「西山谷V 正規ルートで遡行」 渦森台発着(渦森台4丁目バス停〜渦森台バス停) 09年7月3日(金)

国土地理院地形図:25000分の1「神戸首部」(大部分はカバーできる)、「有馬」(源流部のみ)、
            :10000分の1「摩耶山」(源流部は欠けている)

参考文献
昭文社 : 山と高原地図「六甲・摩耶」、添付小冊子P.35〜37【西山谷】
      : 山と渓谷社 【六甲山】 P.100 「六甲西山谷を遡行する」




 今年の梅雨は少雨傾向が続いていたが、幸運にも2週間ぶりの山歩きを前にして、ある程度まとまった降雨量があった。
水量豊富なうちに沢歩きに行こうと思い立ち、2年ぶり3度目となるお気に入りの西山谷に決定。
久々の西山谷の滝群との再会が第一の目的だが、「播州野歩記」さんの掲示板を拝読していて気になったことの確認も兼ねていた。

それと正規ルートの確認もしようと思っていた。1回目は半分迷いつつ踏破、2回目は無理やりに沢を完全遡行、ということで、
そろそろベーシックなルートを掴んでおきたいという狙いもある。
なお、このレポで正規ルートとしているのは、概ね上記参考文献記載の遡行概念図に拠っている。

 それと下山ルートは未踏だった寒天山道を歩いて、再び渦森台に戻るという行程である。




※ 西山谷は過去2回のレポで大半は詳述しているので、今回はやや簡略して記します。
よって主要な滝以外の小滝群の写真は割愛しています。


西山谷の遡行にはあらゆる局面で、道迷い、転倒、滑落等の危険が伴います。
このレポは安全に遡行出来ることを保障するものではありません。
谷に入ると道標は一切ありません。ルートファインディングが必要です。





6:55 JR住吉駅前出発

 神戸市バス38系統渦森台行きに乗車。1乗車大人200円。いつもより少し遅い出発だが、このバスが始発便なのでこうなる。
西山谷の登山口にあたる渦森台は標高300mにあるので、38系統は山歩きのアクセスとして非常に有用だ。
なお、みなと観光のくるくるバスは住吉台へ向かうので、五助方面が目的地の場合と上手く使い分けられている。

 今日の空模様は概ね曇りのようだが、暑がりの自分にはこの時期はピーカンより好都合だ。




7:10 渦森台4丁目バス停到着

 終点の渦森台バス停の一つ手前で下車。西山谷、天狗岩南尾根へは渦森台4丁目バス停が最寄。
終点の渦森台バス停は、今回下山ルートに使う寒天山道へは最寄となる。

 早朝の渦森台の住宅地を西山谷へ向かって歩いていく。
渦森台は住吉駅から15分程度だが、本当に静かで良い住宅地だと思う。








7:20 仙丈谷第1堰堤前の川原

 川原ではアジサイが今を盛りに咲いていて、本当に涼しげな光景が広がっていた。
このアジサイを前にして、ウォーミングアップを行う。アジサイはこれ以降、西山谷、そして六甲山上など至るところで見かけることになる。
そういえば、2年前に遡行した時は、アジサイの時期には早過ぎたことを思い出した。




7:30 準備運動などを終えてから出発

 川原を過ぎてすぐに左岸へ渡渉。期待通りに水量は豊富で、迫力ある滝群が見られそうだ。
天狗岩南尾根へ登る踏み跡が分岐するが、西山谷へは直進。左岸の山腹を歩いていく。
一昨日までの雨で地面はまだ濡れていて、場所によっては滑りやすくなっている。
最初から真新しい足跡が付いていて、ここ数日の間にどなたかが遡行されたようだ。




7:45 F1付近で渓流シューズに履き替える

 F1までは大半が山腹道なので、ここでようやく渓流シューズに履き替えてスパッツを装着。
周囲は深い谷中で薄暗い。そして既に辺りは轟々と沢の水音が響いていて、今後の遡行を前に気が引き締まる。
3度目であっても、やはり西山谷へ入るとやや緊張する。いつも単独だが、仮に複数で歩くと西山谷も気が楽になるかもしれない。




7:57 沢歩きの装備を整えてから出発

 出発してすぐにF1、F2を通過。この付近、山腹が崩壊している箇所もあり、
歩きやすそうなところを選定しながら先へ進むという状況になるが、大半は沢の際を進む。
出だしからいきなり手足を総動員して遡行していく。自分の場合、遡行には好日山荘で購入した滑り止めの付いた薄手の手袋を愛用している。
本来はインナーとして使うようだが、薄いので手の動きを妨げないし、滑り止めがあるので掴みやすい。
そして長く使っている間にくたびれて、指先に穴が開いてちょうど良い感じだ。
遡行途中から手先はずぶ濡れになるので、カメラを扱う際には手袋は外さなければならない。








8:00 F3(10m)

 F1、F2を過ぎるとすぐにF3。落差10mのけっこう大きな滝だ。
ルートは滝身右岸の岩棚を登っていく。写真では険しく見えるが容易に登れる。
先日、遡行した五助谷は滝が少ないのがちょっと残念だったが、西山谷の滝群の数、そしてバリエーションの豊富さは群を抜いている。




 岩棚を登りきると一転して穏やかな沢が続く。西山谷の中でも下流部分はけっこう楽しい部分になる。
紛らわしい支谷の合流も無く、ルートは一本道といってよいと思う。








8:10 F5(15m) ふるさとの滝

 谷が蛇行したと思ったら下流でのハイライトといえる、ふるさとの滝に到着。
滝に挟まっているように見える木も、2年前と変化はなかった。いつものパターンとして、この滝を前にして小休止をしていこう。








 滝自体に変化はないものの、手前の川原にガレが以前より積もってきたような気がする。
東側の山腹が少々崩れたのだろうか。そのガレではアジサイが見事に咲いていて、ふるさとの滝とのコラボレーションを見ることが出来た。
今回はアジサイに彩られた西山谷遡行となった。過去2回では味わえなかった贅沢な気分だった。
アジサイのおかげで谷の雰囲気がまるで違う。やはり花があるというのは良いことだと改めて思った。




8:31 ふるさとの滝出発

 アジサイとふるさとの滝に見送られて出発。F3と同じような岩棚を登っていく。
ふるさとの滝までの西山谷は本当に楽しいことだけなのだが、この直後最大の難所が待っているので気を引き締めていく。




 
西山谷随一の危険箇所! 仙丈谷第5堰堤越え

 しばらく穏やかな沢を遡行していくと、行く手にはあの悪名高い仙丈谷第5堰堤が見えてくる。
左岸の険しい山腹を登っていくが、ルートが至極明瞭なことだけが救いだろうか。
ロープ、鎖場を経て堰堤を越しにかかる。3点支持、手をかけるところ、そして足場の確認を慎重に。
自分は高所には強いのだが、ここはけっこう高度感があるので、苦手な方は下を見ないほうが賢明。

 よく知られているが、ここでは過去に落石による死亡事故が発生している。
ここは単独よりも、団体で通過する際には危険度が増す。




 堰堤より上流側へ進むと、沢へ向けて下りにかかる。
ここからが以前よりも本当に危険な状態になっていた!
急な岩の斜面をロープや木を頼りに下っていくのだが、記憶にあるよりも明らかにロープが減っていた。
途中、短い時間だが3点支持が確保できず、完全にフリークライミングの状態になった。
上の岩棚を両手で掴みつつ、下の岩棚に細心の注意を払って足を下ろしていく。
しかし下の岩棚まで高さがあって、体感的にたぶん10〜20m程度飛び降りることになる。もう少し足が長ければよかった。
でもどうにか下の岩棚に着地して無事に下りきった。

 再び沢に下りた時には、安堵感でいっぱいになった。
と同時に強く思った。ここは登攀用具が必要だ。

 難所の写真を残すべきだったが、本当の難所の写真は一人では撮れない。
せめて下からでも撮れば良かったかもしれないが、不思議と下から見るとたいして難所に見えなかった。




 最大の難所をクリアして、次はいよいよ西山谷最大の滝、西山大滝との再会だ。
小滝F6が見えてくると同時に奥にF7も重なって見えてくる。見方によっては多段滝に見えなくもない。








8:54 F7(20m) 西山大滝

 西山谷のハイライトである西山大滝に到着。谷間に響く一際大きな轟音に感動する。
やはり何度見ても西山大滝の迫力は圧巻だ!先日来の雨のおかげでかなり豊富な水量となっており、滝の際に立つと激しく水しぶきがかかる。
そして非常に涼しくて一気に汗がひいていく感じがする!まさに天然のクーラーだ。時間をかけてじっくりと避暑しながら休んでいこう。

 西山大滝はお気に入りの滝ではあるが、ここでは滑落による死亡事故が発生していることは忘れてはならない。
上記の山と渓谷社の書籍では、滝身右岸の岩棚を登っていくように書かれているが、滑落事故はこのルートで発生している。
岩棚ルートの登り口のところには、かなり錆びてはいるが、東灘警察署による「危険なので登らないように・・」と書かれた案内板が置かれている。

 以前のレポでも書いているが、右岸すぐ下流側に安全な巻き道があるのでそれを辿るようにしよう。
危険な目に遭わずに、簡単に西山大滝の上流側へ抜けることが出来る。
ここに限らず、西山谷のある程度大きな滝には必ず巻き道がある。ルートの取り方次第で危険度は軽減出来る。








清涼感たっぷりの西山大滝

 いつも思うけど、滝上方にある西山大滝の看板を設置された方はすごい!




9:14 西山大滝出発

 再訪を期して西山大滝を出発する。20分ほどの滞在で、充分体はクールダウン出来た。



 自分としては、西山大滝までが西山谷の前半と位置づけている。
ここまでは難所の仙丈谷第5堰堤を除いては、比較的楽しい遡行を味わえる区間だと思う。
ルートを誤らせる紛らわしい支沢の合流も、そして踏み跡も無い。

 そして後半はといえば、危険度は減少するものの、それと入れ替わりにルートを誤らせる紛らわしいポイントが現れる。
西山谷中流域は比較的堰堤が多い上に、見どころとなる滝も少ない。
だからかどうか分からないが、かなりの距離を沢を離れて山道を辿るように推奨されている。
 初めての遡行時には、完全に現在位置を見失い、そうめん滝に辿り着くまでどこを歩いているのか分からない状態になった。
2回目は山道には目もくれず、全ての滝を見るつもりで、極力忠実に沢床を辿った。
 よって、今回は初めて正規ルートを見定めて上流を目指すことになる。

 この長い山道が始まるのは、西山大滝からは少し離れた上流側。
西山大滝を過ぎて、最初に現れる堰堤は左岸の巻き道を辿った。ちなみに前回は右岸のステップを登っている。段差が大きいからたいへんだった。
左岸の巻き道を辿ると、意外に明瞭な踏み跡が堰堤の上流側まで続いていた。

 再び沢へ降りて、まもなくF10(二条の滝)、F11の小滝が続けて現れる。
その後で堰堤が見えてくるが、それが中流部で重要ポイントとなる仙丈谷第6堰堤。
右岸に巻き道が現れるので、それを登っていく。これが長い沢を離れる区間の始まりとなる。








9:44 仙丈谷第6堰堤右岸を通過

 写真の右下と左上がケラレているが、フードの装着が失敗していたようだ。失敗に気付かず撮り直ししていないのでやむを得ずそのまま使う。
ここが初めて遡行した時に誤ったポイント。左上方には明瞭な踏み跡と豊富なマーキング。誘い込まれて登ってしまうと沢から離れてしまう。
よって堰堤のガードレールに沿って上流側へ向かうのが正解。ガードレールには
×と書かれているが、狙いは分からない。

 これ以降、基本的に右岸側を沢に沿うように正規ルートが続いていくのだが、踏み跡は一本ではない。
この堰堤のガードレールを過ぎた直後、やや沢に向けて下るようにルートを取る。
この上流で右岸から支沢(水音はなく涸れ谷)が合流してきており、踏み跡の辿りようによっては、支沢に誘い込まれる恐れがある。(経験済み)
都合の悪いことに支沢へ向かう踏み跡はなぜか明瞭でマーキングが豊富。
本谷はこの付近では充分水流があるので、常にそれを念頭に置いて本谷から離れない踏み跡を辿る。
 正解の場合、まもなく問題の涸れた支谷をルートが北岸へ横切る。

 この正規ルートは本谷から付かず離れずといった具合で上流側へ続いている。
マーキングは豊富ではなく、本谷に沿うように付いている踏み跡を見極めながら進む。
一帯は植林が多くてやや単調だが、西山谷の中流域は堰堤が多いので(経験済み)、山道を辿るほうが無難である。

 まもなく再び右岸側に支谷が合流してくる。先程とは違い水流、水音がある。
支谷上流側に目をやると、赤レンガの堰堤が見えてくる。
これが仙丈谷第7堰堤で、中流部の最重要ポイントである。
堰堤までは支谷右岸に沿うように進んでいくが、沢の縁は崩壊が進んでいるので、山側の歩きやすい踏み跡を見定めていく。








10:07 仙丈谷第7堰堤通過

 やがて堰堤手前で無理なく沢へ降りることが出来た。堰堤と同系統の色(影響があるのだろうか)のアジサイが咲いている。
山と渓谷社の書籍では、ここが最重要の分岐と紹介されている。
正規ルートは堰堤手前の左岸から始まる山道へと続いていて、すぐに見つけることが出来た。
堰堤は中央部が割れていて、簡単に支谷上流へ向かうことが出来るが、西山谷からは離れてしまう。
この先がどうなっているか興味があるが、無事に西山谷から脱出することが最優先なので冒険はしない。




 堰堤直下で一息ついてから、正規ルートの山道へ入っていく。
これまで同様明瞭な山道が続いている。

 すぐに左側上方へ向かう踏み跡が分岐するが、これを辿るとまた沢から離れてしまうようだ。
道なりに直進する。すると堰堤右岸の縁に出た。ここでようやく長い山道の区間が終わって、
西山谷本谷へ降りることが出来る。








10:19 久々に西山谷本谷へ降りる

 堰堤の縁から沢へ降りると、藪の中に明瞭な踏み跡が続いていた。
本谷の流れを渡渉して左岸へ向かう。相変わらずマーキングは少ないが、踏み跡は分かりやすくずっと続いていた。
これ以降はしばらく左岸側を歩いていく。

 この後すぐに堰堤を左岸から越える。明瞭な巻き道が続いているので苦労はなかった。








10:31 最後の堰堤越え

 踏み跡を辿っていくと、そのまま左岸より堰堤越えにかかる。ここに来て薄々思い出してきたが、
これが最後の堰堤越えで、そうめん滝はもう目の前である。
前回、可能な限り忠実に沢を辿った場合と比べると、やはり正規ルートを歩いたほうが早いし安全だった。
自分としては既に一通り滝を見ることが出来たし、次回からは基本的に正規ルートを歩くことにしよう。

 この堰堤を越えるとすぐ左岸に支谷が合流してくるが、本谷側を見るとそうめん滝が見えているので間違えようがない。








10:38 F15(6m) そうめん滝

 自分にとって鬼門になっていた中流部を順調にこなして、体感的にかなり早いペースでそうめん滝に到着。
でも時計を見たら、西山谷遡行を開始して既に3時間ほど経っているのだけれど。

 自分がいつも降雨後を狙っていることもあるが、今回もそうめんたっぷりの滝姿を見せてくれた。
そうめん滝は巨大な一つの岩盤で構成されていて、西山谷の数多くの滝の中で特異なタイプだと感じる。
しばらく滝直下のガレを行き来して試行錯誤してみたが、このアングルが一番そうめんのボリュームが多く見えるかと思う。

 なお、2年前遡行時にはあった、兵庫登山会のそうめん滝の看板が無くなっているのが残念だった。
何らかの拍子に取り付けてあった木から落ちてしまったのだろうか。
公設の案内板が皆無の西山谷にあっては、兵庫登山会の看板が事実上代替の役目を果たしてくれている。
これで西山谷の主要な滝では、ふるさとの滝とそうめん滝の2箇所が看板無しの状態になってしまった。
ちょっと寂しくなってしまったそうめん滝だった。








まさに名実共に涼感たっぷりのそうめん滝

 足場が悪いので滝の観賞は要注意。








10:49 そうめん滝出発

 そうめん滝からは、比較的大きな滝が連続している。西山谷上流部は下流部と並んで遡行が楽しめる区間だ。
そうめん滝からは既に上方にF16が見えている。一旦下流側に少し戻って、左岸にある巻き道を登っていく。
湿っぽい岩棚を登るので、スリップに注意しよう。








11:00 F16(8m)

 そうめん滝すぐ上流にあるF16に到着。8mあるようには見えないけど、それでも比較的大きなほう。
味気ない滝番号でしか呼べないが、固有名詞が付いていてもよいくらいだと思う。

 F16の次はいよいよ上流部で最もお気に入りの滝が控えている。
同じく左岸に付けられた巻き道を登っていく。すぐに滝の落ち口に出て、しばらく沢床を辿っていくと・・。








11:09 F17(7m) 愛情ノ滝

 「あなた一筋に」でお馴染みの愛情ノ滝に到着。樋状の岩盤からは勢いよく水が落ちてくる。
この立ち位置でも愛情ノ滝の飛沫が相当かかってくる。おおよそモテることとは無縁の自分にはぜひあやかりたくなる有難いスポットだ。
いつも思うけど、この滝名を付けられた方の感性には感心させられるばかり。

 愛情ノ滝の上流にはF18があるが、今日はもう立ち寄らずに西山谷を脱出するつもりだ。
ということで、ここが最後の滝ということになる。ちょうど天気も良くなってきたし、腰を下ろして滞在していこう。








愛情ノ滝では兵庫登山会の看板が健在だった

 アジサイと絡めてみたが、被写体の露出が違い過ぎるし、地表近くに咲いていたので撮影距離が取れずピントが合わせられなかった。
でもお気に入りスポットなのでとりあえず掲載。








11:26 愛情ノ滝出発

 約15分の滞在で愛情ノ滝を出発。これで滝巡りは終了。西山谷は見どころ満載なので、本当にまた来たいと思わせる谷だと思う。
愛情ノ滝の巻き道は上流部ではちょっとした難関になっている。(仙丈谷第5堰堤に比べればたいしたことはない)
まず左岸のガレの急斜面を登っていく。するとすぐに左手の崩壊が進む斜面に垂れているロープが見えてくるので、
補助として使って斜面をよじ登る。








最後のロープ場はすぐに終わり、急斜面ながらも普通の山道になる。
ロープにすがるシーンを撮りたかったのだが、ガレの急斜面に三脚を設置するのはリスクがあったので断念した。
ロープ場はアングル的には写真の中に入っているのだが、急斜面の向こうに隠れている。
やはり難所の撮影は難しいものがある。

 短い急斜面を経て、踏み跡は二手に分かれる。
左側へ降りていくのはF18へ。斜面上方へ続くのは出口を目指している。
F18は遡行概念上では行き止まりにあたるので、普通ならばF18を観賞後にはこの分岐に戻ってくる段取りになる。
今日は愛情ノ滝で滝巡りを締めたかったので、このまま尾根状の斜面を登っていく。
意外に明瞭な踏み跡が続いているので、ここから出口まで特に難しいところはない。








妙に見通しが良くなった西山谷上流部

 まだ出口には間があるのに明るくなってきたと思ったら、周囲は広く伐採されていた。
何故かは分からないが、以前とは全く違う雰囲気で、同じところとは思えないほど。
ヤブっぽいながらも、踏み跡は変わらず明瞭に続いている。
でも日当たりが良くなった分、以前よりはヤブの勢いが増しているかもしれない。

 上流部の山腹を西へトラバースして出口へと向かう。
ちなみに西山谷上流はやや西に離れたところにあるので、見通しが良くなってもここからは見えない。

 途中からは記憶通りに薄暗い森に戻る。右手にある別荘地からは自分の気配を察してか犬が激しく吠えてくる。
驚かしてすまんなあと思いつつ、いよいよフィナーレとなる。








11:50 西山谷出口到着

 西山谷はサンライズドライブウェイに飛び出てフィナーレとなる。
3度目の遡行とはいっても、やはり単独での西山谷は緊張感がある。
でもその分、ここに来た時の達成感と安堵感はかなりのものだといつも思う。




西山谷の現状の総括

 現状の西山谷を振り返ると、やはり以前よりテープなどのマーキングは減っていたように感じる。
更に中流部では逆に紛らわしいマーキングが増えている。自分の場合、過去2回遡行していた経験に大いに助けられたと思う。

 そして最も憂慮すべきことが、仙丈谷第5堰堤の下りの部分。
途中でロープなどの補助なしで、身一つで下る状態になっている。今思い出してもかなり危険だった。
別にルートを見つけるか、もしくは最低限の登攀用具を揃えていくほうがベターと思う。
次回遡行前には自分なりに対策を考えておきたい。








 路肩が広くなっているところを選んで、沢装備から山歩き装備へ切り替える。
交通量は少ないが時折でも車が通るので気をつけよう。








サンライズドライブウェイの道沿いではアジサイが最盛期。良い時期に西山谷に来たなあと改めて思った。
アジサイの撮影にも色が飛ばない曇天が一番良いと思う。




12:11 山歩き装備を整えて出発

 西山谷遡行を終えて、あとの行程はもうおまけのようなものだが、
一応寒天山道は未踏トラックでもあるので、気合を入れ直して下山しよう。

 サンライズドライブウェイの道端を西へ向けて歩いていく。
すぐに天狗橋を通過。橋上から下を見ると、西山谷上流がよく見える。水量はまだけっこう多い。
楽しく歩けるのかなと、ふと上流を見たら巨大な堰堤・・。やっぱり遡行概念図に倣うほうが無難かな。
地形図を見ると上流にあるのはゴルフ場。仮に源流部まで遡行が可能ならばゴルフコースに出るのかもしれない。

 まもなく三叉路になって、六甲ケーブル山上駅方面へ向かうため左折する。
山上ではけっこう多くのハイカーが歩かれていて、先程までと打って変わってのんびりムードでウォーキング出来る。








12:24 油コブシ下山口

 お馴染みの油コブシ下山口に差し掛かる。これまで油コブシ経由で下山するのがいつものパターンだった。
油コブシを経由すると、下山まで1時間もかからないが、いつも同じでは面白くない。
初めての寒天山道がどのようなトラックなのか楽しみだ。




 下り始めはコンクリートの階段道が続いてもう一つだが、その後寒天山道との出合までは、快適な区間が続いてけっこう好きなところだ。
結果的に、いつもの通りに油コブシを経由すると、快適なまま下山出来たのだが・・。








12:37 油コブシ寒天山道出合

 右手に進むのがお気に入りの油コブシのトラックだが、初めて寒天山道に突入。
これまでは決して路肩の草が触れることのない快適なトラックだったのが、寒天山道に入った途端に状況が変わったことに気付いた。

 地形図を見ると、途中までは緩やかな尾根、その後急な山腹に変わるようだ。








緩い尾根上では、そこそこ快適な状態が続いた。油コブシに比べると道幅は狭いが、ここまではまだまだヤブの勢いは弱い。








12:50 険しい道と緩い道の分岐

 そろそろ急斜面に変わるかなと思っていた頃、予想外にトラックが2方向に分岐していた。
以前に野歩記さんの寒天山道のレポを拝読していたのにすっかり忘れていた。
さてどっちへ進もうかなあと思ったが、険しい道は登りに充てるべきと考えて、緩い道を選択した。




 ここからが寒天山道を特徴付けると思われるヤブを突っ切るハイライトとなる。
ここまでヤブっぽいとは予想していなかった。いや、知っていたら無難に油コブシを下山していただろう。
でもここまで来て引き返すわけにはいかない。今日はどうしても寒天山道を踏破したいと思い直して、足元に気をつけつつ下っていく。
ヘビを警戒して三脚で先を掃いながら進むところもあった。三脚は撮影以外にも色々な用途で使っている。








油コブシを右手に見ながら寒天山道(緩い道)を下る

 ここは比較的ヤブがおとなしいほう。下界が垣間見えるがまだまだ先は長い。
とはいっても終点は渦森台だから、街まで降りる訳ではないのだが。








寒天山道(緩い道)は植林も通る

 ごく短いが途中には植林の山域もあった。ジグザグで急斜面をクリアするのでここだけは歩きやすかった。
でもこの歩きやすい区間は例外中の例外ですぐにヤブに戻る。








 右手に見える送電線鉄塔は、油コブシのトラックでは下部で横切るものと思われる。
かなり降りてきたことが分かるが、蒸し暑い時期のヤブの通過はかなり気疲れする。








 再び植林に入ると、また歩きやすくなった。基本的には雑木林のほうが好きだけど、こういうメリットもあるのか・・。

 この先でまた予想外の出合。案内板は無い。自分の方向感覚を信じて左を選択した。








13:18 険しい道と緩い道の分岐

 まもなく緩い道と険しい道が再び合流する出合に到着。険しい道のほうもかなりヤブっぽい。
寒天山道はその名の通り、寒い時期に歩いたほうが良いことに気付いた。

 ここからは一本道に戻って下っていく。やはりけっこう荒れていて、歩いている人は少ないのだろう。








13:25 鉄塔直下の出合

 まもなく鉄塔の直下にある出合に到着。鉄塔直下に出合があるとは珍しい。
それにしても断続的に現れる深いヤブで閉口する。出合もヤブに覆われていて、本当に歩いている人は少ないのだろう。
道標はどちらも渦森台を示しているが、今日は右側を選ぶことにこだわってみようという理由だけで右に進んだ。
足元は全く見えず、三脚でブッシュを掻き分けながら進む。
そうすることで目の前に段差があることに気付いたが、やみ雲に進んでいたらケガしかねない状態だった。








13:31 寒天山道高羽道出合

 幸いにも全てがヤブ道というわけではなく、すぐに次の出合。
事前情報に乏しい状態で降りてきたのでちょっと驚いたが、渦森台と油コブシの間には山麓をつなぐトラック(高羽道)があったのだった。

 周囲は「渦っ子の森」(渦が森小学校にちなむ)と名付けられている。渦っ子にとっては、ここが里山になるのかな。
看板が設置されたのは昭和56年。この時の渦っ子とは同年代だなあと気付いた。
世は少子化が進んでいるから、今もこの小学校があるのかなと調べてみたら幸いにも健在だった。
但し、現生徒数は昭和56年頃の約3分の1。本当に時代は大きく変わった。

 親の世代のような時代であれば既に自分も結婚していたかもしれないが、先行き不安な現状では少子化が進むのは当然の成り行きだと思う。
問題は一長一短に解決出来るレベルではないのに、今の自公政権の政策はあまりに短絡的に見えて仕方がない。
定額給付金、エコポイント、高速料金千円も、莫大な税金を使って借金を増やした割には、砂漠に水を撒くようなもので費用対効果が薄いのではないか。
そういえば麻生はまだ解散していなかったのだな。




 合流した高羽道は、車が通れるほど幅広の林道になっている。ここから渦ヶ森団地まで600mのようだ。








13:37 背山散策路高羽道の詳細を知る

 緩やかに下ってきて、南側の木々の向こうには渦森台の住宅街が見えてきた。
その前に最後の出合。ここには背山散策路高羽道の案内板が設置されていて、初めてこの周辺のトラック接続状況を知ることが出来た。
またもっと良い季節に散策してみたいと思わせるところだ。








13:42 高羽道、寒天山道登山口

 案内板のある出合からすぐに住宅街に出てきた。ここにも多少簡略化された案内板がある。
予想外に難路だった寒天山道による下山は無事に終わった。
変化に富んだトラックであるとはいえるが、西山谷の下りには油コブシのほうがいいかもしれないと思ったのが率直な感想だ。

 以前、天狗岩南尾根(最寄は渦森台4丁目バス停)を登った時に、終点(渦森台バス停)まで乗ってしまい、
その時にこの住宅街の縁を歩いたことがあるので、バス停がすぐそこにあるのは知っている。
次発のバスの出発時刻まで余裕がなかったので、この登山口で一息入れていくことにした。
もちろん渦森台バス停の時刻表は下調べ済みで、次々発の14:00のバスに乗ることにする。








13:53 渦森台バス停到着

 バス停に到着するとすぐに14時発のバスがやってきた。
渦森台を出発地とするのは2系統あるので、利用する際は気をつけたい。




14:00 神戸市バス38系統 阪神御影行き発車

 冷房が効いている車内は天国のようだった。心地良い疲れに、バスの揺れが加わって眠くなってしまった。
でも寝る間は無く15分程度で住吉駅に到着する。




 西山谷遡行だけでなく、下山もけっこうハードな山行となった。
今の薮深い時期には寒天山道よりも油コブシ、そして西山谷は完全遡行よりも正規ルートを辿るほうが無難で快適。
というのが今日得た教訓となった。そして、やはり西山谷を遡行する楽しさは、六甲の谷の中でも随一だと改めて思う。








今日の行程の断面図です




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