「大山・ユートピアコース」 2017年 6月 5日(月)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「伯耆大山」


 この山行に先立って、夏山登山道・行者コースにて初めて大山(弥山)へ登りました。
しかし、天気は良かったのですが、想像以上にPM2.5の霞がひどくて残念な展望となってしまいました。
そして階段ばかりの夏山登山道だけでは物足りなかったこともあって、ユートピアコースをも歩くことにしました。
2回目の大山では今度こそクリアな視界で、快心のリトライ山行となりました。

 ユートピアコースは公式には象ヶ鼻までとなっていますが、自分は天狗ヶ峰まで行けると判断しました。
無事に天狗ヶ峰には立てたのですが、尾根は登るにつれて痩せていく上に脆くなるので危険です。
この山行記録は安全に天狗ヶ峰へ到達出来ることを保証するものでは全くありません。





 今回は前夜に出発。鳥取道や下道を経て約4時間で南光河原駐車場に到着して車中泊しました。
周辺では同じく車中泊の車が数台停まっていました。








 4:30 起床

 約1ヶ月ぶりの車中泊だったが熟睡出来た。スキーシーズンより断然寝やすかった。
周辺でも同様に出発準備をされていたり、早朝に到着する車も数台あった。








 行程概要  ※ 象ヶ鼻の先より通行禁止。天狗ヶ峰直下は脆い痩せ尾根で危険です。

 地理院地図(電子国土Web) 新しいウィンドゥが開きます。


 5:13 南光河原駐車場(770m+)出発   

 予め用意していた登山届をポストに投函して出発する。
早朝の程好い冷え込みの中、今回は大山寺方面へと向かう。
駐車場付近から見える大山の稜線は全く霞まずに美しかった!

 この時、ほぼ同じ時刻で出発されたご夫婦が居られたが、宝珠尾根の途中まで前後しながら歩くことになる。








大山寺に突き当たるまで登っていく   

 この時間でも既に数人の登山者が自分の前後に歩いているが、やはり夏山登山道よりは少なそうだ。








 5:21 大山寺前を左折。大神山神社奥宮の参道へ入る  大山寺には入らない 

 大山寺には入らず、大神山神社奥宮方面へと進む。
参道の石畳は雨も降っていないのに意外によく滑るので注意。

 参道に入ってまもなく、先週立ち寄った寂静山への分岐に差し掛かる。
寂静山や豪円山に寄っていなければすぐに大山寺旅館街に着いていたと改めて分かった。








金門分岐を一旦見送る   

 金門へは帰りに立ち寄ろうと思い一旦は通過した。
しかし暫くして下りではここを通らないことに気付き、少し上流側の踏み跡から河原へ降りてみた。








 5:40 金門(840m+)   

 上流側から金門に辿り着いた。
こんな壮観な峡谷風景が大山寺のすぐそばにあったのはすごい。

 一方、大山の側を見てみると、谷の奥で朝日を浴びる北壁が素晴らしい。
今日の山行への期待はますます高まるばかりだった。




 金門から参道へ戻ると間もなく大神山神社奥宮へ到着する。







 5:53 行者登山口・大神山神社奥宮(890m+)   

 境内にはトイレもあって小休止にも良いところだ。
ここでご夫婦をはじめ数人の登山者を見送りつつ、一息入れてから行者登山口を出発する。








 6:00 二俣(910m+)   

 殆ど平坦な登山道をしばらく進むと二俣に差し掛かる。
ここで先週は下ってきた行者コースと別れを告げ、下宝珠越へ向かうルートへ入る。

 行者コースに比べると、俄然ワイルドで面白そうなルートだ。
下宝珠越までは細い谷筋に付けられた登山道を登っていくが、初めは緩やかで歩きやすい。








 6:10 治山工事用作業道と交差する(970m+)   

 二俣からあまり登っていないうちに、元谷付近まで続く治山工事用の作業道と交差する。
ここにはユートピアコースでの注意喚起の案内板があるが、二俣に置いてたほうが良かったのではないだろうか。

 作業道を見送ってからはこれまでより傾斜が増していき、木の根を掴んで登っていくところもあった。
急坂は下宝珠越に乗り上げるまで続いた。








 6:35 下宝珠越(1,130m+)到着   

 大いに息が上がった頃にようやく下宝珠越に到着。
思っていたよりも狭いコルだった。
宝珠尾根に出た途端に涼しい風が吹き抜けてほっと一息つける。

 ここで日焼け止めを塗ったりしながら、急坂で乱れた息を整えておく。




 6:43 下宝珠越出発

 ようやくここから待望の宝珠尾根を辿って行く。








ブナ原生林が壮観な宝珠尾根  タニウツギ 

 下宝珠越から歩き始めた宝珠尾根は一面ブナ原生林に覆われている。
またタニウツギをはじめとして道中では多くの花を見かけた。

 ごく一部を除いては、緩やかな登りがしばらく続いた。
そしてまもなく宝珠尾根の進行方向には、三鈷峰のピークが見え隠れしてくる。








 7:08 1,240m+ピーク到着   

 一旦、先行されていたご夫婦と入れ替わって狭い1,240m+ピークに到着。
目指す三鈷峰が急崖をこちらに見せて高くそびえていて、思わず見とれてしまう!
せっかく好展望なので、ここで小休止を入れていくことにした。




 7:15 1,240m+ピーク出発

 ご夫婦は少し先でお花の写真を撮られていたので、再び自分が先行する形に。
ユートピアコースは評判どおりに花をたくさん見られるコースだった。








行く手に立ちはだかるように見える1,330m+ピーク   

 これまで比較的緩やかな登りが続いてきた宝珠尾根だが、この後は険しくなってきそうだ。
でもまずその前に一旦は中宝珠越へ向けて下りとなる。








 7:22 中宝珠越(1,200m+)   

 下宝珠越と同様に狭いコルになっている中宝珠越に降り立つ。道標がやたら高いところにある。
ここでは元谷方面へと下っていたルートの痕跡が見られるが、今は下降困難になっているようだ。
かつての大山は今よりも多くのルートを歩くことが出来ていたようだ。








中宝珠越を過ぎると登りが連続するようになる   

 ここでも元谷側の山腹が崩壊し、外界を見渡すことが出来るようになっている。
前回の分を取り返すように、今回は遠景までシャープに見えていることに安堵する。

 そしてこの先でルンゼ状の足場の悪い急な岩場を登ると、ようやく北壁を広く見渡せるようになってくる。








前回は霞んでいたからこそ、より感動させられた大山北壁の威容   7:44 1,330m+ピーク 

 宝珠尾根の登りも後半となり、距離を詰めてきたところで眺められる北壁はまた格別だった!
しかも前回感じたとおり、順光で眺められるユートピアコースからの北壁展望は更に美しい。

 日陰の多い西側斜面をしばらく登っていくと、日当たりの良い1,330m+ピークに到達。
ここからしばらくは緩やかな尾根歩きとなった。








前方には上宝珠越への登路、そして先行者の姿も見えた  この辺りは緩やかな尾根になるので、北壁の展望を楽しむゆとりも持てる








一部では崩壊地の際も通過する  ほぼ真横から見る北壁

 上宝珠越へは再び急坂の連続となる。
大きな岩を越えたり、写真のように崩壊地の上を通過するところもある。
ここは足の置き場には注意が必要ではあるが、辿ってきた宝珠尾根を振り返ることの出来る格好の展望スポットだ。








 8:08 上宝珠越(1,400m+)到着   

 再びの急坂を経て上宝珠越到着。
中宝珠越の手前からあまり休んでいなかったので、ここで小休止を入れていく。
宝珠尾根はここで大山に吸収されていくので、ルートはここより山腹道となって東側の主稜線上にあるユートピア避難小屋付近へ伸びていく。

 なお、ここから分岐する砂すべりを経由して下山するパターンもあるが、ここは表示に従って利用しない。
砂すべりでは落石などの危険性もあるうえに、下りでは宝珠山に立ち寄りたいという思惑もあった。




 8:13 上宝珠越出発








山腹道ではガレ場も通過する   

 豪雨時などに涸れ沢の石が流されると荒れてしまいそうなところだが、現状ではルートも安定していた。
ここまでは緩やかだが、この先の小さな尾根を越える際には急な岩場の登りとなる。








小尾根を越えると狭い岩棚をへつっていく ヤマシャクヤク 

 山腹道に入っても退屈するところは無かった。
そして前方の主稜線上には、ユートピア避難小屋が次第にはっきり見えてくる。

 山腹道の途中で一輪だけですごく目立っていた白く大きな花があった。
牡丹のように大きな花で、花に疎い自分でもすぐに気付いた。下山後に調べてみたらヤマシャクヤクというらしい。

 次々と登山道上に横たわる木の根を越えていくようになると、いよいよ主稜線が近づいてくる。








 8:31 三鈷峰分岐(1,490m+)   

 山腹道で緩やかに主稜線に乗り上げると、前方には三鈷峰が富士山のように突き出ている。
三鈷峰は見る角度によって大きく姿を変える山だった。

 分岐から三鈷峰までは小さなアップダウンを残すのみであって近い。
早く三鈷峰に到達したい思いでいっぱいになって先を急ぐ。








すれ違いの難しい細い踏み分け道を辿る  手前に前鋭鋒を従えた姿で迫ってくる三鈷峰 

 まだ春の新緑を残した緑溢れる稜線を澄んだ空気の中で歩けて最高だった!
背後に浮かぶ低い雲のおかげで、いつになく標高の高い山に居るように感じられる。

 三鈷峰の手前には宝珠尾根を歩いている時から見えていた先行者が最後の登りに掛かっていた。








三鈷峰直前は痩せ尾根とガレ場が続く   

 これまでのたおやかな緑溢れる尾根から一転、宝珠尾根から見えていた荒々しい部分が見えてくる。
ルートはよく踏まれてはいるが、スリップと浮石には注意して先へ進む。

 痩せ尾根を通過すると、三鈷峰直下は荒れたガレ場となる。
やや頼りなげにロープが掛かっているところにルートを求めて登っていく。
ガレ場の登りを巻くような山腹の踏跡もあるが、少し先で行き詰るよう。








 8:48 三鈷峰山頂(1,516m)到着  大きなケルンの立つ三鈷峰山頂 

 先行者の方に出迎えられる形で遂に三鈷峰山頂に到着!
山頂は正しく全方位の大展望が広がり、期待以上に素晴らしいところだった。
前回はソフト効果を掛けて観ていた大山だったが、今日は本来の美しい姿を魅せてくれている。

 先行者の方はまもなく出発され、三鈷峰山頂は貸し切り状態になった。








三鈷峰山頂より海側の絶景  東側には多くの山々が連なっている。ぜひ縦走してみたいが・・ 

 鳥取県西部から島根県東部にかけて、余すところなく見渡すことが出来た。
前回は霞んで思うように楽しめなかったが、独立峰の大山からの展望はやはり感動的だった!

 東側には縦走欲を掻き立てられる、素晴らしい山岳風景が広がっていた。
持ってきていた「山と高原地図/大山・蒜山高原(2012年版)」を観ながら山座同定を行う。
出来れば歩いてみたいけど、しばらくは来れなさそうなのが残念だ。

 三鈷峰の標高は殆ど氷ノ山と同じでも、海側の景観は単独峰に近い形になるので数値以上の高さに思える。




 9:08 三鈷峰山頂出発

 山頂滞在20分をもって三鈷峰を出発することにした。
立ち去り難い素晴らしい山頂なのは言うまでもないが、この後の行程が今日の核心となるのであまり長居は出来ない。








三鈷峰直下の急坂を慎重に下っていく   

 三鈷峰から見ると、目指す天狗ヶ峰はまだまだ先。
まずは三鈷峰周辺のガレ場と痩せ尾根を慎重に通過する。

 すぐ前方の痩せ尾根には途中で追い抜く形となったご夫婦が居られる。
このあとで再会して、その場で撮影している花の名前を聞いたらコイワカガミと教えていただいた。
自分の頭の中ではイワウチワとごっちゃになっていたが、もう忘れないで覚えておきたい。

 ご夫婦とはこのあとに象ヶ鼻でまた再会することとなる。




 象ヶ鼻方面へ尾根を引き返していると、数人の単独の方とすれ違う。
平日ではあってもユートピアコースはやはり人気のようだ。




 9:20 三鈷峰分岐








三鈷峰分岐を過ぎるとユートピア避難小屋へはすぐ  東側の尾根上のトンガリがやはり気になる… 

 分岐からユートピア避難小屋へは緩やかな登りが続く。
大山へ向かって大きく右カーブを描く尾根を歩くのは本当にここはユートピアと思えるほど至福の時間だった。

 一方、東側の尾根を観ると特徴のある尖塔のようなピークがあるが、あれが親指ピークだろうか。




 9:26 ユートピア避難小屋(1,500m+)

 しっかりした造りの避難小屋で、悪天時の避難はもちろんのこと、シュラフを持ち込んで宿泊も出来そう。
登ってきた登山者によく見えるよう、壁には大きく「縦走禁止」と案内板が掲げられている。
まあもともと普通に縦走出来るようなら、もうとっくに大山に来ていただろう。
自分の持っている山と高原地図には、“2000年秋の地震により、ルート各所で崩落”と書かれている。
自然の摂理とはいえ、今更ながらこの時の地震が恨めしく思えてしまう。








 9:31 振子山分岐(1,540m+)   

 振子山方面から登ってくる登山道と合流。
機会があればあちらのほうを縦走したいが、ここから観る限りでは森歩きの区間が長そうだ。

 振子山分岐を過ぎると岩が積み重なっており、大きな段差を乗り越えていく。








 9:34 象ヶ鼻(1,550m) 象ヶ鼻より眺める日本海側の絶景 

 岩が折り重なる巨岩帯はすぐに終わってなだらかになる。
山名標も何もないけどここが象ヶ鼻とみて間違いないだろう。
大展望に恵まれているうえに座りやすそうな岩が点在していて、ここで昼食にすれば最高だろう。

 目指す天狗ヶ峰はここよりほぼ南西に向けて真っ直ぐ尾根通しに登っていく。

 少し先の傾斜が出てきたところで【縦走禁止】の案内板が登山道を塞いでいるが、自分は天狗ヶ峰までのピストンということで登っていく。
登山道は引き続いて明瞭で歩きやすい。








ザレた砂交じりの尾根を登っていく 1,636m標高点ピークの少し手前 

 引き続いてほぼ緩やかで歩きやすい登りが続く。かなり上方では三鈷峰で出会った単独行の方が先行中。

 まもなく平らでザックを余裕で下ろせるところに出てくる。
1,636m標高点ピークの少し下のところで、ここまでで象ヶ鼻〜天狗ヶ峰間のほぼ7割は歩いている。
上方には天狗ヶ峰がかなり近づいてきている。残す標高差はあと100m。意外なほど順調に来ていた。








段々と痩せ尾根になってくる  

 巻いて通過したのか1,636mピークはいつしか過ぎていた。
この辺りで尾根南側が岩ザレの急斜面になってくる。でもこの辺りはまだ両脚で普通に歩ける幅はある。




 天狗ヶ峰に近づくにつれて、更に傾斜が増してくるうえに尾根も更に痩せてくる。
一部では尾根上に小さな穴が空いていて、飛び越したところもあった。
更に砂交じりのザレた急坂もあって、登りはもちろんのこと下りは細心の注意が必要なところもあった。

 安全に通過するためにこれほど集中して歩いたことは今まであったかなという感じだった。
本当に集中している時には撮影する気にならず、ただ下り通過時のことをシミュレーションしながら登り詰めていった。








10:07 天狗ヶ峰山頂(1,710m)到着  遂にはっきり見えた剣ヶ峰。安全にあそこに立てる日は来るのだろうか 

 どうにか登り終えると遂に西方正面に剣ヶ峰が目に飛び込んできた!
写真には写っていないが、先述の先行の方は剣ヶ峰に到達されていた。
その後は東側に戻ってこられなかったので、おそらく弥山まで縦走されたものと思われる。

 剣ヶ峰山頂の記念碑がはっきり見えている距離までやってきたことに感動しつつも、このあと象ヶ鼻に下りるまでは緊張感を解くことが出来ない。

 なおGPSを観て気付いたが、今立っているところは天狗ヶ峰の最高地点ではなかった。
写真にも写っているすぐ前方の目測で2mくらい高いところが最高地点だろう。

 しかしその最高地点直前の尾根の痩せ具合を見て足が止まってしまった。
両脚を揃える幅もなさそうだし、岩や石はただそこに乗っているだけのように見える。
これ以上、身を危険に晒してはいけないと自重した。
 大山を縦走されている山行記録をヤマレコなどで事前に参照してきたが、
自分の技量と精神力ではここが限界と判断。
予定どおりにここをもって反転し、象ヶ鼻まで引き返すことにする。

 なお今居るところは天狗ヶ峰山頂の1,710m等高線には入っているので、予定どおりに天狗ヶ峰まで到達したと見なして良いと思う。









※ 現地にて用意されている所定の登山届に記載されている地図には、
天狗ヶ峰〜弥山は縦走禁止区間と書かれています。
 但し象ヶ鼻と天狗ヶ峰間も“×”(危険)表示があるので、ここまで登ってくることも安全とは言い切れません。
実際に歩いてみて納得しました。
 そして丹念に同じ地図を観ていて、剣ヶ峰の西側の×だけがやや大きく書かれていることに気付きました。
ここが最も難関の「ラクダの背」を意味しているのかもしれません。
これまで歩いてきた尾根を振り返る  南側には槍ヶ峰へ伸びる痩せ尾根が続く。こちらも観るからに危なそう。遠くの尖がりは烏ヶ山 

 難路の尾根をどうにか登ってきただけに絶景の度合いが更に増したというよりも、
象ヶ鼻まで下り終えるまでは素直に絶景を楽しむ気にはなれなかったというのが正しいかもしれない。

 南側にはこちらもナイフリッジの槍尾根が伸びている。こちらももちろん初めて目にする壮大な光景だ。
尾根歩きが好きな自分としては普通なら間違いなく槍ヶ峰まで行きたいところだが、こちらも迷わずに自重した。








消えかけた天狗ヶ峰の文字が崩落の続く大山の現状を物語っている   

 せっかく辿り着いた天狗ヶ峰なので、記念写真も撮影して出来る限り山頂での滞在を楽しんでいく。
自分が滞在中には誰も来られず、天狗ヶ峰でも貸切の山頂だった。




10:20 天狗ヶ峰山頂出発

 下り始める前にしっかりストレッチを行い、再び集中力を高めてスタートした。
難所を無事に下りるまでは三脚もザックに収納し、時には後ろ向きに三点支持も行いながら下った。








難所を下り終えた頃に差し掛かる振子沢源頭部。まだ残雪が見られる   

 天狗ヶ峰から下るにつれて危険度が低下していく。
振子沢源頭部まで下りてくると、再び撮影する余裕が出てきた。

 自分が下っている時にも数人の登り中の方とすれ違う。
自分が思っていた以上に大山の稜線を歩いている方は多いと感じた。




10:50 象ヶ鼻到着

 慎重に降りたことと撮影も行ったので、登りとあまり変わらない所要時間で下りてきた。
象ヶ鼻では先述の花目的のご夫婦が昼食を摂られていた。

 登ってきたばかりの天狗ヶ峰を見やりつつ、自分も岩に腰掛けて大休止をとった。




11:06 象ヶ鼻出発

 なおも寛がれているご夫婦に挨拶して下山開始。
ピストンの下り中でも三鈷峰の展望がやはり素晴らしく、小まめに撮影しながら下っていく。




11:16 三鈷峰分岐

 尾根を外してからはややペースを上げて下りに掛かる。
昼前近くになってきたが、ユートピアコースは続々と登山者が登ってきていた。




11:30 上宝珠越







宝珠尾根の向こうに平らな宝珠山が見えるがまだまだ遠い  途中に何箇所か急坂があるので下りは特に慎重に

 ピストンではあるが宝珠尾根は変化に富んでいるので退屈はしなかった。

 時折振り返ってみると、大山の稜線にはガスが掛かっていた。
やはり山は早発早着が至上命題だと改めて認識する。




12:05 中宝珠越

 倒木の丸太に腰掛けて5分ほど足を休めていく。








ブナの森に心癒される   

 絶景ながら危険な稜線歩きのあとに、ブナの森まで下りてきて何だか安堵させられる。
尾根がゆったりしてくると下宝珠越が近い。




12:30 下宝珠越

 宝珠山に着いてから休もうと、宝珠尾根を更に北へと進む。








下宝珠越以北はややヤブっぽくなる   

 下宝珠越までと比べて一気にマイナー感を増したようだ。但し踏み跡自体は明瞭でヤブを漕ぐようなところはない。
宝珠山までの登り返しは約50mの緩やかな登りだ。








12:40 宝珠山山頂(1,183m)到着   

 平らな地形の南西端にある宝珠山山頂に到着。
山頂は深い森に覆われて展望は無いが、シルエットの大山が木々の向こうに浮かび上がる。

 今日の行程で最後の名のあるピークでもあり、ザックを下ろしてゆっくりしていくことにする。




12:48 宝珠山山頂出発

 山頂からは平らな山頂を北東に進むヤブっぽい踏み跡もあるが、中の原へ向かう明瞭なほうを下っていく。








宝珠山から下る尾根もブナが密生している  13:03 大山ホワイトリゾート・中の原エリア最上部(1,030m+)到着

 宝珠山を過ぎても明瞭な踏み跡で歩きやすい。そして最後までブナを楽しみながら下っていける。
スキー場に飛び出す直前だけはちょっとヤブっぽくなるが、踏み跡は最後まで明瞭だった。



 尾根から飛び出したところは中の原エリア最上部のリフト降り場。
滑るほどに扇状に広がるゲレンデの光景を楽しみながら5分ほど小休止をとる。

 ふと携帯を開いてみると、1時間ほど前に心配性の母から安否確認のメールが来ていたので直ちに返しておく。








絶景が広がる中の原のゲレンデを下っていく  けっこう滑りごたえというか歩き応えがあった中の原エリア 

 大山にはスキーで来たことはないが、なかなか良さそうなゲレンデだ。
滑り始めは中斜面、後半は緩斜面。空いていれば大回りが気持ち良いだろう。




 中の原の斜面を歩き終えると、そのまま豪円山北斜面ののろし台跡へ向かう。
のろし台跡へは舗装された遊歩道が伸びていて、普段着の観光客の方々も訪れていた。
 豪円山山頂は前回立っているので今回は割愛する。








13:33 豪円山のろし台跡(830m+)到着   

 霞んでいた前回は立ち寄っていなかったのろし台跡に到着。
期待どおりの大山の雄姿を楽しむことが出来た!

 期せずして2回に分けて登った大山だったが、行程終盤まで心ゆくまで眺めることが出来た。
昼頃には一旦は稜線を覆っていた雲は取れつつあるようだった。








三鈷峰にスポットが当たる  大山北壁の絶景。夏山登山道の尾根の植生の変わり具合も面白い 

 夏山登山道、ユートピアコースと歩いたが、やはり大山は素晴らしかった!
「日本百名山」でも触れられているとおり、中国地方においてはずば抜けた存在感を誇る名山だと納得出来る。




13:48 のろし台跡出発

 15分くらい大山の絶景を堪能していた。
蒸し暑かった前回と違って、豪円山には爽やかな風が吹いていた。

 そろそろと重い腰を上げて出発。あとは南光河原駐車場へと戻るだけだ。








13:53 源盛坂遊歩道入口(800m+)  13:57 アクセスリフト乗り場(760m+) 

 アクセスリフトの脇から始まる遊歩道を降りていく。
単調な階段道ではあったが、車道を歩くよりは遥かに良い。








大山寺旅館街をのんびり駐車場へ。このあと入浴する豪円湯院の前を一旦通り過ぎる  立地条件が素晴らしいモンベル大山店を通り過ぎると南光河原駐車場へ

 大山北壁が垣間見える旅館街の中を散策気分で駐車場へ戻る。
豪円湯院の向かいには足湯もある。

 モンベル大山店がつい立ち寄りたくなるところにあるが、衝動買いを防ぐためにも
自分は必要なものがない限りは登山用品店には行かないようにしている。








14:13 南光河原駐車場(770m+)到着   

 ちょうど所要9時間をもって到着。
忘れずに下山届を提出して、色んな意味で充実した山行を終える。




 山行装備を解いた後は、すぐさま豪円湯院に直行して汗を流していく。
充実した山行の後だけに温泉も最高だった♪




 帰路は大山環状道路を通った。
この道は約20年前の友人達とのドライブ旅行以来で何となく覚えていて懐かしい思いで運転した。








西側の桝水高原より見上げる大山  紅葉の名所である鍵掛峠より大山南壁。まさしくナイフリッジだった稜線を思い浮かべる








鍵掛峠の東側から観る烏ヶ山。今回の大山山行で知った名峰でいずれ登ってみたい 最後に烏ヶ山遠望。大山環状道路をほぼ半周した格好となった




 大山環状道路を半周してから倉吉、鳥取経由で帰途に就く。
往路に続いて鳥取自動車道(鳥取〜平福間は無料)経由で帰ったが、鳥取までの国道では随所で渋滞していた。
結果としては前回のように津山経由で運転した場合と所要時間は殆ど変わらなかった。








 〜 終わりに 〜

 登山を始めてから12年経っているにも関わらず、縦走出来ないということで大山に行っていませんでした。
 でもいつまでもほっておけないということで大山での山行を思い立ちましたが、
結果的に2回続けて足を運ぶことになりました。

 前回は霞のためにやや消化不良でしたが、今回のユートピアコースでの山行を通じて完璧にリトライ出来ました。
宝珠尾根、三鈷峰は期待どおりに楽しく、素晴らしいものがありました。
夏山登山道は階段の連続でしたが、ユートピアコースは変化に富んでいて大満足です!

 天狗ヶ峰への痩せ尾根の通過はやはり危険と思いました。
劔の別山尾根や穂高の大キレットなどもリスクはありますが、大山の稜線のリスクは性格が違うと感じます。
次にもしユートピアコースを再訪することがあれば、天狗ヶ峰までは行かないでしょう。
天狗ヶ峰まで行ってから言うのもなんですが、アナウンスどおりに象ヶ鼻までで引き返すべきと納得した山行でした。
いつの日か剣ヶ峰が公式にも解禁される日が来ることを祈りつつ、大山での山行をひとまず締めたいと思います。








行程断面図です




BACK

inserted by FC2 system