「原不動尊奥の院から植松山・カンカケ越周回」 2016年 6月11日(土)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「西河内」




 〜 はじめに 〜

 先月に竹呂山の南側を周回したことで、植松山からカンカケ越間の未踏の尾根を繋ぐ機は熟しました。
ピストンを避けて単独行でこの尾根を歩くために色々検討しましたが、「若桜から山便り」の山ボーイさんが辿った
行程をそのまま追ってみることにしました。

 周回は時計回り。前半、後半ともに尾根自体は複雑な地形ではないとみました。
但し植松山山頂北辺からカンカケ越へ向かう尾根に乗るところが、行程上最も要注意箇所となりそうです。

 今回も原不動尊奥の院手前の路肩に再び車を停めて周回開始です。
ちなみに予報は「晴れ時々曇り」でしたが、山の天気は別物で初めからどんよりとした曇りでした。
それでも高曇りなら良かったのですが・・。








 5:15 原不動尊奥の院付近、駐車地出発
 行程概要 


 5:19 原不動尊奥の院入口より階段を下る 植松山山頂付近のみ一般コース。植松〜ヒルガタワ間は荒尾山へ向かう主要な縦走路になっているので踏み跡、マーキング豊富。
それ以外は完全にバリエーションルートの範疇です。マーキングは途切れがち。地形図・コンパスによる読図、或いはGPSが必要です。

 今回は珍しくいきなり下りから始まる。
ボッカトレ(フル装備の8割方の重さで20kgくらい)も兼ねているので慎重に下っていく。








原不動尊奥の院

 原不動滝の奥にこのようなところがあったとは今まで全く知らなかった。
ここから見えないが、地形図によると原不動滝はこのすぐそばにある。

 下りてきた階段はここで終点になるので、付近を見渡すと上流側山腹に踏み跡があったので辿ってみる。








 5:26 八丈川渡渉、支尾根取付地点(500m+)

 すぐ下流側に原不動滝があるとは思えない細い流れの八丈川だった。
対岸には見上げるばかりの急な尾根。フリーハンドで挑み、歩きやすいところを登っていく。

 見る間に高度を上げて、明確で緩い尾根に達するとまもなく三角点「カンカケ」へ。








 5:46 三角点「カンカケ」(599m)到着   

 展望が得られるほどではないが、周囲が切り払われた三角点「カンカケ」。
地形図を見てもごく普通の尾根上にあって珍しいパターンの三角点だ。

 ここで数分程度、激登りで乱れた息を整える。




 5:53 三角点「カンカケ」出発








650m+付近。行く手には急な山肌が・・ 広大な山肌は次第に尾根の形状になってくる。序盤の大登りを終えるまであと一息。

 三角点からしばらくは緩やかな尾根が続くが、行く手には急な斜面が立ちはだかる。
最初の激登りよりは等高線の間隔が広いが、柔らかい地面で足場に乏しくて辛い登りとなった。
でも自然林が続いたのがせめてもの救いで、標高差150m余りをゆっくり稼いでいく。








 6:34 790m+にて大きな尾根に乗る

 何とか序盤の大登りを終えて、ヒルガタワへ続く大きな尾根に乗った!
植林の合間に植松山辺りの山塊が見えるが、やはりというか主稜線は雲の中にあるようだ。
この時点で今日は展望は諦めるしかなかったが、午前は雨の心配はないとみていた。

 ここで数分休憩を取ってから、南東の903mピークへ向けて歩き始める。








 7:01 820m+ピーク付近。この後辿っていく主稜線に向かう尾根が見える。

 尾根上は間伐されていて、所々から周囲の景観が垣間見える。
右手にはこの後辿っていく尾根が見えていて、903mピークまではほぼ道なり。
地形図のとおりになだらかな尾根が続くのだが、時折アセビや小枝が邪魔をしていて快適に歩ける状態ではなかった。
なおこの尾根上にはマーキングは殆ど見られなかったように思う。








 7:20 903mピーク

 地形図から思い描いていた以上に登った感が強く、整備された登山道の有難味を感じながら903mピークに到着。
地形図どおりに2、3人がやっと立てるくらいの狭いピークだった。
ここでルートの尾根はほぼ真南に進路を変える。








988mピーク付近にて読図中

 903mピークから988mピークにかけても地形図上は歩きやすそうな尾根が続くのだが、この辺りが最もヤブっぽくて難儀した。
時折枝が当たらない開けた空間に出るとほっとする。
次の目標は988mピークと思って歩いていたが、小刻みなアップダウンを経ているうちに現在位置の感覚が曖昧になってきた。








 8:15 980m+付近。主稜線への大登りが始まる尾根が見える。

 行く手に大きく登り始める尾根が見えてきたことで改めて読図。
コンパスで方向確認をすることによって、988mピークは過ぎたことが分かった。

 この後僅かに下ってから、いよいよ主稜線に向けて200mくらい標高を上げていかなくてはならない。








予想以上の急登が続く  一部だが岩尾根っぽくなっているところも 

 この辺りも植林が間伐され、これまで辿ってきた尾根を見通せた。
また足元には白い花がたくさん咲いていて、その間を珍しく明瞭な踏み跡が続いている。
そして標高が上がってきたことで、風が尾根を吹き抜けるようになって涼しくなった。
序盤よりもだいぶ調子が良くなってきたようで、ペースが自然に上がるようになってきた。








 8:44 1,083mピーク

 北側の斜面に支尾根を2本続けて見た辺りで1,083mピークに差し掛かったと思われる。
主稜線を前にして一旦傾斜が緩んでほっとするところだ。








ヒルガタワへ向けて最後の登りへ この辺りではブナもよく見かける 

 再び傾斜がきつくなってくるが、多くのブナに癒されながら最後の登りをこなすと・・








 9:10 1,171mピーク「ヒルガタワ」東端にて主稜線に乗り上げる

 原不動尊を出発してから約4時間掛かったが、ようやく主稜線に到達した!
乗り上げたのはヒルガタワの東端であり、以前に植松山から荒尾山へ縦走した記憶を基に南側を見るとやはりマーキングがある。

 本来ここから植松山までは通り過ぎるのが惜しいくらいの素晴らしい尾根歩きが楽しめるのだが、
今日は最小限の小休止以外はただただ先を急ぐのみとなった。








 9:20 1,160m+ピーク  

 天候が良ければ最高に居心地の良い1,160m+ピークから山上池にかけても黙々と通過。
但し吹いていた風は本当に気持ち良くて、掻いていた大汗が一旦は引いたくらい。
でもやはり暑くてもここは展望を楽しみながら歩きたかったが・・。




 寄らなくてもいいのだが、やはり行程の節目として植松山山頂は経由したい。
その途中、まばらに木が生えている「山上庭園」っぽいところを歩いていると、少し離れた北側にはマーキングが。
カンカケ越へ向かうのを意識していたら、自然に目に留まるようになっていたように感じるマーキングだった。
植松〜荒尾の縦走路を外す箇所はもう見当は付いたが、植松山から引き返す時についでに再確認しようと考えた。








 9:52 植松山山頂(1,191m)到着   

 今回の行程上、最高所の植松山山頂だが、もちろん展望は無し。
但しやや風が強いこともあってか、いつもよりはだいぶ虫が少なくて落ち着いて休憩出来た。

 出発から約5時間。最後の林道歩きを除いてまだ行程は半ば。
思ったよりも登りで時間が掛かったが、後半はアップダウンも比較的小さくて行程が捗るだろうか。




10:00 植松山山頂出発。一旦は荒尾山方面へ引き返す。








10:12 荒尾山へ向かう縦走路を捨てる

 いよいよ今日の行程において最も注意を要するポイントへ入っていく。
このゆったりした尾根はカンカケ越に向かう入口として以前から気になっていた。
ワクワク感と緊張感が半々といった心境で、周囲の見える範囲のどんな情報も見逃さないように最大限集中して歩く。

 紛らわしい支尾根を左手にやり過ごし、方向を確認しながら進む。
そして目標らしい支尾根が歩いている尾根からやや下方に見えたが、いきなりは下らずにもう少し道なりに進んでみる。
遂には地形図どおりに行く手に急斜面が始まったのを見届け、確信を持ってから引き返して前述の支尾根へと下っていく。







10:26 細い支尾根を見出して慎重に下っていく

 急斜面が始まるところから引き返すと、手前に他の尾根は無いので間違わないはず。
赤西山山頂付近で失敗した経験があったので、慎重に慎重を重ねてルートファインディングしたことが功を奏した。

 普通ならばこれから向かっていく先々のピークも目印にするところだが、今回の気象条件では手探りのように進むしかなかった。
今回のルートどりで間違うとしたら、植松山の谷コースのほうに引き込まれるパターンだろう。
最悪の場合は千種町岩野辺に下山することも念頭に入れていたが、一発で目当ての細い支尾根に乗れたことで杞憂に終わった。




 北寄りに曲がる支尾根、そして1,114mピークへ向けて広がりながら緩やかに登り始めた辺りで正解の尾根に乗ったことを改めて確信した。








10:43 1,114mピーク付近

 時には倒木を踏んで乗り越えたり、又は迂回しながらといった感じで辿っていくと1,114mピークを通過。
足元にはシダが広がるが、障害物でしかないアセビに比べると断然歩きやすくて助かる。








11:00 1,150m+ピーク北東端に乗り上げる

 1,114mピークから緩やかに登ってきて、細長い1,150m+ピークの北東端に到着。
カンカケ越へ続く尾根はここからやや東寄りに向きを変える。
植松山からここまでで1時間掛かっていたこともあって小休止をとった。
それでもカンカケ越まで続く後半の尾根をほぼ中間まで歩いたことになる。
やはり後半は下り方向で歩くこともあって、行程の進み具合が早いようだ。








久しぶりに快適な尾根歩きが続く

 1,150m+ピークから北隣の1,178mピークまでは痩せていて、下草が少ない歩きやすい尾根が続いて良かった。
植松山周辺よりは少し明るくなってきた感じもしてきて、出来れば展望が得られればと願いつつ先へ進む。








11:20 1,178mピーク

 なかなか居心地の良い1,178m標高点ピークに到着。
植松山からカンカケ越までの間で既に6割方は踏破したことになる。
ここでも改めて小休止をとって、今後に備えておく。








1,150m+ピーク通過

 1,178m標高点ピークから北に突き出た形の1,150m+ピークを通過。
すると写真では分かりにくいが、前方には次に向かう1,170m+ピークが透けて見えてきた!
1,170m+ピークは間近なのだが、この後で行程上唯一の大きな岩場を通過することになる。








尾根上に立ちはだかる大岩四連発が始まる この巨岩は千種町側を巻いていった

 一瞬、キレットのように見えたが、大岩同士は少し離れて点在していて歯抜け状態といえるかもしれない。
最初の巨岩は波賀町側を次は千種町側をというように巻いて通過していった。
予想外だったのはこの辺りから踏み跡が明瞭になってきて、大岩四連発は自分は踏み跡を追う格好で通過した。
ごく最近に先行の方が居られたようで、この踏み跡はカンカケ越に至るまでずっと先導していただく格好となった。

 大岩四連発の千種町側を辿っていくと、最も目立っていた踏み跡は1,170m+ピークを経ずに、続きの北西へ続く尾根へとトラバースに掛かるように見受けられた。
自分としては今回はピークを踏んでいきたい。そこで大岩の3つ目、4つ目の裾を辿るように、可能な限り尾根直上に沿うように北上した。








11:52 1,170m+ピーク

 何とか大岩四連発を乗り越え、地形図上で三角形の等高線が目立つ1,170m+ピークに到着した。
ところが狭いピーク上はアセビに占領され、自分は締め出される格好でその外側にて小休止。

 ここより先はカンカケ越に至るまで登り返しの無い長い下りとなる。
まずは前述の北西へ続く尾根を辿るが、この尾根も下草は少なく痩せていて比較的歩きやすそうだった。








謎のプラケースの中身は・・

 1,170m+ピーク出発直後、尾根上に点在する岩影には割れたプラケースがあった。
やまあそさんをはじめとして、先行の方々のレポでも登場していた有名な?プラケースだ。
長らく中身が気になっていたが、既に蓋が無くなっていて丸見え。ロマン?が無くなってしまって残念だった。
林業関係の方が置いていかれたものではないだろうか。








12:00 1,110m+の伐採地、今回は展望無し。

 謎だったプラケースを見届けると、間もなく千種町側が広く伐採されたところに差し掛かる。
好天でさえあれば千種町周辺の山々が多く見渡せそうな絶好の展望地だが、自分の場合は先の楽しみに置いておくこととなった。
但し若干標高を下げてきたからか雲が薄くなっており、下界を初めて見下ろすことが出来た。
またいずれ今度は好天の日を狙ってこの尾根は再訪してみたい。

 なおこの辺りから獣避けネットの残骸が尾根に沿うように続いていく。
足を引っ掛けないようにさえ注意すれば、周回のお供として良い目印になりそうだ。

 展望地を過ぎて植林帯に入ると、尾根は北寄りに向きを変えて下っていく。








初めてカンカケ越付近を見通す  千種町側が広く見渡せる疎らな植林帯 

 植林帯の下りが落ち着く頃には再び展望が広がってきて、今度は雲に遮られることなく尾根の行方を見通すことが出来た!
地形図と見比べてカンカケ越の位置の見当が付いた。長かった周回も遂に終わりが見えてきた。

 しかしこの後はルートどりにやや苦労する、アセビなどでヤブっぽい尾根が続くようになる。
ただ登りで歩いた尾根よりはこちらのほうが若干マシなように感じた。
更に前述の新しい踏み跡も途絶えることなく続いていた。
倒木を越えるところの小枝の折れ方からして明らかに人が付けたものと分かるところも。








12:33 1,010m+ピーク

 カンカケ越の手前では最後の目標だった1,010m+ピークに差し掛かった。
ピーク北端からは2方向に急な尾根が派生している。ここで方向を確認してから北西寄りの尾根へと下っていく。
写真では分かりにくいが、急な尾根上では明確な切り開きがあってルートは比較的辿りやすい。
前述の獣避けネットもルートに沿って続いている。








最後の最後まで気の抜けない激下りが続く。これは登りで歩くとかなり辛そうだ。

 下りは要注意なので、ポールは片づけたうえで慎重に下っていく。
この急な下りはカンカケ越の手前まで続いた。

 880m+の平らな尾根に降り立つと、踏み跡は波賀町側へと降りていく。
目の前には遂に林道が見えてきた!








12:50 無事にカンカケ越(878m)に降り立った! カンカケ越(878m)。千種町側の林道は崩壊したままのようだが・・。

 遂に長い未踏の尾根を歩ききってカンカケ越に到着した!
先月の波佐利〜赤谷周回時以上の達成感だった。

 林道を下る前にとりあえず展望地に立ち寄っていこう。








1,010m+ピークまでしか見えないが・・  展望さえあればこの涼しさは有難いが・・ 

 見える範囲内で周回してきた尾根を振り返った。
空模様次第ではもっと南まで見通せたかもしれないが、それでも1,010m+ピークからの最後の急坂が納得出来る光景だった。
後山周辺も植松山と同様の状況のようだ。梅雨の時期らしい天候で仕方がないが、雨さえ降らなければこれはこれで涼しくて良いのではとも思う。

 車に戻るまでの林道歩きは1時間は掛かる。ここで軽めの昼食休憩をとって足を休ませることにする。




13:03 カンカケ越出発

 林道からも時折見えてくる周回したばかりの尾根を見上げては余韻を楽しんだ。








14:01 原不動尊奥の院入口前、林道ゲート(550m)到着。周回完了。

 今回もちょうど1時間で林道を下った。
この日は林道ゲートの鎖がご覧の状況で、軽自動車ならば通過出来てしまうかも??
でも一般車両は進入禁止とされているので、強行突破はお薦めしないです。




14:05 駐車地到着








 〜 終わりに 〜

 なかなか厳しい気象条件と難路の上に、激登り激下り。そして集中力を要する読図とルートファインディング。
今回の周回は自分にとって、やや難易度が高く感じましたが本当に良い経験となりました。
またボッカトレにも手応えを感じた山行となりました。
梅雨時期らしいうっとおしい空模様ではありましたが、雨は全く降らなかったので上出来だったんではと思います。

 次の日もほぼ同様の天候でしたが、赤谷山でボッカトレを行っています。








行程断面図です




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