「多紀連山縦走 / 峠山から西ヶ嶽へ」 筱見〜栗柄 07年10月11日(木)

国土地理院地形図:25000分の1「村雲」、「宮田」を参照してください。(「福住」、「篠山」もあると尚良いでしょう)

 今日は初めて多紀連山を登ることにした。多紀連山は篠山盆地の北を区切るように東西に連なる山域で、丹波を代表する名山という。
個人的には篠山盆地に足を踏み入れること自体初めて。この未踏の多紀連山に敬意を表して、初回となる今日は絶対に縦走しなければならないと決めていた。
 しかし六甲と違って交通不便な地の縦走ということと、大たわまで車道が上がってきていて縦走のハイライト区間を気軽に楽しめるということが手伝っているのだろうか、
ウェブで検索してもこの地を縦走したというレポは驚くほど少なかった。ということで今回は全て自分でプランニングすることに。

 縦走路の東西の起点付近には神姫バスがそれぞれ別系統で走っている。
神姫バスの公式HPで運行状況を調べてみると、本数は非常に少ないものの
1日でなんとか縦走可能だということが分かった。運賃が自分の感覚ではけっこう高いが、これは必要経費と割り切ることにする。

 ※ このレポ内で記述する神姫バスの運行時刻、運賃などは変更の可能性があるので、縦走をご計画の際には公式HPで最新の情報をご確認下さい。




 今回参考にした資料は下記の通りです。

 神戸新聞総合出版センター刊 【ふるさと兵庫50+8山】 P.70 「三嶽」 ← 縦走することを前提に書かれています。

 【摩耶山さん歩】さんの「筱見四十八滝」では筱見キャンプ場を、「小金ヶ岳」では大たわを起点に歩かれています。








4:35 自宅出発

 2週間ほど前に白髪岳へ向けて走ったばかりの道路を一路篠山へ向かう。明石からR175を北上。社からはR372を北東へ進む。
前回見逃した白髪岳登山口の小さい看板を今回は視認出来た。古市駅前を通過してここからは運転するのも初めての篠山盆地。
これまで思っていたよりもけっこう広い。盆地の北には延々と連なる山々が見える。あれが多紀連山かと気分が高鳴る。
道なりに進んでR173に突き当たって左折。しばらく北上して、丹波東雲バス停手前の細い橋を渡って筱見地区へ入る。
橋手前には「筱見四十八滝」の看板があるので良い目印になった。

 筱見地区は山間部のとてものどかな農村で、自分はこういうところが本当に好きである。
正確には下筱見と上筱見の2つの地名がある模様。縦走路の東の起点である上筱見の最奥にある筱見キャンプ場の駐車場へ車を走らせる。
地区内の道は狭いところが多いので、徐行して気をつけなければならない。
キャンプ場に着く前に駐車可能なところがないかと、運転しながら一応気をつけて見ていたが、適当な場所は見つからず結局は筱見キャンプ場に駐車することになった。




6:20 筱見キャンプ場到着

 林道の終点にある、10台程度駐車できる筱見キャンプ場の未舗装の駐車場に到着。案内板、東屋、トイレなどが揃っており、キャンプ客だけではなく
ハイカーにも非常に有用な起点となる。ただ、人里離れたところであり、車上狙いには気をつけるべきシチュエーションだと感じた。NZのトラックの起点もこのような
ところが多かった。当然のことながら車内には絶対に何も残さないこと。




 今回は縦走するのが最大目標。そして今秋は渇水。ということで縦走のハイライトの一つといえる、「筱見四十八滝巡り」は今回の行程からは思い切って外した。
というのも、今回の行程では実質的な制限時間があることも忘れてはならないから。【ふるさと兵庫50+8山】によると参考縦走所要時間は7時間45分との記述がある。

そして、縦走路終点の地にある、栗柄口から乗車すると想定されるバスの発車時刻は、
14:02 、 15:49 、 17:28 の3本。
このうち最初の14:02は時間的に微妙で、おそらく可能性として高いのは15:49と予想した。何しろ未踏の山であり、道中何があるのか分からない。
今回は縦走することだけに重点を置くことにする。自分撮りもいつもよりは頻度を少なくする心積もりで歩くことにした。








6:37 筱見キャンプ場出発

 駐車場の西側から幅広で緩やかなトラックが始まっている。ここが多紀連山縦走路の東の起点だ。なお、写真に写っている建物はトイレである。
この歩きやすいトラックは筱見四十八滝巡りの周回路にも利用されている。この場合は下山路に使われるのであるが、今日は登りに使う。

 なお、この日の天気予報は移動性高気圧にすっぽりと覆われるために「晴れ」としか言っていなかった。しかし予報に反して朝はどんよりと曇っていた。
先日の白髪岳の二の舞かとがっかりしたが、幸いなことに登るにつれて雲が切れてきた。今日こそは久しぶりに青空の下で歩けそうだ。

 駐車場を出発してからずっと幅広で緩いまま登っていく。ジグザグに続くので特に急なところもない。下りに使っても楽に下れそうだ。
幅が広いのでクモの巣が絡まることも少なかった。縦走序盤のウォーミングアップには最適な区間だと感じた。但し展望スポットが無いのが少々退屈かも。








7:09 尾根に乗った

 歩き初めから約30分で周回路は尾根に達した。東からは筱見四十八滝を経て登ってくるトラックが合流してくる。
薄汚れてはいるがしっかりとした道標が立っている。滝巡りを経てもキャンプ場までは約50分で降りられるようだ。
順路のはずの峠山方面には何故か所要時間がかかれておらず、縦走する人が少ないのであろうか。

 小休止をしていよいよ尾根歩きを開始する。








 合流点からはまず今日最初の三角点ピークとなる峠山を目指す。
尾根自体は幅広で登りも緩やかだが、筱見四十八滝の周回路から外れた途端にトラックの両側の草木が張り出してくる。
全て歩き終えて体感したことだが、多紀連山縦走路は区間による利用頻度が極端に変わるという、六甲縦走路には無い特徴を持ったトラックだということが分かった。
利用頻度が低い区間は、六甲でいえば細い破線道扱いされているトラックに該当すると思う。とりあえずこれから小金ヶ嶽に達するまでは基本的に利用頻度が低い区間になる。

 とはいえ、何も整備されていないわけではなく、急なところでは丸太階段が敷設されているし、峠などでは道標も完備されている。








7:19 今日初めての展望スポット

 峠山への緩やかな登りの途中で、大岩があって木々が途切れている展望スポットを発見。
眼下には朝日に照らされる筱見の集落を見下ろせる。いつの間にか大きな雲は遠ざかりつつあり、晴れの区域に入ってきたようだ。
初めての山域で晴れに恵まれそうで、意気揚々として峠山へ登っていく。








7:31 峠山山頂

 緩やかなまま稜線はピークに達した。森の中で展望は全く無い峠山山頂に到着。三等三角点が出迎えてくれる。
その横に置かれた錆びた案内板によると小金ヶ嶽まで約2時間となっている。小金ヶ嶽で縦走のほぼ中間点ということなのでまだまだ先は長いようだ。
そこそこ広いピークの峠山で5分程度小休止をとった後、小金ヶ嶽へ向けて歩き出す。

 峠山のピークは東西に長く、西へ延びる尾根はしばらく緩やかに下るが、ほどなく突然急斜面に変わる。








峠山西斜面は丸太階段が完備

 急斜面に差し掛かると長大な丸太階段の区間になった。地形図ではジグザグに破線道が描かれているが、
実際にもそれを裏付けるようにつづら折りを重ねて標高をどんどん下げていく。

 写真では歩きよい状態ではあるが、部分的には草に覆われてしまっているところもあった。
やはり、一旦はしっかりと整備されたものの、あまり多くは歩かれていないようである。








7:53 上筱見下山路出合

 峠山山頂から続いた下りは、このコルで一段落する。左手には上筱見の上流へ下山するルートが分岐している。
筱見四十八滝に加えて峠山のピークを踏みたい時には、周回路として使えるかもしれない。

 ここからは再び短いながらも登りとなる。次は544mピークを目指す。このピークを挟む尾根はS字クランク状に曲がりくねっており、
地形図で見た以上に歩行距離が長いという感覚がする。トラックはなおも幅広のまま続く。








峠山遠望

 緩いながらも合計して標高差約100mの登りがしばらく続く。そしてそろそろ544mピークかという時に木立が途切れて北東の峠山が丸見えになっている。
ここからだと2つピークがあるように見える。三角点のある山頂は東側だ。豊かな森に包まれている山頂付近とは対照的に南山腹は低い木が並んでいるようで、
植林事業でも行われているのだろうか。








8:14 544mピーク通過

 峠山を眺めて直後に展望の無い544mピークを通過。大人数のパーティーでも昼食を摂れそうな広さがある。
この平らな544mピークを過ぎると、小倉たわ(480m+)まで急降下する。やや急な区間だが延々と階段道が続くので非常に楽だった。








8:19 小倉たわ

 調子良く下っていくとあっという間にコルへ降り立つ。ここが小倉たわと呼ばれている峠である。
“たわ”は山へんに定めると書くようだが、IMEパットで探しても該当の漢字は見つからなかった。ということでひらがなで表記する。

 縦走路と交差するように、篠山から北の川阪まで越える古道が上がってきており、昔は人々の行き来があったのだろうか。
昔日の峠の光景を想像しつつ、今では植林で薄暗い峠で小休止をとる。

 旧西紀町設置の啓発板が地面に置かれている。

 町花「シャクナゲ」を愛し
自然の美しい姿で育てましょう
持ち帰ると法で罰せられます

    西 紀 町

 持って帰ってどうすんねん、と思うけど。




 この小倉たわまでが多紀連山縦走路の序盤ともいえる区間で、ここより西はいよいよ小金ヶ嶽へ向けての尾根歩きとなる。
といってもたくさんのアップダウンが連続するはずで、小金ヶ嶽に到達するのはまだまだ先のようだ。

 地形図を見ると小倉たわから小金ヶ嶽に至る尾根上には、等高線の閉じたピークが6つ書かれている。
手始めながら、小倉たわから断続的に続く登りの末に辿り着いた610m、634mピークは深い森に覆われて展望は無し。

 ところで小倉たわを過ぎて小金ヶ嶽に段々と近づいてきているのだが、トラックは潅木のトンネルの中といった具合で、
張り出した草や枝がバシバシと体に当たる区間が延々と続く。当然時折はクモの巣も突破することになる。
お世辞にも快適な尾根歩きが楽しめるとは言えない。でもハイライトの区間が近づいてきているのを励みにして黙々と歩いていった。

 樹林の中の広い634mピーク付近を通過していると、木々の枝越しに巨岩が点在する山肌が見えるようになってくる。
地形図にも描かれているがこの付近からは岩場が点在する尾根となって、単調さを紛らわせてくれるようになる。
634mピークを通過して、次の680m+ピークとの間のコルに急降下すると、自分の好きな細い岩尾根が出迎えてくれた。








8:53 610m+コル

 これまでずっと樹林の尾根を辿ってきたのだが、ここに来ていきなり開放的な岩尾根となった。
途中には岩塔(行止まり)もあって、条件反射的に登ってしまった。
 今日最初の、そして多紀連山で初めての大展望スポットだ。直射日光が強く当たって少々暑いが、もちろん休憩を取っていくことにする。

 西にはこれから登る680m+ピークがそびえている。展望を楽しんだ後で今度は70m近く登らなくてはならない。








多紀連山東部の展望

 至近距離でついさっき通過した634mピーク、その肩越しには遠くなってきた峠山。そのまた向こうにも同程度のピークが連なる。
多紀連山初回の今日は基本的な縦走路を辿るが、その他にもサブルートが多数あるようで、これから度々訪れる山域になりそうだ。
そして多紀連山の周囲にも累々と連なる山々。いつも登っている六甲には無い深山の雰囲気が抜群で久しぶりに感動した。やっぱり山はいいもんだなぁ。

 なお今日は22万分の1の兵庫県の地図も持ってきているが、この多紀連山の東はすぐ京都府。
風景は山しか見えていないが、あの山間の地にも町が点在している。現在ではここは県境付近となるが、かつての丹波の国は兵庫県と京都府に
またがる国で、丹波の歴史を考察するには今の県境を忘れる必要があるだろう。








南方の篠山盆地を見下ろす

 南方遥か下方には東西に細長い篠山盆地を遠望出来る。多紀連山からすぐに篠山盆地へ落ち込むのではなく、実に懐が深いことを改めて感じさせられる。
手前には鍔市ダムが。先ほど通過した小倉たわから南へ下るとあのダムへ通じているのか。
盆地を挟んで南側にも山々が連なるが、その一つが丹波の戦国大名波多野家の本城である八上城のある高城山。2枚の地形図を繋いで同定したので、
絶対にあれという自信が無いのだが、たぶんあの辺りと思われる。多紀連山を含む篠山周辺の地形図は宮田、村雲、福住、篠山の4枚に分かれており、
少々使いづらい気がする。特に三嶽の登りの途中で村雲から宮田の地形図へ移るので、縦走するにも2枚にまたがるのが地形図初心者の自分にとって難点だ。




9:02 約10分の休憩で610m+コルを出発

 しばらく岩尾根が続くが、大部分が潅木に覆われて展望は無い。
次の680mピークも基本的に展望無し。小さく等高線の閉じたピークが2つあって、小刻みにアップダウンが続く。
ピークの数を数えながら歩いていたのだが、この辺りで正直なところ分からなくなってしまった。まだまだ修行が足りないかも。








694mピークが眼前に見えてくる

 小刻みに標高差の少ないアップダウンがしばらく続いていると、急に展望が開けて正面に694mピークが見えてくる。小金ヶ嶽の一つ東に位置するピークだ。
この後すぐにまた木々の中に逆戻り。694mピークに至るまではそこそこの登りが続く。

 そろそろ694mピークかなと思ったら、トラックの左手の小高いところへ伸びる踏み跡を見つけた。ピークはトラックからは少し外れるようだ。
幾重にも張り巡らされたクモの巣をビリビリッと破ってから前進する。まるでインディージョーンズのワンシーンのようだったが、久しくこのピークに立つ人は居なかったようだ。








9:27 694mピーク

 三角点こそ無いものの地形図にも標高点が記されているほど、周囲からはけっこう目立つ鋭鋒となっている、狭い山頂の694mピークに到着。
全開とは言えないが南から東にかけて見渡すことが出来る。随分遠くなったが筱見の集落がまだ見えている。

 多紀連山縦走路中の小ピークの中でもけっこう居心地も展望も良いピークだと思った。しかし3、4人入ったらいっぱいになってしまうくらいのスペースしかないが。
694mと書かれたかまぼこ板くらいの古い木片1枚だけが岩の上に置かれていた。

 694mピークの西には初めて目にする小金ヶ嶽が木々の間から少し見えている。撮影はしたのだが手前の木にピントが合ってしまっていた。
合焦点はポートレートと同じく中央のみにすべきだったか。




 しばらくミニピークで滞在した後、縦走路へ戻って西進を再開。694mピークの西は緩やかな下りの尾根がしばらく続き、680m+ピークで僅かに登り返す。
このピークが小金ヶ嶽の前に立ちはだかる最後のミニピークとなる。








680m+ピーク付近から小金ヶ嶽の頂を見上げる

 680m+ピークも深い樹林に包まれた展望の無いピークだ。そしてこのピークを過ぎると小金ヶ嶽との間の660m+コルへ降下する。
その降下中に僅かながら木々の間から間近に迫った小金ヶ嶽を見上げることが出来た。山肌に岩が目立つ荒々しい山という印象を持った。




 約20mの下りでコルへ降りた後、小金ヶ嶽へ向かって70mほどの登りとなる。最初は緩いが途中から段々ときつくなっていく。
初めての小金ヶ嶽に期待を膨らませつつ、じっくりと登っていく。

 この辺りの木々は僅かに色づき始めていた。残暑が長いと覚悟を決めていた秋だったが、季節は着実に進んでいるのを見て嬉しくなる。








9:49 東の覗き

 不意に右手の視界が開けたので、少し踏み跡を分け入ると断崖絶壁の上から見事な展望が広がった。
高いところが好きな自分には素晴らしい場所だった。多紀連山は全山が行場だったということから、かつてはここも修行の場になっていたのだろうか。

 なお遥か北方に見える草山温泉は、下山後に乗るバスの系統の北の終着点になっている。


 もう少し眺めていたかったが、一匹のスズメバチが自分の周囲を飛び回ってきたので退散することにした。
狭い足場で避けようがなく、自分の足元から至近距離を飛び回るので少々肝を冷やした。でも手を出さない限りは何もしないはずと言い聞かせて静かに後退してトラックへ戻った。
思ったとおりハチはその場から動かずに事なきを得た。この後も何度か遭遇するが、日当たりの良い開けたところでよく見かけた。暖かいところが好きなのだろうか。








9:56 多紀連山の東半分を眺める

 小金ヶ嶽に向けてけっこう登ってきたと思った辺りで、東側の視界が大きく開けた。
今朝方車を置いてきた筱見が遥かに遠くなり、これまで辿ってきた山々がほぼ一直線に並んで見える。
まだ縦走半ばだがこの景観を見るともう達成感が湧いてくる。そして同時に縦走してきたことで多紀連山の自然を等身大に感じることが出来た。

 この直後に小金ヶ嶽の山頂に到達するが、山頂は低い草木に囲まれて全開の展望を得られるわけではなかった。
山頂より少し東の登り途中からのほうが、多紀連山の東半分をより広く眺めることの出来る展望スポットだった。
 もちろん、この時点ではそんなことは分からず撮影を済ませるとさっさと山頂へ向けて僅かとなった登りを再開したのだが。




そして間もなく行く手に空が広がって、小金ヶ嶽山頂に辿り着いたことを悟った。








9:59 小金ヶ嶽山頂到着

 筱見キャンプ場から歩き始めて3時間20分で小金ヶ嶽到着。幾分草に展望が遮られるが、それでもだいたい270度に渡って広く見渡すことが出来る。
これまで辿ってきた山々を眺めようと思ったが、やはりススキ越しになってしまう。まあ良しとしよう。送電線に遮られるよりは断然良い。

 時間的に誰か大たわから登ってきて居られるのではと思っていたが、自分が山頂に居る間は誰も来なかった。




 とにかく小金ヶ嶽山頂で休憩を取りつつ、山頂の雰囲気を楽しんでゆっくり過ごすことにしよう。








小金ヶ嶽山頂

 毎度お馴染みの兵庫登山会の案内板がある。山頂ではススキがたくさん生えていて、秋の風情を心行くまで楽しむことが出来た。
山頂南側は幾分高い木々が周囲を囲んでいる。今まで知らなかったが山頂から南へ降りていくルートもあって、道標も設置されている。








山頂から北方の景観

 見渡す限り山また山の景観が広がっている。気持ちの良い秋空も相まって本当に心が洗われるよう。


 西にはススキ越しに次に向かう三嶽の山頂付近が見えているが、三嶽については後で掲載することにしたい。




 一通り撮影をし終えた後、切り株を模したベンチに座って一休み。切り株風ベンチには周囲に見える山々を同定できるように方位と山名が記されている。
冬枯れの時期ならば役に立つかもしれない。








10:18 小金ヶ嶽山頂出発

 約20分の滞在で小金ヶ嶽山頂を出発。この時点で14:02に栗柄口からバスに乗ることはまず無理だろうということに気付いた。

 大たわへ向けての下りはかなりの急坂で始まっていた。ここから三嶽に至るまでが多紀連山縦走路の中でハイライトといえる区間だ。
どんな光景が出迎えてくれるのかわくわくしながら急坂を下っていく。小金ヶ嶽山頂を境にして、一気によく踏まれているというか、
枝の張り出しも少なくなって歩きやすくなったことを実感した。








多紀連山縦走路のハイライト。三嶽と小金ヶ嶽の岩稜

 小金ヶ嶽山頂からしばらく急坂を下ると、不意に視界が開けて三嶽に至るまでの感動の光景が広がった。
初めて見る美しい山容の三嶽の全貌と、小金ヶ嶽直下の岩稜にすっかり魅了されてしまった。
「多紀アルプス」という異名も持っているが、まさにその呼び名が相応しい山岳風景だと思う。

 これから実際にあの岩稜を歩くのかと、期待感を膨らませて下っていく。
小金ヶ嶽と660m+ピークの間のコルに該当する岩稜までは急坂が断続的に続く。一部には今日初めての鎖場も現れた。
大たわから登ってきていれば、さぞかしたいへんな急坂に感じるのだろうと思いつつ急降下していく。








多紀アルプスの核心部を通過

 小金ヶ嶽山頂からの急坂が一段落すると細い岩尾根に降り立つ。両側も絶壁でまさに修験の山の雰囲気満点だ。
岩場を越えたり、回避したりしつつ進んでいく。【ふるさと兵庫50+8山】にも書かれているが、縦走中最も楽しい区間だというのは間違いない!
まさに天然の、そして天空のアスレチックを一人で思う存分楽しむことが出来た。








長い鎖場を下降

 行く手が巨岩に阻まれたと思ったら、南に回避するようで長大な鎖場が現れる。
これほど長い鎖場は今までに見たことがない。10mは悠に越していると思われる。
それでも鎖が無くてはどうしようもないというほどの難所ではないと思う。でも鎖に頼ったほうが楽といえば楽かも。
足場も豊富で調子良く下っていく。








10:47 小金ヶ嶽山頂付近と、辿ってきた岩稜を眺める

 長大な鎖場を経て再び登り返してきて振り返ると、「多紀アルプス」の核心部を間近に眺めることが出来た。
西から小金ヶ嶽を見たのはこの時が初めてとなる。お世辞にも美しい山容とはいえないが、修験場としての歴史も抱える
男性的な山の雰囲気を充分に感じ取ることが出来る。




 この展望を最後に、楽しい楽しい多紀アルプスの核心部はあっという間に終わってしまった。
これまでのスペクタクルな岩尾根は、普通の森に覆われた尾根道に戻る。少し登ると展望の無い660m+ピーク。
微妙に進行方向を変えつつ下っていく。丸太階段が延々と続いて非常に歩きやすい。

 しばらく下ると尾根を離れて山腹道になる。南の620m+ピークと北の620m+ピークに挟まれた谷を下っていく。
いつの間にか周囲は薄暗い植林地帯になる。この付近で下から男性2人、女性1人の3人パーティーが登ってこられた。
大たわから登り始めて小金ヶ嶽へ向かわれている途中なのであろう。小金ヶ嶽から三嶽にかけては、平日とはいえそこそこの方が
歩いているのではと思っていたが、今日出会ったハイカーはこの方々が最初で最後であった。




 上記の2つのピークに挟まれた広いコルを緩やかに下っていく。水気が多い植林ということで、雰囲気が龍野の城山城跡主郭にそっくりだ。
いつの間にか現れた細い沢の右岸を緩やかに下っていくと、前方に日が当たって森が途切れているのが見えてくる。大たわに到着したようだ。








11:05 大たわ到着

 多紀連山縦走路が唯一車道で寸断されている大たわに到着。自分が到着する直前までMTBにまたがったライダーの方が一人道路脇で休まれていた。
ライダーを見てやまあそさんを思い出したが、いつも週末に出撃されていることをすぐに思い至った。

 小金ヶ嶽側の入り口脇には立派な造りの東屋が建っている。東屋の中にはこの多紀連山の詳細な案内板が掲示されていて非常に有用だ。
同じものが筱見キャンプ場にもあればと思ったが、大たわが最もポピュラーで実質的な登山口になっているようなので仕方がないのだろうか。
ともかく多紀連山の詳細が全て書かれているので、ここに全文を記載したい。


県立自然公園 多紀連山と大たわ(たわは“山定”と書かれている)

 多紀連山は多紀アルプスとも呼ばれ、南方に緩やか、北方に急峻となっており、京都府から篠山市、更に丹波市にかけて、高い岸壁状に500m〜700mの山々が連なっています。
また、水系については日本海に注ぐ由良川水系と、瀬戸内海に注ぐ加古川水系とに分かれる中央分水嶺です。多紀連山では、鼓峠が一番標高の低い分水嶺となっています。

 これらの山々は、平安時代末期から中世にかけ修験道行場として栄えましたが、文明14年(1482年)大峰山の僧兵が来襲し、寺院は全て焼失しました。今も、大岳寺(みたけじ)跡、
福泉寺跡、水飲場などをみることができます。

 現在は、県立自然公園に指定されており、高山植物、山野草、鳥獣も多く登山道も整備されています。春には新緑の中のシャクナゲ、ヒカゲツツジ、秋には全山が紅葉に染まり、よく
晴れた日には、山頂から雲海を見ることができ、四季を通じて登山家の目を楽しませてくれます。

 この大たわの西側には主峰の御嶽(三嶽)(793m)、西ヶ嶽(727m)が、東側には小金ヶ嶽(725m)がそびえ、山頂からは、神戸の六甲山、淡路島までが展望できます。
 また、たわ(山定)とは、撓むの当て字で、山の稜線のくぼんだ所を言います。




 【多紀連山ガイド】

御嶽(三嶽) (793m)
 主峰で古くは藍婆(らんば)ヶ峰と呼ばれ、頂上は東西二つの峰があり、西側が最高峰で三角点があり、東側に石室がある。
南側直下に修験道上の本山新金峰山大伽藍大岳寺の跡がある。四方の遠望は素晴らしい。


小金ヶ嶽 (725m)
 岩肌には荒い珪石質の奇岩露出、視界広く、展望はよく、古くは蔵王堂があったことから、蔵王ヶ岳と呼ばれ、修験道上の山である。


西ヶ嶽 (727m)
 山形は雄大で南に多くの尾根を有し、北面は山頂から絶壁で大小無数の岩場があって、岩に咲くシャクナゲの花とのコントラストが美しい。


筱見四十八滝
 多紀連山の東端に位置しており、始終(しじゅう)水がかれることのない滝が八つあるところから、この名がある。下流から手洗い滝、弁天滝、
肩ヶ滝、長滝、シャレ滝、大滝、二の滝、一の滝で、その昔修験道行者達は、この滝で水行をして出発したという。春は桜、夏は渓流、秋は紅葉、
キャンプもできる憩いの場である。


鍔市ダム(つばいちダム)
 農業かんがい用水として昭和46年に総工費5億6千万円をかけて完成した。周囲3km、面積9.1ha、高さ34.5mのダムで、周回道路には
サクラ、カエデが植樹され、湖には魚が生息し釣り人を楽しませている。


栗柄
 この地には、御嶽修験道場の最終の行「水行」をした滝壺があり、ここに「倶利伽羅不動明王」が祀られている。また、この近くには昔から
伝えられている手織木綿の「丹波木綿」を織っている創作館があり。東へ2km行けば、田の水が、日本海と瀬戸内海とに分かれる中央分水嶺に
なっている鼓峠がある。





【登山コース】

1.四十八滝〜栗柄(全山縦走/健脚向きコース)
 筱見四十八滝の滝巡りを経て、尾根に出る。稜線を左にとって進み、起伏を越えて、川阪峠(小倉たわ)484mの鞍部に下る。
再び稜線を上り、小金ヶ嶽頂上に着く。展望はよく、視界が広がる。
 西に主峰三嶽を見ながら下ると岩場に出る。岩場の北側を過ぎ、雑木林を一気に下り、杉林を抜けると、最大の鞍部である大たわに着く。
 大たわより急な登山道を登るとすぐ三嶽の頂上に着く。かつては行者堂があったが、今は岩室がある。
頂上は二つの峰からなり、南へ下る道は、大岳寺跡を経て、火打岩・瀬利・丸山に出られる正面道である。西の峰を通り西に向かい下ると、
西ヶ嶽と栗柄への分岐に着く。西ヶ嶽頂上の展望もよい。下る道は「愛染窟」の洞を経て、茶畑を通って栗柄の里に出る。


2.火打岩〜三嶽(三嶽正面コース)
 火打岩停留所より道路を少し北上すると左手に登山道の入り口が見える。民家の間を抜け、あぜ道を通り、植林へ入ると階段が続き、
やがて雑木林になる。しばらく急坂を登ると瀬利、丸山から来る道と合流、さらに尾根道を進むと、鳥居堂跡に着く。正面に三嶽、右に小金ヶ嶽を
眺めながら少し登ると、昔の行者が渇いた喉を潤した水飲場がある。すぐ上に大伽藍大岳寺跡の礎石が今も点在する。この辺より急坂となり、
岩場の石仏に昔を偲びながらすぐ頂上に着く。


3.火打岩〜小金ヶ嶽(小金ヶ嶽正面コース)
 小金口停留所より右に入り、渓流沿いに登ると、やgて福泉寺跡に着く。当時の面影がはっきりと礎石が点在する。松林を通り尾根に出ると、
木立の間より露岩の多い小金ヶ嶽が眼前にせまり、修験道場にふさわしいいわばの急な山道で、一歩ごとに高くなり頂上に近づく。


4.鍔市ダム〜川阪峠(小倉たわコース)
 鍔市ダムの周回道路を奥に行き、杉林を抜けて谷川沿いに進み、橋を過ぎると分岐点に出る。左に登ると小金ヶ嶽直下の鞍部に通じる。
右に進むと川阪峠で、やがて小倉たわに出る。ここから向側に下ると川阪、右は筱見四十八滝、左へは小金ヶ嶽に通じる。


※ その他のコース

5.栗柄〜西ヶ嶽コース
6.丸山〜三嶽コース   (5、6はそれぞれ説明文無し)




【丹波篠山修験道場の山】

 多紀連山の峰々は、鎌倉から室町時代の頃、丹波修験道場として隆盛を誇った。
 入山するものは後を絶たず、山々には法螺の響き、錫杖の音、念誦の声は谷に、里にこだまし、正に信仰の山であった。
 主峰御嶽の南側に大岳寺、小金ヶ嶽の頂上には蔵王堂、その南側に福泉寺を始めとして寺々や、入山前にする里行のための里坊などがあった。
 修験道場の行は、表と裏の二道に分かれており、表は金剛界廻りといって筱見四十八滝から峰々を経て、御嶽の頂上の行者堂へ、裏は胎蔵界廻りといい、
御嶽頂上から西に向かい、西ヶ嶽を通って里の養福寺へ入って滝の宮で行をして終わる。
 丹波修験道場は、室町時代の文明十四年(1482)に大和修験道場との勢力争いに敗れ、寺々などことごとく焼失してしまった。





 この多紀連山も壮絶な歴史を背負っていることが分かった。1482年焼失ということは、京都の応仁の乱が終結してから僅か5年後ということか。
中央の混乱が地方に飛び火して戦国時代が始まったわけだが、その初期から宗教界も含めてこれほど混沌としていたとは想像以上だった。

 しかし、何も理由も無いのに不条理な事件が絶えない現代のほうが、ある意味でより混沌としてはいないだろうか。治安の良い安全な世の中を維持することが、
政治の最大の存在理由ではないだろうか。にも関わらず、加古川の事件を踏まえての官房長官の答弁を聞くと、「警察と地元のより一体的な取り組みが必要」という。
それも的外れとは思わないが、政治が果たす役割は何かないか、というように考えないのだろうか。
警察や住民による取り組みなどはいわば「対処療法」であって、犯罪を生みにくくする社会を構築するというように根本から変えていかなければならない。
世界的に見ればテロを撲滅していく理念に似ているような気がする。貧富の格差を是正して、誰もが「衣食住」が足りれば凶行に及ぶことは減るのではないかということである。

 自分は今のような時代になったのは、殆ど全て戦後政治の結果によるものと考えている。子供が安心して外で遊べないようでは、「美しい国」とは程遠いのでは。
そういえば最近誰もこのフレーズを言わなくなったなぁ。つい3ヶ月ほど前までCMでも流れていたのに。

















 車道を横断して三嶽側へ渡る。車道は片側1車線の幅もなく、対向車が来たらようやくすれ違える程度のものだった。
三嶽側にはたいへん広い駐車場が完備されている。軽く数十台は停められそうだ。北東隅には多紀連山の大きな全山ルートマップ、北西隅には山中では貴重なトイレまである。

 残された縦走後半で最難関となるであろう三嶽への登りを前にして、大たわ駐車場の片隅で小休止をとる。








11:17 大たわ出発

 三嶽への入り口は広大な駐車場から一段高くなった公園の南の端から始まっていた。
公設案内板によると三嶽まで1.2kmという。殆どの区間が登りだ。気合を入れて登っていく。

 登り始めてすぐに「ハチに注意」の警告が。ここに来るまでにもう充分遭遇しているが・・。








 三嶽への登りは急坂というイメージがあったのだが、その行程の半ばまではご覧のような緩やかな登りだった。
小金ヶ嶽から大たわへ下るまでは植林が続いたが、一転して心地良い雑木林が続いている。
小金ヶ嶽同様、三嶽も利用度の高さを反映してか、幅広で張り出した草木に当たることもなく快適に歩けるトラックとなっている。








遂に始まった三嶽への急登

 緩やかな登りでかなり歩いてきたなと思っていたら、目の前に果てしなく続く階段道が現れる。
これが噂の三嶽への急登かと身構えて登っていく。しかしだいたいのところでは、後から設置されたと思われるステップのおかげで段差は少なく、
脚への負担は最小限に抑えられる。階段の急登といえば、六甲縦走の難所の一つの菊水山を思い浮かべるが、こちらのほうが断然楽に感じる。

 とはいうもののしんどいことは否定できない。何度となく立ち止まっては息を整えつつ登っていく。
ところで、この辺りから栗柄口まであと2時間30分で到達するのは不可能と悟り、帰路のバス乗車時刻を第2候補の15:49と最終的に決定した。
残りの持ち時間が4時間近くになったということで、何も慌てて歩く必要はなくなった。








11:41 一旦斜度が緩む

 整備された階段道ながらも紛れもない急登を登ってきた身にとって、ほっとする光景が目に飛び込んできた。
向かう先にはまだ登りが控えているがとにかく一息つける。案内板には「御岳」と書かれているが、文中では地形図に記されている「三嶽」で統一することにする。

 地形図「村雲」はこの後しばらく続く緩い登りの途中で途切れている。交換するタイミングに迷ったが、とりあえず山頂に着いてからということに決めた。
しかしこのことで、後どのくらいで三嶽の山頂に着くのか見当がつきにくくなってしまった。一つ西の「宮田」と重ねて適当な大きさにコピーするべきだったか。




 しばらく登った後、久しぶりに展望スポットに到達することになる。三嶽への長い急登のご褒美になるのだろう。








11:50 小金ヶ嶽を主峰とする多紀連山東部の全景

 まさに朝から歩いてきた道のりの全貌を窺うことが出来る大展望で感動した。筱見や峠山は遠方に霞んでいる。貫禄のある小金ヶ嶽と東西に伸びる縦走路が走る尾根。
大たわへと下っていった植林の谷。そして遥か彼方東方にはうっすらと一際高い山が見えているが、方角からいってあれは比良山系だろうか。真東に位置するようだが・・。

 まさに素晴らしいとしか言いようのない景観に大満足。三嶽への急登の疲れも吹き飛ぶような気がする。
後で気付くことだが、三嶽山頂は東側の景観には恵まれておらず、上記の写真が今日最後の小金ヶ嶽の姿となる。








篠山盆地を見下ろす

 同じところからは角度は限られるが、篠山盆地を見下ろすことも出来る。今朝に歩き始めた筱見の地は篠山盆地の東外れで、その盆地の広大さが分かってきた気がする。




 大展望を楽しんだ後、三嶽へ向けて最後の登りに掛かる。




12:00 三嶽東山頂

 岩棚の広がる三嶽の東山頂へ到着。三嶽は東西に2つのピークがあって、三角点のあるピークは西。
しかし、後で分かることだが、自分にとって居心地の良いピークは東の山頂のほうだった。
とはいえ、岩棚に座っていてはけっこう暑いので、この時点の判断で先へ急ぐことにした。

 一段低くなったところに石造りの祠があって、中には役行者と思われる像が祀られている。

 深い草むらの間に西へ伸びる踏み跡があって、暗い森の中へ入っていく。東山頂と西山頂の間のコルのようだ。
下山路が分岐しており、一段低くなったところには避難小屋もある。本当に多紀連山には多くのトラックが縦横に走っており、これから何度となく訪れたくなってきた。








12:06 三嶽西山頂

 森はすぐに途切れてアンテナ施設?のある三嶽西山頂に到着。このピークが今日の行程中最も標高の高いところとなっており、一等三角点もあって
三嶽が多紀連山の主峰となっている理由なのであろうけど、やはり一つ施設があるだけで雑然とした雰囲気になってしまう。
肝心の景観も思ったよりも角度が遮られる。ここだけは期待とは裏腹にちょっとがっかりしてしまった。








 小金ヶ嶽山頂と同じく切り株を模したベンチが幅を利かせている。そしてその脇には峠山以来で、今日最後となる三角点が出迎えてくれる。
自分にとって、一等三角点は六甲最高峰以外では初めてとなる。旧字体で書かれているのが設置されてからの時の流れを感じさせられる。

 三嶽山頂は東西に長くて周囲は森に囲まれている。眺められる景観は南北それぞれの一角に限られる。しかも草木で阻まれがちになってしまう。
確か三嶽山頂より少し西に展望スポットがあるはずと思い、イマイチだった三嶽山頂を早々に出発することにした。




 多紀連山の主峰は三嶽と小金ヶ嶽の二つを併記しても良いのではと思った。【ふるさと兵庫50+8山】でも多紀連山の50山は三嶽になっている。
個人的には三嶽に比べて68m低いが、小金ヶ嶽山頂のほうが雰囲気も景観も上回っていると感じた。




12:10 小休止のみで三嶽山頂を出発

 施設の横から西へ向かって伸びるトラックに入っていく。三嶽山頂を過ぎるといきなり利用頻度が少なくなったことを、草木の張り出し具合からすぐに感じることに。








12:14 多紀連山西部の展望スポット

 三嶽山頂からしばらく下ったところで山腹から突き出た岩場を見つけた。そこには期待通りの大展望が広がっていた。
初めて目にする西ヶ嶽を眺めながら、今日の昼食はここで摂ると即決する。今日の昼食もいつも通りにおにぎり2個である。




12:26 満腹になったところで展望スポットを出発

 お腹が膨れたところで、三嶽山頂の西外れに位置する展望スポットを発つ。
 三嶽を過ぎていよいよ多紀連山の縦走も終盤が近づいてきた。次の目標は同じような標高で見えている西ヶ嶽だ。
また間にはいくつかのピークが立ちはだかっている。朝から歩いてきて疲れは溜まってきたが、最大の難所はもう過ぎたので、あと少しと言い聞かせることにする。
展望スポットからしばらくはやや急な下りが続くがすぐにコルに降り立つ。








 コルから振り返ると先ほどまで居た三嶽が見える。この角度で見るときれいな三角錐だった。
コルからは約20m登り返す。もう大たわから三嶽であったような長い登りは無いが、短いアップダウンはとにかく無数に存在する。




 短い登り返しで700m+ピークに到着。木々に囲まれて展望は無い。
ここでやや南寄りにカーブ。しばらくは緩い下りが続く。




 しばらく高低差が少ない快適な尾根道が続く。
そしてまもなく西ヶ嶽周辺を広く見渡せる展望スポットへ到着する。








12:42 西ヶ嶽遠望

 尾根から少しだけ盛り上がった感じの西ヶ嶽が段々近づいてきた。そしてこれから歩いていく西ヶ嶽へ至る尾根の全貌も眺められる。
西ヶ嶽山頂も含めて、690m+ピークなどまだいくつかのアップダウンの箇所が見受けられる。
小金ヶ嶽や三嶽ほどではないが、最後の最後まで気を抜いてはいけないようだ。
それにしても峠山から始まって、それぞれ違う個性を持つ山々を楽しめる縦走路だとつくづく思った。








 西ヶ嶽へ続く尾根は基本的には木々に覆われてはいるが、いたるところで露岩地帯が現れて変化があって面白い。
標高差もさほどないこともあって、これまで歩いてきた区間の中では最も快適かもしれない。








 道すがら見かけた巨石。烏帽子岩とか名前が付いていそうな感じだ。
さながら尾根に点在する山上庭園とでもいうような趣のある尾根歩きを楽しんだ。








12:49 栗柄出合

 烏帽子のような岩を見てまもなく栗柄へ降りるルートが分岐する。地形図にも北の650mピークを経由して栗柄へ下りる破線道が描かれているが、
場所的にも地形図と違わない現状になっているようだ。最終下山地は栗柄には間違いないのだが、ここで下山してしまうと西ヶ嶽を外してしまう。
西ヶ嶽まで行ってここまで戻ってくるパターンもあるが、極力「旅は一筆書き」で済ませることが自分の信条である。
そして西ヶ嶽経由でも栗柄へ下山出来るようなのでここは直進することにした。




 栗柄出合(670m+)から640m+コルまで標高差約30mの緩い下りが続く。ここまで三嶽から比較的長い距離を調子良く歩いてきたが、
突然目の前に壁のような急坂が現れて少々気後れする。西ヶ嶽手前の690m+ピークへの登りだ。








 写真で見るとさほど急には感じないが、三嶽東斜面のように階段を付けられていてもおかしくないほどの急坂だった。
前のめりに写っているが、自分ではまっすぐに立っているつもりなのである。
ここは充分な足場も無く、雨後に下りで歩くと難渋しそうだ。縦走で疲れてきた足には予想外の難所となった。




 標高差約50mの急坂をようやく登り終えると展望の無い690m+ピーク。
それでも木々の枝越しに随分近くなった西ヶ嶽山頂の輪郭が見えて元気付けられる。
しかし西ヶ嶽山頂へはもう一度アップダウンをクリアしなければならない。(正確には2度。ミニピークの小さいアップダウンもあった)

 約30m下って650m+コルへ。そこから遂に西ヶ嶽へ向けて最後の登りが始まる。








西ヶ嶽への最後の登り

 先ほどの690m+ピークほどではないが、標高差約70mの登りはけっこう長く感じられる。
トラックの両側にはびっしりと笹が生えているが、何故か全てが枯れているように見受けられる。
このこともあってトラックの雰囲気は正直もう一つだったといわざるを得ない。
この雰囲気は西ヶ嶽山頂を通り過ぎてからもしばらくの間続いた。

 笹の間にまっすぐに付けられた踏み跡を登っていくと、ようやく最後のピークの西ヶ嶽に到着する。








13:15 西ヶ嶽山頂

 ようやく辿り着いた西ヶ嶽山頂。小金ヶ嶽、三嶽のようにそこそこ広い山頂を想像していたが、なだらかな遠望とは裏腹に狭い山頂だった。
北から西、そして南の一角のみ木々が途切れて展望が開けている。しかし小金ヶ嶽と同様に木々が生長して全開とはいかない。
多紀連山縦走路は山頂よりもその周辺のほうが好展望に恵まれるというパターンが多いようだ。

 山頂に点在する石に腰掛けて小休止をとる。座ったら展望がなくなるが仕方がない。

 ちなみに周囲からはよく目立つピークだが、西ヶ嶽山頂には三角点は無かった。








西ヶ嶽から南の景観

 東西に長い篠山盆地を東から順に見下ろしてきたが、かなり篠山市街寄りになってきた。もう少し広く見渡したかったが仕方がない。
それはともかく何だか西から雲が広がってきたのが少々気に掛かる。








北の景観。果てしない山並みが続く。

 どこまでも続く緑。久しぶりに見応えのある大自然に触れた気がする。








13:27 西ヶ嶽山頂出発

 約10分の滞在で出発する。ここからは約1時間で下山出来るようだから、乗車予定15:49のバスまで充分過ぎるほど時間がある。
それでも短めの滞在にしたのは、日差しがけっこう暑いうえに虫も多くて落ち着かなかったから。

 これで多紀連山縦走路の主要なピークを全て踏んだことになるが、個人的には全てを比べてもみても主峰三嶽より小金ヶ嶽山頂のほうが居心地が良かった。




 西ヶ嶽山頂からは南に弓なりに曲がりながら高低差の少ない尾根がしばらく続く。
緩い下りなので歩きやすい区間ではあるが、やはり枯れたような笹原が続くので少々淋しい雰囲気だ。








13:35 藤岡出合

 少し下っていくと藤岡ダムへ下るルートが分岐する。これもほぼ地形図どおりの現状といえるのではないだろうか。
覗き込むと南斜面をやや急に下っていっている。多少ヤブっぽくもなっており、栗柄方面へ道なりに進むトラックよりも
あまり人が入っていないようである。

 藤岡ダムへ下るのは良いのだが、その後のバスルートへのアクセスは非常に悪くて得策ではないようだ。








13:40 574mピーク付近

 この辺りは枝道がいくつか見受けられて、少々厄介なところだった。道標は全く設置されていない。
地形図では574mピークから南の谷状を下って、そのまま栗柄口バス停付近へ降りるように描かれている。
一応、このことを念頭に置いておくとして、怪しい踏み跡は全て確認しながら進んだ。
その中で一つ、これも地形図どおりに北の栗柄地区の中心部へまっすぐに降りていきそうなルートも見つける。
 しかし、ブッシュが目立ってあまり人が入っていないように見受けられた。すぐに引き返したが、
そこからはこれから下る栗柄地区を初めて見下ろすことが出来た。








13:44 栗柄地区を眼下に望む

 南北に細長い谷に家々が点在する栗柄地区が初めて見えてきた。ここから麓までの標高差は約320mでまだまだ高いが、
既に車の走行音がよく聞こえてくる。西ヶ嶽山頂では怪しい雲行きだったが、最後まで天気は大丈夫そうだ。

 本来のルートに戻って南斜面へ下っていく踏み跡を辿る。
一旦は尾根から外れて、地形図通りに谷に下りそうな気配だったがすぐに尾根に復帰。
どうやら574mピークから西に派生する尾根を下るようで、この栗柄口へ下るルートは地形図通りの現状ではないようだ。








 まもなく長い丸太階段が出現。ちょうど歩幅にも合って、急斜面ではあっても快適に下ることが出来る。
この多紀連山縦走路は整備されているところとそうでないところのムラが本当に大きい気がする。




 小さなコルに降り立って長い丸太階段は一旦終わる。








13:56 これまで下ってきた尾根を外れる

 西ヶ嶽を示す小さな案内板を見つけたところで、南へ90度進路を変える。
下ってきた尾根は外れたが新たな支尾根に乗ったようで、まだしばらく尾根歩きは続く。

 しばらく下ったところに、「→矢代」と書かれた公設道標がある。どこのことかと思って地形図「宮田」を見てみたら、
一番下のほうに矢代地区というところがある。多紀連山の周囲にも数多くのトラックが走っているようだ。
NZのように山域毎に公式マップでも発行してくれるといいのだが。
 しかし指し示されている矢代へのルートは草が伸び放題で、かなり長い間人が入っていないようだった。

 そこから道標には書かれていないが、北斜面を丸太階段が下っていっている。
これが方角から栗柄口へ下るルートだろうと目星をつけて降りていくことにした。








谷へ下っていく

 程よい斜度の斜面に延々と敷設された丸太階段を下っていく。周辺の地形からして、栗柄口に下っていく谷に間違いないようだ。
丸太階段は沢へ下りつくまで続く。そして沢と平行、時に渡渉しながら緩やかに下っていく。








栗柄口登山口へ

 段々と谷が開けて前方に道路が見えてきた!初めての多紀連山縦走も終わりが見えてきて、心地良い達成感に包まれる。








14:28 栗柄口登山口到着

 民家の脇から車道に出て多紀連山縦走路は終わる。今日の西向きの行程とは反対に、栗柄口から歩く場合はこの小さな案内板のみが目印になる。








 登山口からすぐ北に神姫バス栗柄口バス停がある。本数が少ないのが最大の難点だが、アクセス自体は非常に良いといえる。
栗柄口バス停は雨露を凌げる小屋が立っていて、そこで着替えをしたりしてバスが来るまで約1時間20分もの間くつろぐことにした。








コスモス畑と藁葺き屋根の民家

 バス停の側にはこのような光景が広がっていた。今日たまたま持ってきていて、ずっとザックの中で重りになっていた望遠ズームで撮影。
自分好みののどかな風景に包まれて、バスの待ち時間も案外退屈しなかった。




15:49 JR篠山口駅行きバスに乗車 (栗柄口〜JR篠山口駅 : 550円)

 ほぼ定刻通りにやってきたバスに乗り込む。乗客は自分を入れて4人だけだった。








16:11 JR篠山口駅到着

 ほぼ定刻通りに篠山口駅に到着。どこにでもある近代的な駅だった。
バスはのりばAに到着。そしてまた同じのりばから出発する。非常に分かりやすい。

 自販機で買ったオレンジジュースを飲んだりして、のんびり乗り換えるバスを待つ。




16:36 JR篠山口駅出発 大芋行きバスに乗車 (JR篠山口駅〜丹波東雲 : 670円)

 大芋はおおいもではなくて、“おくも”と読むようだ。篠山は難読地名が多いと感じる。
朝から車を置いている筱見キャンプ場への最寄のバス停である丹波東雲へ約45分のバスの旅だ。
篠山口駅から丹波東雲まで篠山盆地を西から東へ横切る形になる。改めて篠山盆地の広大さを感じると共に、多紀連山を縦走した充実感に包まれる。

 乗客は途中でけっこう入れ替わったが、結局常時10人未満だっただろうか。

 バスは篠山の旧市街も通る。初めての自分には車窓風景の全てが新鮮で、軽く旅行している気分になった。
一度、観光で訪れてみても良い街だと思った。








17:22 丹波東雲バス停到着

 ほぼ定刻通りにバスは丹波東雲バス停に到着。

 結果として、この2つの系統のバスを利用することは、篠山口駅を通る非常に遠回りのルートを辿るということになる。
しかしこの2つの系統のルートは見ていた限りでは交わるところは無かった。やはりここへ戻ってくるには今日のバス便を利用するしかないようだ。




 ここからは朝イチに車で通った道を辿っていくだけだ。しかし、車を置いている筱見キャンプ場まで2.6kmもある。
殆ど高低差は無いが、縦走の後というか最後を締めるにしては少々単調で気が重い行程だ。まあ仕方がないが。








朝に登った峠山が正面に見えてくる

 筱見キャンプ場へ歩いていく間にも段々と暗くなっていく。もちろん暗くなることはこの行程を組んだ時から想定済みで、今日はヘッドランプも用意しているのだが。




17:51 筱見キャンプ場到着

 滑り込みで真っ暗になる前に筱見キャンプ場に停めてある車に辿り着いた。朝と同じく誰も居らず、自分の車だけが停まっている。
約12時間ぶりで懐かしい。結局、ヘッドランプは今回は不要だった。

 しかし、暮れかかった筱見キャンプ場は相当淋しい雰囲気だ。多紀連山縦走は出来れば日が長くて、しかも快適な5月頃が最適だろうか。
もう少し後の季節になると当然真っ暗の中の到着になってしまう。周囲には民家は全く無く、自分のようなおっさんであっても単独ならば避けるべき行程かもしれない。




18:00 身支度を整えて出発

 車を動かす頃には殆ど真っ暗になっていた。車のライト以外に周囲は街灯の一つもない。
真っ暗になった筱見の集落の道を慎重に通り抜けて、再び先ほど歩いたばかりの道を丹波東雲バス停へ向けて車を走らせる。

 国道に出ると、この時間はさすがに交通量が多かった。




19:55 自宅到着

 歩行時間は正味約8時間ほどだがとても長旅だった。しかし、それでも初めての多紀連山を縦走した達成感は心地良いものだった。
これで2度目以降の多紀連山は色々なバリエーションを考えられるだろう。また一つお気に入りの山が追加された!








今日の行程の断面図です。



上記の10.6kmに加えて、丹波東雲バス停から筱見キャンプ場までの2.6kmも追加されます。

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