「禿の行者山」 2013年 4月28日(日)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「寺前」




 〜 はじめに 〜

 やまあそさんや、のあるきさんのレポを見て以前から知っていたのですが、
雪彦山の近くにある“禿の行者山”というユニークな名前の山に登ってきました。
前日歩いた裏明神と同じく、安定した登山道があるわけではありません。
今回は自分としては珍しく完全なピストンのプランで臨みました。

 大部分は展望皆無の尾根歩きで、しかも尾根の広がる麓付近はやや不明瞭。
最初は取付きにくいと感じましたが、山頂近くは素晴らしい大展望溢れる隠れた名山でした。

 夢やかたキャンプ場での前夜泊でしたが、5時起床のはずが結局7時まで寝てしまいました。
朝食から撤収、そして出発まで1時間20分で終了。2時間も掛かった1回目よりは短縮出来ました。
でも今度こそもう少し早く起きれればと思うのですが。




 佐中は雪彦温泉の少し奥にある山間の静かな集落。
清らかな川が流れていて、渓流釣りをされている方々も見受けられる。
道端で清掃中の地域の方に確認したうえで、路肩が広がったスペースに車を停める。





 行程概要 (山中のルートは不正確です)



 マーキングは散見されるものの、山麓付近はややルートが不明瞭です。
420m+ピークより上部は明確な尾根道になりますが、行者像周辺の岩壁の巻道はやや険しい箇所あり。

 9:07 出発準備を整えて登山開始

 朝に寝過ぎたおかげで、自分にしては遅い出発時間になってしまった。
今日は昨日以上にピーカンで気温も上がりそうだ。
夏ならば飛び込みたくなるようなきれいな川を渡って石段へ向かう。

 なお背後にそびえるのはこれから登る尾根の麓部分のみで、禿の行者山の大部分は全く見えていない。








妙見堂石段

 地形図にも記載されている長い石段が登山口にあたる。
鳥居横の墓地では地元の方々が清掃中で、ご挨拶を交わしてから登り始める。

 現在ある石段は大正時代に造られたもののようで、近年になって手すりが設けられている。
一直線に登っていき、見る間に佐中の集落を眺められるようになってくる。
とてものどかな雰囲気で、マイペースの自分にはすごく性に合う光景だ。








 9:16 石段を登り終える

 下から見れば長い石段も登り始めたら早い。
登り付いたところは尾根の末端に位置し、大歳神社、阿弥陀寺、そして妙見堂が仲良く並んでいる。
様々な神々が同居する光景はおおらかでとても良いものと思う。

 心地よい木漏れ日の広場で、念入りにウォーミングアップをしてから本格的な登りに備える。








 9:24 妙見堂左手より、背後の尾根へ踏み込む

 妙見堂を回り込むと、そこには殆ど手つかずのやや荒れた尾根が始まっている。
例にもれず時折マーキングが見受けられるが、歩きやすいところを選びつつ基本的に高いところへ登っていけば問題ない。








ヤブっぽい登り始め

 妙見堂周辺までは比較的尾根は明確だが、次第に広がっていき山腹を登る局面になる。
尾根の東側の日当たりの良いところは近年に間伐され若い木が植えられていて、
それらを縫うように登っていく。
 時には出っ張った枝等に行く手を遮られることもあるが、どうにかこうにか登っていける。
逆に日当たりの悪い植林部分は下草が少なくて歩きやすくなっている傾向にある。

 それに加えて傾斜がかなりきつく、この急坂は最初のミニピークに辿り着くまでの標高差約170mにわたって続く。
禿の行者山までのルートにおいて、この序盤の長い急坂が間違いなく最大の難関といえるだろう。
昨日の裏明神の疲れもあるので、あまりペースを上げずにじっくりと登っていく。








 9:57 420m+ピーク

 それでもピークに近づくにつれて、徐々に傾斜がようやく緩んで420m+ピークに到着。
そこはかつて林業で使われていたのだろうか、アンテナ施設のようなものがあった残骸が散らばっている。

 少しだけ進むと“大西”と書かれた石標が埋まっていた。
この辺りがピークの中心になっていて、この後に尾根はクランク状に曲がる。
今日の行程はピストンではあるが、あまり人の入っていない尾根であるので、
尾根の微細な変化に注意を払っておくと万全と思う。








10:07 440m+

 クランク状に曲がった後は約30mほどの緩やかな登り。
そして等高線は閉じていないがミニピーク状の440m+を経て、約30度の角度で左へ曲がる。








513mピークに至るまではほぼ一直線の緩やかな登り

 440m+を過ぎると両側が切れ落ちた痩せ尾根に早変わり。
これで全開に展望があれば高度感抜群だろう。
いつしか完全に自然林になり、雰囲気もがぜん良くなってくる。
禿の行者山は序盤のヤブっぽいのと激登りさえクリア出来れば、後はかなり楽しめそうな行程が続くようだ。









 513mピークが近づくにつれて幾分傾斜が増してくるが、序盤の長い登りに比べたら大したことはない。








10:27 513mピーク到着

 標高点表示のある明確な513mピークに到着。
ここで禿の行者山山頂まで約半分の行程をこなしたといえそうだ。
これまで断続的に登りが続いたので、とりあえずここで小休止をとっていく。

 明確なピークからは南東方向へ比較的目立つ支尾根が派生し、南山麓へ降り立つプランもあるようだ。

 ところでコンパスが新しくなったおかげで、より読図が楽しくなって休憩の合間も忙しい。
一方マップケースのほうはだいぶくたびれているが、テープで補修しながらギリギリまで使っている。

 なお513mピークから西方には、木々の間に雪彦山がよく見えていた。




10:38 513mピーク出発

 小休止を終えて出発。ピークを起点に尾根はやや北寄りに向きを変える。





 

 出発してまもなく予期していなかった激下りが現れてびっくりする。
改めて地形図を見ると、やはりたった20mくらいの標高差だった。
でも帰りにはちょっとだけ激登りになる局面だ。








大方は地形図通りにほぼ平坦な極楽尾根

 急坂は幸いにもごく一部。あとはしばらく楽な場面が続く。
ここは木々が疎らになっているが、残念ながら展望は開けない。








標高差約80mの比較的まとまった登り

 平坦な部分はあっという間に終わり、麓部分以外ではややまとまった登りが始まる。
それでも新緑の自然林で雰囲気も良く、調子よく登れてしまう。
5ヶ月間山歩きから遠ざかってはいても、昨日の行程でだいぶ調子は戻ったようだ。









11:07 まとまった登りの先には再び植林

 再び傾斜が緩むと、そこからはまた等高線が広がる区間だ。
ここはやや踏み跡が拡散傾向にあって、ちょっと進んでみたらヤブに行き当たってしまった。
少し先にあるはずの590m+ピークの西を巻くはずという先読みが裏目に出てしまった結果だった。
引きかえしてからより忠実に尾根を辿るようにすると、590m+ピークすぐ横を通過する本来のルートに戻ることが出来た。








禿の行者山へ向けて最後の登り

 いつものように平坦な区間はすぐに終わって、再び登りが始まった。
等高線で見るよりもけっこう斜度があるように感じる。
尾根の東側は特に切れ落ちていて、そこかしこから外界を眺められるようになってきた!
初めての展望の予感にワクワクしながら高度を稼いでいく。








11:23 行者像のある絶壁(610m+)

 登りつめたところは正真正銘の絶壁だった!!
遂に禿の行者山のハイライトの岩場に到着したようだ。
高度感抜群の崖上には行者像が静かに佇んでいて、修業の場としての特別な雰囲気を感じることが出来る。
ここは地形図上でもガケ表記のあるところで、三角点のある禿の行者山山頂まではあと少しのところだ。








行者像前から絶景を見渡す

 行者像の絶壁は一つ間違えたら確実に冥界へ旅立てるので、
高いところ好きの自分もちょっと緊張する。
広角レンズ特有の周辺部の歪みのために、自分撮りも腰が引けているように写っている。
余裕があればそれも計算に入れて前のめりの姿勢を取ることもあるが、ここではそこまでの余裕はなかった。

 大休止を取るのは山頂よりもここのほうが良さそうだ。
とりあえず山頂を踏んでおいて、ここは下山途中に休憩しようということで出発する。









絶壁に鎮座する行者像








正真正銘のナイフリッジ

 あとはすぐ近くにある禿の行者山の山頂へ向かうだけなのだが、
行者像の後ろには渡るのは不可能に見えるナイフリッジが行く手を阻む。

 ナイフリッジの北側に巻道があるはずなので、下方を見ようとしゃがみこんで様子を伺う。
すると張り出した木の根の間をすり抜けるようにして、巻道へ降りていけることに気付いた。
自然のジャングルジムのようで、ちょっとした難所だった。








城壁のようなナイフリッジ

 木の根の間を注意して下ると、明瞭な巻道に降り立つことが出来る。
ナイフリッジを下から見ると、西洋の城壁のようで本当に大迫力だ。








ヒカゲツツジも咲いている!!

 ナイフリッジの裾ではひっそりとヒカゲツツジも咲いていた!
何年か前に筱見四十八滝で見て以来で久しぶりの対面だ。
人の顔と同じく、なかなか花の名前も覚えられない自分にとって、ヒカゲツツジは数少ないものだ。








11:42 禿の行者山山頂を見据える

 ナイフリッジの裾を巻くとほどなく尾根上へと戻る。
そこからはもう禿の行者山山頂が目の前だ。
周囲からはよく目立つピークのようで、未踏の山頂への期待が高まる。








岩場を巻いて右手から山頂へ

 山頂直下まで来たところで岩壁が立ちはだかる。
どうにか登れそうな気もするが、よく見れば右手には巻道があるのでそちらを辿る。








11:50 禿の行者山山頂(649.9m)

 巻道から適当に歩きやすいところを登って山頂に到着。
前述の岩壁から始まる、イメージよりも細長いピークで三角点は最も奥まった一角にある。
三角点の周囲は数人立てば満員になるくらいの狭さだ。
 周囲は雑木に囲まれて展望は皆無だが、佐中からのタフな尾根登りをこなした達成感と共に静かな山頂で過ごす時間は悪くない。

山頂からも二方向に歩きやすそうな尾根が伸びており、続けて縦走してみたい踏破欲に駆られる。いずれ挑戦してみよう。




12:01 禿の行者山山頂出発

 人けの無い山頂を十分に堪能したので、とりあえず前述の行者像の絶壁まで引き返すことにした。








行者像が見ているのと同じ光景を眺めながら大休止

 本当にいつまでも眺めていたくなるところだった。
適当なタイミングで腰を上げて、佐中への下山を開始しよう。








佐中へ向けて下山中




13:32 妙見堂到着

 下りはやはり早かった。1時間超くらいで妙見堂まで戻ってきた。




13:45 駐車地到着

 帰りには雪彦温泉に立ち寄って、2日間の疲れを癒して帰宅しました。




 〜 終わりに 〜

 出発から下山まで誰にも会わず、本当に静かな単独行を堪能出来ました。
適度に荒れた尾根歩き、そして絶景が広がる絶壁と行者像まで、なかなか通好みの山と感じます。
周辺にはまだまだ歩けそうな尾根があるようで、今回のピストンを足掛かりに発展したプランを組めそうです。








行程断面図です




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