「餘部・鎧 たかのすの森 他 但馬の絶景を巡る旅」 10年9月18日(土) |
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国土地理院地形図 : 25000分の1 「余部」 〜 はじめに 〜 まだ鉄橋が健在だった時に餘部には何度か訪れました。 (ギャラリーの項に掲載) 今回の餘部への訪問目的は、もちろんコンクリートの新橋梁ではなく、 最近整備された「餘部・鎧 たかのすの森」を歩くことです。 距離、標高差とも、山歩きとしてはたいしたことはありませんが、 夏季休戦後の足慣らしには程好い感じです。 「餘部・鎧 たかのすの森」は、かつて餘部と鎧を結んでいた生活道路です。 交通機関の発達と共に荒廃していたのを最近になって整備されたものです。 いつものように山頂を目指す山行ではありません。 この山行自体は半日もかかるものではなく、これだけを目的に但馬へ 遠征したわけではありません。他の日程も後述したいと思います。 行程概要ですが、餘部集落を出発し、途中にある3箇所の展望地を経由。 そして餘部の一つ東の駅である鎧へ下るという、峠越えのルートになります。 帰路は鎧駅から1区間を乗車して餘部へと戻ります。列車を利用される場合、 基本的に1〜2時間に1本の運行間隔なので、時刻表を基にしっかり計画を 立てる必要があります。 |
行程概要 (山中のルートは不正確です)![]() |
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余部新橋梁を渡る、特急はまかぜ4号 たかのすの森へ入る前に、新橋梁を渡るはまかぜを見送る。 以前の鉄橋と違い、列車が通過しても静かで、危うく撮影タイミングを外しそうになる。 しかも列車の下半分がコンクリート橋に隠れてしまった。慣れ親しんだ鉄橋とは撮影の 勝手が違った。それと手前に空き地が見えているが、以前は田んぼだったような・・。 この光景を直に目の当たりにして、大事な人を亡くした時に味わうのと同じ“喪失感”を覚えた。 もうあの赤い鉄橋は役目を終えたのだと。 それと、約40年もの年月、特急はまかぜとして大阪から山陰を走り続けてきた キハ181も平成22年11月6日をもって引退することが決まっている。 ちなみに後を引き継ぐのは、新快速を改造したような今風の列車である。 見慣れてきた光景がどんどん消えていくのは寂しい限りだが、これも時代の流れと 割り切るしかない。せめて最後まで目に焼き付けておきたい。 出来れば乗りたいのだが・・。 ![]() 引退が迫るが変わらず力走を見せてくれる、キハ181特急はまかぜ 餘部・久谷間にて 国道沿いには餘部の土産を扱うお店がある。鉄ちゃんには必見のようだ。 山行後に立ち寄ることにして、とりあえず“たかのすの森”へと向かおう。 |
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13:52 餘部側から“たかのすの森”へ入山する 餘部鉄橋を東から撮影出来るスポットの一つだったところが、“たかのすの森”の登山口になっている。 国道沿いと、この登山口には案内板、そして道中の随所には道標。そしてほぼ全線に砂利が敷き詰められている。 この“たかのすの森”遊歩道を歩く分には、地形図もコンパスも不要な状態になっている。でも“遊歩道”と表示されているとはいえ、 「自己責任」が求められる山道であることには変わりない。登山に必要な備えをして登るべきところである。 砂利が敷き詰められているので、まるで線路のバラストの上を歩いているような感覚だった。 普通に枕木とレールをそのまま敷設出来そうな感じがする。 ここを歩くにはソールが厚くて硬い登山靴が快適だ。短距離とはいえ、普段の山行の装備で臨んで良かった。 かつての生活道はその大半が涼しい森の中を通る。この日は日差しが強くて暑かったが快適に歩けた。 しかも等高線に沿うように道が付けられていて、きついところもない。 |
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14:07 五反畑展望所 一つめの展望地に到着。いつの間にか橋梁を見下ろす高さになっている。 ここを訪れた時にも鉄道写真目当ての方がスタンバイされていた。一度でも鉄橋をここから撮ってみたかったものだ。 なお、ここに限らず、要所要所には時刻表が掲出されていて、撮影にも乗車にも便利だ。 たかのすの森では随所にこのようにベンチが設置されていて、至れり尽くせりのトラックになっている。 |
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日本海を眺められる、たかのすの森 五反畑展望所を過ぎるとまもなく、左手に日本海が広がってくる。 大自然に囲まれた青い海を眺めながら歩くのは、普段の山行ではあまりないシチュエーションだ。 ちなみに自分が山歩きに目覚めたNZでは、“トランピング”(山歩き)は山頂を目指すものではなく、 道中の景色を楽しんで歩くのが大きな目的になっている。だから、歩いたもののピークは踏んでいない場合も多い。 まさにこの“たかのすの森”は峠越えの道であり、それに通じるものがあった。 |
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14:24 たかのす展望台すぐ北の四辻 ここが餘部東港のある半島の背骨を成す尾根のようだ。 今回の行程での最高地点ということになる。 北には既にたかのす展望台が見えている。3箇所ある展望地のうち、2箇所はピストンで寄り道をすることになる。 一方、南へは“丹生野三角点”へ向かえるようになっている。但し、こちらはバラストで舗装されておらず、 普通の山道を歩くこととなる。地形図を見ると、284.1m三角点ピークが描かれている。 歩きやすそうな緩やかな尾根を持つピークのようだが、今日は鎧駅15:36発の列車に乗る日程なので、またの機会としよう。 |
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14:28 たかのす展望台到着 四辻からすぐのところにある展望台に到着。東西に日本海の素晴らしい景観が広がっている。 但し、ここからだと木立の死角になって餘部橋梁は見えない。 でも初めてのアングルで見る餘部の集落は、まさに箱庭のようだった。 |
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たかのす展望台より、鎧側を見渡す 手付かずの海岸の景観に大満足。 岬にある断崖は一見、人工物のように見えたが、なんと自然の造形だった。
14:33 たかのす展望台出発 列車の発車時刻まであと1時間くらい。残り時間を考えて数分の滞在で出発する。 |
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サワリ鼻展望所へは、岬の突端方向へと下っていく。 傾斜は徐々に増していくが、距離的にはもうたいしたことはない。 |
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14:40 サワリ鼻展望所到着 最後は丸太階段になって、サワリ鼻展望所に到着。 正面に日本海と餘部橋梁という、理想的なアングルとなっている。 ここは整備される以前から、鉄道ファンの間では“鎧海側俯瞰”と呼ばれていた有名な撮影地だった。 ただし猛烈なヤブの突破と、滑落の恐れが付きまとう危険な撮影地だったために、自身は未踏のままだった。 欲を言えば橋梁が架け替えられる前に整備してほしかった。 しかし、午後の西日が当たって暑かった。 都合によりこの時間の訪問となったが、午前中に来るほうが良かったかもしれない。 |
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14:52 サワリ鼻展望所出発 残り時間も考慮してそろそろ出発することにする。 この階段道のところで、スズメバチと遭遇。 見かけたのは単独で、トラック沿いの木の根元近くで樹液を採っていた模様。 刺激しないように忍び足で通過した。秋頃に来られる場合にはスズメバチに要注意である。 再び戻ってきたたかのす展望台で小休止する。 距離的にも標高差的にも、ここからだと鎧方面へ向かうほうが早いようだ。 列車の発車時刻まで約30分を残して、たかのす展望台を出発する。 |
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たかのす展望台の北にある四辻から鎧方面へと下っていく。餘部側と同様、元生活道なので緩くて歩きやすい。 しかも途中からはなんと完全舗装の道となった。バラスト敷きよりは断然歩きやすいが、山歩きの雰囲気からは少し外れるかもしれない。 |
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15:18 たかのすの森 鎧側入口に降り立つ 峠の四辻から約20分で鎧側の登山口に降り立った。 入口からはもう鎧駅は目の前だ。 鉄道は標高差をこなすには、それ相応の距離が必要となる。 ということで、鎧駅と隣の餘部駅はほぼ同等の標高にある。 餘部側の登山口は、谷底の集落から始まるので、この約40mの標高差の分、鎧側から登るほうが楽である。 お好みと都合に応じて、歩く向きを検討しよう。 自分の場合は足慣らしも兼ねているので、運動量の多い餘部側から歩くほうを選んだ。 |
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鎧駅 列車が来るまで鎧駅と港の景観を楽しんだ。 ちなみに線路は2本あって交換可能に見えるが、残念ながら海側は使用していない。 合理化はやむを得ないのかもしれないが、少し寂しい光景だ。 でも列車は止まらなくても、海側のホームへは地下通路を通って行くことができる。 海側ホームからは鎧の港の景観が広がる。 鎧駅はこれまで数々のドラマや、18きっぷのポスターに使われたことがある。 それだけに駅及び周辺の風情はなかなかのもので、途中下車する価値は充分にある。 餘部駅は橋梁架け替えで環境が激変している中で、鄙びた雰囲気を残す鎧駅は見逃せないスポットと思う。 15:36 浜坂行き普通列車に乗車 1区間だけだが、列車の旅を楽しもう。 約1時間半で山越えしたが、列車だとたった3分。 あの峠越えの道が不要になったことを身をもって感じることが出来る。 |
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余部新橋梁を渡る 橋を渡るのに、ゴーッという音がしなくなったことにまた拍子抜けしてしまう。 列車から見ると、従来通り広く見渡すことが出来るが、橋梁の透明板はやはり時々付け替える必要があるのだろうか。 15:39 餘部着 (鎧・餘部 1区間乗車運賃 大人140円) 山側にホームがあるという感覚が抜けておらず、何だか違うところへ来たみたいだ。 かつての純朴な雰囲気が、本当に懐かしく思い出される。 |
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役目を終えた鉄橋 餘部駅側の3本だけ橋脚が残されている・・。列車が通らなくなった線路には早くも草が生え始めていた。 残された一部の鉄橋は展望台として活用されるそうだ。 どのような形になるかは興味はあるが、何にしろやはり現役の風景を思い浮かべると寂しいものがある。 |
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中央部の橋脚は下部のみが残されている状態 すぱっと切断されたところを見ると、ちょっと辛いものがある。 聞くところによると、解体作業はあまりにもあっけなく終わったそうだ。 この世の形あるものはいずれは失われる。ましてや鉄で出来ていた橋だけに尚更。 やむを得ないこととは理解しつつも、諸行無常を感じざるを得ない光景だった。 先述の国道沿いの売店で、土産を買い込んだ。 鉄橋の形見分けとして、錆びを詰めた缶が販売されていたので購入した。 2007年には、“想い出のあまるべ号”と題された列車までが渡った愛着のある橋梁だったが、今は本当に思い出の存在になってしまった。 でも鉄橋は無くなっても、餘部を取り巻く風光明媚さは不変だ。また機会を見つけて訪れたいと思う。 |
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行程断面図です![]() |
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ちなみに午前中から餘部へ訪れる予定を変更させたのは、早朝に竹田付近を通り掛った時に雲海に包まれていたから。 これまで竹田城址に立って雲海は見たことがあるが、城の外側から雲海を眺められる立雲峡にはまだ行ったことがなかった。 ということで、予定には無かった立雲峡へと急遽立ち寄ることにした。 立雲峡は竹田城と同じく、中腹までは車で登ることができる。春は桜の名所でもあり、そこそこ広い駐車場もある。 駐車場からは普通に山歩きの感覚でどんどん上方を目指す。 立雲峡は公園として整備されていて、山の斜面に多くの遊歩道が枝分かれしているが、とにかく上を目指せば大丈夫。 そのうち、竹田城を眺められそうな見通しの良い空間に辿り着く。既に同業の方が数人居られた。 登った頃はまだ竹田城は雲海の中に沈んでいたが、そのうち雲間から浮いてくるようになった。 |
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雲海に浮かぶ竹田城址 期待通りの絶景に夢中で撮影、そして眺望を楽しんだ。 それはまさしく天空の城だった! 「素晴らしい、最高の景色だと思わんかね」と、あの宮崎監督のラピュタのように言いたくなる光景だった。 余談だが自分の中では、未だにラピュタ、ナウシカ、そして魔女宅が最も面白いジブリ映画と思っている。 この日はけっこう雲海が深く、城は浮き沈みを繰り返していたが、 8時を過ぎる頃には急速に雲が切れていった。やはり雲海は一旦切れ始めるとあっという間に消え失せてしまう。 朝から想定外の絶景を眺めることが出来て大満足だった。 この後、鳥取で所用を済ませてから餘部へ向かい(上記山行)、夕刻は餘部周辺の未踏スポットを巡った。 |
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余部埼灯台 餘部より車で狭いワインディングロードを登ること約15分で余部埼灯台に到着。 NZ渡航以来灯台好きになったのだが、今まで訪れる機会が無かったのであった。 地形図を見ると、標高約270mのピーク上に灯台がそびえていて、灯台の周囲にはさぞ絶景が広がっているのだろうと期待していたのだが、 周囲は木立に囲まれて全方位見渡すまでは出来なかった。期待が大きすぎただけにちょっと残念だった。 それでも灯台の周辺各所から標高270mからの日本海の眺めを楽しむことは出来た。 それと想定していなかったが、灯台のロケーションや周辺の雰囲気はなかなかにロマンティック。 自分が取材中にも続々とカップルが訪れるデートスポットでもあった。 自分のように一人旅ではなく、出来ればカップルで訪問されることを推奨したい。 |
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標高約270m。余部埼灯台からの日本海の景観 この後、もう1箇所風景写真を撮るために香住方面へ向かった。 |
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今子浦 「日本夕日百選」 大引の鼻展望台より 餘部から香住を通って少し海沿いに走ったところが今子浦。 日本夕日百選にも選定されているだけあって、久しぶりに本当に美しい夕景を見た気がする。 今回は大引の鼻展望台より夕日を眺めただけだが、周辺は奇観、奇岩が集まっていて、 じっくりと時間をとって見て回りたいところだった。夏ならば海水浴も楽しめる。 また今子浦はキャンプ場にもなっていて、 前述の余部埼灯台と同じくカップルかグループ向きのスポットかもしれない。 今子浦の夕日を見届けてから家路に着く。香住から家までは約4時間のドライブだった。 今回も山行ついでに、「第二の故郷」というほど好きな但馬の魅力の一端に触れた一日となった。 そういえば、今冬は厳冬が予想されているという。 過去には外れたこともあるので、過度な期待は禁物とは思う。 でも予想通りにドカ雪が降って、但馬のスキー場が賑わうといいなと願うばかりだ。 |