「比良山系横断V」 平〜びわ湖バレイ〜志賀  08年5月27日(火)

国土地理院地形図:25000分の1「花脊」、「比良山」、 
昭文社・山と高原地図45「比良山系・武奈ヶ岳」、 
山と渓谷社「比良山・湖西の山」をご参照ください。


 自分にしては珍しく休みと天気のタイミングが良く、2週連続で比良へ行くことに。
前回坂下から小女郎ヶ池経由で栗原まで歩いたが、予想以上に霞がひどくて消化不良気味だった草原の尾根歩きのリトライである。
今回のルートは一部重複はあるものの、もちろん前回より大幅にアレンジしている。

 当日、天気の良いことは分かっていたが、見通しの良し悪しまでは分からない。色々な気象条件を想定して、近場の六甲へ向かうプランも用意していた。
4時30分に起きて窓を開けるときれいな朝焼け。この瞬間に比良へ向かうことを決定。六甲は次回へお預けに。








※ 今回のレポでは多数の南比良の風景写真を掲載しています。これから同ルートを初めて歩かれる方には
楽しみの度合いを損ねてしまう可能性があると思われますので、該当の方は閲覧される場合はご注意下さい。








 今日こそはきれいな五月晴れ。鴨川の流れもより鮮やかに見える。
今回で比良は3回目。阪急河原町、京阪四条の乗り換えも大分慣れてきた。

 今日の好天に誘われてか、出町柳駅前のバス停には既に10人以上の行列が出来ていた。今回も何とか空いている席に座れたという状態。
もう少しバスの出発時刻に対して余裕をもって到着したいが、これ以上早く到着するには京都に前夜泊でもしない限りは不可能だからしょうがない。

 このレポを記述している6月現在、ガソリン価格は遂に170円を突破した。
先日新聞で読んだが、神戸市バスが燃料価格の急騰のために走らせるほど赤字が膨らんでいく状態になっているという。
坂の多い神戸の街ではエコドライブも思うように効果を上げないのも一因という。
誰もが周知のとおり、現代社会は石油を消費することによって成り立っているのだが、その根本が揺らいできているのを実感する。
更に原油の価格は上昇を続けているので、7月には180円に到達することも充分考えられる。バス会社もたいへんだろうなと京都バスを見て考えていた。

 しかし、この状態でもなお暫定税率をかけて、しかも官僚達のタクシー通勤を許容して(政治家が知らなかったでは済まない筈)平然としていられる
自公政権は国民との距離の遠さを感じずにはいられない。少し前に「たかが(暫定税率の)25円で・・・」と自民の大物が言っていたことが全てを象徴している。

 ちなみに自分の車には120円で給油したガソリンがまだ残っている。無くなってももう給油したくない、というのが切実な気持ちだが・・。
次は電気自動車にシフトするのが自分の希望である。この期に及んでガソリンを使う車を買いたくない。




7:45 出町柳駅前出発

 京都バス10系統朽木学校前行きに乗車して出発。町から離れるにつれて、鮮やかな青空と緑が目立ってきて、もう早く歩きたくてしょうがない気持ちになる。








8:33 平バス停到着 (450m+)

 約50分の乗車時間で、今日の出発地である平に到着。平は(だいら)と濁って読むようだ。
下車した人は自分を含めて3人。身支度を整えながら、少し時間差を設けてバス停を出発する。

 平バス停からは国道367号(鯖街道)を花折峠方面へ向けて南へ向かう。そこそこの交通量がある国道だ。










 平バス停から花折峠方面へ歩くと緩やかな登りになっていて、山間部に広がる平の集落を見渡すことが出来る。
まさに日本の原風景ともいうべき光景であると思う。先週の坂下も、そして坊村も、安曇川沿いは美しいところばかりだと実感する。












 
葛川坂下町 花折峠道入り口

権現山(アラキ峠経由) 1.8km
(旧鯖街道)花折峠    1.1km
・・・
葛川明王院       7.85km
・・・
・・・
8:44 花折峠道入口

 しばらく緩やかに登っていくと、国道の東側から旧道が分岐する。これまでよりはやや急にはなるが、それでもきついというほどでもない登りである。
入り口からすぐのところで車止めの措置がされていて、車は進入することが出来ないようになっている。
入り口脇には半ば草に埋もれた状態の案内板が設置されていて、現在旧道を利用するのはハイカーのみになっていることが窺える。
今日の行程序盤の目的地である権現山までは1.8km。距離からするとさほど遠くはないようだ。








8:58 花折峠旧道登山口 (530m+)

 しばらく舗装された旧道を登っていくと、アラキ峠、権現山を示す案内板が。ここが実質的な登山口となる。
ここでウォーミングアップしてからいよいよ山道へ入る。

 登山口のすぐ前には低い堰堤があって、トラックは堰堤の右岸から越える。山と高原地図「比良山系」によると、この小さな谷はドン谷という。
しばらくはこのドン谷の右岸に沿ってごく緩い傾斜を登っていく。ドン谷は脇から見る限りでは遡行対象となるような沢ではないようだ。


 登り始めてまもなく北側の山肌に取り付いて、ドン谷から一旦離れる。








 山肌に取り付いてから、すぐに上方に尾根筋が見えてくる。
そしてまもなく尾根に乗りそうだと思ったら、そこから尾根に平行する山腹道となって緩やかな登りが続く。出だしはサカ谷道そっくりでデジャヴを感じる。
ただ、サカ谷道よりはこちらのほうが踏まれ方が弱いように見えるし、そして見受けられるゴミも殆ど無い。(良いことだ)
道標は要所にはあるようだが、小女郎ヶ池へダイレクトに通じるサカ谷道よりはマイナーなのかもしれない。








9:16 ドン谷の源頭部

 山腹道をしばらく登っていくと、南側の足下からドン谷がどんどん近づいてきて、ここを最後に谷の形状は無くなる。
ここからはそこそこの斜度の山肌を直登していく。周囲は登山口から相変わらず植林が続いて少々単調である。








 次第に高くなっていく日差しに向かって、薄暗い植林の中を登っていく。








 山肌をしばらく登り続けると、ようやく自然林が見えてくるようになってきた。
この辺りから下草も目立つようになり、森も明るくなってくる。そしてそこそこ登ってきたかなと思った頃・・・







9:33 アラキ峠 (760m+)

 登山口から30分程度でアラキ峠に到着。平バス停からちょうど1時間で、これは偶然「山と高原地図」記載の公称の所要時間と一致する。
峠は空が広く開けて日差しが降り注いで、非常に明るい雰囲気。日差しは強いがけっこう強く乾いた風が吹いていて、思ったより暑さはない。

 アラキ峠は四つ辻となっていて、そのまま権現山へ向かうなら北側へ、折立山は南側へ。
そして正面に道なりに続くトラックはズコノバン(権現山と霊仙山の間にある分岐。08年5月22日レポ 比良山系横断Uをご参照下さい)へ向かうと思われる。
山と渓谷社「比良山・湖西の山」によると、アラキ峠からズコノバンへ直行する山腹道は廃道状態とあるが、峠付近だけを見る限りでは実に明瞭な状態である。

 このまま権現山へ直行したい気もあるが、往復たった30分だから折立山へ寄り道することにした。
一応コンパスで確認してから南の山肌に取り付く。折立山を示す案内板は全く無い。
アラキ峠出発直後は踏み跡が拡散していたようだが、しばらく登ると明瞭な踏み跡とマーキングも見受けられるようになる。








 折立山への登りは短いながらもけっこう急斜面。でも登るに従って徐々に緩やかになって、山頂に近づくにつれて殆ど平坦になった。
地形図の通りにけっこう広い山頂のようだ。下る時に惑わないように周囲の状況を確認しつつピークへ。








9:42 折立山山頂到着(819m)

 アラキ峠から10分も掛からずに折立山山頂に到着。ガイドブックでは「スギ山」と表現されていたが、登り始めからずっと自然林だったような。
そして展望皆無ながらもはっきりここがピークと分かる整った形の山頂である。自然林のために雰囲気もなかなか良い。
ピークから南もごく緩い尾根が続き、普通に歩いていけそうに見えるが、この尾根は途中(という地名)まで達している長大な尾根である。

 平バス停から殆ど休まずにここまで登ってきたので、木陰が気持ち良い山頂で小休止をとる。
なお、折立山には公設の案内板は無く、手製の小さな山名板が2つぶら下がっている。




9:50 折立山山頂出発

 一息入れてから再び登ってきたトラックをアラキ峠に向けて引き返す。
山頂は裾がけっこう広がっているので、登りながら時折振り返って確認していたのは正解だった。








 折立山山頂から少し下ったところからは、登りの時には気付かなかったが権現山を木々の向こう高くに見上げることが出来た。
まだまだけっこう登るなあと思って見上げたが、その標高差は約200m。アラキ峠からの登りもそう時間はかからないかもしれない。

 前回、霊仙山から眺めた権現山は霞んでいたが、今日は緑がとても鮮やかで目にも優しい。

 アラキ峠に近づくにつれてけっこう急な下りとなる。殆どカニ歩き状態で下った。普通に歩ける斜度ではない。

 カニつながりで思い出したが、最近若年層を中心に「蟹工船」が売れているという。
まず間違いなく自分が読んでも共感すると思われるが、自分の場合は読む時間すら捻出するのは難しい。
自分も含めて感じているが着実に若年層の間には厳然たる「格差」と「低賃金労働」が広がっていると思う。
この鬱積する不満と不安を解消するのは政治の仕事だと思うが、放置しているのが現状だろう。




9:57 アラキ峠

 当然、登りよりも早くアラキ峠に到着。今度は向かいの権現山の山肌に取り付く。こちらのほうは一転して植林の中の登りとなる。
峠からしばらく登るとまもなく一つの尾根に乗って、権現山へ向けての本格的な登りとなる。








 再び植林の中の登りとはなるが、周囲の景観が時折ちらちらと見えるようになる。
先程まで居た折立山が早くも見下ろせるようになってきた。単調ながらも登っていてけっこう楽しい区間だった。








10:29 今日初めての展望が開ける

 植林が途切れ自然林が始まったと思ったら、不意に南側に窓が開いて今日初めての景観が開けた。
正面には出町柳駅前から自分が乗ったバスが走ってきた鯖街道沿いのルートを見下ろすことが出来る。
山々の向こうにはうっすらと京都の街が広く見える。








 景観を眺めるついでに小休止も済ませて、残り少なくなった筈の権現山へ向けての登りを再開する。
伸びやかな笹原が広がって、山頂が近いことが伝わってくる。

 そして傾斜も緩くなったところが・・・








10:43 権現山山頂(996m)

 平バス停から約2時間10分で権現山山頂に到着。その瞬間、初めて見る感動的な景観が目に飛び込んできた!
つい数日前にもここに立ったのだが、このような景観が霞によって隠されていたのか。武奈ヶ岳からの景観も素晴らしかったが、
琵琶湖をより近くにダイレクトに眺められる南比良からの景観もまた違った魅力がある。

 ここから先はずっと大展望の中を歩けるのは分かっているが、その最南端の地であるということで重点的に撮影したので
やや長居することとなった。やっぱり展望の山は空気の澄んだ日に来ると最高だった。権現山山頂到着をもってリトライは成功を確信した。








     
 数日前に歩いた霊仙山が一層鮮やかに見下ろせる。その向こうには大津方面までうっすらと見える。
そして前回の行程の終着点である和邇駅がはっきりと見えた。その近くの湖岸の風光明媚さもまた格別。
 前回の霞のおかげで、正に「一粒で二度美味しい」状態の権現山山頂だった。この感覚は小女郎峠まで続くのだろう。

 権現山からの展望を楽しんでいる間に、自分を追う形で平方面から2組の2人パーティーが到着される。
それぞれ中高年夫婦と若いカップルのパーティー。伴侶が同じ趣味というのは素晴らしいことと、独身の自分としてはうらやましい光景に写る。
でも自分としては単独行にも捨てがたい楽しみがあるし、単にお相手を見つけたいというだけの単純な気持ちでもないようだ。

 それはともかく中高年夫妻の方によると、2組とも堅田からの江若バスで坂下へアクセスされたとのこと。そういえば江若バスのほうが少し到着が遅くなるのだった。
そして冬はもっと空気が澄んで、琵琶湖の対岸の山々ももっと遠くまで見渡せるという。冬にも一度来たいけど、スキーの滑走日数を減らしたくない気もあるし、
あちらを立てればこちらが立たずという状態だ。




11:23 権現山山頂出発

 いつの間にか40分ほども滞在していた。既に他の方々も出発されていた。この後の行程を考えると、景観に感動し過ぎてちょっと長居してしまったようだ。
ここから小女郎峠まではつい先週に逆向きに歩いており、比良では初めての「以前歩いた区間」となる。
しかし、逆向きの上に今日は前回には無かった大展望があるから、新鮮な気持ちで歩けるだろう。








 権現山から小女郎峠までは前回のレポで一度詳述しているので、やや解説を簡略化したい。

 権現山からは今日のハイライトともいえる尾根歩きが始まるが、右手には南北に広く琵琶湖が横たわって、
沿岸部以外は山また山が基本の兵庫では味わえない瑞々しい景観を始終楽しめる。もうこの時点で殆ど初めて歩くのと同じくらい興奮している。

 正面ほど近いところには平べったいものの、きれいな三角錐でしかも頂上付近に木が無いすっきりした姿のホッケ山が見えている。
前回は数分程度の滞在時間で通過したものの、今日はホッケ山の大展望ピークを満喫する予定である。

 権現山山頂を出発すると、まず30mほど緩やかに下る。








ホッケ山へ向けての登り

 樹林に覆われた950m+コルを通過すると、ホッケ山へ向けてそこそこの斜度の100m余りの登りとなる。
南向きに歩いた前回は下りで通過出来たのだが。でも始終大展望の広がる中での登りはさほど苦にはならない。振り返ると・・・








 登るほどに広がってくる南比良の山々、そしてその向こうには比叡山。
初めて見る(に等しい)広大な景観にもう興奮気味で登っていく。
しかし、霊仙山と権現山の間の山肌を削られた山がとても痛々しく、またこの伸びやかな景観の中で悪い意味で目立っているのが残念だ。








11:49 ホッケ山山頂(1050m)

 強い日差しに照らされての登りで大汗を掻く頃、権現山山頂から25分くらいでホッケ山山頂に到着。蓬莱山と琵琶湖の景観が見事というほかない。
この前よりも蓬莱山のリフト施設がはっきりと見える。








 ちょうどお昼時だしホッケ山山頂で昼食を採った。この大展望を眺めながらのおにぎりは本当に格別。








 対岸に見えるのは安土辺りだろうか。あちらから比良山系を見てみたい気もする。




 あっという間に30分ほど経った。本当にいつまでも居たいホッケ山山頂だが、行程を消化するためにはそろそろ出発しなければならない。




12:22 ホッケ山山頂出発

 まだまだハイライトが残っていると気持ちを切り替えて出発。








 ホッケ山以北のアップダウンはさほどハードではない。20m緩やかに下って、70mのごく緩やかな登りとなる。
それにしても琵琶湖は本当に広いと改めて感じる光景だ。








 琵琶湖を見下ろしつつ、この緩やかな道を登っていくと・・・








12:45 1090m+ピーク

 小女郎峠のすぐ南にある1090m+ピークに到着。前回、非常に霞がひどいことを初めて確認する場になったピークだが、
今日はその時に隠されていた景観を思う存分堪能出来た。








小女郎ヶ池
 反対側は小女郎ヶ池が見える1090m+ピーク。肉眼では小女郎ヶ池の端を歩いている人が見えた。




12:52 1090m+ピーク出発

 素晴らしいピークばかりだがあまりゆっくりしていられないので数分の滞在で出発。








12:56 小女郎峠通過

 1090m+ピークからすぐに小女郎峠へ降り立つ。一度歩いた区間はここまでで、小女郎峠以北は再び未踏の区間となる。
小女郎峠からは程近いところに小女郎ヶ池があって立ち寄りたいが、時間の都合で今日は割愛する。

 自分が小女郎峠へ降り立つ直前に、先程小女郎ヶ池周辺を歩いておられた男性4人パーティーの方々が峠で合流。
一足先に北へ向けて登っていかれた。写真だけを見ると自分が集団から遅れて歩いているような絵になった。
撮影後、パーティーを追うように自分も北へ向かう。








 小女郎峠は峠を挟んでシンメトリーの光景が広がっているような気がする。
南には1090m+ピーク。そして北には1101mピーク。トラックを道なりに歩くとピークは素通りしそうだが、
峠からの坂を登りきったところで、1101mピークに向けて細い踏み跡が西へ分岐する。様子を確かめておこう。








13:05 1101mピーク

 笹薮と、まばらな低木が生い茂る展望の無いピークだった。踏み跡は更に小女郎ヶ池方面へ向けて続いている。
ピークの様子が確認出来たので、すぐに元のメインルートへ戻って北上を再開する。








 蓬莱山が間近に見えてきたが、距離的には小女郎峠からホッケ山くらいある。視覚的には非常に近くに見えるが、大きな山容だからだろうか。
蓬莱山までは前述の1101mピーク以外に1090m+ピークが2つある。アップダウンはそれぞれ10m程度で、蓬莱山に取り付くまでは
快適な散歩道といえよう。この付近からロープウェイで登ってこられたと思われる街着の方々とたまにすれ違うようになる。
 蓬莱山にあるびわ湖バレイスキー場は、昨08スキーシーズンより従来のゴンドラから大きな121人乗りのロープウェイに架け替えられたという。
しかもスキーシーズン中だけではなく通年運行しているとのこと。今回は利用しないが行程によっては下山手段として大いに活用できそう。








 蓬莱山へ向かっていると、お地蔵さんが数箇所に点在して祀られているのが目に入る。
小女郎峠付近から蓬莱山に至るまで時折見かけたが、元々行場だったのかもしくは事故でもあったのだろうか。
背景がきれいだと思って撮影したこのお地蔵さんは上部が壊れていた。








 蓬莱山手前の最後の鞍部、湿地帯っぽい1020m+コルを通過すると、いよいよ蓬莱山へ向けての連続した登りとなる。
傾斜はさほどきついところはないが標高差は90mほど続く。見た目よりも蓬莱山が高く感じる。
早く初めての蓬莱山に立ちたい気持ちが先行して少しオーバーペースになった。








 1030m+付近で一旦斜度が緩んで、等高線は閉じていないミニピークを通過。
ここに至って、この前から遠望し続けた蓬莱山山頂と初対面。残る標高差は40m弱。
東お多福山を連想させるたおやかな山容が印象的だ。

 同じスキー場の山でもハチ・ハチ北のある鉢伏山とは随分山容が違う。








 蓬莱山山頂目前まで登ってくると、これまで歩いてきた南比良と、滋賀と京都の南部の景観が広がって見えてくる。
初めてこれほどの大展望を眺めて本当に感動もの。高揚感に包まれてまもなく蓬莱山に到着する。








 
 一等三角点 点名:比良ヶ岳
13:36 蓬莱山山頂(1174.2m) びわ湖バレイスキー場に到着

 初めて蓬莱山山頂、そしてびわ湖バレイスキー場に到着。ここからはもうゲレンデの中。考えてみればオフシーズンのスキー場に立つのはこれが初めて・・・
かと思ったら林間学校でハチ高原へ行ったことがあるのを思い出した。
 小女郎峠側のスキー場入り口からすぐ前にはクワッドリフト(4人乗り高速リフト)と、左にはペアリフトの山頂駅がある。
ペアリフトは搬器が付いたままになっている(通常オフシーズンには搬器は外す)。今日は止まっているが観光リフトとして使用しているのかもしれない。

 びわ湖バレイのメインゲレンデはこのリフトの両側に広がるホーライゲレンデであり、午前中の元気な時はクワッドリフトで滑走本数を稼ぎ、
疲れてきたら遅いペアリフトで乗車時間を長くして休憩する、というような使い方が出来そうだ。

 ちなみに山頂はまさしくこのリフト終点施設が建っているところであり、少し西側には大きな一等三角点が鎮座している。もちろんシーズン中は雪に埋もれているだろう。
周囲には柵があることでやや美観を損ねている感がある。びわ湖バレイスキー場未経験の自分としては土日の混み具合は推測するしかないが、
おそらく柵で区切ることによってスキーヤー・ボーダーがレベルに応じた斜面に滑り込めるように、また滑走ラインを規制することによって、
衝突事故を防ぐ狙いもあると思われる。自分自身も何度も滑走中にニアミスを経験している。

 普通の山の山頂とは雰囲気が違うが、とりあえず初登頂の蓬莱山山頂周辺を散策しよう。
周辺は街着の方、そして自分と同じく山歩きの方が入り混じって、ちらほらと思い思いの場所で憩っている。








ホーライ北ゲレンデ、及びチャンピオンコース

 ここはけっこう面白そうと思ったのが、リフトの西側の中斜面のホーライ北ゲレンデ。リフト沿いに滑ったら途中に棚が一つあって、
終点に向かってもう一つ落ち込みが見られる。シーズン中の写真を見たら、下部にはモーグルバーンが設けられている模様。
まだ5月なのに、想像してみたら「早く滑りたいな〜」という気持ちになってきた。

 そしてより西向きには林間に下るチャンピオンコースがスタートしている。
途中からは狭くなるようだがこちらは中急斜面であり、小回りで滑ると面白そうだ。
チャンピオンコースは2本のペアリフトによって、前半の中急斜面、後半の林間部分の好みの斜面を滑ることが出来るようになっている。

 余談だがブッシュのすぐ横に立つことによって、雪煙っぽく見えることを狙ってみた。

 すぐ向かいには、蓬莱山と同じように施設が並び立っている打見山が見えている。
びわ湖バレイは蓬莱山と打見山と間のコル(笹平)、そして西側の谷を下る林間コースを利用している。もう少しコルとの標高差があると理想的かもしれない。
でもこの大きく広がる琵琶湖の景観の中でスキーをするというのは、兵庫では味わえないシチュエーションで素晴らしい雰囲気だと思う。








蓬莱山から広がる比良山系の山々の眺め

 正面奥には一際高い武奈ヶ岳、その周囲は全て未踏の山々が並び立っている。
びわ湖バレイ以外には何も人工物が山上に無いのが比良山系の大きな魅力ではないかと感じる。
山々を眺めながら次はどの山に登ろうかなぁと、もう既に次のプランのことを考えていた。








武奈ヶ岳(1214.4m)と西南稜

 初めて比良を訪れた時に歩いた、思い出の光景が蘇る武奈ヶ岳の遠望。あの日と同じような好天の元での雄姿を見せてくれた。
またいずれ登頂すると思うが、次は別のルートで目指してみたい。








蓬莱山山頂の光景








小女郎ヶ池

 先日訪れた小女郎ヶ池が盆地状の地形の中にひっそりと佇んでいるのが見える。
びわ湖バレイ(ロープウェイでアクセス)を起点にして歩くと案外簡単に辿り着ける。

 設置されている方位板には近くには小女郎ヶ池、遠いものでは白山の名も書かれている。
一度白山まで見通せる時に訪れてみたいものだ。今日は伊吹山まではうっすらと見える程度。








 ホーライゲレンデ上空を数羽のトンビが旋回していた。長閑な光景だと思って撮ってみた。
帰宅後にPCの画面でチェックした時に気付いたが、足にひも状のようなものが巻きついているように見える。ヘビなどと間違えて掴んだのだろうか。
自然に外れればいいのだが・・。自分は目に付いた回収可能なゴミは拾っていくが、元々は捨てる人がいなければこのような事態も避けられるのに。




 蓬莱山に到着してから早くも4、50分経過。
予定している下山時刻を考えると、そろそろ出発する頃合のようだ。またいずれ違うルートで蓬莱山に再訪してみたい。








14:22 蓬莱山山頂出発

 リフトの東側は緩中斜面の広がるホーライパノラマゲレンデ。琵琶湖を眺めつつのんびり滑るというシチュエーションが思い浮かぶ。
斜度はハチ高原では中央ゲレンデ、万場ではユートピアゲレンデとほぼ同じくらいで、チャレンジ的な要素は少ない。滑走性の高い効率の良いターンを
することによって、スピードを維持する滑りが求められそう。

 途中からは中央部で柵によってセパレートされているが、大回りにも充分な幅が確保されているようだ。








 雪上をスキーで滑るには及ばないが、草地をのんびり歩いて降りるのも気持ち良い。
冬の光景を想像しつつ、滑走距離500mのホーライパノラマゲレンデを降りていく。
なお、照明設備もあってナイター滑走も可能とのこと。琵琶湖周辺の夜景も見てみたい気がする。

 滑り降りたらあっという間だろうけど、のんびり数分掛けてホーライパノラマゲレンデを下りきる。
食堂やリフト乗り場などが点在するコルを経て、打見山へ向けて登り返しにかかる。








蓬莱山側斜面のゲレンデ全景

 たった今降りたばかりのホーライパノラマゲレンデを含めて、蓬莱山北斜面に広がるスキー場風景を初めて見る。
滑走距離、リフト索道の長さは500m。規模的にはちょうど奥神鍋の一番下にあるスーパーゲレンデとほぼ同じだ。
但し標高差及び斜度は奥神鍋のほうが急に感じる。このホーライゲレンデの中では、やはりホーライ北ゲレンデが面白そうだ。

 蓬莱山に別れを告げた後、打見山方面へ向かって歩き出す。
周辺には色んな遊具が点在しており、雰囲気的には須磨浦山上遊園が近いだろうか。








14:36 打見山山頂付近の分岐

 打見ゲレンデの琵琶湖側の端に伸びている通路を打見山山頂に向けてしばらく歩く。
打見ゲレンデは超緩斜面で、万場の一番下にあるファミリーゲレンデと同じくらいのほぼ平らな斜面。
ロープウェイで登ってきたスキー客は、この打見ゲレンデを通過してホーライゲレンデへ向かうのだろう。
ゲレンデの脇に設置されている網の柵はシカなどの侵入防止のためのもののようだ。

 もう少しで打見山山頂のところで、今日の下山ルートであるクロトノハゲ・志賀駅へ向かうルートが分岐する。
出来れば打見山山頂を踏んでから下山を開始したかったのだが、もうゆっくり山上を散策する時間の余裕が無かったので、ここから下り始めることにした。
ということで打見山訪問はまたの機会にしよう。今日は行程前半に少しゆっくりし過ぎたかも。自分にとって好天で空気の澄んだ比良山系はとにかく写欲が刺激される光景が多い。
山歩きには必須の体力のペース配分の他にも、自分の場合は撮影のペース配分にもより気を配らなければならないと悟った。
これは今後の比良での山行において、円滑な行程消化のためには重要な課題になると痛感した。事前のより入念な調査と企画力が必要になるだろう。




 打見山手前の出合から一段降りたところは展望広場になっていて、きれいな山野草もついでに見ることが出来た。
この時風がけっこう強く、広角レンズから交換せずに撮影したので、花の写りが小さくなってしまった。

 ※ いつものように帰宅後に花名を調べています。もし間違っていましたらご指摘下さると幸いです。








ツツジ科ツツジ属シロヤシオ

 この花を付けていたのは大きな木で、木の下にはベンチまで設けられており、前には琵琶湖の景観が広く眺められるおまけ付き。
いつまでも居たくなるシチュエーションだが先へ進む。








サクラソウ科サクラソウ属クリンソウ








 花園からすぐに天命水。クロトノハゲを示す案内板を確認して山腹道を進む。
もうすぐロープウェイの索道下を通過するようだが、山と高原地図では「展望よし」と書かれていて楽しみだ。
なお、同地図には車も通れる車道の表記があるが、見たところ普通の山道しか見受けられなかった。
そういえばびわ湖バレイまで通じる車道は無いようなので、スキー場に必要なものはロープウェイやもしくはヘリで上げているのだろうか。








14:51 ロープウェイ索道付近を通過

 まもなく表記通りに展望抜群の山腹道になった。121人乗りの巨大なロープウェイを支えるワイヤーが壮観だ。
この直後頭上をロープウェイが通過したので撮影しようとしたら、セルフタイマーのままになっていたので、撮影のタイミングを逸してしまった。
ロープウェイの動きは意外に早い。ということでロープウェイの写真は無い。

 なお、稜線上のロープウェイの支柱はとてもよく目立ち、この後山麓からでも打見山の目印としてよく見えた。

 この大展望の後は森歩きになって黙々と下っていく。トラックはよく踏まれていて非常に歩きやすい。
打見山への最短ルートとしてポピュラーなのだろうか。








   
15:00 クロトノハゲ (950m+)

 程なくクロトノハゲを通過。地形図では名称の表記は無いが破線道が交わっている。
クロトノハゲという変わった名前が付いている分岐だが、見たところ周囲は何の変哲もない。
 この分岐は打見山、そして比良岳などへ向かう際にも通過する交通の要衝ともいえるようだ。

 分岐自体は特筆すべき点は無いが、分岐から少しだけ琵琶湖側へ進んだところには小高い砂の斜面があって、
北側の堂満岳やリトル比良方面を眺めることが出来る。もしかしてクロトノハゲって、この僅かな窓を提供している砂山を指しているのだろうか。

 クロトノハゲでの小休止を終えてそろそろ出発しようという頃に、蓬莱山で出会った男性4人パーティーの方々が遅れて到着された。
自分が一足先に出発したが、登山口付近でもう一度出会うことになる。



 クロトノハゲからはずっと深い樹林の中を貫くキタダカ道を延々と下っていく。
北比良峠からダケ道を下ったことがあるが、こちらのほうが傾斜は緩やかで膝に優しいように感じる。
ちなみに自分はまだ琵琶湖側から比良山系へ登ったことがない。琵琶湖側からキタダカ道に取り付くと、山上までの標高差は約1000m。
六甲最高峰より少し高いくらいだが、比良山系の琵琶湖側の落ち込みはけっこう険しく感じる。でも琵琶湖側からこの標高差を登って、身をもって実感してみたいという気になった。
次回は東から取り付いてみようと思い立った。




 黙々と下っているうちに、まもなく前方に大木が見えてくる。あれが天狗杉!
ということは「山と高原地図」に表記のある“番屋岩”を見落としてしまった。このキタダカ道も一度登ってみなければと思う。








15:20 天狗杉

 周囲の他の木々よりも一際存在感のある天狗杉に到着。神々しさを感じつつここで小休止をとる。
地形図によるとキタダカ道はここまでは概ね尾根に沿って下ってきたが、ここからは山麓へ向かって山腹を急降下するようなルートとなる。




15:26 天狗杉出発

 天狗杉を後にして下山再開。地形図から感じるほどの急なトラックではなく、ジグザグに緩やかに下っていく。








 展望は全く無いが、長い歴史を感じさせる風情のあるトラックだ。
外界の様子は見えないが、気圧の変化と街の喧騒が大きくなることで、着実に麓が近づいてきているのを感じる。




 まもなく右手に沢の形状が現れ(キタダカ谷)、谷沿いにしばらく下ると大きな堰堤が谷を塞いでいる。
この堰堤は左岸側に巻いて、下流側正面に下る。日は西に傾いてきたので、堰堤が心地良い日陰を提供していた。
ここではご夫婦のハイカーが休息中だった。








15:45 堰堤を通過して下流側へ

 キタダカ谷の左岸沿いを林道のように広くなったトラックが下っていく。木々の向こうには低くなった琵琶湖が少し見えている。
この後まもなく橋があって右岸側へ渡る。








15:51 志賀駅へ直行するために左折

 右岸へ渡って直後に分岐が現れる。現地には何も表記が無いが、直進するとロープウェイ山麓駅付近を経て志賀駅。
左へ進むと志賀駅へ直行するようだと、地形図を見て判断してそちらへ進む。下流側に大きな堰堤があるようだからそれが目印になる。

 分岐からは再び橋を渡ってキタダカ谷の左岸沿いを下っていく。








16:00 巨大堰堤を通過

 まもなく地形図通りに、キタダカ谷は南寄りに向きを変えて巨大堰堤が現れる。
六甲での沢歩きでは難所を提供させられる堰堤越えだが、ここのトラックは道なりに堰堤の左岸側を通過出来る。

 振り返ると打見山が高い。改めて大きな標高差を下ってきたことを実感させられる。




 堰堤下流側にある盤所橋で再び右岸へ渡ってしばらく下ると、前方には舗装路が見えてきて、絶え間ない車の走行音も聞こえる。(湖西道路)
ちょうど左には送電線鉄塔があるのを見て、そちらで快適な帰路にするために上着と靴下を取替える。
その時に、クロトノハゲで出会った4人パーティーの方々が降りてこられた。自分撮りに相当時間を費やしていることを改めて実感する。








16:19 湖西道路脇に出る

 汗臭い上着を着替えてリフレッシュしたところで車道に出る。ここは湖西道路の側道で交通量は非常に少ない。すぐ左手には湖西道路が貫いており騒音がすごい。
写真では何の変哲も無いT字路だが、ハイカー向けに道標が完備されており、志賀駅から歩いてきても一見して登山口だと分かるようになっている。

 道標に従って南へ進む、一つ目のT字路で湖西道路の下を潜って琵琶湖側に出る。
この辺りは薄暗くなってきたらあまり良い雰囲気ではないかもしれない。








16:24 志賀駅が見えてくる

 湖西道路下を潜った直後、眼前には絵に描いたような素晴らしい棚田の景観が広がってきた。ちょうど目の前には志賀駅も見える。
和邇駅までの道のりと比べると、この近さはありがたい。

 ちょうど特急雷鳥が通り掛ったが、カメラに付けていたのはこの広角レンズ。よってせっかくの雷鳥も赤っぽい線にしか写らなかった。
それにしても初めてキタダカ道を下ってきた自分にとって、最後の最後まで感動できる下山ルートとなった。

 乗車予定時刻まであと十数分くらいなら撮影時間が確保出来そうと判断して、湖西線を通る列車を数本撮影した。
しかし待ち構えている間に通り過ぎたのは、いつも見慣れている電車ばかり。

 2、3本見送ってから志賀駅へ向けて出発。
棚田の間の農道を抜けて、木戸の集落を通り程なく志賀駅へ。あっという間に着いた。








16:53 志賀駅到着

 ほぼ予定通りに志賀駅に到着。まだあと1、2本見送る時間があると判断して通り掛る列車の撮影を志賀駅構内で行った。








 運良く雷鳥が通過。もうあと数年で引退するという国鉄時代の車両を利用した特急。比良山系の山歩きは自分にとって下山後も撮影対象が多い。
大阪行きの雷鳥は堅田に停車するので一度乗ってみたいと思っているが、乗車には当然特急料金が必要なことと、大阪が終点なため混雑する駅での乗り換えを強いられるのがネックだ。
もし乗車するなら510円引きで乗車出来る自由席特急券を利用しよう。








志賀駅ホームからの打見山、蓬莱山の景観

 この山の落ち込みは六甲山系以上に感じる。麓には先程まで居た棚田が見事だ。打見山山頂付近にはロープウェイの支柱が良く目立つ。
冬には雪で白くなった美しい姿を見せてくれるのだろう。








   
 堅田から湖西線廻りの新快速に乗車するが、基本的に志賀は普通しか停車しないので、堅田までは京都行き普通に乗車。
乗車したのは「シティーライナー」と呼んでいた頃の新快速で運用されていた懐かしい117系だった。
新快速として走っていた頃とは違い、今では普通列車としてのんびり全線高架の湖西線を走る。
車内も今から見ると少し古めかしさを感じるが、どことなく見覚えがあって本当に懐かしい。
1車両の中に自分しかいないという、普段は絶対ありえないシチュエーションの中で堅田へ。

 堅田からは予定通りに新快速に乗車。京都を過ぎる頃からラッシュになるが、堅田から座ったまま乗り換えなしで楽々帰路に着く。
自分にとってこの新快速は本当の意味で「湖西レジャー号」といえる。(休日には同名の新快速の運用があるが、平日ダイヤでは設定されていない)
18時台にも湖西線経由の新快速があると、日の長いこの時期はより便利なのだが・・。




 朝から夕方まで本当に雲ひとつ無い完璧な好天の一日で、パーフェクトなリトライとなった。
こんなに上手く行き過ぎては6月の雲行きが少々心配だ。








今日の行程の断面図です。



けっこう歩いた感があったが、10km程度の行程だった。本当に撮影に時間を掛けたのだろう。

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