「氷ノ山三の丸・ヤマメ茶屋から坂の谷・殿下コース」 2014年10月26日(土)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「戸倉峠」




 〜 はじめに 〜

 前日はお気に入りの仙谷コースから三の丸コースを周回し、前夜はわかさ氷ノ山キャンプ場にてテン泊しました。
今日は林道歩きが長いことやコースが単調などの理由で今まで未踏だったのですが、
ヤマメ茶屋起点で坂ノ谷コースと殿下コースを遂に踏破する行程を組みました。

 今日の歩行距離18kmのうち、林道歩きだけで13km。
例えば上高地から横尾間では片道で10km掛かることを考えると、距離は短いですがこちらは標高差は小さくありません。
今回は普段の日帰り装備では使っていないトレッキングポールを使ってこのロングトレイルを歩くことにしました。








 5:00頃 わかさ氷ノ山キャンプ場を出発




 鳥取県側から新戸倉トンネルを抜け、ヤマメ茶屋の藁ぶき屋根を模した案内を見て左折。
その先は路肩が左右に広がっており、その一角に車を停める。








 行程概要 


 5:54 ヤマメ茶屋の南、国道29号沿いの駐車地を出発

 まだ周辺は真っ暗ではあるが、もう夜明けも近いし長い行程なので出発する。
ヤマメ茶屋へ向かって伸びる舗装路をヘッドライトを付けて歩いていく。








 5:58 ヤマメ茶屋

 まだ暗くて周辺の状況はよく分からないが、ヤマメ茶屋がすぐそばにあるようだ。
坂ノ谷コースの登山口まで5km。そこから三の丸まで3.8km。
昨日、氷ノ山へ行ったばかりなので、今日の行程は三の丸止まりとしている。








荒れたダートロードの広域基幹林道瀞川氷ノ山線

 歩いているうちに次第に明るくなってくる。
まずは川沿いを西向きに緩やかに登っていく場面が続く。ごく緩い登りなので体力的には疲れにくい。
坂ノ谷コース登山口まで車で行くことを考えたこともあったが、この林道は相当路面が荒れている。
車高が高い車でないと底を擦ってしまうリスクがあるので、普通車は乗り入れないほうが無難と思う。








 6:43 羊ヶ滝入口(800m+)

 地形図上で急角度のヘアピンカーブが描かれている辺り、今まで並走してきた川を渡るところに羊ヶ滝入口の案内板がある。
ちょうど目につくところに小滝があるが、もちろん羊ヶ滝はもっともっと巨大な滝で林道からは見えない。
帰路に余裕があれば立ち寄りたいと思う。








標高900m辺りでは紅葉真っ盛り

 羊ヶ滝入口をやり過ごしてからは、一つ東の尾根の東側、次に西側に回りこんで高度を上げていく。
この辺りから段々と朝日が高く当たり始め、見頃の紅葉を照らしてきれいだった。








 7:31 坂ノ谷コース入口手前の三叉路(990m+)

 間に適当に休憩を入れつつ、ヤマメ茶屋から1時間30分で三叉路に到着。
坂ノ谷コース登山口へはここから西へ枝分かれする支線の林道へ入っていく。
林道を歩くだけで既に350mほども標高を稼いでいる。今は紅葉狩りしながらだからまだいいけど、
分かってはいたもののやはり退屈な道中であることは否めない。








 7:38 坂ノ谷コース登山口(1,010m+)

 少しだけ西へ進んだところでようやく林道から解放される坂ノ谷コース登山口に辿り着いた。
ここから三の丸まで3.8kmあるが、その道中はずっと等高線が広いまま。
距離こそ長いけど、地形図を見る限りでは疲れそうにない道のりに思える。








坂ノ谷コース

 部分的に斜度が増すところもないわけではないが、坂ノ谷コースは殆どがこのような緩い登りで終始する。
登山口からしばらくは植林帯を通過。楽しい光景ではないが、林道を歩くよりはまだマシと感じる。








すぐに美しい広葉樹の森へ

 幸いにも植林帯は長くは続かず、紅葉を楽しめる森歩きになる。
最初に触れておくと、坂ノ谷コースは森が途切れるまでずっと広く笹を切り拓いた回廊の中を歩いていく。
地形図を見ても大方予想は付くのだが、とにかく代わり映えしない光景が続く。
地形的な特徴に乏しいので現在位置を掴むのが非常に難しく、正直言って歩いていて飽きがきてしまうほど。








笹の間で小休止

 せめて展望を得られれば気分も変わるのだが・・。








広く拓かれた坂ノ谷コース

 地形図を見ても現在位置が分からなくなってしまったが、この広いトラックは外しようがない。
地面は落ち葉がふっくらと積もり、あまり人が入っていないことが感じられる。








単調な行程を紛らわせてくれる紅葉

 この坂ノ谷コースを歩くのであれば、新緑か紅葉の時期に限ると強く思う。
変化に乏しいので山行記録としても書くことがなくて困る。








森林限界?を越える

 紅葉を楽しませてくれた森も遂に途切れ、きれいな青空が広がってくる。
三の丸の展望台から見た笹原に突入したのだろうか。








 9:01 坂ノ谷コース・殿下コース分岐(1,380m+)

 坂ノ谷コース登山口から約1時間20分で東から登ってくる殿下コースと合流。
殿下コースは0.8kmとこれまた短いトラックだ。
ヤマメ茶屋からここまで長かったような短かったような。
この分岐を過ぎると三の丸はもう目前。
帰路はピストンを避けるためにも、林道歩きが長くなるが殿下コースを下ることにしている。








幅だけ見れば車も通過出来そうな広さがあるトラック








 9:16 三の丸コース・坂ノ谷コース分岐(1,450m+)

 そして最後の一登りで遂に三の丸コースと合流!
ここから先は何度となく歩いている区間というか、昨日歩いたばかりのトラックに入る。








 9:20 氷ノ山三の丸山頂(1,464m)到着

 ヤマメ茶屋を出発してから約3時間20分で三の丸到着。
時間的にまだ早いからか、初めて自分だけで貸し切り状態の三の丸に立った。

 昨日もここに来たばかりだが、昨日よりは暖かく居心地が良い。
展望台へ登ってゆっくりとしていくことにしよう。








三の丸展望台から南面の景観

 辿ってきた稜線を追えれば盛り上がれるのだが、ただ一面の笹原が見えるのみ・・。
また昨日よりは若干霞んでいるようで、今日は大山までは見えなかった。




 9:39 氷ノ山三の丸山頂出発

 殿下コースを歩いて遠回りする格好となる帰路のほうが歩行距離が10km余と長い。
約20分の滞在で三の丸を出発することにした。

 先述の殿下コースとの分岐まで引き返す。








 9:48 坂ノ谷コース・殿下コース分岐(1,380m+)

 ここで坂ノ谷コースを捨てて、東へ伸びる殿下コースへ入っていく。
あまり変わり映えしないトラックなのは予想出来るけど、それでもピストンよりはマシだろう。








部分的には急坂もある殿下コース

 坂ノ谷コースとの分岐を通過直後は緩いトラックで始まる。
それでもすぐに思わぬ急坂(それほど長くはないが)と出くわす。
坂ノ谷コースを歩いた後だからかもしれないが、けっこうな急坂に感じてしまう。








10:00 仙人門

 最初の急坂を下り終えると、まもなくユニークな造形の仙人門に辿り着く。
シルエットとなる角度で見ると、何だかキリンに似ているような気がする。
門の部分はけっこう大きく、腰をかがめずに楽に通過出来そうだ。








10:10 1,275m標高点付近の分岐

 殿下コース随一の見どころである仙人門を過ぎると、全く予想していなかった分岐に差し掛かる。

一瞬戸惑ったが、地形図をよく見ると殿下コースの途中で破線道が枝分かれしている様子が描かれている。
方向確認を行ったうえで、ここは道なりに南東へ直進する。
仮に北東へ進んでも林道へ降り立つようだが、ヤマメ茶屋までの林道歩きが無駄に長くなってしまう。








坂ノ谷コースと同じ雰囲気の殿下コース

 どちらを歩いても見事なまでに同じような光景が続く。
氷ノ山の北面、西面は深く切れ落ちているのに、同じ山でなぜこれほどまでに地形が違うのか興味深い。








殿下コース登山口間近の急坂

 眼下に舗装された道路が見えてくると、地形図を見ていても予想できない思いもよらない急坂となる。
積もった落ち葉で滑りやすくなっており、横向きに慎重に降りていく。

 この辺りで今日初めて他の登山者の方と出会う。子供連れのファミリーのパーティーだった。
車でアプローチ出来る殿下コース登山口を起点にすると、三の丸までお手軽なハイキングコースとなりそう。

 そして静かな山のはずなのに、エンジンの音が絶え間なく聞こえてくる。
これがここの登山口のトイレに使っているという発電機からのものだろうか。








倒木をかいくぐって殿下コースも終わりとなる








10:26 殿下コース登山口(1,190m+)到着

 三の丸を出発してから1時間も経っていないが、もう登山口まで降りてきた。
諸々の案内板が立っていて随分賑やかな登山口だ。

 一応公式には殿下コースはこれで終わりとなっているが、林道開通前の殿下コースはもっと長かったようで
やまあそさんのHPで詳述されている。いずれ本来の殿下コースを辿ってみたいと思う。




 南側には駐車場が見えていて、多くの車が停まっていて登山準備中の方々が大勢見える。
今まで全く人けが無い山行だったが、三の丸周辺ではここが実質的に登山基地となっていることが伺える。
自分のようにヤマメ茶屋から歩いている人はごくごく少数派なのだろうと思う。








殿下コース登山口にはトイレもある

 ディーゼル発電機が稼働中のトイレが登山口の前にある。
山中に設置する設備として排気ガスを生じる点は微妙なものを感じるが、せっかくあるものなのでトイレに立ち寄っていく。




10:32 殿下コース登山口出発

 ここからはこの行程の宿命である長い長い約9kmにわたる林道歩きの再開となる。(下りではあるが)
ということで三の丸からここまでの行程はまだ1km弱しか消化していない。

 トイレ、登山口から少し南側に歩いたところで舗装路が途切れる。
林道の管理者が違うことでここまで現状が異なるものになるということがよく分かるところだ。

 ダートロードに変わったところで少し道路が広がって、格好の駐車場となっている。
つい先ほどまで登山準備中の方々が大勢居られたが、既に皆さん出発されて静まり返っている。
ナンバーを見ると県内だけではなく近畿一円から来られている。








10:38 ブナの観察駅

 殿下コース登山口からほど近いところでは「ブナの観察駅」と名付けられたところがある。
駅とはいっても林道沿いに案内板が一つあるのみなのだが、見事なブナを楽しむことが出来るのは間違いない。








10:41 「額縁ブナ」

 ブナの観察駅にある案内板で紹介されている「額縁ブナ」に到着。
本当に絵に描いたような錦秋の光景に思わず見とれてしまう。
先述のブナの観察駅と同じく、やはりここも紅葉か新緑の時がお薦めと思う。

 ここまでは殿下コース登山口からさほど離れていないので、ダートロードをおしてでも車で立ち寄られる方も見受けられる。




 ここから先は黙々と林道歩きが続く。
林道から東側に見える稜線があって、あれが元々殿下コースがあった尾根だろうか。

 昼間の林道は意外なほど交通量が多い。
バイクや四駆等の車などがそこそこ通り掛かるが、自分のように歩いている人は他に居なかった。








11:09 逆水の滝下り口(1,040m+)

 額縁ブナから30分くらいで逆水の滝下り口に到着。
滝までは急坂を往復しないといけないが、この機を逃すわけにはいかないので立ち寄っていく。








幻の滝、逆水の滝へのアプローチ

 急坂の連続ではあるが、ある程度踏まれた感があるトラックだった。
下り始めは滝は全く見えない。








逆水の滝

 日の当たっていない巨大な岩壁に真っ直ぐ落ちる大きな滝が見えてきた。
ここまでは明瞭なトラックが続いたが、滝の落ち口まで降りるにはやや足場の悪い岩場を降りていく必要がある。








11:21 逆水の滝(990m+)

 悪路を注意深く降りてようやく滝の前までやってきた。
岩壁を真っ直ぐ落ちる滝で水量も豊富。ある程度滝身まで距離があっても水しぶきが降りかかってくる。
夏ならば快適だっただろうけど、今は長居していると体が冷え切ってしまいそうだ。
カメラにも水滴が降りかかるので、手早く撮影を行って水気をさっと拭き取っておく。
それにしてもこの滝は本当に立ち寄る価値は充分にあった!




11:46 逆水の滝下り口に登り返して小休止

 滝見物を約30分で終えて、元の林道へ登り返してきた。
まだまだ林道歩きを残しているので小休止をとっておく。




11:55 逆水の滝下り口出発








見事なススキのおかげで単調な林道歩きも少しは気が紛れる








12:17 坂ノ谷コース入口手前の三叉路(990m+)

 逆水の滝下り口から約20分で坂ノ谷コース登山口手前の三叉路へ戻ってきた。
ここまで来れば残す距離はあと5km。

 小休止中に自転車と徒歩の2人組の方がヤマメ茶屋方面から登ってくる。
坂ノ谷コースと殿下コース、どちらを行くほうがいいかと質問をされたので、
殿下コース登山口まではまだ林道歩きが残っているし、坂ノ谷コースを登るほうが得策とお伝えした。

 二人組の方々を見送ってから出発。








12:50 羊ヶ滝入口

 ここに到着するまでは正直なところ羊ヶ滝へ立ち寄るのは躊躇していた。
しかし逆水の滝へは立ち寄っているし、やはりこの機を逃すわけにはいかないと考え直す。

 一見すると羊ヶ滝へはどこから登るのは分からないが、駐車スペースにある案内板に「羊ヶ滝まで10分」と手書きで書かれているのに気付く。
なおここには車が一台駐車中だった。後ですぐに出会うかもしれないが滝見物の方だろう。

 逆水の滝とは逆に登りが続くアプローチとなっている。距離は短いので逆水の滝ほどハードではなかった。








12:58 羊ヶ滝(880m+)到着

 滝の真向いに位置するところが展望台となっている羊ヶ滝へ到着。
現地では3人のカメラマンの方々が熱心に撮影中。
自分もその中に加わって構図や立ち位置を変えつつ撮影に集中する。
しかし羊ヶ滝は本当に大きくてどのように撮影したら良いか逆に悩んでしまう感がある。

 羊ヶ滝の規模は有名な原不動滝に匹敵し、全体の雰囲気も似ていると感じた。

 羊ヶ滝の陰に隠れがちではあるが、滝から見て右手にはごく小さな滝もあった。
同じところで2つの滝を見ることが出来るという、なかなかに希少な羊ヶ滝だった。








13:19 羊ヶ滝出発

 引き続いて熱心に撮影中のカメラマンの方々とお別れし、林道へと戻っていく。
もう既に羊ヶ滝入口まで戻ってきているので、長い林道歩きもようやく終盤に差し掛かっている。








13:50 ヤマメ茶屋(650m+)

 羊ヶ滝から約30分でヤマメ茶屋に到着!
往路ではまだ暗い時間に通過したのでよく分からなかったが、なかなか良いロケーションと藁ぶき屋根が印象的なヤマメ茶屋だった。
外から見る限りでは営業中なのかどうか、辺りに全く人けもなくて判然としない。
ヤマメは食べたことがないがどのような味なのだろう。








13:58 ヤマメ茶屋の南、国道29号沿いの駐車地到着

 ヤマメ茶屋を通過してからまもなく懐かしい駐車地に到着!周囲には他にも数台停まっている。

 全行程18kmの長い行程でたっぷり8時間掛けての踏破となった。
行程的には単調なイメージは拭えないが、行程の長さのおかげでなかなかの達成感を得ることは出来た。

 自分が山装備を解いている時に続々と自転車に乗られた方々が到着される。
周囲の車は自転車乗りの方々のものだった。
山行としては林道というのはややモチヴェーションが下がってしまうが、
この林道は色んな手段で山を楽しむ方々によって活用されている現状を知る。

 この後は波賀温泉楓香荘に立ち寄って2日間の汗を流して帰途に就く。








 〜 終わりに 〜

 長い林道歩きを含む行程なのでなかなか脚が向きませんでしたが、とにかく氷ノ山の南東面のゆったりとした地形は体感出来ました。
これで氷ノ山の一般ルートで未踏なのは大段ヶ平ルートのみとなりました。

 坂ノ谷、殿下コースを周回することによって、逆水の滝や羊ヶ滝などの見どころへ立ち寄れるので、歩いて損はしないと思いました。
殿下コース登山口へは横行渓谷経由で入ると車で容易に入山出来ますが、ここを起点とすると氷ノ山や三の丸までの距離が短過ぎると感じます。

 やはり氷ノ山への登山ルートの選択肢としては、東尾根、氷ノ山越経由ブン回し尾根、仙谷コース、そして三の丸コースがお薦めかなと感じました。








行程断面図です




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