「仙塩尾根縦走(4) 熊ノ平小屋から塩見岳を経て三伏峠小屋」 2017年 9月 5日(火) |
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国土地理院地形図 : 25000分の1 「仙丈ヶ岳」、「間ノ岳」、「塩見岳」 9月5日行程分の地形図(GPSデータ) (別ウィンドゥが開きます) 0:00 起床 昨日、比較的ゆっくり休めたことも大きいだろうけど、勝負?の塩見越えの日ということで気合で起きた。 特に急いだわけではないのだが、出発準備もいつになく順調だった。 空模様は月明かりでやや星の数は少ないが、雲は殆ど無いようで全く問題ない。 但し、昨日入手した気象情報では、今日は昼前から次第に天候は下り坂に向かうという。 今日中は雨の心配までは無いようだが、好天のまま塩見に辿り着けるよう祈るばかりだ。 |
行程概要 GPSデータをカシミールに取り込んでいます。 |
1:50 熊ノ平小屋(2,580m)出発 | |
テン場、山小屋と静かに通過して、昨日確認しておいた取り付きから仙塩尾根後半を歩き始める。 真っ暗な中でほぼ誰も居ないはずの森を歩くのはあまり気持ちの良いことではないが仕方がない。 熊ノ平小屋を出発すると、まずは仙塩尾根の直上へ戻るため約80mの登りから始まる。 山小屋の方が言われていたように仙塩尾根の登山道は至極明瞭で順調なナイトハイクだった。 熊ノ平小屋以南は比較的高低差の少ない尾根ではあるが、数十メートルほどの地味な登り返しは当然数えきれないほどある。 今日の行程はとにかく長いので、塩見越えの体力を温存するためにも森歩きは出来るだけペースを抑える。 暗いのが残念だが時折展望が良さそうなところを通過する。 たまに岩稜帯も通過したが、特に難しいところはなかった。 |
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2:33 安倍荒倉岳山頂に差し掛かる(2,680m) | 2:35 安倍荒倉岳山頂(2,693m)到着 |
今日最初のピークにやってきたようだ。 山頂は仙塩尾根の縦走路から外れたところなので、ザックを置いて身軽になって西側斜面を上がっていく。 安倍荒倉岳山頂まで本当にすぐだった。わざわざザックを下ろすこともなかったくらい。 後で山と高原地図をよく見ると、以前は「山頂まで1分」の指導標があったようだ。 標高こそ2,700m近い高山であるにも関わらず、三角点の周囲は木々に囲まれていて展望は無い。 それはともかく山頂には出来れば明るい時間帯に立ちたかったが仕方がない。三角点にタッチだけしてすぐに縦走路へ戻る。 山と高原地図によると熊ノ平小屋から北荒川岳付近まで標準で3時間20分掛かる。 ということで森を抜けるまで夜が明けないはずなので、延々と陰鬱な暗い樹林帯歩きを黙々と続けるしかない。 途中で展望の良さそうな竜尾見晴と思われる岩稜帯を通過するが、稜線に出るとけっこう風が強い。 思わず一枚上着を増やしたくなるが、樹林帯に戻ると風が和らぐのでこのまま進む。 |
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3:50 新蛇抜山山頂に差し掛かる(2,640m) | 3:56 新蛇抜山山頂(2,667m)到着 |
安倍荒倉からだいぶ歩いた頃、今度は新蛇抜山山頂に差し掛かった。 山と高原地図では頂上は通らないと書かれていたが、ご丁寧に指導標があるのに無視は出来ない。 今度はザックを背負ったまま登っていくが、安倍荒倉に比べてこちらのほうが標高差が大きくて30mくらいあったようだ。 先が長いのに無駄に脚力を使ってしまったが、どうにか新蛇抜山山頂にも立った。 意外にも狭い山頂で、稜線直上にあって風が吹き抜ける。 安倍荒倉と違ってこちらのほうは展望抜群のようだが、明るい時間帯でないのが残念だ。 暗い樹林帯を歩いていると、後方からすごく早いペースの単独男性に追いつかれる。 トレランに近い装備の方で塩見へ至るまでに出会った方はこの時のお一人だけ。 しかも自分が塩見へ登っている時に早くも降りてこられるすごい方だった。 熊ノ平から塩見へピストンされていたよう。仙塩尾根を踏破するにもいろいろ方法があると気付いた。 新蛇抜山からも相当歩いた頃、木々が疎らに生えた草原状のだだっ広いコルに降り立つ。 現地に居る時には確信が持てなかったが、そこは北荒川岳への登りが始まる2,542mコルだった。 その頃には薄明るくなってきて周囲の状況も見えるようになってきていた。 でもクマへの警戒のためにも、まだしばらくヘッドライトは付けたままで進む。 2,542mコルから北荒川岳に向けての標高差160mの登りは今日最初の試練だった。 伸び気味のハイマツ帯を登っていくのは余計な力が要る。 出発してから3時間ほど経過して疲れも徐々に出てくるタイミングで急登にぶつかる恰好となるので我慢のしどころだ。 |
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5:26 北荒川岳山頂(2,698m)到着 | 北荒川岳の三角点名はなぜか「伊那荒倉」。一昨日踏んだ伊那荒倉岳の三角点名は「荒倉岳」。 |
ようやく急坂続きのハイマツ帯から飛び出したところが待望の北荒川岳山頂だった! いきなり眼前に大きく塩見岳が見えてきて感動してしまう。 しかし遮るものの無い稜線に出た途端に冷たい強風に晒される。 撮影の前に慌ててレインウェアを防寒着代わりに着込んだ。 体感的には秋山ではなくて既に冬山といってもよかった。 山と高原地図によると、熊ノ平小屋からもう少し先のキャンプ場跡まで3時間20分のところを、北荒川岳までで3時間30分。 特に急いだわけではないが、やはり暗い時間帯で撮影回数が減ったことで所要時間が抑えられたかもしれない。 ここまでの急坂で一息入れたいタイミングだったが、強風に晒される北荒川岳ではゆっくり出来ない。 塩見岳まであと3時間は掛かるだろうし、もう少し先へと進むことにした。 5:31 北荒川岳山頂出発 |
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目を見張る北荒川岳の大崩壊地 | 稜線伊那側の崩壊は激しい |
北荒川岳を過ぎると半円形の大崩壊地に沿って進んでいく。 伊那側は絶壁になっているので縁に近寄り過ぎないこと。 強風は西から東へ吹いているので通過には支障はなかった。 大崩壊地を歩いていると塩見に朝日が射し始める! 比較的上空の雲は多めだったが、目にも分かるほど雲の流れは早くて青空が広がってくる。 ルートは大崩壊地を緩やかに下りながら東へ逸れていく。 稜線を外れた途端に強風は止んで、再び朝の穏やかな空気が戻ってくる。 |
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5:48 北荒川岳南、キャンプ場跡(2,640m) | 最寄りのテン場は熊ノ平か三伏峠。この間の距離はあまりに長い。 |
稜線から一段下がったところで、キャンプ場跡に差し掛かる。 ここはこれまで幾度となく見かけたビバーク適地ではなくて、かつては堂々とテントを張れたキャンプ場だったらしい。 管理棟と思われる小さな建物まで残っている。 今でもここでテントを張れれば、昨日のうちにここまで進んでおくことで塩見越えももう少し楽が出来ただろう。 |
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しばらく山腹道を辿る | |
キャンプ場跡を過ぎると、ルートは稜線東側の山腹道へと続いていく。 崩壊著しい稜線上を避けるためと思われるが、先を読みにくい地味な登りはけっこう長く感じる。 この先では再び樹林帯に入るのだが、やはり木々やハイマツの勢いが凄くて通過には骨が折れる。 |
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6:22 2,710m付近 | 塩見へ向けて岩稜帯を東から回り込んでいくようだ |
2,710m付近で稜線に戻ってきて、キャンプ場跡より続く長い山腹道からようやく解放される。 塩見が更に近付いてきて、鉄兜のような迫力ある姿を楽しませてくれる。 体感温度はいくらか上がったものの、風はまだ強かったので岩陰で小休止をとっておく。 ここからは山腹へ逸れることなく、いよいよ塩見へ向けて岩稜帯を辿っていくことになる! |
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6:58 雪投沢源頭部付近(2,730m) | |
しばらく歩きよい緩やかな岩稜帯が続くと、雪投沢源頭部付近に差し掛かる。 以前はここでも幕営される方が多かったのか、幕営禁止の指導標が立っている。 ロケーションは抜群だがまともに強風に晒されるので、仮に張ったとしてもテントが飛ばされるのではないかと心配になるほどだ。 |
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遂に急登が始まる! | 崩落目立つ斜面の向こうに塩見が大きく見える |
雪投沢源頭部を過ぎると、遂に今日の行程で最も大きな登りが始まった! これまでも決して楽な行程だったわけではないが、ここからが本番と捉えて気合を入れなければならない。 当面の目標となる北俣岳分岐までの標高差は約200m。 稜線は細く切れ落ちたうえに、足場の悪いザレた急坂の連続となる。 登りではそう危険には感じないがしんどいのは間違いない。一歩一歩じりじりと登り詰めていくしかない。 右手には塩見が真横に近付いてくるのが何よりも励みになる。 |
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歩いてきた仙塩尾根を振り返る! | |
淡々と急坂を登り詰めていくと、これまで歩いてきた仙塩尾根の全景が広がってくる! 小さくなった仙丈ヶ岳はあちらから感じたのと同じく、あそこから本当に歩いてきたのかという思いになる。 実質的には周回コースだった「聖〜荒川三山」に比べて、一途に南北に延びる仙塩尾根の光景は得られる距離感が全く別次元だった。 本当に素晴らしい縦走の醍醐味を味わって、長丁場の疲れも吹き飛ぶかのよう。 |
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7:41 北俣岳分岐(2,930m) | 北俣岳分岐付近より。塩見山頂へ続く稜線を見通す |
どんなにしんどい急坂も終わる時が来る、ということでやっと北俣岳分岐に到着した。 ここからは二軒小屋へ下る蝙蝠尾根が分岐しており、ちょうど岩稜上に北俣岳へ向かう登山者が見える。 蝙蝠尾根もいずれ歩いてみたいが、二軒小屋は椹島より更に山奥にあってアクセスが大変。 北俣岳分岐より少し進むと、急坂の途中から隠れていた塩見岳が姿を見せる。 北俣岳分岐でだいぶ登り詰めた感があったが、山頂まではまだかなりの標高差を残しているように見える…。 山と高原地図によると、北俣岳分岐から塩見岳まで45分。 |
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塩見岳への最後の登りが始まる | 東峰の上に立つ登山者が見えてきた! |
一息入れてから最後の登りに取り掛かる。 基本的には稜線上を辿っていくが、崩壊が著しい北斜面を避けるように南斜面のハイマツ帯を抜けるところもある。 南斜面も崩壊が進まないように保全作業を行っているところがあって、地道に山を守る努力が行われていることを知る。 ハイマツ帯に入ると再び腕力にも物を言わせて進んでいく。 南斜面に入ると風が無くなるので途端に暑くなるが、もう東峰まで一気に突き上げようと構わずに登っていく。 |
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8:35 塩見岳東峰(3,052m)に遂に到着! | 東側では蝙蝠尾根と白峰南嶺が並走する |
登りに登って遂に辿り着いた!! 熊ノ平小屋を出発してから約6時間40分…。 苦しい長丁場だったが、早発のおかげで絶好の登山日和の下で絶頂に立つことが出来た。 初めての塩見岳でもあるし、休憩しながら存分に絶景を満喫していきたい。 |
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仙塩尾根を一気に歩き通した達成感に包まれる! | |
塩見岳東峰はあまり広くはなく、高度感抜群の山頂だった! よくまあテント泊装備で北沢峠から歩けたもんだと呆れるほどの距離感のある絶景。 なかなか得られるものではない達成感に包まれた至福の山頂滞在だ。 すぐ西側には三角点のある西峰があって、あちらも全方位大展望の素晴らしい山頂であることが分かる。 西峰は道筋として後で通る。東峰出発前にまずは重りでしかなかった望遠レンズを使って撮影していきたい。 |
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仙丈ヶ岳から長い下りで始まる仙塩尾根縦走前半を振り返る | 仙丈ヶ岳までの登りでも励みになった甲斐駒ヶ岳 |
白峰三山縦走を思い出しつつ越えた三峰岳。熊ノ平のテン場から見上げ続けた間ノ岳。 | 白峰三山縦走では農鳥岳から塩見岳を眺め、いつの日か仙塩尾根縦走をと思い描くようになった。 |
仙塩尾根の長大さ、奥深さを改めて納得 | |
南側では聖、赤石、荒川三山が勢ぞろい | 聖から百間洞にかけての稜線。兎、小兎、中盛丸のアップダウンの連発を思い出す |
写真では分かりにくいが、中岳、前岳の後方には赤石と聖が辛うじて顔を出している。 今回の仙塩尾根に負けず劣らず、これらを繋いだ周回もしんどかった…。 ここまであちこち歩けた以上は、いずれ三伏峠から荒川三山の稜線も繋いでみたいものだ。 |
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蝙蝠尾根越しの富士山 | 悪沢岳の重厚さ、立派さを改めて知る |
深田久弥著「日本百名山」では、塩見から眺める富士山が最も素晴らしいと触れられている。 南アルプスはどこから見ても富士山は大きく見えるが、ここからだと手前に見える蝙蝠尾根との対比が絶妙と思う。 そして同書では悪沢についても、東岳ではなくて“悪沢”でなければならぬと触れられているとおり。 荒川三山という括りに含まれてはいても、悪沢だけでも圧倒的な存在感だ。 |
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伊那谷を隔てて中央アルプス | 北アルプスも槍穂はもちろん劔、立山まで見えているのでは… |
伊那谷を見ると今回の縦走に先立って、JR飯田線に乗ったことまで思い返す光景だ。 今年はまだ北アルプスへ行っていないが、遠くから見てもやはり惹かれる山々が勢ぞろいしている。 東峰での滞在時間は40分ほどになった。 数人の登山者が入れ替わり立ち替わり登頂されていたが、自分の腰が最も重かった。 9:13 塩見岳東峰出発 そろそろとおもむろに西峰へ向かう。 東峰から西峰へは短い吊り尾根ですぐに着く。 |
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9:18 塩見岳西峰(3,047m)到着 | 塩見岳西峰の山名標。朝に記念写真を撮ると逆光気味になるが・・ |
東峰に比べたら僅かに5mだけ低いが、西峰でも仙塩尾根をはじめとする絶景の見え方は変わらない。 しかも西峰のほうが比較的ゆったりとした地形で、大勢の登山者が憩うことが出来そうだ。 西峰の中央には三角点があるので、忘れずにタッチしておきたい。 |
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仙丈から塩見へその名のとおり仙塩尾根を繋いだと、万感の思いでタッチしました。 | |
塩見山頂では通じるのではと思って携帯の電源を入れてみたが、予想は外れて圏外だった。 西峰では先着の登山者がすぐに出発されて貸切となった。 もう塩見岳まででも達成感と充実感でお腹いっぱいなのだが、そろそろ残る三伏峠小屋までの行程を始めなくてはいけない。 9:38 塩見岳西峰出発 絶好の好天の下で登頂させてくれた塩見岳を感謝の思いで後にする。 出来ればまた立ってみたいと思わせてくれる素晴らしい山頂だった。 |
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三伏峠までの道のりも長そう… | 塩見岳からの下りは想像以上に険しかった |
山頂からの絶景写真にはあえて含めなかったが、塩見から三伏峠小屋まで想像以上に遠く感じた…。 もちろん山と高原地図や地形図で予習はしていたが、実際に見る光景から掴める距離感はまた別物だった。 塩見岳山頂で良い時間を過ごせたが、三伏峠小屋までの行程も辛いものになることは覚悟しなければならなかった。 山頂からしばらくは緩い下りで歩きやすかったが、まもなくここは油断できない!とスイッチが入るガラ場に差し掛かった。 山と高原地図にも危険マークが出ているところだが、しばらくは本当に気を抜けない下りだった。 まずここを登ることが出来るピークハントの登山者より、初めて下りで通過する自分は特に気を付けなければならなかった。 三点支持をフルに活用して下っていく。 そして登りの登山者とのすれ違いと落石を起こさないようにも注意! |
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山頂直下のガラ場は一旦落ち着くも、眼前の天狗岩を巻くところも要注意。 | 天狗岩付近から下ってきたばかりの塩見西峰を見上げる。前劔に似ている |
初めてとなる塩見西峰直下のガラ場を慎重に下って通過。 天狗岩とのコルまで下りきるとほっと一息付けるが、まだしばらく足場の悪いガラ場が続く。 天狗岩付近までやってきて下ってきたばかりの塩見西峰を見上げると、東側からとは全く違う姿で驚いた! ルートの急峻さとその姿は、別山尾根の前劔とそっくりだと思った。 天狗岩は南側斜面を巻いていくが、ここもまだ気を抜けない岩場だった。 ここで登り中だった年配のご夫婦と出会うが、岩場の険しさを観て塩見登頂を諦めて引き返すとのこと。 自分に先の様子を聞かれたが、山頂手前までこのような岩場が続くと伝えると撤退を決心されたよう。 ここまで登られたのに勿体ないのは確かだが、危険だとご本人が判断されたのだから仕方がないことだった。 まだしばらく休憩されるとのことだったので、お気をつけてと声を掛けてから下りを再開する。 |
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天狗岩を過ぎるとようやくルートは落ち着く | 下りきった塩見と天狗岩を振り返る |
天狗岩を巻き終わると、ようやく穏やかなハイマツ帯が戻ってくる。 しかもこれまでの仙塩尾根でのハイマツ帯と違って、登山道が広くて快適♪ そして前方にはようやく塩見小屋が近づいてくるが、その手前で見通し良さそうなミニピーク(2,766mピーク)があるので立ち寄ってみる。 ミニピークから振り返ると険しい塩見岳が大迫力で、見事な非対称山稜の様相だ。 |
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10:57 塩見小屋(2,750m)到着 | |
西峰から1時間ほど掛かって、ようやく塩見小屋に到着した。 ここが行程の終点であれば楽なのだが、残念ながら塩見小屋にはキャンプ指定地は無い。 なお塩見小屋は完全予約制だそうで、夏山最盛期にも激混みという事態は避けられるかもしれない。 まだまだ長い行程を見越してお茶を買い足したうえに、塩見の山バッジも購入しておく。 11:15 塩見小屋出発 三伏峠小屋まで先が長いので早々に出発する。 |
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塩見岳最寄りでロケーション抜群の塩見小屋を見送る | まもなく森に入っていくようだ |
塩見小屋から少し下ったところで樹林帯に入っていく。 まもなく展望が無くなるはずなので下る前によく見ておくが、目指す三伏峠小屋までまだまだ遠いうえにアップダウンも付いてくるのが分かる…。 |
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11:30 塩見新道分岐(2,660m) | |
樹林帯に入ってまもなくすると分岐があって塩見新道を見送る。 塩見新道は現在、アクセス路の林道が崩壊のため通行止めの状態が続いている。 ということで現在、塩見岳へは鳥倉ルートが唯一機能している登山道となっている。 |
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権右衛門山南山麓をトラバースする | |
塩見新道分岐から一気に下ると、比較的平坦な区間がしばらく続く。 美しい樹林帯が続くうえに、強い日差しが遮られて有難い。 そして樹林帯でも登山道は驚くほどよく踏まれていて、これまでより格段に歩きやすく感じた。 塩見岳は鳥倉からピストンで歩かれる方が大半というのもよく分かる。 |
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12:23 2,512mコル | |
しばらく樹林帯の緩やかな山腹が続いたが、ここで再び三伏峠へ続く尾根に乗ったようだ。 この先からいよいよ有難くないアップダウンが始まるので、このだだっ広いコルで休憩を入れておく。 この辺りから5人くらいのパーティーの方々としばらく抜きつ抜かれつの状態となる。 2,512mコルからしばらくは緩やかな登りとなるが、この辺りでは立ち枯れの木々が多くて塩見岳を振り返ることが出来る。 だいぶ離れてきたがまだまだ先は長い。 |
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だいぶ登り返したが、地味なアップダウンが続く | ようやく本谷山が近づいてきた |
2,512mコルからまず80mほど登るが、本谷山まで地味なアップダウンを繰り返すことになる。 今下り中であることを忘れるくらい、この登り返しの連続はしんどい。 熊ノ平小屋からの長丁場の疲れがもろに出てきていたのは間違いないだろう。 一つアップダウンを越えるごとという間隔で小休止を入れながら本谷山へ登り返していく。 |
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13:30 本谷山山頂(2,658.3m)到着… | 今回の縦走において最後の三角点だ |
直前も50mほどの登りを耐えて、ようやくの思いで本谷山山頂へ辿り着く…。 到着時に山頂では先述のパーティーの方々が休憩中で、自分が熊ノ平から歩いてきたことを話すと驚かれていた。 周囲から見ても自分にははっきりと疲れが見え始めていたよう。 もうそろそろ行動時間が12時間に迫っていたので、これで疲れていないほうが不自然だ。 山と高原地図によると、本谷山から三伏峠小屋までは80分。 あと三伏山までの登り返しが残っているので、ここでしっかりと休憩をとって体力を回復させておく。 この頃になると空模様はいつしか完全に高曇りとなった。 まだ後方には塩見がよく見えているが、天候が下り坂というのはもう疑いようはなかった。 なお「日本百名山」では深田氏が塩見へ登られた時は、偶然にもこのような見通しの利く高曇りの日だったという。 13:54 本谷山山頂出発 |
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三伏山まで続く最後のアップダウンに挑む | |
三伏山までの最後のアップダウンは、まず150m下ってから100m登り返す展開だ。 三伏峠小屋まで執拗に繰り返されるアップダウンにウンザリするが、登り下りとも比較的等高線の間隔が広いことだけが救いか。 下りのほうはまだ余裕があって、2,498mコルへ向けて順調に下っていく。 14:16 2,498mコルの少し手前、三伏沢への分岐を見送る かつては三伏沢にキャンプ指定地があったようで、現在はここも幕営禁止となっている。 なお三伏峠小屋で幕営する際の水場は三伏沢の源流部を利用しているようだ。 2,498mコルを過ぎると、いよいよ三伏山へ向けての登りとなる。 もうかなり脚は重くなっているので、超スローペースで最後の登りに耐えていく。 |
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三伏山の手前で再びハイマツ帯へ。遠くなった塩見岳を見送る | ようやく辿り着いた最後のピーク三伏山。三伏沢源流部の草原が垣間見える |
三伏山山頂は最後のアップダウンの最南端にあるようで、見通しの利くハイマツ帯に出てもなかなか辿り着かない。 その頃久しぶりに雲が切れて、かなり遠くなった塩見岳が見えた! 塩見は辿り着くまでも長かったが越えてからも長い…。 塩見以南は三伏峠に至るまで稜線がかなり大回りするので、地形図よりも距離が長く感じるのは間違いないだろう。 「日本百名山」でも三伏峠から塩見は迂回していくから遠い、とさらっと触れられているが身をもって納得出来た…。 14:57 三伏山山頂(2,615m)到着 緩やかになったハイマツ帯をゆっくり進むと、ようやく遠かった三伏山に到着した。 最後の登りを終えてもう疲労困憊…。 三伏峠小屋までもうすぐだが、ここでもしっかりと体を休ませておく。 なお自分が三伏山山頂に滞在中には誰も通り掛からなかった。 雲は時折切れて瞬間的には近くの三伏峠小屋、そして荒川三山へ続く稜線も見えた。 明日天候がもつようなら、鳥倉へ下山する前に烏帽子岳へ立ち寄っていくオプションも考えていた。 しかし、予報では夜の間に雨が降り出してしまい、明日午前に止むことはなさそうな見込み。 出来るなら雨を避けるために今日中に鳥倉まで下山したい思いだったが、残された体力で一気に下山するのは不可能だった。 明日は雨に打たれて下山するしかないと腹を括った。 15:13 三伏山山頂出発 15分ほど休んで少し体力が戻ったところで出発する。 三伏山からはまず40mほどの短い下り。そして烏帽子岳方面への分岐を見送ると、まもなく今夜テントを張るキャンプ指定地が見えてくる! この時の小屋に近づいてきた時の安堵感。一気に緊張感が解れていく感じというところだろうか。 早くテントを張ってゆっくりしたいが、まず受付を済ませるために一旦通り過ぎて三伏峠小屋へ向かう。 |
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15:29 三伏峠小屋(2,580m)到着!! | 峠の名の付くところでは最も標高が高いそう。伊那と甲斐を結ぶ街道があったらしい。 |
とにかく長かった…。 熊ノ平小屋から13時間40分掛かって、待望の三伏峠小屋に辿り着いた! 計画段階からこの日が最も長くなるのは分かっていたが、いつものことながら予想以上に時間が掛かった。 これだけ疲れ切った行程は久しぶりで、「雲ノ平から読売新道を経て奥黒部ヒュッテ」の時以来だろうか。 でもあの時より所要時間は短くても、後半にアップダウンが連続する今日の行程のほうがしんどさで上回るのではないか。 入り口横のすだれは山小屋宿泊者専用の休憩所になっていて、本谷山までで出会ったパーティーの方々が寛がれていた。 皆さんから口々に労いのお言葉をいただいてありがたかった。 重たいザックを下ろして小屋でテント泊の受付を行う。幕営料はトイレ使用料込みで700円。 テン場とトイレは小屋のすぐ横で便利だが、ここは水場に関してはかなり不便。 三伏沢の水場まで往復20分なので、ペットボトル入りの水を購入することにした。 今日はもう往復20分歩いて水を汲みに行く気にもならなかった。 塩見登頂を祝って酒盛り中のパーティーの皆さんにご挨拶をしてからテン場へ向かう。 |
「日本百名山」によると、塩川から登ってきて三伏峠を越え、一旦大井川中俣へ下り、 そして更に伝付峠を越えて甲州へ抜けていたとのこと。 熊ノ平からの長丁場で足が棒のようになった自分にとっては、昔の人は偉いなとしみじみ感じる。 |
三伏峠小屋キャンプ指定地(2,580m) | |
キャンプ指定地は前述のとおりに、小屋に隣接した塩見側にある。 敷地は3段に分かれていて、一見すると広そうだが設営可能数は25張。 しかも上段は斜めになっていたりして、快適に過ごすためには慎重に場所を選ばないといけないようだ。 ということで何気に普段の感覚で選んだのがここだったのだが・・。 予報どおりに夜半から降り出した雨によってテントの周りは薄いながらも水溜まりが出来て、 そのおかげでテントの床が濡れるという事態を翌朝経験することになる。 それはおいといて、夕方には霧に包まれるテン場となったものの、 長丁場の塩見越えの行程では絶好の登山日和に恵まれたので終わってみれば全て良し! 本当にめちゃくちゃ疲れたけど、最高の充実感と余韻に浸りながらの行程最後の幕営となった。 この日の幕営数は自分を含めて4張りだったかと思われる。 山と高原地図によると、下りの鳥倉ルートの所要時間は登山口まで2時間。登山口から駐車場まで40分。 自分は下りは基本的に早いほうだが、雨の中だと3時間以上は掛かると予想した。 いずれにしても最終日の行程は短いので、これまでのように早発する必要はない。 この日に入手した気象情報によると、よりによって朝のうちが最も風雨がひどいという。 テントの撤収はなるべく小雨の時に作業したいので、一応5時に起きてみて天候を見計らって出発するタイミングを決めることにした。 前夜は0時起き。しかも長丁場の行程の疲れがあったにも関わらず、この日は疲れ過ぎていたのが悪かったのか、かえって寝つきが悪かった。 ようやく21時頃に寝付けたように思う。 最終日の鳥倉ルートの下りは天候に恵まれなかったこともあって、撮影枚数は少なめです。 一気にこの日のレポにまとめて締めくくろうかとも思ったのですが、かなり長くなったこともあってやはり分けて作成することにします。 |
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「仙塩尾根縦走(5) 三伏峠小屋から鳥倉ルートを経て下山」へと続きます。 |
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行程断面図です |