「黒戸尾根を経て甲斐駒ヶ岳・七丈小屋へ」 2017年 7月 6日(木)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「長坂上条」、「甲斐駒ヶ岳」


 今夏1回目のアルプス登山です。
甲斐駒ヶ岳は行きたい山リストで常に上位に入っていましたが、条件としてぜひ黒戸尾根を経由して登りたいと思っていました。
昨夏にはほぼ同じ規模と思われる劔の早月尾根を登ったことで、次は黒戸尾根!という機運が高まっていました。

 長野市街の自宅から下道を走ること約4時間。午前2時前に尾白渓谷駐車場に到着。
駐車場は10台程度が停まっていました。適当なところに駐車して少し仮眠をとっておきます。








 行程概要  全線を通してよく歩かれている尾根道ですが、特に五合目から七合目にかけては気を抜けません。

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。


 
 
 4:02 尾白渓谷駐車場(770m)出発!

 準備を整えていざ出発。
まだヘッドライトが必要ではあるが、空は白み始めている頃合だった。

 車が通れるような林道をしばらく下っていく。下山の時は最後の最後に登りになるなと考えていた。








 4:18 竹宇駒ヶ岳神社を過ぎて、吊り橋を渡る   

 キャンプ場の脇を抜けてくると竹宇駒ヶ岳神社に到着。
ここで鈴やラジオなどの手回り品の確認を行ってから、尾白川に掛かる吊り橋を渡る。
吊り橋は定員5人でけっこう揺れる。







十二曲りが始まる   

 吊り橋を渡り切ると、いきなり山腹を登りに掛かる。
まずは標高差150mくらいの「十二曲り」の登りだ。
長大な黒戸尾根の序盤の序盤なので、いつもよりゆっくりめに歩いていく。
十二曲りは急坂を緩和するようジグザグに続いていて、順調にペースを掴むことが出来た。
ここまではまだ全然疲れなかった。








 4:43 (880m+)   

 尾白川渓谷を巡る山道が分岐するところで最初の小休止を入れた。

 この先まもなくして登りは一段落して平らな山腹道となる。








 5:01 黒戸尾根の上に乗る  笹ノ平までまだまだ掛かる 

 平らな山腹道でほっとするのも束の間で、黒戸尾根に乗り上げるといよいよ本格的な登りとなる。
溝状に掘れた登山道を登っていく。落ち葉が積もっているところもあって、登りではやや歩きにくかった。
尾根に乗っても思ったほど風が通らないので蒸し暑かった。








甲斐駒が遠く感じるほどにペースが上がらない  信仰登山の表参道であることを感じられる祠 

 黒戸尾根に乗ってから蒸し暑さもあって、なかなかペースが上がらなくなったように思う。
立ち休憩していると、日帰り装備の若い単独男性に追い抜かれる。
この日、七丈小屋へ辿り着くまでに出会った方はこの時のお一人だけだった。








 6:40 尾根上を外して一旦山腹道になる  コアジサイが沿道に咲いていた 

 北斜面の山腹道になると、初めて黒戸尾根の行く手を見上げられた。
空には晴れ間が広がるが、標高の高いところでは既に雲が掛かり始めていた。
一応、日本海側の高気圧によって天候が安定するはずと思っていたが、やはり雲を押さえつける強さが足りなかっただろうか。

 緩い山腹道はすぐに終わって、再び尾根上に乗るための急坂となる。








 6:52 笹ノ平分岐点(1,470m+)   

 やっと笹ノ平に到着。
出発してからここまでで3時間近く掛かってしまった。
それでもまだまだ先のほうが長いので、分岐でしっかりと小休止をとっていく。

 ここでは横手登山口からの登山道と合流するが、尾白渓谷からと比べると少しだけ所要時間が長くなるようだ。




 6:59 笹ノ平分岐点出発

 しばらくは尾根上を緩やかに登っていくが、まもなく北斜面の山腹道へ。
1,628m標高点ピークを避けるように登山道が続いていく。








 7:29 1,600m+コル  いよいよ八丁登りへ 

 少しだけ急坂を我慢すると再び尾根上へ戻る。
このコルは笹の中で広場になっており、ほっと一息つけるところだ。

 振り返ると1,628mピークへ向かいそうな明瞭な踏み跡がある。




 息を整えると、いよいよ標高差250mある八丁登りへ。








八丁登り前半の約100mが急坂  行けど行けど笹原の尾根… 

 長い八丁登りもマイペースを心掛けて登っていくが、やはりここはしんどかった…。
時折現れる大きな段差の木の根に苦しめられる。

 地形図をよく見ると最初の100mと後半の50mが特に等高線が詰まっている。
ずっとずっと急坂というわけではないのを念頭に置いて登り詰めていく。








 8:28 前屏風ノ頭付近(1,870m+)を通過   

 やっと傾斜が緩んできてほっとするが、次の休憩地点としていた前屏風ノ頭になかなか辿り着かない。
後でGPSで答え合わせをして分かったが、前屏風ノ頭と見なしていた1,881m標高点は通っていないようだ。
おかげで想定していたところで小休止を入れ損ねた形となった。
八丁登りを登ってきて疲れてはいたが、尾根が緩くなって息を整えられたのでもう少し進んでみる。

 1,900m辺りでも小休止に適した小広いところがあった。
この辺りで一旦雲に入ったようだ。早月尾根の時みたいに雲を突き抜けれれば最高なのだが。








 8:47 1,950m+にて小休止   

 しばらく緩やかな尾根を歩いてきた。前屏風ノ頭は通り過ぎたか、まだならばここくらいかなと思って小休止を入れた。
鎮座する石像には供えられた線香が燃え尽きた状態で残っていて、今なお信仰でも登られている尾根であることが分かる。




 8:54 1,950m+出発








 9:01 刃渡り(1,960m+)   

 緩やかな尾根が途切れて唐突に有名な刃渡りへやってきた!
危険個所には違いないが頑丈なクサリの手すりがあるので、全く恐怖感無く悠々と通過。
もしガスが無ければ両側が谷底までそぎ落ちているらしいので、もうちょっと高度感を味わえたかもしれない。

 刃渡りを通過した後もしばらくは岩がちの痩せた尾根が続く。








丸太の桟道が始まった  遂に初めてハシゴが現れる 

 しばらく尾根上を歩いてきたが、ここに来てまた北斜面を巻き始める。
まず丸太の桟道が始まったが、すぐに急斜面に付けられたハシゴが現れる。
 ここのハシゴの斜度は大したことはないが、足を踏み外さないよう一歩一歩丁寧に進んでいく。








 9:36 刀利天狗(2,080m+)到着   

 しばらく急坂を耐えると、やっと刀利天狗に到着!
2,049m標高点ピークにあると思っていたが、実際には既にハシゴなどで巻いていて通過した後だった。

 刀利天狗では休みやすいように角材をベンチ替わりに置いてくれているので、ゆっくりめに小休止を入れておいた。
ここまでで七丈小屋までの3分の2は登ったことになるが、このペースだと到着するのは昼前になりそうだ。




 9:44 刀利天狗出発








黒戸山北山腹を巻き始めるまで標高差約150mの登り  10:23 せっかく登ったのに下りが始まる 

 次の目標の五合目小屋跡までは所要1時間だが、登りは黒戸山北斜面の山腹道になるまで。
この区間は読図で予想していたよりも尾根上は外しっぱなしで、比較的緩やかな登りで終始した。

 黒戸山北斜面の平らな山腹道になるとほっと一息つける。
しかしまもなく五合目小屋跡までは残念ながら下りとなってしまう。
下山時にはこの登り返しはけっこうしんどいだろうと感じた。








10:34 五合目小屋跡(2,150m+)到着   

 下り着いたところは五合目小屋跡。何となくここに建物があったような形跡が見られる。
小屋跡からは行く手に緑濃い急崖がぼんやりと見えている。
五合目から七合目の七丈小屋までの区間は黒戸尾根の中でも気を抜けないところだ。
五合目小屋跡でしっかりと小休止を入れておく。




10:43 五合目小屋跡出発








五合目小屋跡から僅かに下るといよいよ難所が見えてくる  これまでより急角度で長いハシゴ

 見上げるばかりの崖が尾根上に立ち塞がると、北斜面には急なハシゴが控えている。
ここから先が難所ということで、一歩一歩集中して掛かりたい。
2,360mにある七丈小屋まで残る標高差は230m。(少しだけアップダウンがあるが)
だいぶ疲れてきているが、七丈小屋までの所要時間は1時間10分ということであと一頑張り。

 五合目から七合目までを地形図でよく見ると、100mほどの急坂が最初と最後に2箇所に分かれて控えているようだ。
まず急で長いハシゴで最初の100mを登りに掛かる。








ハシゴを過ぎても急坂の連続  見上げるとまたハシゴ… 

 100mはまだかなまだかなと思いつつ、ゆっくりではあるが着実に登り詰めていく。







ザックの雨蓋を擦りながらも巨岩の横を通過   

 この巨岩を通過すると、どうやら2,262m標高点ピークに差し掛かったようで、急坂は一段落する。
最初の100mを登り終えてもうクタクタだが、緩やかなところを歩いている間に息をある程度整えられる。








11:36 2,240m+コル到着   

 僅かに下ると角材で出来た桟橋にやってきた。
ここまで来ると、七丈小屋まで残るは最後の100mの登りのみ。
橋の袂で最後の小休止を入れていく。




11:41 2,240m+コル出発

 桟橋は角材の間隔が微妙に空いていて、一歩一歩慎重に歩を進めて通過。

 最後の登りも急坂の連続で、しかも崖上でハシゴからクサリに乗り移ったりと気を抜けない場面もあった。
崖沿いはなかなかの高度感で、重いザックに振られないように注意したい。








黒戸尾根中盤辺りから多く観られたイワカガミ  








12:16 七丈小屋(2,360m+)到着!   

 尾白渓谷駐車場から8時間超。少し昼を過ぎてやっと七丈小屋に辿り着いた。
早月尾根の時と小屋までの標高差はほぼ同じはずなのに、黒戸尾根のほうがだいぶ時間が掛かった。
ハシゴやクサリの難所が多かったからだろうか。








疲れました。(^^;  ガリガリ君食べたいけど、自分はやっぱりコーラにした 

 小屋の方に出迎えられて、そのまま受付や買物などの用事を済ませる。
この方が何となく見覚えがあるような気がして、翌日に聞いてみたらやはり登山ガイドの花谷泰広さん。
帰宅後に調べてみたら、七丈小屋のHPにバッチリ載っていて下調べ不足だった。
 自分のデカいザックを見て、疲れ方を慮っていただいて嬉しかったです。

 今日はテント泊は今のところ自分だけとのこと。
平日だから空いてるとは思っていたが、まさか誰もいないとは予想外だった。




 七丈小屋は水が豊富なのか、宿泊客とテント泊の登山者は無料だった♪
有難くたっぷりと水を汲ませていただいた。冷たくて最高に美味しい水だった。

 ここで、早朝に麓のほうで出会った単独日帰りの方が山頂から下りてこられた。
黒戸尾根は地元の方を中心にして意外に日帰りで歩かれている方が多いようだ。
日帰り装備で歩くにしても、山頂までの標高差は2,200mあるので相当に気合を入れなければならないことは間違いないだろう。








12:51 七丈小屋出発   

 母屋の扱いの七丈第一小屋から少し進んだところにトイレ棟と第二小屋がある。
テン場はこのハシゴを登って、150m先にあるとのこと。
キャンプ用の水2Lとコーラが加わったことで、ザックがだいぶ重くなってしまった。
でもテン場と小屋の間を行き来する回数は出来るだけ減らしたい。








12:59 七丈小屋キャンプ指定地・下段(2,400m+)到着  テントを張り終えてほっと一息。鳳凰三山辺りが見える筈だが雲が厚い。 

 七丈小屋から10分と掛からずに待望のテン場に到着。
テン場は上下2段に分かれているようだが、誰も居ないのでもちろん下段に張るのを迷うことはないだろう。




 地面はほぼ砂地。自分は岩をアンカーにするのが好きだが、今回は久しぶりにペグを打込んだ。
テン場には珍しく貸し出し用のペグが置いてあったが、混んでいる時にはアテにしないほうが無難だろう。

 山で貸切のテン場なんて初めてで、時折登山者が通り掛かる以外は本当に静か。静か過ぎて落ち着かないかも。
居心地は基本的には悪くはないが、虫が非常に多くてテントの開閉のたびに大変だった。
コーラは一心地着いてから、テントの中で飲み干した。








地蔵岳、オベリスクが顔を出した  

 午後遅くなって一旦雲が切れて、鳳凰三山方面を少し眺めることが出来た。
甲斐駒から縦走してみたいなと考えたことがあるが、思っていたよりも距離があるなと感じた。

 それはともかく山の間に深く切れ落ちた谷を見て、改めて黒戸尾根を七合目まで登ってきた達成感を得ることも出来た。




 七丈小屋の花谷さんのアドバイスにより、八合目御来迎場にてご来光を眺めてから登頂する、
という信仰登山の方の行程でいくことにした。上手くすればモルゲンロートの甲斐駒を見れるかもしれないという計算もある。

 ここから所要1時間の八合目御来迎場に日の出前に着くよう、テン場を3時30分頃出発。
テントはピストンだから張りっぱなしにしておけるので起床時間は2時とした。

 18時頃には寝床についたが、その頃になってどしゃ降りになった。
耳栓を着けてもなおテントを叩く雨音がやかましくてなかなか寝付けなかった。








2日目、「黒戸尾根を経て甲斐駒ヶ岳・登頂」へと続きます。







行程断面図です




BACK

inserted by FC2 system