「黒戸尾根を経て甲斐駒ヶ岳・登頂」 2017年 7月7日(金) |
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国土地理院地形図 : 25000分の1 「長坂上条」、「甲斐駒ヶ岳」 |
行程概要 八合目御来迎場から山頂の間も部分的に険しい岩場があります。 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。 |
2:00 起床 テントを開けてみるとまだ周囲はガスガスのようで、しかも小雨まで降っていた。 せっかく超早起きしたのに、正直なところテンションガタ落ち。 まあ天気はどう転ぶか分からないし予報は悪くないので、装備に防水対策を行うことにした。 3:45 キャンプ指定地(2,400m+)を出発 出発準備や朝食の間に幸いにも小雨は止んでいたが、空模様は星は見えないので曇りっぽい。 余計な作業が増えたので、予定よりも少し遅れてテン場を出発。 最初は灌木帯の中の登り。短いハシゴがあったが、特に難所といえるところはない。 登ってる間に徐々に薄明るくなってきて、周囲が見渡せるようになってくる。 4:27 八合目御来迎場(2,670m+)到着 標準所要1時間のところを45分で八合目御来迎場に辿り着いた。 昨日の足の疲れはだいぶ残っているが、荷が軽くなったのはやはり大きいのだろうか。 空模様は冴えないままだったが、東の空は雲が薄いのでご来光は何とか見れそうだ。 |
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八合目御来迎場にて | 八合目御来迎場にあった大鳥居は惜しくも崩れてしまったという |
本当になんとか切れ間からご来光を観ることが出来た! 空気中の水蒸気が多いのが影響しているのか、普段は白いはずの甲斐駒が見事なモルゲンロートだった! やはり信仰登山で御来迎場になっているとおり、まさにご来光を見るに相応しい場所だった。 |
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八合目御来迎場から見る甲斐駒山頂付近 | |
昨日から全く展望無しで登ってきたこともあって、モルゲンロートの甲斐駒を観て感動せずにはいられなかった! 上空の雲も段々と消えていくようだったし、初めての甲斐駒山頂での大展望に期待は膨らむばかりだった。 その前には八合目御来迎場から山頂までの残る標高差300mを登らなくてはいけない。 標準所要でも1時間30分掛かるようだ。まだ山頂までの道程は長い。 4:46 八合目御来迎場出発 黒戸尾根の難所といえば、刃渡りや五合目〜七合目辺りが注目されがちだが、 八合目から山頂にかけても急坂の連続で、部分的にクサリや岩場が現れる。 山頂へ到達することを最優先にするために撮影頻度は抑えめにした。 撮影していないところは下りの時に埋め合わせする腹積もりだ。 |
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多くの高山植物が咲いている中、次第に山頂へ登り詰めていく | 5:28 あれが山頂かな |
ずっと難所が続くということでもなく、周囲の眺めを楽しめるところもあった。 急坂の連続ですぐに息が上がる。巨岩に囲まれた庭園のようなところで小休止を入れつつ登っていく。 |
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剣の突き立った巨岩を巻く | 上方中央のピークに祠らしきものが見える |
八合目御来迎場から山頂までの標高差300mはやっぱりしんどかった。 有名な剣の突き立った巨岩は基礎部を巻く形で通過した。 あそこへ登って剣を突き立てた先人はすごいというしかない。 周囲の山々の光景もすごいが、二本の剣に目が吸い寄せられる。 最後の最後まで急登が連続するが、ようやく肉眼でも祠が見えるところまで近づいてきた。 立ち休憩しながら地形図をよく見ると、甲斐駒は正確にいうと双耳峰のようだ。 |
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5:57 駒ヶ嶽神社本社(2,950m+ピーク) | 北沢峠からの登山道が合流してくる |
喘ぎつつ急坂を登り詰めると、山頂と殆ど同じ高さの2,950m+ピークに到着。 あまり広くないピークは祠や石碑などで埋め尽くされている。 2,950m+ピークを北から巻いて山頂とのコルに出ると、ここで北沢峠からのルートが合流する。 指導標には北沢峠まで下りで3時間とある。 このあと黒戸尾根を下りないといけない自分には、3時間で下山出来るということにすごく惹かれるが仕方がない。 |
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6:03 甲斐駒ヶ岳山頂(2,967m)到着! | |
北沢峠からのルートが合流すると、すぐに待望の甲斐駒ヶ岳山頂に辿り着いた! 昨日からの長い長い登りのおかげで、本当に最高の達成感だった。 広い甲斐駒山頂には予想外なことに自分一人だけしか居なかった! しかも空模様はというと、自分が山頂に到着してすぐに明るくなってきて快晴に♪ テントの中では雨を心配しながら出発準備をしていたのを忘れるようだった。 |
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よくここまで登ってきたものです… | 甲斐駒のでっかい一等三角点にタッチ |
急速に晴れ渡ってきて、背後の仙丈ヶ岳もきれいに見えてきた。 三角点の標高値は山頂より少しだけ低いが、2,967mとは祠の辺りだろうか。 |
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甲斐駒山頂から南アルプスの山々を見通す | |
見えている中で自分が登ったことがあるのは、まだ北岳と間ノ岳のみ。オヤジさんの印象の強い農鳥岳は見えていないようだ。 昨年夏に登った二峰を眺めると、今年もまた南アルプスに戻ってきたなと感慨深い。 使うかどうか分からないまま持ってきた望遠レンズの出番となった。 |
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北岳、間ノ岳が居並ぶ。まだ残雪が目立っている | 仙丈ヶ岳へは北沢峠から。ピストンではなくて背後の仙塩尾根へ縦走したいところだ |
鳳凰三山と富士山が重なって見える | オベリスクの地蔵岳の向こうに早くも雲が湧いてきていた |
眼下には摩利支天が控えるが、雲が湧くのが本当に早い! | 中央アルプスと御嶽。写真には入っていないが穂高まで何とか見えていた。 |
長大過ぎて全貌が見えない黒戸尾根を見下ろす。感慨に浸るだけならいいがこのあとあれを下りなければならない | 眺望絶佳だった甲斐駒山頂にまで雲が上がってくる |
山頂での滞在は約1時間になろうとする頃だったが、周囲には雲が本格的に湧きたってきていた。 快晴の下で全方位見渡すことが出来たのは正しく幸運だったかもしれない。 完全に雲に巻かれるまでそんなに時間は掛からないように思えた。 夢のような甲斐駒山頂でのひと時だったが、このあと尾白渓谷までの標高差2,200mの下りが控えている。 またいつかの登頂を期して、重い腰を上げて下山開始することにした。 ありがとう甲斐駒さん! |
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7:03 甲斐駒ヶ岳山頂出発。長大な下りの始まり | |
余裕があれば摩利支天にも立ち寄りたかったが、今にもガスに巻かれそうなのでまたの機会とした。 山頂から下っていると、続々と登山者(殆ど日帰り装備だった)が登られてくる。 日帰りだとすると自分のペースなら前の晩に登り始めないといけないくらいだが、 皆さん本当に健脚の方ばかりだった。 |
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八合目御来迎場までは激下りなので気を抜けない | 黒戸尾根を象徴する剣が突き刺さった巨岩 |
登りの時に撮影していなかったところを重点的に撮りながら下る。 剣が突き刺さった巨岩の上は歩かなくていいのだが、この巨岩の周辺もなかなか険しい岩場になっている。 |
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ハクサンイチゲ | ハクサンシャクナゲ |
八合目〜山頂の登山道で観られた高山植物も休憩がてら撮影。 下山後に調べてみましたが、名前が間違ってたらごめんなさい。 |
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連続するクサリ場を慎重に下っていく | 垂直に近い岩壁で高度感もそれなりにある |
8:03 八合目御来迎場(2,670m+) | 日が当たれば本当に白くて見とれてしまう |
山頂から約1時間で八合目御来迎場まで戻ってきた。 もう今にも雲に覆われそうだが、本来の白く輝く甲斐駒を少しでも見ることが出来た。 |
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森林限界を下回る直前、最後に甲斐駒を振り返る | |
8:41 キャンプ指定地(2,400m+)到着 | |
山頂から1時間40分で戻ってきた。 休む間もなくテントの撤収作業に取り掛かる。テントは殆ど乾いていたが、やはり虫が多くてとにかく落ち着いて作業出来ない。 昨日からテント内で何度も虫退治をしたので、テントをひっくり返して入念に清掃をしておく。 撤収作業中にも数人の登山者が山頂を目指して通過されていく。 黒戸尾根の人気ぶりを改めて納得出来る。 外れやすいテントの部品探しをしたりして、ちょっと余分に時間が掛かってしまった。 気合を入れて重装備を背負って下山再開。 9:33 キャンプ指定地出発 9:43 七丈小屋(2,360m+) 花谷さんに山頂でしっかり眺望を楽しめたことをお話ししてお別れした。 五合目小屋跡までは難所の下りとなるので、登りの時以上に慎重にいかなければならない。 10:31 五合目小屋跡(2,150m+) ここからは一旦、標高差約60mの登り返しがある。 疲れた脚には辛い登り返しだ。 11:15 刀利天狗(2,080m+) 11:40 刃渡り(1,960m+) ここから下はもう難所は無く、単に体力、脚力勝負となる。 八丁登りの辺りでは数人のテント泊装備の方々とすれ違う。 13:02 笹ノ平分岐点(1,470m) この辺りまで下りてくると、時折日も射して暑くなってきたので余計に疲れてしまう。 でも尾白渓谷までまだ700mほど下りなければいけない。 小休止するたびストレッチも行いつつ下りていくが、蚊がまとわりついてくるのでゆっくり休みづらい。 掻いた汗のほうが勝ってしまうのか、虫除けスプレーの効き目が弱くなっていた。 13:12 笹ノ平分岐点出発 |
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コアジサイに元気を分けてもらう | だいぶ下りてきた… |
笹ノ平を過ぎた頃からは、疲れがはっきりしてきた脚を労わりながらマイペースに下っていく。 コアジサイの群落を見たことで、里山に近い標高まで下りてきたことを感じられた。 尾根の上方を垣間見られる山腹道に差し掛かると、やはり標高の高いところにはべったりと雲が張り付いている。 考えてみればまだ7月上旬だが、充実したアルプス登山のために早めの梅雨明けを願うばかりだった。 黒戸尾根の背を下りきるところまでが長かった。 平らな山腹道に入り、次いで十二曲りへと下っていく。 待望の水音が聞こえてくると、遂に標高差2,200mの黒戸尾根の下りが終わったということで安堵感が広がる。 |
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14:45 吊り橋 | 尾白川渓谷 |
清流としても名高い尾白渓谷の水に触れたい気もあったが、川原まで登り降りするのも辛い状態だった。 明るい時間帯に初めて見た尾白渓谷は川原が本当に白くて、美しい甲斐駒山頂を連想してしまう。 |
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14:55 尾白渓谷駐車場(770m)到着! | |
最後に林道の緩い登りを終えると、ようやく登山口に辿り着いた! もう歩かなくてもよいということで、達成感もさることながら安堵感も大きかった。 朝7時に甲斐駒山頂を出発してから、テント撤収やパッキングも含めての数字ではあるが合計8時間の下りだった。 登りでは七丈小屋までで8時間だったことからすると、やはり下りはだいぶ早いがそれでも疲れ方は相当なものだった。 長大な下りといえば、笠ヶ岳のクリヤ谷で膝の靭帯を痛めた経験がある。 今回も負傷の経験を活かして丁寧な足運びと、難所以外でも集中力を切らさないことを意識した。 疲れ切っていたこともあって、ゆっくりと山装備を解いてから帰途へ就いた。 帰り道で八ヶ岳の麓を通ったが、どしゃ降りの夕立でもちろん山は見えず。 まだまだ大気の状態が不安定で、高所登山には油断ならない日が続きそうだ。 |
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〜 終わりに 〜 劔の早月尾根は登りだけの一方通行で終わったことで、今まで意識してなかっただけで実は楽をさせてもらったのだなと改めて気付きました。 標高差の大きな黒戸尾根のピストンは甘くはありませんでした。 もちろん得た達成感といえばかなりのもので、標高差の大きなアルプス登山においても良い経験をさせてもらったと思います。 また自分の場合は甲斐駒山頂で絶景を得られ、黒戸尾根ピストンの労苦はそれだけで報われました。 予報よりも雲が多かったし初日の宵のうちには大雨もあったので、山頂でも何も見えないのではと気を揉ませられた山行でした。 でもいつまでも忘れないだろう良い山行となりました。甲斐駒は何度でも再訪したい名峰中の名峰です。 |
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行程断面図です |