「氷ノ山越から東鉢へ」 10年 6月24日(木)


国土地理院地形図
 : 25000分の1 「氷ノ山」

参考文献
 : 神戸新聞総合出版センター 【 ふるさと兵庫50+8山 】
 : 昭文社 山と高原地図 【氷ノ山 鉢伏・神鍋】



 半月ほど前に、親水公園発着で氷ノ山を歩きましたが、
その際に鉢伏山まで続く「ブン回しの尾根」を歩いてみたいと強く思いました。
快適な秋頃に歩くことも考えましたが、間髪いれず巡ってきた晴れ間を使います。

 今回は歩いたばかりの氷ノ山はカット。そして鉢伏山止まりではなく、
せっかくなので高坪山方面まで一気に縦走することにしました。
駐車地はハチ高原か、東鉢周辺が好適かと思いましたが、ハイライトの
「ブン回しの尾根」を出来るだけ早く踏破することを優先して、
前回と同じく親水公園としました。ちなみに反時計回りは今回の行程では都合が悪かったです。

 今回の行程は類似の資料が少なく、このくらいならば歩けるのではないかと考えて
趣向に応じて独自に設定したものです。積雪期はもちろん、日照時間の短い秋等には
実行不可能なプランかと思われます。




 7:05 福定親水公園(650m+)出発

 今回はやや長丁場ということで、前回よりも少し早めに家を出発した。
スキーの時と同じく4時頃出発すると、7時前に親水公園に到着。
自分は但馬へ向かう時は、通行料を節約するために国道312号を利用している。
播但道を利用することで、所要時間はもう少し短縮することは可能だ。



 前回の氷ノ山行きの行程とは逆に、まず親水公園から氷ノ山越まで登っていく。
親水公園からトラックは二手に分かれるが、布滝を経由しない最短ルートを歩く。
川原沿いで石がごろごろしているので、ちょっと歩きづらかった。




 7:17 布滝手前の出合通過

 あっけなく布滝手前の出合に到着。奥には布滝が轟音を響かせている。

 既に心は未踏の「ブン回しの尾根」にあるという心理状況だが、
親水公園と氷ノ山越の標高差は約600mある。
摩耶山へ登るつもりでじっくり上り坂をこなしていこう。
木陰たっぷり。しかも完璧に整備されているので、とても快適な区間と思う。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)

 8:15 とうろう岩

 前回、持ってきていなかった中望遠レンズ(85mm)を使って撮影。
この前見つけたはずなのに、「とうろう岩」を見つけるのに再び手間取った。
写真で見れば一目瞭然だが、肉眼では森と同化して見える。




 8:36 氷ノ山越(1,250m)到着

 親水公園から2時間はかかるのではとみていたが、実際の所要時間は1時間30分くらいだった。
なかなか良いペースで氷ノ山越に到着。まだ全く息も上がっていない。時間的にも、精神的にもゆったりと
初めての「ブン回しの尾根」を踏破することが出来るだろう。

 その前に600mを登ってきたので、氷ノ山越で一休みしていく。
小屋の横には休憩に最適なベンチが設置されている。
朝日が峠を照らしているが、ベンチは小屋の影で涼しかった。








 8:48 氷ノ山越出発

 一息ついてからいよいよ待望の「ブン回しの尾根」に突入。
この尾根は氷ノ山と鉢伏山を長大な弧でつないでいることから、そういう通称が付いている。
尾根は小刻みにアップダウンを繰り返しながら、ハチ高原へと続いている。
途中どのような光景を見せてくれるのか本当に楽しみだ。

 氷ノ山越のすぐ北には赤倉山(1,332m)がそびえている。
周りの山からもよく見える目立つピークだが、トラックは赤倉山山頂の東斜面をトラバースしている。
ピークを踏みたい自分としては、山頂を経由する枝道の存在を期待していたのだが残念ながら無かった。
山頂周辺は密集した背丈以上に高い笹原で覆われて、山頂を目指すことは不可能だった。
雪に覆われる冬ならば可能かもしれない。








 赤倉山東斜面を通過して北へと伸びているトラックを軽快に歩いていく。
振り返ると氷ノ山が見事な姿を見せてくれる。

 ところで、日の当たるところでは乾燥していて問題にならないが、この山域の土は滑りやすいきめ細かい黒土だった。
水を含んでいるところでは非常に滑りやすい。特に下りの箇所では本当に要注意だった。
各所にスリップした跡が残っている。靴底がスパイク付きであれば・・と思うほどのところが無数にあった。
まるで雪道を歩く感覚で進まなければならない。距離の割りに所要時間が長めに必要になるのではということが頭を過ぎった。








 9:15 天狗岩

 赤倉山を通過した後、いきなり一つ目のアップダウン。
前述の通りに日陰になっているところでは滑りやすくなっていて、ひやひやものだった。
下りでは木を掴んだり、自分の場合三脚を支えにすることもあった。

 上記の写真のところには「天狗岩」という表記があったが、どれが天狗岩なのか判然としない。
トラック脇にある岩がそうなのかなと思ったのだが、案内板から微妙に離れているのが気になった。








 9:21 彼方にハチ高原が見える

 赤倉山北隣の1,290m+ピークも頂上を踏まずにトラバースする。
その途中、周囲の視界が大きく開けた。
いくつかのピークが連なる「ブン回しの尾根」と、その向こうにはハチ高原が見える。
何度も滑っているスキー場でも、初めての角度で見るとなかなか新鮮だった。








ブン回しの尾根より、ハチ高原と大久保地区を眺める

 ここからだとハチ高原を真横から見る角度になる。
ハチ高原の実質的なメインゲレンデは上部の中央ゲレンデだが、下部の大久保地区にも小ぶりのゲレンデがある。
中央ゲレンデと大久保ゲレンデの間は、斜度が違ういくつかのコースが接続している。
今日の行程終盤でもその中の一つを通って下山する予定だ。
大久保ゲレンデは中央ゲレンデと比べると規模は小さいが、やや斜度の急な中斜面でなかなか面白い。
しかし標高が低いので、暖冬のシーズンには雪不足がちになってしまうのが残念だ。

 ブン回しの尾根の終点となる高坪山の向こうには、ハイパーボウル東鉢スキー場とスカイバレイスキー場があるが
ここからではまだ見えない。今日の行程は複数のスキー場をつなぐルートでもあって、個人的に大いに楽しみな要素となっている。








 9:31 布滝頭(1,264m)

 やや緩いアップダウンを経て布滝頭に到着。
地形図を見ると、布滝に至る沢がこのピークの直下から描かれており、その名の由来が納得出来る。
ちなみに地形図には1,264m標高点しか書かれていない。山名は山と高原地図にのみ書かれている。
今日の行程では2つの地図の情報をそれぞれ補完している。

 トラックが標高点を踏んでいるのかどうかは、自分の感覚では判然としない。
トラックは密集した笹薮の中を突っ切っており、コースを逸れるのは事実上不可能となっている。
六甲にも笹薮はあるのだが、氷ノ山近辺では育ち方の勢いが違うと改めて感じた。




 このブン回し尾根でも各所でブナ原生林を見ることが出来る。
六甲では紅葉谷上流にしか生えていない希少な存在なのだが、
氷ノ山を歩いていると、見慣れた存在になってしまった。
やはり植物にとって環境というのは大事な要素なのだなとつくづく思う。








 ブン回し尾根は幾度かのアップダウンを経て中盤へ。
まもなく大平頭というところの光景だ。氷ノ山はだいぶ遠くなってきた。
この辺りでハチ高原と氷ノ山越のほぼ中間にあたる。
相変わらず周囲の山肌は深い笹薮に覆われつくしている。








 9:59 大平頭休憩小屋 (1,200m+)到着

 氷ノ山越から約1時間で大平頭休憩小屋に到着。
大平頭はその名の通りに広くて平らなピークを持つ標高1,230mの山だ。
ピークの場所は歩いている尾根の外側にはみ出ている形になっており、小屋はピークの南端の肩に位置している。
ピークを目指す踏み跡を一応探してみたが、やはり笹薮に阻まれて近づくことは不可能だ。
トラックはこの後はピークに背を向けて、東方へ向きを変える。

 小屋の日陰を利用して小休止をしていく。
氷ノ山へ登った時にはけっこう多くの方とすれ違ったのだが、
今日の行程では鉢伏山山頂まで誰とも出会わなかった。
「ブン回しの尾根」を踏破すると、登山口が大きく離れる形になるのが難点だろうか。
スキー場の存在のおかげで、スキーヤーの自分にとっては見どころ豊富な行程になっているが、
今日の行程は一般向けではないと思う。

 小屋に掲示されている周辺案内図にちょっと気になる表示があった。
ホードー杉へ向かうトラックが「通行止め」になっているという。
この情報が正しいのであれば、行程の楽しみが一つ減ってしまう。
とりあえずバリケードで塞いでいるわけではないだろうから、行けるところまで行けばよいと考えた。




10:07 大平頭休憩小屋出発

 小屋からはしばらく緩やかな下りが続く。
大平頭とその南斜面は、急峻なブン回しの尾根では例外的に緩やかな斜面が広がっており、
次の目的地であるホードー杉はその緩やかな山腹の東端にあるという。








10:16 ホードー杉出合(1,171m)

 深い森の中でほぼ平坦になったトラックを歩いていると、ホードー杉を示す道標のある出合に差し掛かった。
出合からは右手に明瞭な踏み跡が伸びている。とりあえず踏み跡を辿ってホードー杉を目指すことにする。

 そして踏み出した途端に、トラックの地面に三角点を発見!
これが1171.5m「大久保」三角点だ。地形図を改めて見ると、三角点は尾根の末端に位置している。
周囲は等高線が閉じていないので、ここは「隠されたピーク」といえる。
但し、見た目には殆ど起伏はなく、何の変哲も無い出合で、ここがピークとは認識しがたい。

 三角点を見送って先へと進む。
結論から言うと、先述の「通行止め」は間違いだと思う。何の支障も無く踏み跡は南東方向へと緩やかに下っていく。
踏み跡はずっと明瞭であり、ホードー杉へ向かうのは簡単だった。








10:26 ホードー杉到着

 トラックの行き着いた先には、一目でそれと分かる巨木が立ち塞がっていた。
六甲のマザーツリーとは貫禄が違う!確かに「ホードーもなく」でかい!
傍らに兵庫県教育委員会の解説板があったので全文を記す。




 県指定文化財 ホードー杉

 指定年月日 平成3年3月30日
 所有者・管理者 大久保地区

 スギは普通、植林樹として用いられているが、この木は天然スギで、標高約1,150mの場所に自生する。
樹高18.0m、幹周り11.6m、枝張りは東西18.3m、南北16.0mにわたり、樹齢約500年を経た大木であるが、
樹勢は現在も旺盛である。
 幹の中央には過去に火で焼かれた跡があり、木地師のたき火か落雷によるものと推定される。幹は地上約2mのところから4分岐し、
樹高は低いが樹形が全体的に横に拡がり、風格がある。ホードー杉の呼び名は、この地方の方言である「ホードェー」(特別に大きいの意)
という言葉に由来している。

 平成3年11月 兵庫県教育委員会
 

 この木は戦国時代の頃から、変わらずここに存在しているのだ。すごい!

 ホードー杉の向こうは遠景が透けて見えている。緩やかな斜面の肩に居ることが伺える。
この尾根の下方は大久保地区の近くまで伸びている。トラックはここで行き止まりとなっているので、
ホードー杉へ訪れるには「ブン回しの尾根」の縦走途中に立ち寄るしかないが、
三角点のある出合からの距離も標高差も大したことはない。お手軽な必見の見どころだと思う。




10:36 ホードー杉出発

 来た道を忠実に辿って元の出合に戻っていく。
帰りは登りになるが、ごく緩やかだ。








 ホードー杉の周辺の木々も、なかなかの大木ぞろい。
トラック沿いには美しい森が続くので、歩いていてけっこう楽しい。




10:50 ホードー杉出合に戻ってくる

 地形図確認ついでに一休みする。
この先は急な下りがしばらく続き、そして遂にハチ高原の草原へ抜けるようだ。




10:55 ホードー杉出合出発








滑りやすい急坂が連続する

 1171.5m三角点のある出合の北側はある意味今日最大の難所だった。
等高線の詰まった急坂が標高差約100mにわたって続く。
この間はジグザグなどは殆ど無く、ひたすら下方へ向けて直滑降する形になる。
北斜面で日当たりが悪いせいか、滑りやすい箇所が非常に多かった。
設置されているロープや周辺の木とかを最大限利用して慎重に下っていった。

 しかし、ここでトラブル発生。
状況を正確に説明するのは難しいが、とにかく滑った時に左手人差し指外側を怪我してしまった。
常備しているファーストエイドキットのバンドエイドを取り出してとりあえず止血。
この処置を済ませたことも加わって、この急坂を通過するのにかなり時間がかかってしまった。

 感覚的に、凍結した下り道を降りるような場面が続いた。








11:20 ハチ高原が眼前に広がる

 スリップしやすい急坂との格闘の末、遂に森が途切れた!
眼前にはお馴染みのハチ高原が広がっている。
ここからはスキー場からも度々眺めてきた、波打つ尾根を歩く区間となる。森歩きはここでひとまず終了。指が痛いけど楽しかった!
なお、写真では丸太道を下っているが、森が切れる頃に現れだしたもので、肝心の一番滑りやすいところには無かった。

 眼前に広がる緑のじゅうたんを見て大興奮。苦手なはずの暑さも忘れてワクワクして下っていく。
まだこの時は元気だったが、これから高坪山の手前まで全く木陰の無い区間を歩くことになる。
まだ下りは良いとしても、登りの時には強い日差しでじわじわと体力を消耗させることになる。

 とはいうものの、自分は基本的に木の少ない草原の山を歩くのは、
常時展望が得られるからか、もしくはNZを思い出すからか好きなのである。
但しここはスキー場として開発されているので、人によっては山の風情は乏しいと感じられるかもしれない。




11:26 大久保下山ルート出合

 やや草に埋もれがちで、あまり歩かれていなさそうなルートが分岐している。
資料によっては大久保へ直接下山するルートが閉鎖されているようだったが、出合からは支障になるような箇所は見えない。




11:30 1,019mコル通過

 先述のホードー杉出合から続く下りはここで終わる。
鉢伏山に近づくにつれて段々とハードになっていった草稜歩きだが、序盤はまだ大したことはない。








11:38 1,048mピーク通過

 長くて広大な1,048mピークを通過。ピークといっても見た感じ単に原っぱのような感じだ。
冬ならば遮るものの無い雪原になるのであろう。ちなみにゲレンデの範囲は高丸山の東側からである。








11:45 小代越(1,020m+)通過

 1,048mピークから緩やかに下っていくとまもなく小代越。
この峠も周囲の山容に合わせて、ごく緩やかな起伏となっている。
地形図にも地名が表記されている小代越だが、行く手の高丸山に阻まれてスキー場からは死角に入っている。

 小代越を過ぎると高丸山まで約50m登り返す。
標高差は大したことはないのだが、この辺りで早くも暑さが効いてきた。
地面の照り返しによる暑さはかなり堪えた。オーブンの上で焼かれているような体感だった。








11:55 1,070m「ハチ高原」三角点

 高丸山は三角点があるのだが、実際にはピークから少し西に外れたところにあった。
トラックの北辺から笹薮を踏み分けるように数メートル進んだところだ。
スムーズに辿り着けたのは、道端にあったテープと僅かに出来た踏み跡を見出せたから。
夏は笹に隠され、冬は雪で埋もれる。なかなか厳しい環境にある三角点だ。








12:03 高丸山山頂(1,070m)

 山頂西端の三角点を確認した後、高丸山山頂を通過。
山と高原地図には「草原の山頂」との表記があるが、実際はてっぺんハゲの状態になっていた。
そして露出した地面を横切るようにボードウォークが設置されている。
期待していた山頂だったのだが、風情としてはもう一つかな。

 ところで地図の中で高丸山の表記を見た時、自分としてはシングルリフトが上がってきているピークが思い浮かんだ。
そのリフトの名前が高丸シングルリフト、周囲は高丸ゲレンデと名づけられていたからだが、
実際は少し西のピークを指していたことをこの時初めて知った。

 なお、高丸山山頂のすぐ東に高丸ペアリフトの終点がある。
ここからがハチ高原のゲレンデ内ということで、滑ったことがある範囲に突入する。








12:07 千石平ゲレンデ上部(1,030m+)

 高丸山山頂、高丸ペアリフト終点から少し東へ下ると、千石平ゲレンデのスタート地点に辿り着く。
スキー場のコース構成は完璧に頭に入っているから、この辺りは地形図を見なくても概ね支障は無い。
でも標高差を確認する必要だけはあるが。

 この後、千石平から高丸ゲレンデまで約40m登り返す。
高丸ゲレンデのうち、初級向きの緩やかな斜面を登っていくのだが、石がごろごろしていて歩きにくい。
雪の下はこのような状態だったのかと初めて確認出来た。
尚且つ前述のとおりに照り返しもきつく、この標高差でもしんどく感じてしまう。








12:13 高丸シングルリフト終点(1,070m+) ※ 09−10シーズン現在、このシングルリフトは使用していないようです。ということはこのミニピークから滑降出来ない!?

 滑り降りればあっという間の斜面だが、大汗をかいて登ってきた。
今日の行程を通じて強く実感することなのだが、スキー場も歩けば非常に広いということ。
少し考えれば分かることなのだけど・・。
自分の場合、スキーで滑降する時の距離感と時間の感覚が体に染み付いている。
だから歩けばやたらと広く感じてしまうのだった。

 同じく標高差にしても、いつもはリフトで楽々登っているところだから、
普段の山歩きの標高差の感覚も狂うようだ。
この後、暑さも手伝って鉢伏山への登りは本当にきついと感じることとなる。

 高丸シングルリフト終点の僅かな日陰を利用して軽く昼食を摂ることにする。
日陰に入れば吹き抜ける風が心地良い。
 基本的にハチ高原は木々が少なく、スキーシーズンには強風が吹き付けて非常に寒かった記憶もあるのだが、
それが手伝って同じ場所でも全く違うところのように感じてしまう。

 自分がハチ高原に最もよく通っていたのは、氷ノ山国際と同じくやはり10年ほど前まで。
このレポを記述する際に一応、ハチ・ハチ北公式サイトで最新情報を確かめたのだが、
ゲレンデマップにはこのリフトが描かれておらず、運行状況の一覧にも記載が無かった。
もしかしたらもう記憶の中だけで動いている存在になってしまったのだろうか。




12:30 高丸シングルリフト終点出発

 軽くエネルギーを充填してちょっと元気になった。
でもこの後、更に鉢伏山まで150mほど登らなくてはいけない。
中央ゲレンデを横切って、中央トリプルリフトと鉢伏頂上トリプルリフトに乗れば
すぐに鉢伏山山頂に辿り着けるという、冬の記憶はここでは邪魔になるので忘れておきたい。









高丸リフト付近から見た、シーズン中のハチ高原
旧「西尾根ツアーコース」

 今では閉鎖されているようだが、以前は鉢伏山山頂からこの西尾根を滑降出来るコースが設定されていて、自分も一度だけ滑ったことがある。
但し途中では登り返しもあるというゲレンデスキーにはありえない局面も体験出来る山スキーもどきのコースだった。
今ではコース設定されていないので、鉢伏山山頂からハチ高原へ降りるには、リフトに下り乗車するか、
ハイランドビュー・コース(上級向き)を下るかのいずれかになる。

 登るのはもちろん今日が初めてで、西尾根の険しさを体験することになる。
最初の1,114mピークまでは中斜面の登り。暑くてしょうがないが、我慢してゆっくりとこなしていく。








鉢伏山西尾根からハチ高原を眺める

 1,114mピーク付近からは広いハチ高原の中央ゲレンデを背後から見下ろすことが出来る。
西尾根ツアーコースを滑り降りた時に一度だけ見た光景だが、夏場はやはり雰囲気が全く違う。
それとハチ高原から氷ノ山を見ると、本当に遠く感じられたものだ。
自分にとってハチ高原側から遠望する氷ノ山が見慣れた光景なのである。








12:48 1,110m+コル

 西尾根上には等高線が閉じたピークが2つある。
ということでそれに付随してアップダウンが生じるのだが、せいぜい10mほどだ。
無論歩けば全然大したことはないのだが、スキーでそれらを登り返すのはかなり重労働だった。
但し、鉢伏山頂上からしばらく続くダウンヒルはかなり楽しかった。
当時は深雪は滑れなかったから、積もってからしばらく経って雪面が固まった時に滑ったと記憶している。
廃止されることが分かっていたら、もっとたくさん滑っておけば良かったと後悔している。








鉢伏山山頂手前にて。歩いてきた「ブン回しの尾根」を振り返る

 ダウンヒルが楽しかったということは、言い換えると鉢伏山山頂直下は
けっこう急な登りになるということである。
それまで緩やかなアップダウンで終始していた西尾根だが、
鉢伏山山頂に近づくと一気に等高線が混んでくる。
暑さも手伝ってかなり足取りが重くなっていた。
ここを登っている時には風も止んで、もうサウナ状態だった。
撮影のために手袋を外したら、手が凍りそうになった冬の日が懐かしい。
「ブン回しの尾根」を歩きたいという気持ちが強くて忘れていたが、
自分はとにかく暑いのが苦手なのである。

 それでも山頂に近づくにつれて、これまで歩いてきた尾根と
それに連なるピーク群を見ていると爽快な達成感に満たされる。

 鉢伏山山頂にまで手が届くようになってくると、何だか賑やかな声が聞こえてきた。
自分が到着するのとちょうど入れ違いで出発されたのだが、小学生の団体が滞在中だった。
子供たちが山歩き、そしてスキーに興味を持ってくれれば嬉しいのだが。









旧西尾根ツアーコース滑降口 (現在は閉鎖されています)
13:00 鉢伏山山頂(1,221m)到着

 暑い西尾根の急坂をようやく乗り切って、自分にとって馴染み深い鉢伏山山頂に到着。
冬にはリフトで数え切れないくらい登っているピークだが、今日初めて歩いて登ってきた。
けっこう高い山だったんだな。

 ピーク中央にあるモニュメントには、スキーシーズンは温度計が設置されていたが、夏の間は外しているようだ。
子供たちが出発して静まり返った鉢伏山山頂を時計回りに一巡してみよう。








鉢伏山北斜面からはハチ北高原スキー場が展開している(ハチ高原とリフト共通)

山頂から北西の尾根は「スカイロード・コース」(中級向き)、
山頂北面には「北壁」(上級向き)

 09−10シーズンは春先に雪不足で来れなかったから、
ハチ北へ来たのは約1年3ヶ月ぶり。懐かしかった。
今更ながら、昨シーズン来れなかったことが悔しく思い出される。
雪の無い北壁はなぜか更に急に見える。冬には転がり落ちたことも度々あったが、
今転がったらたいへんなことになるな。

 北壁を見るとやはりスキーヤーとして気持ちが疼いてしまう。
次のシーズンまであと半年ほどもあるのに。










シーズン中の北壁ゲレンデ

山頂から北東には「北壁樹氷コース」

 スカイロード・コースよりやや幅が狭い。こちらはあまり多くは滑っていない。
コースの向こうにはこの後向かう高坪山が平らな山容を見せている。
高坪山より東斜面には2つスキー場が展開しているが、ここからでもまだ見えない。

 鉢伏山山頂南側には、ハチ高原中央ゲレンデから登ってくるトリプルリフトの山頂駅がある。
登りも下りも利用出来るリフトだが、下り乗車はハチ高原へ飛び込むような爽快な気分になるのだが、
高所恐怖症の人にはちょっと怖い体験と聞いたことがある。
正面には相変わらず氷ノ山が両翼を大きく広げた美しい山容を見せてくれる。

 このトリプルリフト終点の日陰を利用して、残った昼食を平らげてひと息つく。
シーズン中は次々と搬器が通過するところで座り込むのも不思議な感覚だ。
昼食のパンを食べながら、残る行程を地図を見て確認する。
大体の所要時間は山と高原地図で算出出来る。おそらく暗くならないうちに親水公園へと戻れるだろう。

 少し前に訪れた氷ノ山は一般ハイカーの方をけっこうお見かけしたのだが、鉢伏山は先述の小学生の団体を除けば全く人けがなかった。
鉢伏山は氷ノ山に比べると、登山対象の山としてはマイナーなのかも。








13:45 鉢伏山山頂出発

 山頂滞在45分で鉢伏山を出発。ここからは基本的に下りが続くので気分も足取りも軽くなる。
山頂から東南の方角へ下っていくが、ここはシーズン中はハチ高原の中央ゲレンデへと
下っていくハイランドビュー・コースだ。
雪の下に階段道が隠れていたことはもちろん今日初めて知った。

 ハイランドビュー・コースも何度か滑ったことがあるが、山頂直下からの谷筋を
利用した急斜面コースだ。降雪直後にはパウダー、普段は大きなコブの連続するコースで
かなり楽しめる。但し南斜面で日当たりが良いので、自分の訪れる春先には雪が非常に
重くなることが多かった。
一本滑り降りたらヘトヘトになったことを思い出す。










シーズン中のハイランドビュー・コース

 もちろん今日はハイランドビュー・コースには降りずに尾根筋を下っていく。
延々と階段道が続き、そしてこの区間は滑りにくいのでペースがはかどる。
しばらく真南に下るが、そのうち東寄りに進路を変える。
行く手にはこれから向かう平らな高坪山が大きく見えてくる。この山が今日最後に踏むピークとなる。








14:05 林道出合(1,040m+)

 調子よく階段道を下っていくと、トラックは林道と交差する。
この林道は高校の野外活動で歩いたことがあり、たぶんこの出合まで登ってきていると思う。(おぼろげに記憶がある)
当時は山歩きに全く興味が無かったどころか、もう早く家に帰りたかったことも手伝って記憶があやふやになっているようだ。

 この林道を下ればハチ高原の中央ゲレンデ下部に辿り着くが、
予定通りに高坪山への縦走を継続する。

 林道出合から高坪山への標高差は約60m。山中では最後の登りとなるが、ピークまで終始緩やかだ。








14:17 高坪山山頂(1,104m)

 ごく緩やかな登りのまま高坪山へ到着。外見通り広く平らな地形が広がっており、
ピークを踏んだという感覚があまりない。
 高坪山を過ぎると再び一貫して下りとなるが、東側も相変わらず斜度は緩い。
高坪山の辺りは、今日の行程では例外的にとても歩きやすい山道になっている。








14:25 高坪山避難休憩小屋(1,060m+)

 高坪山山頂から続く森が途切れると、高坪山避難休憩小屋に到着。
2階にテラスまであって、この山域の中では最も居心地が良さそうな山小屋だ。
時間に余裕があれば、ここでゆっくりと過ごしたいと思わせる。
足型をモチーフにしたベンチ?まであって、とてもユニークである。

 山小屋からは行く手に東屋が見えている。
実はあの東屋は見覚えがある。もうすぐ東鉢スキー場に辿り着くことがすぐに分かった。








14:31 東鉢スキー場最上部付近の東屋

 この東屋は東鉢のリフトから見えているので、存在は以前から知っていた。
鉢伏山山頂も背後に小さく見えている。

 とにかく強い日差しを避けるには東屋はありがたい存在だ。
一息ついていくことにする。

 東屋の中で今後の行程を確認する。
東屋からはすぐに東鉢スキー場に入って、コースに沿って下っていくだけだ。




14:39 東屋出発








ハイパーボウル東鉢スキー場最上部(1,020m+)

 自分にとって東鉢も約10年ぶりで本当に懐かしいスキー場だ。
スキー場の上半分は木々が少ないオープンスペースとなっていて、
とにかく開放感抜群のスキー場だ。
最上部から最下部までの滑走距離は2kmだ。
でも滑り降りるのと歩いて降りるのとは、全く距離感が違うことを
またまた身をもって体感することになる。

 最上部からは競技Aコースで急降下するほうが距離は短くなるのだが、
コースの下部を見下ろすとかなりブッシュが深くなっている。
それに急斜面は歩くと疲れそうということで、回り道にはなるが「東尾根コース」を
通って下ることにした。東尾根コースは隣のスカイバレイスキー場との境界線にもなっている。
スカイバレイスキー場側の名前はディア・コース。スカイバレイはコース名に
動物の名前が付いている。
現在は両スキー場はリフト券が共通になっているが、自分が来ていた10年ほど前は
まだリフト券が別々で不便だった。
無理なく両方向へ滑り込めるので、実質的に一つのスキー場と考えて差し支えない。
スカイバレイはきれいな各施設と、足の置き場のあるクワッドリフトが印象深いスキー場だ。









シーズン中の競技Aコース
14:55 東尾根コースを下った

 東尾根コースを下って、東鉢の代表的景観の平らなところへ降りてきた。
シーズン中ならばコース取りが自由自在なのだが、今は道を外れると深いブッシュに足をとられる。

 スキー場の中を伸びている舗装路を辿って下方へ歩いていく。
自分の場合は、コースとリフトの配置から方向感覚を掴めるが、
馴染みが無ければ同じような風景が広がっているので、ここは少し要注意かと思う。

 とはいえ基本的には道なりに進んでいけば問題なく下部のコースへ向かうことが出来ると思う。
途中でセンターBコース(初級向き)に架かっているリフトをくぐる。
センターBコースはごく緩やかな斜面で、スキーならばあっという間に通過するという感じだ。
しかし、この時は足もけっこう疲れてきていて、下りにもかかわらずペースが上がらない。









シーズン中の東鉢スキー場上部
15:13 センターDコース(750m+)

 東鉢スキー場下部は2つの林間コースに分かれる。
この後、車を置いてある親水公園へ帰らなければいけないので、当然ハチ高原へ近いセンターDコースへ下らなくてはいけない。
周囲の景色に注意しながら歩いていたが、道なりに進むとセンターDコースへ下ることが出来た。
ちなみにハチ高原とは逆の東側へ下るチャンピオン・コースは深い草に覆われていて、紛らわしい分岐も無いので、誤って降りることは考えにくいと思う。

 以前、センターDコースを滑っていた時、途中の起伏でジャンプしてしまったことがあった。
雪の下に隠れていたこの道が斜面を横切っていたためだった。

 舗装路はジグザグに高度を下げていき、途中でセンターDコースから外れる。
そして田んぼに囲まれた三叉路でハチ高原方面へと右折(道標あり)。道なりに進むとハチ高原へ向かう広い車道へ出た。(15:25)
このあたりの道筋は地形図に描かれているとおりで分かりやすい。








15:31 別宮の大カツラ到着

 車道をハチ高原方面へと歩いていると、別宮の大カツラを示す案内板が目に入る。
道路脇から少し山側へ入っていくとすぐに見つかった。
スキーの行き帰りの道中にあり、存在だけは知っていたのだが、間近でじっくりと見るのは今日が初めてだ。


 県指定文化財 別宮の大カツラ

 指定年月日 昭和40年3月16日
 所有者・管理者 別宮地区

 樹高 27.32m
 幹周 14.50m
 枝張 東西約24m
 枝張 南北約26m

 この大カツラは雌株で、主幹を中心に大小100本近くの幹が叢生し、支幹はゆるく左巻きにねじれた巨大老木である。
根元からは多量の湧水が湧き出している。叢は対生で円心形をしており、長さ幅はともに3〜7cmくらい。果実は円柱形で、
種子は小型で扁平な形をしている。

 平成2年11月 兵庫県教育委員会


 ホードー杉も大木だったが、この別宮の大カツラは更に大きく見える。
大カツラの根元脇には水量豊富な湧き水が流れており、この水が大カツラを育んだのだろう。

 ちなみに、東鉢スキー場のリフトの名前は、この木が由来と思われる。
4本あるリフトにはそれぞれ・・・、かつら1号、かつら2号、かつら3号、かつら4号リフトという名が付けられている。




15:41 別宮の大カツラ出発

 引き続いてハチ高原へ向かう車道歩きを再開する。
車だと東鉢からハチ高原まではあっという間なのだが、歩いてみるとけっこうたいへんだった。
大カツラからハチ高原までの標高差は140mほど。
「ブン回しの尾根」自体は素晴らしい道程だったが、ぶん回し過ぎると後がたいへんだ。
2人以上で複数台の車を用意するのが理想的と思われる。
車道の道筋は一本道なので特に迷うところは無い。広い道を辿るだけでハチ高原へ向かうことが出来る。








16:30 ハチ高原

 大カツラからハチ高原まで50分程度かかった。
道路はハチ高原の中央ゲレンデ下に出てくる。このモニュメントの懐かしさに惹かれて、ゲレンデに立ち寄ってみた。
スキーで来ると何度となく登り降りすることになる鉢伏山だが、歩けばやはり歩き応えがあることを実感した。

 ちなみに駐車地の親水公園へは、まずハチ高原から大久保地区まで下山しなければならない。
大久保までの下山ルートの入口は、ハチ高原バス停近くの宿舎脇にある。
地形図でも破線で描かれているが、入口は普通に舗装されていて、一見して私道ではないかと思った。
でも少し奥へ進んだところで「大久保へ」と書かれている道標を見てほっとした。
 この下山ルートへの入口付近でも撮影したかったのだが、この時野外活動中の子供たちが周辺にたくさん居た。
このご時勢、子供の団体相手に不審に思われるのはまずいと思い、とっさの判断で撮影しなかった。








16:44 大久保ダウンヒルコース

 入口から暫くは森の中を下っていくが、すぐに開けたところに出る。
そこは自分には見覚えのある大久保ダウンヒルコースだった。
右手の中斜面がけっこう面白いのだが、この中斜面を下りきると、あとは緩やかな斜面になってしまう。
春先の重い雪質の時にはスキーが止まってしまうこともあった。というような緩急の斜度変化の大きいコースだ。

 シーズン中ならば、この中斜面を滑ってあっという間に大久保へ下山出来るのだが、その中斜面は今は草深い。
徒歩では無難に緩やかな道なりに進むのが上策だ。

 下りきったところのコース状況の記憶があやふやだったが、山と高原地図のルート図を参照することによって、
スムーズに大久保地区へと下ることが出来た。ハチ高原がこんなに広かったとは・・、とつくづく思った。

 大久保民宿街へ出ると、バスも通る片側一車線の道路を下っていく。








17:15 福定の三叉路

 大久保からここまで下ってきて右折。親水公園へと西進していく。
この辺りで580m+だから、650m+の親水公園まであと70mほど登らなくてはいけない。
ハイライト(ブン回しの尾根)の後に車道の登りという、面白みに欠ける区間を残してしまうことが、今日の行程の難点だ。
しかしブン回しの尾根を早い時間から歩きたいという希望があったので、今日はやむを得なかった。
以前、段が峰で長い林道歩きを先に済ませたことがもあったが、あれは理想的なプランだったなあと改めて思う。




17:31 福定親水公園到着

 夏至の頃でまだかなり明るいが、親水公園周辺は山影に入っていた。
秋ならば今日の行程はタイムオーバーになっていたことだろう。
でもかなりの距離のブン回しの尾根を満喫出来て、充実感溢れる心地良い疲れで行程を終えることが出来た。
氷ノ山・鉢伏山は兵庫が誇る素晴らしい山域。またぜひ歩いてみたい。






 長い行程から夕刻の到着になると想定していましたが、それでも予想よりも少し長めに時間がかかりました。
先述していますが、スキーを履いていればあっという間の斜面でも、歩けばけっこうかかるのです。
自分の場合、その辺りの感覚を切り替えきれていなかった気がします。
でも一度歩いてみて、ハチ高原も東鉢も実寸を感じ取ることが出来ました。
それとハチ高原周辺は木陰が少ないことも、暑がりの自分には甘く見てはいけない要素でした。
少し距離を短くした上で、さらに秋に歩けば快適に楽しめるのではないでしょうか。
でも緑のじゅうたんの高原も一見の価値はあると思います。








行程断面図です




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