「三国岳から市原峠縦走」 10年11月 4日(木)


国土地理院地形図
 : 25000分の1 「大名草」、「丹波和田」
参考文献
 : 神戸新聞総合出版センター 【 ふるさと兵庫100山 】



 〜 はじめに 〜

 以前、笠形山と千ヶ峰、そしてまたに山には登ったことがあり、その時から
三国岳から笠形山に至る縦走路をいずれ歩いてみたいと思っていました。
 そしてこの山域の縦走でもう一つ問題になるのが、離れた登山口間の移動です。
縦走路の北半分に当たる千ヶ峰以北は、尾根に沿うようにバス路線があり、
シミュレートしたところ比較的容易に単独でも実行出来ると結論付けました。

 朝のうちにバスで移動し、下山したところに車があるというパターンがベターですが、
時刻表の都合で逆になりました。そして市原峠からは林道で安全に下山出来るという
こともあり、道の駅R427かみを出発地として、南向きに歩くことにしました。
道の駅から国道を挟んで、西側に登山者用の駐車場があるのでそこに駐車します。
 
 三国岳登山口 (総延長3,900m)

 鳥羽コース起点 (10合目)


 ← 頂上迄徒歩で約1時間40分
   これより約1,200m先迄車で行けます。

 この大きな案内板が国道脇にあるのですぐに分かりました。
ちなみに鳥羽は“とりま”と読むようです。











 6:43 道の駅R427かみ前の駐車場を出発する。(標高260m+)

 長丁場の行程に備えて、充分にウォーミングアップしてから出発する。
駐車場の南側は、森に囲まれた青玉神社があって厳かな雰囲気。
寄ってみたいが、今日は時間配分が重要になるのでまたの機会としたい。

 しばらくは車1台が通れるくらいの舗装路だが、まもなくダートロードに変わる。
ごく緩やかな登りで楽な滑り出しだ。




 6:57 林道が分岐する。右へ進む。(320m標高点が記されている)

 この分岐前に数台駐車可能のスペースがあり、案内板でも示されている。
三国岳近辺だけを歩くならば、ここまで車で乗り付けても良いかと思う。
またルート選定も「三国岳」を示す案内板もあるので迷うことはない。








 行程概要 (山中のルートは不正確です)



 三国岳から笠形山に至る長大な尾根には縦走路が整備されています。
問題は登山口間の移動手段ですが、ここでも六甲の便利さの有り難味が分かります。
国道427号を走る神姫バスを利用しますが、時刻表の事前確認は必須です。



 7:03 古い石標のある分岐

 駐車可能の分岐からすぐのところでまた新たな分岐が。
ここには歴史を感じさせる古い道標がある。かなり磨耗していて、よく目を凝らす必要があるが、
「右 あおくら」、「左 うめが坂」と刻まれている。
“あおくら”はやまあそさんによると目の神様の青倉神社を指しているとのこと。
青倉神社へはこの後三国峠をはじめとして、山また山を越える道程が控えている。
参詣するのも本当に大変だったと想像させてくれる。
“うめが坂”は、今日の行程でも通過することになる梅ヶ畑峠のことで、
縦走尾根の西側にある梅ヶ畑集落へと峠越えする人々が通ったのだろう。
今では大名草(おなざ)を経て国道429号が通じ、人々の往来が無くなった古道をこれから辿るわけである。




 7:18 林道終点。植林の暗い谷に沿う山道へ

 ここまで幅広の砂利道が続いていたが、ようやく普通の山道に変わった。
とはいうものの、暗い植林に覆われた谷沿いの、しかもやや荒れたトラックであまり歩いていて楽しい雰囲気ではない。
トラック自体はそこそこよく踏まれているようで、辿るのは比較的容易だ。
地形図では570m標高点が描かれている尾根の東を抉っている谷と思われる。








 7:42 谷から離れる

 長く感じた谷沿いの区間だったが、ここをもってようやく谷から離れる。
既に東側には尾根の稜線が見えており、谷もだいぶ上流に来ている様子が窺える。
なおここからも更に谷に沿う踏み跡が続いているが、作業用のものなのだろうか。








 7:48 初めて尾根へ出る

 谷から離れると程なく尾根に乗った。ここで5分程度小休止をとった。
ここからはこの尾根を辿るだけで三国峠に着くはずだ。もう標高差も100mほどで傾斜も緩そう。
尾根の上側は雑木林が見えており、楽しい尾根歩きになりそうだ。








 7:56 山寄上からのトラックと合流する

 尾根歩きを始めてまもなく山寄上から登ってくるトラックと合流する。
三国岳は比較的著名な山であり、要所要所の案内板は完備されている。
山寄上へのトラックを利用することで、三国岳にのみ登る場合でも、登り下りで変化を付けることが可能だ。
「兵庫100山」を読んでいて思うのは、単にその山だけならば物足りないプランがよく見受けられること。
三国峠の反対側の長野集落に下りると後が大変だし、結局今日のような縦走のついででないとなかなか三国岳には足が向かなかった。








 8:09 南に展望が開ける

 しばらく雑木林の尾根を登ってきたら、広く南側を見渡せる展望スポットに出てきた。
今日の登山口にあたる道の駅R427かみ周辺から、この後辿ることになる縦走尾根を見渡すことが出来る。
縦走尾根でここから見えている区間はほんの一部のはずであり、道程の長さを改めて感じさせられる。
偶然、前回と同じような趣旨の行程になったが、今回のほうが痩せ尾根で比較的ルートが明瞭ではあるが、
その代わりにアップダウンが激しいので、体力的には今回のほうがハードなことは間違いない。








 8:17 三国峠(710m)到着

 展望スポットからまた植林に戻ってしまうが、さほど歩かないうちに三国峠に到着。
ここは峠越えの古道と、そして縦走路が交差する山中の要衝だ。
林道開発のせいで潰された市原峠とは好対照に、古来の姿そのままの峠で味わい深い。

 南へ続く縦走路が気になるが、それは一先ず措いてまずは未踏の三国岳を目指す。
三国峠から三国岳へは標高差が140mほどあるが、ほぼずっと緩い尾根が続くので省略する手はないと思う。

 ここまで純朴な古道と三国峠を歩き、そして三国岳を目前にして盛り上がっていたのだが、
この後愕然とさせられる現状を目の当たりにすることになる。








 8:31 無残に切り開かれた三国岳に愕然とする

 三国峠から三国岳へと緩やかに続いている尾根は、途中で無残な姿に変わり果てていた。
この後知ることになるが、この山域では新たな林道が造成中という。
一旦は寸断される山道だが、引き続き林道に沿って残された部分を歩くことは出来る。

 「御手洗池跡」、「播磨の踊り場」

 以上のような案内板のある、山中では珍しく広い平らな地形を成しているところを通過。
しかしすぐ横では広く切り開かれた砂利道が通っており、気分は台無しである。
 そして砂利道は山頂の東側直下を抉って、更に北東へと伸びていた。
山頂のみ辛うじて原形を留めているようだが、これでは自分の感覚では三国岳は死んだも同然だ。
というわけで何ともいえない気分で三国岳山頂に到着することになった。








 8:39 三国岳山頂(855m)到着

 東側の直下は砂利道が通っているが、山頂に立つと死角になる。
おかげでこの光景だけを見ると、さすが兵庫100山と思わせる山頂である。
自然破壊の件は一旦措いて、三国岳山頂での滞在を楽しんでいこう。

 東側約90度の視界が開けているといった感じで全展望からは程遠いが、
それでも山間に見事な雲海が広がり、感動的な眺めではある。
丸太を利用したベンチまであって、普通ならいつまでも居たくなるところだが、
この後の行程を考慮して短めの滞在で出発しなければならない。
今日は時間的にあまり余裕が無いと考え、持ってきたかったオカリナも家に置いてきた。




 8:58 三国岳山頂出発

 山頂の風情と眺めは良いが、自分としてはもう三国岳に来ることはまず無いだろう。
この後は今日の本題である縦走が控えている。気分を変えて三国峠に駆け戻る。








 9:12 三国峠に戻ってくる

 三国峠から三国岳は比較的よく歩かれている区間と思われるが、
ここから南の縦走路は踏み跡がはっきりするほど使われていないはず。
と考え、これからしばらくの間の道中の様子を地形図を見て観察する。

 当面の目標である840m+ピーク「槍ヶ峰」に至るまで、
尾根は屈曲を繰り返し、等高線が閉じたピークが途中でなんと10箇所ある。
見ていてかなり忙しそうな区間だが、かなり特徴的な尾根なので、
現在位置を追うことは比較的容易なのではと考えた。

 なお、この区間については右記の案内図で概要が掴めるようになっている。
しかし設置から約10年経過し、山名等は読みづらくなっている。
この区間の尾根の山名については、整備された際に命名された愛称であるので、
標高に添えて「」付きで表記しようと思う。非常に有名な信州の山をモチーフにしている
ようだが、無名峰のままよりは遊び心があって良いのではないかと思う。
ちなみに自分にとって冬以外の信州は未知の世界のままである。




 三国峠からすぐのところで730m+ピークがあるが、
トラックは南側をトラバースしていきなり肩透かしを食った格好だ。
ここには愛称も付いていない。










 三国峠に設置されている、「千ヶ峰三国岳縦走路 表銀座コース案内図」

 「槍ヶ峰」に至るまでの詳細な絵地図が描かれている。

 手作り感のある極彩色のきれいな案内図なのだが、
やや退色と汚れが目立ってきているのが残念・・
 9:21 744mピーク付近 「一ノ峰」

 すぐ続いて横に翼を広げたような744mピークへ南側から登りにかかる。
ここからは当面の目標である840m+ピーク「槍ヶ峰」の秀麗な姿を初めて見ることが出来た。
まだまだ遠い・・。

 この後すぐトラックはピークを通過して、90度左(南西)に進路を変えて下りに掛かる。
縦走尾根には明瞭な踏み跡はあまり無いが、マーキングは豊富だし、絶えず読図していれば尾根を外すことはまずないと考える。








 9:37 750m+ピーク「二ノ峰・からさわ」

 やや西寄りに進路を変えつつ、40m前後のアップダウンをこなして750m+ピーク「二ノ峰・からさわ」に到着。
残念ながら展望は全く無し。設置されている案内板はかろうじて“からさわ”と読めるが、
そろそろ更新が必要かもしれない。

 ここで90度向きを変え、今度は南向きに下りにかかる。








 9:47 740m+ピーク「三ノ峰・がきだけ」

 すぐに西向きに進路を変え、殆ど標高差の無いまま740m+ピーク「三ノ峰・がきだけ」に到着。
ここも展望はなし。このピークを含めて、しばらく一直線上に似たようなミニピークが連なる区間となる。
こういうところは現在位置が分かりづらくなりやすいので要注意だ。
今日の行程としてはもちろん完全に現在位置を確認しながら歩くことを目標としている。

 更に尾根は小刻みにアップダウンを繰り返しながら、730m+ピーク「四ノ峰」、740m+ピーク「五ノ峰・北つばくろ」を続けて通過。
似たようなピークだったこともあり、先の行程の長さを考えて撮影は省略した。








 9:57 750mピーク「六ノ峰・つばくろ」

 しばらく東西に続いた尾根は750mピークに突き当たって、90度南へ向きを変える。
自分の持っている地形図(H15年版)では記載が無いが、真新しい三角点が設置されていた。
おかげでピークの正確な標高が判明した。今日の行程ではもう2箇所で同じケースがあり、
国土地理院の最新の情報を確認しておく必要性を痛感した。

 ここのピークも全く展望は無いが、こ広く切り払われていて、団体での小休止にも使えそう。
心地良い日差しが差し込むこともあって5分程度小休止する。








10:08 730m+ピーク「七ノ峰」

 20m前後のアップダウンを経て、730m+ピーク「七ノ峰」に到着。
ここは東西に広いピークで、トラックはその東端をかすめる形で通過する。
ピークの中心方向である西側にもテープがたくさんあり、梅ヶ畑方面へ下ることが出来るのだろうか。








10:12 梅ヶ畑峠(705m)

 730m+ピークから20mほど下ると、梅ヶ畑峠に到着。
朝イチで見かけた古い道標で“うめが坂”と書かれたほうを進むとここに上がってくるはずだ。

 峠には殆ど文字の消えかけた案内板がある。ある程度予備知識があるおかげで読めたのだが、
ここも設備の更新が必要になっている状態だ。
 峠の東側は等高線の詰まった急斜面だが、明瞭な山腹道が下っていっている。
一方、西側は緩斜面なのだが、目立つ踏み跡は見受けられなかった。
かつては峠越えの人々が行き交ったはずだが、今ではハイカー以外にここを訪れる人はまずいないのだろう。
まだ東側は登山ルートとして需要があるのかもしれないが、梅ヶ畑方面への道は自然に還りつつあるのかもしれない。

 しばし忘れられた感のある峠の雰囲気を味わい、南下を再開する。
ここからはやや西寄りに蛇行しながら、しばらく緩やかな登りが続く。








10:20 751mピーク「八ノ峰・おてんしょう」

 751m標高点が描かれている「八ノ峰・おてんしょう」に到着したと思われる。
多分合っているとは思うが、ここにあるはずの山名を記した案内板が無く確信が持てない。
ここも展望は無し。ピークで再び西寄りに向きを変える。
尾根の行く手には山肌が見えてきている。どうやら840m+ピーク「槍ヶ峰」が近づいてきたようだ。








10:28 740m+ピーク「九ノ峰・あかいわ」

 緩やかなアップダウンを経て740m+ピーク「九ノ峰・あかいわ」に到着。
周囲を観察したが、赤い岩があるわけではないようだ。
先のピークからしばらくは南西方向に真っ直ぐ進むのだが、このピークで尾根はクランク状に屈曲している。








10:35 「東かま尾根」

 740m+ピークからしばらく進むと、尾根が段々と痩せてくる。
ふと地面を見ると「東かま尾根」と書かれた案内板がある。
現在立っているところ、840m+ピーク「槍ヶ峰」から東に派生するこの尾根を指していると思われる。
しかし特に岩尾根でもなく、普通の尾根なのだが・・。

 「東かま尾根」の案内板を見てから、まもなく840m+ピーク「槍ヶ峰」の山腹に取り付く。
最初は苔むした岩が点在するきれいな山肌に目が奪われるが、登れば登るほど急になってくる。
そんな頃にマーキングは北へ誘導しようとする。
槍ヶ峰は東斜面は急だが、北側はやや緩くなるようだ。
なんとなくそういう意図は読み取ったのだが、直登出来そうとみてそのまま登り続ける。








10:51 非常に急な登り!!

 山頂直下ではご覧のような急斜面になった。ロープまで張られている。
北から登れば良かったと思ったほどの急斜面だった。
喘ぎながらようやくの思いで急斜面を登りきった。山頂は少し北側へ分け入ったところのようだ。








10:55 840m+ピーク「槍ヶ峰」到着

 急登の末に立った840m+ピーク「槍ヶ峰」からの景観は、これまでの苦労に充分見合うものだった。
これまで展望無しの尾根を経てきたから、余計にそう感じるのかもしれない。

 藪に囲まれているので座ると眺めを楽しめないが、腰を下ろして小休止する。
昼食を半分ほど食べながら、地形図をくまなく観察する。
三国峠を出発してからここまで約1時間40分かかっている。
そして2枚の地形図をつなげてみると、残る行程がまだまだ圧倒的に長いことに改めて驚いた。
このペースで進んでいたら時間が足りないのでは!
行程の最終目的地は西山バス停、そして17:38便のバス乗車を想定している。
これから先は少しいつもよりペースを上げる(撮影頻度を減らす)ことを考えなくては。




11:11 「槍ヶ峰」出発

 15分休憩してすっかり元気になってから出発。
せっかくここまで急坂を登ってきたけど、その分これから全て吐き出すことになる。
840m+ピーク「槍ヶ峰」の南に延びる尾根は緩い。明るくて歩き良い雑木林の中を下っていく。
これらの尾根の形状を見ると、“槍”と名は付いていても、東西から見るとさほど尖っていないように思われる。








11:19 807mピーク「中岳」

 緩やかに下っていく中で少しだけ登り返しがあった。
これが等高線が閉じている807mピーク「中岳」。
自分の持っている地形図では表記が無かったが、ここも新設の三角点があった模様。
不覚にも現地にてその存在に気付かず、帰宅後にこの山域の三角点の点の記を調べていて見落としたことが分かった。
どんな時でも常に観察を怠らないのが探偵の基本なのに失敗した。

 このピークを起点にして尾根はやや東寄りに向きを変える。








11:22 「南岳」を通過

 トラック沿いに「南岳」の案内板が目に入る。
しかし現地の等高線は閉じておらず、普通に尾根の途上としか感じない立地条件だ。

 尾根はこの後下りながら真南に進路を変える。
まもなく比較的目立つコルに降り立つはずだ。
ところで、840m+ピーク「槍ヶ峰」で展望を楽しめたが、その後も変わらず樹林の尾根が続く。
この尾根は歩いていて、ちょっと退屈な区間が長いなとは感じざるを得ない。










 690m+コルにある案内板



11:30 690m+コル

 840m+ピーク「槍ヶ峰」から続いた下りは690m+コルをもって終わる。
コルには縦走路上の各ポイントまでの所要時間が記されている。
三国峠や先程の槍ヶ峰は分かるものの、愛称をある程度把握しておかないと
どこがどこなのかが分からない。
 地形図では東西から破線が登ってきており、目立つ峠の風情が期待されるところだが、
両側を目を凝らしてみても、峠道の痕跡は残っていない。
もうすっかり自然に還ってしまったのだろうか。

 この後は小刻みにアップダウンを繰り返しながら、全般的には登り基調になる。
最初は南、ついで南東、再び南寄りにカーブを描いている。
この間も3箇所で等高線の閉じたピークがあるのだが、現地には特に何も表記が無く、
またペースを上げる必要からも省略した。いずれも展望は無いピークだった。








11:53 800m+ピーク東山腹

 次は800m+ピークへ登ると思い進んでいると、ピークの手前でトラバースして下りにかかった。
どうやらここのピークは立ち寄らずに南へ進むことが出来るようだ。
現地の案内板を見ていると、この上のピークが“北雄岳”なのだろうかと思い至った。
先へと急ぎたかったが、気になったまま放っておけない性質なので、寄り道することにした。
ピーク直下の斜面は少し荒れ気味だったが、もうそれ程遠くないようだ。








11:57 800m+ピーク「北雄岳」

 4分程度の寄り道で800m+ピーク「北雄岳」に到着。
展望は無いものの、南側の山塊が木々の向こうに透けて見える。
ここはこ広く平らになっており、遠めに見たら富士山風のけっこうきれいな山姿かもしれない。
ピークを確認後、再び道標のところへと立ち戻り南下を再開する。








12:03 790m+ピーク「涸沢山」

 800m+ピーク「北雄岳」のすぐ南側には、790m+ピーク「涸沢山」。
どこも同じようなピークばかりだが、名前が付いているだけで少しハクが付いた気がする。
南側にはこれから登らなくてはいけない「奥雄岳」がそびえているのが透けて見える。








「奥雄岳」への登り

 770m+コルを過ぎると、それ程長くはないがやや急な登り返しとなる。
始めにはこのようにロープも架けられている。
地形上では変化があって楽しい尾根のはずなのだが、どうも単調さが否めないのは植林が多いからだろうか。

 急坂が一段落すると、打って変わって緩やかな登りになる。
「奥雄岳」と名付けられたピークの周囲は比較的広がりのある地形になっているようだ。

 ふと左上方に明るい岩場が見えたので、吸い寄せられるようにそちらへと登っていくと・・








12:19 820m+付近の岩尾根

 そこは足場が悪くてちょっと怖いけど、大展望を楽しめる岩頭だった。
北には朝に登った三国岳。無残に切り開かれているのが遠めに見ると余計に目立っている。
まだ行程は中盤に差し掛かる頃だが、もうかなり遠くに見えていて早くも達成感を覚える。
三国岳の肩越しにはアンテナが目立つ粟鹿山もよく見える。

 ちなみにこの岩場の岩質はかなり脆く、向こうの岩棚まで行きたかったが安全のために断念した。








 南側には間近の「奥雄岳」から麓の清水集落、その向こうの山々までが一望の下である。
842mピーク「奥雄岳」まではあとひと登りのようだ。
ここで滞在していきたかったけど、もう少し先へ急いだほうがよいと思ったので短い時間で切り上げる。








12:26 842mピーク「奥雄岳」

 ごく狭いスペースながら三角点の周囲が整理されている842mピーク「奥雄岳」に到着。
周囲からはよく目立つピークのはずだが、展望は雑木に囲まれてもう一つ。
それでも北側には840m+ピーク「槍ヶ峰」がその鋭鋒ぶりを見せてくれる。

 ちなみに自分の地形図では、ここもまだ三角点の表記が無く、しかも標高も846mになっていた。
今回は地形図も刻々と変化しているのを教えられる行程となった。

 この842mピーク「奥雄岳」と、これから向かう850m+ピーク「西雄岳」の間が今日のハイライトとなる区間である。








またに山からよく見える鎌尾根「加美アルプス」

 以前、千ヶ峰からまたに山までを歩いた際、ここののこぎり状に見える尾根を遠望して歩きたいと思ったものだった。
しかし、期待は大き過ぎてはいけないということを予め調べていたので、落胆の度合いは小さい。
撮影場所では展望の良いところを選んでいるが、展望の岩尾根というわけではないので、
眺められるところで楽しむのがここのスタイルかと思う。

 展望箇所は限られているとは思うが、この景観は長い樹林の尾根でも縦走してくる価値は十二分にあると満足した。
行程後半の見どころである、またに山はまだまだ遠く谷の向こう。
正面にはミニピークを挟んでこれから登り返す850m+ピーク「西雄岳」
そして縦走尾根の最大の難所?である送電線鉄塔の建っているアップダウンも行く手に見えている。








点在する岩を乗り越えたり、巻いたり・・

 ここでボツにした分も含めて多く撮影し、周囲を眺めながら一度歩いただけの自分ではまだ把握しきれていない感がある。
トラックは巧みに岩尾根を安全に歩けるように付けられていると思う。
またに山からよく見える岩場全てを歩いているわけではないような感触だ。
この辺りがちょっと期待よりは物足りなくなる要因になっているのではないだろうか。

 岩尾根が一段落して、850m+ピーク「西雄岳」に近づく頃には緩やかな登りになる。
この辺りでは木々が疎らになり、これまでの行程前半に歩いた縦走尾根を広く見渡せるビュースポットになっていた。








850m+ピーク「西雄岳」付近から眺める縦走尾根

 なかなかに達成感を満たしてくれる眺めだった。広角レンズの助けもあるが、
始終向きを変えながらこれまで歩いてきた峰々が一望の下である。
「奥雄岳」の手前でスリルを味わった岩頭は死角になって見えない。
でもこうして見ると植林が目立つ山域だと改めて納得させられる。

 これらのピークを歩いても、まだ行程は半ばなのである。
とりあえず「西雄岳」のピークが目前なので早々に出発しよう。








13:10 850m+ピーク「西雄岳」到着

 850m+ピーク「西雄岳」には、オブジェを思わせる名木がそびえている。
「槍ヶ峰」から見た「西雄岳」には、尖ったものがあるなと思ったがこれだったようだ。
今日のピークの中でも、「西雄岳」の居心地はなかなかのものだ。
ここでザックを下ろして残りの昼食を食べることにする。

 ようやく行程の半ばまでは来たものの、地形図によるとこの後のアップダウンはちょっと気合が必要なことが分かる。
その後の行程後半も楽な道程ではないので、早めに出発することにしよう。




13:22 「西雄岳」出発








またに山へ向けて南下を再開

 またに山へ辿り着くには、目前のアップダウンをクリアしなければいけない。
「西雄岳」の南斜面は等高線が詰まっており、なかなかの難路を想像させる。
写真はまだその中でも緩いところで撮影している。
本当は難所の撮影もすべきだったが、先を急いでしまった。
それはそれはロープが連続する激下りだった。

 激下りが一段落すると、720m+コルを通過。
コルの周辺は比較的緩やかになっており一息つける。








13:38 740m+の送電線鉄塔基部

 720m+コルから少し登り返したところで、今日の行程で唯一となる送電線の下を通過する。
振り返ると「西雄岳」がなかなかの鋭鋒ぶりで見送ってくれている。
紅葉が始まっている東側と、季節感の無い西側とが好対照だ。
それにしてもよくぞ下れたと思ったほどの急斜面だった。








13:44 清水分岐

 送電線から頑張って登ってきて、傾斜が緩くなったところで清水分岐に差し掛かる。
この長い縦走路では貴重な存在のエスケープルートになる。
ここからショートカットする可能性も念頭に入れていたが、予定通りに縦走可能と計算した。








13:47 772mピーク

 清水分岐からまもなく772mピークを通過。
尾根が少し向きを変えた先には800m+ピークが近くに見えている。








13:53 790m+付近

 800m+ピークの東端の790m+地点を通過する。
立ち寄らなかったが、ここから西のピークへ誘うようにテープがたくさん見受けられる。
 
 この後一旦20mほど下ってまた登り返していくが、それほど急な区間が無いのが救いだろうか。
この辺りでは黄葉の木々も見受けられて、目にも楽しい尾根歩きとなった。








14:11 860m+付近

 緩やかな登りがしばらく続いた後、860m+ピーク(等高線は閉じていない模様)に到着。
「西雄岳」以来となる小休止を5分程度とる。

 ここの木の一つにはクマのものと思われるツメを研いだ痕が見受けられた。
もちろん2個の鈴を付けてかなり賑やかに歩いているが、改めてクマのテリトリーに居ることを実感させられる。








14:22 870m+ピーク

 緩やかな登りのまま、平らな870m+ピークに到着。
ここでマップケースの地形図を「丹波和田」に交換する。
ペースを上げたおかげで、またに山までだいぶ近づいてきたようだ。








14:32 850m+コル

 緩やかなアップダウンがしばらく続いたが、ここからはややまとまった登りとなる。
でもこの上がまたに山だと思うと、足取りが自然と軽くなるようだった。




14:40 920m+付近

 またに山頂上付近は比較的なだらかだが、平らな地形は特に北側に長く延びていた。
“Y”の字に広がっている地形の右側から乗り上げた模様。
緩やかになったトラックを歩いていると、すぐに右手からもう一方の尾根が合流してくる。この辺りが920m+。
そこからは南側に殆ど同じ高さで、またに山の平らなピークがもう見えていた。
約5年ぶりとなる、またに山にようやく到着となる。








14:44 またに山到着

 三国岳山頂から約5時間半の縦走を経て、遂にまたに山に到着。
歩いてきた“加美アルプス”、その向こうの三国岳を遠望して達成感に浸る。
この遠景撮影を想定していたので、特別に用意していた望遠レンズで切り取った。
“加美アルプス”は比較的近くに見えるが、尾根が蛇行するのと険しいアップダウンがあるためにかなり歩き応えがあった。

 またに山までは市原峠から簡単に来ることが出来るので、どなたかと今日初めてお会い出来るかと思ったが、
残念ながら市原峠に至るまで人影は全く無かった。








またに山山頂(928m)

 またに山は南北に広いピークであり、その中心部に三角点がある。
少し角が欠けているのが残念だが、やはり総石造りの三角点は貫禄があって好感が持てる。

 またに山以南は既に歩いたことがある区間。
しかも殆ど下り基調ということで、ふっと緊張感が抜けるようだった。
でも麓の町までの林道歩きも残しているのでそうゆっくりもしていられない。

 これから先は歩いたことがあるが、前回は地形図を参照していなかったので、
ここで改めて観察しておく。途中に2箇所、標高点が描かれている。
872mピークからは南東方向にも破線が描かれていることにも目を付けた。




15:03 またに山山頂出発

 このペースならば予定通りに17時台のバスに乗れるだろうと確信を持った。








千ヶ峰遠望

 歩き始めてすぐに千ヶ峰の秀麗な姿が目に飛び込んでくる。
これまでもチラチラと見えていたが、やはり目の当たりにすると登りたくなった。
でも今日は残念ながら時間的に不可能だ。
いずれは千ヶ峰も含めて笠形山までの南半分も縦走したいが、自転車等の手段が必要になると考えている。








15:17 872mピーク

 しばらく緩やかに下って872mピークに差し掛かる。
かなり前にやまあそさんがここから南東に下る尾根を歩かれたことがあり、
状況によってはこちらを下るほうが早いと考えていたのだが、
斜面を観察するも、最近は誰も足を踏み入れた形跡は無かった。
夕刻を前にしてのヤブ漕ぎは避けたいので、予定通りに市原峠からの長い林道を下ることにした。

 872mピークから市原峠は楽な下りであり、もうすっかり緊張感が解けた中を歩いていたが、
この後にとんでもない事態と遭遇することになる。








15:32 「無残な堀切」

 市原峠に着いたなと思って、林道に下りていく。
でも何か違和感があった。それでも薄れた記憶しかなかったので、ここが市原峠ではないと気付くまで数分かかった。
そう、またに山から市原峠の間の尾根が非情にも分断されているのだった。
新たな林道は今まさに造成中で、またに山方面へと向かっているように見えた。
行き先は分からないが、何のための道路なのか自分には理解できない。
国家の赤字額が900兆円を越えるのも納得出来る気がする光景だ。
それにしても朝イチの三国岳に続いて、思わぬ衝撃だった。

 分断されたために余計な登り下りが増えた。
それでも林道を通る気にはなれず、中ノ島のように残された尾根を市原峠まで辿って縦走を完成させる。








15:51 市原峠(760m+)

 市原峠の記憶が曖昧なため、峠西側にあるこの降り口を見つけるまでしばらく時間がかかった。
今度こそ間違いなく市原峠に到着だ。
予想外の状況の変化に翻弄され、余計に時間がかかってしまった。

 今日の行程では、三国峠、梅ヶ畑峠など情緒ある峠を経てきただけに、
この市原峠の現状はたいへん残念に思う。

 市原峠には乗用車が一台停まっていた。おそらく持ち主の方は千ヶ峰に登られていると思われた。
ここからほど近いところにあるだけに、千ヶ峰に立ち寄れないのは少し後ろ髪を引かれる思いになる。

 バスの時刻までもう2時間を切っているので、早々に市原峠を出発する。
あとは長いけど、舗装林道を下るだけとなる。最近はこのパターンが多いな。




 車なら早いのだが、歩くとやはり長かった。








16:47 市原登山口(280m+)

 林道が市原谷川に下ったところで、市原峠を目指す登山口を確認。
林道が市原峠に達するまでは、ここから多くの方が歩かれていたのだろう。
林道が開通した今では存在感が薄れてしまったが、兵庫登山会の案内板は健在だった。

 ここまで来ると市原の集落はもう遠くない。








17:15 神姫バス 西山バス停到着 (190m+)

 付近の住民の方に尋ねて、無事に西山バス停に到着。
バスが来るまで約20分くらい。市原峠周辺でちょっとアクシデントがあったが、ちょうど良いタイミングだった。
ちなみにバスは1時間に1本の割合(土・休日は減便される)でしかないので、到着するタイミングは非常に重要な問題になる。

 自宅へ下山メールを送信するなどしてバスが来るのを待つ。そのうちに暗くなってきた。
今日の行程は終盤が林道という好事情もあったが、理想を言えばもっと早い時間に下山すべきだと思う。




17:47頃 少し遅れて来た17:38便 鳥羽上行きバスに乗車

 乗客は殆ど学生達で、席の半ばまで埋まっている状態だった。
疲れた体にバスの揺れが心地良い。




18:00 鳥羽上バス停到着 (西山 → 鳥羽上 大人250円)

 終点の鳥羽上に降り立つ。今回の縦走の区間をバスで通過するとたった10分少々。
バス停の周囲はもう真っ暗だ。
この路線は山寄上行と鳥羽上行が来るが、自分が乗ったのは後者。
鳥羽上は、道の駅R427かみの一つ手前のバス停にあたる。
でも道の駅R427かみまではもう近いので問題ない。
ちなみに道の駅の最寄のバス停は「杉原紙研究所前」である。








18:05 道の駅R427かみ到着

 懐かしい道の駅R427かみに到着。
登山者用の駐車場は全く照明が無いので、車を道の駅の駐車場に移動させてから帰り支度をする。
標高260m余の山間の地はやはり冷え込む。用意していたコーラを飲んだが、それよりも暖かい紅茶が欲しかった。








 〜 終わりに 〜

 かなり距離が長い割りにはハイライトとなるところが少ない縦走でしたが、
それなりに変化に富み、大きな達成感を得ることが出来ました。
一度は歩いておきたいところでしたから大満足です。また来るかどうかは微妙なところですが・・。
それと山の姿を変えつつある林道工事の行く末が気がかりです。








行程断面図です




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