「裏銀座縦走最終日・再び槍ヶ岳から新穂高へ下山」 2015年 8月11日(火)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「槍ヶ岳」、「穂高岳」、「笠ヶ岳」


 行程概要 


 1:05 起床

 目が覚めると雨音聞こえず外は静か。もしやと思いテントから顔を出してみると、星空がきれいで穂先の輪郭も見えている!!
飛び上がる思いで喜んだ!結局、雨は昨夜早いうちに止んだようだ。
自分は運が良かったとしかいいようがない♪
ということで、当初の予定どおりに飛騨沢コースで新穂高へ下山することに即決。
嬉々として朝食と撤収準備を進める。








 今日は2013年の表銀座縦走最終日と全く同じ下山行程で、中でも新穂高〜槍平までは2014年に逆向きでも歩いています。
ということで最終日の飛騨沢コースの山行記録はやや端折ってまとめたく思います。








 3:11 殺生ヒュッテ(2,860m+)出発

 まずは槍の肩への登り返しから行程を始める。行程4日目ということもあってペースはかなりゆっくり。
でも槍沢最上部のジグザグはかなり登りやすい。意外にも調子が上がってくるように感じた。




 3:50頃 槍ヶ岳山荘(3,080m+)到着

 意外にも槍の肩まであっさり登ってきた感じだった。
ここで75Lザックをデポして、アタックザックの軽装で穂先へ向かう。
表銀座縦走以来、今回も穂先へ登れることになって幸運だ。








 4:06 穂先登頂開始

 見上げれば既に穂先アタック中の先行者の方々がよく見える。
今回は登山者が少なめで、途中で殆ど立ち止まることなく槍の頂きへ!




 槍の山頂には30分掛かったかどうかというくらいで到達した。
まだ周囲は日の出前だがやはりここから見えるは絶景だ。既に山頂は十数人くらいの方々で賑わっていた。

 自分にとって表銀座に次いで2回目の槍の山頂。9月に登った前回と違ってやはり冷え込みは弱くて過ごしやすい。








ご来光は東天井岳辺りから

 行程4日目で初めてゆったりとご来光を迎える。
やはり場所が場所だけに、ここから眺めると格別の思いがする。
明るくなっていく表銀座や常念の稜線をゆるりと見渡す。








上空の雲はやや多めながらも、奇跡的に朝日に照らされる槍の山頂

 4日連続で好天の朝を迎えることが出来て感慨無量だった。おかげでこの長い行程も歩くことが出来たのだが。

 せっかくなのでこの後撮影待ちの列に並んで、自分も記念写真を撮っていただいた。

 そうこうしているうちにどんどん日が昇ってきて景観も明るさを増す。
今回の槍の登頂で最も眺めたかったのはもちろん裏銀座方面の景観だ。








西鎌尾根の向こうに三俣周辺の景観を見渡す 硫黄尾根越しに裏銀座の稜線を振り返る 

 目指した槍の頂から裏銀座を振り返って縦走を締めたい、という願いが叶った一時となった。
昨夕のどしゃ降りの時には予想するのも難しいくらいの素晴らしい朝となったおかげだった。
今回は良い方向に転がったが、山の天気というのは本当に読むのは難しいものだ。

 それはともかく、ただ憧れの思いで裏銀座を眺めた前回から、実際に縦走してきた稜線を目で追うという全く違う感覚で絶景を満喫した!
本当によく踏破出来たなあと改めて最高の達成感に浸ることが出来たひと時となった。








笠に懸かる影槍 そして南には穂高へ続く主稜線 

 影槍がちょうど笠のテン場辺りに当たっているのに気付いてまた感動する。
何度眺めても感動的な絶景にただただ圧倒されるばかりだ!

 裏銀座に比べると、すぐ南には穂高へ続く主稜線が貫録抜群だ。
今年のアルプス山行では、まだ大した岩場のあるところへ行っていないことを穂高を見て思い当った。








東鎌尾根、槍沢の向こうには西岳、常念、蝶が横たわる。

 裏銀座に加えて、常念から蝶へも既に歩いているので、こちらへの思いも強い。
出来れば蝶までは到達出来た母にもこの絶景を見せてあげたいところだが、高所恐怖症のうえに岩場嫌いということが分かってきたので実現は難しいところだ。








 5:30 槍ヶ岳山頂(3,180m)より下降開始

 まだ薄暗いうちに到着してから1時間近く過ごした槍の頂。
だいぶ日が昇ってきたので、名残惜しいけど下降を開始することにしよう。
ふと下方を見下ろすと、穂先へ登りに掛かっている登山者の列が出来ている。

 一部双方向で譲り合うところもあるが、下りは殆ど前に人が居らず自分のペースで下降することが出来た。




 5:45 槍の肩へ降り立つ

 下り始めて僅か15分で肩まで降りてきた。
アタックザックを再び75Lザックに収納して、下山準備を整える。
この時間に出発出来れば事前に下調べを行っていた、新穂高発13:30松本行バスに余裕で間に合うはずだ。






出発前の登山者が行き交う槍ヶ岳山荘(3,080m+) まだ多くのテントが見える殺生ヒュッテのテン場。常念越しで槍沢に朝日が射し込む様子が素晴らしかった。 




 6:00 槍ヶ岳山荘出発

 絶好の好天でご来光を眺めることは出来たのだが、早くも空には雲が目立つようになってきていた。
昨日よりはやや悪い傾向という見通しは、大筋では外れてはいないようだ。
穂先と槍沢を今一度名残惜しい思いで一瞥してから出発する。

 まず飛騨乗越まで主稜線を辿って、いつもの飛騨沢コースへ入る。








飛騨沢コースを下る。源頭部付近はガレ。

 上空は雲が広がってきていたが、視界は全く問題なし。この角度から見る笠はやはり貫録がある。
また右手には昨日やっとの思いで登っていった西鎌尾根の稜線がよく見える。








最盛期は過ぎていたが、まだまだお花畑が圧巻の飛騨沢上部

 前回は9月に下ったので、やはりその時よりは花がある光景ですごく癒される。
正面の笠に向かって下っていくのが心地良い、素晴らしいコースと改めて思う。








 7:02 千丈分岐点(2,540m+)

 千丈乗越へ向かうことが出来る千丈分岐点。槍平小屋のご厚意で救急箱が置かれている分岐だ。
この辺りでも多くの登り中の方々とすれ違う。飛騨沢を詰めて槍まで登ったことはないが、主稜線に到達するまではきっとしんどいだろう。








行く手には次第に中崎尾根が近づいてくる

 飛騨沢コースはまもなく森林限界を下回る。
中崎尾根や奥丸山が高くなり、笠の稜線も一旦は見えなくなっていく。
中崎尾根もそのうち歩いてみたいところだ。








 7:38 最終水場

 湧き出たばかりの冷たい水がたまらなく美味しい!
そしてついでに顔を洗うと最高にリフレッシュ出来る。遠慮せずに水を使えるのがすごく有難く感じる。








いつしか右手の中崎尾根を見上げるように。

 飛騨沢コースは緩やかな下りが続くようになると、まもなく懐かしい槍平小屋に到着だ。








 8:29 槍平小屋(1,980m+)到着

 居心地良さそうで、いずれここでテントを張れる行程を組みたいと願う槍平小屋のキャンプ指定地に到着。
ここも水が豊富なので快適な滞在となるだろう。

 キャンプ指定地から少しだけ南下すると槍平小屋に到着。
前回の表銀座縦走での下りの際には途中でバテてしまった経験があるので、
今回は下りでもややペースを落として休憩もしっかり確保することを心掛けた。

 ということで、槍平小屋で30分近く時間をとって身体を休ませておく。




 8:54 槍平小屋出発

 新穂高までの残り半分近くの行程を始める。
まだ標高差は1,000m近く残しており、所要時間も4時間ほど掛かる。最後までしっかりペース配分したい。








 9:09 南沢出合(1,900m+)

 槍平小屋から木道をしばらく下っていくと南沢出合となる。
昨夜それなりに雨が降ったはずだが、ここには全く水が流れていなかった。
今回は結果として杞憂に終わったが、このコースは直前の降水量が気になるところだ。








大きな岩が積み重なるところもあるが概ね歩きやすい下りが続く

 南沢を過ぎると次第に森や谷が深くなっていき、久しぶりの下界が近づいてくるのを実感出来る。
槍平小屋から滝谷出合まで標準所要時間で50分。
飛騨沢コースは行き交う登山者も少なめで静かな下りだった。








 9:37 藤木レリーフ

 順調に行程は進んで藤木レリーフまで下ってくる。
レリーフ前の登山道は水が流れていてとても涼しい。芦屋の高座の滝でもおなじみの藤木さんを見上げてちょっと一息入れる。








 9:41 滝谷出合(1,700m+)

 藤木レリーフからすぐに滝谷出合に到着。
迫力ある谷間の光景を見上げて10分ほど小休止に入る。谷間からは穂高の稜線もまだクリアに眺められる。
ここは谷の奥から涼風が吹き付けて居心地最高だった。








白出沢出合に向けて最後の登山道を下る

 滝谷出合を過ぎると更に森と谷は深みを増し、左俣谷の山深さを満喫出来る下りとなる。
時折、笠も見えてきて退屈しない。

 表銀座縦走最終日よりも今回のほうがペース配分が上手くいっているのを実感出来ていた。
ややペースを抑えて下ったからか、全然バテを感じることはなかった。
もしくは昨日の殺生ヒュッテの夕食が効いていたかもしれないが。








滝谷出合を過ぎても、チビ谷、ブドウ谷と多くの谷を渡っていく

 今回もチビ谷には全く水は流れていなかった。一方、ブドウ谷はどこなのか何度か歩いているのにイマイチはっきりしない。
 天候のほうは高曇りで時々日も射すといった感じで、4日間ともレインウェアの出番無しのままで終われそうだ。

 滝谷出合から白出沢出合まで標準所要時間で1時間10分。
バスの時間まで余裕を持っているので、先を急がずに意識して立ち休憩を入れながら下る。








11:00 白出沢出合(1,540m+)到着

 工事の音が聞こえてくると白出沢出合に到着!!
沢に出る直前で本来の登山道は閉鎖され、急な仮設階段を下る迂回路へ誘導される。

 4日間にわたって途切れることなく歩いてきた登山道はここで終了となる。
達成感と一抹の寂しさを感じながら、白出沢の向こうにそびえ立つ笠を眺める。
すぐ雲に隠れるイメージが強い笠が昼前まで見えていること自体幸運なことと思う。但し抜戸岳辺りではガスが掛かり始めていた。

 右俣林道に出たところに設けられている休憩所で小休止をとっていく。
流水が引かれていて、涼をとることも出来る。またトイレもあるので有難いところだ。




11:13 白出沢出合出発

 新穂高温泉まであと2時間弱の林道歩き。
でもいつも林道を歩き始めると早足になってバテる癖があるので、ここでも先を急がずにペースを抑える。
しかし登山道よりも林道を歩くほうがやはり疲れやすく感じる。
ガタガタ道を街歩きに近い状態で歩くことで、結果的に足運びが雑になるのだろうか。
理由は判然としないが、奥穂ピストンの下りで横尾〜上高地の3時間の林道歩きでめちゃくちゃ疲れたのは確かだった。








11:52 穂高平小屋(1,340m+)到着

 林道歩きが始まるとやはり疲れをはっきりと感じてくる。
穂高平小屋に辿り着くとほっとする。稜線はというと南岳〜大キレット以外はしっかりとガスに覆われていた。
今朝、槍で御来迎を眺めたのが奇跡だったと思えてくる。

 一方で下界に近いここでは日向ではかなり暑い!
忘れかけていた猛暑の世界に戻りつつあることをイヤでも感じられる。

 今日は穂高平小屋は営業中で、日陰のテラスで冷たい飲み物をいただけるよう。
でもまだあと1時間近く行程を残していることと、先客もおられたこともあって今回は見送った。




12:02 穂高平小屋出発

 残された行程はあと1時間の林道歩き。
山道で少しだけショートカットは出来るものの、昨日の雨であまり状態は良くないだろうと今回も林道を下る。








右手に見える中崎尾根が下り着くところが新穂高温泉 久しぶりに見えてきた下界の光景。ロープウェイ駅に近いのに駐車場は意外と空いている。

 上高地へ下りるよりは林道歩きは短いが、それでも2時間は掛かるので楽ではない。
先を急がずに立ち休憩は入れていくが、もうこの頃になると頭の中は冷えたコーラを飲むことでいっぱいになる。

 と同時に、七倉から真っ暗なトンネルの中を歩き始めたことが遠い昔のように思えてくる。
この裏銀座縦走の4日間は自分にとって大きな経験であり、いつまでも忘れない山行になるだろう。
下山が近づくといつもは次の山行計画を考えるところだが、この時は裏銀座縦走の余韻で満たされていた。








12:56 新穂高ロープウェイ・新穂高温泉駅(1,100m+)到着

 長い長い山旅だった!

 自分にとってもう馴染み深くなってきた新穂高温泉に遂に辿り着いた。
この時はもう笠は見えていなかったが、麓から笠の山肌を見上げて大いに達成感は得られた。
でももう歩かなくてもよいのはやはり少し寂しい。




 七倉に戻るまでまだ旅は終わらない。
ロープウェイ駅にある自販機で乗車券を買ってバスを待つ。
30分ほどの待ち時間。早過ぎず遅過ぎず、狙いどおりのタイミングで下山出来たことに満足だった。




13:30  新穂高温泉発、 濃飛バスにて松本へ (\2,880)

 夏季のみ松本行の直行バスが運行されている。
もしこの直行便に間に合わなかったとしても、後続の便で平湯温泉乗換で松本へ行けるので安心だ。

 座席はまだ若干余裕のある状態で発車。
下山後の気の抜けた状態でバスの車窓を眺める時間が旅好きの自分にとってはなんとも心地良い。




15:40頃 松本バスターミナル(松本駅前付近)着

 松本に近づくにつれて、運行経路の国道158号はやはり流れが悪くなる。
表銀座の時とほぼ同じく定刻から約10分の遅れで松本駅に到着した。
久しぶりの都会の景色を前に現実世界が近くなってきたことを強く実感させられる。








16:00 松本発、大糸線普通列車にて信濃大町へ (\670)

 松本を出た直後は混んでいるが、北へ進むにつれて段々と空いてくる。
信濃大町までは約1時間の列車の旅だ。のどかな安曇野の車窓がなんとも好ましい。

 北アルプスが見えるように座るが、どこも厚い雲に覆われて稜線は全く見えなかった。




16:57 信濃大町着

 駅前に待機していたタクシーにて七倉へ。
運転手さんと山やスキー、そして大町での暮らしのことや、一方暑い関西のこととかをお話していると
あっという間に七倉へ辿り着いた。








17:30 七倉登山口・七倉山荘(1,060m+)到着!!

 3日ぶりに懐かしの七倉まで戻ってきた!
新穂高温泉から4時間掛かったことも、裏銀座縦走の行程の長さを物語っていると思う。

 Uターンして大町へ戻っていくタクシーを見送り、自分の車へ戻って山装備を解き早速七倉山荘へ向かう♪

 七倉山荘は日帰り温泉だけでなく、宿泊も可能で食事も楽しめる。
日程に余裕さえあれば、裏銀座の前後泊にぜひ利用したいところだ。
でも今回は日帰り温泉のみの利用。(大人1人:\650)
自分にはちょっと熱めの湯だったが、裏銀座縦走の汗はしっかり流してリフレッシュ出来た。
温泉自体はこじんまりとしているが、設備はたいへんきれい。また七倉に来た時にはぜひ利用したい。




 休憩室で一休みしてから七倉を出発。いつものことながら長野県を離れる時は寂しい。
裏銀座の余韻に浸りながら、約6時間かけて帰途に就く。








 〜 終わりに 〜

 登山を始めてから約10年になりますが、今回の4日間の行程が最も必要体力度のグレードが高い山行だったことは間違いありません。
北アルプス三大急登のブナ立尾根を登る初日も体力を使いますが、2日目、3日目が特に行程が長くてハードです。

 表銀座縦走を経験してから、裏銀座縦走に挑むのが順当だと歩いてみて強く思いました。
また烏帽子から槍へ向かう2日目、3日目は森林限界を越えた稜線歩きが延々と続きます。
仮に1年2年遅らせてでも、ぜひ好天続きの日を狙って縦走されることを強くお薦めします。
裏銀座縦走コースから避難するエスケープルートは少なく、またその行程も長いので途中下山するような事態は出来れば避けたいところです。

 今度は裏銀座縦走コース周辺に見えていたルートを歩いていきたいと考えています。
4日間の長い山行記録に最後までお付き合いいただきまして、まことにありがとうございました。








 烏帽子小屋手前で脚の一本が外れながらも、今回の裏銀座縦走レポを陰で支えてくれた三脚です。
ビニールテープで何とか応急処置をしつつ乗り切りました。
感謝しつつも今回の裏銀座縦走をもってこの三脚は退役となります。








 
行程断面図です




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