「高星山から千町峠縦走」 10年10月18日(月)


国土地理院地形図
 : 25000分の1 「長谷」、「神子畑」

参考文献
 : 神戸新聞総合出版センター 【 ふるさと兵庫100山 】
※ 但し段ヶ峰の項の下山ルートに関する記述のみ




 〜 はじめに 〜

 段ヶ峰から達磨ヶ峰にかけての草稜歩きは本当に素晴らしく、
兵庫の中でも人気のある山のうちの一つになっています。
一方、千町峠以南は同じような緩やかな尾根が続いているにも関わらず、
ルートが不確かで手を出しにくい印象がありました。
それでもやまあそさんや、のあるきさんのレポで入念に下調べを済ませて、
遂に決行出来るという心の準備が出来ました。

 毎回基本的に地形図の読図は随時行っていますが、
今回の山域こそ、その日頃の成果をフルに発揮することが求められます。
いつもは面倒くさくて省略していますが、地形図に磁北線まで書き込んで、
読図の正確性、効率性を向上させるよう万全を期します。


※ 当山域は整備されているトラックは無いため、コンパスと地形図は必携。
あらゆる局面で読図することが必要です。マーキング、案内板だけに頼ると、
ルートを誤る可能性があると思います。特に南方向へ歩く場合は要注意です。
このレポは道誤り、迷い等のリスクを回避出来ることを保障するものではありません。






 行程概要 (山中のルートは不正確です)



 達磨ヶ峰に始まる緩やかな尾根は千町峠を経て、更に南に続いています。
但し千町峠以南は段ヶ峰周辺のように明瞭なルートはありません。
ほぼ未整備と捉えて適切と思われ、地形図とコンパスによる読図は必須です。
また基本的に尾根は下へ向かうにつれて派生していくので、
千町峠からスタートして南向きに歩くほうが難易度は増すと思われます。
今回は全く初めてということもあり、順当に北向きに歩いています。

 6:12 生野学園南にある町界尾根登山口を出発

 生野学園から少し南で道端が広がっているところがある。少数ならば駐車出来そうで、そこに車を停める。
ちょうど上空辺りを送電線が通過しており、これが良い目印になる。
登山口と表現してはいるが、現地にそれを示す案内は一切無い。その代わり「火の用心」が目印となる。
のあるきさんのレポを参照しないと分からなかったに違いない。

 今日最大の登りの区間である町界尾根に備えて、ウォーミングアップを丹念に済ませてから出発する。
序盤は送電線巡視路を利用出来る。最初は緩やかな植林の中を登っていくが、プラ階段まで敷設されている。

 早朝で暗い植林は今にもクマが出てきそうな雰囲気が充満している。
今日は用心のため2つのクマ鈴を付け、しかもそのうち一つはズボンに付けることによって
手持ちしている三脚に常時当たるように仕向けている。おかげで騒々しくて仕方がないが、
おそらくこの山中ではまず誰も居ないだろうし、自分の安全は自分で守らなくてはいけない。








 6:23 340m+付近で送電線鉄塔を潜る

 まもなく周囲の視界が開けて送電線鉄塔の真下に出てくる。
そこからはこれから登る町界尾根が初めてその姿を現す。
但し尾根に乗るのはまだ少し先。ここは432mピークの北に派生する支尾根にある。
この後だが左上の432mピーク方向へ少し登る。そして歩きやすそうなところから
等高線に沿うようにして432mピーク北斜面をトラバースして、西側のコルを目指す。








 6:41 370m+コル通過

 370m+コルの少し東で町界尾根に乗り、そのまま少し下って370m+コルを通過。
そのコルには北側から歩きやすそうなトラックが乗り上げてきていた。
自分は山腹を通ったが、どうやら正規のルートはきちんとあったのに目に付かなかったのかもしれない。

 これからは基本的にこの尾根を辿ると思われるが、こういった要所要所で読図することが大事と考える。
事ある毎に立ち止まって現在位置確認や、地形を先読みしていく作業を絶えず行う山行となる。








 370m+コルのすぐ上では再び周囲の視界が開けて、容易に現在位置を特定することが出来る。
振り返ると東には北斜面をトラバースして回避した432mピーク。
そして、行程の序盤で良き目印になってくれた送電線が頭上を通過している。
この送電線はこの後は長谷ダム方面へ向かうため、まもなくお別れとなる。
そして千町峠に至るまで他に送電線は無いので、現在位置の確認は別の方法で行わなくてはいけない。

 このすぐ上で小さく等高線を閉じた400m+ピークがあるが、
トラックはピークの南斜面を通って回避する。








 6:59 杣道を離れて町界尾根へ直登を開始

 ここが400m+ピーク西の390m+コルだ。ここまでしばらくいざなってくれた送電線巡視路はこの後南へ離れていく。
ここからはひたすら町界尾根を直登することになる。

 コルから西には町界尾根の急坂が構えているが、明確なルートがあるわけではないようだ。
というか下草の無い植林なのでどこでも歩けてしまう。でもとにかくひたすら尾根の上方を目指せば良い。
歩きやすそうなところを選んで登っていく。
最初は幅の広い尾根だったが徐々に狭まり、尾根の形状がはっきりしてくる。
その頃には周囲は植林から雑木林に取って代わった。








町界尾根の急坂に挑む

 ひたすら急な町界尾根を黙々と登っていく。
明るい雑木林で、しかも軽く岩場もあったりして、なかなか心楽しく登ることが出来た。
地形図を見ると614m標高点の手前までは、ずっと等高線が詰まったまま。
この間の標高差は約200mある。とにかくバテないように少しペースを抑えめにして歩いた。








 7:34 614mピーク付近到着

 ふっと急坂が緩むと、なんと尾根が広く切り払われているところに出てきた。
地形図を見ると614m標高点を挟んでしばらく続く緩いところに乗ったようだ。
眺めも良いのでとりあえず小休止することにしよう。北には高星山へのもう一つのルートである天狗岩の尾根が、遠くには達磨ヶ峰も見えている。

 ところでここには地籍図根三角点というものが設置されている。
普通の三角点と違って、プラスチック製の杭が打ち込まれている。
どうも測量の必要から比較的最近になって伐採されたようだ。




 7:45 小休止を終えて出発








614m標高点の周囲は険しい岩尾根だった

 地形図を見る限りではしばらく楽に歩ける区間だと安堵したが、ところがどっこい。
標高差は10mにも満たないようなので等高線には表れないが、このような岩場が連なっていて全く気が抜けない区間だった。
せっかく乗り越えたのに、崖に突き当たったりする。いずれの岩場も南側の裾を通って向こう側へ出ることが出来た。
北側の尾根には天狗岩周辺の岩塊がよく見えるが、展望を楽しんでいる心の余裕はなかった。

 それでも幸いにも岩場の区間はまもなく終わり、再び雑木林の急坂となる。
時折立ち止まっては小休止しながらも、どんどん高度を上げていく。








 8:22 770m+付近通過

 まもなく再び尾根が緩やかになるが、そこもまた広く切り払われていた。
そして614m付近同様に地籍図根三角点が設置されている。

 行く手を見るとそれほど高い山は無く、急坂の区間も終わりが近いことを感じさせられる。
そしてこの後は尾根の傾斜も緩むようだ。








 8:35 860m+ピーク到達

 こんもりと盛り上がっていて比較的分かりやすい地形の860m+ピークに到達。急坂が続いた町界尾根もここで一段落となる。
そしてここが重要なターニングポイントにもなっている。ここで尾根はほぼ直角に向きを変えて北西に続く。
ここに登ってくる前に、この先で尾根が向きを変えることを確認していたら問題ないが、
これまで通り直進しようとすると、町界尾根から外れてしまうので要注意ポイントといえる。
この重要なピークには転進を誘うようにマーキングも見受けられる。但しこの尾根全体に対して言えることだが、マーキングだけに頼るのは危険と思う。

 出発前に念を入れて、地形図で周囲の地形と進行方向を確かめたりして小休止してから出発する。








 8:45 850m+コル通過

 ターニングポイントの860m+ピーク、すぐに連なる870m+ピークを経て、850m+コルに降り立つ。
ここで今日初めて案内板を目にする。きちんと目指す高星山を示してくれていて、やはりちょっと嬉しくなる。
その高星山の方向は明るく朝日が照らしており、もしやと思い歩いていくと・・








「空中庭園」を観賞する

 薄暗い植林に慣れた目だととても眩しく感じる光景だった。町界尾根随一の見どころだ。
でも庭園観賞にはあまり良い季節ではないかもしれないのと、草木が育ち過ぎていることから、持っていたイメージとは少し違っていた。
それでもコケに覆われた岩と、その周囲を小川が流れて、天然の日本庭園という雰囲気は充分にある。
それにしても人里離れたこの山奥には不似合いな上品なスポットだ。

 高星山へ向かうルートは歩いてきた植林の中を通っているので、空中庭園に分け入る必要はない。
尤も、人が入るのを拒んでいるかのように庭園はヤブに覆われつつあるのだが・・。




 9:02 「空中庭園」出発

 庭園観賞でリフレッシュして出発。元居た植林の中に戻り、高星山を目指す。
時折、植林の中に思い出したかのようにマーキングが現れる。
そして右手には空中庭園から小川が並走しており、そちらにもマーキングが見受けられる。
この周辺はかえってマーキングが氾濫して混乱を誘うかのように感じてしまう。
それでもコンパスにより、高星山の方向へ歩いているのは間違いないことは確認していた。








緩やかな登り

 等高線が示すとおり、空中庭園の付近からは緩やかな地形が広がっている。
相変わらず時折マーキングが現れるが、はっきりいってどこでも歩けるので、
決まったルートは無いも同然の状態だ。
絶えずコンパスを確認し、方角だけは誤らないように登っていく。








 9:17 950m+付近の出合(尾根に乗ったと思われる)

 まもなく左手に稜線が見えてきて、山腹から尾根に乗った模様だ。
その直後にどうやら出合になっているらしいところを通過。
「町界尾根」の案内板はこれまで歩いてきたルートが正しかったことを証明してくれていた。
 「足尾滝」は高星山南山麓にある比較的大きな滝で、いずれは行ってみたいところだ。
滝へはこの尾根を下っていくのだなということが確認出来た。

 この出合を過ぎた直後、少し前方で何かが落ちた音が。
その直後右下の斜面を猛スピードで駆けていく動物を目撃。
一瞬だったのではっきり見えなかったが色は茶色。クマは黒いだろうからサルだったのかも・・。
いずれにしても自分が鈴などで大きな音を立てていたことが接近を知らせることに役立ったようだ。








ヤブとの戦いが始まった

 緩やかな地形から、高星山が近づいてきていることを感じさせられるが、
尾根上を覆い尽くし、ルートを塞いでいるヤブが断続的に現れ始めて閉口させられる。
この尾根のシンボルともいえるアセビ藪なのだが、この後も各所で密生し、そのたびに迂回か強行突破の判断を迫られることになる。
背丈の低いものに関しては、へし折りながら突き進むことも出来るが、ある程度育ったものは迂回するしかない。
この場合も尾根から外れずに、なるべく早く回帰することを心掛ける。








 9:27 高星山山頂到着(1,016m)

 アセビ藪を潜り抜けて、ようやく高星山山頂に到着。町界尾根経由で登山口から3時間10分かかった。
地形図で見るよりもあまりピークらしくないが、三角点の配置が微妙に低いところにあるのかもしれない。
いずれにしても三角点の周囲もアセビ藪のおかげで、地形が分かりにくくなっている。
ということで行動範囲が制限されている状態だが、とりあえず高星山での滞在時間を楽しむことにしよう。








高星山からの景観

 高星山からは主に南西方向に視界が開けている。
といっても周囲は高峰が多いのであまり遠望は得られないが、高原の雰囲気は満喫出来て大満足。
ちょうど今、ススキが盛りの砥峰高原も見えている。以前に一度行ったことがあるが、また行きたくなった。

 この展望を得るためにも、ちょっとアセビ藪を分け入る必要があった。
高星山山頂は正直言ってあまり居心地は良くなかった。




 9:51 高星山山頂出発

 滞在時間約20分で出発。ここからがようやく今日の本題の「迷いの尾根」の縦走が始まる。
高星山山頂からしばらくの間は、引き続きアセビ藪の中を北上。
北隣の1,000m+ピークへの方向を確かめつつ歩く。
1,000m+ピークの手前で一旦アセビ藪は消え、快適な尾根に変貌する。








10:02 970m+コル通過

 アセビ藪が消えると、この尾根を特徴付ける緩やかな地形が周囲に広がる。
くどいようだが踏み跡は無いので、まずは先々の地形読みと、進行方向の確認。
そして歩いていくたびに時折現れるマーキングでルートの再確認をするという作業の繰り返しになる。

 自分の立てている鈴の音以外は、本当に静寂そのものの尾根で、人けは全く無い。
予想はしていたが、今日の行程では山中で他の方と出会うことは無かった。

 少し色付きかけた木を見送ると、1,067mピークから東に派生する尾根に乗る。
その尾根上では再び大きく西へ方向変換する。
地形図で読んだとおりの地形が次々に眼前に展開するのだが、今日の行程は読図の楽しさを満喫出来るものともいえそうだ。








10:10 1,067mピーク到達

 西へ方向変換した後、1,067mピークに突き当たる。
ピークはアセビ藪に覆われ、ルートはピークの北へと続いていくのだが、
ピークの南側にもマーキングが見受けられたことから、ピークを踏めるのではないかと考え探索を開始。
しかし、踏み跡は全てアセビ藪で行き止まりになっており(かつてはピークを踏めたのかも)、
ピークに立つのは断念せざるを得なかった。




10:17 1,067mピークの踏査を終えて出発

 高星山と平石山の間にあって、比較的よく目立つピークだっただけに残念だが、
これだけ繁茂したアセビ藪には敵わない。アセビ藪の縁を通って、ピークの北側の尾根に進んでいく。

 この後なんと約500mほどにわたって、標高差が20m前後の平らな尾根が続いていく。
この間を歩くうちに、自分の技量では現在位置を追うのが難しくなってきた。
でも幸いなことにこの周辺ではルートを誤らせるような目立つ支尾根は無く、何事もなく平石山へ到達することとなる。








10:32 1,050m+

 この区間でも断続的にアセビ藪が現れる。こういったところでは、基本的にヤブの間を縫うように進むことになる。
本来ならば殆ど標高差の無い快適な尾根歩きが約束されるところだが、この縦走尾根ではアセビ藪の有無によって快適度が大きく影響する。

 なお左下に見えている黄色いものは、町界尾根でも見受けられた地籍図根三角点である。
比較的最近踏査されたのか、国土地理院のテープも時折見受けられた。

 この辺りでもアセビ藪に悩まされるが、左右に広く見渡せて爽快だった。








10:55 縦走尾根が右にカーブする

 地形図上に現れないくらいの細かなアップダウンが連続するために、現在位置の特定が難しくなったと感じている。
本当に特徴の無い。言い換えれば同じところを歩いているような感じだ。
例えば途中に標高差50m程度のコルでもあれば、そこで地形図との照合が出来たと思う。
ここで課題になったのは地形図上での距離感だった。

 ここで見えているピークを1,051mピークと推測したのは、帰宅後に平石山到着時間から逆算して見当を付けた結果であってあまり自信は無い。
縦走尾根はここでカーブを描いて次のピークへと続くので、こういう点も見逃さないようにしたい。

 実際にはこの時には平石山に辿り着くまで現在位置が掴めなくなっていた。
とにかく尾根を外さないように、方角を確認しながら歩いていった。








11:12 平石山山頂付近のジャンクション

 少し登り返しているうちに尾根が広がってきたことから、平石山へ接近していることを感じるようになる。
しかしこの周辺もアセビ藪に覆い尽くされ、あまり見通しは良くない。
それでも木々の向こうに広場のようなところが見受けられたので、三角点広場と想定してヤブの間を縫って進んでいく。

 なお、ヒシロガ峰、千町峠へは、この出合から北西へ向かうことになる。
地形図から縦走尾根が北西へ続いていることに着目しておかないと、少し戸惑うことになるポイントと思われる。








11:15 平石山三角点到着

 前述の出合から僅かに下ったところに三角点がある。
ここまで来て分かったが、出合の周辺が最も標高が高くなっているから、
三角点はピークの位置から少しずれていることになる。
しかしアセビ藪に囲まれた出合はあまり居心地が良くないから、実質的にここが山頂広場として機能しているように感じた。
山頂付近は広く平らな地形となっているが、その殆どがヤブで覆われ、自由に移動できる範囲は限られている。

 平石山に到達したことで、縦走尾根のほぼ半ばを踏破したことになる。
木々に囲まれてあまり展望は良くないが、北には段ヶ峰から達磨ヶ峰へと続く稜線を久しぶりに目にすることが出来た。

 なお平石山は、別名フエバノ峰、長迫山と、なんと合計3つの名前を持っていてなかなか珍しい山だ。




11:28 平石山三角点出発

 前述の出合に戻って、北西に伸びる縦走尾根へ乗ろうと試みる。
しかし、尾根上は見渡す限りアセビ藪に覆われ、ルートは消えているも同然。
ここでもヤブが無い北斜面を迂回する羽目になる。








11:42 平石山ピークの少し西で主尾根に回帰

 縦走尾根に戻ってくると、北西にはこれから向かう山々が眼前に広がっていた。
今日の縦走の終点である千町峠はまだ山影になっていて見えないが、林道が通る山肌が峠の存在を教えてくれる。

 これまで比較的なだらかだった縦走尾根だが、平石山から北では約100mの下りとなる。
それでも急というほどではない。地面もあまり踏まれていないので柔らかく、比較的歩きやすい状態が続く。
これでアセビ藪さえなければ、本当に快適な尾根歩きになるのだろうけど。








11:47 アヒルの口!?のような木

 調子良く下っていると、ぽっかりと口を開けた木が目に飛び込んでくる。
ここを歩く人全員が目に留まると思われるほど、インパクトのあるモニュメントだ。
珍しいものを集めている某番組に応募しても良いような気がするが、ここまで取材に来てもらうのはけっこう大変かもしれない。








11:50 川上越(965m)通過

 平石山からしばらく下ってくると、川上越と呼ばれる965mコルに降り立つ。
川上は砥峰高原の手前にある集落で、その昔は生野側の栃原とを結ぶ峠道が通っていたという。
今なら播但線長谷駅付近を経由して車であっという間に行けるが、昔はここを越えたほうが近かったのだろう。
昔の人は本当に偉いと思わせる峠だ。但し現状では栃原方面へ下る峠道は見受けられない。

 川上越から1,040mピークに至るまでは、しばらくの間登りが続く。
この間でマップケースに入れている地形図を「長谷」から「神子畑」に差し替える。
この縦走尾根は全く初めての自分にとって、片時も地形図とコンパスから目を離すことは出来ない心境だった。








1,040mピークの南に広がる美しい谷間

 平石山を最後にしばらくアセビ藪は見かけなくなる。
時にはこのようなはっとさせられる光景に心癒される。この縦走尾根は楽しいことと苦しいことが交互に現れるようだ。

 1,040mピークへは、この登りを終えた後で北向きに進路変更するとすぐだ。
北向きに歩いていると比較的分かりやすいが、これは南向きに歩くと尾根を外しやすい箇所のように見受けられる。








12:11 1,040mピーク通過

 1,040mピークも周囲のピークと同様に平らで広い。
疎らにはなっているが、木々に覆われて全開の展望は得られない。
また周囲の中でここだけは固有名詞の山名も三角点も無いという、その規模の割には特徴のないピークだ。
ここでも次の目的地であるヒシロガ峰へ向かうために、約90度方向変換する。








 1,040mピークからは北西に派生する尾根を下っていく。
ここも非常に広い尾根でどこへでも歩けてしまう。「迷いの尾根」という表現がぴったりだ。
ヒシロガ峰へ向かって、ルートを外さないように方向確認をしつつ歩いていく。








12:27 ヒシロガ峰山頂到着(1,042m)

 約40m登り返して、ヒシロガ峰に到着。このピークの南側も、逆向きに歩く時は尾根を外しやすいポイントだと思う。
比較的周囲からは目立つピークに見えるが、残念ながら三角点は無い。
ピークの最高所辺りは木々に覆われているが、少しだけ下ったところでは南以外の展望が開けている。
但し、どこを向いても立派に育ったアセビ藪に囲まれ、少々うっとおしい。

 ここで地形図を観察しながら昼食を摂った。
もう千町峠までさほど遠くないようだが、それより目前のアセビ藪をどう対処するか・・。

 ヒシロガ峰の北西は、類を見ないほど広い尾根になっているのだが、
自分の背丈に迫るほどのアセビ藪が平らな尾根を覆い尽くしている。
しばらくうろうろして探索したが、通過出来そうな隙間すら無い。
やはり中央突破は火炎放射器でも無い限り不可能な状態になっていると判断せざるを得ない。




12:47 ヒシロガ峰山頂出発

 やはりこれまで通りに北斜面を迂回してやり過ごすことにした。
北斜面までアセビ藪は及んではいないものの、そこそこ急斜面になっていて、歩きにくいことこのうえない。
立ち木などをフル活用して、どうにかアセビ藪をやり過ごすことが出来た・・。








12:56 アセビ藪を回避して向かい側に出る

 迂回ルートに使った北斜面はけっこう難路だったが、それでも尾根の全面に広がるアセビ藪を無事に回避することには成功した。
この光景が当ルートにおけるハイライトのはずなのだが、今ではアセビが育ち過ぎて難所になってしまった。
過去にはまだ草原の中にアセビが点在しているという感じだったようだが、短期間のうちにこれだけ植生が変化するのは驚きだ。
シカがアセビ嫌いで他の草ばかり食べたからか、また温暖化の影響か、いずれも絡み合っているように思える。

 それはともかく今はただのヤブだが、改めて花期の頃の光景は見てみたくなった。



 アセビの原を後にして、縦走を再開する。
これ以降は尾根上にアセビ藪は存在せず、忠実に尾根歩きを楽しめる。
尾根はやや東へ弓なりに曲がりながら続いている。
少しだけ登り返してすぐに1,050m+ピークを通過。ヒシロガ峰からアセビ原越しに見えていたピークだ。
この直後よく目立つ支尾根が西へ派生するが、これは方角からも間違うことはないと思う。
すぐになだらかな下りに転じて、まもなく最後の三角点ピークに到達する。








13:08 1,033mピーク到着

 前方が明るくなり1,033mピークに到着。普通に尾根の先端という感じで、あまりピークらしくないところだ。
等高線も閉じていないので、隠れたピークといえる。
これまでよりも一回り小さい四等三角点が目立つ場所に設置されている。
疎らに立っている木の間からは、段ヶ峰からフトウガ峰の山肌が近くに見えている。
それ以外の方角は残念ながら展望は無い。
適度に手入れされて、こ広い三角点広場はなかなか居心地が良い。ザックを下ろしてしばらく滞在することにする。




13:27 1,033mピーク出発

 長い縦走も残すは千町峠へ下るだけだ。
ピークから少し下ったところからは、縦走の終盤を飾るに相応しい景観が広がっていた。








段ヶ峰〜達磨ヶ峰を見渡す

 1,033mピークからは、以前歩いた段ヶ峰から達磨ヶ峰を広く見渡すことが出来た!
高星山に始まる生野高原の南半分の尾根を縦走してきて改めて思うのは、
段ヶ峰などの北半分の尾根となだらかな地形が本当によく似ているということ。
それにも関わらず、千町峠を境にしてこれほど扱いが違うのは不思議な気さえする。
しかし整備されたトラックを快適に縦走出来る北半分に比べて、
南半分は踏み跡皆無で時折アセビ藪で迂回を強いられるという道程で実情は大きくかけ離れている。
でも地形図を読みながらの、静かで充実した山行が約束される良い尾根だとも思う。








歩いてきた生野高原南半分の山々を振り返る

 少し下ったところからは、歩いてきた尾根を振り返ることが出来る。
しかし殆ど同じ標高、同じ山容。しかも偶然にも見かけ上同じ方角であるので、峰々を一同に見るのは難しい。

 1,033mピークからは獣避けのネット沿いに歩くだけで良い。しかも既に眼前には千町峠と山荘が見えている。
よってこれまでのような緊張感は無い。
ところで獣避けネットはあちこちで破れたり、倒れたりして、既にその用を成していないのが現状だ。








13:46 千町峠(970m+)到着

 最後に暗い植林から一転して、遂に明るい千町峠に降り立った。
歩いてきた縦走尾根は舗装路によって分断されている。

 初めて高星山に始まる生野高原の南半分を踏破した充実感と、
無事に千町峠に降り立った安堵感に満たされる。
峠からの景観を眺めながら小休止した。
約2年ぶりの千町峠だったが、特に変わったところはないようだ。

 段ヶ峰を歩かれた方が通られるのではと思ったが、千町峠でも誰も居なかった。
少し下ったところに駐車場があるのだが、一台も停まっていなかった。
朝からまだ誰とも会っていないが、この調子では栃原集落に降りるまで、一人っきりの状態が続くようだ。




13:56 千町峠出発

 いつまでも佇んで居たくなる居心地の良い千町峠だが、この後登山口まで戻らなくてはいけない。
「迷いの尾根」の縦走は終えたが、ここで気を抜くわけにはいかない。
歩行距離でいうと、まだ半分も歩いていないのである。休憩を早めに切り上げて出発する。

 「ふるさと兵庫100山」の段ヶ峰の項には、下山路として旗ノ谷を下る記述がある。
千町峠から100mほど下ったところが入口とあるので、下山口を確認しておきたく注意して歩いたが見つからなかった。
でももし谷を下ると距離的には短くなるのは間違いないが、自分は基本的に谷を下るのは避けたいという心理が働く。
踏破済みなら不安は解消されることもあるが、場合によっては余計に時間がかかることにもなりかねない。
今回は距離は長くても安全確実な林道を辿ることにする。

 この後の林道・舗装路歩きは距離は長いが、延々と登山口までほぼ完璧に下りが続くのでまだ許せる。
もし自転車があれば軽く漕ぐだけで、殆ど惰性走行のままで行けるだろう。

 この時の疲労度からすると、続けて段ヶ峰から達磨ヶ峰を歩くのも不可能ではなかったと思う。
しかし達磨ヶ峰まで歩くと、その頃に日没。車に戻るのはもう真っ暗な18時〜19時頃になるだろう。
生野高原完全制覇を果たすには、日が長い季節に歩くか、もしくはいずれ自転車を導入出来たら検討したいと思う。

 2年前に旧生野荘跡から千町峠まで、延々と緩い登りの林道を歩いたことがある。
今日は下りだから楽といえば楽だが、林道歩きを長く感じるのは変わらなかった。
残距離を考慮して、下りが得意の自分にしては少し抑えめのペースに徹して歩いていく。
林道は舗装部分もあるが、時折石交じりのダートロードにも変わる。これが足に堪えるように感じる。




14:27 倉谷出合通過

 倉谷からの脱出口を確認。林道から見下ろすとなかなかタフな谷のように見える。




14:49 杉谷登山口通過

 以前、フトウガ峰からここに降りてきたことがある。
 ここには立派な「生野高原登山図」が設置されている。これによると千町峠以南のルートは難路(不明瞭)とされている。
歩いてみて思ったのは決して険しいというわけではないのだが、踏み跡皆無で迷いやすいということを指しているのだろう。
また、ヒシロガ峰やフエバノ峰などの山名も漏れなく記載されている。生野高原には変わった山名が多いと改めて思う。








15:09 栃原へ向けて右へ進む

 千町峠から約1時間。歩いたことのある林道を辿ってきたが、ここからは未踏区間になる。
栃原まではまだしばらくかかりそうだ。地形図を見ると傾斜が緩い代わりに大きく遠回りする実線が描かれている。
 これまで同様、舗装路とダートが交互に現れる。




15:32 倉谷登山口通過

 倉谷、旗ノ谷へ入渓する際にはここから入るようだ。

 いつの間にか太い流れになった倉谷川の左岸沿いを下っていく。

 道中、真新しい巨大な堰堤がそびえているのに度肝を抜かされる。
この頃になると、地形図では再び「長谷」を参照するエリアになる。
自分の持っている平成16年版では、実線が途中で途切れているが、
既に舗装路が開通していて、かなり上流まで車でも入れるようだ。




15:55 栃原の集落が見えてくる

 行く手の山麓に集落が見えてきた。千町峠から約2時間かかってようやく栃原へ降り立った。
道中、ヤギ牧場があったりして、久しぶりにヤギとにらめっこしたりする。




16:09 県道に出る

 栃原集落ののどかな風景を楽しんでいると、
生野駅方面から伸びている県道に出てくる。あとはこの県道を南下するだけだ。
 地形図「長谷」では、この辺りだけ東隣の地形図にはみ出しているが、
残距離はおよそ2kmくらいだろうか。
 交通量が極少の県道は、住民の皆さんにとって格好の散歩道になっているようで、
けっこう歩かれている方をお見かけする。








16:33 生野学園通過

 生野学園まで戻ってくると、懐かしい登山口まであと一息だ。
登山口上空を通過している送電線が既に高く見えている。




16:39 車を停めている町界尾根登山口に戻ってきた

 長い道のりを経て、時計回りでサークルトラック完成!

 千町峠から約2時間40分。この下山ルートの歩行距離はなんと13kmだった。
ずっと下りとはいえ、やはり歩き応えのある道程となった。
主題の縦走尾根の距離は8kmだから、なんともアンバランスな山行になってしまったが、
途中で引き返さずにとにかく未踏の尾根を縦走することにこだわったので仕方がない。

 車に戻ってきて帰る準備をしている時に、たまたま通り掛った近所の方に
千町峠から歩いて降りてきたことを説明したら非常に驚かれていた。
また、ここから千町峠まで山中にルートがあることもご存知ではなかったよう。
有名な段ヶ峰と同じ山塊とはいえ、あまりに違う境遇に置かれている南半分の山々だった。




 〜 終わりに 〜

 アセビ藪に度重なる迂回を強いられるなど、大変な場面もありますが、
本当に手付かずの大自然を満喫出来る素晴らしい山域でした。
次はぜひアセビ藪が見どころに変わる季節を選んで再訪してみたいです。
また、出来れば次は南向きに歩いてみたいけど、そうなるとスタート地点に戻りにくいので、一人で縦走するのは難しそうです。
また南向きに歩くとすれば、より読図の正確性が必要になるでしょう。
町界尾根〜高星山往復、もしくは千町峠〜平石山往復等のショートプランも検討して良いかもしれません。








行程断面図です




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