「剱岳・登頂、そして別山尾根へ」 2016年 7月23日(土)

国土地理院地形図
 : 25000分の1 「剱岳」




 1:05 起床
 
 熟睡のおかげか、今日の行程のおかげかすっきりと目が覚めた。
テントから顔を出すと月明かりもあるが多少雲も出ているようで星があまり見えない。
でも風も出ていないし昨日のように標高の高いところは晴れているだろうとみて、
とりあえず計画どおりに剱沢まで向かう心づもりで出発しよう。








 行程概要 

 
 3:04 早月小屋・キャンプ指定地(2,210m+)出発  

 キャンプ場の脇から剱に向けて早月尾根の登山道が再び始まる。
まだまだ暗いが登り始めから1時間は灌木帯の登りで危険は少ないだろう。
 比較的急なところもあるが、今日もゆっくりめに歩き始めて調子良く高度を上げていく。








 3:59 2,460m+辺りで剱が大きく見えてくる!  

 1時間の登りを経て、ようやく平らで周囲が開けたところに出てきた。
正面にはどーんと大きく剱が見えているが、まだまだ先は長そう。
 ここで5分程度小休止してから出発。
早月尾根は一旦左へクランク状に曲がっているので、ここは歩いている途中の早月尾根を斜め横から見ることが出来る貴重なところだった。








まだ少し先と思っていた岩場が現れ始めた  早月小屋がもう遥か眼下に見えてきた 

 再度クランク状に曲がった辺りから岩場が見受けられるようになってきた。
但し、手掛かり足掛かりは豊富にあって、見た目ほど難しくはなかった。

 一旦緩んでいた尾根が再び傾斜が増す辺りで、登山道は池の谷側に最近付け替えられたようだった。
従来のものと思われる東大谷側の踏み跡は通行止めになっている。
 登山道の一部はまだまだ土が固まっていない状態だったので、ここは雨が降れば要注意箇所と思う。








 4:45 (2,600m+)  

 最初の岩場からの登りが一段落すると、ようやく2,600m地点に到着。
また一段と貫禄十分の剱が近くなってきたが、標高差はあと400m残している。

 ここから尾根直上へ向かう踏み跡もあったが、正しくは前方に見えている残雪を越えていくようだ。

 ここは小広くなっているので、安心してザックを下ろして5分ほど小休止した。




 早月尾根で残雪があったのはここだけだった。
雪質は硬くて滑りそうだったので、出来るだけ残雪の縁の地面を選んで歩いた。








シナノキンバイ?に励まされる  2,614mピークを過ぎた辺りのコル。東大谷側が高度感抜群 

 いつの間にか周囲に見かけるのは高山植物になった。
巨木群を堪能することに始まって、ここまで変化に富んだ光景を楽しめるのも標高差2,200mの早月尾根ならではだろう。

 そして花畑だけではなく、周囲には険しい岩場も見えてくるようになってきた。
次第に早月尾根最上部の世界に入ってきたようだ。








早朝は雲が目立っていた立山方面の稜線だったが、いつの間にか朝日を受けている  

 登山道は多くの区間で池の谷側に付けられているが、コルでは尾根直上に戻ることを何度か繰り返す。
峻険な岩の間から劔御前が正面に見えたことで、現在のおおよその標高を知ると共に大いに気持ちが高ぶってきた!








遥か下方の雲海に現れる影剱を見やりつつ、ザレた登山道をひたすら登り詰める   5:55 (2,800m+) 剱まであと200m!。山頂付近を見上げるが人影は見えない。 

 剱の大きな大きな影を見てまた感動!
早月尾根の山旅も終わりが近づいてきて、もう見えるもの全てから刺激をもらえている状況だった。

 ザレた登りを終えて、岩尾根に乗ったところが2,800m地点。
200mおきの指導標はもうここが最後だ。足場は狭いがどうにかザックを下ろして、剱までで最後となるはずの小休止をとった。








2,800m地点より右手に大きく方向転換してから、緩やかに左カーブを描いて登っていく   

 まだ険しくはないが痩せた岩尾根で高度感は既に抜群。
この先でシシ頭、カニのハサミと名の付いた岩場もあるようだし、最後まで慎重に登り詰めていく。








剱直下の峻険さを魅せる早月尾根  昨日は一日をとおしてあまり見えなかった大日岳方面。気持ち良く歩けそうな稜線だ。

 朝の斜光を受け始めた岩場が荘厳そのものだった!
この先で痩せ尾根の区間は終わって、いよいよ剱直下の岩場に入っていくようだ。
この辺りからトレッキングポールを片付けるタイミングを計り始めた。

 この前後で後続の単独男性2名に相次いで道を譲る。
早月尾根での登りを終えるまでに出会った方々はこのお2人のみだった。








 6:32 古い指導標のある小さなコル  

 見上げればどれがシシ頭かカニのハサミかは判然としないが、もう最終段階の岩尾根に入っていくのは間違いない。
前方にはさっき道を譲った方が、早くもだいぶ高いところの岩に取付いておられる。

 古い指導標の横で少しだけ息を整えてから岩に取付くが、その前にここでトレッキングポールをザックに括り付けておくことにする。








クサリが連続する岩場に突入する  

 岩場を登ってはへつっての繰り返しが始まった。
足場はボルトまで使って確保されているところもあって、不安に思うようなところは全くなかった。
三点支持を効かせて慎重に登っていく。
ここでも基本的にルートは池の谷側に付けられている。

 なおカニのハサミはかつては2つの岩塔があったが、片方は崩れてしまいその名のみが残っている。
結局最後まで残ったハサミの岩塔がどれなのかは分からなかったが、別山尾根から見ると分かりやすいという。

 急な岩場を喘いで登っていくと、遮るものなく右手には別山尾根が見えてきた!!
そしていつしか行く手はなだらかになっている。遂に早月尾根が終わったことを感じた。








 6:54 遂に早月尾根を登り詰める 上方には有名なかの古い指導標が・・

 不意に緩やかになった岩尾根。
早月尾根を示す指導標を見て、あまりの達成感の大きさに万感の思いが早くも込み上げてくる。

 少し先で別山尾根からの登山者が行き来するのも見えてくる。
2日に分けてじっくり登ってきた早月尾根だったが、長かったような短かったような。
もう半分は夢心地で緩いガラ場を登っていく。








早月尾根、別山尾根を分かつ、読めない指導標  

 この指導標の横で2つの尾根のルートは合流。
自分が登ってきた時は偶然にも下り始めの方が多くて、ここから山頂までの間に数人の方に道を譲っていただいた。
早月尾根を出た途端に一気に登山者が増えた。早月尾根1割、別山尾根9割という登山者の割合は的を得ていると思う。








遂に行く手には祠の屋根が!  

 山頂手前まで大きな岩が折り重なっている。最後まで集中しよう。








 7:05 剱岳山頂(2,999m)到着!!  三等三角点の記によると、現在の三等三角点が設置されたのは平成16年(2004年)8月24日。

 柴崎測量官が種々の事情から四等三角点に変更され、選点されたのが明治40年(1907年)7月13日。

 柱石が置き換えられているものの、間違いなくここが「剱岳・点の記」の重要な場所であり、
読み終わった直後に訪れることが出来たことで更に感動が大きくなった。
 今回はいつになく厳粛な気持ちで三角点にタッチした。

 国土地理院とは無関係の自分が言うのもなんですが、本当に三角点は大事にしましょう。



 

 遂にやりました!!

 アルプスもだいぶあちこちの山を登ってきたけど、劔の山頂ほど感動したことはなかった。
山行の直前に「剱岳・点の記」を読破したことも影響したかもしれない。この山行後には続けて映画も観るつもりだった。
それに加えて室堂への縦走のために、テン泊装備のままでここまで来られたことも大きかっただろう。

 南西から北東に向けて長く伸びる劔の山頂では、既に多くの方が思い思いに過ごされている。
後から登ってこられる方々のために、感動もそこそこに山頂においての一しきりの撮影を手早く済ませていく。








雲海越しの後立山連峰のシルエットが見事 長大な早月尾根を振り返る。遥か下方の馬場島付近は雲の下で見えない。 

 昨年に白馬、爺ヶ岳、鹿島槍に登った時、西側の山で最も目立っていた剱に今立っているということだけで嬉しい。
しかもこのような絶好の好天に恵まれたのだから、もう最高の気分だった。日頃抱えているものが抜けていく思いすら感じる。

 それにしても鹿島槍の双耳峰のトンガリぶりが一際惹かれる。
あそこは南峰しかまだ立っていないし、五竜や唐松も未踏のまま。いずれも近い将来に訪れることになるだろう。

 足下には柴崎測量官一行が剱へ登頂を果たしたルートである長次郎谷が見える。
雪渓を登るのはどうしてもリスクがあるが、出来れば自分もいずれは足跡を辿ってみたいものだ。

 そして登ってきた早月尾根にも自然に目が注がれる。
これほどどっしりとして大きくて長く、形の整った尾根はそうそうないだろう。
定期的にここを歩かれる方が多いと聞くが、自分も大いに納得出来る。
今回は発見できなかった三角点「気和平」も探索したいし、自分もいずれ再訪することになるだろう。








これから下っていく剱沢方面。別山尾根ルートでも標高差、距離は思い描いていた以上にタフなものであると納得出来る絶景だった。 

 多くの方が絶景を満喫されている中、自分も剱沢方面を眺められる岩に腰を下ろして休憩を取った。
立山の向こうには槍、水晶、赤牛、乗鞍、御嶽、笠、黒部五郎、薬師・・。この夏の日にどこまでも見通せることに改めて感動。
そして室堂へ登ってくるアルペンルートのバスも見える。明日の最終下山地点となる室堂までもだいぶ距離がある。

 また、初めて剱沢までの距離と標高差を目の当たりにして、改めて気を引き締めることとなった。
自分は初めての別山尾根をこれから下っていかなければならない。
 更に今は好天でも昨日と同様の予報だから、そのうち雲が上がってくるはず。

 出来れば好天の状態で剱沢まで辿り着きたい。

 ということで本当に立ち去り難い剱の山頂ではあるが、長居しすぎないようにウォーミングアップを行って出発準備を始める。




 7:35 剱岳山頂出発

 続々と登ってくる登山者とすれ違いつつ、早月尾根との分岐点まで引き返す。








早月、別山尾根分岐。視界が悪い時はルートミスに注意という。   

 登ってきたルートを辿っていたら自然に早月尾根へ進んでしまいそうだった。
例の古い指導標の少し手前のところで、別山尾根へ向かうルートは尾根の直上を離れる感じだった。








これから下っていく別山尾根を正面に見据える   

 早月尾根からも時折見えてはいたが、本当にサメの歯のような険しい岩尾根が続いている。
一見するとここにルートが拓かれているとは思えない。「剱岳・点の記」でも早月尾根と同じく尾根伝いでの登頂を途中で断念している。
でも今は目を凝らしてみると岩尾根上を行動中の登山者が大勢見えた。

 別山尾根は早月尾根以上に険しい岩尾根であると共に登山者数も桁が違う。
三脚を使用する時は、自分と機材の安全を確保出来ること+周囲の方々の邪魔にならないこと、という条件を揃えることを心掛ける。




 最初のこのガラ場でも登り中の多くの登山者とすれ違う。
時間的に今は下りよりも剱を目指す登り中の登山者のほうが多そうだ。







 8:00 遂にカニのヨコバイへ  

 山頂から下り始めて間もないが、予想外にあっさりとカニのヨコバイが近づいてきたようだ。

 ちょうどこの指導標があるところで登りルートと合流するようになっていて、ここでも登り中の方々が続々と通過されていく。
この時の団体さんの中のお一人に自分の大きなザックを見て、お声をお掛けいただいた。
剱沢に辿り着くまでにテント泊装備のおかげで、何人の方にお声掛けいただいたのか正確には覚えていないほどになった。

 ご質問されたことは、まず行程のこと、次いでザックの大きさと重さ等々。
基本的に別山尾根は軽装で往復される方が大半であるという事情がよく分かった。

 幸いにも自分の後続の下りの方は居なかったので、すれ違いざまにお話ししていても支障はなかった。








カニのヨコバイ始まる  カニの要領で慎重にヨコバイした 

 なるほど・・。

 確かにこの高度感はすごい。もし落ちれば命にかかわるだろう。

 でも最初の足場に目印が入っていたり、手すりの鎖もあるし、岩を斜めに横切るステップは見た目以上にしっかり足を置けるものだった。

 天気を選んで、慎重に通過すれば大丈夫。但し自分の母のように高所恐怖症の方は厳しいかもしれない。




 自分は順調にヨコバイ出来たが、ここは三脚の置場が無かったので、自分目線での写真のみに留めておく。








難所はカニのヨコバイだけではない   8:10 急なハシゴを下降

 昨年のクリヤ谷コースでの負傷から、何でもないところこそが要注意と胸に刻んでいる。
統計上でもカニのタテヨコよりも無名の箇所での事故が大半という。
だから一服剱を越えるまでは気を抜かずに、集中し続けていかなければならない。
早月尾根を登った疲れはあるが、まだまだ体力的にも余裕を感じていた。
ただただ一歩一歩慎重に足を運んでいくことを意識した。




 ハシゴも三点支持の要領で慎重に降下。その先もクサリ場の下降が連続する。








 8:20 平蔵のコル  

 古い小さな小屋を見届けると、ルートは日当たりの良い平蔵のコルに出てくる。
別山尾根が初めての自分にとっては、ルートファインディングから集中しなければならなかった。
マーキングや指導標は完備されているので見落とさないように視野は広めにする。
登りと下りのルートがどこで別れているのか概要が掴めていないこともあって、確認作業は大事だった。
立ち止まった時に見える範囲内の登山者の流れをよく見ておくことにした。

 ここでは少し先の岩塔(後で判るが平蔵の頭)に先行する登山者が見える。








急角度の平蔵谷の雪渓の光景が素晴らしい  

 ここでは文字どおり下りではあるが、この後頻繁に登り返しが現れるようになってくる。
この平蔵のコルの岩棚では登り下り共通のルートを使うようだ。








 8:28 平蔵の頭へ登り返し   

 平蔵のコルから見えていた平蔵の頭への登り返しが始まった。
登り始めがスラブ状の滑りやすい岩だったので、すれ違った登り中の登山者(ここでは剱を目指す方が下り通過になる)で少し手間取る方も見受けられた。
中にはハーネスでガイドさんに確保してもらいながら歩かれる方も。この後も同様の方々を3組は見かけただろうか。
登山ガイドは遣り甲斐のある仕事のようだと端で見ていて感じた。

 資格の有無は置いとくとして、自分も母を出来れば剱に立たせてあげたい思いはあるが、早月、別山のどちらから登っても高度感があり過ぎて難しいだろう。
でも剱沢までは問題なく案内出来るだろうから、いずれは母にも剱を観てもらいたいと願っている。

 登り中の登山者をやり過ごしてから、平蔵の頭へ向けて登り返しを始める。
急な岩場ではあるが、手掛かり足掛かりは豊富にあるので、特に難しいところではない。
それよりも日差しをまともに浴びる角度であって、この頃よりかなり暑くなってきた。








 8:35 平蔵の頭   

 平蔵の頭は2、3人はルートを外して座って休めるスペースがあったので、小休止を入れていく。
ここで剱山頂を出発して初めて後続の方々に追い抜かれる。この時もその中のお一人の単独男性としばしお話しした。
その方は昨年に馬場島から室堂まで歩かれ、別山尾根を今一度歩きたく今回はここを往復されるそう。
自分はまだ別山尾根のまだ一部しか歩いていない段階だったが、そのお気持ちはよく分かった。
確かにここはまた何度も来たくなるところだろう。




 道をお譲りした後続の方々がクサリを下りきり、お話しした方を見送ってから自分も平蔵の頭から下っていく。

 この後、ルートは東大谷側をトラバースする山腹道となってしばらく続く。








別山尾根では珍しくほっと一息つけるところ   

 山腹道はすぐに終わって、すぐに明るい尾根直上に出てくる。
ケルンの周りは小広くなっていて一休みにもってこいだが、平蔵の頭の上で休んだばかりなので先へ進む。








 9:03 前剱の門   

 しばらく穏やかな場所が続いた後、目の前には前剱の門と呼ばれる岩塔が立ちはだかる。
ここの登り返しは短くて大したことはない。




 登り返した後は再び東大谷側に付けられた山腹道を辿るが、ふと地形図を見ると前剱はごく近くにありそう。
このまま山腹道を辿っていればうっかり通り過ぎてしまうのではと思い、とりあえず左手の稜線上に出てみることにした。








2,800m+ピーク辺りから剱岳を振り返る どうやら前剱はもう少し先だった

 何も指導標が無かったので前剱ではないことはすぐに分かったが、別山尾根側から剱を見るのが自分にとっては初めてなので確かめに登ってきた甲斐は充分にあった。
確かに剱は剣を幾重にも突き立てたような険しい山ではあるが、山頂付近だけはなだらか。
光景だけは100年前と変わっていないので、どこから登れるかと眺めていた柴崎測量官や長次郎の思いに少しでも近づけるような気がする。




 慎重に下って正規のルートに戻り、無通過だけには注意して再び狙いを定めて登り返す。








 9:21 前剱山頂(2,813m)到着  

 意外にも広い前剱山頂に到着。先ほどのミニピークからそれ程歩いていないが、剱の山容がより広く眺められるようになってきた。
剱は威厳たっぷりにどっしりと構えており、観ていて本当に惚れ惚れする。

 剱の山頂を出発してから、ここまで1回もザックを下ろしていないことに思い当った。
一しきり撮影を済ませてから、小休止を入れていこう。








前剱山頂 前剱山頂から剱沢を見下ろす。まだまだかなり標高差と距離がある。

 剱山頂から2時間近く歩いているのに、剱沢までまだだいぶ距離があることに驚いた。
やはり岩尾根を歩くのは時間の掛かることなのだと改めて納得。
これに渋滞が加われば更に所要時間が長引くだろう。
じっくりと別山尾根を往復するためには、やはり3日間の行程を確保することが理想と思う。




 9:32 前剱山頂出発

 今回の別山尾根の下りの中で、ここが本当に核心部だと後で感じることになる激下りが始まった。
前剱で一息入れたのは本当に良いタイミングだったと思う。








前剱からの急峻な下りが続く やや左手に逸れながら下っていくようだ。 

 まず東大谷側の山腹道に合流。
下り始めてまもなくすると見下ろすばかりの長い激下りが始まった。

 激下りでは山側を向いて下るクライムダウン(正式な呼称を最近覚えた)が必要な箇所が連続。
またそこまでいかなくても、基本的には岩がゴロゴロするガラ場が続く。

 2,570m+コル(武蔵のコル)まで、少しも気を抜けない場面が続く。
別山尾根を往復する場合でも疲れが溜まってくる頃にここを通過することになるので、
カニのタテヨコよりもこここそが最も注意を要する区間ではないかと感じる。








 9:57 前剱大岩からの激下り  

 かろうじて一息付けたところから激下りを振り返る。
登りはともかく、ここを下る時はとにかく集中することが大事と思う。

 前剱から100mほど下ってくると、幾分傾斜は緩んでくるが気は抜けない。

 この辺りを歩いている時に東大谷側から時々雲が上がってくるようになってきた。








10:20 武蔵のコル(2,570m+コル)  

 撮影時のほんの少し前まで一服剱が見えていたが、あっという間に雲に飲み込まれた。
ここで立ち休憩中だった方と会話を交わしたのを機に、自分も大岩に寄りかかって一息入れていく。
ちょうど陰って涼しくなったのも気分が変わって良かった。
行く手の一服剱への登り返しは多少疲れを覚えてきた脚には辛そうだが、地形図を見ると実際の標高差は40mほどだ。

 雲の流れは速く、一瞬のうちにまた晴れてきた。
この頃から1枚写真を撮る毎に光量がガラッと変わる状況が続いていくことになる。








前剱の威容に驚く!

 一服剱への登り返しに掛かると、周囲が再び晴れ渡った。
そして振り返ってみると、間近の前剱の天を突く威容さに驚いた!

 ここからだと隠れて見えない剱本峰よりも、もしかしたらこちらのほうのインパクトが勝っているかもしれない。
どおりで前剱からの下りが厳しく長いものだったことも納得出来る。

 そして室堂から剱を目指す場合は、これから登る前剱が立ちはだかる格好となる。
登る前にこれを見ればより強い印象を受けるに違いない。








10:34 一服剱山頂(2,618m)到着  10:44 一服剱山頂出発

 40mの登り返しだったが、やはり楽なものではなかった。
ようやく一服剱へ登りきった頃、再び日が遮られて涼しくなったので休憩には好適だった。
前剱からここまでで1時間掛かっていることもあって、無理せずにザックを下ろして休憩していくことにする。

 一服剱から観る前剱はやはり剱本峰に負けず劣らず立派な姿だった。
この時は雲をまとってより威厳さを感じさせる光景だった。

 この一服剱という山名は、別山尾根の難所を降りてきてほっと出来るところだからと思っていたが、
もしかしたらここからだと剱は一旦見えなくなるからでもあるのかなと考えたりした。

 一服剱山頂では登り下り双方多くの登山者が行き交い、もう完全に夏山シーズンのピークの雰囲気だった。




 一服剱から南側を見ると剣山荘はだいぶ近いが、剱澤小屋やキャンプ場はまだそれなりに距離がある。
これはキャンプ場に着くのはお昼になるなと、今日の残りの行程を推し量る。




 一服剱から下り始めるが、やや踏み跡が拡散傾向に見えて少し横に逸れてしまう格好となった。
その時の後続の方々は自分の様子を見て、初めてここを歩いているということをすぐに気付かれたようで
それがきっかけとなって縦走中であることをお話しした。何がきっかけで山談義が弾むか分からないものだ。
 逆に自分が感じたことは別山尾根は団体やグループで歩かれている方がけっこう多いように見えた。








ようやく剣山荘に下り着く  

 一服剱から下るにつれて地形も緩やかになり、別山尾根での緊張感よりは少しだけ気を楽に持てるようになった。
それでも石がゴロゴロしている登山道なので、行動中は気を抜いてはいけない。

 初めての剱沢がすぐ目の前に広がってきたが、なんと伸びやかで居心地良さそうなところだろうと本当に好印象を持った。








11:12 剣山荘(2,470m+)到着  

 早月小屋を出発してから8時間余。
テントを張る剱沢のキャンプ場はまだ先ではあるが、やはり山小屋に辿り着くだけで本当に安堵できる。

 やはり初めての別山尾根の踏破で、相当に疲れが出てきていた。
キャンプ場までは緩やかな50〜60m程度の登りを残している。
ここで今日初めてヘルメットを外すなどして装備を整え、キャンプ場までで最後の見込みの小休止を入れていく。








11:24 剣山荘出発  

 ちょっと一息入れて落ち着いてから剱澤小屋へ向かう。
もうこれまでのような要注意箇所はないが、脚の疲れもあるのでペースはゆっくりめにして歩いていく。








チングルマ?の花畑に励まされて、あと一頑張りの行程を進める 雪渓が2箇所残っているが、しっかりとステップが切られているので問題なく歩ける

 たぶんチングルマではないかなと眺めつつ、この花畑で立ち休憩を入れていった。
剱澤小屋と剣山荘の間でも多くの方々が行き交い、剱の圧倒的な人気ぶりが伺える。

 他の方々よりも明らかに遅いペースだったが、着実に剱澤小屋が近づいてくる。
この時、剱澤小屋へテント設営の申込に立ち寄ろうとしていたのだが、
実際にはキャンプ場横の管理所で申し込むシステムになっていることを剱澤小屋の方から教えていただくことになる。








11:55 剱澤小屋(2,460m+)到着  

 裏側からぐるっと回り込む形でようやく剱澤小屋に到着!
テント設営の申込は出来なかったが、大して寄り道になったわけではないので問題はなかった。

 キャンプ場の管理所は申込のみで買い物は出来ないので、剱澤小屋には後ほどもう1回来ることになる。




12:03 剱澤小屋出発








剱沢のキャンプ場まであと少し!  

 キャンプ場までは剱澤小屋の裏手からあと一登りで標高差は60mある。
もう今日の行程は先が見えているし、だいぶ疲れてきているので焦らずゆっくりと登っていく。
それにしても剱沢での空模様は晴れたり曇ったりと目まぐるしかった。








12:18 剱沢野営場管理所・剱沢警備派出所(2,520m+)  

 最後の登りを終えてようやく今日の最終目的地に辿り着いた。
早月小屋から9時間15分。
 これ程中身の濃い道のりはそうあるものではないといえるし、険しくはあっても本当に楽しい時間だった!
でもやはり難路を経てきて自分でもはっきりと疲れを感じていた。

 とにかく無事に今日の行程を終えることが出来て、抜群の達成感と安堵感に包まれながらテント設営の申込を行う。
対応していただいた女性スタッフの方とも、今日の縦走の行程でお話が盛り上がった。
その方も早月尾根の登山道は長いけどお気に入りとのことだった。
自分にとっても好きな登山ルートがまた一つ増えたのは間違いない。

 水が豊富な剱沢なので、管理所の前で無料で冷たい水を補給出来る。
但し水は塩素消毒してはいるものの、飲むには煮沸したほうが良いとのことだった。
手間を考えると高くともミネラルウォーターを買うほうが良いかもしれない。








剱沢キャンプ場にてテント設営完了  やや雲が多いものの、剱は堂々とした姿を時々は魅せてくれた! 

 剱沢のキャンプ場は涸沢のように広大だが、さほど歩き回らないうちにここという場所を決めた。
水道、トイレ、そして剱澤小屋まで出来るだけ近いところ。そして眼前には遮るものなく剱が見えるところだった。

 昼からは雲に隠れている時間が多くなったが、今まさに歩いてきたばかりの剱を眺めて何ともいえない思いだった。
剱沢から観る表側?の剱は本当にどっしりと構えていて素晴らしく、ずっと見ていても飽きるものではない。

 ただ剱は曇ってはいても、剱沢では晴れていることが多くてテントの中は暑かった。
この後、軽装で剱澤小屋まで買い出しで往復した以外は極力身体を休めるように徹したが、
テントは暑いので外で折畳みイスに腰掛けて過ごした。
外なら日が射しても剱沢の下方から涼しい風が吹いてきて居心地良かった。

 山と高原地図と地形図を広げて、明日の行程とアルペンルートの時刻表を確認したりと
のんびりしている時間も退屈することはない。








開放的で居心地抜群の剱沢キャンプ場  今回初めて担いできた赤飯。塩を利かせて食べると最高に美味しかった! 

 剱沢キャンプ場はかなり広大な範囲で、お好み次第でテントを張る場所を選ぶことが出来る。
不便でも静かに過ごすなら上の別山に近いほうが良いかも。
いずれにしても、剱沢は自分にとってお気に入りのテン場の一つになったのは間違いないだろう。




 今日午後は曇りがちになり、剱を思う存分に眺めることは出来なかった。
明日3日目の行程を確認するために山と高原地図を観ていて、別山北峰(剱岳の眺め良い)に立ち寄ることにした。
ここで朝の斜光に照らされる剱をぜひ見ておきたくなった。
その後は雷鳥坂を下らずに新室堂乗越まで稜線上を辿ってから室堂を目指す。

 別山北峰で日の出を迎えるのを目標にすると、3:30に剱沢キャンプ場を出発することになるので起床時刻は1:30に決定。
自分の行動時間を考慮すると、室堂発の高原バスには10:40発を念頭に置くのが妥当だろうと判断した。
このバスに乗ると、14時前には車を置いてある馬場島へ辿り着ける。




18:30頃 今日もまだ明るいうちに就寝。2日間の縦走疲れもあって完璧に熟睡出来た。








行程断面図です




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