「戸倉峠から赤谷山」 2012年10月14日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「戸倉峠」




 〜 はじめに 〜

 赤谷山はごく最近まで定まった名前もないような状態でしたが、
近年に宍粟五十名山に指定されて登山道も整備されました。
頂上は360度の素晴らしい展望が得られ、以前から気になっていました。
今回、氷ノ山テン泊のついでに、2日目の行程としてピークを踏んでおくことにしました。




 8:00頃 氷ノ山キャンプ場出発

 5時起床予定だったのですが結局6時にずれました。あまりに寝心地良すぎでした。
そしてテントなどを撤収して、キャンプ場を出発するまでに2時間もかかってしまいました。
自分はまだまだテン泊を練習する必要がありそうです・・。

 朝はインスタントラーメンとコーンスープ。
とりあえず塩分はたっぷりと補給して、行程2日目に備えました。

 氷ノ山キャンプ場から戸倉峠方面へ向かいます。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)


戸倉隧道を兵庫県側に通り抜け、直後に北側の旧道に入る。
旧道とはいっても1995年までは現役で使用されており、自分自身は運転する機会は
なかったが、旧トンネルを抜けた記憶は残っている。

 旧道はそのまま残っているわけではなく、1車線のみとなっているところもある。
旧道終点まですぐに辿り着くが、ヘアピンカーブが連続しており雪道の際には
けっこう難所だったことが伺える。








 9:02 国道29号旧道終点よりスタート ※少し奥に旧戸倉隧道波賀町側の入口がある。

 唐突に旧道が途切れるところで車を止める。この草薮の向こうに旧戸倉隧道がある。
南側には更に旧道の旧道がある。これは未舗装で一見すると林道のようだが、
1955年までは国道29号として戸倉峠を越えていた道のようだ。

 出発準備を整えてから、この旧道の旧道へと入っていく。
テン泊2日目という設定上、今日も75Lザックにテン泊装備一式をパッキングしている。



 歩き始めてすぐに旧戸倉隧道の入口が未舗装路のすぐ近くに見えている。
トンネル入口へは容易に降りられそうだ。下山後に立ち寄ってみよう。



 未舗装路は緩やかに高度を上げていく。
カーブミラーが設置されているヘアピンカーブが連続し、ここを車で峠越えするのはかなり難路だった光景が想像される。
今は行きかう車もない静かな未舗装路を歩いていると、行く手には深い森に覆われた尾根が見え隠れしてくる。








 9:25 赤谷山登山口

 先ほどから見えていた県境の稜線が近づいてきた頃、よく目立つ宍粟50名山の指導標が目に入る。
もう少し進めば戸倉峠に達するようだが、少し峠から外れたところから尾根を目指すようだ。
小休止を入れてからいよいよ本格的な登山道へと入っていく。








序盤は急坂

 登山口からは、息が上がりそうになる急坂の連続。
見る間に高度を上げて尾根に接近していく。右手には戸倉峠があるはずだが、
トラック上からは殆ど崖同然の急斜面が続いていて、尾根から峠へ降りていくのは難しそうなことを悟る。

 トラックは地面が固まるほど歩かれていないが、踏み跡はなんとなく分かる感じ。
また適度な距離でマーキングもある。でもこれらは参考程度にして、読図しながら歩くと心強いと考える。




 9:42 尾根に乗る

 徐々に傾斜が緩くなってきたなと感じてきたら明確な尾根に乗った。
ここで地形図を見ながら、急斜面で乱れた息を整えるために小休止をとる。
進行方向に見える尾根の方向確認と、今後辿る尾根の形状を覚えておく。
また、先ほどから注意して観察していたが、戸倉峠へ直接降りるルートは無さそうだ。
戸倉峠は下山途中に登山口から立ち寄ることとしよう。








歩きよいアップダウンが続く県境尾根

 前述の小休止をしたところが940m+付近とすると、次に目標とするのは1,010m+ピーク。
赤谷山へ続く県境尾根は1,010m+ピークの西端をかすめるように南へと続く。
1,010m+ピークまではほぼまっすぐに、比較的緩やかに登っていくようだ。








10:02 1,010m+ピーク

 1,010m+ピークの西の肩に辿り着いた。ここで読みどおりに尾根はやや西寄りに向きを変える。
要所には指導標が立っていて、1,010m+ピークの中央に誘い込まれないように配慮されている。
ピークは比較的広くて、団体でも休憩可能なくらいだ。

 ここで数分程度小休止してから、次の目標地点を1,143mピークと見定める。








 1,010m+ピークを過ぎると、しばらくは緩やかかほぼ平坦な極楽尾根。
午前の日の射す兵庫側は雑木林、逆に鳥取側は薄暗い植林となっている。
雑木林は美しいが、紅葉にはまだ少し早いようだ。








1,143mピークに向けて

 1,143mピークまでは140mの登りとなる。
しばらくはさほど急なところはないが、1,143mピークが近づいてくるとやや険しくなってくる。
このピークの北斜面の登りは、登山口直後以外で最も急ではないかと思う。
一応ルートは付いているが、歩きやすそうなところを適当に選んで登っていく。
この辺りで今日の歩行中、最初で最後となる単独男性の方と行き交う。








10:35 1,143mピーク

 そこそこの急坂を登りきって1,143mピークに到着。今度はさほど広いピークではない。
1,010mと同じく展望は皆無で、トラックはこれまた同じように西寄りに向きを変える。
次の目標は広く等高線が広がる1,190m+ピークで、距離は前述の1,010m+ピークとほぼ同程度。
傾斜もほどほどでこれは歩いて楽しい尾根のようだ。
小休止をしてからすぐに出発する。








1,143mピークの南にある美しい広葉樹林

 出発してすぐ、尾根の東側にある美しい森が目に飛び込んでくる。
この時は葉がやや色づきかけたところだが、もう少しすると錦秋の光景を拝めるに違いない。








1,190mピークへ向けて

 いつの間にか植林は消え、周辺は全て広葉樹林に覆われた美しい尾根となってくる。
今回のテン泊山行では都合が合わなかったが、友人alfonsさんが来ていれば楽しんでもらえた行程となっただろうに残念だ。








11:00 1,190m+ピーク

 ちょっとした高原のような広さを持つ1,190m+ピークに到着。
こういう広いピークは進行方向が特に要注意だが、少しだけ東寄りに向きを変える踏み跡とマーキングが誘導してくれる。
西側はびっしりと藪に覆われており、ここでは難しく考えなくても道なりに進むこととなるだろう。

 ところでこの辺りからまた曇りがちになってきた。どうも昨日と同じように安定しない空模様のようだ。








1,190m+ピーク付近から赤谷山山頂を垣間見る

 1,190m+ピークまで来るともう赤谷山までは至近距離。
1,190m+ピークを過ぎたところからはごく近い距離で、赤谷山を初めて見ることになる。
尾根の両側はびっしりと笹薮に覆われていて、かつては猛烈な藪漕ぎを経なければ
辿り着けなかった山であったことを思い起こさせてくれる。
この笹薮の切通しを歩きながら、最後の稜線歩きを楽しんでいく。








赤谷山山頂手前にて

 1,190m+ピークから一旦少し下って、コルから30〜40mほどの登り返しが最後となる。
この登りの途中まで来て振り返ると、すぐ北には前述の1,190m+ピーク、そして遠くには昨日歩いた氷ノ山もその姿を現す。
曇りがちではあっても、初めて見る大展望の山頂への期待を膨らませてくれる光景だ。








11:13 赤谷山山頂(1,216m)到着

 最後の登りを経て前方が明るくなると、遂に赤谷山山頂に到着。
やまあそさんのHPなどで見ていた笹薮に囲まれていた山頂からは想像も出来ないような、
きれいさっぱりと刈り払われた広大な山頂が広がっていた。
これはこれで周辺の展望も得られ、そして団体でもゆったりと憩うことは出来るが・・。
ちなみにこの時は誰も居らず、静寂に包まれた赤谷山山頂だった。

 三角点は絶対に見逃さない、山頂のど真ん中に鎮座している。

 曇りがちではあるが、比較的空気は澄んでなかなかの大展望だ。
そして暑くもなく寒くもない快適な温度。今日の行程は短めなので、ぜひゆったりと過ごしていくことにしよう。








赤谷山山頂から南側を眺める

 どこまでも山また山。単純に山頂の展望だけを見ると、氷ノ山よりも赤谷山のほうが素晴らしいかもしれない。
山頂から南側も歩いてみたくなる尾根が曲がりながら南へと続いている。

 赤谷山は東の麓の戸倉スキー場から登ることもできるが、今日は出発時刻が遅かったこと、
天候がいまいちだったこと、そして帰りに姫路に所用があったことから、戸倉峠からのピストンとなった。
またいつの日にか戸倉スキー場からもぜひ登ってみたい。

 ちなみに戸倉スキー場は、自分が始めて自然雪でスキーをしたところでもある。(初スキーは六甲山人工)
人工雪との雪質の差には大いに戸惑ったのを覚えている。
今から思えば、あの時の戸倉は新雪で滑りやすく軽い雪だったような。








赤谷山から氷ノ山を眺める

 赤谷山から氷ノ山は意外に近く、肉眼でも十分に山頂の避難小屋が見えた。
ここから見ていると、やはり一度は戸倉側からも氷ノ山に登ってみたいなと思う。
どうしてもピストンになりがちな区間はあるが、キャンプ場でのテン泊を取り入れることで有意義な山行となるだろう。




 ひとしきり撮影を済ませた後で、腰を下ろしてゆったりと行動食のパンを食べる。
時折、クマ避けに鈴を意識的に鳴らす以外は本当に静寂に包まれた山頂で、立ち去るのが惜しい気がする。




 もうすぐ滞在も1時間近くになってきて、そろそろ行こうかと重い腰を上げて出発準備をしていると、
南から賑やかな話し声が聞こえてくる。10名以上になる団体さんが戸倉スキー場から登ってこられたのだった。
出発までの短時間ではあるが、自分のボッカトレや戸倉スキー場側からの行程についてお話させて頂いた。
団体さんはスキー場から3時間で到達されたという。ゆっくりと撮影しながら歩くとしても、半日あれば十分に消化出来そうだ。




11:58 赤谷山山頂出発

 団体さんにお別れを告げて、赤谷山山頂を出発。
ピストンなので帰りは速い。




12:45 赤谷山登山口

 赤谷山山頂から45分弱で到着。登りは1時間40分ほどかかったので驚異的な早さだった。
では後回しにしていた戸倉峠へと立ち寄っていくことにしよう。
登山口から峠へは、少し登るだけですぐに辿り着ける。








戸倉峠(890m+)

 戸倉峠は近年の造成工事で広く切り開かれることもなく、驚くほど良好な状態で往時を偲ぶことが出来た。
古来より播磨と因幡を結ぶ要衝であり、自分が読んできた書物の中では、嘉吉の乱の後には赤松勢が戸倉峠を数百の兵で因幡からの侵入に備えたとある。

 今まで何度となく戸倉峠(のトンネル)を通過してきたが、初めて本当に戸倉峠に立ってなんともいえない思いがする。
峠の両側は比較的急斜面で、地面には「頭上注意」という標識が朽ちた状態で残っていた。
車は譲り合わなければ行き交うことは出来なかったであろう、1955年以前の光景を思い浮かべる。








鳥取県側に入ると、戸倉峠の南側は本当に崖となっていた。
トラックから無理やりに峠へ下ろうとすると、危うく崖に突き当たっていたかもしれない。
自分が歩いている時にも小規模な崩落があって、石屑が落ちてくる不気味な音が聞こえた。
普段から危険だがこれが深い雪に覆われる冬だと、戸倉峠を越えるのはかなり難儀だっただろう。








戸倉峠から鳥取県側に進むとすぐに三叉路に行き当たり、
西方は広く展望を得られる。正面下方に曲がりくねった舗装路が見えるが、
あれは昭和の旧戸倉隧道へと続く旧道だろうか。








13:00 戸倉峠出発

 ひとしきり戸倉峠の散策を終えてから、駐車している旧道終点まで戻ることにする。
帰路のついでに旧戸倉隧道の入口に立ち寄っていくことにしよう。








13:15 旧戸倉隧道(波賀町側入口)

 1995年に閉鎖されてから、長い時間が経ったことを窺わせてくれる空間だった。
自分は運転したことがないが、この幅は大型車とすれ違うのは怖かっただろう。

 なお、基本的に入口は閉鎖されているが、
はしごがあって徒歩でなら中へと入ることが出来るようになっている。
中へは入っていないが、とりあえずはしごに登ってトンネルの中をのぞいてみた。
向こうの明かりは見えず、トンネルの奥は完全な闇に覆われている。
自分は目に見えるものしか信じない性質ではあるが、ここに一人で入るのはちょっと躊躇われるものを感じる。








旧戸倉隧道

 それにしても開通から40年しか使われなかったというのは、ちょっともったいない気がする。
今使用されている隧道は今後末永く使い続けてもらいたいと願う。

 トンネル入口だけを散策してから、今度こそ車へと戻る。




13:20 国道29号旧道終点到着

 狙い通りに半日プランで、テン泊2日目の行程を完了。
2日間の充実した行程を終えて、充足感いっぱいの思いで帰路に就く。
姫路を経由して家に着いたのは、18:30頃だった。








 〜 終わりに 〜

 昨日の氷ノ山、仙谷コースに続き、初めての赤谷山は充実感の高い山でした。
赤谷山は今度は戸倉スキー場から戸倉峠へ縦走してみたく思います。
そして、やはり2日連続で歩くと、日帰りでは得られないものを感じます。

 また、テン泊は実際に体験してみて、初めていろんなノウハウが身に付いていくような気がします。
今後は時折行程に加えることによってテン泊をどんどん経験し、尚且つより自由度の高い行程を組んでいきたいと思います。








行程断面図です




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