「朝来山・竹田城跡」 2017年 4月14日(金)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「但馬竹田」


 立雲峡、竹田城共に雲海のシーズンは過去に何度も訪れていますが、
桜の時期だけは機会を逃していました。

 朝来山は竹田城の真向かいにある目立つ山にも関わらず今回が初めてとなります。
桜の立雲峡と併せて登れるので一石二鳥です。

 朝来山は山頂に向けて西側から伸びる尾根を登って、整備されたむささびコースを下る行程を以前から考えていました。
しかし今回は母を連れていることと、後で竹田城へも登ることを考慮してむささびコースのピストンとしました。

 なお竹田城跡は近年のブームによって大きく変貌したことで行く気がしませんでしたが、
桜の時期の城跡を初めて観るためにこの度久しぶりの訪問となりました。
母も20年近く前まだ静かだった頃に一度竹田城跡へ連れていったことがありますので、
どうしても過去とのギャップを感じてしまったようです。








 6:30 立雲峡駐車場(250m)到着

 桜まつりの時期だけは有料(1台300円)になる駐車場なので要注意。
朝来山への登山のみを考えると他にもルートがあるが、桜が満開の立雲峡を外すわけにはいかない。








 行程概要  ※ 立雲峡駐車場、竹田まちなか駐車場の間は車で移動しています。

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。


 6:49 立雲峡駐車場(250m)出発  

 自分は雲海が出る秋冬にしか来たことがなかったので、駐車場の周りから華やかな立雲峡の光景に圧倒される。
本当に「但馬吉野」に相応しい光景だった。早起きを渋っていた母も大いに喜んでくれていた。
桜の時期であれば仮に立雲峡だけでも充分に訪れる価値はあるだろう。

 立雲峡は園内だけでもかなり標高差があって、下のほうは満開でも上のほうになるとまだ咲いていなかった。
立雲峡は第三〜第一までの3箇所の展望台があるが、そのいずれもがお立ち台のように整備されていて驚いた。
以前よりも大勢が一度に眺めることが出来るようになっている。








「展望台」以外でも竹田城は随所で眺められる。遠目には昔と何も変わらないが・・。 7:18 第一展望台到着。ここまでは数年前にも雲海の撮影で登って来たことがある。

 立雲峡内は公園のように整備された遊歩道で登っていくが、散策気分で歩くと意外に標高差があるのでしんどいかもしれない。
段差の大きな階段道を登りきると、立雲峡最上部に位置する第一展望台に辿り着く。自分の記憶とは全く別の場所のように整備し尽くされていた。
雲海の時期には日の出前からカメラマンなどが集結するところだが、この日は桜がまだ咲いていないこともあってかここまで登ってくる人はまばら。

 この先はしばらく展望が無くなるので、第一展望台で小休止を入れていく。
自分にとってもここから先が初めての区間となる。




 7:30 第一展望台出発

 遊歩道は第一展望台を過ぎてもまだ続くが、この先は展望も無く池があるだけとなる。
普通に観光や花見、雲海見物で立雲峡を訪れるなら、第一展望台までで引き返して問題はないと思う。








 7:35 大成池(440m+)   

 第一展望台からほど近いところに大成池がある。人工の池ながら畔には桜の木があるので時期が合えば楽しめるかもしれない。
遊歩道は池の中ほどの橋を渡って朝来山方面へと続いていく。

 大成池から少し奥へと進んだところで、南側から別の林道が合流してくる。
しばらくはそのまま道なりに朝来山北山腹を貫く林道を東へと歩いていく。
この林道は途中で土砂崩れの箇所があってバリケードが設けられているため、車では大成池まで辿りつくことは出来ない。








 7:49 朝来山登山口(420m+)   

 約10分の静かな林道歩きを経て、ようやく“登山口”に辿り着く。
ここから始まるのがむささびコースで山頂の東の展望地に登りつく。

 なお立雲峡からこの登山口に至るまで、朝来山を示す道標は全く無い。
地形図を携行するか、もしくは事前に下調べをしておかないと戸惑うかもしれない。

 登山としてはようやくここからが本格的な登りとなるので、登り始める前に小休止を入れていく。
母のほうはというと、あまりの静けさにクマが出てくるのではないかと落ち着かない様子。




 むささびコースは急峻な尾根伝いに付けられているが、しっかりと整備されているので歩きやすい。
母もいつしか調子良く先行して歩いていった。








 8:03 「まがり松」   8:07 「大岩」 

 道中、いろんな見どころを楽しみながら高度を稼いでいく。
尾根は北向きではあるが、もうすっかり雪はなくなっている。
登山道は落ち葉の堆積した柔らかい地面で歩きやすかった。








 8:15 「きつねの館」   8:20 「うでずもうの桜」

 平成17年にトライヤルウィークの活動で登山道の整備が行われたよう。
おかげで単調になりがちなジグザグでも退屈せずに登れてしまう。








 8:27 「もみの木平」   8:30 「水晶沢」

 尾根でもそのまま直登出来そうな感じだったが、もみの木平で東側へ続く山腹道となる。
母は既に山腹道の少し先を調子良く進んでいる。
途中で水晶沢という小さな沢を通過するが、水晶が見つかったのだろうか。

 山腹道でも少し高度を稼いだところで、再び小さな尾根に乗るとまもなく視界が開けてきた。








 8:37 「むささび展望台」   

 主に北側の展望が広がる「むささび展望台」に到着。和田山辺りまでよく見える。
やや木が邪魔しているが、西側には竹田城跡もだいぶ低く見えていた。








冬枯れの尾根を進む  そろそろ山頂へ続く主尾根に乗り上げそう 

 「むささび展望台」辺りからは緩い尾根を進んでいく。
桜が満開の立雲峡とは違って、ここまで高度を上げるとまだまだ春が遠い光景だった。
風も無く物音一つしない静かな別世界で、何とも言えない心地良さだった。








 8:43 朝来山展望台(719.8m)    

 山頂から東にゆったりと伸びる主尾根の肩に当たる展望台に到着。
周囲が広く切り開かれて特に南北の展望が素晴らしい。ここが山頂であればよほどしっくりくるかもしれない。
とはいうものの初めての朝来山の山頂を外すわけにはいかないので、主尾根を西へと進んでいく。








朝来山山頂付近のなだらかな主尾根  ここを登りきると朝来山山頂 

 朝来山は竹田城から眺めると平らで広い山頂が印象的でどっしりした姿。
展望台のある肩から山頂に至るまでは、展望こそ乏しいが快適な尾根歩きを楽しめる。

 山頂手前にはニセピークもあったが、尾根歩きはそれほど長くなくあっという間に終わってしまう。








 9:00 朝来山山頂(756.4m)  竹田城跡とは対照的に静寂に包まれた朝来山山頂 

 全く展望が無いものの、目立つ三角点が出迎えてくれる朝来山山頂に到着。
竹田城から何度も眺めていた山だったが、ようやく山頂に立つことが出来た。

 山頂北側は植林帯だが、東の展望台のように切り開けば山頂から竹田城跡を見下ろせるのではないだろうか。
一応「軍師官兵衛」のタイトルバックにも登場した山なので、少し手を入れればもうちょっと人気が出るかもしれない。









朝来山山頂のきれいな三角点  整備された登山道は無いが、バリルートとして尾根を辿ることは不可能ではない



 9:11 朝来山山頂出発

 今日の朝来山での行程は自分には珍しく完全なピストン。
 ひとしきり撮影して三角点にもタッチしてから、東の展望地へと引き返していく。








 9:21 朝来山展望台  朝来山展望台。展望無しの山頂を補ってあまりある良いところです。 

 山頂を踏んでおいてから、改めて展望地でゆっくりとしていく。
展望台からは今までにない高さから竹田城跡を見下ろすことが出来る。
立雲峡からの眺めに比べるとやや遠くなるが、竹田城跡の石垣の構成をはっきりと見ることが出来る。








竹田城跡を遠望。この後歩く予定の登山道や満開の桜がよく見える。  




 9:50 朝来山展望台出発

 居心地良いところなのでちょっと名残惜しいけど30分の滞在時間で出発。
この後は登りの行程を忠実に引き返していく。




10:15 朝来山登山口

 下りは本当に早く、登りの半分の時間で登山口に到着。




10:30 大成池




10:35 第一展望台

 ここまでは淡々と引き返してきたが、立雲峡では桜の撮影などを楽しみながらゆっくりと下っていく。








第二展望台にて  こんな豪華絢爛な自分撮りも珍しいかも

 秋冬の雲海も良いけど、桜越しの竹田城跡の光景もまた素晴らしい。
立雲峡が初めての母はもちろん、自分も積み残していた課題をようやく片付けることが出来た。








第三展望台にて  立雲峡の桜と竹田城跡

 第三展望台まで下りてくると駐車場はすぐそこ。
通り過ぎるのが名残惜しいくらい、立雲峡の下部では正に満開状態だった。








満開の桜に見送られて駐車場へ  但馬吉野、立雲峡案内図。 ※ 朝来山登山の案内図ではない。 

 花見を楽しみながら下っていく時間は何ともいえない至福のひと時だった。
母にも登山と花見を同時に楽しんでもらえて、自分としても普段にない達成感を得た。
昼までに立雲峡と朝来山の行程を終えたことで、母も早起きして良かったとしきりに言っていた。




11:35 立雲峡駐車場到着

 駐車場近辺の桜も見事でちょっと一息入れたい気もしたが、
この後もう一山(竹田城跡)控えているので間をおかずに先を急ぐようにする。
母にも二山をまたいで縦走していて、今は間のコルに居るようなものと説明した。








 竹田城跡へ登るため、竹田の市街地へ車で移動する。
竹田城跡が有名になってから駐車場は複数箇所に確保されたが、そのうち登山口に最も近いと思われるところへ向かう。
かつては城跡まで徒歩10分程度の中腹の駐車場まで車で上がれてたので、実は麓から登るのは今回が初めてとなる。




11:57 竹田まちなか駐車場(90m+)出発

 市街地にありながらそこそこ広い駐車場だった。きれいなトイレもある。








竹田城跡へはまず駅方向を目指す  駅の南側の踏切を渡るときれいな公園がある。ここから線路沿いに北へ。 

 竹田の市街地を歩くのは初めてだが、そこかしこに案内図があるのでスムーズに登山口へ向かうことが出来た。
桜に彩られた伝統的な町並みも歩いていて楽しいところだった。
観光客も多くて、その中に少なくない外国人も見かけたことが隔世の感だった。








JR播但線竹田駅の裏通りを北に進む 12:06 竹田城跡駅裏登山口(90m+) 

 駐車場から10分程度で駅裏登山口に到着。
登山口から竹田城跡まで標高差200mくらいだが、けっこう暑くて登り始めるとすぐに汗が噴出してくる。
登山道は整備されまくっていて、道標もこれでもかというくらいに設置されている。








六甲縦走路並みに整備された登山道。「料金所」までのカウントダウンがなんとも複雑な気持ちに。  堰堤が見えてくるとジグザグが始まる 

 東斜面は風が全く通らなかったこともあって、もう初夏を思わせるような暑さとなった。
朝来山への山行が無ければ、朝から登るほうがベターなのはいうまでもないだろう。








木陰にて小休止  ジグザグに高度を稼ぐので疲れにくい 

 今の時間に麓から登る方は他には見受けられなかったが、数人下りの方々とすれ違った。








12:37 竹田城跡料金所(310m+) 料金所からひと登りで城郭内へ

 あまり着きたくはなかったような気もするが、真新しい料金所に到着してしまった。
竹田城に入るのにお金が要ること自体、自分としてはなかなか飲み下せないのだが、仕方なく入場料として500円(1人につき)支払う。
 中腹まで交通機関を利用して登ってくる観光客とは料金所で合流する形となる。




 「夏草や兵どもが夢の跡」の雰囲気が充満していた静かな城跡の光景は既に過去のものとなっていた。
自分の知っている竹田城はもう記憶の中にしかない。

 一方通行の順路と柵で行動を規制され、また地面には黒いじゅうたんが敷かれていて情緒は相当損なわれている感は否めない。
知ってはいたものの竹田城跡の現状を目の当たりにして、やはり残念というか寂しさを覚えずにはいられなかった。

 料金所からはまず北千畳へ東側から入り、そこから天守台(山頂)を経由して南千畳へ抜けるという順路になっている。
麓からの登りが一段落するところの北千畳にて、母が用意していてくれた昼食で大休止とした。








登ったばかりの朝来山を北千畳より眺める 桜だけは期待どおりの美しさで出迎えてくれた 

 黒いじゅうたんと柵で城跡というよりは公園みたいになってしまっているが、周囲の光景だけは昔と変わらない。
母も登ったばかりの朝来山を久しぶりの竹田城跡から眺め、大いに満足げだった。

 城跡ではやや風が強く吹いていたが、満開の桜はしっかりと持ちこたえていた。
城跡は変わり果ててしまったが、花見だけはしっかりと楽しめそうだ。








北千畳から天守台へ向けて南へ進む 天守台より北側の景観

 順路と人の流れに沿って花見を楽しんでいく。
自分も母も自由に動き回れた過去の登城経験があるので、やはり現状の城跡散策は味気なく感じてしまう。
城跡の保護とよく考えられた順路には感心しつつ、桜の撮影などを行いながら天守台を目指した。
天守台もかつては頼りないハシゴで登ったものだが、今では立派な階段道が掛けられている。








13:30 竹田城跡天守台(353m) 三角点、無事にあるが・・  天守台から南千畳を見る。何だか昔に比べて木が減ったような。

 天守台も他の郭と同様に縁まで行けないように柵で規制されているため、以前よりはかなり狭く感じてしまう。
あまり長居出来ないような感じだったのと風が引き続いて強かったので、手早く撮影を終えて先へ進むことに。

 観光客は誰も見向きしないのだが、じゅうたんから顔を出すように久しぶりの対面となる三角点は無事に存在していた。
但し大勢の人に踏まれたせいだろうか、国土地理院の点の記を見ると三角点の今後の扱いが心配になる記載がされていた。




 天守台を辞して、順路を辿って南千畳へ向かう。
本来は直接に南千畳へ向かえる階段があるのだが、今では立ち入りが規制されていて順路は西側を大きく迂回している。

 草が生い茂っていたかつての南千畳は本当に開放的な場所で城跡の中でもお気に入りの場所だったが、
今では一方通行で仕切られた味気ない順路で通り過ぎるのみ・・。

 南千畳は城跡の中でも朝来山を最も近くから観られるところなので、ここでしばらく小休止を取った。




13:58 竹田城跡南千畳出発

 南千畳を最後に順路は城郭から離れて下りに掛かった。これで終わり?と感じてしまったが仕方がない。
北千畳から南千畳を気の向くままに行き来していたことが懐かしく思い出される。




 少し下ったところで南山腹の駐車場と、例の料金所を結ぶ舗装された道路に降り立つ。
ここで料金所を経由して登りに使った駅裏登山道で降りることも可能だが、
何も竹田城跡までピストンで登り下りすることもないので南側の表米神社コースで下山する。

 南へ向かうとすぐに表米神社コースが道路から分岐する。
ここでようやく大勢の観光客から解放されて静かな山行の時間が戻ってくる。








けっこうな急坂が続く表米神社コース  崩壊地に沿って整備された階段を下っていく 

 表米神社コースの下り始めは尾根筋、途中からは立雲峡側から見て目立っている崩壊した谷に沿うようになる。
整備されてはいるもののかなりの急坂が続くので、下りでは膝を痛めないよう注意。
終始、正面に朝来山が見えるので、下りも心楽しいものになった。








麓に近いところまでずっと朝来山が見える   








14:28 表米神社(120m+)  表米神社を出ると竹田の町はすぐ目の前 

 南側から神社の境内に出てきて登山道は終わった。
日陰の階段に腰を下ろして、しばらく小休止を取った。
表米神社は境内に土俵と舞台、そして石積みの観覧席まで備えた立派な神社だった。








竹田城跡へ登る前に通り過ぎた公園に戻ってくる  竹田城跡の石垣を見送る 

 表米神社から少し北へ歩くと、行きに通過した公園へ戻ってくる。あとは踏切を渡って駐車場へ。




15:00 竹田まちなか観光駐車場到着

 花見などにも充分な時間を宛てたこともあって、合計8時間30分にわたった山行だった。
自分にとっても母にとっても、たいへん思い出深い一日となった。








 〜 終わりに 〜

 穏やかな春の陽気に恵まれ、立雲峡と竹田城跡で見ごろの桜を大いに楽しめた山行となりました。
朝来山は立雲峡を起点にすると、前半は道標がありませんので事前の情報確認や読図を行うと万全です。
竹田城跡に関しては登山という観点からすると特筆すべきことはありません。
城跡はここ数年で大きく様変わりしましたが、史跡としての価値は不変でありいつまでも遺構が守られることが第一です。
但しいつの日かブームが落ち着いて、かつての静かな光景が戻ってくることを願わずにはいられません。
自分が次に竹田城跡を訪れる日は来るでしょうか。








行程断面図です




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