り方向で歩いてくる。
大きなザックだったのでテント泊装備だったかもしれない。この方は三国平の分岐より農鳥方面へ向かっていったためにすれ違うことはなかった。








12:08 三国平・農鳥分岐(2,761m)   

 前述のテント泊装備の単独登山者と入れ替わる形で三国平の農鳥分岐に差し掛かる。
出来ればここから農鳥小屋へ立ち寄りたいところだが、農鳥へのバイパスとなるこの山腹道の所要時間は片道2時間、往復だと4時間。
もちろん自分の場合はもっと掛かるだろう。
この時間から向かえば、今日の行程は農鳥小屋を終点にしておかないと農鳥親父さんに怒られそうだ。
明日の塩見越えの行程にも響くので、今回は親父さんに会いに行くのは断念しよう。

 三峰岳からここまでで1時間ほど。やはり下りだと標準に近いコースタイムで歩けるようだ。
分岐のそばにザックを置いて休憩をとっていく。








目指す熊ノ平小屋へはあと30分の行程  井川越を過ぎれば、熊ノ平小屋・キャンプ指定地はすぐそこ 

 三国平を過ぎるとハイマツ帯、灌木帯の中のやや急な下りとなる。
もうこの辺りまで来ると熊ノ平小屋の建物のディテール、テン場には緑のテントが1張り設営してあるのも見える。

 ところで自分の場合たまに起こることなのだが、靴ひもを締めすぎることが原因なのか下りにおいて右足小指辺りに痛みが出る。
このタイミングでちょっと痛くなってきたので、途中のビバーク出来そうな平らなところで靴ひもを調整したりして再び小休止。
昨日に比べたら短めの行程とはいえ、今日の三峰岳越えも決して楽とはいえなかった。

 熊ノ平小屋が近づいてくる頃になると、夏の始めの頃はさぞ美しかっただろうと思われる花畑が点在する。
この日の種類や量は少ないが、そこそこの花が咲いていた。

 熊ノ平小屋直前の2,570mコルは井川越という地名があるが、北側斜面は大きく崩壊しており現状では峠道があった痕跡は見られない。

 井川越を過ぎると、まもなくキャンプ指定地の敷地内へ入る。
テント泊の申し込みのためにキャンプ指定地は一旦そのまま通り過ぎて、まずは熊ノ平小屋へと向かう。








12:57 熊ノ平小屋(2,580m)到着!  手入れが行き届いててきれいな山小屋だった。 

 両俣小屋からゆったりと9時間30分ほど掛けて、ようやく熊ノ平小屋に辿り着いた!
両俣小屋と同じくメジャーな山域からは外れた山小屋で滅多に来られるところではない。辿り着いたということだけで嬉しい。

 小屋のすぐ前にある傾いたテラスが気になるが、まずはテント泊の受付を済ませる。幕営料は¥600。
受付ではスタッフの方に気持ち良く丁寧に対応していただき、縦走の疲れがほぐれるようだった。

 受付時にこの先の仙塩尾根でのナイトハイクにおける注意点を確認させて頂いた。
地形的に単純で一本道が続くこと、点在する岩場も難しくはないとのお言葉をいただいた。
なお天候のほうも今日と同じような状態で推移し、明日までは下り坂に向かう気配はないとのことで安堵した。

 水場は小屋から南の塩見側にある水量豊富な湧水を利用している。後で汲みに行ったら、冷えていて最高に旨い水♪
トイレは水場に隣接されていて、水汲みの時についでに立ち寄るといいかも。
なおテン場にも水場があるようだ。今回の縦走でも水が豊富なところが続いて有難い。

 ちなみにこの山小屋は特種東海フォレストが管理しており、もらったレシートは「聖〜荒川三山」縦走を思い出す見覚えのある形式。
椹島はもちろん二軒小屋からの道のりも長く、同社が管理している山小屋の中では最北にある。








ちょっとスリルある斜めってるテラスにて   

 そして小屋の前にある斜めのテラスだが、建てた後に傾いたものらしい。
それはともかく正面に見える間ノ岳の眺めが素晴らしい!

 小屋泊であれば玄関のすぐ前にあるので、最高の憩いの場になりそうだ。








熊ノ平小屋・キャンプ指定地(2,570m)  間ノ岳を見上げつつ、塩見越えの英気を養う 

 歩いてきた道を少しだけ引き返して、あらまし目星をつけておいたところでテントを設営する。
ここのキャンプ指定地はまとまった広いところは少なく、小さな敷地が数箇所に分かれて点在している。(設営可能数は25張)
敷地によって標高差がけっこうあって、下のほうが張りやすそうだが登りがしんどいうえにせっかくの眺めが森の木々で遮られそう。

 目星を付けた場所は若干斜めにはなっていたが、石や板切れなどで出来るだけ水平にしてテントを張った。
テントに居ながらにして間ノ岳がよく見えるところで最高だった♪

 テントを張り終えた後、山小屋で仕入れたCCレモンを飲みながら間ノ岳を見上げてゆったりと過ごす。
昨日よりは到着時刻が早かったので、夕食までのんびりと過ごすことが出来た。
空模様はというと行動中よりもきれいに青空が広がってきて、間ノ岳は夕方までほとんど雲に巻かれることなく見えていた。




 ここ熊ノ平小屋では井川越まで行くと携帯の電波が通じた。
ということで3日ぶりに心配性の母に「無事です」とメールを入れておく。




 明日は塩見を越えて三伏峠小屋まで辿り着かなければならず、今回の縦走で最も長丁場の行程となる。
塩見山頂に近いところにある塩見小屋にはキャンプ指定地は無い。
山と高原地図を見てみると、熊ノ平小屋から塩見岳(東峰)に辿り着くまで標準所要時間は5時間50分。
初めての塩見なので、出来るならガスってくる前に辿り着きたい。
自分の場合は7〜8時間掛かるとすると、やはり2時には出発するべきだろう。

 2時に出発するとしたら、ちょうど樹林帯を抜けて北荒川岳に辿り着く頃に夜が明ける計算になる。
熊ノ平小屋以南の樹林帯の仙塩尾根を景色の見えない暗いうちに通過してしまうのも残念な気がするが、
塩見を越えて三伏峠小屋まで安全に辿り着くためにも超早発すべきだ。

ということで16時までには夕食を済ませ、18時頃には就寝。起床時刻は0時とした。
テン場は自分を含めてたぶん3張り。ここでは沢の水音も人の話し声も無い。
ということで今夜もぐっすりと眠れるだろう。









 「仙塩尾根縦走(4) 熊ノ平小屋から塩見岳を経て三伏峠小屋」へと続きます。










行程断面図です




BACK

inserted by FC2 system