「雲たなびく三室山」 11年 7月 9日(土)


国土地理院地形図
 : 25000分の1 「西河内」
参考文献
 : 神戸新聞総合出版センター 【 ふるさと兵庫100山 】
 : 宍粟50名山




 〜 はじめに 〜

 早くも「梅雨明け」という、暑がりの自分にはあまり嬉しくないニュースが。
少しでも涼しく登れそうで、未踏の山はと考えたら三室山になりました。
 旧千種町北部の山域は完全に未知の世界であり、やまあそさん
のあるきさんのHPで予習をしておきました。








 自宅から約2時間弱で到着。10年以上前になるが、るり寺までは来たことがあり、
何となく見覚えのある道中だった。
 ちなみに当日の天気予報は「晴れ。午後からは所により雷」となっていた。
しかし朝から完全に曇りで見事に外れ。まあ涼しくていいし、それにもしかしたら
雲のおかげでドラマティックな景観になるかも・・。(何も見えない可能性もあるが)
と考えながら、一か八かという思いで三室山へ向かう。




 行程概要 (山中のルートは不正確です)



 兵庫県で第2位となる山なのですが、基本的にピストンの行程しか組めないのが
ウィークポイントです。でもそれを補っていると感じるほど味わい深いトラックだと思いました。




 6:31 野外活動センター跡出発

 かつては大規模なキャンプ施設のようだったが、今ではその跡形も無い。
広い駐車場に車を停めて出発する。ちなみに他に車は無く先行者は居ない模様。

 正面のなだらかな斜面に付けられた道、そして右手の車道(林道と表記するべきか)、
いずれでも三室山へ向かえるようだが、順当に後者の車道を選択した。

 駐車場の少し先で未舗装になり、また少し先で工事中のため諸車進入禁止となっていた。
工事区間を過ぎるとまた普通の未舗装路。途中からはやや荒れたゴーロ道となった。
結論から言えばやはり上記の広い駐車場に停めるのが無難だと思う。








 7:00 三室山登山口

 林道の終点であり、実質的な登山口といえるポイントに到着。ここからようやく山道となる。
2つの公設標柱の他に、これまで幾度となく加筆訂正されてきたらしい、山頂までの所要時間が書いてある施設案内板がある。
この様子を見るとどうやら90分で落ち着いたのだろうか。

 ちなみにこの左横にはかつて水利施設があったようだが、今は何も残っていない。
そして左手には林道っぽい道が伸びている。これもスタート地点に通じていると思われ、下山時に辿ってみようと思う。

 ここで5分程度小休止をとって出発する。

 先述の林道の時から並走していた沢に沿って登っていく。
沢から吹き付けてくる風は正に天然の冷房!体感的には20度くらいだったと感じる。
どこもかしこも節電による中途半端な空調で溢れている昨今、一番涼しいスポットは意外に山かもしれない。








意外に怖い丸太の橋

 トラックはまもなく左岸に渡るが、この丸太の橋はけっこうスリリングだった。
橋全体が斜めになっているし、また濡れていたり苔が生えていたりでたいへん滑りやすくなっている。
仮に沢に落ちたら自分は大丈夫でも、ザックに入れている交換レンズがまずダメになる。足の置き場にはけっこう気を遣った。








 7:15 沢を離れる

 しばらく涼しげな沢の空気に包まれて登ってきたが、ここで山腹へと登っていくようだ。
ちなみに写真では分かりにくいが、ここは沢の合流地点になっており、前後に水流がある。
靴の外側が濡れるような飛び石を伝って右岸へと渡っていく。

 この後一旦、沢から離れると思いきやしばらくは右岸を並走する。








 7:25 岩の祠!?

 沢沿いを歩いていると、左手の斜面に巨岩が見えてきた。
しかもよく見ると岩の下方にはぽっかりと穴が開いている。
中を見てみると今は特に何も残っていないが、かつては信仰の対象として祀られていた場であった雰囲気がある。
 同じようなところとしては六甲にも仙人窟があるが、こちらのほうが遥かに岩の大きさは勝っている。

 この祠前で数分程度小休止をとった。








 7:34 千種川支流河内川源流出合

 岩の祠から少し上で今度こそようやく沢から離れるようだ。
ここで分岐となっており、河内川源流を目指すことが出来るようだ。
普通ならば下山中にでも源流を目指すところだが、分岐から源流はかなり登ることを知っていたため行っていない。








 7:42 尾根に乗った

 しばらく山腹道を登ってきたところで、広くて平らな尾根に乗った。
今日の登山開始以後、初めて地図読み出来そうかなと思って見てみると、
どうやら標高1,020m付近を歩いているようだと見当を付けることが出来た。
でも三室山は高い山だからあと300m以上あるな。

 ちなみに朝からずっと曇りで、沢沿いを歩いてきたこともあって、暑さとは無縁の山行になっている。
やはりこの時期の曇りはありがたい。








 8:00 山頂まであと30分

 一旦尾根に乗ったものの、直登するわけではなく、負担の少ないジグザグ道になっていた。
それにしても三室山は植林が多いのがちょっと残念。
そんな時に現れたのが「山頂まで30分」の案内板。残りの所要時間が分かるのはちょっと嬉しい。

 梅雨明け直後だったこともあるかもしれないが、三室山のトラックは水気を多く含んで滑りやすいところが多かった。
登りの最中ですら、何度か滑りかけたので下山時にはかなり気をつけなければ・・。








 8:10 ロックガーデン

 今まで変化の少ない場面ばかり歩いてきたが、いきなり目の前に現れた巨岩群に圧倒される。
ここが“ロックガーデン”といわれているところだった。
荒涼としたイメージの強い六甲のロックガーデンと違って、こちらは空中庭園といっても良い雰囲気だ。
雨上がり直後のしっとりした空気のおかげで緑がとても美しい。お茶菓子があるともっと良かったかも。

 ロックガーデンはさほど広くはなさそうだったが、しばらくはその岩の間を歩いていく。








 8:24 ロープ場、鎖場へ

 ロックガーデンを過ぎると、今度はアスレチックゾーンだった。
距離は短いがちょっとした難所になっていて楽しめる。
ちなみに写真の斜面はロープに頼らなくても大丈夫そうだが、
スリップ用心のために持っている。




 このプチ難所の最中に再び例の案内板を確認。「山頂まで10分」となっていた。
もう山頂は間近のようだ。そしてミスティな写真からも推測できる通り、
山頂は視界ゼロという結果になったようだ。
またの機会に楽しみをとっておくことになったとポジティブに考えるように努めながら山頂を目指す。








 8:35 パラグライダー発進基地跡

 本当にここから飛び立ったのだろうかと思うくらい急斜面で、且つ狭いところだった。
本来ならばこれから飛び立つことになる景観が眼前に広がっているのだろうけど、今は完全に雲の中だ。

 山頂間近ということを知らせるような笹の間を抜けていく。
視界は無い代わりにたいへん涼しくて、じっとしていたら汗がひくどころか汗冷えしそうだ。
とりあえず山頂で涼んでいくことにしよう。








 8:40 三室山山頂(1,358m)到着

 分かっていたけど完全に雲の中の山頂に到着。
 三室山山頂は南北に細長い台地状の北端、一段高くなっているところにあった。
それほど広くはないけど、さすが県下第二位の高峰のピークに相応しい雰囲気を持っている。

 時計を見るとまだ9時にもなっていない。
時間はたっぷりとあるし、暑さは全くないしということで、天候回復を期待して長居していくことにする。
この時の体感気温は20度もなかったような気がする。まさに天然の冷蔵庫の中に居たよう。

 待っているうちに汗もどんどんひいてきた。一人っきりなので、久々にオカリナも吹いてみたりした。
久々だから高音域の指の使い方を思い出すのに、しばらく時間がかかった。








そして、段々と雲が切れ始め・・








三室山山頂からの景観

 まさに、なんということでしょう!
天佑を感じました。いつもはなんにも無いはずの自分が、今日はなんか「持ってる」と思いました。
三室山の思わぬ演出にもう大興奮です。




 まるで大河ドラマのオープニングのようにどんどん雲が流れていって、
周囲には大展望が広がってきた。朝から“目隠し”状態の中だったので、その感動もひとしおだった。
しかも、この季節においては珍しい空気の透明度。雨に洗われた直後だったのだろう。
どこまでもくっきりと見えるようだった。








南東の竹呂山へ至る尾根筋の山々、1,300m+ピークが目だって見える。そして西には自分は行ったことのない、ちくさ高原スキー場。

 南は台地状のピークに茂る木々のため唯一見通しは利かない。
竹呂山はやまあそさんがヤブを突破して縦走されているレポを見て知った。

 ちくさ高原スキー場は兵庫唯一のスノーボード禁止のスキー専用ゲレンデ。
自分は行ったことがないけど、見える斜面はなかなか面白そうな斜度だ。









 見えている山々は殆ど未踏であり、ただ感動するだけでなく、この山域もどんどん歩いていきたい気持ちにさせるに充分な景観だった。









 氷ノ山が意外に近く見えるのにも驚いた。
自分の中で氷ノ山と三室山の距離感覚が大いに修正されたのはいうまでもない。









 秋を思わせるような清々しい空模様と、涼しい風でいつまでも居たくなる山頂だった。
それでも本格的に日差しが当たり始めるとやはり今は夏なのだなと実感する。早く夏が終わらないかな。




 気付けば1時間以上、ドラマティックな展開の中での山頂滞在だった。
そろそろ下山を始めるとしよう。




 9:58 三室山山頂出発

 ピストンの行程での下りは気楽なのだが、今日はぬめったトラックに足をとられないよう細心の注意が必要だ。
ということでいつもよりは下山のペースが遅くなっている。








10:01 竹呂山への縦走路入口を発見

 登りの時には気付かなかったが、山頂の少し南で竹呂山へのルートと思われる入口を発見。
安易に入り込まないようとの配慮からか、入口は枝で塞がれている。
ここから見る限りは、笹ヤブは切り開かれて歩きやすいようだが・・。
また機会があれば歩いてみたい。








10:04 パラグライダー発進基地跡

 登りの際には全く見えなかった大展望が広がっていた。
バンジージャンプ経験済みの自分でもここから飛び出すのは怖いなと思う。

 ここからだと、山頂からは見えにくかった南側の山々が勢ぞろいだ。ぜひ登ってみたくなった。
その思いは早くも翌週に実現することになる。

 今日の天候のおかげで、ピストンでも本当に楽しい山行になった。
自分にとって三室山は特別に相性が良かったのかもしれない。








山頂から南東に派生する竹呂山への尾根

 うーん、踏破欲に駆られる景観だ。








10:19 ロープ場、鎖場を降りる

 概ね歩きやすい三室山へのトラックで唯一といえる難所を下る。








10:25 こじんまりとした展望の岩場

 登りでは同じく展望なしだった岩場。
雲の中だった登りの分まで楽しんで下山していっている感じだ。








10:37 ロックガーデン

 木漏れ日のあるロック・ガーデンは更に良い雰囲気だった。
三室山を登ると庭園鑑賞も同時に出来てしまう。








 尾根が平らになっているところを過ぎた辺りで男性4人パーティーとすれ違う。
依頼され記念写真を撮影して差し上げた。今日山中で他の方と出会った唯一の場面だった。




 登山道の基点まで戻ってきた。
ここより下の林道は2方向に分岐している。
登りのときに考えたように、下りはもう一方の西側を通ってみた。

 結果は、駐車場から三室山を見て右側の林道を辿るべき。(沢沿いを登る朝イチに歩いたほう)
西側を通るルートは概ね歩きやすい林道なのだが、一部で非常に急なところがあって余計に疲れてしまった。








11:45 野外活動センター跡到着

 すっかり夏空に変わったスタート地点に到着。
この付近の標高は723mだが、日なたに居ると本当に暑い!!
早く帰ってシャワーを浴びたい。

 ちなみに野外活動センター開設以前には、ここにスキー場があったという。
現状から推測すると、六甲山の人工スキー場と同じくらいだったのだろうか。
斜度も同等でごく緩い。初めてスキーを履くのには好条件の斜面に見える。
それにしても、昔は本当に雪が多かったのだなと、隔世の感を抱かせる。








   三室の滝来訪


 今日はこれで終わりではありません。
 野外活動センター跡から、少し下ったところにある三室の滝に立ち寄ります。
車道沿いに有り、また適当に広い駐車スペースもあるので、ハイカー以外にも気軽に来ることが出来ます。
というよりもハイカー以外のほうが多いような。自分が居た2、30分の間にも、子供連れのファミリー、そしてカップルと、続々と見物に訪れていました。
今の時期は避暑にももってこいでしょう。








 入口には鳥居が立っており、滝自体が神域になっている模様だ。
鳥居の奥には既に滝が見えている。
ちなみに先述の野外活動センター跡へ向かう車道沿いにあるので見落とすことはまず無いと思われる。








三室の滝(燗鍋滝)

 今まであちこちで滝を見てきたけど、三室の滝は本当にユニーク。
幅12.5m、落差15.1mと滝の規模はさほど大きくはないものの、滝つぼで跳ね返る水しぶきは思わず見入ってしまう。
あの水しぶきに当たってみたい気がするが、すごい水圧で飛ばされそうだ。
でも滝の周囲は本当に涼しく、山行で火照った体を冷やすには好適だ。

 ちなみに、三室の滝は2つの名前を持っているようで、地形図には“燗鍋滝”という難しいほうの名前が記載されている。

















 ユニークな滝だけに、撮影していても本当に楽しい滝だった。
いやー涼しかった。夏に来るには絶好のところだった。
でも車道に出ると現実に戻るのだけれど・・。








南山麓から見る三室山

 今日は楽しい山行をありがとう!




 帰路に宍粟市山崎町在住の山好きの親族のところに立ち寄って帰りました。
今日の三室山の山行、そして親族からの千種付近の情報提供のおかげで、
自分の目は「播磨の奥座敷」といえる、この山域に更に惹きつけられることとなりました。
暑いのはイヤですが、春の出だしの遅れを取り戻すためにも、もう少し頑張って山行に出掛けていきたいと思います。








行程断面図です




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